逆転検事2

【ぎゃくてんけんじつー】

ジャンル 推理アドベンチャー
対応機種 ニンテンドーDS
iOS
Android
発売・開発元 カプコン
発売日 2011年2月3日
定価 通常版:5,040円
コレクターズ・パッケージ:6,090円
Extended Edition:7,140円
Limited Edition:8,000円
廉価版 NEW Best Price! 2000
2012年1月19日/2,100円
判定 良作
逆転裁判シリーズ



かつてない逆境。かつてない逆転。



概要

『逆転裁判』シリーズのスピンオフ第2弾。
軽めのファンディスク的なものから1つのゲームソフトに発展した前作と違い、本作は最初から本格アドベンチャーを想定して作られた。
第1報の時点で公開された1話スクリーンショットに、過去作の最重要人物が映っているなど情報公開時の驚きは結構大きかった。


ストーリー

「ヤタガラス事件」から数日後、犯罪者の撲滅を公約に掲げ支持を集めている西凰民国大統領が来日。「ひょうたん湖公園」での演説は大きな盛り上がりを見せていた。
しかし、突如鳴り響く銃声に雰囲気は一変。会場は逃げ惑う人々で大混乱に。
その混乱の中、声が響く。「御剣検事を呼べ! この事件を解決できるのは彼しかいない!」
かくして検事・御剣怜侍は再び難事件に挑むことになった。


特徴

仕様のほとんどは逆転シリーズ作品および前作『逆転検事』から受け継いでいるため、そちらを参照。

  • 新システム・「ロジック・チェス」
    • 渋る相手から言葉巧みに証言を引き出すシステム*1。攻めるばかりでなく時には相手の様子を見つつ隙を探る、言葉のカケヒキが重要となる。
    • ロジック・チェスには制限時間があり、ゲージがゼロになるとやり直しとなる。ただし、ゲームオーバーにはならない。熟考が基本の逆転シリーズとしては異色のものだが、落ち着いて解答すれば時間は余るようになっている。
      • むしろ選択肢を間違えた方が多くのゲージを削られるため、後半は選択肢を間違えないことに注意を払った方がよいだろう。
  • 『蘇る逆転』で使われていた3D動画を使った映像資料の矛盾点の指摘が形を変えて再登場。映像の拡大なども行えるようになっている。

評価点

  • 歴代屈指の完成度とボリュームを誇るシナリオ。
    • 前作と同様の5話構成だが、とにかく長い。1話ごとの密度が異常に濃く、発売時点でシリーズ最長のシナリオである。
      • 特に「過去」と「現在」が密接に関わり合い、伏線が消化されていくさまは見事。「始まりの逆転」ともいえる過去とのつながりには都合上後付け設定も多いが、キレイにまとまっていてそれをほとんど匂わせない。
    • 事件以外にも「成長劇」「絆」「信頼」「受け継がれる意志」など見所が多い。
      • 本作にはストーリー全体を通してある「テーマ」が存在する。登場人物はいずれもその「テーマ」に関わる問題を抱えており、彼らがその問題にどのように向き合っていったのかが事件の背景・伏線として重要な意味を持つ。
    • 今まで以上に二転三転する展開が多く、冗談抜きで(何度も)窮地に陥る。
      • 検事としての地位すらもおびやかされる「かつてない逆境」の中で、御剣は動揺しながらも「検事とは何か?」「真実とは何か?」という問いにぶつかり、自身の生き方を問い直していく。「激しい葛藤の末に御剣はどのような結論に達したのか?」これが本作のもう1つのテーマである。
  • 調査場面のキャラクタードットには描き直されているものもあり、前作以上に動きや表情に磨きがかかっている。「ぬすみちゃん」のデザインもより近未来的なものに進化している。
  • 前作の弱点であった「キャラクターのインパクトの弱さ」が大きく改善されている。
    • 新規キャラクターはアクションにも言動にも個性づけがなされている。主要キャラや犯人はもちろん、それ以外の新規サブキャラにも空気キャラはほとんどない。
    • また、二転三転するシナリオ展開と並行して登場人物の「印象の逆転」も多く見られ、新規キャラクターの存在感をさらに濃くした。
    • 前作のラスボスはプレイヤーからは「特に印象に残らない」あるいは「倒すまでが長い」までの二択状態という評価であったが今作のラスボスはそうではない。
      • 若干無理やりな部分は否めないものの、ラスボスが作中にやってのけたことや悪に走ることになった動機と事情背景、その他の設定内容などから非常に高い評価を得ており未だにシリーズ最高のラスボスという評価も少なくない。
  • あるシナリオでは前作でやや空気気味だった一条美雲を全面的にフィーチャー。
  • 『逆転裁判』シリーズのゲストは前作とは別の人物が登場。特徴はそのままに証人や対決相手としてストーリーに関わってくるが、過去作の内容など深いところまでは切り込ませないよう適度に抑えられている。
  • 真犯人のブレイクモーションはスタッフも気合を入れたと語っており、いずれもよく動く上に、細かいネタも見られ秀逸。いずれの犯人もしぶとい上にスケールが大きいため、撃破した際の快感もひとしお。
  • BGMの第一印象はあまりパッとしないように感じられるかもしれない。しかし「スルメ曲」という感想が多く見られるように聴いているうちに慣れてくる曲が多い*2
    • 前作同様落ち着いたイメージの楽曲が多数を占める中、シリーズお馴染みの「追求」BGMは前作のクールな楽曲から一転して非常に熱い曲になっている。流れるタイミングもいちいち絶妙で、濃密なシナリオ展開を大いに盛り上げてくれる。
    • 登場人物の多くが固有のBGMを持っている。そのため、本作の新規BGMは49曲と大幅に増えた*3。そのようなBGMへの思い入れは、キャラクターへの思い入れとともに深くなっていくことだろう。
    • 試聴はこちらから。

賛否両論点

  • 前作ほどではないものの、今作のストーリーも例の制限によって過密スケジュールぎみ。前作と今作の間が数日間しかないというのも不自然さを残してしまっている。
    • これによって生じた特に際立つ問題が一つある。狼刑事の父親が関わった事件との関連性が浮上し、その証拠が実家に保管されているという事で急遽輸送する事になるのだが海外からの荷物がほとんど時間を置かずに届くのである。ちなみに、九州~東京間を航空機で移動するにも約2時間要する。
    • ただし、この過密スケジュールのおかげで各話の関連具合はシリーズ中でも特に高い。前作で起こった事件も間接的だが物語にかかわってくる。
  • 人気キャラ? で、前作で強烈なインパクトを残したオバチャンは未登場
    • 前作では逆転検事のほぼ全てのキャラを食いかねないほどの絶大なインパクトを残したため、登場しないのは仕方がないかもしれない
    • しかし、テキストですら登場しないのが残念がられた。*4

問題点

  • シリーズ最長のシナリオであるため、人によってはだれる。
    • 第1話の時点で序盤からみっちりチュートリアルが入るため、なかなか対決が始まらない。
    • 個々のパートもかなり長い。ある程度進めていた場合、セーブを忘れてゲームオーバーになった際の戻す労力はなかなかなので、こまめにセーブをすることをお勧めする。
    • 特に3話目は他作品だと箸休めのような話が多いが、今作では操作キャラが違った状態で過去と現在の事件を交互してプレイすることもあり、3話目にもかかわらず非常に長い。その事件がシリーズ自体における重大な事件のため、3話目にして最終話なのではないかと思った人もいたほど。
    • 一度プレイしたシナリオをやり直す際に、1話まるごとやり直すのではなくパートごとにやりたいという声も大きい。シリーズ共通の仕様だが、これもボリュームが増えたため生じた問題と言えよう。
  • 「推理もの」にしては難易度が低い。
    • ストーリーを優先した影響(と長丁場故)か、ヒントが頻繁に示されるなど謎解きの難易度は前作同様低めであり、「推理アドベンチャー」として見ると単調になりがちである。
      • ストーリーの長さゆえ問題点かは微妙だが、本作では章区切りの中間セーブでゲージが全回復するようになったのも難易度の低下に貢献してしまっている。
      • 犯行の手口などは割と巧妙なのだが、それを難易度にあまり反映できていないのは残念。
        + ネタばれあり
      • 特に第一話のクライマックスでは、真犯人を追いつめる最後の証拠を「ゆさぶり」の最中に御剣が思いつき、それをプレイヤーに知らせるという仕様になってしまっている。このエピソードは歴代シリーズの第一話の中でも屈指の難易度を誇り、また真犯人のキャラクターも非常に好評だったため、その真犯人を打ち負かす爽快感がやや削がれてしまったいう意見は多い。
      • というより、全エピソードを見ても真犯人のとどめの一撃となる証拠はプレイヤーが自力で探し出すというのがお約束のため、何故このエピソードだけそれに反しているのかは謎。
      • 一応、詰みポイントがないわけでもない*5
  • 「ロジック・チェス」は若干練り込み不足のように感じられる。
    • 例えば、「間違った選択肢を選んだ時のセリフが数パターンの中からの使いまわしであること」や「時間制限があまりうまく機能していないこと」など。後者はともかく、前者は追究パートの選択肢のように、その選択肢特有の会話を入れればもっと深みが増したのではないだろうか?
      • 一方でネタ選択肢の違う意味での酷さは中々笑える。
      • ただし、本作における対決パート、さらに言えば逆転裁判シリーズの法廷パートやサイコ・ロックなどにおいても間違えた際の発言は数パターンの使い回しであり、このロジック・チェスについてのみ練り込み不足であるとは一概には言えない。
      • もっとも、今挙げた3つの要素とは異なる点として、誤りの選択肢が御剣の発言として表示されるというものがある。しかし誤った選択肢を選んでも、その通りに発言することはなく、結局選択肢とは異なる汎用の発言になってしまうため、プレイヤーとしてはよりガッカリ感を抱いてしまうのも無理のないことである。
    • キャラクターにもよるが、中盤あたりまではあからさまに「ここで攻撃されたら終わり」という仕種をする者も多く、緊張感を感じない。
  • 捜査パートで証拠品を突きつけた際の反応が少ない
    • 基本的に、突きつける相手の精神状態等に劇的な変化が起こらない限りは、検事バッジや興味の無い証拠品を突きつけた際のリアクションは章を跨いでも変わらない。要は複数の章に出るキャラに証拠品を突きつけても大抵は同じテキストが再生される。
    • さらに、内容が同じテキストでもそれが一度再生されたという記録は章別に分けられているので、反応に期待して証拠品を色々見せる場合は既にみた事のあるテキストをスキップ出来ずに何度も見せられてしまう。
      • 細かな部分だが人によっては欠かせない要素であり、前作でも章別に異なる反応が用意されていたので、劣化した点だと言える。

総評

「推理アドベンチャー」としては若干粗のある部分も見受けられるが、シナリオは間違いなく歴代でも屈指の完成度。
演出面でも気合が入っており、一度シナリオにはまればグイグイ引き込まれてしまうだろう。
一つの作品としての完成度は前作から向上しており、単なるファンサービスにとどまらない。シリーズファンなら触れて後悔することはない筈である。


余談

  • スタッフが「『逆転裁判2』のプロットを参考にした」と語っているように、本作には『2』を彷彿とさせる場面がいくつかある*6
  • 望む声があれば続編を作りたいと公式で前向きな発言がされている。
    • しかし「期待はするが、これ以上もしくはこれに並ぶ話が作れるのだろうか?」と違う意味で心配されている。
    • また、本作のラスト時点で例の事件の秒読み段階に入ってしまっているため、その意味でもやはり心配されており、色々な憶測が飛び交っている。
  • 東京ヤクルトスワローズのチャンステーマに本作のBGMが採用されている。
  • 本作はシリーズで唯一海外版の発売がなされていない。
    • 後にカップリングタイトルとして『1』~『3』までを収録した『成歩堂セレクション』と、『4』~『6』までを収録した『王泥喜セレクション』がそれぞれ現行機向けに発表されている関係で『検事』シリーズを1本に纏めた『御剣セレクション』の発売もファンの間から熱望される様になった。
    • だが、『検事』シリーズのカップリングタイトルをリリースするに当たって、例によって今作もローカライズ版の制作を行う必要があるのだが、今作は1つのシナリオが非常に長いという関係で使用されている文字の数も非常に多く、『1』からローカライズ版の制作を行うに当たって想像以上に長い時間を掛ける必要がある。
    • これに同じくカプコンから発売された著名シリーズのスピンオフタイトルという立ち位置を踏まえると、現在における今作の立ち位置はSFC版『ロックマン&フォルテ』とほぼ同様と言えなくもない。
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最終更新:2024年02月05日 20:41

*1 これは『逆転裁判』シリーズの「サイコ・ロック」にあたる。

*2 よく挙げられるのは、「対決~プレスト2011」

*3 『裁判』シリーズでは35曲前後、前作は43曲。

*4 開発段階では御剣を追っかけているという設定でテキスト内で登場させる予定だったが、諸事情でそのテキストがなくなったとのこと。

*5 詳しくは伏せるが、某所でテンプレになるぐらいには多くの人間が手詰まりを起こした模様。

*6 といっても、話がかぶっているといったことではなく、登場人物のイメージやストーリーの構成など断片的な記号が共通しているというだけの話である。