遊☆戯☆王デュエルモンスターズ エキスパート2006

【ゆうぎおうでゅえるもんすたーずえきすぱーとにせんろく】

ジャンル カードゲーム
対応機種 ゲームボーイアドバンス
メディア 256MbitROMカートリッジ
発売・開発元 コナミ
発売日 2006年2月23日
定価 4,980円(税別)
判定 良作
ポイント デュエルシミュレーター路線に徹底特化した完成度の高い作品
現実準拠のシステム
原作キャラはおらず、対戦できるのは全てモンスター
鬼畜過ぎるLPサバイバル&制限デュエル
GBA最後の遊戯王作品
遊☆戯☆王 関連作品リンク


概要

GBA最後の遊戯王OCGソフト。
5』でOCGと同じルールを採用したが、『7』と『8』での先祖帰りともいえる迷走、さらには『めざせデュエルキング』ではバグだらけと迷走に迷走を重ねてきた本シリーズ。
しかし、本作は『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ エキスパート3』以降のシナリオを廃したデュエルシミュレーター路線を押し進めており、原作キャラすら廃することで到達したGBAシリーズの集大成にして究極のデュエルシミュレーターゲーム。


特徴

  • ゲーム開始時に所持している40枚のカードとは別に、6種類のストラクチャーデッキの中から一つを選ぶことができる。
    • 因みにこれらはすべて、当時OCGで実際に商品展開されていたもの。
      初期の40枚のカードはSTARTER DECK(2006)の内容と同じであるが、OCGの発売よりもこのゲームの方が発売は先であった。
+ ストラクチャーデッキ一覧
  • ドラゴンの力
    • レッドアイズとアームド・ドラゴンでビートダウンするドラゴン族デッキ。
  • アンデットの脅威
    • アンデット族を蘇生して攻めるデッキ。
  • 灼熱の大地
    • ロックバーンで守りながらのダメージを得意とする炎属性デッキ。
      • ロックをすり抜けられるアタッカーの《超熱血球児》や《逆巻く炎の精霊》、生け贄召喚時にハンデスを行う《炎帝テスタロス》も優秀。 欠点としてはアドバンテージを得られるカードが少ないことと、前者2体の素の打点が低く更にロック主体なのにレベル4が多く攻め手に乏しいことが挙げられる。
      • 初期パックに《炎の精霊 イフリート》が入っているので、ビートダウンにシフトできる。
  • 海竜神の怒り
    • アトランティスとそのサポートカードを駆使して戦う水属性デッキ。
  • 戦士の伝説
    • 装備カードを駆使して戦う戦士族のデッキ。

-魔法使いの裁き

  • 魔法カードを使うことによって様々な効果を発揮する魔法使い族デッキ。

評価点

  • CPUキャラクターが原作・アニメのキャラからOCGのモンスターになったことにより、対戦相手のデッキが充実したものとなった。
    • 元々原作・アニメキャラの使うデッキは漫画・アニメ作品である以上、戦略性よりも強力な引きによって成立したものがほとんどのため、実際にプレイすると安定性に欠けるデッキが多い。故に旧作ではまったく頭を使わずに相手に勝てたため、作業ゲーに等しい作品ですらあった。
    • だが、本作の相手プレイヤーはどれも実用的なシナジーとコンボを使用する。Lv1の《スケープ・ゴート》ですら【スキルドレイン】*1を使用し、OCGの進化が如実に現れている。
    • 結果的に難易度も上がってしまっているが、本作の初期デッキは最初からそれなりの完成度を誇るストラクチャーデッキ(構築済みデッキ)であり、対等に戦うことは難しくない。
  • CPUのAIが初期から格段に進化を遂げている。
    • 損得計算(TCG用語で言うアドバンテージ)という面で非常に合理的な対応をみせるため、実用的なデッキと相まって「全力でやっているのに負ける」という過去作では考えられない事態が起こる。特に【お触れホルス】*2、【除去ガジェット】*3といった強力なデッキ相手では、勝率が5割を切ることも決して珍しくない。
      • ただ、引きを待ったり先を読むのは苦手なため、融合デッキ*4などを使用するとAIではデッキのポテンシャルを満足に引き出すことはできないこともある。
  • チャレンジモード95%以上達成で自分のデッキレシピ(60個まで製作可能)と対戦可能。練習台としては不足気味だが、自由度はかなり高いシステム。
    • カードの禁止・制限リストは制限デュエル出現後。改定時期ごとに変更可能となるので、《八汰鳥》などを使った過去の強力なデッキも再現可能である。
      • ただし過去作のような、制限カードを複数枚入れたデッキを使う事は出来ないので注意(ただしデッキレシピに保存すれば、「相手に」使わせる事は可)。
  • 第4期シリーズ「SHADOW OF INFINITY」(2005年11月発売)までのカードがほぼ完全収録。これは本作の1年前にDSで発売された『ナイトメアトラバドール』の倍近い収録数である。
    • OCGが基となったゲームではこの時点で唯一「ガーディアン」シリーズのカードが全て収録されている。
      • どういうわけかこのシリーズはゲーム出演にはかなり恵まれていないのだが、アニメ版で使用するキャラクターがいたために使いたいプレイヤーにとっては嬉しいところ。
    • 発売地域によってイラストが異なるカードに付いては、ゲームの設定言語依存でイラストが変化するようになっている
      従来の国際大会公式ソフトは一貫して海外版仕様で統一されており国内のプレイヤーには違和感のある仕様となってしまっていたが、本作ではそのような心配はいらない。
    • 同様の理由で《ウィジャ盤》と《死のメッセージ》カードの処理も言語で変わる*5
  • 詰めデュエルやテーマ・制限デュエルは、単なるサブモードに留まらず、ユニオンモンスターなど新しく出てきたカードをOCGをやっていないプレイヤーにさりげなく紹介しつつ、自然にデッキを構築させる構成になっている。
  • プレイ内容によって得られるポイントが細かく変化する。
    • ポイントが増える要素は多岐にわたり、多くのダメージを与える、儀式、融合、生け贄召喚。逆転勝利、残りデッキ、LPギリギリでの勝利。相手のデッキ切れ…などなど、非常に細かく設定されている。
      • 原作やアニメで見られるような派手なプレイやトリッキーな戦術ほど多くのポイントが得られる設定になっているので、勝ち負けだけではない楽しさという面でのOCGの魅力を引き出すことに成功しており。過去作に見られたカード収集のための効率重視のデッキ構成や作業化するCPU戦といった問題を見事に解消している。

賛否両論点

  • 良くも悪くもシミュレーターに特化し過ぎている。
    • ストーリーもなく原作、アニメのキャラクターも出てこないため、原作、アニメファンとしてはやや物寂しい。
      • 一応、武藤遊戯の愛用カードだった《クリボー》が多少原作キャラが使ったカードを投入しているのだが、とても満足できるものではない。
    • カードゲームのゲームで対戦相手がモンスターなのも変な話だが、この路線は『WCS2011』まで続く事となる*6

問題点

  • レアパックや一部チャレンジモードを出す条件の一つとなっている「LPサバイバルの20連勝」は苦行的な側面があり、本作最大の失敗部分である。
    • 具体的には途中でセーブ不可、得られるポイントが1勝で100P(普通のCPU戦では最低600P以上)とげんなりする要素が多く、ルールの関係で回復中心のデッキを組まざるを得ないので1戦ごとに時間もかかる。20連勝には2~3時間近いプレイが求められる。
    • LPが持ち越せるルールのため、序盤にLPを数万単位で回復させた後、LPの差分のダメージを与える《裁きの代行者 サターン》の効果を使えば1ターンキルができる。そのため、ハイテンポで進めることは不可能ではない。
  • 本作の大きな魅力であるデッキレシピとの対戦は出現条件の厳しさなどからプレイするまでの道のりが非常に長い。
  • 「制限デュエル」で「攻撃禁止」や「セット禁止」等、こちらが出来ない事をCPUは平然とやってくる。
    • こちらに関しては、後のDS作品『WCS2007』から修正されて相手もやってこなくなった。
  • レベル1のCPUであるスケープ・ゴートがとてつもなく弱い
    • 除去手段を殆ど用意しておらず、最高攻撃力が2800のガンナードラゴンを上回るモンスターを出すだけで完封できてしまう。
      • これを何度も繰り返すことてお手軽にDPが稼げてしまい、面白みが薄れる。

バグ・不具合

  • 公式大会のソフトとして使われておきながら、「対象がないのにデッキサーチ(リクルート)系の効果を空撃ちできる」というバグの存在。
    しかも、公式大会で悪用されてしまった
    • 有名なのは《創造の代行者 ヴィーナス》。効果を要約すると「LPを500払って《神聖なる球体》をデッキから特殊召喚する」というもの。しかし、《神聖なる球体》がデッキになくとも効果を発動し続ける(コストだけを払う)ことが可能であった*7。公式大会の決勝戦では《大逆転クイズ》*8とのコンボで4ターン2連勝という一方的な試合が展開されたほど。
      • この大会ではOCGの処理よりゲーム内の処理が優先されたのも大きく、歯止めの効かない状態となってしまっていた。
    • このバグによって《名推理》のカードを使用してのデッキレシピ対戦でDPを荒稼ぎすることもできてしまう。
  • 本来植物族の《ダンディライオン》が戦士族になっていたり、《ハイドロゲドン》でトークンを破壊しても効果を発動できる等OCGでは不可能なバグや設定ミスがちらほらある。
  • テーマデュエル「大革命」にクリアが認識されないバグがあり、達成率が99%までしか上がらない。
    • 幸い100%が条件のボーナスなどはないが、すっきりしないプレイヤーもいるだろう。

総評

「OCGルール」「カードの(ほぼ)完全収録」「理に適ったCPU」「自分の作ったデッキとの対戦」と、今までの遊戯王ゲームを知るユーザーであれば、感涙必至の要素が揃いに揃った傑作である。特にデッキレシピとの対戦は他のゲームには無い拡張的な自由度を誇っている。
ルールもとっつきやすく、そのゲーム性の進化と面白さを再認識できるに違いない。


余談

  • このゲームのCMでの声優は、アニメ『GX』時代のゲームでは唯一の主人公以外の単独出演である。
  • 上述の通り本作は原作キャラの存在をも廃するという、『遊戯王』のゲーム作品としては挑戦的な取り組みを行っている。本作の発売時期的にはニンテンドーDSの『ナイトメアトラバドール』・『スピリットサモナー』の後であることから、キャラゲー路線はDSに譲る形を取ったのだろう。
  • ストラクチャーデッキは本作の精神的続編であるワールドチャンピオンシップシリーズにて「2008」以降にも登場している。
    • 当初は中盤で購入できる様になっているが後に序盤から購入できる様になっている。
  • テーマデュエルの一つである「1ターンキルA」*9では、ほとんどの対戦相手がモンスターにもかかわらず、この挑戦では《波動キャノン》という永続魔法が相手をする。
    • たしかに、この《波動キャノン》で8ターン耐えれば達成はするが…別に攻撃力の高いモンスターなどでも良かったのではなかろうか?
    • 次作ではきちんとモンスターが対戦相手になっているが、別のテーマ・制限デュエルにて魔法・罠が対戦相手として増加してしまっている。
  • 遊戯王ゲームお馴染みの特典カードは《黄金のホムンクルス》《原始太陽ヘリオス》《ヘリオス・デュオ・メギストス》の3枚。
    いずれもTVアニメ『遊 戯 王デュエルモンスターズGX』でアムナエルが使用したカードである。
    • 更に本作が付属していた「遊戯王 ワールドチャンピオンシップ2006セット」では、《真紅眼の闇竜》《ヴァンパイアジェネシス》《ヘルフレイムエンペラー》《海竜神-ネオダイダロス》のアルティメットレア仕様のカードがセットで付いてきた。
      この4枚は極めて貴重であり、現在はプレミアが付いている。
    • 攻略本には《ヘリオス・トリス・メギストス》が付属。本作の特典カードとシナジーする効果を持っている。

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最終更新:2023年08月20日 18:00

*1 フィールド上のモンスター効果を無効化する《スキルドレイン》によって、ステータスは優秀だがデメリット効果を持つモンスターを運用するデッキ。

*2 魔法カードを封じる《ホルスの黒炎竜 LV8》と罠カードを封じる《王宮のお触れ》でロックをしかけるデッキ。

*3 特定モンスターをサーチする「ガジェット」と呼ばれる優秀なカード群でアタッカーを切らさないようにしつつ、それらの苦手な除去などを魔法や罠で補ったデッキ。

*4 融合モンスターを入れておくメインデッキとは別のデッキ。 シンクロモンスター、エクシーズモンスター、リンクモンスターが登場した現在のOCGではエクストラデッキに改称されている。

*5 《ウィジャ盤》はその効果により、《死のメッセージ》が4枚全て揃うと5文字の単語が完成し、特殊勝利できるカード。日本語版が「DEATH」なのに対し、海外版は「FINAL」。これも同様に世界大会絡みのソフトではほとんどの作品で「FINAL」となっていた。

*6 なお、アニメ作品でもモンスターを相手にデュエルすることもある。

*7 OCGでは不可能である。

*8 相手と自分のライフポイントを入れ替える効果。

*9 何回も攻撃するのではなく、文字通り本当に1ターンで8000ダメージ与えなければいけない