ナポレオン

【なぽれおん】

ジャンル リアルタイムウォー
対応機種 ゲームボーイアドバンス
メディア 64MbitROMカートリッジ
発売元 任天堂
開発元 元気
発売日 2001年3月21日
定価 4,800円(税抜)
プレイ人数 1~2人
レーティング 【VC】CERO:B(12才以上対象)
周辺機器 通信ケーブル対応
モバイルアダプタGB対応
配信 バーチャルコンソール
【WiiU】2015年1月7日/702円(税8%込)
判定 良作


概要

近代欧州の名将、「ナポレオン・ボナパルト」になりきってフランス革命期のフランスを戦い抜くリアルタイムストラテジー(RTS)。GBAローンチタイトルの一つでもある。
日本では未だに馴染みの薄いジャンルとして知られており、国内で知名度の高い作品は『伝説のオウガバトル』『半熟英雄シリーズ』『スーパーロボット大戦Scramble Commander』ぐらいしかない。
なお、どことなく洋ゲーっぽい雰囲気が漂っているがれっきとした国産品である

システム

  • 基本的に動かせるのはナポレオン本人。コマンドの概念がほとんどなく、ナポレオンと味方部隊との接触で司令を下すスタイル。ナポレオンはヒーラーの役割も担当する。
  • 『伝説のオウガバトル』は戦闘に入ると時間の進行が止まる半RTSだったが、本作は完全に待ったなしのノンストップRTSである。もちろんポーズはかけられるが、現在の戦局を確認するぐらいのことしかできない。
  • 勝敗条件は『ファミコンウォーズ』『ファイアーエムブレムシリーズ』に近く、多くのマップでは敵の本拠地を制圧するとクリア。
    • 敵拠点の制圧が歩兵でしかできないのは『ファミコンウォーズ』と同じ。
    • 敗北条件は「自軍本拠地が制圧される」、もしくは「ナポレオンの体力(HP)がゼロになる」のどちらか。
  • 兵の招集はナポレオンを自拠点に接触させることで行う。招集に必要な資金は制圧済みの拠点数に応じて時間経過で増えていく。
    • 招集できる兵の種類は拠点により異なる。終盤は聖なる魂の部隊(ゴーレムとガーゴイル)も招集できるようになる。
  • 戦いの鍵を握るのは指揮官。実在の人物をモデルにしており、能力は一般兵とは一線を画す。
    • 各部隊長には兵士を一定数付けて「陣形」を組ませることができ、能力面で大幅な強化が見込める。
      • なお、指揮官は倒れても一定時間経過で復活するがこの際「やる気」が若干減少してしまう。
  • 一つのマップをクリアするとクリアタイムや死亡者の数に応じて「ほうび」がもらえる。
    • いわゆる経験値なのだが、この獲得方法が一風変わっている。一度全てのほうびをナポレオンが受け取った後、それを戦いに参加した指揮官に任意に割り振っていくのである。
      • できる限り戦績に応じて分配していくことで不満の発生を抑え、やる気を高く保つことができる。やる気は能力補正や復活までの時間に関わるので重要なパラメーター。
      • あえて活躍した指揮官に少なく与え、育てたい指揮官を贔屓するといったこともできる。
  • ナポレオン自身は前述の兵の招集の他、味方の士気を高めたり、自分の元に全ての兵を集合させたりできる。
    • 士気を高める、集合は時間経過で回復する「SP」を消費する。また味方兵士に重なってBボタンを連打することで味方の回復ができる。
      • ただしナポレオン自身も攻撃等でダメージを受けるので注意が必要。

評価点

  • 誰にでもわかりやすく、とっつきやすいシステムを採用していること。
    • 味方兵士の種類はさほど多くはないが、押さえておきたい種類は網羅してあり、個性は豊か。
      • 招集する兵士を選んでいる間も容赦なく時間が経過するので、この種類の少なさはむしろ評価点になる。
    • RTSながら本作の操作は多分にアクション的。戦場を縦横無尽に走り回る必要がある。
      • 敵の攻撃は基本的に見てからかわせる。一部のボス敵はこれを活用しないと一瞬で全滅することも。
    • チュートリアルは丁寧に行われる。新しい兵種が到着したら、その活用方法についてしっかり解説してくれる。
      • 一度こなしたチュートリアルは何度でもメニューからプレイできるので安心。
  • 一つ一つのステージは数分で終わる短さ。携帯機らしくテンポのよいプレイングが可能。
    • また基本のストーリーモード以外にも、特殊な勝利条件を目指すモードも用意されている。
  • SLG・RTS初心者でも手を出しやすい難易度。
    • 管理すべきリソースは資金だけ。その用途も兵の招集に限られるので、様々な数値を管理できずジリ貧に…という事態はまずない。
    • とはいえ決してヌルくはない。単にクリアするだけならさほどでもないが、撤退者を出さずにタイムも縮めようとするとかなり頭を使う事が求められる。
  • 王道ながらも非常に熱いストーリー展開。
    • キャラクター造形は少年漫画のテンプレっぽいが個性はしっかりあり、どのキャラクターも魅力的。
      • また、各指揮官の過去の話も外伝として用意されている。この物語もなかなか熱い。
  • 慣れてきたら高評価を目指すために、タイムアタックに挑戦することもできる。
    • ステージクリアごとにプレイ状況に応じて様々な称号が与えられる。特に特典はないが、ノーミスで真エンドを見たことを意味する特別な称号もある。

賛否両論点

  • キャラクターの造形について。
    • 「あえて」やっている点も多く見受けられるが、本作のキャラクターは史実のイメージとは全く異なるものが多い。
      • 特に言われるのが関西弁の指揮官、ランヌ。史実ではガスコーニュ訛りだったらしいが、それを再現しているのだろうか? だとしても全体的にコメディリリーフなキャラクターであり、どちらかというと「うっかり八兵衛」のような人物になっているが…。
      • ちなみに能力は極めて優秀。足が少々遅いが、付けられる部隊数が多く(前述の聖なる(略)も唯一指揮下における)、陣形内の兵の能力を高める特殊能力持ち。
    • 敵に「マダム・タッソー」を持ってきたり、一応の理由付けはあるがそもそもこの時点では死去している人物が多数登場したり(中にはジャンヌ・ダルクまでいる)、硬派な歴史SLGを期待した層からは期待外れに見られることも多かった。
      • ただしこれは、ナポレオンのファン層が日本ゲーム界ではマイナー寄りで自然と硬派な近代史愛好層に偏りがちという、任天堂が狙った層とそもそもズレていた構造問題も大きい。
      • それを踏まえれば、本作のストーリー自体はこれはこれで面白みのあるものである。史実に忠実なものを期待すると少々がっかりするだろうが、全く別物と割り切れば十分に楽しめる。
  • カーソル扱いのナポレオン
    • 役割を考えると決して大げさではない。ナポレオンが登場するゲームはたくさんあるが、多分その中でもぶっちぎりでぞんざいな扱いで最弱なナポレオンとも言える。
      • 最弱の敵である歩兵の攻撃で体力をゴッソリ削られ、自らの攻撃能力を一切持たず、自分で撃った大砲の爆発に巻き込まれて一撃で死んだりする。
      • また伝令というものがないのか、自ら戦場をかけずり回って兵士を補充し、そして戦闘後の褒美分配では苦心して分けたのにやたら文句を言われて、えらく苦労人でもある。
    • 一応、このぐらい弱くないとバランスが取れないのでゲームとしては正しいのだが…「ロディ伝説のような一騎当千の英雄ナポレオンが見たい!」という要望には間違っても応えられないので期待しないように。

問題点

  • メインモードのボリュームはさほど多くはない。全30話+外伝7話。分岐などもない。
    • 一見多そうに見えるが、前述の通り一つ一つのステージはさほど長くないので…。
      • ただ、メインモード以外の遊び方も多く用意されており、全体としてのボリュームが少ない訳では決してない。
  • 操作性が若干悪い。
    • 特に、兵士を部隊に付けようとした際、動き回る指揮官に向けてカーソルを合わせる必要がある。
      • ただ、一度指揮官に合わせてしまえば以降十字ボタンを動かすまで自動でロックしてくれるようになっているので、常に動き回っている相手を無理矢理追いかける必要はない。
  • 一部使い方の難しい兵種・指揮官がいる。
    • 前者の代表は応援団。配置した部隊の体力を徐々に回復するのだが、自身の体力が低いにもかかわらずよりにもよって自分を回復できないため、無理に付けてもあっという間に死んでしまったりする。
    • 後者はシャルロット・スーシェ。紅一点の指揮官で、接触しているとナポレオンの体力を回復する貴重な特殊能力を持っているが、その代償か基本パラメーターが最低。このためかなり扱いにくくなっている。
  • 既に書いたようにカーソルはナポレオン。
    • つまり、カーソルが障害物に阻まれ敵に阻まれと制約を受けまくるただでさえ弱く、前線に出しづらいのに自衛の手段もない。と何重苦も背負っているという漢仕様すぎて使いづらいことこの上ない。RTSとの相性はかなり悪い。
  • グラフィックはさほど良質ではない。せっかくのローンチなのだからもう少しがんばってもらいたかったが。
    • ただ、結構細かくアニメーションするのは評価点。
  • プレイヤーに与えられる称号の種類は多いが、101人以上敵を倒す「大戦」や101回以上気合入れを行う「おおさわぎ」など狙わないとまず取得できないものがあり、しかも1つ前のステージでのプレイ状況も影響するので結果として同じような称号を取り続けることになる。
  • 売りの一つが「モバイルGB対応」だったのだが、あっという間にサービスが終了してしまったため、この部分は現在では評価不可能という…。
    • このモバイルGBでのメッセージを編集する機能が有る。単語を組み合わせてメッセージを設定するのだが組み合わせ次第で腹筋を崩壊させるメッセージが作れる。実際、雑誌で面白メッセージの投稿が行われたという。

総評

RTSとして必要な部分はしっかり盛り込みつつ、初心者にもとっつきやすいよう可能な限りシンプルにした良作。
総じて完成度は高く、少しの合間にやりこめる携帯機らしさを前面に押し出した方向性になっている。
携帯機でできるRTSは例が少ない。現在では投げ売られている店も少なくないので興味があればやってみてはどうだろうか?

…本作最大の謎は、なぜ任天堂は『F-ZERO FOR GAMEBOY ADVANCE』や『ロックマン エグゼ』、『スーパーマリオアドバンス』といった話題作、注目作に混じってこのようなニッチなジャンルをローンチに選んだのか、ということだろう。


余談

  • 実は、任天堂は過去に同名のボードゲームをリリースしたことがある。
  • 任天堂の花札の銘柄『大統領』の箱にはナポレオンが描かれている。(なおナポレオンは統領(コンスル)や皇帝はやったが大統領にはなっていない。甥のナポレオン3世が最初のフランス大統領である。)
    • これにちなんで、いつかナポレオンのゲームを作ろうという話が以前から任天堂内にあり、「元気」社のGBA用ウォーシミュレーションの企画にナポレオンという題材を結びつけて作られたのが本作。
    • なお元の企画ではカーソル役キャラはUFOで攻撃能力も持っていた。
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最終更新:2023年07月13日 21:15