スーパーロボット大戦UX

【すーぱーろぼっとたいせんゆーえっくす】

ジャンル シミュレーションRPG
対応機種 ニンテンドー3DS
発売元 バンダイナムコゲームス
開発元 エーアイ
発売日 2013年3月14日
定価 通常版/DL版:7,140円
本体同梱版:26,040円(全て税込)
レーティング CERO:B(12歳以上対象)
判定 良作
ポイント SDガンダムや事実上のボカロ初参戦
豊富かつ意外な隠しキャラ&ユニット
周回プレイというゲームシステムを昇華した完成度の高いシナリオ
スーパーロボット大戦シリーズリンク


概要

ニンテンドー3DS初のスーパーロボット大戦。キャッチコピーは「全ての可能性が、ここに集う。」

スパロボでは『聖戦士ダンバイン』との初共演となった『リーンの翼』、原作漫画版名義での参戦となった『鉄のラインバレル』、多くのファンから参戦が望まれつつも原作が18禁ゲームゆえに難しいとされてきた(そしてファンからは評判の悪いアニメ版名義での参戦となった)『機神咆吼デモンベイン*1、音声合成ソフト「初音ミク」と「電脳戦機バーチャロンシリーズ」のコラボレーションから生まれたイラストで、見た目が初音ミクそのものな「フェイ・イェンHD」、リアルガンダム(しかもよりにもよって『00』)との共演となった『SDガンダム三国伝』、どちらかというとヒーローものな『HEROMAN』など、前代未聞ともいえる参戦作品のラインナップで話題を呼ぶ一方、コラボレーションの面でまとめきれるのかを不安視する声も散見された。

肝心の内容面では、前作『L』よりさらに濃密になったクロスオーバーが良好である、システムも改善を見せており、高評価を獲得した。

参戦作品一覧

+ ...

★マークは新規参戦、☆マークは声つき作品初参戦。

  • 聖戦士ダンバイン
  • ★リーンの翼
  • ☆蒼穹のファフナー
  • ★蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH
  • ★『電脳戦機バーチャロン』シリーズ フェイ・イェンHD
  • 機動戦士ガンダムSEED DESTINY
  • ★劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-
  • ★SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors
  • 忍者戦士飛影
  • ★HEROMAN
  • 獣装機攻ダンクーガ ノヴァ
  • ★機神咆吼デモンベイン
  • ☆鉄のラインバレル(原作漫画版)※
  • 劇場版マクロスF ~イツワリノウタヒメ~
  • 劇場版マクロスF ~サヨナラノツバサ~
  • ★マジンカイザーSKL
  • バンプレストオリジナル ※鉄のラインバレルは、原作漫画版としては新規参戦。

劇場版マクロスFは『第2次Z』に続いての参戦だが、『第2次Z』では機体のみの参戦であったため、シナリオの再現は今作が初。
また『聖戦士ダンバイン』は『スクランブルコマンダー2nd』以来6年振り、『忍者戦士飛影』は『IMPACT』以来11年振りの参戦となった。


特徴

システム

  • パートナーバトルシステムは『L』からさらにブラッシュアップされ、戦略の幅がより広がっている。
    • 第2次OG』に続き連続行動*2が追加。本作ではシングルユニットのみ効果が得られるようになっており、パートナーユニットとの棲み分けがなされている。
  • 機体ボーナスが従来の5段階改造、10段階改造に加え、パイロットの撃墜数が100機以上、200機以上の合計4段階で強化されるようになっている。
    • なお第4段階になるのは「5段階改造+200機撃墜」または「10段階改造+100機撃墜」。そのため、「10段階改造+200機撃墜」を達成しても更にボーナスがつくことはない。
  • 戦術指揮
    • 『第2次Z』の同名のシステムと異なり、インターミッションで1人指定することで次のステージでは指定した一人に応じた能力ボーナスが得られる*3。また、ステージ開始時に指揮担当者が台詞を言ってくれる。
    • 基本的には艦長(『マクロスF』のジェフリー、『00』のスメラギなど)や軍師(『三国伝』の孔明、『ファフナー』の総士など)、前線指揮官(『ラインバレル』の森次、『マクロスF』のオズマなど)が設定できるが、中盤でのとあるイベントの結果、『ダンバイン』のチャムや『リーンの翼』のエレボスはおろか、パイロットですらない『HEROMAN』のリナや『マクロスF』のランカやシェリルといった、本当に指揮が出来るのか疑わしい人物までもが設定できるようになってしまう。
      • 一応追加される彼女達の名目は応援であり、ご丁寧にもこのイベント以降は項目が「戦術指揮」から「戦術指揮/応援」に変化する。
    • 戦術指揮の効果はそれぞれだが、孔明が抜きんでて優秀*4なため初見では孔明で固定しがち。しかし何人かの隠しのフラグに「特定のステージで特定の人物に戦術指揮をさせる」というものがあるため、強いからといって孔明で固定しているとフラグを立て損ねてしまう。まさに孔明の罠
  • 特殊行動
    • 一部の機体は移動や攻撃のほか、様々な効果を持つ行動を行える。使うのと使わないのでは難易度が大きく変わるものもある。簡単に言うと、攻撃を伴わないMAP兵器。
    • 一定範囲の味方を強化・敵を弱体化するディスィーブのナーブクラックや敵の命中率・回避率を下げるメサイア(ルカ機)の複合センサー、一定範囲の敵を移動できなくするデモンベインのアトラック=ナチャなど、効果も使える機体も様々。
      • 従来では状態異常に耐性を持つボスクラスであっても、それらを無効化する精神コマンド「直撃」をかけて撃ち込めば弱体化できたが、本作では仕様変更によりその手が使えなくなっている。
  • スキルパーツ
    • スキルパーツ自体は従来からあるシステムだが、本作ではパイロットの基本能力もスキルパーツで上げることになる。
    • パイロットの能力を上げるスキルパーツは「ドクター・ウェスト愛用ギター」「ジャックの牛乳」など原作で登場したアイテムの名前がつけられている。なお、今回のステータス上限は999。
    • 上位技能は通常プレイだと1データにつき1つしか入手できないが凶悪レベルのハイスペック。「連続ターゲット補正無効」や「ガード100%発動」(撃ち落としバージョンなどもあり)という効果を見ればその凶悪度も察しがつくと思われる。
    • 周回開始時にスキルパーツの使用状況をリセットし、パーツを未使用状態に還元することができる*5。リセットせず使用状況を引き継ぐことも可能。
  • ダウンロードコンテンツ
    • 初めてダウンロードコンテンツを採用。『J』以来となるツメスパロボ、おまけマップとなるキャンペーンマップが配信されている。
    • キャンペーンマップはツメスパ同様マップごとに設定されたユニットを使用し、中断セーブができない。それ以外は通常のシナリオマップと同じ。
    • クリアすることで資金とスキルパーツが入手できる。一度クリアしたものも何度でもプレイできるが、ボーナスは資金2000のみに変更される。なお周回時にクリア状況はリセットされる。
    • ダウンロード限定のパイロットや機体は存在しないので、無理に買う必要は無い。
      • ただし上記の上位技能パーツが入手できるマップもあるため、周回プレイで複数個入手することが可能になる。
      • また、ダウンロードコンテンツでしか聞けない特殊戦闘台詞も存在する(参戦時期の都合上戦えない敵との戦闘台詞は勿論、『三国伝』の劉備vs曹操・孫権など一部マップで味方部隊同士で戦う場合にも用意されている)。
  • 精神コマンド
    • 本作で追加された精神コマンド「理想」は、自分・PU・周囲4ユニットに「闘志」(一ターンの間攻撃が必ずクリティカルになる)がかかる。
    • 「正義」が初代スパロボ以来の復活。一ターン中使用者の武器の消費弾数・EN・MPが無くなる効果になっている。反撃無双に向くがPUには効果が無いのとバリアなどの消費ENには対応しない点に注意する必要がある。
  • 隠し要素の引継ぎ
    • 今回は隠し要素の仕様も独特なものとなっている。生存フラグは周回を超えて引き継がれ、一度生存したら以降の周回では無条件に生存する
    • フラグの一つ一つを引き継ぐため、例えば「特定ルートを通過」、「特定のボスを撃墜」、「周回内撃墜数を特定の数で達成」と言う条件の隠し人物は、1周目でルート通過、2周目でボスを撃墜、3周目で撃墜数100達成でも生存する。
      • ただし、撃墜数の判定が特定ルート内で行われる場合は、そのルートを通りつつ撃墜数を満たしてはじめてフラグ成立となる。

設定

  • 本作の物語は『IMPACT』以来の3部構成*6。1部→2部では時間の経過はあまりないが、2部→3部では3ヶ月が経過する。これに合わせて3部では『ファフナー』がTV版→劇場版に変化する仕様となっている。
    • 本来は2年経過しているのでやや違和感があるが、「原作では数年が経過しているが、ゲーム中では相応の時間が経過していない」という事例は、過去のスパロボでも少なからず有る。また、『ファフナー』の原作での設定を考えた場合、この時間短縮は非常に大きな救いに繋がるのではないかという見方もある。
  • 本作のオリジナルキャラのデザインは、『L』・『第2次Z』に引き続きchiyoko氏が担当している。

評価点

シナリオ

  • 本作のシナリオは、版権の人物同士のクロスオーバー会話はおろか、シナリオ面での絡みも非常に作り込まれており、さらには『W』などで好評を博した、設定レベルのクロスオーバーも随所に見られる。
  • 新規参戦組の扱い
    • 原作でシナリオの存在しない『フェイ・イェンHD』は、バーチャロン原作者の亙氏による全面監修がなされており、原作OVAが非常に短いためストーリーの薄い『マジンカイザーSKL』と、互いにクロスしつつオリジナル設定とも密接に関わり、設定が大きく補完され、本作のストーリーと世界観の根幹に食い込む程の大きな扱いを受けている。
    • 『機神咆吼デモンベイン』は、シナリオやグラフィックがアニメ版に準じているが、尺の足りなかった部分や設定で削除された箇所をクロスオーバーや細かな会話などで大幅に補完。特に同じアメリカを舞台とした『HEROMAN』との絡みが多い。さらに、原作・外伝小説・続編ゲームの設定も小ネタとして登場し、原作者や原作ファンは歓喜・驚嘆した。
      • 特に原作ではヒロインの一人だったにもかかわらず、アニメ版ではほとんどの設定を削ぎ落とされてサブへと降格したライカ(メタトロンの正体で、本名はライカ・クルセイド)については最大限のフォローがなされ、中盤の灯籠流しで彼女が呟いたとある台詞には多くのファンが溜飲を下げた*7
    • 『リーンの翼』は漫画版のテイストを織り交ぜつつ、『ダンバイン』そして『ラインバレル』とクロスオーバーすることで風呂敷を拡げていく。特に『ラインバレル』は『リーンの翼』に出てくる人物と関わりがあり、そこにはプレイヤーの世界とわずかながらリンクするであろう悲愴な過去がある。
      • そして『リーンの翼』における原作再現では『現実にあった戦争』が描写されることとなった。これはスーパーロボット大戦シリーズにおいて、史上初の試みであった。ゲームとはいえ、心に来たプレイヤーもいるはずである。OVA媒体だからこそ出来た描写をゲームで出来るのかどうか不安視されていたが、これもプレイヤーの想像を上回る再現ぶりを魅せてくれた。
  • 既存参戦組の扱い
    • 『聖戦士ダンバイン』は原作終了後参戦となっているが、「原作終了後だからこそ」という設定・シナリオとなっている。
      • 舞台が共有されている『リーンの翼』とのクロスオーバーはもちろん、終盤では『鉄のラインバレル』との意外なクロスオーバーが用意されている。
    • 原作があえなく打ち切りとなった『忍者戦士飛影』は、謎だった部分をオリジナルの解釈で暗に語っている。さすがに原作未登場の機体までは出れなかったが。
      • 『IMPACT』で経験値泥棒と恐れられた飛影は出現条件が変更されたため、ある程度出現をコントロールできるようになった。とはいえ一度呼んでしまうと経験値を根こそぎ持って行かれることに変わりはないが。
      • 敵役であるハザードは、他作品の悪役の役割を幾つか担っているため、原作の小悪党ぶりが面影もないレベルで悪の主役とさえ言えるほどの強烈な憎まれ役に変貌しており、序盤から最期まで活躍する。
    • 『蒼穹のファフナー』シリーズは、劇場版第1作である『蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』までを再現。DVE*8とユニット数、中断メッセージ及び隠し要素の数は群を抜いている。
      • 後述のように『DESTINY』とのクロスオーバーはもちろん他の作品とも大なり小なりクロスオーバーがあり、シナリオの中核も担っているので必然的に出番が多い。
      • 他作品の人物とかかわり合い、導かれることで自分という存在を確立していく様は原作者である冲方丁氏が掲げているテーマが発揮されているといえる。エンディングの〆も担当し、紡がれてきた可能性の物語を鮮やかに纏めてくれる。
    • 『鉄のラインバレル』は発売当時は第20巻まで発売されており、原作漫画が完結していない*9ため発売前にはどこまで再現するか話題となっていたが、「既刊ギリギリまで再現した上にゲームオリジナルの結末を描く」という驚きの方法で物語を完結させる形となった*10
      • このオリジナルシナリオでは、原作のとある人物が先行登場している。原作者がカットインイラスト等で全面協力しているため、設定面でも協力を受けたとユーザーの間では推測されている。
  • ガンダム関連
    • 『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』は、原作終了後の参戦という立場を生かし、シンが歴戦の戦士として『ファフナー』の登場人物と積極的にクロスオーバーする。また「モビルスーツはフェストゥム(『ファフナー』の敵)対策として作られた」などという発言がプロローグからさらりと飛び出す*11
      • どちらの作品も平井久司氏がキャラデザインを担当している事もあって非常にマッチしており、その違和感の無さと相まってシンは「マーク・デスティニー*12のパイロット飛鳥真」とファンから呼ばれる事になり、さらにはメーカーによる公式ラジオ番組において、杉田智和氏もこの呼称を用いている。
        そしてインパルスガンダムからデスティニーガンダムへの乗り換えイベントは『ファフナー』とのクロスオーバーを全面に押し出した本作屈指の名場面となっている。名前は呼ばないものの専用援護台詞もある。
      • ルナマリアもようやくシンとの合体攻撃が実装されたほか、シナリオ上でも文字通り女房役としてシンをサポートし、『ファフナー』の女性パイロット陣の姉貴分として存在感を放っている。
        さらに時事ネタとして、坂本真綾氏がシン役の鈴村健一氏との結婚発表時に出したコメントが、知らなければわからないほど自然な形で台詞に組み込まれている。
      • 今までは今一つ目立っていなかったアスランも、中盤で「スパロボ一かっこいいアスラン」と評されるほどに活躍する。代わりにキラは若干出番が少なめ*13だが、脇役としてしっかり存在感を示している。
    • 映画版としては初の参戦となる『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』は「相互理解の困難により敵対する金属生命体」という共通点から、敵生命である「ELS」と『ファフナー』の敵生命である「フェストゥム」が緻密なクロスオーバーを見せてくれる。ファンの間では、刹那・F・セイエイを将陵僚*14の再来だとする声も大きい。
      • TVシリーズでは一貫して敵対する立場にあった人気キャラ「グラハム・エーカー」も今作では味方として中盤に参入し、フラグを立てれば最後まで生存させることも可能となっている*15。オリジナル主人公の上官という設定になっているため、序盤から目立つ。
      • ただし、同じく注目を浴びていた「デカルト・シャーマン」は、原作同様ELSに侵食されて死亡してしまう。戦闘アニメが無いため役者の問題*16という説が有力だが、理由は不明。
    • 『SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors』は、今回が初参戦にもかかわらず、原作(アニメ版)終了後という異例の参戦形式となっている*17
      しかし、オリキャラ並の自由度を持って各作品をつなぐ接着剤として機能し、それでいて違和感が全くない*18。彼らを中心としたシナリオも存在する他、終盤のシナリオでは軍師が大きく活躍する。
      • 呂布を含めた主人公格4人は各々の代名詞とも言える「正義」「勇気」「理想」「魂」を精神コマンドとして習得している。
        呂布に至っては、HPを減らして追い込むと「魂ィィィィィィ!!」と叫び、本当に「魂」がかかる。敵として割と序盤から出てくるにもかかわらず毎度このイベントが起こるので、初見はまず唖然とすること請け合い。条件を満たして味方にできた時も特殊能力として再現されている。
  • オリジナル関連
    • 主人公のアニエス・ベルジュ(通称アーニー)は「心優しく正義感の強い新兵」という王道でありつつ、真面目すぎる故か天然ボケ気質の異色なキャラで、好感度もネタ度も高い。
      • ただし第3部での振る舞いに関しては賛否両論(詳しくは後述)。
    • オリジナル主人公機・オルフェスは、その名の由来に反して何故か時代劇「必殺」シリーズのパロディ機体となっている*19。特にサポート機であるライラスとの合体技ヘル・ストリンガーはその極致であり、プロローグでいきなりお披露目し、「必殺」シリーズを知る初見プレイヤーの度肝を抜いた。
      • おまけに最強武器使用時の曲「唸る必殺の一撃」も明らかに「例のあの曲」という拘りよう。ただ、雰囲気はそのものだが聴き比べてみるとだいぶ違うという絶妙なバランスの曲である。ネタ抜きに見ても必殺技に相応しい迫力を持つ良曲である。
      • またオルフェスの前任パイロットであるリチャード・クルーガーに至っては戦闘台詞が必殺シリーズのパロディだらけである。
  • クロスオーバーを抜きにしても、シナリオの質と評価は高い。
    • 一貫して質は高いが、中でも第1部最終話のイベントは本作でもトップクラスに熱いイベントと好評。
    • 今までのスパロボでは、世界観の説明を最初にナレーション文章で行なっていたが、これを廃止。実際のシナリオ内で世界観を見せている。
      • より世界観を実感でき、スムーズにゲームを始められると好評。加えて、そこで設定レベルのクロスオーバーが始まるものだからより引き込まれる。
    • また、ホワイトバックに黒字でテキストが表示されるという演出も使用された。回数こそ少ないものの重要な場面で使われるため、印象に残りやすい。
      • 特にこの演出が使われる中盤のイベントは本作屈指の涙腺崩壊イベントとなっている。
    • 従来ならば隠し人物は死亡後は登場しなくなり、たまに触れられる程度の扱いになるのがシリーズの常だった。
      • 今作ではその点を逆手に取り最終話で思いがけぬ登場を果たすなど、隠し人物を仲間にしなかった展開すらもストーリーにおいて重要な意味を持つ。
    • 全体としても、「命」と「可能性」をテーマとしたシナリオは綿密に練られており、序盤から張られていた伏線が後半に結実する。挙句、周回要素などのメタさえも世界観の根底に据えているほど。
      • 表立って語られないが、その裏には更に緻密な設定が大量に仕組まれている。これらは要点だけが語られるだけとなっており、それを推測・考察する楽しみもある。

隠し要素

  • 総数18個と、前作『L』の二倍以上の隠し要素が存在する。見つける楽しみはもちろんとして、意外なユニットの参戦でもファンを喜ばせてくれる。さらに、隠しユニット参戦時、初回のみそれぞれ既定の上位技能がゲットできる。
    • フラグを立てて参戦した人物は大幅にシナリオに絡む。フラグを立てるのと立てないので2種類(あるいはそれ以上)のシナリオが楽しめると言っても過言ではないほど。また、加入によって使えるようになる合体攻撃なども本作オリジナルボイス多数。
      • 特に、ある人物の生存IF分岐の改変はファンの度肝を抜き、その上シナリオの質も良いとあってネット上で大きな話題となった。ニコニコ大百科に個別記事が作られるほどであり、「この展開を想像できた方がどうかしている」と言われる驚愕のイベントである。それでいて超展開ということもなく、きっちり伏線を張って回収した且つ、その人物の名前とその由来を反映させた上での展開なので説得力も十分にある点がさらに凄まじい。
      • 原作序盤に離脱してしまうはずが中盤で復帰するため、ストーリーへの絡みっぷりも隠し人物の中でぶっちぎり。完全な「IF」を体験できる。戦力としても精神コマンドによるサポート・前線での戦闘どちらもこなせると至れり尽せり。
      • ウィルやマスターテリオン、操、サコミズ王、呂布トールギスなどといった、原作で強敵として立ちふさがったボス敵も多数加入させられるなど、それぞれのファンに嬉しい仕様となっている。
    • また、道夫や翔子も救済要素の対象になっているが、彼らが生存した場合は、成長した美羽や、羽佐間家の養子となったカノンとの交流が見られる。これらは原作でも見られなかった要素で*20。彼ら家族を知る人たちを大いに喜ばせた。
  • スパロボでは定番の説得イベントも存在するが、対象人物の作品だけでなく、各作品の主人公や一部隠し人物ですら説得が可能という前代未聞の内容となっている。
    • 前作『L』での『鉄のラインバレル』の登場人物である中島宗美の説得に、『ガンダムW』の登場人物である張五飛が関わっていたことが当時ネット上で話題になったことを踏まえていると思われる。

ボイス

  • ハードが3DSとなったことで、任天堂携帯機の版権スパロボとしては初のフルボイスとなった。
    • 『ラインバレル』は漫画版の登場人物にアニメ版の声優陣が声を当てる(しかもそれがスパロボ初収録)という珍しい事態となった。もちろん、ちゃんと漫画のセリフを喋る。
      • なお『ラインバレル』のボスはアニメ未登場のためオリジナルキャストとなっている。また、ジャック・スミスのみ声優が変更されている(理由は不明)。
    • 『バーチャロン』のフェイは今回の設定に合わせて過去にフェイを演じていた樋口智恵子氏ではなく、初音ミクの声を担当した藤田咲氏が起用されている。
  • 『ダンバイン』のショウや『DESTINY』のシンなど既存人物の新録も多く、声が付くことで減少が懸念されていた「豊富な特殊セリフ」は今作でも健在。
    • ちなみにシンはファンの間でも評価の高い、高山瑞穂氏の執筆した漫画版の台詞が特殊台詞として採用されており、「シンは高山版終了後の参戦か!?」という声も。
    • 版権作品の本作オリジナル合体攻撃がいくつも登場するが、それらも当然新録ボイス。ファンとしては感慨深いやりとりも見られる。
  • イベント戦闘でも専用のボイスが使われることも多いほか、特定の敵に特定の武器を使うことで専用のセリフに変化することもある。援護でも本来ないセリフをしゃべる場合もあり、戦闘セリフがそっくり新録にさし変わっている者もいる。
  • さらにフェイスグラフィックがないにもかかわらずボイスがあるという声だけ参戦となった者までいる。フェイスグラフィックがあって声がない者は多いが、その逆はかなり珍しい。
    • なお、声だけ登場というのは原作再現である。エンドロールにもちゃんと名前が載っている。担当声優が別の役で出演したからこそ実現した演出といえる。
  • 近年のスパロボでは減少傾向であったDVEも非常に多い。九郎のデモンベイン召喚、総士の「5秒待て」*21、サコミズの「そうでもあるがぁぁぁ!!」など、原作の名台詞はほぼ網羅されている。
    • DVE以外のシナリオ演出も強化されている。
  • 中断メッセージも実装。真面目なものからギャグまで幅は広く、その数も70個以上とシリーズ最多(当時)の膨大さを誇る*22
    • 初回プレイ時のみではあるがゲームの進行に応じて聞けるようになる内容、聞けなくなる内容があるほか、周回プレイを行うことで内容が変化するパターンもある。
    • 隠しフラグの条件を示唆しているものや、ストーリーの伏線になっているものなども存在して奥も深い。
    • 中には中断メッセージでのみ参加している声優すらいるほど。
      • スパロボとは縁の深い人なので別作品の収録のついで録りだった可能性も高い。
    • ある隠し人物に至っては、生存させると見れる期間は短いものの、プレイヤーに感謝の言葉を述べてくれる。原作、本作共に悲劇的な最期を迎えるその人物からのメッセージはファンにとっては感涙物である。

BGM

  • 今作は内蔵音源を用いたBGMとなっている。
  • 曲数自体は『L』とさほど大きな差はないが、エーアイ製スパロボらしく、相変わらず通好みな選曲が光る。
    • アニメ劇中曲を使用した『ラインバレル』や、原作BGMをアニメでも流用している事を逆手に取ってPS2版主題歌の原曲でもあるBGM「機神咆吼 -交錯する刃金と刃金*23」を持ってきた『デモンベイン』、あまり戦闘向きではないと思われた『リーンの翼』の主題歌「MY FATE」、最初は物悲しげだがサビにかかり壮大に『ファフナー』の「マークザイン」をフル尺で採用、EDではあるが激しい曲調であり、今作の雰囲気との親和性も高い『SEED DESTINY』の「Life goes on」など、名曲が数多く存在しており好評。
      • なお、イベント用BGMとして「マークザイン」(サビのみループするショートver)や「Linebarrel」(イントロ付き)も存在しておりこちらも非常に好評。だが、あくまでイベント用で戦闘BGMに設定できないため、それが残念がる声もある。
  • ちなみに今作はイベントにて「Life goes on」や「蒼穹」など、BGMに採用された曲の歌詞を元にしたネタが豊富。
  • フェイのBGMはちゃんとミクによるボーカル付き*24。曲はバーチャロンシリーズのBGMに歌詞をつけたものとなっている。作詞はもちろんバーチャロン原作者の亙氏。ちなみに版権作品のBGMにボーカルが付くのはDC版『α』以来となる。
    • 完全覚醒時に解禁される曲はバーチャロンを代表する名曲「In the Blue Sky ver.HD」。解禁されるタイミングも絶妙で、他作品とのクロスオーバーにも繋がっており、非常に評価が高い。
  • 『ラインバレル』では、アニメ版のラスト付近のファイナルイベントの際の挿入歌である「PROUD」が原作漫画版であるにもかかわらず採用されている。
    • しかも初めて使われる場面はラインバレルのイベントなのだが、他作品の人物が原作漫画版ラインバレルのストーリーの根幹の一部に介入すると言うクロスオーバーの際に使われると言うびっくり箱。
  • 『マクロスF』関連は相変わらず収録曲数に恵まれており、期待されていた「サヨナラノツバサ」は『L』の「ライオン」と同じくパート分けのアレンジが好評。また、「キラッ☆」でお馴染みの「星間飛行」は誰もがアッと驚く演出が用意されている。
    • なお曲数的に優遇されているとは言っても、他作品ともそれほど露骨な差はない。

戦闘アニメ

  • ハードが3DSとなったことでグラフィックも進化。当然裸眼立体視にも対応している。
    • 動きも3Dによる演出を最大限に利用しており、3Dで見た際の迫力はかなりのもの。
    • これまで分身という同じ演出で統一されてきた特殊能力による回避演出が機体ごとに種類が細かく分類されており(ダブルオークアンタの量子ジャンプ、ラインバレルのオーバーライドなど)、種類によってアニメーションの演出も大きく変化するようになった。
  • 『ラインバレル』のカットイン原画の一部は原作者が直々に担当している。
  • 任天堂機*25では切り払いの発生はエフェクトのみであったが、本作では切り払うモーションが発生するようになった。
  • 『L』の「イベント戦闘で撃破する敵は撃破してもトドメ演出が発生しない」という問題点も、オプションでトドメ演出のオン・オフを任意で変更できるようにした事で解決している。
  • また、ガンダム系機体にも『Z』シリーズ同様リアルサイズカットインが採用された。

賛否両論点

ユニット性能面

  • 『蒼穹のファフナー』は、TV版から劇場版に変わるに伴いユニットの性能が変わる。機体性能は上昇するものの武器の性質が大きく変わるユニットも多く、それに伴い使い勝手も大きく変わってしまう。
    • 格闘戦機だったにもかかわらず最強武器が遠距離射撃になるマークザイン、接近格闘機から射撃武器オンリーの戦闘爆撃機になるマークドライ*26、狙撃機体から最強武器が近接射撃になるマークジーベン。最強武装の必要気力が下がった代わりにその他の強武器が弱武器になったマークアハト。スキルパーツが消費型であることも加わって、「格闘主体の機体のパイロットだから格闘を中心に上げてきたのに射撃主体の機体になってしまった」といった事態が頻繁に起こる。
      • 仕様変更はあるもののマークアハト以外は全体的に攻撃力は向上しているため、マークアハト以外は総合的に言えば強化されていると言える。
      • なお、とある隠し機体は特に武装が変化しないが合体攻撃だけは演出が劇場版仕様となる(本作オリジナル)。
    • また、道生はメガセリオンからマークアインに乗り換えるのだが、こちらも乗り換え後の方が弱くなっている。『K』でも機体性能がほぼ下がるという問題を抱えていたが、本作では武器の追加・変更でメガセリオンが更に強化・マークアインが弱体化してしまったため余計酷くなった。原作と違いメガセリオンを喪失していないのに乗り換えができないのも拍車をかけている。
    • また、劇場版からの参戦となるユニットは、残り話数の関係でやや活躍しづらい*27。しかしある時期を境にファフナー系は特殊能力により、一部を除くファフナーを多く出撃させるほどパイロットの能力が底上げされるようになるため弱いわけではなく、ファフナーを主力としているなら出すだけでも価値はある。
  • 敵であるフェストゥムの特殊能力「同化」「読心」が強力で、敵勢力の中では頭1つ以上抜けている。
    • 「同化」はフェストゥムの攻撃すべてに気力低下効果を付与するもの。その際、気力が一定値を下回ると撃破扱いになる。雑魚クラスは無視できなくもないが、後半の敵やボスになるとかなりの低下量となるため非常に強力。さらにほとんどの武器に「バリア貫通」の効果があるため耐久型のユニットでも無効化できない。
      • 『ファフナー』以外の参戦作品では唯一ヒーローマンが「同化」「読心」を無効化できるが*28、回避特化のユニットなため攻撃を食らえば一撃撃破される危険性があるため「同化」無効に関してはあまり役に立ってはいない。
      • SEED系ガンダムのVPS装甲はバリア扱いではないため、ダメージにもよるが「同化」を無効化できる。こちらも回避重視の機体なので過信は禁物だが。
    • 「読心」は命中率・回避率に補正をかける能力なのだが、最終命中率に加算される方式に加え、雑魚でも30%の増加量を誇るなどこちらも非常に強力*29
    • この2つの能力単体の性能もさることながら、それを両方保持している上に「同化」と似たような能力を持つELSと比べて長射程の個体が多く、高いシナジー効果を発揮してしまっている。
    • 逆に言えば「読心」を無効化できるファフナー(とヒーローマン)はフェストゥム戦で非常に有効であり、原作再現となっている。
      • 特にファフナーの後期主役機「マークザイン」は、攻撃が当たればフェストゥムが問答無用で即死する上に自身のHP・ENを回復する*30という、対フェストゥム戦において無類の強さを発揮する特殊能力を備えている。それまで厄介な敵であったフェストゥムをいとも簡単に撃破・吸収していくマークザインの姿はプレイヤーの度肝を抜き、「フェストゥム殺すマン」の異名を頂戴することになった。
  • 敵味方双方のMAP兵器の範囲が控え目になった。
    • 特に味方のMAP兵器は使いやすいポイント指定型が無くなり、強力な全周囲型は範囲や威力が低いものとなっている。
    • 本作では連続行動スキルがあり位置取りがしやすいため、それに合わせたバランス調整と思われる。

アニメーション

  • 3Dによる演出に力を入れたためか、立体視をオフにした場合は前作『L』どころか前々作『K』よりも動かなくなったという批判もある。
    • かといって常時立体視だと目も疲れる*31
    • 3D演出の弊害として、手前に迫ってくる動きが2Dで見ると単なる拡大となってしまい、ドットがさらに粗く見えてしまうという意見も*32
    • とは言え、多かれ少なかれ過去作からの使い回しが出来た『W』、『K』、『L』とは異なり、全てのユニットのドットを新規に作る必要があったため、作業量的に限界があったことは想像に難くない。
    • また、3D抜きにしてもオーラバトラー系など評価されているものも有り、今までのアニメーションはクドすぎるという意見を持つ者からはこのくらいが丁度いいという意見もある。
  • ちなみにスタッフロールでは、戦闘アニメ担当は4名となっている。逆に4名だけであそこまで作れたのか…
    • 次回作の『BX』ではスタッフも増員され、更に一部のロボットグラフィックも流用出来たので作業量に余裕ができたのか、上記の問題点はほぼ全て解消された。逆に一部アニメはくどくなってしまったという問題点もあるが…。

隠し要素

  • 隠し要素の引継ぎについて
    • システムの説明にある通り、本作では隠し要素で助けられるユニットは周回でプレイを引き継ぐ事で無条件で助けられる。
    • この仕様のおかげでスパロボでありがちな「二者択一でどちらかを選ばなければならないフラグ」も、周回を重ねる事で全て満たす事ができる(ただし、ごく一部の生存に関わらないフラグは引き継がれない)。また、生存フラグ系の全ての隠し要素を入手すれば、それ以降は隠しフラグを気にせずプレイできる。
      • いわゆるスパロボ補正による生存処置を望む人や、とにかく死亡してしまう展開は出来るだけ避けたいプレイヤーにとっては周回ごとに誰かを選ぶと誰かが死ぬといった事を避けられるので好評。ユニットとして出来るだけ集めたい人にとっても助かる仕様である。
      • なお、この「周回による隠し要素及び達成条件の引継ぎ」という仕様自体が実は本作のシナリオに関わってくる。シナリオのためにこういうシステムにしたのか、システムの改善を上手く取り込んでシナリオを作ったのかは分からないが、非常に面白い要素と言えるだろう。
    • 一方で死亡する展開もしっかりと見たいプレイヤーにとっては足枷になってしまっている。
      • 一度助けてしまうと引き継ぐ限り死亡イベントが見れなくなってしまうので、こういったプレイヤーからすると「初周は全滅させつつ、次周で見るルートのフラグも出来るだけ立てない」ようにしないといけない。もし1周目で生存フラグを立てた場合や、後々のプレイでまた見たくなった際には、周回特典を諦めて完全に最初から始めないといけない。
      • 生存時は大幅にシナリオが変化し、一部の隠し人物は死亡時限定のDVEも存在する等、死亡時の描写にも力が入っている為、それを聞いて見てみようと思っても助けてしまったデータを引継ぎが出来ない為に不便。
      • 他にも「フラグ無し」「Aのみの生存フラグを立てた場合」「Bのみの生存フラグを立てた場合」「A/B双方の生存フラグを立てた場合」でそれぞれ台詞が大きく変わるシナリオも存在しており、全ての展開を見たい場合はとにかく手間。
      • セーブデータは40個作れるので、死亡時の展開を見たいプレイヤーは「1周目用」の記録枠を残しておくことが推奨されている。

問題点

シナリオ面

  • 版権に関しては非常に評価が高いが、オリジナル人物・機体についてはやや賛否両論。
    • 事前情報で主人公機として紹介されていたライオットBは序盤でしか使えず、リチャード機として紹介されていたオルフェスが前述の通り実質的な主人公機である。ライオットは機体名変更が行えない*33事からも、明らかに「真の主人公機(オルフェス)の前座」という扱いとなっている。
      • オルフェスを効果的に魅せるための意図的な物と思われるが、正統派なデザインや気合の入った戦闘アニメの評価は高く、序盤しか使えない事を残念がるプレイヤーも多かった。
    • 主人公であるアーニーのキャラ性は前述のとおり評価が高いのだが、第3部に入ると戦闘セリフがリチャードに似た「仕事人」風のものに大幅変化する*34。明らかな変化であるにもかかわらずその理由がはっきりと語られず、誰もそれを突っ込まない点には不自然であるとの声も。仲間は言動の模倣先であるリチャードを知っているので敢えて突っ込んでないと考えることもできるが…。
      • 台詞が仕事人になった事よりも、それに伴ってヒロインであるサヤ・クルーガーに対して2部までは「さん」付けだったのが3部から急に呼び捨てになっている事に関する説明がない(インターミッションでも呼び捨てになっている)事を疑問視する声もある。
      • ただし、戦闘セリフの変化こそ第3部からであるが、序盤のライオットに乗っている頃から戦闘前会話で「ド外道」と言い放っており、非戦闘時とは顔つきや口調が大きく異なるなどある程度の二面性が窺える節はある。
      • 尚、2部から3部の間のことはこの件に限らずほとんど説明されない。これ自体は、そもそもこの時間経過が事実上『ファフナー』のためだけのものであり、話題を掘り下げるのが難しいので仕方ない面もある。
    • 主人公アーニーのライバルとして序盤から登場するジンのキャラ性はやや迷走気味で、中盤からの性格や行動はあまり評価されていない(ジンはその事を「道化に過ぎなかった」と語っている)。
      • クロスオーバーに関しても、版権間が著しく濃密な反動もあるのかオリジナル勢は全体的に一歩引いている(従来なら一人くらいはいる頻繁に絡む相手もおらず、徹底して薄く広い)。と言っても影が薄いというわけではなく、主役としての存在感は保っている。
  • シナリオは非常に練られた設定である一方、それを意図的に語らず、プレイヤーに想像・考察させる形をとっている部分が多い。「奥が深い」ととるか「説明不足」と取るかで評価が分かれる所だろう。また、前者でも後者でも、大抵のプレイヤーは『UX』以前に何が起こったのか別の形でプレイしたいと思ったことだろう。原作が終了した参戦作品の数や規模だけで物語一つ作れるレベルである。
    • 説明不足と言っても隠されている部分は人智を超えた領域の話であることが多いので、それを知ることができてしまうのは不自然である、とも言える(例外あり)。
  • 『鉄のラインバレル』に登場する沢渡拓郎は終盤とある展開により物語から退場しオリジナル勢であるノーヴル博士の手引きで潜伏するのだが、その際に語られた「来たるべき時」については謎のままEDを迎えてしまったためかなり残念な扱いになってしまった。
    • もっともこの時点では原作漫画はまだ完結しておらず、既刊ギリギリまで再現しようというファンサービスも込めた苦肉の策だったと思われるが、いたずらに謎を残してしまった感は否めない。
  • 前述の通り『飛影』の登場人物であるハザード・パシャが悪役として非常に存在感を放っているのだが、「冷酷残忍な悪党」としての見せ場が彼一人に極端に集中してしまっている点には賛否ある。
    • また、原作でのハザードは小物感のあるコミカルな言動も見られるキャラクター性だが、今作においては狡猾・残忍な策士としての面ばかりがフィーチャーされており、原作における彼のキャラクター性の再現度は高くない。
      • 一方で戦闘アニメ中の台詞は原作のそれに近いノリで、副官であるドッグ・タックとの掛け合いが非常にコミカル。原作再現度の高い戦闘台詞が、作品の中で逆に浮いてしまうという珍事に(担当声優である青野武氏が本作発売前に鬼籍に入られているため仕方がないが)。
  • 中盤に味方側のパワーアップ→ステージ終了時に別作品(オリジナル含む)の欝展開というステージが、3ステージも連続で起きる。そのため戦闘終了後はせっかくパワーアップしているのに空気が重い。描写自体は必要なものとはいえ、よりにもよってパワーアップステージで連続させすぎである。
  • シナリオのイベントで全体にダメージや気力増減が行われる事があるが、一括に行われるのではなくペア毎に順番に行われるためテンポが悪い。
    • 一応エフェクトの加速はできるが、全体ダメージが5回以上も行われるステージもあるためやはりわずらわしい。

隠し要素関連

  • 上記の後戻りが出来ない仕様上、意図せずフラグを満たしてしまう事を避けるためか、各種生存フラグは非常に厳しく設定されている。
    • 分からないなりに隠し入手の定番プレイをする*35、よほど愛を持って特定の作品に肩入れをする、等といったプレイをしていない場合、攻略情報無しの初見1周目ではほぼ間違いなく1人も生存しない。
    • 特にほとんどのフラグの条件となっている「特定パイロットの撃墜数」が膨大であり、「意識して多用する」レベルでは到底届かず「単独で無双する」レベルでなければならない。全滅プレイでも加算されるものの、後述する撃墜数仕様の存在もあり、周回プレイではフラグ条件となっている者以外の人物を活躍させにくい。
    • 隠しユニットが多いということは、逆に言えば何も意識せずにプレイするとそれだけ多くの人物が(原作通りとはいえ)離脱するということでもある。
      • 原作死亡人物生存などのif展開はスパロボの魅力の1つであり、それを楽しみにしていた(ライト層の)プレイヤーには厳しい仕様と言える。
  • フラグに撃墜数が含まれるパイロットは「その周回の実際の撃墜数が規定数値を満たしたか」で判定されるようになった。これは初期値や未選択分岐、レア特殊スキル等での増加分を省いた数で、全滅した場合は加算されたままとなる。
    • しかし、ステータス画面に表示される撃墜数は初期値・周回引き継ぎ・未選択分岐等を加算し、全滅プレイ時は加算されないと言うもので、隠しフラグの仕様と無関係になってしまっている。そのため、表示撃墜数と周回内実撃墜数の差異をいちいち意識しておかなくてはならない。
    • さらに、本作は各パイロットの初期撃墜数を決定する計算式の関係で、撃墜数が非常にカンストしやすい。そうなってしまうと、自分で何機撃墜したかをカウントしなければならない。
      • 前作『L』のミシェルバグ*36の反省からこのような仕様になったと思われるが、それならせめて周回内撃墜数の表示もして欲しかったところである。
  • そのほぼ全てが生存フラグだけのため、隠し要素解禁で初めて姿を現す完全隠し機体やパイロットが一切ない。ただ膨大なドット戦闘シーン作成や、音声データの面を考えると仕方がないという意見も多い。それに近年のスパロボでも隠し機体やパイロットは一作品で数えるほどしか出ていない場合がほとんどである。
    • 唯一フラグが次周に引き継がない隠しユニットに関しては「中盤の分岐で特定のルートに行く」という簡単な条件だが、性能としても有用な精神コマンドを持つため、他の隠しユニットのフラグを満たしている場合、加入しないルートに行く旨みがないという問題も抱えている。

もっとも、前述したとおり今作の隠し要素は達成が難しいうえに数も膨大なので、引き継がない場合は更なる阿鼻叫喚になったことは想像に難くない。

UI関連

  • 本作では十字キーにカーソルの移動、マップの拡大・縮小がアナログパッドに割り振られている。タッチパネルは完全非対応。操作しづらいと感じた人も少なくない。
    • 『L』同様クイックコマンドがあるが、『L』と違いXボタンによる操作ができずYボタンのみになっている。
  • 3DSの仕様でセレクト・スタートボタンの機能が統一されているため、『第2次OG』のように特殊能力の解説などが能力場面でボタン一つというわけにはいかないのも難点。
  • 精神コマンドの仕様変更
    • 従来は他者に精神コマンドをかける際はアイコンを直接指定していたが、本作では専用のリストからかけるユニットを選択する形になった。
    • マップ上から直接かけるユニットを選べた今までの方式に比べ、逐一全ユニットのリストからコマンドをかけるユニットを探さなければならず、慣れているプレイヤーからすれば面倒なことこの上ない。
    • 「精神コマンドをかけたい方のユニットから、特定の精神コマンドを持つパイロットをリストアップする」こともできるので、こちらを習慣化すれば概ね解消できるが、仕様そのものには問題があると言わざるを得ないところである。

ボイス

  • 戦闘時、特定の味方同士だと発生する掛け合いボイスがシングルユニットによる「援護攻撃」時のみ再生され、パートナーユニットによる連続攻撃では再生されない。
    • 今回のシステムでは、「連続行動」を活かして無双するなどの明確な目的がなければパートナーユニットとして運用するのが基本であり、汎用セリフしか再生されない事態が発生しやすい。

ダウンロードコンテンツ関連

  • ツメスパと違って通常プレイ同様に確率によるミスが発生するので、外れる事も考慮してプレイしていると結構時間がかかる。中にはマップ兵器で3体同時撃破を求められるのもあるためなおさら。
    • 後述の戦闘アニメのフリーズバグの存在もあるので、長丁場になる場合は戦闘アニメをOFFにしてプレイした方が良い。

バグ

  • 本作では戦闘アニメのフリーズバグがいくつか報告されている。
    • 『デモンベイン』のものはその発生条件から「ある意味原作再現」と言われてしまっている。
  • また、特定の操作をすることで本来払い戻されるべき資金が払い戻されなかったり、加入するべき隠しユニットが加入しなかったりといったものもある。

その他

  • SUのみで行える全体攻撃を使うと、獲得経験値が半分になるが、PUが解禁されて以降の敵はボスを除いてほぼPUのため、SUだと経験値が下がりがちになる。
  • 全体的な難易度はそれほど高くはないが、初見殺しのマップもある。
    • 特にとあるマップにおいて、撃墜するとゲームオーバーになる敵ユニットを容赦なく撃墜するNPC機については、大きく話題になった。
    • 敵の思考ルーチンは『L』と同じで、HPが高いユニットを優先的に狙う。撃墜寸前のユニットを無視して無傷のユニットを狙う事もあり、やや不自然に見える。

総評

発売前は「あまりにカオスな参戦作品群を纏めきれるのか」と不安視する声も多かったが、いざ発売されてみるとプレイヤーの想像を遙かに上回る良質なクロスオーバーとIF展開、豊富な隠し要素によって前評判を見事覆した。
UIやオリジナルキャラについては批判点も散見されるのでこれらは次回作以降の改善に期待したいところであるが、新ハードのスパロボとしては十分以上の出来。
参戦作品のファンはもちろん、スパロボならではの壮大なストーリーを求めるユーザーにこそ、是非ともお勧めしたい傑作である。


余談

  • チーフライターである岸本みゆき氏はかつて『三国伝』のシナリオに関わっていた経歴を持つ。原作スタッフがスパロボに監修として関わったケースは多いが、スパロボスタッフとして直接関わるケースは珍しい。
    • ちなみに、オリジナル機体のデザインとして参加している寺島慎也氏も『三国伝』のメインスタッフである。
      • 補足すると、寺島氏は以前からスパロボオリジナルメカのデザインを行っており、今回が初参加というわけではない。他の代表作としてはヴァルシオーネR、ネオ・グランゾン、バラン・シュナイルなど旧シリーズから登場する機体がほとんどであり、むしろ久しぶりの参加と言える。
  • 『デモンベイン』の原作ゲーム版を製作したニトロプラスは、2013年のエイプリルフールネタとして『渾沌大殲』を発表した(クトゥルフ神話を扱った作品のオールスターゲームという触れ込み。現在は閲覧不可)。キャッチコピー、サイトの構成を含めて本作のパロディとなっており、さらに許可を取ったうえで他社の作品まで出演させる、描きおろしイラストを多数用意する、と異常なまでに気合が入っている。そんなに『デモンベイン』のスパロボ参戦が嬉しかったのだろうか。
  • 『デモンベイン』の原作ゲーム版でエンネアを演じた成瀬未亜氏は引退していたため声優が柚原有里氏*37に変更されているのだが、当の成瀬氏は本作発売後に声優活動を再開した。
  • 本作の発売後に上映された『ガンダムSEED FREEDOM』では、フェストゥムと同じく読心能力を持つ敵を相手に、シンが縦横無尽の活躍を見せる描写がある。監督の福田氏はスパロボでのSEEDの活躍を大いに歓迎していることから、あるいは本作をある程度参考にした可能性がある。
  • スパロボ恒例の乳揺れカットインは今回は存在しない*38。その代わり、デモンベインのレムリア・インパクト使用時には前代未聞のパンモロカットインが拝める。これには乳揺れに慣れたプレイヤー達も唖然とした。
    • れっきとしたアニメ版演出の再現ではある*39のだが、作画演出が原作アニメより改善されているという謎の徹底ぶりである。
  • 本作に登場するザコ敵は言葉を発しないものが多く、45話を最後にボス以外の敵は一切喋らなくなる。
  • それまでは 「経験値泥棒」 と呼ばれた飛影だが、本作ではあるステージにおいてうっかり呼び出してしまうと、 撃墜するとゲームオーバーになるとある敵キャラを真っ先に狙い、真っ先に撃墜してゲームオーバーになる*40という、有難迷惑も甚だしい事をやってのけた。そこから 「勝利条件泥棒」 なる新たな渾名を得て、ますますネタっぷりに拍車がかかってしまった。
  • 出典となる原作は違えども初代から必ず登場していたマジンガーZと、パイロットの概念が導入された『第2次』からマジンガーのパイロットとして出演し続けていた兜甲児がどちらも初めて(かつ現時点では唯一)欠席した版権スパロボである。
  • 石丸博也氏、飛田展男氏、矢尾一樹氏の3人は声がつくようになった『第4次S』から声有りの全ての作品(OGシリーズ除く)に出演していたが、本作で石丸氏と飛田氏の皆勤記録が途切れ、シリーズ皆勤は矢尾氏のみとなった。矢尾氏も後の『BX』で不参加だったため皆勤が途切れている。
  • 2015年5月31日のニンテンドーダイレクトで、次回作『スーパーロボット大戦BX』の発売を記念して、6月30日までの期間限定でDL版がおよそ半額の3800円で購入できるセールが開催された。
    • なお、評価の高さゆえか発売から2年以上経過した2015年当時でも中古市場にあまり出回っておらず、4,000円前後の高値をキープしていた。
  • ニコニコ動画に『ファフナー』の映像+『DESTINY』の「Life goes on」という本作と全く同じ組み合わせのMADが投稿されており、『ファフナー』原作者の冲方氏も視聴したという逸話がある。
    • なお上記MADは2007年時点でオリジナルが削除されており、投稿は本作発売よりも遥かに先である。
  • 本作の隠し要素について
    • 上記の通りフラグを引継ぎ仕様のために生存時の状況がプレイヤーによって異なることが多く*41、発売当初は正確な生存条件の割り出しに相当な時間を要した。
  • 2022年10月31日をもってダウンロード版の販売が終了した。これに伴いDLCも購入不可になった。

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最終更新:2024年03月24日 19:58

*1 原作が成人指定という区切りで言えば『冥王計画ゼオライマー』という前例はある。

*2 パイロットの気力が一定以上の時に敵を撃墜すると、1ターンにつき1回だけ再度行動可能になる特殊能力。

*3 得られる効果はシナリオが進むことによって増加する。

*4 初期状態だとプレイヤーフェイズ時の攻撃力が10%上昇。中盤でサイズ差補正無視、終盤に差し掛かるところで地形適応1段階上昇の効果が追加される。

*5 周回数に応じて還元率が設定されている資金とは違い、入手したスキルパーツが全て還元される。ステータス強化系のパーツも全て元通り。

*6 ただし、一つ一つはIMPACTほど長くはなく、主人公も変わらない。

*7 灯籠流しは『ファフナー』原作の第20話の再現だが、これまで通ってきたルートによって会話が変化するという濃いイベントになっている。

*8 ドラマチックボイスイベント。戦闘中ではなく、シナリオ中にボイスが出力されるイベントのこと。

*9 本作発売から2年後の2015年に最終回を迎えた。

*10 原作が未完であり、スパロボオリジナルで決着を付ける展開は『COMPACT2』での『ダンガイオー』などの前例がある。あちらは原作打ち切りで、こちらは当時原作連載中という違いはあるが。ちなみに、結果としてスパロボ補正で救われた人もいる。

*11 実際にフェストゥムの特殊能力である同化はGNフィールドなどのバリアは貫通するが、VPS装甲で防ぐことができる。ゲーム上の仕様ではあるが、結果的に上記の台詞の説得力が増している。

*12 ファフナーの機体は「マーク・○○」と呼ばれるため。また、「○○」の部分は全てドイツ語のため、「マーク・シックザール」(「運命」のドイツ語訳)と呼ばれることも。

*13 そのぶんツメスパロボでは出番が増えているし、ストライクフリーダムのMAP兵器の性能と相俟って能力は僅かにチートに届かない程の一線級。

*14 『ファフナー』の前日談である『蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT』の主人公。声は刹那と同じ宮野氏が担当している。

*15 原作でも生存していることがのちに判明するが、本作発売当時は死亡したものと思われていた。

*16 本職は俳優の勝地涼氏。ただし、『SDガンダム Gジェネレーション オーバーワールド』では声付きで出演している。

*17 これが初というわけではなく、『SC2』の『マクロスゼロ』、『NEO』の『アイアンリーガー』もこの扱いを受けている。

*18 ちなみに『三国伝』の脚本及び漫画版の構成を務めていたのが本作のチーフシナリオライターである岸本みゆき氏。

*19 なお、『必殺仕事人』は岸本氏の大好きな作品で、氏の同人時代の作品『仮面ライダーヴァルゴ』でも外伝で使っていた。

*20 「EXODUS」でカノンと翔子が会するシーンはあるが、翔子役の松来氏が鬼籍に入っていたため、会話自体はなされなかった。

*21 本当に5秒待たせるので、うっかり飛ばしてしまわないように注意。

*22 後に『第3次Z時獄篇』がこれを上回った。

*23 作中では「機神咆哮」と誤植されている。

*24 ミク・フェイ役の藤田咲氏が歌ったものではなく、ニコニコ動画等で有名なプロデューサー達が「初音ミク」を使用して製作している。

*25 『GC』、『NEO』は切り払い自体がない。

*26 ただしパイロットの咲良のステータスが射撃寄りに変更され、機体ボーナスも射撃仕様になる

*27 そのためか、ツメスパなどには頻繁に登場する。

*28 ゲーム中の戦闘前セリフに「読心を警戒して戦え」という旨のセリフがあるためこのことに気づかなかったプレイヤーも多い。

*29 ファフナー系やヒーローマンなど一部の機体で無効化できる他、「指揮」など他の補正は「読心」よりも後に適用される。

*30 通常通りHPを0にして撃墜した場合は回復しない。

*31 開発側もそれを意識してか、目の疲れに関する中断メッセージを多く取り入れている。

*32 とはいえ、2Dキャラのスパロボ、特に任天堂携帯機では以前からある現象である。

*33 オルフェス及びその後継機は主人公がパイロットになってから変更可。

*34 人格そのものが変わったわけではなく、「戦闘中はそのように振る舞っている」という方が近い。なお瀕死時は余裕が無くなってか言動が素のアーニーのそれに戻るためリチャードを意識しているか

*35 各作品の主人公の撃墜数稼ぎや主人公によるボスの撃墜等。

*36 撃墜数がシナリオ前から規定以上増えていると生存、という条件だったため、途中でカンストしてしまうと満たせなくなってしまう。

*37 漫画連載も持つ異色の声優で、声も顔も成瀬未亜氏そっくりでオマケに連載している漫画の絵柄まで成瀬氏にそっくりで極め付けに公開されている出身地と誕生日が二人とも同じなのだが、公式で同一人物であるというアナウンスは無い。

*38 飛影の登場演出で胸部装甲が揺れる画があり、これを「乳揺れ」とするファンも存在する。

*39 原作ゲーム版デモンベインには、(大元の18禁版も含めて)この演出は存在しない。

*40 通常なら一発は耐えきれるが、飛影の攻撃がクリティカルしてしまうと撃墜される上に、飛影の技量がとびぬけて高いので、攻撃されたらまずクリティカルすると思っていい

*41 あるプレイヤーは周回内でA/B両方の条件を満たして生存したが、別のプレイヤーは(前の周回でBを満たしていたため)Aしか満たしていないが生存した、など。