魔界塔士Sa・Ga

【まかいとうしさが】

ジャンル ロールプレイングゲーム
高解像度で見る 裏を見る
対応機種 ゲームボーイ
メディア 1MbitROMカートリッジ
発売・開発元 スクウェア
発売日 1989年12月18日
定価 3,500円
判定 良作
ポイント GB初RPGにしてスクウェア初のミリオンヒット
そうだいなストーリーのゲームです!(自称)
これも いきもののサガか…
ラスボス一撃死を含むバグすらも魅力に
サガシリーズ


概要

ゲームボーイ初のRPG。後に20年の歴史を誇ることになったサガシリーズの祖となる作品で、斬新なシステムが多い。

開発段階での仮称は『ファイナルファンタジー外伝』であり、「エクスカリバー」「フレア」など、武器や防具、魔法やアイテム、モンスターの名前や能力などにFFシリーズと共通のものが見られる。
それがサブタイトルになって発売された『聖剣伝説 ~ファイナルファンタジー外伝~』とはある意味対照的であると言える。


特徴及び評価点

基本的なゲームシステム

  • 4人編成でパーティを組み、複数の世界をつなぐ「塔」の頂上にあるという楽園を目指すことがストーリーの目的となる。
    • 塔の特定の階層から冒険の舞台となる世界に繋がっている。一つの世界が大陸一つ分と思ってもらえば良い。その世界をクリアすると塔の更なる階層に進むための鍵が手に入る。
      メインストーリーが展開される世界は4つだが、それ以外にも任意で行くマップ一つ分程度の小世界が幾つも存在し、同じく塔から繋がっている。
  • どこでもセーブ可能
    • 携帯ゲーム機での配慮のためかダンジョン内やフィールド上や町の中でもデータのセーブができる。
  • ドラゴンクエストシリーズのような敵を正面から見たような視点の戦闘画面。
    • 戦闘はターンごとに、まずパーティー全体での「たたかう」「にげる」を選び、「たたかう」ではその後各自の行動として予め装備した武器やアイテム、習得している能力から選択する形。
    • 後述するように、ほとんどのコマンドには使用回数制限がある。
  • 宿屋に泊まっても回復しない状態異常が4つある。
    • 該当するのはHP0で戦闘中一切行動できなくなる「死亡(しぼう)」、HPとは無関係に一切行動できなくなる「石化(いし)」、命中率が低下する「盲目(もうもく)」、防御力が半減する「呪い(のろい)」。うち前2つは味方パーティー全員がどちらかの状態になると全滅でゲームオーバーになりタイトル画面に戻され、全滅前にセーブしたデータからやり直しとなるため、放置すると厄介。
    • 回復にはそれぞれ特定のアイテムが必要。「死亡(しぼう)」は「いきかえり」、「石化(いし)」は「金の針(きんのはり)」、「盲目(もうもく)」は「目薬(めぐすり)」、「呪い(のろい)」は「十字架(じゅうじか)」が回復アイテムとなるが、「死亡(しぼう)」は復活の館でお金を払うことで、他3つは全回復アイテムの「エリクサー」でも回復できる。他に「死亡(しぼう)」「石化(いし)」以外はモンスター能力の「治療(ちりょう)」、「死亡(しぼう)」はモンスター能力の「レイズ」でも回復可能。

斬新なシステム

  • まずは成長システム。このゲームには他のRPGによくある「経験値」や「レベル」の概念がない。キャラクターの種別によって成長方法が異なる。
    • 人間は店で売っているアイテム「力の素」「素早さの素」「HP○○○」を使うことでのみ成長できる。魔力は基本的に上がらないため魔法はうまく使えない。
      • 強くなるのにお金がかかるが、逆に言えばお金があれば簡単に強くなれる。「力の素」「素早さの素」は価格は一定のため、獲得資金の低い序盤では育てにくいが終盤になると簡単にカンストさせられる。能力値に依存しないグループ攻撃武器もいくつかあるためそれで終盤まで乗り切ることも可能である。
      • HP増強アイテムに関しては「HP200」「HP400」「HP600」の3段階に分けられており、価格や手に入る階層も段階的に上がるようになっている。上げやすいため最初のうちは他種族よりもHPを高めにしやすい。しかし、使用者のHPがアイテムの数値に到達するまでは5~20ポイント成長するが、数値を上回った場合は1ポイントずつしか成長させられないため、基本的には人間の最大HPは600程度で打ち止めとなる。もちろんそこから大量の「HP200」で1ポイントずつ上げて無理矢理999にできないこともない。
        またHP600は5000ケロもするので、1ずつ上げる手間を面倒に思わないなら最大HPが400を超えたらHP200(1個100ケロ)をガバ買いして投与したほうがコスパが圧倒的に良い。幸いと言うべきかHP600を買える場所ではちょっと足を伸ばせばHP200が売っているため、そのために時間をかけて大戻りする必要はない。
      • アイテム・装備品を8つ持つことができるが、逆にアイテムや武器を使わなければ何もできず、防具なしでは防御力も耐性も無い。
    • エスパーは突然変異で能力の成長や特殊能力の習得が発生する。
      • 敵の強さは関係ないため、戦い続ければ序盤でも最強クラスの能力にすることも可能。成長率は低いが「ぼうぎょ」も成長することがある。
      • アイテム・装備品は4つしか持てない。その一方で魔法の本などのエスパー専用アイテムも存在するので装備の取捨選択に悩みがち。
      • 特殊能力には使用型のものと、耐性や先制攻撃に関わる常在型のものがある(モンスターも同様)。
      • アドベンチャーズギルドで入れた場合階層によって最初から持っている特殊能力が変わる。
    • モンスターは敵を倒したあとに出てくる肉を食べることで別のモンスターに変化する*1
      • 食い合わせとモンスターレベルで次に変化するモンスターが決まり、強くなることもあれば弱くなることもある。HPや能力の使用回数は変身すると回復する。博打性もある一方、食い合わせを理解した上でモンスターを中心にして進めれば非常にスムーズに攻略可能。
      • うまくすればスタート直後に準最強クラスのモンスターまで変化することも可能。
      • アイテム・装備品は一切持つことができない。
    • 非レベル制は、本作のディレクターである河津秋敏氏がゲームデザインを務めた『ファイナルファンタジーII』とも共通する成長システムである。
  • 回数制の採用。武器やアイテム、エスパーやモンスターの能力には使用回数がある。
    • 能力は宿に泊まれば使用回数が回復する。武器やアイテムの使用回数は回復方法がほとんどなく、回数がゼロになると消えてしまうため、予備を用意したり新しいものを買ったりしないといけない。
    • 終盤になると、武器やアイテムの使用回数を回復する「けんじゃのいし」というアイテムが買えるようになる。高価だが、終盤の武器に比べれば安い。
    • 一部、回数がなく無制限に使えるものもある。
  • 武器属性が相手に特効でクリティカルすると敵を即死させる。アンデッド特効のサンブレードでアンデッド化した四天王2たちが一瞬で溶ける…。
  • 死亡した主人公と仲間はお金を払って生き返らせてもらうのだが、「ハート」の残数分(初期数は3個)しか復活できない(ハートは店で売っていて補充可能、しかし高価)。『ロマンシング サ・ガ2』から採用される「LP」の前身ともいえる。
  • 余談だが、これらのシステムは続編『2』ではほぼ踏襲されたものの、さらなる続編『3』では経験値とレベル制が導入され、上記のシステムがほとんどなくなるか別物となっており、遊びやすくなった一方でシリーズファンからはかなり不評であった(もちろん1、2のシステムは複雑でわかりにくいという声もあったが)。
  • 後述するネタ要素が先行しがちの作品であるが、短時間で遊べるようにするための成長システムやどこでもセーブできるシステム、シナリオの適度なボリュームとテンポの良さ等、携帯ゲーム機ならではのRPGの形を初作ながら完成させていたという点は評価できる。

殺伐とした舞台背景・衝撃的なシナリオ

  • サガシリーズを物語る、殺伐とした要素もこの作品から始まった。また、こうした殺伐とした舞台の雰囲気に合わせシナリオ(イベント)も斬新で印象に残るものが多い。
    • たとえば最初の大陸世界での重要なアイテム「キングの鎧」「キングの剣」「キングの盾」のうち、「キングの鎧」は王の悩み事である村の娘を盗賊から救うことで平和的に入手できるが、「キングの剣」は剣の王を倒して、「キングの盾」は盾の王を暗殺した大臣を倒して、文字通り「殺してでもうばいとる」。
  • 仲間を入れ替えたいときはアドベンチャーズギルドで新しく雇うのだが、生きている仲間は「おれはいやだぜ」と言って、外すことができない。ただし死んでいる場合は死人に口なしなので、そのまま新人と入れ替えられる。
    • ハートと復活にかかるお金*2を考えると、ハートを切らしてしまったら、入れ替えたほうが安上がりであることが多い。とはいえハートの値段は一定のため、稼ぎの増える終盤には相対的に安くなる。
      • 特に、肉で金や時間をかけずに成長できるモンスターについては顕著に使い捨てられやすい。ただし、最高位のモンスターは二度と仲間にできないので高価なハートを惜しまずに復活させてやる必要がある。
    • また、シナリオが進むとギルドのメンバーも強化されるため、あまり育っていない仲間を意図的に殺して入れ替える場合もある。
      後の『ロマンシング サ・ガ2』の「謀殺(暗殺、ルドン送りなどとも呼ばれる)」の原点ともいえる。
    • もちろん、思い入れがあれば多少効率が悪かろうが同じキャラを使い続けることは可能。編成の自由度は高い。
  • そして台詞回し「てめえの ようなやつが 1ばん むかつくんだよ!」(前述の大臣を倒した直後)、「なんの ようだ!」(お店の店員)、「しりたがりやは わかじにするぞ」(空中世界で白虎の親衛隊になって、白虎からジャンヌの話を聞いたあと)、「○○は しんだ」(戦闘シーン)などが殺伐とした世界を演出している。
    • 都市世界でも倒れている人を見て言う台詞が「しんでるぜ」これだけ。
    • 一方で河津秋敏氏が絡んだ作品特有の珍妙な迷セリフも健在である。
  • 小世界で発生するサブイベントにはシュールかつ印象的なものが多い。
    • 19階~21階のイベントは、表現力に乏しいハードだからこそできたイベントともいわれる。
  • また、空中世界のミレイユは時々「スクウェア三大悪女」に数えられる。白虎に捕まっていたと思いきや…。*3
  • 世界観そのものも斬新。最初こそ一般的な中世ファンタジー風の様相だが、塔を登るにつれて竜宮城やら、雲の王国やら、現代風の街やらが登場する。上層に進むにつれて、退廃的な雰囲気が濃くなっていくのも特徴。ただし「魔界」は無い……まあ、このカオスな構造そのものが魔界的というイメージタイトルなのだろう
    • 装備品もまた斬新。剣や斧のような中世ファンタジーでおなじみのものはもちろん、パンチやキックといった技、デリンジャーやサブマシンガンといった銃火器、ビームライフル、ライトセーバー*4などのSF武器。はては波動砲*5や核爆弾まで装備できる。まさになんでもありである。
    • 防具も鎧、盾、兜といったファンタジー系恒例の物だけでなく現実世界から「アライのメット(モデルはもちろん頑丈さで名高いアライヘルメット)」が高い防御力を引っさげて登場している*6
  • 極め付けは、塔の頂上・楽園で待つ者である。
+ ネタバレ。関連動画もあり。
  • その待ちうける者「かみ(神)」が語る真実とは「平和な世界に飽きたため、世界を乱す者(=アシュラ)を生み出し、さらにそのアシュラにも飽きたため、今度は人間達に楽園の話を広め、彼らを観察していた」のだという。要は「神様が作った壮大なゲームの中で踊らされていただけ」ということである。
    • この真相が明かされるやりとりはいまだにネタにされており、ゲーム史に残る伝説となっている。
  • そしていよいよ「かみ」との決戦を迎える。ラスボスだけあって戦闘能力は強大なのだが、なんと店で普通に売っている「チェーンソー」で一撃必殺が可能だったりする*7。チェーンソーは一撃で相手を倒す即死系の武器で、本来は「相手の防御が低いと成功する」仕様になるはずだったのだが、バグで「相手の防御が高いと成功する」ようになってしまった。さらに、本作の敵はチェーンソーに対する耐性を持たないため、防御が極端に高い「かみ」は、チェーンソーで簡単にバラバラにできてしまうのである。
    • バグのためにこんなありさまとなってしまったのだが、このことが逆に「かみ」のインパクトを絶大なものにしてしまった。「かみは バラバラになった」というメッセージ、直後のエンディングでの一言目「やっちまったぜ…」とともに、ゲームファンに散々ネタにされている*8
    • 結果的にバグが作品の画竜点睛になったという稀有な例といえるだろう。ある意味ではサガシリーズの今後を暗示していたともいえるかもしれない。
    • チェーンソーの攻略法のみ目立っているが、正攻法で倒したときのみ見られるメッセージ「かみは しんだ」もかなりインパクトがある*9。GB版ではチェーンソー使用時にはこの文は表示されないのである(移植版では表示される)。どちらをとってもなかなか趣がある。
+ 関連動画

音楽

音楽はFFシリーズの植松伸夫氏が担当した。

  • 「涙を拭いて*10」「魔界塔士」「怒闘」が特に名曲としてあげられる。
  • BGMの切り替えタイミング等による演出が秀逸で、本作を印象深い作品にした要素の一つ。
  • 曲数は15曲と多くはないが、当時の基準としてはじゅうぶん以上であり、ゲームプレイ中に不足を感じることは少ない。
    • 携帯機でありながら、FFシリーズよりも先んじて「通常戦闘・中ボス・ラスボス」でそれぞれ1曲ずつ用意しており、そのどれもが名曲である。

賛否両論点

  • 本作を語るうえで外せないものとして「バグ」の存在がある。
+ 一例
  • メニューの「のうりょく」の欄でAボタンを一度押してからキャンセルすると、たいていバグが発生する。
    • フリーズすることもあるが、人間をモンスターに変えることも可能。また、場合によっては超級のバグも…。
  • 特定の名前の主人公がいる時に、ある手順でならびかえを行った後に「ちからのもと」などをBボタンを押して使うと、パラメータがハングまたはループして、いきなり最強になれる。
    • これの応用で、アイテム変化や使用回数無限化もできたり、エスパーやモンスターに「素」を使って強化したりもできる。
  • 扉などに入ると同時にメニューを開いてセーブ&リロードすると、まったく異なる場所に移動できるところがある。
    • このワープ技を解明、利用してタイムアタックをするプレイヤーもいた。
  • 都市世界に登場する「そうちょう」は壮絶な特攻死を遂げるが、フラグ設定ミスのせいで、このイベントを何度も起こせる。
    • この際に本作で最有用といえる防具が手に入ることもあり、そうちょうはプレイヤーによって何度も甦らせられては特攻死を遂げていき「不死身のそうちょう」としてネタにされるのであった。
    • ジャンヌの死も総長と連動しているため、何度も起こせる。意味がまったくないのであまりネタにはならないが、名場面が一気に迷場面になってしまうポテンシャルを秘めている。
  • チェーンソー(のこぎり)の神殺し仕様も、上述のとおりバグである。「やっちまったぜ…」
    • チェーンソーのバグは後期版ROMやリメイクでもそのまま残されている。河津氏のコメントによると、好評だったので残したとのこと。ちなみに「どんな攻撃も通用しないバリアをはっている」という設定のボス(都市世界の「すざく」)が存在し、特定場所で通常の敵のごとくエンカウントするのをプレイヤーはひたすら逃げるのだが、そのバリアもチェーンソー(のこぎり)で一撃である。そして死んだハズなのにエンカウントしてくる。もちろんこちらのバグもラスボスチェーンソー(のこぎり)バグ同様、リメイクで残された。
  • これだけバランス崩壊級のバグがあると普通は批判されてもおかしくないところだが、本作の殺伐かつ混沌とした世界観と、なんでもありのフリーダムなバグがマッチしていたこと、バグ自体も理解すれば有用なものが多いことなどから問題視されることもなく、バグが本作最大の魅力とまでいわれるようになってしまった。「プレイヤーに有利なバグは容認される」ことの典型例といえるだろう。
  • なお、上記に挙げたバグは主に初期版ROMのものであり、後にバグの一部が修正された後期版ROMがリリースされたため、異なる2つのバージョンが存在する。
    • 簡単な見分け方として、ステータス画面で「ちから」と表示されているものが初期版、「こうげき」と表示されているものが後期版である(「ちからのもと」の名称はどちらも変わらず)。
    • 後期版でも一部残っているバグはあるものの、上記に挙げたようなゲームに多大な影響の出るバグは概ね修正済。これによりゲームを崩壊させるようなぶっ飛んだ遊び方はできなくなった反面、フリーズバグ等も消滅しているため安心して遊ぶことができる。

問題点

  • エスパーの成長がランダムで、ある能力だけが強くなりすぎることがあったり、なかなか成長しなかったりとバランスが悪い。
    • 特殊能力にしても「スーパーパワー」で(一時的とはいえ)力が一気に99になるといったように極端なものがある。
    • 能力の成長、特殊能力の習得とも、メッセージがいっさい表示されない。失いたくない特殊能力がある場合はこまめにセーブし、ステータス画面をチェックする必要がある。
    • リメイク版ではそれらのメッセージが出るようになった。
  • 通常の雑魚モンスターの肉の食い合わせの中に、ドラゴン系になるものが含まれていない。
    • 6体いるドラゴン系に変身するには、戦闘機会の限られるボスモンスターの肉を食うしかない。うち1体はアドベンチャーズギルドで仲間にできるが3体は四天王・青龍の肉でしか変身できない。WSC版の「モンスター図鑑」を埋めるためには複数回のプレイが必須である。
    • WSC版は「モンスター図鑑」のためか敵モンスターのレベルを調整して仲間にできる系統は全員仲間にできるようになったが、ドラゴン系に関しては却って問題点が浮き彫りになってしまうことになった。
    • ドラゴン系は最初のうちは強いので「特別な肉でなければ変身できない」というのは意味のあることではある。ただし終盤には優位さはなくなる。
  • 容量の都合で仕方が無いのだが、主人公や仲間たちは、種族・性別に関係なく、全員が同じ口調である。それもかなり乱暴な言葉づかいが多い。女性キャラが男口調だったり、モンスターがべらんめえ口調でヨイショするなど、キャラのイメージにまったくそぐわない台詞が多々。
    • GB版では仲間を加えずに進めると、仲間のセリフが出る場面でフリーズしてしまう。このため一人旅はできない。
      • WSC版ではフリーズしなくなったので一人旅も可能。
  • アイテム欄が8個しかない。一応、各キャラ装備中の装備品は別欄で扱われるが…。
    • 捨てることは可能だが、重要アイテムでさえも簡単に捨ててしまえる。再取得不可能なものを捨てたら詰みである。
  • 最強魔法アイテム「フレアの書」購入の便が悪い。
    • 10階の空中世界の隠れ町(グライダーでしか行くことができない)にしか売っておらず、しかもその世界を攻略中に50000ケロは高額すぎてまず買えたものではないし、買えたとしてもその時点では完全にオーバースペックすぎて不要。
    • 空中世界をクリアして「涙を拭いて」がかかっている間は隠れ町には入ることができず、塔に入るとグライダーが消えてしまうので二度と買えなくなったと誤解したプレイヤーもいた。
      • 実際にはクリア後一度塔に入って出て(「涙を拭いて」状態を解除して)もう一度酒場の町に行くと再度グライダーを貰いなおすことができ、それを使って移動することで買える。が、気付きにくい点であるし、知っていてもラストダンジョンへの道を開いた後だと10階に行くためにはテレポートやドアが必要で、さらに隠れ町は塔からの距離も多少あるので行くこと自体に手間がかかる。
  • ラストダンジョンの最後あたりからは徒歩で戻れなくなり、テレポート用の能力かアイテムがないと二度と戻れなくなる。当然ラスボスを倒せる能力 かチェーンソー がないと詰む。
    • どこでもセーブ可能(ファイナルファンタジーと違ってダンジョン内のどこでも可能)というシステムのおかげで他にも詰むポイントはある。
      • それは「デスマシーン」戦である*11。こいつと戦う部屋は一度入ると外に出られないため「戦闘前のセーブ」が仇になって詰むことがある。
      • 能力の「テレポート」かテレポートアイテムがあれば外に出られるが、この時点ではアイテムのほうは手に入らず(初めて入手できるのはもっともっと後)で、エスパーが「テレポート」を覚える確率は極めて低い。
      • 「テレポート」が使えるほど高位のモンスターが味方にいれば、デスマシーンに勝てないことはない。
  • 「涙を拭いて」を聴ける機会が一度しかない。
    • 本作では珍しく心に染み入るような悲しげなメロディーでゲーム史でも屈指の名曲なだけに惜しい。
      • 続編では、これが流れる機会が増え、1ケロでBGMを変えられるジュークボックスまで設置された。

総評

「ゲームボーイにはRPGはそぐわない」と考えられていた時代に、あえてその制約の中で工夫を凝らし、前述の概念を覆した意欲作である。
少ない容量の中で…いや、少ない容量だからこそ実現できたこのゲームの革新性がRPG及び携帯ゲーム機に与えた影響ははかりしれず、ビデオゲームの歴史的に重要な作品であるといえる。
勧善懲悪を排した殺伐としたストーリーにしても、大味ながら短時間攻略に適したゲームシステムにしても、現在でもじゅうぶんに通用する作品である。
その魅力にとりつかれ、現在でもタイムアタックに挑戦するプレイヤーは多い。


余談

  • 古い携帯機の最初のRPGゆえ、容量の都合上作品に出て来るグラフィックのパターンが少なく、笑えるシチュエーションがある。兵士と同じ鎧騎士姿の王様(ゴーレムもこのグラフィック流用)が村一番の美人と称する相手がスライムや目玉と同じグラフィックであったり、死にかけの王様がもはや骸骨の姿だったりとかなり笑える。
    • ただ、本作の世界にはたとえ街中であろうと狼男やゴブリン(鬼)や悪魔や龍(やキマイラやドラゴン)などと同じグラフィックのキャラが普通に街の人として存在しているため、こんなグラフィックでもわりと違和感なく見られる。
    • 本作の世界観を象徴するかのごとく様々な種族が一つの世界に混在していることを表す点はまさに「サガらしさ」を表現していると言える。後の作品『サガ フロンティア』にも受け継がれた。
  • 半熟英雄シリーズ」や『ライブ・ア・ライブ』のディレクターを務めた時田貴司氏も、この作品に「たかしくん」として登場している。そのイベントは、湖の穴にゴミが詰まって小世界が水没しかけ、その下の小世界(1階下でタコハチ6人が住んでいる)が水不足に陥る、という内容だが、それは当時、時田氏が社内で流しのゴミを詰まらせた実話がもとになっている。
    • 因みにその下の小世界に行かなくても、この世界のゴミを取り除くことができるので、先に下の世界を見ていないと「人間がタコハチに変身した」という錯覚に陥る。
  • 本作は、(旧)スクウェア初のミリオン達成作品である
  • BGMのひとつ「涙を拭いて」は、アレンジされるなどして「Sa・Ga2 秘宝伝説」「ロマンシング サ・ガ」「ロマンシング サ・ガ2」「ロマンシング サガ -ミンストレルソング-」でも使用されており、サガシリーズ定番曲のひとつとなっている。
  • 本作で登場する四獣は後のサガシリーズに様々な形で登場する。皆勤賞ではないにしても彼らもサガを支えているキャラクターになっている。
  • タイトルについて、「これも いきもののサガか…」というセリフなど、「SA・GA」が「サーガ(物語・神話)」と「性(さが)」のダブルミーニングで付けられたと思われがちだが…
    • 河津氏いわく「セリフの方をタイトルに掛けて書いたもので、サ・ガ=性(さが)ではありません。またsagaというのは、アイスランドの歴史や神話を題材にした口承文学のことで、○○サーガというような感じで、ゲームでもよく使われます。ですが、サ・ガ=saga(サーガ)ではありません。」
    • 実際は、ファイナルファンタジーのような長いタイトルではなく短いタイトルでアメコミの擬音「ZAAAP」や「CRAAAASH」みたいなのが良いと「ドガ」や「ズガ」などのタイトル案の1つが「サガ」だったとのこと。
  • また当時の秋葉原で売られているアングラソフトには漢字四文字なタイトルが多く、そういうアングラ感を狙って魔界塔士と付けたとのこと。
  • 説明書によれば復活アイテム「いきかえり」はハートを消費すると書かれているが、実際は消費しない。
    • さすがに消耗品なのに15000ケロと超高値に加えて10000ケロのハートまで取られるのはやりすぎだろう*12
      • しかしWSC版ではハートを消費するようになったのでどうやら設定ミスだった模様。ちなみにモンスター能力「レイズ」での復活も、GB版ではハートを消費しないがWSC版では消費するようになった。
  • 開発初期の案の1つに、主人公たちが悪の場合に神が敵になるという物があり、この案からラスボスが神になった。
  • ゲームブック版「冒険者たちのレクイエム」も双葉社から発売された。
    • 仲間になる新撰組(モンスター。挿絵も存在するがその姿は必見)、最後の方はパンチやキックで敵のボスクラスを倒していく主人公、妙に多い一風変わったゲームオーバーのパラグラフなど、ゲームブックならではの「サガらしさ」にあふれた一冊である。
    • 難易度はめっぽう高め。基本仲間は使い捨てで「仲間○人失う」であっさりと死ぬのに、仲間の生存者もHPに勘定されるため、死人が多すぎると思わぬ苦戦を強いられることも(とくに都市世界が顕著)。
  • オリジナル版では目玉モンスターの最上位が「ビホールダー」だったのが、リメイク版では「デスアイ」になっているので、本来の名前でプレーできるのはオリジナル版のみである。*13
    • 因みに『ファイナルファンタジー(初代)』でも呼称が若干違う「ビホルダー」が同じ問題から「イビルアイ」、「デスビホルダー」が「デスアイ」に変えられている(こちらはグラフィックも別物に)が本作では元々前者の異名同種「イーブルアイ」がいるため「ビホールダー」が「デスアイ」となった。
      • FFでは「デスアイ」(元の「デスビホルダー」)はアンデッドだったが、本作では変名した成り行きで下位種と名前が被ったためそうなっただけで、中身自体は変わっていないためFFではアンデッドなのに、本作では普通のモンスターの一種というちょっと紛らわしいことになっている(つまり「念仏の書」は効かないまま)。

その後の展開

  • 2002年にワンダースワンカラー専用ソフトとして移植された。
    • GB後期版をベースにしたカラーリメイク+GBオリジナルモードも搭載しており、原作の良さそのままのリメイクとして好評。
      詳細は『魔界塔士Sa・Ga (WSC)』を参照。
    • その後、2007年に上記WSC版を元に携帯電話アプリとしても移植された。
  • 本作は初期GB三部作で唯一ニンテンドーDSではリメイクされていない。
    • というより、『魔界塔士』のリメイクは上記のWSC版/携帯版で完了という認識だったらしい。2011年のDS版『サガ3時空の覇者 Shadow or Light』発売後の「4Gamer.net」のインタビューにおいて、河津氏は「これでひととおりのリメイクはできたと思います。」と発言していた。
    • が、後に河津氏は2013年12月に本人のTwitterで「魔界塔士の移植and/orリメイクは計画はしてるんですが、なかなか実行に移せてません。申し訳ない。」とも発言している。
      • 2020年12月にその理由について同じくTwitterで答えており、「魔界塔士はそのままリメイクでは短すぎるんで、内容をかなり盛らないといけないんですよね。その辺がリメイクが進まない理由です。」とのこと。
  • ソーシャルゲーム『エンペラーズ サガ』にて本作のイベントが開催された。内容は「全23階層の塔を登り、最上階の『かみ』を倒す」という、本作に準じた内容であった。
    • 続く2017年4月6日、ブラウザゲーム『インペリアル サガ』においても本作イベント『次元を貫く無限の塔!魔界塔士の冒険!』が開催された。本作より「にんげんおとこ」「にんげんおんな」が実装され、GB音源によるBGM、登場人物の口の悪さ、そしてボスキャラの衝撃の能力と演出など、原作を知る人ならニヤリとさせる要素が満載であった。
    • 更に2020年9月より、佐賀30周年ということでソーシャルゲーム『ロマサガRS』において専用のイベントが2つ(ダンジョン攻略と制圧戦)も実装され、かみがプレイアブル化した。
      • なお説明文には「想定外の弱点を抱えている」と書かれている辺り、実によく分かっている。
  • 2020年12月15日にNintendo Switchで『1』~『3』(更に日本版と海外版で計6本)のカップリングソフト『Sa・Ga COLLECTION』が発売。
    2021年9月22日にはiOS/Android、同年10月22日にはSteam(Windows)でも発売。
    • オリジナルのGB版を再現した移植となっている。開発はRacjinだが、サウンドの再生速度はそのままで倍速プレーできるなど、M2による『聖剣伝説コレクション』とはまた違った趣がある。
    • なお、同作に収録されている本作は「こうげき」の後期版準拠のため、大半のバグは修正されている。
      • 他にも「原子力発電所」が「超科学発電所」、「ブルトニウム」が「ハデスニウム」になるなど表記がいくつか改変されている。
      • 同じ原発関連の原子力マークはチェック漏れか特に問題ないと判断されたのかさだかではないが、そのままだったりする。
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  • GB
  • スクウェア
  • 1989年
  • サガ

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最終更新:2023年12月28日 16:40
添付ファイル

*1 戦闘勝利時に流れるBGMの曲名「イート・ザ・ミート(Eat the meat)」はこのシステムに由来。

*2 厳密に言えば、復活は激安だがハートは高価。

*3 とはいえミレイユは単なるありがちな悪女キャラであり、他二名に比べてインパクトも薄く数合わせ感が強いため、三人目枠としても安定せず、ほかに候補もいる。

*4 WSC版では「ライトサーベル」に変更された。なお、2と3もDS版で同様の変更が行われている。

*5 元ネタは「宇宙戦艦ヤマト」のヤマトの装備でとてもじゃないが手に持てるものではない。また何故か店で購入可能。

*6 2にも登場しているが、権利関係の問題か2のリメイク版では「バイカーヘルメット」という名前になり防御力が高いのが意味不明になった。Sa・Ga COLLECTIONでは許可を得た上で「アライのメット」として登場している。

*7 チェーンソーとほぼ同効果のモンスター能力「のこぎり」でも可能。

*8 『半熟英雄』シリーズのWSC移植版以降の作品には、チェーンソーを持ったそのものズバリなエッグモンスター「かみ」が登場している。サガシリーズの生みの親である河津秋敏氏も、これには大笑いしたらしい。

*9 ニーチェの著書で有名。

*10 三好鉄生氏の歌(昭和57年8月)とはまったく別モノ。

*11 FF1では通常エンカウントのレア枠モンスターとして存在していたが、本作ではボスとして必ず戦う。

*12 因みに復活の館の蘇生はハート1つ消費+100ケロで正味10100ケロなので、「いきかえり」の方がコスパが悪い。まあ「いきかえり」は移動中ならいつでも使用できる利点があるので仕方ないが。

*13 事の発端となったのは「週刊少年ジャンプ」に連載された人気漫画『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』に登場したビホルダー。こちらでは「イビルアイ」や「デスアイ」ではなく「鈴木土座衛門」というまるでネタのような名前に変更されている。