虫けら戦車
【むしけらせんしゃ】
概要
『GUILD01』の続編『GUILD02』の作品のうちの1つ。
『GUILD02』の詳細については先に執筆された『怪獣が出る金曜日』の記事を参照。
ディレクターは『ロックマン』シリーズや、「どんな判断や」の名言(?)などでおなじみの稲船敬二氏。
あらすじ
194X年第二次世界大戦中。ある地域で交戦中の戦車部隊が突如姿を消した。
一部の地方紙はこれを怪事件として取り上げたが上層部は単なる戦死として処理。そして激化する戦火の中彼らの存在は忘れられていった。
しかし彼らは戦い続けていた。体がアリ程に小さくなり人の目に見えぬところで戦い続けていた。同じくアリ程に小さくなった戦車に乗って。
特徴・システム
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ドイツ軍のプレイヤーが、文字通り虫けらほどの大きさになった戦車を操って、生き延びるために戦い続けるゲーム。
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スライドパッドで移動、XYAボタンかタッチスクリーンで砲塔の旋回を行う。
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砲撃は射線上に虫が入ると自動で行われ必ず命中する。Rボタンを押している間は砲撃を止めさせることが可能。なお装填時間が存在し(全車両で一定)、連射することはできない。
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全ての車両にマシンガンが搭載されており、車体正面に虫がいた場合自動で発射される。ダメージはないが虫を一時的に足止めすることが可能。
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ミッション開始前に、徹甲弾と榴弾のどちらの砲弾を使用するか選択する。
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徹甲弾は威力が大きく貫通するため、射線上にいる虫達にダメージを与えられる。一方、榴弾は威力は小さいが射線上ではなく、着弾した一定の範囲の虫にダメージを与えられる。
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攻撃は障害物を貫通するため、虫との位置関係を考えて障害物で虫を防ぎながら攻撃するというテクニックも大切となる。
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1つのミッションにつき一度だけSOSの救援要請ができる。援護射撃で画面内の虫すべてに一定のダメージを与えることができ、周りを虫に囲まれて動けなくなった状態でも打開が可能。
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難易度にもよるが、頑丈な車両でもなければ囲まれると瞬く間に撃破されてしまうので、上記の機能を生かしつつ虫たちを撃破していく必要がある。
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最初はIII号戦車に乗っているが、他の戦車はフィールド上に落ちている無人の車両を発見するか、一部の通信の協力ミッションをクリアすると使用可能になる。
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登場する車両は有名なタイガー、チハ、シャーマン、T-34などから比較的マイナーなイタリア戦車M13/40やフランス戦車。さらに世界初の回転砲塔を持つ戦車FT-17まで使用可能。
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基本的に戦車のみであり、駆逐戦車・自走砲などの車両は登場しない。
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しかし、M18ヘルキャットなどの車両は登場する。
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戦車のモデルはデフォルメされているものの(主に全長が短い)、細部まで作りこんである。
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予備履帯、予備転輪、ワイヤーロープやハッチ。JS-2の後部トラベリングクランプ。FT-17のリベット。さらにはすぐに廃止されたタイガーやパンサーの発煙筒まで再現されている。
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一方でファイアフライの車体はM4シャーマンの流用、タイガーの指揮車両も登場するがアンテナをつけただけ。
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戦車はカスタマイズを行うことができ、内容は車体と砲塔の換装、および塗装。
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換装に制限は無い。車体が小さく砲塔が非常に大きい爆笑モノの車両を作り出すことも可能。公式サイトにはFT-17の車体にKV-2の砲塔を載せた画像があるので、気になるなら一度見てみるといい。
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戦車には攻撃力や耐久力の他に速度などのパラメータが存在し、前述のような車両を作ると速度が低下する。逆に低速な車両を速度が出るようにカスタマイズして使いやすくすることも可能。
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塗装もドイツ、日本、ソ連などの実在した迷彩塗装などの真面目なものから、ハート柄や花柄などのネタ塗装も存在、本来あり得ない塗装を施された戦車はこれの戦車を連想させる。
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敵である虫は、雑魚扱いの各種アリやシロアリ・ミツバチから、攻撃手段の無いフンコロガシやガの幼虫、ボスとして毒グモやカマキリなど様々な虫が登場し、ポリゴンモデルは非常にリアル。
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特に倒された時の動きは非常にこだわっており、アリ類はひっくり返って足をピクピクさせる。女王シロアリは女王特有の大きな腹を見せられるので非常に気持ち悪い。
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ハチや蛾などの空を飛ぶ虫は爆散して羽や足が飛び散り、ミツバチに至っては頭部まで吹き飛ぶ。
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一方で人間は非常に適当でスプライトで表示されており、撃破されても平気で脱出するなど全くグロテスクでない。
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最初のブリーフィングではドイツ語の「パンツァーフォー」「ヤー」を喋るがなぜがミッション中では英語や日本語を喋る。
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フルボイスでぺらぺら喋るわけではなく、昔のゲームのように喋るのは被弾時などの最低限のみ。
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ミッションの内容はただ虫を倒すのみから、「飲料水や食料の確保」「虫につかまった味方の救出」「砲弾が無くなったり燃料タンクに穴が開いたので戦闘を避け撤退する」「多数現れる虫から拠点を守る」など様々。
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やたらと先輩風を吹かせる嫌な上官というのも登場する。
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すれちがい通信にも対応、すれちがうとSOSで攻撃する際に通信相手の使用している戦車が登場する。
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攻撃時には、あらかじめ登録したプレイヤー名とメッセージが表示される。
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4人までマルチプレイで協力ミッションを行うことが可能。
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マルチプレイは専用のボスが用意されており能力は非常に高い。マルチプレイのクリアでしか入手できない戦車も存在する。
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一応、救済措置としてマルチプレイ用ミッションを一人で行うことも可能だが・・・。
評価点
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ゲームの方向性と遊びやすさの両立
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「虫から逃げ惑う人々と戦車」という少々ハードルが高そうなテーマながら、プレイしやすいように工夫されている。
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デフォルメ戦車ゲーでも砲撃を自動にして操作を移動、砲旋回に絞ったものはそうそうないと思われる。
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グロさ加減の面で人と虫できっちり区別をつけており、虫なら平気だけど人がグロイのは苦手という人にも優しい。
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カスタマイズ
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国籍マークは変えられないが、ドイツ軍以外の戦車でも塗装でドイツ軍の塗装を施せば鹵獲車両としての気分が味わえる。
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砲塔の交換は現実ではめったに行われてないがパンサーにIV号戦車の砲塔を載せた例があり再現して楽しめる。
賛否両論点
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達成条件の不一致
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味方を救助するミッションでは、フィールド上に配置されている救助対象が救助するノルマより多く配置されている。それなのにノルマを達成した時点で、まだ救助対象が残っていたとしても全て救助したとしてミッション終了になる。
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いちじるしくゲーム性を損ねるわけではないが、やはりこういった齟齬は気にする人もいる。
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一応、「対象が多すぎるため他の戦車に任せる」と言い残し終了するミッションもある。
問題点
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様々なミッションがあると書いたが、1つのミッションのプレイ時間が数分だけと短い。
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なのでフィールド上の未発見の戦車を探すなどのやりこみをしなければ、クリアまでのプレイ時間は2~3時間程度で終わってしまう。
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ボス相手には重装甲でひたすら耐えつつただ攻撃する、といった単調な戦闘になりがち。
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徹甲弾と榴弾はミッション中ではなくミッション前に選択するため、途中で切り替えることができない。そのため、ごく一部のミッションを除けば榴弾を使うメリットはほとんどない。
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ファイアフライの攻撃力がおかしく何故かM4シャーマンよりも低い。必ずしもファイアフライの方が優れているわけではないが、知識のある人はもちろん知識の無い人もゲーム内の解説文を読めば不思議に思わざるを得ないだろう。
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これ以外にも米軍の戦車が全体的に弱い。恨みでもあるのだろうか。
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FT-17等の初期の軽戦車も到底使えるような性能ではないが、実際の性能を見れば妥当。
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デフォルメである以上ある程度は仕方がないが、装填、砲塔旋回速度が一定で車両ごとの個性は薄い。
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プレイに支障をきたさないレベルで手抜き感がある。
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たとえば履帯の跡の幅がすべての車両で一定なため、履帯の幅が狭い車両だと不自然に感じる。また履帯と転輪が全く動かない。
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幸い、履帯と転輪はアングルのおかげでそこまで気にならないが。
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人のスプライトも戦車兵と歩兵で同じ、主要人物ですら同じ。
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撃破された時のモデルが全て同じでM26パーシングの使い回し。そのため撃破された瞬間、M26に変身するという現象が起こる。
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フィールドのグラフィックは、あまり良くない。
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マルチプレイ用ミッションを一人でプレイすることも可能だが、虫が非常に強く全てをクリアすることは不可能。そのため、一人だけではすべての戦車をそろえることはまずできない。
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メニューは下画面に表示されるが、タッチ操作が文字入力以外一切できない。
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またミッション選択や戦車カスタマイズでは右にスクロールバーがあるが、タッチ操作で動かせず単なる飾り。数が多くなると選択がやや面倒。
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ストーリーが不完全。ネタバレ防止のため詳しくは書かないが「これから面白くなるぞ」というところで終わってしまう。一応、エンディング後のミッションもあるがストーリーに大きな変化はない。
総評
上記の手抜き感はあるが、値段を考えれば許容できる出来だろう。操作は簡単で操作性も良く、ゲーム内で戦車についての解説もあるため、戦車にそこまで詳しくない人でもある程度はカバーできる。
虫の気持ち悪さ、恐ろしさを感じたければまさしくもってこいなゲームである。
間違っても虫が苦手な人はプレイしてはいけない。
余談
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『GUILD01』との連動得点で、金色の戦車を入手することが可能。
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選択画面のドイツ戦車の国旗のマークが連邦共和国の物になっている。さすがに鍵十字はまずかったようだ。とはいえ、フランスはヴィシー政権の軍旗、イタリアは王政時代の国旗になっている。
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プレイヤーの戦車には3人しか乗っていないが、たった3人でどうやって戦車を動かすのか、という突っ込みはナンセンスなので止めておこう。
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ましてやFT-17、R35、H35といった2人乗りの車両にどうやって3人乗っているのかという突っ込みはもっと止めておこう。
最終更新:2022年08月16日 02:32