※本稿では、FC版『桃太郎伝説』と、PCエンジン移植版『桃太郎伝説ターボ』の2本を紹介する。



桃太郎伝説

【ももたろうでんせつ】

ジャンル RPG
対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 2MbitROMカートリッジ
発売・開発元 ハドソン
発売日 1987年10月26日
定価 5,800円(税別)
ポイント 昔話ベース
判定 良作
桃太郎シリーズリンク
ハドソン マル超シリーズ
ボンバーキング / ファザナドゥ / 桃太郎伝説

概要

さくまあきら氏が手掛けた和風RPG『桃太郎伝説』シリーズ第一作。
日本人なら誰もが知っているであろう昔話「ももたろう」をベースに、様々な昔話をミックスしてギャグ化した独特の世界観を持っている。
シナリオはさくまあきら氏、キャラクターイラストは土居孝幸氏が手掛けていることから、当時両氏が担当していた『週刊少年ジャンプ』の読者コーナー『ジャンプ放送局』でも、度々取り上げられていた。また音楽を手掛けていたのはサザンオールスターズのベーシストである関口和之氏である。


ストーリー

むかしむかし――。
桃から生まれた桃太郎は6歳の時、世の平安を乱す鬼を退治するべく鬼ヶ島へ旅だった!! 
行く手をさえぎる鬼の手下を退治し、犬・猿・キジの3匹のお供を見つけ出さなければならない!!

金太郎を始め、浦島太郎、花咲か爺さん、かぐや姫等、昔話のヒーロー、ヒロインが総出演!! 
抱腹絶倒の旅が、今、始まるッ!!
(説明書より)


特徴

  • オーソドックスなスタイルにちりばめられた独特な演出
    • ドラクエスタイルの典型的なRPGながら、上記の昔話のエピソードや個性豊かな敵、また全編にちりばめられたギャグ要素がかなりの異彩を放っている。
      • 特にギャグ要素の多さは戦闘面にまで及んでおり、様々なパロディ要素も多分に含んだユーモラスな外観とネーミングのギャグ敵が多く出現するのも特徴。
    • いわゆる「勧善懲悪」の王道なシナリオであるが、物語の根底にあるのは「愛と勇気」であり、桃太郎の立ち位置は一方的な正義に根差したものではない。
      • 本作では、桃太郎が敵を倒すことを「こらしめた」と表現し、ザコ敵からボス、果てはラスボスに至るまで決して命を奪わず、敵側も桃太郎の愛と勇気を学び改心する。また、戦闘に敗北しても死亡ではなくあくまでも戦闘不能という扱いで、死という概念を避けているのも特徴的である。
    • レベルは「段」、パスワードは「天の声」、経験値・MP・HPはそれぞれ「心」「技」「体」と、RPGにおける基本的な用語が和風な世界観に沿った言葉に置き換えられている。
    • 呪文・魔法に相当する「術」はレベルアップで習得するのではなく、各地にいる仙人から修業を受けることによって習得していく。
      • 修行の内容は仙人ごとに異なっており、中にはひたすら長い話を聞き続けたり、高額なお金を払ったりするものもある。
    • 旅の途中で出会うイヌ、サル、キジにきびだんごを与えてお供にすることで桃太郎の攻撃力と守備力が上がる。
      • 彼らはNPCとして独自の判断で戦闘に参加するが、さくまあきらによると、これはRPGの戦闘でAIが導入された初めての例だという。
    • 前述のとおり、様々な昔話をモチーフにした村が出てくるが、本作では「昔話と違って悪いことをしている→正体は鬼でした」というパターンが多い。
      • 金太郎や浦島太郎が仲間になるのは『II』以降で、本作では初代『ドラクエ』同様、終始一人旅となる。
    • 武器と3つの防具に、4つの「いでたち」と、計8部位もの装備品枠がある。当時としては破格。
      • とはいえ、武器・胴・足袋以外はそれぞれ1~2種類しか存在せず、後述のリメイクでは簡略化されている。

評価点

  • 全体に漂うほのぼのさ
    • 敵である鬼の中には、行動やルックスが相応に凶悪なものもいるが、本作ユーザーがプレイ後に思い浮かべる「桃伝の敵キャラ」と言えば「貧乏神」「ユキだるま」「勉強の鬼」などのユニークな物が断然多い。
      そういったほのぼのとした部分が強く押し出されており、敵側である鬼も人間を痛めつけたり殺したりといった非道で血なまぐさい悪行はしない*1。戦闘面でも前述のように重くなりがちな生死の表現や敵を倒すことの表現をやわらげていることもあり、RPGにありがちな殺伐感もなくどこか懐かしく温和な雰囲気のまま最後まで遊ぶことができる。
      • 前述の「愛と勇気」というテーマの所以であり、本作の温かみある世界観を形成する要素でもある。
  • 豊富なネタ要素
    • 容量の限られたファミコンというハードの制約上、普通ならば余計なデータは削減に徹するものだが、本作では「攻略に関係ない遊び」が実に多い。
      中でも有名なのが「女湯」。桃太郎の年齢*2が一定値を下回っている状態だと正面から入浴可能で、サービス画像が拝める。希望の都まで時間がかかってしまい入れなくなっても、かくれみのを使えばこっそりと覗ける。
      • さくまあきら氏は「ジャンプ放送局」内で、「女湯のイベントを入れると普通のRPGの場合、村を4~5個増やせる」「女湯のためにシナリオが減ってるのはうちくらい」とコメントしていた。
    • 年齢は「ステータス画面の桃太郎の外見が変化する」というだけのパラメータであり、実質「女湯に入れるか否か」を判定するための数値である。エンディング時の桃太郎の外見にも影響するが、その程度。従って、100歳近いヨボヨボの姿になっても普通に冒険できる。あんまり時間をかけたせいで冒険中におじいさんとおばあさんに先立たれる、なんて事は無いのでご安心を*3
    • 上記のユニークな敵たちも、行動パターンがかなり豊富。「金を盗む」「金をくれる」くらいは序の口、「いきなりクイズを出す」「攻撃をバットで打ち返す」など様々な個性豊かなアクションを見せてくれる。
      • 敵は発売当時に知られていた著名人やCMのパロディも多く、『あかおにホーマー』『わかだいしょう』『ジャキ チェーン』『きんぎんパールプレゼントのオニ』なども存在する。
      • 中には、Dr.マシリトこと鳥嶋和彦氏がモデルの敵「天邪鬼」もいる。攻撃時のセリフは「ボツ!ボツ!」。
      • 後の『桃太郎電鉄』シリーズでもお邪魔キャラとして主役の桃太郎とタメを張る程の人気キャラになった「貧乏神」のモデルは、当時『ジャンプ放送局』のレイアウトを担当していた「ボンビーえのさん」こと榎本一夫氏である。
    • 回復アイテムを「つかう」と転がしてしまったり、「放屁の術」を村人の前で使うと「桃太郎さん、臭いですよ!」と言われてしまったりと桃太郎の行動もかなりユニーク*4
    • 放屁の術以外にも畑にしゃべるう〇ちがいて話しかけると「ぼくはう〇ちだよ!ぷりっ!」なんて低学年の小学生が喜びそうな下ネタを言い放ってくれたりする。
    • 戦闘中にやられて戦闘不能になる以外には、希望の都の料亭でフグ料理を食べるとフグ毒にあたって死ぬという場面がある。ちなみに攻略に必要な場面でもある。
    • ほほえみの村では 「しむら けん」「ほくとの けん」 などといったギャグ・パロディ満載な商品を陳列している店や、 「よくそう どくましそう うちのかぎ」 などと、ドラクエのアイテムのパロディに走った商品を陳列している店まである。なお、当然ながらそれらの商品の購入は不可。少ない容量なのに、どこに拘ってるんだとツッコミをいれたくなること請け合いである。
  • 初心者への手厚い配慮
    • 当時のRPGらしくレベル(段)上げ作業は相応に必要だが、村の施設で「次の村へ行くのに適した段」を教えてくれたり、段が上がると体力・技が最大値まで回復するようになっているなど配慮が行き届いており、RPGに不慣れなプレイヤーでも安心して進められる。
      • 但し、後述するようにゲームバランス自体は良い訳ではない。
    • 先に述べたように温和な雰囲気で統一されているのもとっつき易さを促している要因である。
  • シリーズの常連となるキャラクターたち
    • 前述の貧乏神や、変装とスリ取りでプレイヤーを悩ませた「スリの銀次」など、後のシリーズにおいて常連となるキャラも本作で既に登場している。
  • きれいなグラフィック
    • マップやキャラクターなどは緻密に描きこまれており、ドラクエとはまた違った温かみある雰囲気を醸している。
  • コミカルでほのぼのとした世界観にマッチしたBGM
    • 音楽面においては純粋な和風要素はまだ少なめであるが、ほのぼのとした世界観にマッチしたBGMが多く、印象に残る曲が多い。
      • 特にパスワードを入れるときの曲「天の声」は人気が高い。この曲のおかげで長いパスワードも落ち着いて入力できる。シナリオ中でも感動的な場面で使用される。
      • ちなみに「天の声」は作曲者の関口氏も一番のお気に入りの曲とのこと。また、もともとはエンディングのためだけに作曲された曲だったのが、良い曲だったので「もっと聴いてもらいたかった」ため、皆がよく利用するであろうパスワード画面でも採用したとの事。
    • 作曲担当がバンドメンバーのベーシストということもあり、ポップス的なエッセンスが含まれている曲もある。
    • ギャグ敵との戦闘の際は、特定の敵との戦闘時含め、複数のバリエーションがあったりと凝っている。
    • 一方、ダンジョンの曲はホラー調でかなり不気味に作られており、戦闘曲も激しさと共に緊張感を感じさせる。場面によってメリハリの効いた構成になっていると言えよう。

問題点

戦闘のバランス調整の不備ゆえの理不尽な点

  • 物価が高いわりに敵から得られる金額がやたらと少なく、序盤は宿代にすら困る*5。DQ3の母親と違って、お爺さんお婆さんの家に行っても泊めてくれるなんてことはない。
    • 一応、仙人の修行をクリアすると以降はその仙人に無料で全回復してもらえたり、隠しの無料回復ポイントが点在するといった救済措置はある。
    • 最初の所持金100両を全額はたいて「かたな」を買えばそれなりに戦える。たとえ戦闘で負けてもほぼ無一文なので、所持金半減のデメリットは無いも同然。
      • 逆にかたな以外の物を買ったり、易者占いでお金を使ってしまうと、ものすごく苦労するハメになる*6。敵を倒して得られるお金よりも宿代のほうが高くつき、稼ぐに稼げなくなる。
    • 苦労してお金を貯めて装備を買い替え、レベルを上げても、強くなった感じが全然しない。旅立ちの村で一番いい装備を整え、5段までレベルアップしても、最弱の赤鬼1匹すら一撃で倒すことができないほど。このせいで戦闘にとにかく時間がかかってしまう。
  • 戦闘時における「素早さ」のステータスの影響がかなり大きく、ゲーム全般を通じてプレイヤー側の素早さがかなり低い一方、敵側はかなり高くなっている。
    • 素早さは先攻・後攻を決めるだけではなく、敵の奇襲率にも影響する。桃太郎の素早さが敵より少しでも下回ると、半分以上の確率で奇襲されてしまう。
    • ダメージを受けるたびに攻撃力と守備力が下がるという隠された仕様があり、先に殴られるというのはその点でも不利である。
    • ゲーム中盤~後半だと最高値である255の素早さを持った敵も珍しくないため、段数を大幅に上げて装備品をしっかりつけていても奇襲攻撃されることが非常に多い*7。これは後述のリメイク版「ターボ」でも改善されていない。
      またどんなに素早さを上げても奇襲率を0にする事は基本的に出来ず、絶対に奇襲してくる敵も存在する。唯一「わいら」という敵だけは、桃太郎の行動を真似してくるという特性上、絶対に奇襲してこない。
  • 終始一人旅となるため、特定の鬼が使ってくる特殊攻撃の「炎も凍るような冷たい風を吹き付けてきた」で凍らされ、行動を封じられ続けてハメ殺されてしまう状況が頻発する。
    喰らうと100%凍ってしまう上にダメージまで受ける。「桃太郎は力を込めて氷を粉砕した!」が出る確率は高いが、粉砕したターンでは桃太郎は行動できず、そのターンの敵の攻撃の冷たい風で再び凍らされて…のループで、 「ずっと敵のターン!」状態に陥る のは日常茶飯事である。
    • 特にこの特殊攻撃を使う敵が多い中盤の「氷の塔」は運要素が大きく本作最大の難所になっている。ボスの「しこめ」までこの特殊攻撃を使ってくる上に、しこめのHPは高めで中々倒せない。また、体力を全回復させる「まんきんたんの術」はこの時点ではどうやっても覚えられないし、きんたんの回復量ではジリ貧になる。
      いでたちの一つ「カイロ」を所持していれば雪国の敵からの氷攻撃のダメージを大幅に抑えられるのだが、凍り状態を無くしたり復帰を早める事は出来ず、イマイチ有効さを感じられない*8
    • 桃太郎の行動を高確率で封じてくる雑魚敵の「じゃこつばばあ」「いんねび」など、プレイヤーがトラウマとして挙げる敵も多い。
      一応、雪国の敵は全員「きっちょむさん」から貰える「灼熱の弓矢」が特攻となっているが、楽になるというよりも、これを使うことがほぼ前提のバランスとなっている。
  • 他にもある恐怖の敵特性
    • 空を飛んでいる敵相手に通常攻撃をすると、「攻撃が届かない」として攻撃が当たる確率が大幅に下がってしまう。
      術やアイテム攻撃なら問題ないが、ただでさえかつかつになりやすい術Pを使わされるのは痛い。
    • 「びゃっこ」「トラ」は戦闘から逃亡しても一歩毎に1/2の確率で再戦闘となる。
      敵から確実に逃げられる「もものみ」を使っても、「ひえんの術」で出現帯から脱出してもこの特性から逃れる事は出来ず、実質的にこの2体は強制戦闘エンカウントとなる。
+ ラスボス戦もかなりバランスが悪い。ネタバレ注意
  • ラスボスは体力が非常に高く設定されており*9、ダメージ蓄積により行動パターンが変わる。
    • 前述の氷漬け攻撃も使用してくるので、いきなりハメ殺されることがある。
    • 体力が半分を切ると、回復量20の「恒河沙の玉」で回復行動を取ることがある。さらに追い詰めると低確率だが、もう一つの 完全回復するほうの「恒河沙の玉」 を使用することがあり、これをやられると仕切り直し。しかも何度でも使用してくる上に、表示される文章は「恒河沙の玉を使った!」なので見分けがつかない。
      実は、完全回復するほうの「恒河沙の玉」の発動条件は、ラスボスの体力が内部で50以下になった時に20%で使用する、である。これらの状況を打破するには、そのHP帯になるあたりで、会心の一撃を出す「ろっかく」の術を連発しての速攻撃破が有効*10。しかし技ポイントを大量に消費するため、回復アイテムが大量に必要である。
      • 苦労して覚える最強の術「だだぢぢ」もラスボスには効果がないので、ろっかく以外に有効な攻撃方法がない。このため戦闘がどうしてもワンパターンになってしまう。
      • 善戦していて突然ハメ殺された場合は、使った回復アイテムを集めるところか、リセットして天の声を入力するところからやり直しになってしまう*11

アイテム関連

  • 現在装備中の兵具は、新しいものと付け替えることはできても、単純に外すことはできないため、先に売って新しいものを買うための資金の足しにすることができない。
    • 「安い装備品を買って付け替えて今の装備を売り、改めて本命の装備を買う」ことは可能。
    • のちのシリーズでは「下取り」システムが追加された為、この問題は解決されている。
  • 回復アイテムを使いたい時、「つかう」ではなく「たべる」を実行しなければならないため、間違えやすい。
    • 戦闘中に誤って「つかう」を実行してしまうと前述のように『アイテムを転がしてしまう』ため、1ターン無駄になる*12
  • 不要なアイテムの売却は兵具屋や茶店ではできず、別に存在する質屋に行かなければならない。しかも、どういうわけか、質屋は兵具屋や茶店から遠く離れた場所にあることが多く、わざわざ歩かされる。それだけでも面倒なのに、質屋が無い村もあるので、不便極まりない。特にだだっ広い希望の都では大変。
    • 問題視されたのか、続編からは各施設に移動できる「村ひえん」が登場、さらに質屋自体が削除され、兵具屋や茶店で売却できるようになった。
  • アイテムは8個までしか持てないうえに、預かってくれる施設も存在しない。
  • 前述の天邪鬼や河童など、一部の敵はアイテムを盗むという特殊攻撃を行うが、盗まれた後に逃げられるor自分が逃げると当然そのアイテムは消滅してしまう。
    • とある村では「やぐらだいこ」という重要アイテムを渡すことでクリアに必要なアイテムと交換できるのだが、渡す前に「やぐらだいこ」を盗まれて取り返せなかった場合も、なぜか村に「やぐらだいこ」が戻った扱いとなってしまい、クリアに必要なアイテムを貰えず詰んでしまう。
    • 「やぐらだいこ」はその村の中でのイベント戦闘で入手するアイテムであり、返すのも村の中なので、返す前に村の外に出るような余計なことをしなければいいだけの話ではあるのだが。
    • 黒河童は所持金すべて所持品すべてを一度に盗んでくる。逃げられるとかなり厄介。
    • 他のイベントアイテムや貴重品(売れないもの)は、盗まれても再び入手することが可能。

マップ関連

  • 安売り王ドイン・といちや・占い屋は看板が無いため、どの家なのか、見た目で判別できない。
  • 次の村までかなり距離があることが多い。しかも、中継地点となるすずめのお宿では天の声を聞くことができないうえに、ひえんの術で飛んで来ることもできないため、パスワードでの再開時やゲームオーバー後のコンテニュー時にはかなり戻されてしまう。

その他

  • お供がほとんど役立たず。桃太郎の攻撃力・防御力が上がる恩恵こそあるが、個々の固有の能力は微妙*13*14
    • イヌ:近くに仲間がいたら探してくれる→仲間が揃った後は何の役にも立たない。
    • キジ:近くにかぐや姫の宝物があると教えてくれる→これもほとんど使いどころがない。
    • サル:船を漕ぐ→それ以外全く使えない*15
      • ……というわけで、「めいれい」コマンドがほとんど何の役にも立たない。
    • 戦闘中にたまに敵に攻撃してくれることがあり、桃太郎より高いダメージを出すこともあって、びろーんのような桃太郎の打撃が効かない相手にも通用するのはいいが、そもそも攻撃してくれる確率自体が高くないので頼れない。
      • キジは空を飛んで刀の届かない敵に攻撃してくれやすく、犬と猿は桃太郎がピンチの時に攻撃してくれやすい。しかしそんな場合に無理して通常攻撃するよりも術で切り抜けたほうが良いため、どれもあまり意味がない。
  • ひえんの術の消費技数が1回で20と、かなり燃費が悪い。
    • これを見越してか、宿代はゲームの中盤以降かなり高額になっていく。希望の都にいたっては 1000両 という莫大な宿代をふっかけられる。
  • 後半はいつ死んでもおかしくないバランスになるので所持金を預けておきたいところだが、手数料がかかるので利用しづらい。しかもトイチ*16
    • 万単位で金を使う機会があるにもかかわらず、話しかけるごとに1000両単位でしか出し入れできないのも不便。

総評

調整不足な面が多々見受けられ、ゲームバランスがやや厳しい側面がある。しかし、和をベースとしたRPGという斬新さや、RPGにありがちな殺伐とした世界観ではなく民話を取り込んだ温かみある世界観により、ドラクエの後追いで発売されつつも強い独自性を印象付けた。

昔ながらの民話をRPGに落とし込んだ秀作である。


裏技

  • 「天の声」で「ふ」と一文字だけ入力すると、レベルがかなり高い状態でスタートする。しかもしばらく経つと桃太郎の年齢が0歳になる(見た目はゲーム開始時の幼少期)。
    • これを利用すれば、前述の「女湯に入れる」が簡単に可能。
    • 他にも「おにのばか」と入力しても、レベルが高い状態からのスタートとなる。年齢はかなり高齢で、所持金も「ふ」に比べると少ないが。
    • 「天の声」では、「すべてのき よくがききたい な」でサウンドテストモードの「桃太郎音楽室」、「すべてのて きがみたいな」で全敵キャラのグラフィックを鑑賞できる「桃太郎美術室」を出すことも可能。
      • 途中から省略しても認識されるため、音楽室は「す」、美術室は「すべてのて」まで短縮可能。
  • 一度クリアしてエンディングを見た後、電源を切らずにリセットして最初から始めるか「天の声」で再開すると、倍速移動(さらにBダッシュで倍速)になり、岩山や海などの障害物のすり抜けができるようになる。さらに敵が出なくなる(ランダムエンカウントが無くなる)。
    • このころのファミコンRPGでは珍しい「ダッシュ機能」である。それ以前では、3日前発売のミネルバトンサーガでも裏技であるがダッシュ機能あり。
    • 通常の敵が出なくなるということは経験値を稼ぐ手段が限られるので、最初からプレイする場合は工夫が求められる。
  • 最初からスタートし、一度も「天の声」を聞かない(神社の神主に話しかけない)で「飛燕の術」を覚えると、行き先リストが表示されず、月の宮殿など通常では行けない場所に行けてしまう。
    • 上記のターボモードで始めると簡単に実行できる上に地形にハマらない。
  • 一部アイテムは売買の差額で資金稼ぎができる。
    • 「飛鳥の剣」を質屋で売ると300両になるが、浦島の村の安売り王ドインからは200両で買える。ただし、浦島の村に質屋はないのでやや手間はかかる。
    • 同様に、希望の都で30両で買える「風鈴」は、質屋で100両で売ることができる。こちらは同じ町の中で完結する。

移植・リメイク

  • 『桃太郎伝説』(1988年 X68000)
    • FC版の翌年にリリースされた。グラフィックはFC版をほぼ踏襲しつつ色数が増え、サウンドもFM音源でアレンジされてより豪華になっている。また、セーブ機能も搭載されて遊びやすくなっている。
  • 『桃太郎伝説ターボ』(1990年 PCE)
    • ファミコン版の移植作。移植に伴ってさまざな変更点や調整が施された。詳細は下記参考
  • 桃太郎伝説』(1998年 プレイステーション)
    • 本作(厳密にはターボ)のストーリーをベースに、続編『II』及び『II』のリメイク作『』のシステムやキャラクターを導入したリメイク作品。純粋なRPG作品の新作としてはシリーズ最後の作品にあたる。
  • 桃太郎伝説1→2』(2001年 ゲームボーイカラー)
    • 『II』とのカップリング移植。
  • 『桃太郎伝説モバイル』(フィーチャーフォン用アプリ 2011年配信開始)
    • 携帯電話向けの移植。こちらはファミコン版に基づいた移植になっているが、グラフィックやインターフェースのデザインなどはPS版『伝説』に基づいてリファインされている。

その他関連作

  • 桃太郎活劇』(1990年9月 PCエンジン)
    • 『伝説』シリーズの世界観をベースにした横スクロールアクションゲーム。
      • 各ステージには『桃太郎伝説』には登場しなかった本作オリジナルのボスが登場する他、桃太郎が水中を泳いだり、天に召されたりするなど、『桃太郎伝説』ではありえない演出が施された。

余談

  • 1989年から同名のアニメ*17が放映されたが、桃太郎達がアーマーを着込んで変身する*18などオリジナル要素が多い。また1作目のビデオ化は途中までしかされていない。
  • 本作発売の3年後にアスキーからリリースされたRPG『忍者らホイ! 痛快うんがちょこ忍法伝!!』は、ゲームデザイン、キャラクターデザイン、音楽が本作と共通のメンツであり、作風も踏襲してギャグ基調の和風な世界観となっている。

桃太郎伝説ターボ

【ももたろうでんせつたーぼ】

ジャンル RPG
対応機種 PCエンジン
メディア 3MbitHuカード
発売・開発元 ハドソン
発売日 1990年7月20日
定価 5,800円(税別)
判定 良作

概要(ターボ)

ファミコン版の移植作品であり、幾つかの要素を変更したリメイク作となっている。*19
PCエンジンのソフトでは売上第5位を記録し、もっとも売れたRPGとなった。

追加・変更・改善点(ターボ)

基本的にファミコン版を踏襲しているが、幾つか改められた要素がある。中には以後の桃伝シリーズに影響を与えるものも存在する。

  • タイトル曲が『SUPER桃太郎電鉄』のタイトル曲に差し替えられた。
  • 外部記録ユニット(天の声2など)を接続すればセーブができるようになった。
  • 桃太郎の年齢の廃止。代わりに経過時間が記録されるようになった。
  • 装備が「武器」「胴」「足」の3種類のみになり、「いでたち」と頭防具(はちまきなど)は廃止された。
  • おじいさんおばあさんとの会話で全回復するようになり、序盤の宿代に困らなくなった。
  • 仙人の名前が簡略化された。天の仙人とひとりでも仙人以外は術の名前+仙人になった(万金丹のみ少し短くまんきん仙人)。
  • いなずまの術を覚えるときの修行で連射パッドを使う(連射が早すぎる)とやり直しさせられるようになった。
  • まんきん仙人の話の選択肢を適当に答えていると失敗してやり直しになるようになった。
  • 安売王ドインの店に「ど」の看板が追加され、見分けがつくようになった。
  • 寝太郎をおこした後に橋の上にいる人が銀次ではなくなり「これまでに宝を2つ持ってるはずです」と聞かれ、ホトケのおはちとリュウの首飾りを持ってないと進めないようになった。
    銀次の居場所が寝太郎の村(東)の出口を塞いでいる形になり、話しかけるとFC版通り、リュウの首飾りを盗む流れになった。
  • 金太郎の村の祭りで踊っている人が踊りながらやぐら太鼓の周りをまわり続ける(時々内側に動く)ようになり、祭りの雰囲気がより出るようになった。
  • サルの居場所の変更。FC版でホウライの玉がある洞くつがあった場所の南の岬にいる。
    また、さるかにの村にいるやまんばを倒した後、易者大会に紛れ込んでいるスリの銀次を懲らしめて易者から情報を聞かないと調べても見つからなくなった。
  • 希望の都にボス戦が追加(後述)。
  • 希望の都の料亭いしいの料理の値段が安くなり、フグ料理が7000両になった。
    もちろん当たって死んでしまうが、下記の金色の毛皮の入手方法変更によりお詫びの品が打ち出の小づち(売値7000両)に変わった。実質的に打ち出の小づちを7000両で買ったのと同じ形になる。
  • 灼熱の弓矢の入手場所が変わった。きっちょむさんが弓矢を鬼に奪われ近くの洞くつに隠されたという流れになった。
    • この洞くつは全面落とし穴で『ふゆうの術』が無ければ弓矢の所にたどり着けない。これに伴いふゆう仙人の居場所が変更され、きっちょむさんの家のすぐそばになった。ふゆう仙人の修行も「落とし穴だらけのダンジョンを抜けて仙人の場所にたどり着くこと」になった。
  • 船乗り場のボス「やまんば」がさるかにの村の中に移動し、船乗り場では色違いの「じゃこつばばあ」がボス格に*20
  • 『だだぢぢの術』の効果が10回連続攻撃に変更になり、ラスボスにも効くようになった。
  • ラスボスが理不尽な全回復行動を取らなくなり、ダメージカットもされなくなったが、ラスボスの体力が 4000 と大幅に上昇し低レベル突破をしにくくなった。
  • 雑魚敵も追加された。『ほほえみの大地』の一部敵キャラも改変され、発売当時の時代に合わせた時事ネタやパロディがメインとなっている。
  • 宝物の入手方法の変更。
  • 勇気の剣のありかが変わった。
  • 旅立ちの村の北の方につづらが大量に配置された。中身は全ておにぎり。
    • これはFC版にあったおむすびころりんネタの名残なのだがターボでは「ころがす」コマンド自体が廃止されているためFC版を知らなければ全く意味不明だが、回復や金策に役に立つ。

評価点(ターボ)

  • きれいになったグラフィック。
    • PCエンジンの性能を活かし、多彩なカラーリングで書き直されたグラフィックは明るくて見やすい。かぐや姫はかなり可愛くなった。
    • フィールドもそうだが、敵についても赤鬼の体がちゃんとした赤になったり、きつい色使いだったところ(えんま大王や水の鬼など)がきれいな色使いで描かれている。
  • 進化した音楽
    • 音楽も強化され、特に金太郎の村の村祭りやギャグモンスターの曲などFCより音数が増えたことで大きくパワーアップしている。
    • 村祭りはFC版でははっきりしなかった主旋律の高音パートがはっきり出ていて、曲として完成したといえる出来。
  • お供のキャラが桃太郎の後ろについて歩くようになった。
    • ちゃんとお供をつれている、という雰囲気にさせてくれる地味ではあるがいい点である。また、キジが戦闘中に金丹の術を使うようになった。
  • すずめのお宿が新たに3カ所配置されて計8カ所になり、利便性がよくなった。
    • 浦島の村北の毒の沼地の中洲にお宿2、氷の塔の南にお宿4、鬼の爪跡の出口にお宿7と要所に新しくでき、それに伴って従来からナンバーが変更されたお宿がいくつかある。
    • つづら屋の中身も変更され、お食事券が廃止されたほか、お宿7の目玉商品にぶんぶくちゃがま*21が入った。
  • 『ひえんの術』の習得方法が変更されかなり早くなった。
    • はなさかの村に行く前というかなり早いタイミングで習得できる上消費が10に減っており、中盤で天の仙人の試練をクリアするとパワーアップして、すずめのお宿にも行けるようになり、上記の通りお宿の数が増えていることもあって、移動のストレスがかなり減っている。
    • また、ひえんに登録される条件が神社に行ったことのある村ではなく一度行ったことのある村に変更されていてFC版であった「飛燕バグ」は起こらなくなっている。
  • 希望の都の宿屋がちゃんと利用できる。
    • FC版でも宿代が1000両と法外な額だったが、ターボだとこの値段は鬼のせいということになっており、茨木童子*22が新たにボスとして登場し、これを撃破することで宿代が50両に下がり、北に向かうための拠点として利用しやすくなった。
    • このため、希望の都の中央の塔が茨木童子の棲むダンジョンに変更されている。
  • といちやが使いやすくなり、阿漕な店ではなくなった。
  • FC版ではお金を預けるたびに金額の10%もの手数料を取られていたのだが、この手数料がなくなったうえ段が上がる度に利息(段の数×1%)まで付くようになった。さらに道具も無償で預かってくれるようになり、より健全、便利になった。

問題点(ターボ)

  • 天の仙人の修業がめんどくさい
    • 天の仙人の修業はバトルではなく「わしの所まで来い」と言われ、塔を登っていくと「何階建てだった?」と聞かれ、正解すると飛燕の術が強化される、というもの。
    • 塔を登っている間はエンカウントはないが同じような背景が続き、道中にも天の仙人がいて励ましてくれるとはいえかなり長く感じるうえ、ちゃんと数えていなければ階数はわからない上間違えれば下まで落とされる。ほぼ初見殺しである。
  • 物々交換が面倒
    • 希望の都で宝物の金色の毛皮を手に入れるために物々交換を行うのだが、どこで誰が何を欲しがっていたか把握しにくく、しかも一度ほほえみの村を経由しないといけない。
    • さらに途中でひっかけ*23もあり、その場合は最初からやり直しになる。
      • この物々交換に水あめが含まれている関係でFC版にいたアホ和尚とほほえみの村の門番はいなくなっており、アホ和尚がいた場所がそのまま神社に変更されている。
  • 並び地蔵へのお供えが面倒
    • FC版では蓬莱のタマの場所のヒントをくれるだけだった並び地蔵がターボでは10体それぞれお供え物を要求してくるようになった。すべて叶えれば洞窟が開き、これがFC版ではさるかにの村の南にあった蓬莱のタマがある洞くつになっている。
    • 要求してくるもの自体は他愛のない物ばかりが殆どなのだが、弱い装備などはいちいち買いに戻らなければならず、何往復もしなければならない。幸いすずめのおやど5に飛燕で行ける上すぐにびろーんの森に入るのでエンカウントは脅威にならない。
      • すずめの涙や日本酒、サングラスなどは手に入りにくく、すずめの涙はつづら屋がメインとなり、日本酒とサングラスは希望の都で買えるが場所が分かりにくくもし売っているのに気付かなければ福の神からもらえるまで粘るしかないと勘違いしてしまう恐れもある。

総評(ターボ)

FC版から大幅にパワーアップし、PCエンジンの力を存分に発揮した良リメイクとなった。
以降のRPG系列の作品は本作をベースとして発展していくこととなる。


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最終更新:2024年02月09日 20:53

*1 敵が明確に人間を殺す描写や非道な悪者が出るのはSFC版「新」が唯一。ただし、本作で登場するダメージ床の「血の池」については「鬼に殺された人々の血でできた池」という少々重い設定になっている。

*2 プレイ時間に応じて加算され、リアルタイムで2時間毎に1歳分年を重ねていく。

*3 四コマアンソロジーでは桃太郎が高齢になったのにいざ帰ったらおじいさんとおばあさんは全然変わっていなかった、とネタにされていた。

*4 実は「放屁の術」はクリアに絶対必要な術である。また「つかう」→「アイテムをころがす」も有名な昔話にちなんだものであり、これもまたゲーム進行に必須だったりする

*5 敵を倒して得られるお金が1~2両で、宿代は5両

*6 スタート地点周辺の敵からは防具なしでも1ダメージしか喰らわない事がザラなので、防具を買う事自体が地雷と言える

*7 桃太郎と敵の素早さが同じ場合でも、約4割の確率で奇襲される。

*8 同じ凍らせ攻撃でも、閻魔大王の使ってくるものはカイロで軽減出来ない

*9 体力は1000以上あるように見えるが、実際の体力は255であり受けたダメージの3/4はカットされる仕組みとなっている。ラスボスとしての膨大な体力を表現するための策と思われる。

*10 適正レベルで最強装備なら、ろっかく1発でだいたい110前後のダメージが出る。ダメージカットを考慮しても実ダメージは27前後になる

*11 しかも回復アイテムの入手はランダムな上に大金がかかる。

*12 技を回復させる「せんにんのかすみ」は「つかう」を実行しても回復はするが、何故か「たべる」での回復量の半分しか回復しない。

*13 とは言えイヌは序盤のうちに仲間になり、また伸ばし難い攻撃力を上げてくれる事もあって有難みがある。具体的に言えば仲間になる前は村の周辺の雑魚を倒すのに2~3発殴らねば倒せなかったのが、仲間にした後はほぼ1撃で倒せるようになる

*14 ただしその先の道中がイヌを仲間にした事を前提にした強さ調整となっており、すぐまた苦戦をする事になる。なにせ直前に戦った中ボスと同等級の強さの敵が雑魚として出てくるのだから

*15 が船を使わないと先に進めないので、むしろ必須のお供と言える

*16 一般の「トイチ」は「十日で一割の利子」の暴利金貸しだが、本作においては「1000両預けるごとに100両の手数料を取られる」の意味。

*17 制作は『チャージマン研!』で知られるナック(現・ICHI)が担当していた。

*18 当時は『聖闘士星矢』をはじめ『鎧伝サムライトルーパー』『天空戦記シュラト』など「鎧モノ」と呼ばれるアニメが流行していたので、そのブームに乗ったものだろう。

*19 この後に発売される『桃太郎伝説II』は本ソフトの実質続編にあたる。

*20 おじいさんとおばあさんに化けて桃太郎を騙そうとするのもじゃこつばばあになっている

*21 20000両で売れる金策用アイテム。FC版ではびろーんの森南東部に、ターボでは希望の都北の毒沼の中に落ちているがゲーム中では完全にノーヒント

*22 FC版でも鬼の爪跡で普通に雑魚敵として出てくる。これはターボでも変わっていない

*23 金魚を欲しがっている人が二人いて、片方は外れでおにぎりと交換になってしまう。