水滸伝 天命の誓い 

【すいこでん てんめいのちかい 】

ジャンル 戦略シミュレーションゲーム
※Win廉価版
対応機種 PC88SR、PC98、X1turbo、FM77AV、MSX2
ファミリーコンピュータ、プレイステーション、セガサターン
Windows 98~2000(ソースネクスト)、Windows 7~10(Steam)
発売・開発元 光栄
発売日 1989年3月
定価 9,800円
判定 良作
水滸伝シリーズ
天命の誓い / 天導一〇八星
コーエー歴史SLG作品


概要

光栄(現・コーエーテクモゲームス)が製作・発売した歴史シミュレーションゲームの一つで、中国四大奇書の一つ「忠義水滸伝」を題材としたもの。
ゲーム画面は一見、『三國志シリーズ』や『信長の野望シリーズ』の様な国盗りゲームに似ているが、本作の最終目的は天下統一ではなく「大宋国を牛耳る姦臣(ゲーム上の肩書は「寵臣」)・高俅を捕えて斬る」こととなっている。

  • ちなみに原作では高俅を捕えても斬ることには至らず、好漢の集まりである梁山泊は宋に帰順する。その後は方臘の乱の鎮圧で多くの好漢が戦死し、最終的には高俅に邪魔者扱いされた頭領・宋江は毒殺され仲間たちもちりぢりになるという結末になっている。これは原作の骨子が「悪人たちが忠義に殉じることで罪を贖う」であるために止むを得ないことであった。
    • ゲームではこの悲劇を回避し、念願であった高俅打倒を本当に成し遂げることができる。これが可能になった最大の原因と思われるのは、原作では高俅をかばい続けてしまった結果国を滅ぼすことになった徽宗皇帝が「現在、大宋国は滅びつつある。その原因は高俅にある」とはっきり認識しており、高俅討伐を成し遂げられる者の出現を待ち望んでいるという、基幹設定の大改編とでもいうべきものであろう。毎年一月に表示される、皇帝の「高俅のために国が滅ぶ……」という嘆きの台詞にそれが現れている。

ゲームの流れ

  • ほとんどの好漢(≒君主)はまず領土を持たない放浪状態から始まり、最初の領土とする土地をもとめて逃亡(移動)する。
    ここで空白地ならどこでも好きな場所で旗揚げし本拠地とすることができ、同じシナリオ・同じ好漢を選んでも最初の本拠地によってゲームの展開は変わってくる。
    • 厳密に言うと他人の領土でも旗揚げはできるが、そこの支配者と戦って勝たなければならない。たいていは小者(兵士)を従えており、単身で挑んでも勝てるケースは比較的まれである。
  • こうして旗揚げ後、その領土の『共鳴』(≒民忠誠度、最高値100)を40以上まで上げると、民も好漢を認めて収入が得られる領地となり「人気」が上昇。その後は街で仲間を誘って領土をさらに拡大したり、領地を荒らす獣を退治したり…を繰り返して人気を高めていく。
    • そして人気が250まで達すると、密勅が下り晴れて高俅の本拠に攻め込むことができるようになる*1
    • 上記の設定から一見、共鳴が上がるまでは大変そうに思えるが、冬以外なら『狩猟』コマンドで毛皮(換金アイテム)や食料が手に入り、また『調達』で住民から直接金を入手することも可能*2なので、完全に無一文でかつかつになることは少ない。
      • 200程度の食糧を2回民に施すと40程度の共鳴度にはなる(性格にもよる)。ある程度技量が高い強者は狩猟で200程度の食糧は得られる。毛皮を得てそれを売った金で食糧を買ってもよい。よって、体力が十分なら半年程度あれば共鳴度40は達成可能。
    • ただし共鳴度が60(程度*3)以上となると隣接する官軍や他好漢から攻め込まれ、高俅からの妨害も受けるようになる。それを避ける為に、隣接する領地では安全が確保されるまであえて共鳴を上げず、狩猟や調達コマンドを活用したり他領地からの物資をもらって戦力を整えるという戦略もあり。
      • おそらくこれはプレイヤーが旗揚げ直後にいきなり攻め込まれて滅亡しないための措置だと思われる。
      • 共鳴度が低い=無名で周囲から警戒されにくいということも表現されているかもしれない。これは共鳴があまり低い場合に暴動が起きないこととも合致。
    • まとめると、共鳴度40は税収のために必要、60程度まであげないと暴動のリスクあり、60程度以上にまであげると脅迫や敵の侵攻のリスクあり、となる。
  • たとえ勅命を得たとしても高俅は最大勢力として多くの領土・優秀な人材を抱え、危なくなると他の領地へと逃げ込むために捕えて斬るのは容易ではない*4。厳しい時間制限(後述)もあるため、最後まで緊張感あふれる展開が続く。
    • 一応高俅が斬れない=高俅のいる国に攻め込めないだけで、官軍統治国に戦争を仕掛けることに制限はない。勅命前に官軍の領地を削り取ったり人材を得たりすることも可能である。領地自体も非常に裕福である。
  • 1127年になると金の太宗が攻め込んで来て、靖康の変が発生。徽宗以下が金に拉致され、全土が金の領土になり強制的にゲームオーバーとなる。*5
    • 4つ用意されたシナリオ*6の開始時期は1101年~1105年。いずれにしても20数年でクリアする必要がある。
    • 勅命を受けるための人気250を達成するためには、全48国中20国程度を支配すれば十分である*7。また10国・20国の2国の共鳴度をあげれば梁山泊の主となるイベントが起こり人気が100上昇するためより早期に勅命を得られる。

評価点

  • テンポの悪くない内政要素。
    • コーエーのSLGにおいては重要かつ中だるみにつながったり面倒にみえることで敬遠されがちな部分だが、本作は比較的テンポ良く進むように調整されている。
    • 売買、人材集めが一度に行える。
      • 本作の売買や人材集め等は町へ出向して各施設で行う。毛皮と食料の売り買いは雑貨屋で、人材集めは占い屋で調べてから繁華街で行う、領土によっては武器屋や造船所もあって武装度を高めたり、河などを渡るための船の用意も可能。
      • これらのことが1月で行えて消費体力も出向自体にかかる10のみ、そのために効率よく物資を整えて人材を増やしていける。
      • 武器屋と造船所はそれほど多くない(ほとんどの高俅領には完備されている)。弱小な好漢が武器屋と造船所の両方を確保するのはそれなりに大変であるので、武器や船を製造できる強者は有用である。
    • 宴会コマンドの登場
      • 全員の忠誠を高めて体力を回復させることができる。本作において体力は行動力を兼ねているため、このコマンドの価値は大きい。
      • ただし忠義(後述)の数値が高すぎる無頼漢が統治者だと、宴会での忠誠度の上昇が低くなってしまうので注意。
  • 高俅さえ捕らえて斬ればゲーム終了。よって中華全土併合などということは行わなくてよいさくさくプレイ。
    • 前述のように、全土の半分を掌握する必要すらない。
    • 慣れれば半日どころか数時間で終わる。ゲーム内時間で4,5年でのクリアが可能。
    • 繰り返しプレイが容易であるため、ちょっと空いた時間に、様々な目標を設けてみたり、戦術を試してみたり、縛りプレイに走ってみたり、というやり込みもいいだろう。
  • 無頼漢(人材)の能力設定は簡素でありながら非常に個性が強い。
    • 人材には『腕力』『技量』『知力』という3つの能力値が設定されており、その全てが戦略のみならず戦争において重要な意味を持っている。
      • 具体的にいうと腕力が高ければ戦闘力が高く、技量が高ければ射撃ができて船を製造出来る。そして知力が高ければ火計や強力な『妖術』が使えるようになっている。技量と知力が高ければ調達した鉄から武器を製造することもできる。
      • そのためこれ以降の歴史シミュレーションゲームに多い「国が富んだら文官は用済み」ということがなく、能力値が高ければ誰にでも活躍の場面がある。
      • また様々な行動により人物は経験を積んでゆき、それぞれの能力値に対する経験値が100になるとその能力が1上昇する。そのため贔屓にして長く使い込んでいけば、人物はそれなりに成長してくれる。(ただし実際のプレイ期間は20数年以下と短いため、雑魚無頼漢を一線級に叩き上げるのは難しい。)
    • 他にも『勇気』『仁愛』『忠義』という精神値が設定されており、人物間の相性やコマンドの成果などに様々な影響を及ぼす。
      • 勇気が高いと狩猟に有利だが外交に不利で、かつ無謀な一騎打ちを勝手に受けてしまう。
      • 仁愛が高いと共鳴度や配下の忠誠を得るのは有利だが、税収や調達の効果が下がる。
      • 忠義が高いと何事も真面目に行うので訓練に関しては効果が高くなる。反面、真面目な性格が災いして他人を楽しませたり騒ぐ事が苦手で宴会を仕切りにくく、効果が低くなる。
    • 能力値以外にも、コマンドを実行するごとに減少する『体力』の値がある。月ごとに回復するが、これが一定以下になった無頼漢(好漢自身も含む)は一切の命令を拒否するようになる。不便ではあるが、人間臭い設定である。
      • 要するに『信長の野望』シリーズなどの行動力システムと同じである。しかし単なる「行動力が足りません」などのシステムメッセージではなく、いちいちやる気の無い台詞で断ってくるという演出によって深い趣を得られる。
    • 本作の無頼漢は、なんと255人全員に細かく描き込まれた固有の顔グラフィックが用意されている。このグラフィックも美麗で且つそれぞれの人物の特徴を能く顕していると評価が高い。
    • 忠誠度の高い無頼漢とは『義兄弟』になることができる(難易度により5~9人まで)。本作の属領は全て自動委任だが義兄弟が統治する属領には直接の命令が出せるため、この義兄弟に誰を選ぶかも重要である。
      • 契りの成功率には性格や人気も関わってくる。また、国の支配者によってコマンド効果などが上下すると言う要素もある(このゲームの内政コマンド効果は、実行強者のパラメータに加え、国の支配者または好漢の性格が影響を及ぼす)。
      • しかし内政に関してはCOM任せの方が効率がよいため、戦争目的以外には義兄弟を作らないようにするのも有効である。ただし、ゲームレベルが低い=義兄弟を多く作れる場合、後方に輸送や情報収集用の強者を置いておくことは有用である。
  • 本作には戦争にも多彩な仕掛けが盛り込まれている。
    • 季節の概念が導入されており、冬に攻めると湖や沼が凍って平地になっている。また、秋は火計が成功しやすく、夏は雨が降りやすい。更に、春は曇天が多く妖術使いに有利などと言った要素もある*8
    • 水上地形は船がなければ渡ることができないうえに、川には流れが存在しており『操舵』能力を持たないものが入ると流されて勝手に移動してしまう。
      • さらに攻撃を受けた際に船が壊れてしまうことがあり、水上にいた場合その部隊は水に投げ出され大きな被害を出すことになる。陸地に避難できない状況である場合、死亡することすらある。
    • 技量が60以上の無頼漢は弓矢による遠距離攻撃ができる。更に技量85以上の無頼漢は敵の強者の体力を直接減らすことがある。
      • 敵強者の体力を0にしなければ捕らえられない上にコマンドの実行に体力が必要であるため、それなりに効果的である。体力を減らしておけば一騎打ちにも有利。
      • また技量等が高いと武器屋がなくとも武器を製作でき(大量に作るのは厳しいため序盤専用に近い)、操舵能力があれば造船所がなくとも船を制作できる。
    • 知力60以上の無頼漢のみ使える火計は『三國志』に続いての計略だが、敵の兵士数と体力を減らす仕様になっている。さらに技量次第では『消火』コマンドで火を消すことも可能。
    • 戦争行動の中でも一際強力で目を惹くのが、知力80以上の無頼漢のみ使うことができる『妖術』である。曇りの日にのみ実行でき、使うと無頼漢の周囲2HEXにいる敵の小者と体力を減らし数ターン行動不能にする*9。知力90以上の無頼漢が使うと範囲がさらに1HEX広がる。
      • これがあるため、腕力・技量が低くとも知力の高い無頼漢は非常に頼もしい。もちろん、敵にそのような無頼漢がいる場合は一層の注意が必要。
    • 戦闘時の各コマンドについても体力を消費する。体力が一定値以下となると全く身動きを取れず、援軍を呼ぶことすらできなくなる。

問題点

  • 無頼漢の勧誘に失敗しただけで人気が下がる。
    • 一応確実な助言が得られるが、良い方向に外れる(できないと言われてもできる)ことがあるので注意が必要。
  • 無頼漢加入時の初期忠誠度が低すぎる。仲間に入れたのも束の間、月が変わった途端に出奔するのはザラ。
    • 無頼漢の忠誠度が30未満だと月の終わりに出奔する可能性があり、40未満だと年の始まりに官軍に寝返る可能性がある。新たに仲間にした無頼漢の初期忠誠度は大抵20台*10で、仲間にしたターンはそれだけでその月のコマンドが終了してしまうため、同じターンに忠誠度を上げることは基本的に不可能。
      • 一応後半になると「義兄弟で仲間にし、同一ターンに好漢で金を施す」という手段がある。好漢は遠隔地の輸送や忠誠度上げが可能。
    • そのため、「私の命を預けましょう」「犬馬の労を尽くします」といって仲間になった無頼漢が、そのターンの終了時に出奔するという理不尽な現象が頻発する。対策はなく、次の月に金を施せるまで出奔しないことを祈るしかない。
  • 一騎打ちが不便すぎる。
    • 城に籠もる敵には一騎打ちは挑めず、そして相手に申し込むだけで体力が-5される。さらに相手に小者(兵士)がいると蹴散らすのにさらに体力を消耗する。
    • それを越えて相手に挑んでも、相手を攻撃するのにまで体力を消費するため、腕力・技量が敵に勝っていたとしても、兵力的に不利な状態で一騎打ちを挑むことは通常のプレイでは困難である*11。よって不利な場合の逆転の手段としては、使い勝手が悪い。
    • COMが一騎打ちを挑んで来た時、プレイヤーが断っても、無頼漢の勇気が高いと勝手に受けて勝手に負けることがしばしばと言う理不尽。
      • 一騎打ちが有効な局面としては、少数精鋭で攻め込み敵の兵力を小出しにさせ(おおよそ兵力33以下で攻め込むと、敵は100程度の兵力で迎撃してくる)、妖術・技量85以上の弓攻撃・火計を絡めて敵強者の体力を大いに削り残った強者を小者を蹴散らしながら一騎打ちで捕らえるケース、援軍を呼ばれると面倒と見て圧倒的有利な局面で仕掛けるケースなどがある*12。いずれもゲームに慣れるまでは行い難く、一騎打ちが使いにくいのは確かであろう。
  • 移動で毛皮・鉄を運ぶことができない、戦争に食糧は持って行けるが金は持っていけない等、大ざっぱさが不便に繋がる部分も。
  • 各国に滞在できる強者の数の制限がきつくストレスや手間になる。
    • 滞在数は城の数×5人となっているが、最大10人が戦争に参加できるにも拘わらず、城が2つ=10人しか滞在できない国が相当に多い。
      • 城の多い国の有用さを出しているとも言えるが、強者の移動・整理時に余計な手間がかかりすぎる
  • ゲーム設定上やむを得ないとも言えるが、結局の所、辺境から始めて最後は中央を落とす展開になってしまう。
    • 高俅を無理矢理逃がして故意に端まで追い詰める事もできるが…。
    • 高俅領に接していると、ろくに兵も揃わない内から脅迫または戦争に晒されるため、逃亡中の好漢でプレイすると辺境にねぐらを構えざるを得ない。つまりはワンパターンである。
      • 後半のシナリオであれば、いきなり高俅と事を構えられる好漢も存在している。ただしまだ勅令は得ていないので、本拠地には攻め込めない。

賛否両論点

  • CPUの統治する領地には特殊な補正がかかっているため*13、共鳴度が高ければほぼ確実にプレイヤーが介入するよりも高速で領土を豊かにして仲間まで集めていく*14。指示をきちんと出しておけば攻め込んだり領土を拡大する事もないので安心して任せられるが、プレイヤーが面倒を見るよりCPUに任せた方がいいって言うのは果たして…。
    • その為、ある程度共鳴と無頼漢の忠誠を高めたらすかさず他の空白地を領土化したり攻め込む事も有効な作戦。
      • COM任せの欠点としては、無頼漢が成長せず全無頼漢に均等に小者(兵)を持たせたり、訓練や武装度に無頓着だったり、何も考えず小者を雇って兵糧を食い潰したり…といった辺り。
  • CPUの仕様を突くとゲームバランスが崩れることも。
    • 共鳴が低いと攻め込まれないことを利用し、領地を部下に任せて各地で部下集めや狩猟、調達コマンドを行いまくり戦力を短期間で整える方法が取れてしまう。
      • 任せておいた領地もCPU時のチートによって栄えていくので好都合。更にこの方法で、好漢や官軍が進出しそうにない僻地ならば共鳴を上げて領地にしてしまうことで人気まで上げられる。
      • そうでなくても、開始後に逃亡中の好漢はすぐに最寄りの空白地で旗揚げしてから目的の領地へ向かうほうが良い。と言うのも領地を持つ好漢の方が先に行動でき(領地持ちの好漢や官軍の後で逃亡者の順番が決められる)、逃亡中よりも旗揚げ後の移動コマンドの方が体力の消耗が少なく僅かだが知力経験も得られ、旗揚げ時に手に入れたわずかな物資も持っていける等メリットが大きいので。
    • 官軍は上記の通りかなりの戦力を持つが、うまくこちらに攻めて来るように仕向けてがら空きになった領地に攻め込んで奪うという方法で比較的楽に戦力を削り取れる。
      • 攻めとる気がなくても、ある程度戦力が整えば官軍に攻め込ませるのは有効。本作では城の防御修正がかなり高いのでうまくやれば攻めてきた官軍を返り討ちにしてこちらの戦力として取り込める*15
      • 妖術使い数人と腕力の強い無頼漢若干名を兵30程度以下で出撃させる*16。兵が0だと敵は強者を一人*17しか出撃させないため、曇りを待って連続妖術からの火計からの殴り殺し…と言った要領で、ほぼ損害0で兵力1000を越える国を攻め取れる場合も。
      • 特殊な事情が無い限り迎撃する1部隊は「兵力最大の強者」「兵力が同数なら強者一覧で、統治者(三国志で言う所の太守)を除いて最も上に位置している強者」に収まる傾向が強い。これが弓を撃てず知力が低い場合見事なカモになる。
    • これらの要素はある意味、原作の梁山泊の好漢らしい戦い方とも取れるので単純に邪道とは言い切れないし使わなければゲームバランスを保つことが可能。
  • 原作とはマッチしない要素の数々
    • 一応、狩猟コマンド等の個性的なコマンドがあるものの、骨組みは当時のコーエーの戦略シミュレーションであり、前述の通り人気を上げるために各地を支配、侵略しなければならないので、結局の所は領地の運営や拡大を行わなければゲームクリアはかなり困難。
      • 原作でも好漢たちは寨を構えて官司に反抗したり他の寨と戦ったりはしていたが、あくまで個人的な理由での闘争が多く、領地の拡大や寨を富ますといった行為にはあまり重点が置かれなかった。
      • なので、いくら勅命をもらうためとは言え無頼漢達が開墾や町作りに精を出すのは違和感がある。完全に気分の問題でしかないが…。
    • 計略が存在しないため、「官軍を離間させてこちらに加える」「官軍の領地に忍び込み物資を盗む」といったことは行えない。
      • 原作では正面からの力押しよりは計略や姦計を駆使した戦いが主であることが多く、ある意味卑怯とも言える手段で官軍をやり込めることも多かった。
      • しかし本作では計略コマンドそのものが存在しない。にもかかわらず高俅側は平気でこちらの金を度々騙し取り、忠誠度の低い無頼漢を引き入れ、大軍をちらつかせて金品をせがんでくる。逆だろ…
  • ゲームシステム上、原作以上に妖術使いが多発する。
    • 前述の通り「知力80以上で妖術を使用でき90以上で範囲が広がる」という仕様上、知力が高い無頼漢は全員妖術が使用できてしまう。
    • その為本作最強の妖術使いは梁山泊最強道士の公孫勝(知力90)では無く、道術の仙人にして公孫勝の師匠の羅真人(知力93)…でもなく、知力だけを見ればなんと軍師の呉用(知力95)である。…もっとも呉用は体力面に難があるため(最大80)、あくまで知力だけを見れば、であるが。
      • 妖術は体力を20消費するが、発動可能条件は「知力80以上」「天候曇り」の他、「現在体力50以上」と言うものがある。一方、(防衛戦でなく)敵国に攻め込む際は体力が-10される上、移動でも体力を消費する。つまり呉用の場合、敵国攻めで2回使おうとするのは非現実的である*18
        妖術を食らい呆然としている敵に火計を仕掛けるにも体力は必要だし、最大値が高ければ次の戦争に向けて最低限必要な体力にまで回復させる時間も短くて済む。全く当たり前であるが体力は高ければ高いほどよい。
    • また「原作では副軍師に過ぎず、後に公孫勝に弟子入りしたはずの朱武(知力91)がゲーム開始直後からバリバリの妖術使いとして活躍できる」「弓の名手花栄が知力も77あるため、その気になって育成すれば妖術を使用できるようになる*19」など違和感が多い。
      • なお宋江をプレイヤーキャラとした場合、能力値ルーレットにより知力80の妖術使いとすることができる(原作の宋江は九天玄女から授かった天書を読むことで妖術を使用している)。

総評

それまでの戦略SLGの常識も通用しない本作はコツをつかむまでは難度が高い。しかし厳しい制限時間と強敵、さらに一個人となってプレイし徐々に仲間を集めてゆく自由度の高さと適度なプレイ時間によって何十周とハマるユーザーが続出した。
無理に天下統一をする必要がない事、好漢と義兄弟以外の領地は命令する必要がない(できない)事、COM委任した領地が比較的上手く立ち回ってくれる事、等が厳しい時間制限と相まって、この手のSLGにとって致命的な『中盤以降の中だるみ』を全く感じさせない。
知名度では『信長の野望』シリーズや『三國志』シリーズとは比ぶべくもないが、その絶妙なバランスをして光栄の歴史シミュレーションゲームの中で最高傑作という人も多い。


余談

  • キャラのセリフが全体的にシュールである。
    • 命令に従うとき「人使いの荒い親分だこと」、拒否するとき「気が乗らないときもあります」、女性を捕虜にしたとき「痛いからきつく縛らないで」、武器屋で武器を買うとき「どうせ悪いことに使うんだろー」、等々。
    • 毎年正月になると徽宗皇帝が「高俅のために宋国が滅ぶ…」などと愚痴をこぼす。
    • 強制ゲームオーバーの1127年が近づくと、金の太宗が「宋国の富は魅力がある」、「内乱が続く今が好機だ」と話すようになり、それとなく分かるようになっている。

その後の展開

  • その後、コンシューマ移植はもちろん同時代の他のゲームを差し置いてWindowsに移植された。これだけ古いゲームながら、ソースネクストで廉価版の発売が行われていた。
    • ダウンロード版の販売は残念ながら2011年9月に終了、再販版の販売も終了した模様。
  • 96年にはSSとPSでリメイク版が発売された。
    • キャラグラの描き換えやBGMの強化など演出面が大幅に強化された。また個別のエンディングムービーやオープニングの掛け合いなども追加されている。
    • しかしロード時間や思考時間が長いため、快適さは保証しかねる。また難易度も若干低下している。
  • 『コーエー25周年記念パックvol.6』の収録ソフトの一本として、本作のPC98版が収録されている。現在は入手困難だが、あくまで原作にこだわるならこちらがお勧め。
  • 当然のごとく続編も発売されたが、コンシューマ移植で劣化したのもあって大した評判にはならなかった。そこそこの出来ではあるが名作というには遠い。
  • 本作で搭載された要素である消火や妖術等は三国志の技能や戦術等に用いられるようになった。
    • また『三国志IVパワーアップキット』や『三国志DS3』において、SP武将として梁山泊の面々が使えたりとさりげなく厚遇されている。
  • 2017年2月22日にシブサワ・コウ35周年を記念した「シブサワ・コウ アーカイブス」の第三弾としてSteamで販売された。(ストアでは『Bandit Kings of Ancient China / 水滸伝・天命の誓い』と表記)

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最終更新:2023年03月16日 09:55

*1 高俅は徽宗皇帝の臣であるため、皇帝の命なくして征伐することはできない。なお、密勅の判定は毎年1月のみ。

*2 本作では共鳴が40以上60(程度)以下でなければ住民は暴動を起こさない。その為、共鳴が0の旗揚げ直後なら有効なコマンドになりうる。

*3 ゲームの進行度合いによって若干異なる模様。概してゲームが進行すると低い共鳴度でも干渉されるようだ。

*4 高俅が逃げ損ない、23国を一突きしただけでゲームが終わることもある。逃げる先となっている国の武将枠が満杯であると発生するようだ。

*5 史実では皇帝が捕らえられ河北を失うが、遺臣が南方に逃げ延びて「南宋」として150年ほど続く。ゲームではいきなり全土を制圧されるので、史実より悲惨な末路になってしまう。

*6 容量の都合と思われるが、機種によってはシナリオが減少している場合がある。MSX2版など。

*7 1国の共鳴度を一定値まであげるごとに人気+12。その他ランダムイベント等で若干の上下があるが、通常はプラスに働く。

*8 「ハンドブック」によれば、16bitPC版では季節によって天候の傾向が異なる。

*9 十分な体力が必要、かつ体力消費が非常に大きな必殺技である。1回の戦争で2回妖術を発動するためには、体力面での条件が非常に厳しい。身動きが取れない敵を火計で追撃できれば更に効果的である。

*10 繁華街で仲間にした場合。戦争勝利時や「塞に迎える」でに仲間にした場合はそれなりに高くなる。

*11 弓攻撃の強者への命中・火計・妖術で敵強者の体力を大いに減少させていれば勝利可能であるが、序盤から妖術を使えるケースはまれである。ちなみに一騎打ちにおいても地形効果が適用されるため、腕力自慢の強者であれば敵兵を蹴散らして敵強者を討ち取ることも十分可能。

*12 本作では、兵数が0になっても、体力が0にまで減少しなければ強者が残る。これを捕らえるか体力不足で行動不能にするためには通常1~2回程度は追撃しなければならない。

*13 プレイヤーは一国につき毎月1回しかコマンドを実行できないが、CPUは一国で何度かコマンドを実行できる、実行できる数はその国にいる無頼漢の数に依存する、などと言った説がある。

*14 共鳴度上げだけはプレイヤーが介入した方が断然効率が良い。何度か食糧を施すだけである。

*15 腕力自慢の強者3人程度に精強な兵を100ずつ付けて籠城するだけでいい。敵は700程度の兵で攻め込んでくるが、腕力の低い強者が混ざっていることもあり、城の防御効果により簡単に全滅する。この際に強者を4,5人は捕らえられる。各所で繰り返せば高俅が人材不足でろくに戦争ができなくなることも…。ただし国土は荒廃するので、それ専用の国をいくつか用意する必要がある。

*16 この様に複数名で攻めると、兵数が少なくても敵は籠城しがち。兵数に強者の体力も加えて判断している模様。よって同じ兵30程度であっても強者一人で攻め込んだ場合、敵は籠城せずに積極的に逆襲してくる。が、兵の武装度・訓練度および強者の能力が有利であれば、一騎打ちも絡めて勝利できてしまう…。

*17 正確には「3倍以上」あたりの判断と思われる。兵数100の強者がいない場合60の強者が二人出てくるような場合もある。

*18 呉用一人で攻め込めば敵の迎撃部隊の方から近づいてきてくれるが、あまりに不利である。

*19 ひたすら知力経験値稼ぎに専念する必要があるが…。ちなみに花栄は能力値総計最強のキャラ。