注意:この記事では『DIGITAL DEVIL SAGA ~アバタール・チューナー~』及び、その続編である『DIGITAL DEVIL SAGA ~アバタール・チューナー2~』の両方を扱います。


DIGITAL DEVIL SAGA ~アバタール・チューナー~

【でじたるでびるさーが あばたーる・ちゅーなー】

DIGITAL DEVIL SAGA ~アバタール・チューナー2~

【でじたるでびるさーが あばたーる・ちゅーなーつー】

ジャンル ロールプレイングゲーム

対応機種 プレイステーション2
メディア DVD-ROM 1枚
発売・開発元 アトラス
発売日 1:2004年7月15日
2:2005年1月27日
定価 6,800円
レーティング CERO:15歳以上対象
廉価版 ATLUS BEST COLLECTION
2006年3月23日/1,980円(2作共通)
判定 良作
ポイント 『女神転生』シリーズの完全新作
「売り方」には問題有り
実質的には2作で1つストーリー
時が経つに連れ「内容」が再評価
女神転生シリーズ


概要

スピンオフではない『女神転生』の完全新作として製作された作品。シナリオ原案は五代ゆう氏。
『1』と『2』のストーリーは完全に繋がっており、『1』で物語は完結しない。
その為、『2』を続編とするよりは前編・後編といった位置付けが正確である。
通称『DDSAT』『アバチュ』で、以下がそれぞれのストーリー。

『1』のストーリー

部族(トライブ)同士が激しい抗争を繰り広げる、雨の降り続ける世界、ジャンクヤード。
トライブ「エンブリオン」を率いるサーフは覇者のみが辿り着ける楽園「ニルヴァーナ」を目指して抗争に明け暮れていた。
ある戦いにおいて謎の物体「ツボミ」から放たれた光球に汚染され、悪魔に変身する能力「アートマ」に覚醒してしまう。
悪魔の力を得ると同時に戦う事しか知らなかったサーフ達に人間らしい感情が芽生えていく。
不思議な力を秘めた黒髪の少女セラを巡り激化していく抗争の中、真の敵の影を追うサーフ達を待ち受ける真実とは…。

『2』のストーリー

+ ネタバレ注意

ジャンクヤードの抗争に終止符を打ったサーフ。
しかし、ジャンクヤードは消え去りメンバーも散り散りになってしまった。
サーフを待っていたのは楽園などではなく、石化した人間の彫像と廃墟、そして黒い太陽であった。
仲間を求め見知らぬ荒野をさまようサーフの前に、謎の兵士達が出現。
彼らはサーフを所属不明のアバタール・チューナーと呼称し襲いかかる。
彼らもまた悪魔化する力を宿していたのだ。
サーフと兵士の死闘を皮切りに、ニルヴァーナを舞台とした最後の戦いが幕を開ける。


主な特徴・新システム

  • 戦闘は『真・女神転生III NOCTURNE』同様にプレスターンバトルシステムが採用されている。
    • 戦闘に参加するパーティは3人まで。それ以外は控えとなる。3人になったことで「次に回す」コマンドがより重要になった。
  • 悪魔に変身して戦う 
    • 悪魔合体や悪魔会話等の要素は無い。変身する悪魔もキャラごとに固有の悪魔である。ちなみに、各キャラには悪魔の姿やイメージを元にした模様が体のどこかに存在しており、それぞれに名前がついている。
    • 変身を解除して人間状態で戦うことも可能。スキルが使用できなくなり、被ダメージ量が大きくなる等のデメリットもあるが、銃撃属性の攻撃が可能、悪魔状態に存在する弱点がない、破魔属性のスキルを完全無効化するなどのメリット*1もあり、戦術の幅を広めている。装備品で攻撃力を挙げられるという利点もある(ただし、強化しても攻撃力が低い)。奇襲された場合には最初から人間状態での戦闘となる。
      • 人型でないと突破できないという事態はないため、銃撃弱点以外には狙って使うことはそう多くないが、意外な局面で有効な使い道も存在する。
      • なお、本作は従来作品のように異世界から出現した悪魔というものが存在せず、敵として出現するのは「管理者」が使役する駒かもしくは人間が変じた姿である。人間が敵になるのはよくあることだが…(ただし『2』の終盤は、少し話が違ってくる)。
  • 怯え状態
    • 敵悪魔の攻撃を無効化する、または弱点を突くと悪魔が怯えることがある。怯え状態の敵からは必ず逃走できるほか、反撃スキルを使用しなくなり、後述するハントスキルの効果が増すという利点がある。
  • マントラシステム
    • 各地に配置されているカルマ端末から曼斗羅(マントラ)購入して装備する。マントラを装備した状態で敵を倒してAP(アートマポイント)を一定値貯めてマスターすることでスキルが習得できる。
    • 普通に戦ってもAPは貯まるが、ハントスキルという生きたままの敵を喰らう攻撃によって敵を倒すことで大量に獲得できる。ただし、運が悪いと腹を壊す。ハントスキルは確率依存で即死させるタイプとダメージを与えるタイプの2パターンが存在する。
    • このため、通常戦闘においては弱点を突いて怯えさせ、ハントスキルで倒すという戦い方が重要になる*2
    • ボス敵にハントスキルは使用不可能だが、戦闘後に敵の死骸を喰らっている為戦闘終了時にAPが得られる。ただし「敵を喰らう」ことでAPが得られるため、たとえボス敵であっても戦闘後に逃げられた、または種族がマシンの為喰らえないケースではAPは得られない。
      • 前述の通り、敵のある程度(具体的な割合は不明)は元人間である。それを喰らうということで、キャラの一部も嫌悪感を示したりしている。単なる戦闘システムの枠に収まらず、「敵を喰らう」という要素はゲームの根幹に根付いている。
  • ウェイトスキル
    • 使用することによって一度だけ特定の属性を無効、反射、吸収できるシールドを張ることができる。重ねがけはできない。これを活用することで弱点をカバーすることができ、ボス戦闘においては非常に重要。当然、敵も使用してくる。
  • リンケージ
    • パーティメンバーが持つ複数のスキルを組み合わせて発動する合体攻撃。参加人数分のアイコン(行動回数)とコスト(HP/MP)を消費するが、相応に強力な特殊スキルが発動できる。敵も使用してくるため、使われないように敵一体を集中攻撃して先に倒すといった対策も講じなければならない。
    • 敵が使用すると「敵の合体攻撃だ!」という緊迫感のある文章が表示される為、戦闘時の緊張を高めている。
  • 巨大な敵
    • 通常エンカウントでもプレスアイコンを複数所持する大型の悪魔が出現する。通常敵の数倍のHPを持つ強敵だが、ハントした際の見返りも大きい。
    • 仲魔システムが無い故に悪魔のグラフィックを大きくすることが可能になったとのこと。
  • 人型キーパ
    • 2周目から追加される特殊スキル。装備すると、人間のまま戦闘に突入する。実質スキル枠を使った上で弱くなるスキル。用途はいわゆる「メタル」的なカモ悪魔狙いかやり込み用*3普段では滅多に聞くことができない特殊な戦闘開始時の台詞を聞くためくらい。

『2』での新システム

  • カルマリング
    • 装備することによって様々な効果が付与される装備品。一人につき一つだけ装備可能。
    • 宝石を使って更にステータス上昇効果を追加することもできる。
  • 羅刹モード
    • 特定な状況下で雑魚と戦闘になると発生すると特殊な戦闘。力が制御できない状態で、人間と悪魔の中間のような姿になる。この状態でなければ見られないセリフや攻撃モーションが結構ある。魔法が使えなくなり、防御力・命中率が大きく下がる*4。代わりに攻撃力が大きく上がる上超高確率でクリティカル発生、相手の物理耐性を貫通するなどのメリットもある。リスクは大きいが、勝てば大量の経験値とAPを得られる。確実に逃走できるためリスクを避けることも可能。2周目以降は常に通常戦闘が羅刹モードになるカルマリングが手に入る。
  • 得意攻撃属性の追加
    • 『1』での得意属性は攻撃を受けた時のダメージ減少だけであったが、『2』においては攻撃スキルに関しても得意な属性が設定され、氷結属性に耐性を持つ悪魔は氷結属性スキルを使用すると威力が向上するようになった。
    • 『1』において、弱点属性をカバーしようと氷属性のキャラに火炎耐性のスキルを覚えさせることを優先してしまうと「水神なのに火炎属性の攻撃ばかり習得してしまう」という現象が起きる。このゲームは弱点潰しが非常に重要なので多くのプレイヤーがこの道を経験した。『2』での調整はその歯止めと思われる。
  • 人間状態の敵
    • 敵も悪魔に変身する前の人間の状態でエンカウントすることがある。人間状態では主人公達と同様に銃やアイテムを使用して攻撃してくる。戦闘中に変身されると人間状態に対して与えたダメージが回復されてしまう。なお人間状態の敵はハントして喰らうことはできない。色々とマズイのだろう。
  • ばら撒き
    • 混乱状態になると所持金をばら撒くことがある。過去作品でも存在した要素だが、今作ではばら撒く頻度及び金額が増加しているため相当な量の所持金を失いやすい。ある意味、『真・女神転生 STRANGE JOURNEY』のマッカビームの先駆けと言える。
      • このばら撒きを抑制する専用スキルまで実装されている。マッカビームに対してこのスキルを用意してくれればと思ったプレイヤーも多いだろう。
  • HARDモード
    • 被ダメージが増加し、逃走確率が低くなるモード*5。このHARDモード限定で戦えるボスも存在する。2周目以降に選択することができるが『1』のセーブデータを引き継ぐことで1周目からHARDモードにすることも可能。引き継ぎした場合はステータスアップやアイテムなどの特典もあり、それらはいずれも恩恵がとても大きいため、HARDでのプレイを推奨。

ミニゲーム

  • 『1』『2』ともにフィールドハントというミニゲームが遊べる。少しアクション要素を含むもので成功すれば大量の経験値とAPが獲得できる。
  • 『2』ではシエロシューティングというミニゲームが遊べる。こちらは完全な別ゲーの縦シューティングであり、ハイスコアを出せばアイテムがもらえる。
  • 『2』ではその他にヒーホークイズという3択クイズに低確率でエンカウントすることがある。問題は全部で100問存在し、1問正解ごとにアイテムが貰えるが、中には非常にマニアックな内容のクイズが出される為、全問正解するには骨が折れる。
    • あくまでもオマケ要素でありスルーしても問題はない。この辺りも『真III』のアサクサパズルやワープゾーンから改善されている点である。

評価点

  • 徹底して練りこまれた世界観とシナリオ
    • 古代インド神話を中心とした様々な神話、仏教やヒンドゥー教などの宗教、果てには量子論といった哲学を含む、様々な要素を題材にしたダークな世界観の下で重厚なストーリーが繰り広げられる。特に1はベースになっているのが「蜘蛛の糸」と分かりやすい下地にする事でとっつきやすくなっているが、ストーリーはかなり濃い。 『1』で張られた大量の伏線が『2』で次々と回収されていく展開は圧巻。選択肢はあるがストーリーは一本道である。
    • ストーリーの他、敵悪魔の弱点やスキル等も高いレベルで神話や伝承を再現している。暗喩が随所にちりばめられており、考察していくうちに世界観に引き込まれていくこと請け合い。
    • 「ゲーム内で悪魔交渉が無いこと(敵と意思疎通が出来ないこと)を表すために主要人物が変身する悪魔は目が存在しないデザインとなっているが、例外的に目がある悪魔(意思疎通が出来る)が存在する」「『1』には堕天使系統の悪魔が一切登場しない(『2』には登場する)」「カルマ教会ガードに物理・銃撃が効かない理由」等、ゲーム内では明確に説明されないがユーザーの考えを引き出す要素が満載である。
    • ロウやカオスといったメガテン的な概念も出てくるものの、今作ではあまりに過酷な世界で生きるヒトの生存に関わる問題の解決を提起しあう程度のものなので他のアトラス作品をやったことが無いユーザーでも十分に楽しめる。
    • 『1』での些細な会話等も『2』をやれば「あれはそういう意味だったのか」と気づくことが出来る。『2』をやった後に『1』をもう一度プレイしたユーザーも多いだろう。別の目的でやり直したプレイヤーもいるかもしれないが(詳しくは後述)。
  • 魅力的なキャラクター
    • 主人公のパーティメンバーは勿論のこと、敵キャラクターにも強い個性があり、個々のイベントが用意されている。生という指定席を争う過酷な世界の中で織りなすドラマはさながら映画のよう。
    • 特に人気があるキャラクターは参謀のゲイル。『2』では更に、皆の語り部といえる少年フレッドが挙げられる。『1』で出てくるあるキャラクターの意思を受け継いだという共通点からか見せ場が多く、『2』における二人の別離は涙なくして語れない。特にフレッドはRPGでよくある『主人公の後ろについて回るお調子者』に見えるが少年ながらあまりにも重い別れを経験し、多くの者達の生き様を心に刻んで成長していく。終盤の彼は序盤の頃とは全然違う印象を抱くプレイヤーが続出した。2人共サーフよりも主人公らしいという声もある。後述するが問題点ともなっているが。
  • 良好な戦闘バランス
    • 『真III』において評価されたプレスターンバトルを受け継いでおり、スピーディかつ緊張感のある戦闘は健在。
    • リンケージやウェイトスキルが盛り込まれたことによってより戦略的な戦闘が楽しめる。
      • 戦闘システムに関しては非常に丁寧で細かい解説がゲーム内でなされる。ライトユーザーに配慮した仕様と言えよう。『1』『2』ともに最初のダンジョンの攻略とボス戦闘の全てがほとんどチュートリアルとなっている。
  • バランス調整もなされていて、前線のパーティ全員が戦闘不能にならなければゲームオーバーにならない、また『2』ではプレスターンアイコンを4個増やす「威圧の魔石」*6が登場したことによって全滅寸前に追い込まれても立て直しが可能、といったような易しめの調整がされている。
    • 敵の行動パターンも見直され、アイコンを増やすスキルを連発することによる一方的な連続攻撃、いわゆる「劇場」も見られなくなった。
    • また、破魔属性スキルが即死ではなく割合ダメージ*7に変更された他、戦闘が終了すると戦闘不能のキャラクターがHP1の状態で復帰する、ピンチになると逃走の成功確率が上昇する、全てのアイテムを全員が使用可能な上、回数無制限の回復・蘇生アイテムが店で買えるなど甘めの調整が多い。
    • 一概に易しくなっているだけとも言えない調整もある。例を挙げると、『真III』で強力だったスキルについても調整がなされていて、条件を満たすと通常攻撃で確実にクリティカルを発生させられる「煌天の会心」「静天の会心」と同種のスキル「MAXクリティカ」「MINクリティカ」は存在するが確実に発生しなくなった他、物理攻撃を受けた際に発動するカウンター系スキルが同士討ちでも発生するなど。
    • 「劇場」が無くなった一方で、補助魔法を最大まで重ね掛けしたり、火炎属性を主力とする相手に火炎シールドを展開するなど、特定の条件を満たすとほぼ全滅確定の連続攻撃を繰り出す、いわゆる「お仕置き」ともいえる行動パターンが組み込まれている敵が登場するようになった。安易な戦術は裏目に出るというアトラスらしい仕掛けも健在。なお、以降のシリーズでも採用され、「発狂」などと言われている。
    • ボス戦は特に難易度が高い。中盤のボスが高位のスキルであるマハ○○ダインやそれに匹敵する威力の全体攻撃スキルを使用してくる他、対処が困難な状態異常攻撃や行動不能にさせる特殊スキルを行うものが少なくない。
    • 戦闘ルーチンもかなり練られており、氷結属性スキルを使用した後に凍結したキャラを徹底的に集中攻撃する他、魔封状態を引き起こすスキルを連発した後に魔封状態のキャラを即死させるスキルを使用するなど、油断すると死に直結する。
  • 総合的に難易度は抑えられており、特に『真III』で指摘された理不尽さ、対処不能な点などは大きく改善されている。
    • それでも戦闘の難易度は高いか低いかで言ったら高い部類であり、油断すると通常戦闘でもあっさり全滅してしまう。理不尽さが解消された分、プレイヤースキルが問われる手応えのある難易度となっている。
  • ハントの爽快さと奥深さ
    • 戦闘において上手く立ち回れば「弱点を突いて敵悪魔を怯えさせ、ハントスキルを連発して敵を1ターンで一掃してAPを金を大量に獲得」という流れになる。ハントスキルで次々と敵悪魔を喰らうのは非常に爽快。
    • 状態異常の敵は喰らいやすくなるが、その反面毒や呪いの状態異常に侵された敵を喰らうと高確率で腹を壊す、石化した敵にはハントスキルが無効、凍結した敵にはダメージハントはほとんど通じないが即死ハントが有効などかなり細かい設定がなされている。
    • ハントスキルを使用して倒すと大量のAPが手に入るものの、他のキャラには分配されずスキル使用者がAPを独り占めする形になる為、習得させたいマントラを考慮して喰らうキャラを選ぶ必要がある。
      • いわゆる「稼ぎ」においても作業感を軽減させる要素となっている。
  • 豊富かつ強力な隠しボス
    • アトラス作品では恒例の強力な隠しボスも存在する。メガテンシリーズお馴染みのゲスト悪魔が多く、ファンサービスとしても好評。かなり早い段階で挑むことができる隠しボスも存在するため、低レベルで挑むのも一興。
    • 隠しボスのヤマタノオロチは常時プレスターンアイコンを八つ所持するという反則的な能力を持っており、初見で驚いたプレイヤーも多いだろう。
      • ちなみに、手段を尽くせば最強隠しボスを除けばほぼ常時人型でも倒せる*8。弱点こそなくなるが、あらゆる魔法使用不可&低攻撃力という苛烈な条件での戦いもなかなか緊迫感がある
    • 『1』に登場する2周目限定の最後の隠しボスは『ウィザードリィ ~DIMGUIL~』のダイアモンドドレイクと並んでRPG史上最強クラスとも評される別次元の強さを持つ。撃破報告に発売後から数ヵ月を要したという逸話があるほど。レベル99で敵の行動パターンを把握し、そこから必要なスキルを吟味し、多少のリアルラックを味方につけなければ勝率は0という、シリーズの中でもここまでの強敵はいないだろうと開発者から言わしめた隠しボスである。マスタキャンセラ装備→瞬殺は誰もが通る道。ほぼ全てのユーザーが引っかかったであろう瞬殺は、あまりにも理不尽すぎる故か、当時のサポートセンターに電話をすると『アレは特定の行動パターンはあるが、倒せないパラメータではない』というヒントを教えてくれた。
    • この隠しボスの異常な強さは開発スタッフ内でも有名だったようで『超執刀カドゥケウス』の隠しモードが難しすぎるのではという意見について「このボスよりは楽ですよ」と返答するやりとりがあったことはネタにされている。
      • 現在ではアトラス作品恒例となった極悪パズルボスの元祖だが、それらと比べても頭二つ分ほど飛びぬけている。なお戦闘前に戦うかどうかの選択肢があるため、間違って戦うハメになることはない。
      • 現在では敵のMP切れを利用した新たな攻略法が編み出されたが、それを利用しても多少運の要素を軽減できる程度で、圧倒的な強さには変わりない。
    • 『2』に登場するHARDモード限定の最後の隠しボスも『1』の彼には及ばないものの規格外の強さを持っている。こちらも全滅確定の攻撃を避けるための検証に幾許かの時を要している。
  • 音楽
    • BGMは『真III』に引き続き目黒将司が担当。同作の路線を引き継いだ楽曲陣は非常に好評。
    • 戦闘曲は両作でそれぞれ趣が異なっており、遅いテンポで重たいサウンドの『1』、スピーディーでスタイリッシュの『2』のどちらも人気が高い。
  • 声優陣、挿入ムービー
    • いずれも豪華なキャストでクオリティが高く、ゲームを盛り上げる。声優の演技に関して『1』のオープニング~序盤での棒読みがよく指摘されるが、これは演出としてわざとやっているもので、ストーリーに関わる重大な理由(伏線)が後々判明する。
    • ある意味では実力派声優の完全な棒読み演技を楽しめるというのも貴重な機会かもしれない。

賛否両論点

  • 主人公「サーフ」について
    • メンバーが話し合うイベントシーンでもサーフは喋らず、参謀のゲイルが中心となって話すため「エアリーダー」「主人公はゲイル」と度々ネタにされる。それなりに見せ場はあるのだが他のメンバーが印象的なためどうしても目立たなくなってしまう。一応選択肢で喋っているのだが、実際に喋るのではなく文字で表示されるのみ。声に出して喋るのは戦闘時のやられボイスとごく一部のムービーくらい。作中でも「お前が喋らなすぎるから」「無口」と指摘されている。
      • サーフが空気というだけでなく、ゲイルがやたら贔屓されているという指摘もある。
+ ネタバレ注意
  • 特に『2』において顕著で、「ニルヴァーナの真実を知ったパーティが支配者層と完全に決別する、序盤屈指の名シーンで啖呵を切るのがゲイル」「敵側の重要人物と深い因縁があり、今まで冷徹だったその人物が感情むき出しでゲイルと会話するムービー」、 「主人公であるサーフが一時離脱した際に特に説明もなく当然のように代理リーダーとして扱われ*9マップ上で操作するキャラになる」など、何も知らない人がストーリーだけを追ったらゲイルが主人公だと勘違いしても仕方がないレベル。声優の堀秀行氏の名演、エピローグムービーでトリを飾るのがゲイルと上記の人物などもそれに拍車を掛ける。
  • ストーリー面だけでなく、戦闘面においても優遇されている。「ゲーム中最初から最後までパーティインしているのはゲイルのみ」「運以外のステータスが均等に伸びる為、バランスの取れた使い勝手の良い性能になりやすい」「雑魚敵、ボス敵にも電撃属性弱点の悪魔が多く、また電撃属性スキルを使用してくる悪魔も多い*10」「前作データ引き継ぎをした場合に習得できるスキルがゲーム中最強の威力」など。
  • 元々アトラス作品では主人公が喋らないのはいつものことであるが、今作では仲間内でのやりとりがムービーで度々描かれる。その度に無言のままなため、殊更上記のような言われようになってしまっている。*11また、『1』での注目イベントと言える「覚醒*12」が非常に分かり辛い*13という点も一因かもしれない。
  • フォローしておくと、台詞がない反面ムービーでのアクションシーンではかなりの動きを見せる。悪魔化した相手に生身かつ素手で殴りかかる他、他のメンバーが動けない中で唯一拘束を破り敵に立ち向かうシーンなど、見所もそれなりにある。
  • また『2』中盤でのサーフを中心としたイベントと戦闘は今までの空気っぷりを覆すかのように印象的である。だが、このイベントが終わると再び空気になってしまう。総合的に見ても影が薄いのは否めない。
  • 前述の通りアトラスのRPGは主人公が喋らない方式である為、他のキャラのように喋るとプレイヤーが不自然に感じる可能性もある*14。喋らない主人公ポジションとしてサーフを配置し、主人公の代わりに物語を引っ張るゲイルを用意したのは折衷案と評価出来なくもないが。
  • ヒロイン「セラ」について
    • 某所では「RPG史上五指に入る不快なヒロイン」と評されたキャラ。『2』になるとセラの背景が明かされるため改善されると言っていいが、『1』ではかなり不快に感じるプレイヤーも多いかもしれない。
      • こちらもサーフと同様に「ヒロインはアルジラ」「○○が真のヒロイン」という声も多い。
  • 個々のダンジョンが広大でその分、ダンジョン数が少ない
    • 『1』『2』共に1つ目のダンジョンから既に長丁場、その分一つのダンジョンでイベントが豊富に発生する。
    • 発売日の近い『真III』と差別化と言えば悪くは無いが、長丁場でセーブをして日をまたぎがちなので「今、何の事情でこのダンジョンを攻略してるのか」とクエストが薄味になりがち。
  • シエロの設定
    • 他のメンバーがプレスターンバトルに合わせた様な「氷結に強く火炎に弱い」「衝撃に強く電撃に弱い」等四元素での相反の形で設定されているのに対し、シエロのディアウスは「電撃に強くバッドステータスに弱い」と一体だけ扱いづらい。2でメンバー入れ替わりで使わざるを得ないのならともかく、1でのパーティーの得手不得手で入れ替えながらプレイする場合とにかく扱いづらい。
  • モデリングとエフェクトの流用。
    • 悪魔のモデリングは『真III』からの流用が多く魔法のエフェクトなどもそこまで代わり映えしているとは言えない。『1』で登場した雑魚が『2』にも登場するので通しのプレイでは新鮮味に欠ける。
    • 流石にボス級の阿修羅は独自のデザインで力の入った造形になっており、特にラスボスは『真III』のシンプルデザインの反省からか非常に複雑で凝った造形でありながら形態変化を繰り返すという気合の入れようとなっている。
    • ただし仲魔システムがない為にそこまで悪魔の数やデザインを気にする声は少なく、気にしない人は気にしない点ではある。
  • 『真III』と似通った流れ
    • 『1』に当てはまるが「いくつかある団体が競い合い、塔を登って目的を果たす」というのに既視感を覚える人も多い。今作はインド神話の「蜘蛛の糸」と、『真III』は「バベルの塔」と大元のモチーフは異なるが出来上がったシナリオは酷似している。
      • 『女神転生』は過去に設定が似通ってしまうケースが多々発生してしまう事が多い。『真III』と『ストレンジジャーニー』は閉じこもった世界での話、『真II』と『真IV』は東京の上に蓋をした世界…等今作だけの事では無いが、『真III』とアバタールチューナーは発売日が近く、槍玉にあがりがち。

問題点

  • 『2』での自由度の低さ、展開の早さ
    • 『1』では中盤以降は自由にパーティメンバーを入れ替えできたが、『2』ではメンバーの離脱と復帰が激しい上に長期に渡るため、主力として起用していたメンバーが離脱し、急に戦力不足になるという事態もありうる。
    • ラストダンジョンに入るともうそこから過去のダンジョンに戻ることはできない。アイテムや隠しボスを逃したプレイヤーも多いだろう。ストーリー的にもう後戻りは出来ないことが察することはできるのが救いだが、隠しボスは相当な強さを持っている為、先に進んでから再度挑戦しようと考えたプレイヤーは泣くことになる。
    • 『2』のストーリー本編で経過する時間は何とたったの一日、もしくはそれ以下である。時間的に見て午後~夜明けまで凄まじい強行軍で最初から最後まで展開していく。
      • このため、街中での会話はこまめに確認しないと見落としてしまいがち。シナリオ的に中盤からは寄り道していたら冗談抜きで世界が滅ぶ(この段階に行くと世界破滅まで数時間というレベル)という一刻を争う緊迫した状況が常に続くため、街での聞き込みも心理的にスルーしてしまうかもしれない。中にはアイテムが貰える会話イベントやキャラクターの背景等に触れている重要な会話などもある*15。建物の入り口にいる名も無きモブキャラがメインキャラであるシエロの背景について話すのは少しシュール*16
  • 一部の隠しボスに「死にゲー」「運ゲー」「作業ゲー」「戦って面白くない」という声もある。
    • 初見ではまず勝ち目がなく、何度もゲームオーバーになりながら攻略法を探っていく、というパズル要素が強いボスも賛否両論。電卓とペンとメモ帳が必須とされる戦闘に面白さを感じられないプレイヤーも存在した。
    • 無論正統派の強さを持ち、初見でも通用する隠しボスも存在する。
  • パーティ及び敵の状態を確認できない
    • この作品においてはカジャ系、ンダ系の補助魔法の恩恵が大きく、中には必須と言える戦闘も存在するのだが、敵にどれだけかかっているか、自身にどれだけかかっているかが確認できない。
    • 厄介なことに『1』では4回まで重ね掛けが可能だが、『2』では3回までとなっていて、説明書の記載を見逃すと「これ以上は効果が無い」と使用後に表示されて「あれ、もう4回掛けたっけ?」と疑問を持つことになる。
    • 自身にカジャ系が2回掛かっている状態で敵からンダ系を1回喰らうとカジャ1回分の状態になる(ンダ系を打ち消す「デクンダ」を使っても無意味)、といった詳細な説明がゲーム中に存在せず*17、自分で試して気付くしかないのも不親切であり、状態や段階を確認するコマンドが欲しかったという声は多い。
    • 攻略サイトではコインやサイコロを使って回数を数えておくことが推奨されている。
  • 分割商法
    • 容量などの問題もあったのだろうが、完全に地続きのシナリオにも拘らず2つに分けて販売したことは指摘される。『1』では多くの謎が残されたまま、ほとんど未完のままエンディングを迎える。そして、ある程度のフォローはされるがハッキリ言って『1』を未プレイで『2』をやってもあまりストーリーを楽しむことはできない。
    • 『1』が発売された時点で、それが前後編の前編のみを切り出した商品であることは告知されなかった*18。したがって購入者は『1』で描かれた部分のみで判断することになり、その時点では本作のストーリーに対する評価は低いものに留まっていた。
    • 前述したが、引き継ぎ要素があるため『1』のデータがなければ習得できないスキル、手に入らないアイテム等の要素も存在する。単に引き継ぎしただけでは反映されず、隠しボスを倒す、選択肢を選ぶなどの条件を満たす必要がものも含まれる。それらが気になる場合『1』をやり直した上でそのデータを引き継ぎして、『2』を最初から始める、というとてつもない手間がかかる。『1』をやり直すのならば「強くてニューゲーム」が可能なのだが…。
      + ネタバレ注意
      • 『1』からの最大の引き継ぎ要素として『2』終盤での仲間加入フラグが存在する。引き継がなかった場合やフラグを立てなかった場合は別のキャラが加入する。

総評

『女神転生』シリーズのテイストを引き継ぎつつも独自の世界観が構築されている作品。
戦略性の高い良好なバランスの戦闘や魅力的なキャラクター、『1』で張られた伏線を『2』で余すことなく回収されている見事なストーリー等、見所は多い。
全体的にライトユーザー向けとも言える調整がなされているため、メガテンシリーズ未経験者にもお勧めできる作品といえよう。


余談

  • アトラス作品の例にならって作中には様々な小ネタが満載である。
    • 「ソルブラスター」「メシアライザー」「ミステリーフード」「ディスティニーランド」等、中々マニアックなものも含めた単語がちりばめられている。全て気付いた人は相当なメガテニストであろう。
  • この作品がSF色が強いこともあって「ソニックムーバー」「リターナー」といった他のSF作品の語も引用されている。
  • 発売当初は分割商法を伏せていた事からひどく酷評され、激しい値崩れを起こしていた。
    • そして安価で購入可能な状態になり、前後編である事が知れ渡ってから作品の中身が評価されていったという皮肉的な経緯を持つ。
    • その一方で、サウンドトラックは定価の3倍以上のプレミア価格となっていることも多い。それだけBGMは高く評価されていると言えるのだが。
  • 開発スタッフはこの作品のレーティングを全年齢対象にしたかったらしい。
    • 実際には15歳以上対象になったがこれはグロテスク・流血表現ではなくムービーで度々全裸になるセラが引っ掛かったとのこと。
  • 『2』のあるボス敵が使用するスキル「アソビスの穴」は出典となる語が不明であり、メガテニストを悩ませた。
    • 海外版では「gate to Abyss」となっていた為、単に誤植であったことが明らかになった。
  • 『1』が「蜘蛛の糸」をテーマにしているのは分かりやすいが、この『2』を始めると見えてくる『1』の世界に似た映画が発売前年に公開されている。
    • 名作『CUBE』の続編で『CUBE2-ハイパーキューブ-』という映画。「現実の世界ではない理論上の空間に記憶を消されて入れられた面々」という主の舞台がおおまかな内容で「そこから出ること」を目的としている点が似ている。
      • ただし、折角の設定をまったく活かせずに訳のわからぬまま結末を迎える内容の為に映画自体は前作ファンから不評で単館上映の為にマイナーな作品。

その後の展開

  • 原案の五代ゆう氏による書き下ろし小説『クォンタム・デビル・サーガ』が存在する。
    • 実質的にはこの小説をゲーム化したのが『デジタル・デビル・サーガ』という位置づけが正確である。
    • 全5巻で、凄まじい密度の世界を体験できる壮大なSF小説。もはやゲームとは別物の密度で、ゲームのストーリーをなぞっているのは1巻だけ。2巻以降は原案どおりらしいストーリーが展開していく。なので同じ名前のキャラクターがいるだけ、というくらいの認識で「ゲーム作品の小説版」とは思わない方がいい。
      • 作中人物のシエロに関しては前述の通りゲーム内で詳しい背景が語られなかったこともあってか、ゲームを補完するような形で描かれている。それ以外にもゲームと関連する点も結構ある為、シエロが好きな人ならずとも読む価値はある。
  • 攻略本に掲載されていた小説は「ゲーム版の前日譚」と言えるものであり、上記の作品との関連性は無いことが著者から説明されている。
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最終更新:2023年11月03日 22:31

*1 一方で銃撃属性が弱点となる。だが銃撃属性を使用する敵は限られるため、破魔属性の全体攻撃スキルを持つ相手との戦闘では一人でも人間状態に戻しておくと戦闘がかなり楽になる。

*2 ただし、マントラは結構高いうえにキャラ個別で購入する必要がある。そのため、マントラ費用を稼いでいたらAPが溜まっていたという事態がよくある。そもそも、APが早く溜まっても次のマントラが用意できなければあまり意味はない。

*3 人型のメリットは状況次第なので、最初から人型でいるメリット自体は少ない。引き継いで2周目を遊ぶ際の縛りプレイとして使用できる他、銃で悪魔と戦うという過去のメガテンシリーズの気分を味わうこともできるかもしれない。

*4 厳密には60%程度で固定される。

*5 被ダメージはかなり大きくなるが、逃走確率に関してはそこまでではなく大抵の場合成功する。

*6 店で購入可能だが所持できるのは1個限り。50000$と高額で一度使うと街に戻って買い直さなくてはならないため、ここぞという時にしか使えない。

*7 「ザナドゥ」のみ通常のダメージ判定

*8 効果によって強制的に悪魔化されてしまう敵もいるが。

*9 ただし、ゲイルは主人公チームの参謀であり、物語中でもナンバー2の立ち位置であることがわかりやすいため代理リーダーとなること自体はおかしいことではない。

*10 ゲイルは電撃属性が弱点。前述の得意属性の項で触れたが、ゲイルに電撃属性を中心に成長させ、また電撃耐性のウェイトスキルを装備させているケースが多いためゲイルが活躍しがち。

*11 ちなみにドラマCD版では当然のように喋る為、後述の小説版も含めると全く喋らないゲーム版だけが不自然にも感じられる。似たようなケースでは前後編で主人公が異なる「ペルソナ2」がある。こちらも、一方はよく喋っていたのにもう一方では選択肢でしか喋らないと言う状態になっている(コンタクトなどではボイスが発生するが)。

*12 当初、各キャラは感情が封じられた状態なのだが、精神的ショックを受けると感情が復活する。その際、灰色の瞳が髪と同じ色になる。

*13 ゲーム冒頭のムービー終盤で既に覚醒が起きているのだが、サーフの髪は銀色で灰色に近く、さらに灰色の瞳もムービー前半にしか見ることが出来ない。ゲーム中ではあまりにも見分けがつき辛いのかサーフの瞳はブルーグレイで表現されている。ムービーや選択肢の台詞から感情が目覚めていることは明らかなのだが。

*14 制作側もサーフを喋らせるかどうかは悩んでいたのか、データを解析すると戦闘時のみだがサーフが喋るボイスが収録されている。「降伏の機会を与えたい」「みんな!無事か!?」「後は追わない、出来るのなら逃げてくれ」とサーフの性格が垣間見えるものだった。

*15 作中のキャラには「こんなところで油を売っている場合か」「必要以上に不安を煽るのも戦術のうちか?」という趣旨の台詞を度々受ける。尤もな台詞なのだが、言葉通りに会話を拾わずストーリーを進めてしまうと少し説明不足に感じるかもしれない。

*16 膨大な世界観と伏線を解説するための苦肉の策であろう。後述の小説版では原作者が後書きでその点を言及している。

*17 『2』のヒーホークイズではこの内容の問題が出題される。3択クイズなので消去法で選んでいけば正解できる為、ある意味教えていると言えなくもないが。

*18 この記事では通称に従って『1』と『2』という書き方をしているが、『1』を発売当時にプレイした者は、それが『アバタール・チューナー1』と呼ぶべき物だという事実にはエンディング後のムービーにて知ることになる。