カオスエンジェルズ

【かおすえんじぇるず】

ジャンル RPG
対応機種 PC-8801(mkIISR以降)
PC-9801(VM/UV以降)
MSX2
発売・開発元 アスキー
発売日 [PC88]1988年7月
[MSX2]1989年5月19日
[PC98]1989年12月15日
レーティング アダルトゲーム
判定 良作


概要

  • 基本はオーソドックスな3Dダンジョン探索型RPGだが、それまでのアダルトRPGが「捕まっていた女の子を助けてお礼に…」「ボスだけは美少女(人間)なので、倒した後にイベントシーンに切り替わって…」と言うものだったのに対し、敵モンスターは全て女の子という「女の子モンスター」登場作品のパイオニアともいうべき作品。
    • Ranceシリーズ』や『ドラゴンナイトシリーズ』(双方とも『II』以降*1)等の源流といえる。
    • 実は、本作以前にも敵が全て女の子なアダルトRPGは存在したが、それは「男と女の大戦争、勝敗はHでつける」と言う内容の作品であり、敵はモンスターではなく人間である*2

ストーリー

ウロボロスの塔。月が真上にあるときに姿を現し、その頂上を極めた者は人の求める色と欲の全てを手に入れられると言い伝えられている。偶然酒場で相席していた老人からこの伝説を聞き老人から塔の地図と魔法の鍵を託された冒険者は、この伝説の塔を求め、長旅の末北の砂漠へとたどり着いた。砂漠をさまよううちに砂嵐に巻き込まれるも、ある時月明かりに身を照らされる。気づけば砂嵐は止み、伝説の塔が姿を現していた。冒険者は最上階をめざし単身塔に入っていった。

評価点

  • 各所に仕掛けられている謎の完成度の高さ
    • 一見ノーヒントと思われるような謎であっても、マッピングを正しく行いダンジョン各所に記されている落書きなどの情報を確認していけば確実に謎の手掛かりを得られるように作ってあり、その絶妙な難易度設定は現在でも評価が高い。
    • またシナリオ面でも各所の落書きやイベントで十二分に世界観を演出しており、凡百のRPGとは一線を画す出来。
    • また特定の女の子とHをすると特殊能力を得られ、それを用いて攻略をしていく局面もある。
    • なお、攻略に必要な装備・アイテムは全て塔内での調達となるが、一定日数経過することで消費アイテム・非所持アイテムが復活する仕様になっており、消費アイテム不足で攻略不能になるということは起こらない。
      • アイテムが復活する理由についてはストーリー上でもきちんと説明されている。
  • やりこみ度の高さ
    • 全ての女の子には2パターンのHシーンが存在しており、それをコンプリートしていくというやりこみ要素もあるので非常に奥が深い。
      • 2パターン目のHシーンを見るためには2ターン以内に倒さないといけない。最高レベルに達しても工夫しないと全CGを見る事が出来ないバランス。
      • またボスクラスの敵であってもアイテム同様一定日数が経過することで復活するので、見逃しても再挑戦することが可能。
  • ディスク容量からは考えられないボリューム
    • 本作での女の子モンスターの種類は、PC-88版は31種類、MSX2版は34種類、PC-98版は37種類。これは当時のPCのスペックやディスクの使用枚数から考えると群を抜いて多かった。
    • 前述の女の子のHシーンも含め、BGMもフロアごと、敵ごとにすべて違った曲*3が割り当てられており(おそらく初めて)、当時としては相当のボリューム。
      • これが88版は2D FD2枚、MSX版2DD FD2枚、そして98版は2HD FD1枚で実現されている点も驚異。

問題点

  • 休息やセーブが行えるテントに入る際に、いきなり「防犯の呪文がかかっている」として文字列が表示されると同時に締め出されることがある。
    • これはソフトコピー対策で、解除にはパッケージ付属の対応表から対応する文字列を探さなければならないが、この文字列というのが赤黒い紙に黒く小さな文字で細かくビッシリ書かれている為、探すのがやや厳しい。当然目にも悪い。
    • 紙が赤黒いのは対応表をコピー機にかけても文字が潰れて見られない様にする為。元よりコピー対策なので、当時の技術を考えれば致し方ない面もある。所謂マニュアルプロテクトである。
    • その一方でディスク自体にはプロテクトが施されていない為、バックアップを無制限に作成できるというメリットも存在している。
    • ただしオリジナルであるPC-88版には防犯の魔法は存在せず、こちらは普通にデータに対してコピープロテクトが施されている。他の2機種でもソフト自動販売機「ソフトベンダーTAKERU」で売られていた物は同様。
      • そもそもTAKERU版のマニュアルはその場でプリンター用紙(今となっては安物FAXでしか使わないようなロール紙)に印刷していたので、専用の紙を用意することは不可能。更に当時のプリンターだと文字のサイズも全角、半角、倍角の3種類しか存在しない。
  • 容量節約の為か、所謂「ライン&ペイント」描画なので表示が遅い。但し、表示中の画像を消去してから再描画するのでなく画像に直接ラインを上書きしていくという、一風変わった手法を取っている。
    • 連続移動時は描画を省略することで速度を保っている。一応16ビット機のPC-9801及びMSXturboR(ただし細工が必要*4)ならストレスは無い*5
  • 最初の謎のペナルティが理不尽。
    • ある程度ゲームを進めると強制的にレベルも装備も初期化されてしまう*6
      • 1階奥にある落書きに対処法が書かれているが、そこにたどり着くまでに何度も初期化されて経験値がパーになるのはRPGプレイヤーにとってストレスでしかないだろう。そしてレベル上げもままならない状態で最奥までたどり着かないといけない。
      • 一応、勘の良いプレイヤーなら落書きを読まなくても演出から対処法を導き出せるようになってはいるが…。
    • 一方で、前述したボスやアイテムが復活する(初期化される)理由にもなっている。また少々ネタバレになるが、モンスター少女達が全員「少女」で居られる(おばさんが存在しない)理由でもある。
  • ボリューム不足
    • 評価点と矛盾するが、純粋にRPGとして見た場合、25x25ブロック(壁の厚さが1ブロックある為、実質的には20x20の『Wizardry』より狭い)で全7階は流石にボリューム不足と評さざるを得ない。
      • 楽しみの一つである落書きが、終盤2階には存在しないのも残念なところ。ストーリー的には間違っていないが*7
    • アダルト要素に容量を食われている為、こちらもある意味仕方の無いことではある。

総評

アダルトゲームではあるものの、完成度の高い謎解き、多彩な女の子のグラフィック、ボリュームの多さなど、アダルト要素を抜きにしてもヘタな一般向けRPGより評価が高い。
アスキーが一時期黒歴史扱いしていたのが非常に惜しまれる逸品。尤もアスキーが自社製エロゲーを一時期黒歴史扱いしていたのは本作品に限った話ではないが*8
MSX2が「安価に美少女ゲームが楽しめるハード」として新たなニーズを掴むきっかけとなったソフトの一つと言えよう。


余談

  • ゲームレーティングの変遷
    • PC-98版よりソフ倫への加盟と18禁のレーティングがなされたが、PC-88版およびMSX2版の発売時にはまだ一般ゲーム枠として販売されており、パッケージには18禁を示すシールも無かった。
    • 「最中」のグラフィックが存在しない(事前や事後にしか見えない)キャラも多いので、当時としてもアダルトゲームとしてはソフトな部類である。
  • CG閲覧モードが存在しない
    • さすがに古い作品故にこればかりは仕方が無い。CG閲覧モードが登場するのは何年も先(ハードディスクが一般化した時代)の話である。
  • 88版発売当時もアスキーのゲーム誌「ログイン」で新作紹介はされず*9パッケージイラスト流用の1ページ広告を載せただけで、MSX版に至っては「MSXマガジン」に広告さえ載せなかった状態である*10*11
  • 実はMSX2は当時の低価格帯ハードとしては破格の色数を誇り、綺麗な絵が描けた。
    • 参考 : MSX2 512*212ドット256色中から16色 : PC-8800シリーズ 640*200ドット512色中から8色 : PC-9800シリーズ 640*400ドット4096色中から16色---FDD一基内蔵のMSX2が五万円台で購入できたのに対し、他機種は十万円台から数十万円も出さなければ購入できなかった。
      • ただ、MSX2版は上記仕様のスクリーン7使用で16色まで使えるが、実際に使ってたのは8色タイルだったりする。当時他機種から移植されたMSX2のアダルトゲームの大半はCGをそのままコンバートした安易な移植が横行していた。
  • 現代なら『MSXマガジン永久保存版3』でMSX2版をWindows上でプレイできる。ただし動作保証はXPまで。
    • 発売当時の冷遇からは考えられない情況である。尤もそれだけファンが多かったと言う事でもあるが。ただし同社『蘇るPC-8801伝説』『蘇るPC-9801伝説』には掲載されていない*12
    • 上記の対応表は取り込み画像でCDに入っている。この事からも現代では対応表のコピーも(解像度の上昇及びカラーコピー機の普及で)可能な様だ。
    • 描画に関してはturboRモードは存在しないが、エミュレーターに倍速モードもあるのでストレスは無い。ただしturboRモードと違って音楽のテンポも倍速になってしまうが。
  • 他機種に移植する場合に追加要素を加え出したのはこの頃のゲームからだと思われる。それまでのゲームはPCが高価ということもあり、どの機種で遊ぼうともPC性能の差で実現不可能でなければ格差がないように配慮されていたように思われる。
  • キャラデザ・原画担当のグラフィッカーは今も「Y人」の名で現役で活動しており、本作発売から20年以上経った2011年3月末日に原画集「カオスな原画たち」が発売された*13。当時のボツキャラなども掲載された充実の内容でファンなら必見である。
    • パッケージアートだけは有名メカデザイナーの明貴美加。なおパッケージの3人はゲームには登場しない*14ある意味パッケージ詐欺。
    • 余談だが本作より前に発売されたY人原画の微エロゲー(裸が出るだけ)である『魔法使いの妹子*15』(九十九電気)と『冒険者達 賢者の遺言』(アスキー)はログインのレビューで取り上げられている。
  • 続編の予定もあったが「アダルトゲームとしてしか(RPGとしては)評価しないアスキーに対し作者が切れて頓挫した」と言うインタビュー記事が小学館のパソコン雑誌『ポプコム』に掲載された*16。つまり冷遇していたとは言えアスキー自身も人気作と認識していた事にはなる。
    • 『アソコンすうぱあすぺしゃる・8 パソコンゲーム80年代記』でヒットゲームの一つとして取り上げられたが、そこに寄せられた『月刊アスキー』元副編集長のコメントが「当社製品と、いわゆるHソフトを入れ忘れてましたので、両者を兼ね備えたものとしてあげておきます。」だったので、アスキー全体の認識はそんなものだったのだろう。
      • 尤もアソコン編集部の方も「グラフィックが可愛いだけ」「こんな技術的にも内容的にも見るべきものが無いソフトが('90年5月発売の雑誌が71人の業界関係者に行った'88年製ゲームの人気投票*17で)ある程度の成績を収めた程度ならともかくベストテンに入るなんて日本ソフトの世界も危ないな」と言う論調だったが。
  • 概要にも書かれた『Ranceシリーズ』をはじめとしたアリスソフトのプロデューサーとして知られるTADA氏も本作のファンを公言しており、『Rance 5D』のイベントボスが「金竜」なのは本作の「ゴールドドラゴン」からだとしている*18

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最終更新:2021年12月31日 17:07

*1 『ドラゴンナイト(1)』は前述した様な昔ながらのアダルトRPGであり、『Rance(1)』はそもそもアドベンチャーゲームだった。更に付け加えると『Rance』シリーズでの女の子モンスターは多くても半分である(通常のモンスターを「男の子モンスター」と呼んでいる)。

*2 ついでに言うと(当時の技術の問題もあり)まともなグラフィックは付いてなかった。

*3 MSX2版はFM音源も

*4 本来はturboR発売以前のゲームは自動的に8ビットモードで動作するのだが、turboR発売と同時に公式誌『MSXマガジン』で「強制16ビットモードプログラム」が発表されている(ただし同期が合わなくなる可能性もあるので、一部ゲームでは不具合が起きる)。と言うか、フロッピーディスクのフォーマットに使われたOSで高速モードにするかどうかが判断されるため、コピープロテクトの無い本作はMSX-DO2でフォーマットしたフロッピーディスクにコピーするだけで高速モードに出来た。

*5 MSXはディスクアクセスの遅さも足を引っ張っているが、敵出現時(と階移動時)以外はアクセスは無いので気にならない。また、1度出現した敵はある程度までキャッシュされる

*6 設定上は記憶も「塔に初挑戦する前」に戻される。

*7 要は落書きの主が終盤2階に辿り着いていない

*8 アスキーが1996年にエロゲー雑誌を創刊したこともあって、現在(後述の「永久保存版」は2005年)では黒歴史扱いは解除されている。

*9 ゲーム攻略質問コーナーで読者からの質問を二回取り上げたことはある。

*10 上述のturboRでの高速化対応リストには載った。

*11 ライバル誌の「MSXファン」では広告も特集も載っていた。つまり自分トコでは扱わず同業者越しに広告を打っていた事になる

*12 3冊目まで出た「MSXマガジン永久保存版」と、2冊で終了した「蘇る~伝説」の差はあるが。

*13 ダウンロード販売のみだったが、2016年1月に冊子版も発売。内容は若干異なる。

*14 裏表紙の娘は羽からしてゴールドドラゴンかドラゴンヌの可能性があるが、ぶっちゃけ似ていない(そもそもこの2名は髪も服も金色(黄色)である)。

*15 「いもこ」ではなく「でし」と読む。女の子だから「弟子」ではなく「妹子」。

*16 インタビューに答えたのはアスキー側の人間。

*17 なお、'82年から'88年まで各年ごとのアンケートを取っている。

*18 ただし、アスキーのエロゲー雑誌(既にエンターブレインだったが)内の自社宣伝コーナーに寄稿したものなので、リップサービスの可能性も否定できないが。技名も大阪に実在するラーメン屋『金竜』からとられている。