このページでは、PS2で発売された『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS』及び増補版『SPECIAL EDITION』について解説する。
PS3/360のHD移植については『ZONE OF THE ENDERS HD EDITION』を参照。


ANUBIS ZONE OF THE ENDERS

【あぬびす ぞーん おぶ えんだーず】※THEは発音しない

ジャンル ハイスピードロボットアクション

対応機種 プレイステーション2
メディア DVD-ROM 1枚
発売元 コナミ
開発元 コナミコンピュータエンタテインメントジャパン(EAST)
発売日 無印: 2003年2月13日
SPECIAL EDITION: 2004年1月13日
定価 無印: 7,140円
SPECIAL EDITION 通常版: 3,465円
SPECIAL EDITION 限定版: 3,675円
プレイ人数 1~2人
レーティング CERO:12歳以上対象
廉価版 コナミ殿堂セレクション:2005年5月26日/1,890円
判定 良作
ZONE OF THE ENDERSシリーズ
ZONE OF THE ENDERS / Z.O.E 2173 TESTAMENT / ANUBIS ZONE OF THE ENDERS
ZONE OF THE ENDERS HD EDITION / ANUBIS ZONE OF THE ENDERS:M∀RS



僕らは、やっと宇宙で自由になれる。



概要

2001年3月にPS2で発売された1作目 『ZONE OF THE ENDERS』の続編。
コナミのSFロボットゲームを主軸とした企画・シリーズ『ZONE OF THE ENDERS』 における作品の1つである。
「オービタルフレーム(OF)」というロボット兵器による空中戦主体のハイスピードな3Dアクションが楽しめる。
メタルギア』シリーズを手がける(旧)小島プロダクションの制作となっているが、前作と同様に小島秀夫氏の担当はプロデュース・PV編集といった対外的な活動が中心。
ゲームデザイン・脚本・監督は、今作が初監督作品となる村田周陽氏。

前作は軽快なアクションと美麗なグラフィック、優れたBGMを持ちながらも「冗長な癖に短いストーリー」の為に評価を落してしまっていた。
本作は前作の不満をほぼ全て解消し、長所をさらにグレードアップする形で帰ってきた。

残念ながら前作の不評や発売日のタイミングの悪さなど、全体的な売り上げは振るわなかった(詳しくは後述)。
しかし評価自体は高く、廉価版の発売や口コミで評判が広まった結果、「隠れた名作」(コナミ公認)としてのポジションを確立。
現在ではPS3/360およびPS4/Win(Steam)にて二度のリマスターが行われている。


ストーリー

22世紀。絶大なエネルギーをもたらす鉱物「メタトロン」の発見・利用によって、火星、そして木星圏へ居住域を広げた人類。
しかし太陽系の中心部に戻るにつれ、人々の間には自分達よりも外の宙域に住む人間を「エンダー(田舎者)」と呼んで差別する風潮が広がっていた。
やがてそれは、火星・バシリアカウンティを中心とする過激派の軍事組織「バフラム」の台頭、そして地球圏を中心とする連合宇宙軍とバフラムとの紛争へ発展していく。
バフラムは膨大な戦力を抑止力としている連合軍への対抗手段として、メタトロンをふんだんに用いた新型機動兵器「オービタルフレーム(OF)」を極秘裏に開発し、大規模投入に成功する。
連合軍の主力である旧式の機動兵器「LEV(レヴ)」は最新のファントマ型ですら量産無人OFに歯が立たず、連合軍は苦戦を強いられることとなる。
この状況下において、連合宇宙軍は木星圏のコロニー・アンティリアを武装占拠し、同地で建造されていたバフラムの新型OF二機を奪取する。
この「アヌビス」と「ジェフティ」の二機こそ、バフラムの指導者ノウマン大佐が進める「アーマーン計画」の要となる機体であった。バフラムはただちに奪回部隊を派遣し、アンティリア全域を巻き込んだ戦闘が行われる。
最終的にアヌビスはバフラムに奪回されるが、ジェフティは連合軍の手に残った。偶然ジェフティに乗り込んだ民間人の少年レオ・ステンバックの協力により、ジェフティはレオと共に辛くもアンティリアを脱出したのである*1

連合宇宙軍はジェフティに搭載された独立型戦闘支援ユニット「ADA(エイダ)」に「火星のアーマーン要塞中枢に侵入後、ジェフティを自爆させる」というプログラムを書き込み、アーマーンの内部からの破壊を目論んでいた。
しかし、既に火星圏はアヌビスを手中に収めたバフラムに焼き払われ、完全に掌握されていたのである。
連合軍は火星への侵入は不可能と判断し、やむなくジェフティを木星圏に向けて投棄。バフラムの、そしてノウマンの目から隠した。

暫く後。木星衛星・カリスト。
元バフラム軍人の採掘作業員ディンゴ・イーグリッドは、ある日カリストの地表で不自然なメタトロン反応を探知する。そこには一機のオービタルフレーム――ジェフティの姿があった。
その時、突如襲い来るバフラムの部隊。バフラムの無差別攻撃で自身のLEVを破壊され、仲間を守ろうとジェフティに乗り込むディンゴの心中に、かつての戦いの記憶が蘇り始める。


アヌビスとジェフティ。そしてノウマンとディンゴ。火星圏を舞台に最後の戦いが始まろうとしていた。


特徴・評価点

パッケージ裏に書かれた「未確認浮遊快感」の文字通り、浮遊するような高速移動を中心とした「簡単・高速・かっこいい」アクションを簡単に実行可能。
ジェットコースターのようなテンポの良いストーリーも絡み合い、ロボットアクションゲームの中でも稀に見るほどの抜群の爽快感が味わえる。
3D酔いは可能な限り押さえられており*2、難易度も選択可能でチュートリアルも充実。初心者から上級者まで幅広く対応している。

アクション

  • 常時空中浮遊状態のジェフティはダッシュ、上下移動、ロックオンによる移動方向修正を軸として戦闘機動を行う。
    ロックオンで目標を捉えた後はボタンをそれとなく連打しているだけでも「カッコいい」動きが出来てしまう。
    • もちろん、ただ連打するだけでは先に進めない。システムを理解し、戦闘の基本を掴んでいくことで更に美しく、楽しくプレイすることが出来るようになっていく。
      それを支えるのがジェフティの高性能と豊富なサブウェポン、そして「ゼロシフト」である。
  • ジェフティの武装は基本的に前作と同じだが、ほぼ全ての仕様が見直され、使い勝手と戦略性は格段に向上している。
+ 「基本攻撃方法の説明を行いますか?」「ああ、頼む」
ショット 敵から離れた状態で□ボタン。アナログ入力によって三点バーストや高威力弾の撃ち分けが可能になった。主に牽制や狙撃に使う。
ブレード 敵に接近した状態で□ボタン。アナログスティックとボタンの組み合わせで簡単なコンボ攻撃が出来るようになった。距離によるショットとブレードの切り替えは非常にスムーズに行われ、違和感のないものとなっている。
ホーミングレーザー ダッシュ中に□ボタンを押し続けるとロックオン、放すと一勢発射。最大で25~30の敵機への同時攻撃が可能。威力は低いが雑魚の掃討に便利で、単一目標には数を打ち込むことでダメージソースとしたり、コンボの起点にしたりできる。6発しか撃てなかった(しかも単体ロック)だった前作とはえらい違いである。
グラブ いわゆる「掴み・投げ」で、○ボタンで行う。敵機や鉄骨、鉄板などのオブジェクトを掴んで振り回したり、盾にしたり、ジャイアントスイングからのブン投げも出来る。ゲーム中通して使用可能な数少ない攻撃手段の一つであり、高難易度ではグラブの使い分けが明暗を分ける。
バーストモード 静止中にR2ボタンを押しつづけている間発動する。この状態では高威力のチャージショット*3や回転斬りの他、掴んだ敵機をマヒさせてグラブ時間を延長したり、打撃力を上げることが出来る。
ガード L1ボタンを押している間防御を行う。単体での使用機会は少ないが、グラブと組み合わせることで幅が広がる。
  • さらに、ストーリー進行に伴い入手できる「サブウェポン」も大幅に変更が行われ、どの武器にも活躍のチャンスが与えられた。
+ 「ADA、お願いね」「了解。各サブウェポンの説明を行います」
ゲイザー 最初に入手することになる、命中した対象の動きを止める補助武器。アナログ入力で至近距離のばら撒きとロックオン対象への投擲が選べる。非常に使い勝手がよく、性質を生かした様々なテクニックが存在する傑作兵器。高ランククリアを意識した場合最も多く使用することになるのは間違いない。
ガントレット 強烈なノックバックのある実体弾を投擲する。威力は小さいが敵のガードを砕き、地形にぶつけることで追加ダメージが見込める。
コメット ホーミング性の強いエネルギー弾を発射。威力もまあまあ、連射力もまあまあ、ガード不能。ガードの固い敵機の崩しに使える。ボタン強押しで高速弾を発射。
デコイ ジェフティの分身を作りだし、攻撃を逸らす。要所要所で使うよう心がけると展開がとても楽になる。
ファランクス 高速連射型のエネルギー弾。アナログ入力で拡散発射と一点集中発射が選択可能。近接戦での迎撃に便利。
ハルバード 長大なレーザーを照射する武器。ガード不能。マニュアル照準で自在に照射方向を変えられ、大群の瞬殺も狙える。その姿はさながらイデオンソード。
ウィスプ ジェフティ腰部のユニットを飛ばし、敵を拘束する。拘束した後は手元に引き寄せたり、ハルバードの様に振り回すことも出来る。遠くにあるアイテムも回収可能。
マミー かまえている間は敵のバースト攻撃をもガードする盾。ボタン強押しでダメージの回復も可能。縛りプレイでは真っ先に使用禁止が推奨されるサブウェポン。ゲーム中、唯一強制取得ではない。
ホーミングミサイル 高威力の大型ミサイルを発射する。アナログ入力で2機ずつ、2~16機まで発射本数を調節可能。威力は絶大でガードも出来ないが、エネルギー消費も激しい。
フローティングマイン 高威力の機雷を放出する。接近してくる敵へのカウンターの他、グラブで投げることも出来る。ガード不可かつ広範囲にダメージを与えられる。
ベクターキャノン メタトロンの特性である空間圧縮を利用した大型砲台。その威力は絶大、ロマンも絶大。反面接地状態でないと発射できず、長大な準備時間がある。ちなみに発射可能になるまでの演出は非常にかっこいいものになっている。ロボ好きなら泣いて喜び鳥肌を立てるに違いない。
  • そして終盤に入手する最後のサブウェポン(厳密にはサブウェポンとは異なるが)「ゼロシフト」である。このゼロシフトこそが「ハイスピードロボットアクション」である本作を代表するシステムである。
    • その仕様は「ボタンを押した直後、ロックオン対象の背後に瞬間移動する」というシンプルなもの。回り込まれた直後の敵機は無防備であるため、回り込んだ瞬間から切り刻むもよし掴んで振り回すもよしサブウェポンで焼くのもよし。撃破したら再びゼロシフトを選択・発動して他の敵機の背後に回り、豊富な攻撃を選んで叩き込めばよい。
    • 左アナログスティックを下に倒せば急速離脱、ロックオン解除状態では前方に急速移動と汎用性も高い。加えてゼロシフト中には当り判定が発生しており、軌道上の敵機を跳ね飛ばすこともできる。ただし、正面からの攻撃は流石にダメージを受ける。
    • 発動時の演出も瞬逸。一瞬溜めた後、集中線と共に画面がゆがみ、接近したかと思うと次の瞬間には背後をとっている。小気味よく、ついつい何度でも使用したくなってしまう。
      • これだけの威力でありながら消費エネルギーはゼロ、使い放題。最早雑魚相手ならバランスブレイカー一歩手前の性能ではあるが、やはり終盤のボスもこのゼロシフトを持っており、一筋縄ではいかなくなる*4。攻略にはタイミングとパターンの見切りが重要となる。瞬間移動と瞬間移動の応酬による決戦は正に圧巻である。

グラフィック・BGM

グラフィック

  • 前作でも高品質だったグラフィックは更に洗練され、2003年発売の作品でありながら下手な次世代ゲーム機の作品にも匹敵するほどのクオリティ。ホーミングレーザーやアヌビスのバースト爆風は見物。
    • 処理軽減のために一部エフェクトを2Dで表現するなどの工夫を取り入れた「Z.O.Eシェード」と名付けられた技術により、滑らかな動きと派手なエフェクトを両立している。
  • 劇中に挿入されるアニメーションはGONZO制作。こちらも安定したクオリティ。

デザイン

  • キャラクター原案は政尾翼氏、デザインは前作でもデザインを行った西村誠芳氏が担当。
    • 個性豊かなキャラ達はいずれも人気がある。独特なパイロットスーツも見どころ。
  • メカニックデザインも、前作から引き続き小島プロダクション所属・『メタルギアソリッド』シリーズの新川洋司氏。
    • 人型でありながらどこか異形の雰囲気を佇ませるアヌビスとジェフティ、シリーズおなじみの骨型雑魚・ラプターシリーズ、巨大OF・ザカートなど、キャラクターに劣らず個性派ぞろいのメカ達。彼らのモーションも作りこまれている。
      • ちなみに、シリーズのお約束として有人OFのコックピットは股間部からせり出した配置に…端的に言うなら「男性の股間」の位置*5にある。
  • 今作ではゲストとして、アトラスの「悪魔絵師」こと金子一馬氏も参加。
    • ディンゴと旧知のバフラムの科学者・ロイドと、その搭乗機である疑似OF・インヘルトのデザインを担当。
      • 「頭部に女神像の装飾」「金属の骨組みの全身をゲル装甲で覆う」という金子氏のセンスが遺憾なく発揮されたデザインで、見た目でも作中の設定上でも極めて異質。
    • 本作が発売された2003年2月時点では、ゲーム業界内のゲスト・コラボレーション企画としてもごく初期にあたり、画期的な内容だったと言える。

BGM

  • BGMの曲調は前作と打って変わり、より激しく、民族的なイメージの曲が多くなっている。
    • どの曲も場面とよく噛み合っており評価が高いが、中でもオープニング・エンディングテーマである『Beyond the Bounds』は非常に人気が高い。フィンランド語を元にした造語のスキャットが多用されるリズミカルな名曲である。
      • ちなみに、本作のオープニング映像はこの曲をまるまる使用しており、約7分に渡る非常に長いものとなっている。しかし共に流れる本編中の映像・台詞が絶妙にかみ合って、7分という時間を感じさせない程「見入る」内容に仕上がっており、数あるゲームOPの中でも人気が高い。
    • 残念ながらカラオケには入っていない。造語だし、本当の読み方が不明なので当たり前と言えば当たり前なのだが…。

ストーリー・演出

ストーリー

  • シリアス、コミカルなシーンも多いが、基本は熱血路線。盛り上げるところではしっかりと盛り上げ飽きさせない。主人公のディンゴもそのかっこよさから人気が高い。
    • エキセントリック&サイコすぎる言動故に「ヤンホモ」とファンに呼ばれるノウマンや、臆病者ながらも意地を見せるテイパー、ディンゴとは夫婦漫才の様な関係となるヒロインのケンなど、登場人物はいずれも個性豊か。
      • 前作の主人公レオとの対決・共闘や、ディンゴの恩師であるロイドとの再会など、ある種の「お約束」的なシーンもしっかり描かれる。
    • また、登場人物達はそれぞれが「自分なりの正義」を持っており、最初はぶつかり合いながらも最後は共に1つの目的の為に共闘していくこととなる。
    • 『メタルギア』シリーズと同様に明確に勧善懲悪なストーリーではない。唯一、ノウマンだけは「力に溺れた完全な悪」として描かれているが、むしろそれが彼の最大の魅力となっている。
      • キャラクターを支える1人である声優陣も、ディンゴ役の井上和彦氏やケン役の雪乃五月氏、ノウマン役の小杉十郎太氏を初めとして実力派が揃っている。
  • 本作で追加された新たな要素として、ジェフティに搭載されたAI、ADAとの会話(ディンゴリアクション)が挙げられる。
    • ADAの問いかけに対し、R3ボタンで肯定・L3ボタンで否定の意を示すことが出来る。無視も可。
    • 特定サブウェポンの使用を提案してきた場合、肯定すると瞬時にサブウェポンを切り替えてもらえる。状況によっては短く、無機質ながらもどこかユニークな反応を返してくれることもあり、シーン、対応ごとのバリエーションも多い。
      • 前作ではとにかく冷静・合理的思考だったADAもレオとの触れ合いで人間らしい思考に近づいたのか、今作では柔らかい態度が目立つ。ディンゴリアクションはそうした前作とのつながりを意識できる要素として、特に前作からプレイしてきたユーザー達に広く受け入れられた。

演出

  • ストーリー構成を支える演出も光る。ムービーシーンとストーリーシーンをシームレスに繋ぐ構成は見事。
    • 小島氏の監修故か無線会話時の顔グラフィックウィンドウ、スローモーションを使った「溜め」や、ムービー中のカメラ拡大・移動、小技によるビジュアルの変化など、2002年の『メタルギアソリッド2 サンズ・オブ・リバティ』と似通った構図も見られる。
    • 『蒼き流星SPTレイズナー』のV-MAX、『ファイブスター物語』のバスター・ランチャーなど、幾つかのロボット作品をオマージュしたような描写も多い。
  • さらには同社の『グラディウス』シリーズのパロディとして、「超時空戦闘機ビックバイパー」を元ネタにした最新鋭可変型LEV「ビックバイパー」が登場する。前作主人公レオの機体として準主役機的な活躍を見せる。
    • 戦闘機形態では『グラディウス』シリーズと同じく、ミサイル、リップルレーザー、レーザー、オプション、シールドを使用する。さらにレオの戦闘テーマ「Leo! Leo!」は『グラディウス』のBGMのアレンジ。
  • 本作の見せ場の1つ、イベント戦闘「荒野乱戦」。
    • 味方機・LEVファントマ41機を引き連れ、1機でも多く敵本拠地へ突入させるために自分と仲間もう1人で防衛する、というステージ。
    • 敵無人OFで最弱の「ラプター」とLEVの「ファントマ」と戦力差は無印Z.O.EやTVアニメZ.O.E Dolores, iの時代の時点で「1対50」つまり50倍もの戦力差の性能差があり、ANUBIS時代ではアヌビスの機体解析によりラプターは性能は爆発的にがあがっている。*6
      耐久力はゲームの難易度設定で左右されるが、移動スピード・攻撃モーションはどの難易度でも一貫して遅く、戦力として期待できない。
      • ダッシュを多用するスーパーロボット・戦闘機的なハイスピードのジェフティに対して、LEVは水中で歩く人間のレベル
        「もっさり」どころではない鈍重っぷりで、「1対50以上」という設定が比喩になっていないと思えるほど。
    • そしてこのイベントでは、画面内には味方と同数以上の敵機、画面外でも同じ状況がほぼ常時続く。
    • 画面上には常にミニマップで味方・敵が光点で表示されているが、敵機は点が丸い塊や帯に見えるほどの物量という、絶望的な状況。
      • 自動ロックオン機能がなければ誰が敵か味方かも分からない入り混じった戦況、味方からの救援要請や断末魔が飛び交う無線、ADAの淡々とした戦況報告によって、まさしく乱戦が描かれる。
      • 難易度によっては総数700~1000機*7を数えるほどの敵を撃破することになるが、処理落ちは最小限に抑えられている。

おまけ要素

  • クリア後
    • 各イベントや総合戦績をまとめたクリアランクが表示される。君は荒野乱戦をランクSSでクリアできるか?
    • データを持ちこした2周目では「サブウェポンの全所持」「ジェフティのバージョン選択」「2周目以降限定の収集要素」が加わる。
      • 「サブウェポンの全所持」「バージョン選択」は、ストーリー中で発生するパワーアップまたは弱体化イベントを前倒しで行う。
  • ミニゲーム
    • 前作にも存在した対戦モード。雑魚OFを含むほぼ全ての機体を操作できるが、残念ながら連合軍の主力LEV、ファントマは使用できない*8
    • 作中でのイベント戦の再現、タイムアタックモード、撃墜されるまで戦うサバイバルモード、ボスバトルなどが出来るエクストラミッションが収録されている。
      • その中には『グラディウス』を模した3Dシューティングゲーム「ZORADIUS(ゾラディウス)」も。効果音やBGMもグラディウスまんま、追加オブジェとして「モアイ」が登場する(ちゃんとイオンリングも吐く)という気合の入りようである。
  • スペシャルエディションでは多くの追加要素がある。
    • 新規戦闘シーン・ムービーの追加。裏オープニング曲「Beyond the Bounds (Mitsuto Suzuki 020203 Mix feat.Sana)」も新規収録(初回版には付録CD同梱)。
    • ミッションモードのボリュームアップ。
    • 本編での難易度の低さを指摘されたことに対する解答か、難易度ベリーハードとエクストリームが追加。
    • メタルギアソリッド』と違い、英語音声にはなっていない(英語音声は欧米版のみ)。ちなみに欧米版のタイトルは『Zone of the Enders: The 2nd Runner』となっている。

賛否両論点

  • シナリオの短さと難易度の低さ
    • 初心者でも難易度イージーでは12~18時間程度でクリアできるボリューム。人によっては「ハードでもぬるい」との声も。
      • この短さを「テンポが良い」「一本の映画のようでいい」と評価する人も多い。
      • また長くはないシナリオ上でも、「荒野乱戦」を筆頭に、戦闘時のシチュエーションは多彩。
      • 難易度の低さに関しては、スペシャルエディションで難易度ベリーハードとエクストリームが追加されることになった。
      • 擁護としては微妙だが、これでも前作よりは長く遊べる。
  • オープニングは各シーンのダイジェストなのだが、一部に実際の本編より深い意味があるように感じられる。「お前もアーマーン計画の一翼を担っているのだ」→ 実際には本編開始以前に主人公の部隊が運搬させられた物資(その時点では禁制の新エネルギー)が使用されたり、地球への戦力欺瞞に用いられただけ等。

問題点

  • 強制ステージの存在
    • 細部を抜き出して見ると面倒な展開(制限が付いた戦闘・長い道程)が目立つ。2周目以降の初期装備特典を利用しても長々と付き合わされる。
    • 中でもアージェイト戦の「忍耐を強いられるウィルス消去」、ロイドの研究所へ向かう道程でケンの指示に長く従う「見えない通行路」等に代表されるアクション強制は2周目以降ストレスになりやすく、折角のテンポの良さを損なっているという批判が多い。
  • 自機の攻撃効果音
    • 多用することになるブレード、ショットの効果音が軽く、軽快さはあるものの、弱そうにも感じられるとの指摘もある。特に耐久力の高い敵との戦いではダメージを与えている感覚が薄い、とも。
    • 体験版は製品版と異なるSEを使っていた。エフェクトも多少異なる。
  • 前作からの変更点
    • 近接戦時のチャンバラ要素が(一部のイベント戦を除いて)削除された。通常戦闘時の体感スピードが低下していることも併せて「一対一の戦いなら前作の方が良かった」との声も大きい。
      • 体感スピードの変化は、ANUBISでは対複数戦闘が重視されている事と3D酔い対策、そしてゼロシフトのインパクトを考慮した調整と考えられる。
    • 前作では要所要所のボス的存在として登場したそれぞれが多彩な機能を持った巨大OFは、今作では1機のみで少々寂しい。
  • 一部の声優変更
    • 前作では主人公レオを下和田裕貴(現・下和田ヒロキ)氏が演じていたのだが、今作では鈴村健一氏が担当している。またノウマンも前作では江原正士氏が声を当てていたのに対し、今作では小杉十郎太氏に変更されている。この謎のキャスト交代に前作との違和感を感じるファンも多い。
      • ただ、レオに関しては「声変わり」として受け入れるファンも多い。ランナーとして相当な経験を経ている事を窺わせる別人のような成長ぶりもあってか、むしろこちらの方が合っているという意見もある。
      • なお、TGS2011で行われた『Z.O.E』と『ANUBIS』のスペシャルステージ(リンク先ニコニコ動画の13:30~)において、前作のプロトタイプ版では鈴村氏がレオの声を当てていたことが語られている。
      • ノウマン役はTVアニメ『Dolores, i』では中田譲二氏の担当であり、3作品全てで担当声優が異なっている。
  • 一部の説明不足
    • 前作のヒロインだったセルヴィスと、レオをサポートしたサンダーハートがどうなったのか本編では説明がない*9
  • おまけ要素
    • VSモードではジェフティ以外の機体(ビックバイパーやアヌビス等)も使用できるが、折角の作り込みなのにそれらの機体を他のモードで使用できないのが勿体ない。
      • モード内には単発のエクストラミッションも用意されているため、もっと使用したかったと惜しむ声は非常に多い。
    • エクストラミッション
      • 本編のステージやボス戦を再現できるミッションでも、使用できるサブウェポンは本編よりも制限されている場合があり、本編の代用として遊ぶにはやや物足りない。
      • ミッションにもよるが、ベクターキャノンは基本的に使用できず、ネイキッドジェフティではゲイザーやゼロシフトぐらいしか使えなかったりする。
      • ランキングに登録されない代わりに全てのサブウェポンを使用すること等もできれば、より遊びの幅が広がったと思われる。
      • ゾラディウスは一発ネタとしては面白いが、シューティングゲームとしてはやや単調。地形の概念は無く、グラディウスらしいステージの仕掛けに乏しく、パワーアップによる兵装選択などの戦略性も薄い。
      • どの武器も前方一直線に飛んでいくという似通った性能であり、また最終的には全ての武器を同時に撃ちっ放しにできるという大味な作り。ボスは本編の装甲列車の使い回しで、パターン変化などは無く単調。

総評

2003年発売のゲームでありながら、これほどの爽快感を実現したロボットゲームは、2020年代時点でもそう多くはない。
15年を経て2度のリマスターが行われていることがその証明であり、「ロボットゲームの1つの到達点」とまでいっても過言ではないだろう。
リマスター版が発売されているが、あえて原典のPS2版をプレイする場合でも、スペシャルエディション版の廉価版「コナミ殿堂セレクション」が発売されており、金額的に気軽にプレイしやすいのも長所だろう。


当時の展開・評価

  • 小島プロダクション制作ということもあり、プロモーション展開は非常に力を入れていた。
    • PS2版公式サイトは多数のインタビュー記事や主題歌「Beyond the Bounds」のライナーノーツなど、現在でも見応えのある内容。
    • 多数の店舗への体験版の出展のほか、「オレンジ色のケースに入った体験版ディスクを街頭ポスターに "駅貼り" する」という、珍しい活動も見られた。
      • 後にPS4版『M∀RS』でも、これをリスペクトして『ORANGE CASE』と名付けた体験版(公式Twitterより)を配信している。
  • しかし、精力的なプロモーション、雑誌・ニュースサイトなどメディアの高い評判に反して、売り上げは芳しくなかった。
    • 2003年当時の売上本数は日本国内10万本未満と推定される(ファミ通調べ)。
      • 『MGS2体験版』を抱き合わせ販売にしていたとはいえ一応13万本を達成した『Z.O.E』よりも落ちているという、現在からは信じられないほどに低い評価。
    • 発売日の2003年2月13日の前後1ヶ月には、シリーズ作品・話題作が非常に多く、本作は見落としや買い控えが起きてしまったと思われる。
    • ほぼ同時発売の『アーマード・コア3 サイレントライン』(2003年1月、1ヶ月早い)で16万本、シリーズファンから大不評の『電脳戦機バーチャロン マーズ』(2003年5月、3ヶ月遅れ)でさえ10万本は越えている*10
      • ロボットデザインの傾向、対戦を主とするジャンル、シリーズの歴史などの違いは多々あるが、単純な「ロボアクションゲーム」として見た本作の苦戦ぶりがよく分かるだろう。

その後の展開・バージョン違いと移植版

PS2廉価版『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS SPECIAL EDITION』

  • 2004年、価格改定も兼ねた完全版として再発売。元々はヨーロッパで前年に発売された『ZONE OF THE ENDERS THE 2nd RUNNER SPECIAL EDITION』を逆輸入した、実質インターナショナル版。
    • オリジナル版と比較し、雑魚ステージ・高難易度モード等の追加に加え、「荒野乱戦」などイベントステージを単独ミッションとして遊べるなどの追加要素あり。
    • サントラに収録されていたリミックス版「Beyond the Bounds (Mitsuto Suzuki 020203 Mix feat.Sana)」を裏オープニング(タイトル画面放置~二周目のOP)として採用。
    • 2005年の再・廉価版(コナミ殿堂セレクション)や、リマスターのベースとなっているのはこちら。ただし、リマスターでは裏オープニングは省かれている。

PS3/360版『ZONE OF THE ENDERS HD EDITION』

  • (旧)小島プロダクション公式ブログにて2009年10月、「ANUBISでの苦い想い出」の記事が公開。
    • 「世界中で続編を望まれている」という書き出しで始まっているが、2006年にはイギリスのゲーム雑誌に「News just in ZOE is back on PS3 (ZOEがPS3に戻ってくる)」のウワサが掲載されていた、と言われている。
      • ここまでで触れた「ユーザーやメディアの高評価」「発売日の判断ミス」「苦肉の策の廉価版」「カルトな名作」といった振り返りと共に、「望まれている通りに、いつかは続編を」という所信表明的な内容で締め括られている。
      • 翌11月には「アヌビスのその後」として「TGS開催期間に匹敵するアクセス数」「社内の盛り上がり」など、内外の反響の大きさを知ることができる。
    • こういった反響を受けてか、2011年には主人公機・ジェフティの「リボルテック(フィギュア)」やプラモデルが立て続けに発売された。
      • その後も好調に展開しアヌビス・ビックバイパーといった主役級のほか、リボルテックではジェフティの装備違いバージョンや「アージェイト」が、プラモデルではアニメ登場の「ドロレス」も発売されている。
    • そして2012年5月、シリーズ2作のHDリマスター版と合わせて「エンダーズプロジェクト」が発表され、続編制作の意向が明らかになった。
      • しかし、10月に発売された肝心のZONE OF THE ENDERS HD EDITIONは、処理落ち・フレームレート低下をはじめとする劣化仕様で低評価が続出。続編の計画は白紙化、開発チームは解散したという。
      • なお、PS3版は株式会社ヘキサドライブがパッチを制作し、大幅な改善を果たした。
    • 2015年のコジマプロダクション独立によって『メタルギア』シリーズ共々、当時のスタッフによる続編制作は絶望視されている。

PS4/Win版『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS:M∀RS (マーズ)』

  • 小島プロダクション独立後、2018年9月4日に発売された再リマスター版。こちらは『Z.O.E HD』と異なり、初代『Z.O.E』は付属していない。
    • 『M∀RS』のタイトルは、本作の主な舞台となる「火星(MARS)」に「VR」を引っかけたもの。
    • 「Z.O.Eシェード」はそのまま、更なる高解像度・4Kへの対応、ピンボケや透過光などポストエフェクトの本格投入によって、「リメイクに迫るグラフィッククオリティを実現した」(公称)ほか、チュートリアルの増強、新型キーアサイン(ボタン割り当て)、VR対応といった新機能も多数搭載されている。
    • VRモードではディンゴ視点でジェフティのコクピットの中から操作している感覚が味わえる。ジェフティのハイスピード&スタイリッシュな戦いを体感できるが、上下ダッシュ時の縦回転や敵を振り回す時など、負担が大きく確実に酔うような視点までは再現されないのでご安心を。恐らくジェフティには優れたパイロット保護機能が備わっているのだろう。
      • 通常とは感覚が違うため、VRモード初心者はまずVERY EASYモードから始めるように勧められるが、選択時はVERYのEとYを隠して「VR EASY」と見せるというなかなか洒落た演出がある。
    • また、Steam版については在住国によって仕様が分けられており、日本から購入した場合は日本語仕様の『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS : M∀RS』、海外から購入した場合は英語仕様の『ZONE OF THE ENDERS THE 2nd RUNNER : M∀RS』に振り分けられている。
      • このため、海外在住者の日本人が本作を購入しても日本語が選択できないという不自由なことにもなってしまっている。
  • 『M∀RS』の製作事情
    • (2018年時点では)スマホゲームを主とする株式会社Cygamesとの共同開発だが、インタビュー記事によると、同社代表の渡邊氏および(HD EDITIONでもパッチ製作を担当していた)ヘキサドライブから移籍した堀端氏の意向が大きいようである。
      • 業界入り間もなかった頃の渡邊氏が衝撃を受けた作品であり、かつて渡邊氏と同僚だった縁を頼って移籍した堀端氏から「もう一度アヌビスを作りたい」の言葉を聞いたのをきっかけに、コンシューマー向けの開発実績と技術アピールという経営戦略上の理由も兼ねて、渡邊氏がコナミへ提案したという。
      • 当のコナミは「え? いまですか?」と戸惑い半分の反応だったという。PS3で既にリマスターされたものを再び、PS2版から15年ぶり2度目のリマスターとなれば、当然と言えよう。
      • 続編制作にも意欲的で、メディア向けのリップサービスが全てではないだろう。
      • …だったのだが、2023年にコナミがCygamesを特許権侵害で提訴。会社間関係の悪化は明白であり、『ANUBIS』を熟知したスタッフによる続編制作の展望は再び暗雲に包まれてしまった。
  • 参考記事

余談:ケンの迷台詞「はいだらー!」について

  • 本作の序盤、カリストに襲撃してきたバフラムと戦うディンゴに対してケンが「はいだらー!」という意味不明な叫びを上げるシーンがあり、当時のプレイヤー達を困惑させた。この言葉は脚本家の村田周陽により創りだされた造語であり、氏によると気がつけば脳内でケンがその言葉を叫んでいたとのこと。意味など無いのである。
    • とはいえ、この言葉はファンの間では現在に到るまで愛され続けており、『HD EDITION』でも「HD(はいだら)級HS(ハイスピード)ロボットアクション、再誕。」というキャッチコピーが使われている。
      • また、本作同様に小島プロダクションが手掛ける『MGS』シリーズの『MGS:PW』と『MGSV:TPP』にはこの台詞がネタとして登場している。
+ OPムービー(HD版)
+ タグ編集
  • タグ:
  • ACT
  • コナミ
  • ZONE OF THE ENDERS

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年04月08日 21:31

*1 ここまで前作『ZONE OF THE ENDERS』のお話。本作には「PREVIOUS STORY」として10分ほどのダイジェストが収録されている。

*2 開発チーム内で最も酔いやすい小島氏に合わせて調整が行われたらしい。

*3 これも威力の調節が出来るようになった。

*4 元よりそのボスのゼロシフトに対抗する為に取得する。

*5 男性器を「水栓」に見立てた「cock」という俗語・スラングにちなんだ「コックがピット」というシャレらしい。ファンからは「チ◯コックピット」と呼ばれることも。なお、女性型の搭乗機も同じ位置にある…。

*6 ファントマの性能も上がっているが、戦力差は更に開いている

*7 「40対1000」でも「1対25」の比率なので、作中設定は流石に誇張されているが、それでも大概である。

*8 OFとファントマでは性能差があり過ぎるので仕方ないのだが。

*9 一応スタッフのブログにおいて、無印と『ANUBIS』の間の2年間を補完するサイドストーリーが掲載された。これによるとサンダーハートは既に死亡している。セルヴィスはおまけのゾラディウスクリア時に一枚絵で登場している。

*10 「ANUBISよりは上」の域を出ないマーズの売上も相当危険だが。