ARMORED CORE 3

【あーまーどこあ すりー】

ジャンル カスタマイズメカアクション(TPS)
裏を見る
対応機種 プレイステーション2
発売・開発元 フロム・ソフトウェア
発売日 2002年4月4日
定価 7,140円
廉価版 PlayStation2 the Best:2003年11月6日/3,000円
判定 良作
アーマード・コアシリーズ

―その世界に、空は無かった―

惑星規模での大規模な災害から数百年後――。
僅かに生き残った人々は、この大災害を予見していたいくつかの国家によって建造された地下都市「レイヤード」に移り住み、
「管理者」と呼ばれるAI管理機構に自らを委ね、その庇護と統制のもとに暮らしていた。

長い時の中で、レイヤードでは国家に代わって「企業」が力を持ち、やがて「企業」は力を求め、互いに争いを始めた。
しかしその争いすらも、「管理者」の掌の上の出来事に過ぎなかった。
「管理者」があまりに生活に溶け込んでいるため、「管理者」自体の存在が希薄になるほど、日常の全てが管理されている世界。
その支配を受けない唯一の例外は、報酬によってのみ依頼を決定し、機動兵器「アーマード・コア(AC)」を駆る「レイヴン」と呼ばれる傭兵達のみであった。
~
全てが予定された世界。
だがそれは、徐々に狂いを生み始めていた。



概要 ―全てが管理された世界で、レイヴン達の戦いが始まる―

1997年に発売され、「パーツを組み替えて自分だけのロボット(AC)を作り、レイヴンと呼ばれる傭兵となって様々な依頼を遂行する」という斬新な内容でヒットを飛ばし、いくつもの後継作が世に出ることとなったロボットアクションゲームの名作『ARMORED CORE』(以下『初代』)。
本作『3』はシリーズ第6作目、ハードをPS2に移行してから3作目の作品となる。

前々作『アーマード・コア2』及び前作『アナザーエイジ』はPSでリリースされた三作品、通称『PS三部作』と時系列を共有する「続編」であったが、本作はそれまでの設定を一新し、更に様々な追加要素を導入。セルフオマージュとも取れる要素を盛り込みつつも異なった形を見せる世界観と、より多くの要素が追加されたプレイ環境の下で物語が展開される。

アーマード・コアシリーズは独特の操作方法を持つTPSジャンルであり、独特な操作性から初心者に対してハードルが高く、またストーリー描写が難解なことで有名であるが、本作では比較的難易度が抑えられ、シナリオも単純かつ明快な決着を迎える為、シリーズに新たに触れたいと考える新規参入者にお薦めしやすい作品である。


評価点

システム

コア・ジェネレータ・武装・補助装備などの多彩なパーツを組み合わせて自分のACを構築し、依頼を選択してミッションを遂行、獲得した報酬(修理費及び弾薬費は天引き済み)で新たなパーツを購入、自機を強化していく… という、『初代』の基本的なシステムは引き継がれている。本記事では『3』から加わった新要素を解説していく。

  • パーツ面の仕様変更
    • イクシード・オービット(EO):コアに内蔵された自立攻撃兵器で、発動中は自動的に周辺の敵をロックしてエネルギー攻撃を行う。未使用時は時間と共に残弾が回復するため、事実上「弾切れ」と無縁であるのもポイント。けれん味たっぷりのビット兵器はレイヴンに新時代の到来を予感させた。
    • 四脚型脚部:これまでのホバー走行から、足を動かして歩行する二脚や逆関節に近い形態に改められ、使い勝手が大幅に向上した。
      • ただし、二脚系に近くなったということは没個性化したということでもあり、賛否が割れた変更でもある。
    • インサイド:搭載位置が変更され、射出方向が正面となったことで攻撃型装備がまともに運用できるようになった。小型ロケットランチャー等のパーツが追加されるなどバリエーションも広がっている。
      • 腕部パーツに搭載されたことにより腕部重量に気を配る必要はあるものの、機体後方にしか射出できなかった前作と比べて確実に使いやすくなっている。ちなみに、インサイド使用時には肩の一部分が開き、さらには腕部パーツごとに開閉部分が異なるという芸の細かい演出も見られる。
    • 左腕銃:これまでレーザーブレードかエネルギーシールドしか選択できなかった左腕に、僅か3つながら射撃武器が追加。両手銃「ダブルトリガー」スタイルの始まりとなった。
      • しかも内訳は投擲銃二種類と火炎放射器一種類というかなりぶっ飛んだもの。ちなみに投擲銃は『3』シリーズ特有の武器カテゴリーで、基本的にロックオンは出来ず、弾丸が放物線を描いて飛ぶ(現実のグレネードランチャーに近い)。
      • 余談だが、この3つを作った企業「キサラギ」は、後発の『NX』以降プレイヤーに深い印象を与えていくのであった。
    • 右腕用ブレード:これまで射撃武器しか選択できなかった右腕に、レーザーブレードとは異なる「射突型ブレード」という新機軸の格闘用武器が追加。
      • ところがこれがファンの期待を斜め上に裏切ってくれた代物だった。一発で熱暴走を引き起こすほどの爆熱・レーザーブレードを越える超高威力と攻撃範囲の狭さ・攻撃開始までに1秒以上かかる・ホーミング移動なし・弾数制限ありというピーキーな性能だったため、ファンの間ではネタ武器として愛されている。そしてこれを作ったのはキサラギ。
  • パージ(装備解除)機能
    • 戦闘中に任意で腕部・背部武装及びエクステンションの切り離しが行えるようになった。「使いきった装備を捨てることで重量と消費エネルギーの負担を軽減し、機動力を向上させる」ことが可能となったのだ。
    • これに伴い、従来のシリーズ作品では基準違反(使用不可)とされた「重量過多」「腕部重量過多」「出力不足」といった警告は、それぞれの警告に則った重いペナルティを課されるものの出撃自体は可能となるように仕様が変更された(パージすれば問題点を途中解決出来るようになるため)。パージを前提とした戦術や、あえてペナルティを受け入れる選択肢などが考案され、プレイの幅は大きく広がった。
    • また、対戦限定でパージした装備を拾って再装備することも設定により可能となる。自機体のパージした装備に限らず、僚機や敵機のパージした装備も再装備できる。
  • 僚機システム
    • 本作では通常の作戦報酬の他に「僚機雇用費」が設定されているミッションが存在し、この予算内で他のレイヴンやパイロットを雇用する事が可能になった。これが僚機システムで、難易度や世界観、報酬の駆け引きのバランスの取れた仕様となっている。
      • 僚機は攻略が難しいミッションで心強い味方となるが、余った雇用費はプレイヤーに支払われるため、あえて雇わずに雇用費を作戦報酬に上乗せすることもできる。雇った作戦中はその僚機の残APも表示されるようになり、敵を倒した、APが残り少ない、弾薬が尽きた等の情報を音声で報告してくれる。
      • 雇用可能なキャラクターは傭兵稼業を営むACやMT(所謂、普通の戦闘メカ)が中心で、中には他のミッションで救出すると雇えるようになったり、シナリオが進むにつれて装備を強化したり、MTからACへと乗り換えるといった演出も。それぞれの個性が把握できるようになると、味わい深いチームプレイが楽しめるようになるのが特徴。
    • また、依頼主が別に派遣した戦力と協働することになるミッションや、多数の別働隊と協力しながら進行するミッションも存在する。無線演出も強化されており、これまでの「単騎で敵軍をかき乱す孤独な戦い」から「同じ金で雇われた友軍と協力しながら進撃する」へのイメージ変化が見られる。
  • その他システム面の主な変更点
    • 体感速度が引き上げられ、2系でのもっさり気味だった操作性も改善された。オーバードブースト(OB)発動時の速度も上昇し、より戦闘がスピーディーに。
    • TPSカメラがより正確に自機に追従するようになり、画面の見やすさが向上。
    • 対戦モードで最大4人の戦闘が楽しめるようになった。ゲーム中でも「エクストラアリーナ」が追加された(後述)。
    • ランク判定の導入。ミッションのクリア時に、クリアタイム、命中率、ダメージなど、ミッションそれぞれに設定された基準を元にSとA~Eのランキングが表示されるようになった。
    • シリーズおなじみの公式チート能力「強化人間」は主に初心者救済システムとして、そしてクリア後のお遊び要素として人気が高かったが、従来は一度能力を得ると解除できない(非強化状態と共存が出来ない)という難点があった。今作では「クリア後に入手できる特殊なパーツを装備した状態で条件をクリアしていくと能力が解放されていく」方式に変更され、強化能力のON/OFFは当該パーツを装備するか否かで選択できるようになった。
    • ガレージのユーザービリティが向上。紛らわしい数字増減表示や、レスポンスが鈍いショップ機能が改善されており、パーツの売却は機体構築中に行えるようになった。
    • ミッションのデモ演出をスタートボタンでスキップ可能に。難度の高いミッションに繰り返し挑むケースの多い本シリーズにおいては地味ながら評価点と言える。

BGM・グラフィック

  • BGM
    • これまではテクノとギターを前面に押し出した軽快なサウンドが主だったが、今作ではコーラスを取り入れるなどした、重く暗い雰囲気を醸し出す作風が多数を占める。メイン・テーマに用いられるクワイア系コーラス等賛否のあるものもあるが、「抑圧された地下世界の状況とマッチしている」とファンからはおおむね好評。
    • 実弾兵器の効果音が変更され、よりリアルチックになった。
    • ドルビー・プロロジックIIに対応しているが、これはPS2用ソフトとしては世界初。
  • グラフィック
    • ムービーはより美しく。とはいえこの後の作品でも向上して行くのだから、フロムの技術力恐るべし。
      • 特にオープニングムービーはPS2発売から2年しか経っていないとは思えないほど美麗。PS2全体で見てもトップクラスのレベル。ちなみにこのOPに登場する「インサイドミサイル」は、最早恒例の「ムービー詐欺」の中でも最も有名な物のひとつとしてファンからはネタにされている。
    • ゲーム中のグラフィックに関しては、本作でほぼ完成したとの評価が多い。PS2全体で見てもかなり美麗である。
  • なお、今作のパーツデザインはPS2最終作の『ラストレイヴン』まで使用され続けることになる。

シナリオ・ミッション


『我々が頭上に見ることが出来るのは、人工の、作られた空です。それが我々の世界なのです。』 ――クレスト代表者――

  • 今作のストーリーは、初代と同じく「暗い地下世界で繰り広げられる企業間紛争」を軸にしながらも、初代では表に出ることの無い存在であった「地下世界の統制者」が「管理者」として大きく前面に押し出されている点が特徴的。
  • 主人公はこれまでの作品通り薄汚い依頼をこなしていくが、その途中から「管理者」に起った異変と、それに立ち向かおうとする企業がストーリーの中核になってくる。徐々に追い詰められていく企業と主人公が、戦いの果てに目にするものは。
    • ACとしては珍しくストーリーがはっきりしているが、主人公はいつもの通り淡々と依頼をこなしていくのみである。ヒロイックな要素は皆無。
    • 同じく初心者向けの作品として薦められることの多い『2』と同じく、シリーズ中ではシナリオの展開が追いやすい部類に入る。
  • ストーリーには『初代』のオマージュが多々見られる。特に最終ミッションは、『初代』の最終ミッションを明らかに意識している。
    • ファンサービス要素として好評だが、一部の古参ファンには「『初代』の焼き直し」と嫌う人もいるようだ。結局はどちらに感情移入できたかの、好みの問題であろう。
  • ミッションはシリーズの例にもれず多彩。不法占拠者の強制排除や時限爆弾の解除、座礁船内の探索に研究所への潜入、更には超硬いダニの駆除などといった個性豊かなものが多数。中には「一般市民が乗るモノレールを破壊すると追加報酬」というエゲツナイものもあり、企業間の対立に巻き込まれる一般市民という過酷な現実を表している。
    • ミッションの難易度は他の作品と比べると控えめ。機体の構成次第ではごり押しも可能である。 しかし終盤になるとやはり難しくなり、「謎の高性能機」「味方の裏切り」「大型砲台の突破」「大型機動兵器との死闘」などの難関が連続する。それでも全体的に見れば「理不尽」なミッションは存在せず、練習や観察次第で突破法を見出せるものばかりである。
    • 一部のミッションを条件を満たしてクリアすると緊急の依頼が入る「連続ミッション」という新要素も加わった。受諾の判断はプレイヤーに委ねられている。
  • 僚機システムの導入によってミッションでCPUのレイヴン達と協働する機会が増え、ミッション中の台詞演出も強化された影響か、本作のレイヴン達にはユーザーから人気のある人物が多い。
    • この僚機システムは開始直後のレイヴン試験から早速採用されている。ここで共闘するアップルボーイ自体も、いかにも好青年な新人といった言動やゲームを進めていく事で変化していく装備にプロフィールと、同時期にレイヴンとなった印象を強く感じるキャラとして人気が高い。ストーリー最終盤には僚機雇用欄での説明も立派なものとなっており、時を経て成長していった事をうかがえるさりげない演出も光る。
    • ミッションで敵として登場するレイヴンや、ミッションには登場せずアリーナのみで戦う事になるレイヴン達も、登場演出や劇中の台詞、戦術や機体などで人気を獲得している者もいる(流石に登場人物が多いため、「個性がないのが個性」というような人物も少なくないが)。
    • 抗争を続ける各企業の性格付けもよくできている。管理者を疎んでいるが表面的な行動は起こせず、機をうかがうNo1企業ミラージュ、管理者を信望し、時にその代行者的立場をとるクレスト・インダストリアル、管理者には関心を示さずひたすら自勢力の拡大に腐心するキサラギ。これらの企業の製造するACパーツにもそれぞれ方向性がつけられており、より「方向性の違い」が演出されている。
      • 『2』でも各企業のパーツ製造方針には差がつけられていたが、今作ではそれがより強く打ち出されている(各企業がそれぞれのスタンスを打ち出した宣伝メールを送付するなど)。中でも「玄人向けの特殊パーツ」を専門に制作するキサラギは、後のシリーズでそれがさらに顕著になったこともあって妙な人気を獲得、「変態企業」の称号をユーザーから獲得することになる。
  • ACシリーズでは伝統的に出演声優がなかなか豪華なのだが、今作は特にそれが際立っている。最も声を聞く機会が多い三大企業の依頼人役に成田剣氏(ミラージュ)、榊原良子氏(クレスト)、中田譲治氏(キサラギ)、オペレーターのレイン・マイヤーズ役には浅川悠氏という豪華キャスト。

アリーナ・エクストラアリーナ

  • 二作目『プロジェクトファンタズマ』から続く、CPUと対戦できるアリーナモードが復活。参戦するランカーは49人+補充22人。『マスターオブアリーナ』に続く歴代二位の参戦人数である。
    • ランカーの紹介文もより細かくなっており、妙な親近感を持たせている。管理者を信望しクレスト製品しか使わないサイプレス、ブレードの腕に絶対の自信を持つノクターン、幾度となく脅迫メールを送ってくるランキング3位のロイヤルミストなど個性的な人物も多い。
    • 一方でACシリーズでお馴染みの「プレイヤーの知ることのないCPU同士の関係」も多く、バーチェッタとミダスの元カップルや、謎の因縁を漂わせるストリートエネミーとクライゼンなど、ユーザーにあえてあれこれ推測させる楽しみを残した(と思われる)設定をもつキャラもいる。
    • 今作のアリーナはメールシステムを利用しちょっとしたストーリー調となっているのも特徴。最上位ランカーのBBとその息のかかった者達*1からの忠告、自分を倒した主人公を気に掛けるレイヴンからの激励、そして彼らを突破した先でのランキング1位からの直々メールと、色々想像が膨らむ内容。
  • クリア後にはCPUを僚機として同じくタッグを組んだ敵チームと戦闘を行える「エクストラアリーナ」モードが登場。敵チームの組み方は、基本的には作中で何らかの接点を持った人物同士なのだが、中には予想もしないような組み合わせや、意外な結びつきで繋がれたチームも登場する。
    • クリア後はアリーナの追加ランカーとして、これまで雇えた僚機ACと対戦する事もできるようになる。個々の僚機の特徴をより深く知る事ができる機会でもあるため、クリア後のおまけ要素でしかない事がやや悔やまれる。

問題点

シングルプレイ

  • ややこしいランク査定
    • 先に述べたミッションクリア時のランキング付けであるが、これに関しては批判が多い。査定に用いられる項目そのものは計6種類で固定なのだが、ミッションごとに重要視される項目が異なり、ゲーム中ではそれが説明されない。つまり力の入れどころが少し違うだけでSランクは取れなくなってしまう。
    • もっとも、本作のSランク条件は後のシリーズと比べて比較的易しく、また「全ミッションSランクで取得できる隠し要素」と言ったものが存在しないため、そこまで悪影響を及ぼしていないのが救い。
    • 因みにランクはミッション個別のものと、それまでのミッションのランクを得点に換算して累積した総合ランクの2つが存在し、前者は主に緊急ミッション発生条件に、後者は上位アリーナ挑戦権とシナリオ後半の分岐ミッションと連動する。
  • 強化人間の仕様変更
    • 強化人間機能を付加するパーツの入手には一度ゲームをクリアしなければならず、これまでの「初心者救済」の意味が消滅した。ちなみに、パーツの効果を開放するにはそれぞれ課せられた条件をクリアしなければならない=入手直後は何の意味も持たないのだが、ゲーム中での具体的な説明はない。こういった通称「お使い」については賛否が分かれており、「クリア後のおまけ・お楽しみ」としての意味合いも薄れている為に、どのような位置づけの要素なのか曖昧になっている。
    • また、強化人間パーツを装着すると他のオプショナルパーツが装着できなくなるため、従来とは異なり一長一短な性能となってしまった。これまでの強化人間能力が強すぎたため良調整であるとの声もあるが、どの道対戦会では基本的に強化人間禁止のため、変更を惜しむ声もまた多い。
  • AI
    • CPUレイヴンのAIの作り込みが進歩しておらず、比較的単純な動きしかしない。ミッションやアリーナで壁にはまることもしばしばあり、ひたすら闇雲に背後に回ろうとする高ランカーなども相変わらず。それなりの動きを欲するならば次回作の『SL』を待たねばならない。
    • 僚機も例外ではなく、装甲が薄いのに無闇に敵陣に突撃したり、ザコ相手にいつまでも構っていたりする場面が目立つ。
      • とはいえ、この辺りは起用に因るところが大きく、特にAC僚機ならば余程の事がない限り「役立たず」などという事は無い。アリーナも初心者にとっては依然として高難易度で、対戦における様々な基礎・基本戦術を学べる要素も一通り揃っている。
  • その他重大ではないが気に掛かる点
    • 雇った僚機はミッション中に状況によって音声通信を入れるのだが、喋る頻度が少なかったり、他のアナウンスで台詞が途中で切られてしまう等の細かい不備がある(ミッション完遂時の通信がCOMの終了報告で途切れてしまう等)。音量の関係で、他の効果音に掻き消されてしまう事もしばしば。
    • 『2』以降の悪癖だが、ノーマルとハードの難易度選択で変化するのは「ロックオンサイトの大きさのみ*2」というズレた仕様は相変わらず。ゲームスピードが上がった今作ではこの差が少々大きくなっており、大会レギュレーションにはとりわけ注意を払う必要がある。
    • 一部NPCの断末魔において、音声とテキストメッセージが明らかに一致していない。呻き声で「ぐわっ!」、女性の悲鳴で「ぐわあっ!!!」などと表示されるため、思わず気が抜けてしまう。

対戦関連
対戦バランス自体は基本的に良好なのだがそれを殺す要素が多い為、対戦派ユーザーからの受けは良いとは言えない。

  • パーツバランス
    • 全体的に無難にまとまっているが、いくつか難点も見られる。
    • 脚部のバランスは悪い。エネルギー消費が異常に激しく、重量の割には装甲も積載量も物足りない「四脚」、移動速度は速いものの瞬発力に欠け、装甲が薄い「フロート」は必勝を求められる対戦において出番が少ない。また、機動性がものを言う本作では一部の軽量脚が猛威を振るい、中途半端な速度しか出せない「重量二脚」も厳しい立場にある。有用なパーツとそうでないパーツが顕著であり、後半に手に入る高価なパーツが産廃ということもままある。
    • 武器パーツのバランスは決して悪くはないが、下記「命中率の低下」の影響により、非常に低いレベルでまとまっているというだけでしかない。結局のところ、実用に耐えうるものは数個に絞られる。
  • 命中率の低下
    • 機体速度の底上げ、機体・弾の当り判定の縮小、射撃予測精度の下方調整などが重なり、歴代でも一二を争う程攻撃が当たらない作品となってしまった。一人プレイではあまり気にならないが、お互い回避行動を行う対戦では顕著になる。
    • あまりにAPが減らないため、「防御上昇OPの装備を禁止」という前代未聞のレギュレーションすら見られることも。
  • 対戦ステージ
    • 狭いマップと広大なマップの差が激しい。ほどほどであったり中間であったりする舞台が用意されておらず、結果的に広大で障害物の少ないマップ以外は対戦に向かない。
  • 2Pラグ(バグ)
    • 通信ケーブルを使う事で複数画面対戦が可能なのが、ACシリーズのウリの一つである。しかし今作ではその複数画面対戦を行った場合、必ず「2P側の操作が僅かに遅延する」というトンでもないバグが存在する。
      • 迫力が弱まり心理戦要素も激減してしまうが、画面分割対戦では発生することは無い。


総評

バランス自体は良好でありながらそれを殺す要素が多い対戦や、2Pラグと言うどうしようもないバグ、また、本作は後にリリースされ賛否両論となった『N系三部作』と世界観を共通している影響もあってか、「シリーズ凋落のきっかけ」として本作を嫌う古参ファンや対戦派ユーザーも存在する。
とはいえ大多数のユーザーからは、一新された世界観やストーリー、良好なゲーム性などが好意的に評価されている事は紛れもない事実である。特に一人プレイは復活したアリーナ等も含めて評価が高い。

レビューサイト「PS2:Mk2」では最高評価のSランクを獲得しており、一人用のロボットアクションシューティングとしての出来栄えは折り紙つきと言えるだろう。
難点の項で列挙した問題点も、対戦に通じたユーザーからの意見であり、ビギナーの立場ではそこまで気にならずに対戦が行えるはずだ。
PSP移植版のポータブルシリーズが発売されたこともあり、中古品ならば現在900~2000円程度で入手することが可能で、またBest版も発売されている。

アーマード・コアを始めようかと迷っている方や、硬派なロボットアクションを楽しみたい方、自分で組み上げた自分だけのマシンで暴れまわりたい方は、ぜひとも本作を手にとってみてほしい。本作はそうしたプレイヤーの期待に見事に応えてくれるはずだ。

『ようこそ、新たなるレイヴン。諸君を歓迎しよう。』


ARMORED CORE 3 PORTABLE

ジャンル 3D戦闘メカアクション

対応機種 プレイステーション・ポータブル
発売元 フロム・ソフトウェア
発売日 2009年7月30日
定価 3,990円
判定 なし


概要(ポータブル)

PSPに移植されたAC3。ボタンが少ないことによって操作が少々難しくなり、タイトル画面の音楽がカットされ、若干グラフィックが見劣りするものの、移植度はほぼ100%。
……対戦プレイ以外は。


問題点(ポータブル)

  • 何と本作は「バグまで完全移植」だった。複数画面対戦で問題となった2Pラグが改善されていないのである。
    • 必然的に「複数画面で対戦」することになるPSPでは2Pラグの回避は不可能。これには「いつでもどこでも遊べる(対戦できる)PSP版」を心待ちにしていたユーザーから怒りの声が多く上がった。
    • ラグの影響は勝率が目に見えて変わるほど。対戦するときは数戦ごとにホストを入れ替えると良いだろう。
    • PS2版では2Pラグが解消しているLRでもポータブル版では2Pラグが存在する。PSPの限界なのだろうか。
  • 戦闘中のカメラの移動が遅れ気味になり、PS2版に比べスピード感が増した。
    • 自機やロックオンサイトが画面外に出てしまい、操作しづらくなったとの声も。
    • バックしながら視点を下げると突然変な視点に切り替わるバグもある。
  • フレームレートが60FPSから30FPSに落とされた影響か、武器のリロード時間が奇数の武器は表示に+1された性能となる。連射力の高い武器ほど影響を受けやすい。
  • 「達成率」が特定の条件を満たすと際限無く増えてしまうバグがある。特定値を超えるとループして0%に戻る。
  • 対戦モードでコンピュータと対戦できず、また難易度の切り替えもできない。
    • PS2版では対戦モードで、例えばアリーナの一部レイヴンと1対2などの自由なシチュエーションで対戦できたり、難易度の切り替えができたりした。
  • ボタン数が足りない為、それぞれの好みにあったキーコンフィグの必要性が重要となったが、「フルキーコンフィグ搭載」を謳っておきながら、パージに使用するコマンド自体が一定なため、キーコンフィグによってはパージができなくなる。例えば左スティックを移動、方向キーを視点移動に設定したときなどにこの問題が発生する。
    • このため「パージをパージする」という言葉も生まれた。ACの機動力が求められる『3』ではパージは重要な戦略であるため、パージをパージすることには多大なリスクが伴う。
  • 電撃ホビーマガジンにて連載中の外伝小説「ARMORED CORE Brave New World」より、ゲストとして追加ランカーレイヴン「サーティ」及びその愛機「マーウォルス」が参戦。
    • 鳴り物入りで参戦したものの、その強さは褒められたものではなく、小説中で見せた凄まじい動きにはほど遠い。マーウォルス専用の新頭部パーツの産廃っぷりとあいまって、一部では「マーウォルス(笑)」と揶揄される。
      • ちなみに新頭部パーツの型番「GLITCH」には「(機械などの)突然の故障、小さな技術上の問題」といった意味がある。フロム公式産廃パーツということか?
      • しかも、模型誌で参戦が発表された際に掲載されたイメージイラストでは、重火器を細身なフレームにこれでもかと搭載したボスキャラらしいビジュアルだったものが、製品版ではレーザーライフルとブレードのみを装備した貧相な格好になっている。酷い詐欺。
        もっとも実際に組むと積載重量をぶっちぎりでオーバーするので(他にいいアセンがあっただろうが)仕方ないとも言える。
  • 追加要素が少なめの中で復刻パーツは喜ばれた。が、いわゆる「産廃」が多い。

評価点(ポータブル)

  • 追加要素
    • 『サイレントライン』で追加された「迷彩柄」が選択できるようになった。
    • 『ネクサス』から追加された「武器の色変更」ができるようになった。
    • 初代から『アナザーエイジ』までの一部パーツが復刻された。
    • 模形雑誌『電撃ホビー』とコラボレーションした追加ランカーや、AC2に登場したパーツが復刻されて登場するという追加要素。
    • アドホック通信を用いた対戦に対応した。PS3のアドホックパーティ等を使えばオンライン対戦が可能。
  • 改善要素
    • パーツパラメータが『ネクサス』以降と同様、日本語で表記されるようになった。
    • ガレージに登録しておける機体の数が、PS2版の3機から5機に増加した。
    • ガレージやメールのシステム面が『フォーミュラフロント』準拠となり、操作しやすくなった。また機体のサンプルカラーもこの作品準拠で、種類が豊富。

総評(ポータブル)

 ニューカマーがACシリーズに触れる機会が増えたという点では歓迎すべきことなのだが… 詰めの甘い、惜しい移植作品となってしまったことは否めない。
 ただ、なんだかんだ言ってもシングルプレイはPS2版と変わらぬ面白さ(繰り返すが、移植度自体はほぼ完璧である)であり、プレイに重大な影響があるバグが存在するわけでもない。対戦を極めようとするつもりでないならば、購入を検討する価値は十分にある。

+ タグ編集
  • タグ:
  • 2002年
  • PS2
  • ACT
  • フロム・ソフトウェア
  • アーマード・コア

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年02月27日 23:16

*1 上述したロイヤルミストもどうやらそのようで、アリーナにも秩序があるとは彼の弁

*2 正確には緑ロックオン(障害物の識別機能)も働かなくなる。