犬神家の一族

【いぬがみけのいちぞく】

ジャンル 推理アドベンチャー
対応機種 ニンテンドーDS
発売・開発元 フロム・ソフトウェア
発売日 2009年1月22日
価格 5,040円(税込)
プレイ人数 1人
セーブデータ 3箇所
レーティング CERO:C(15歳以上対象)
判定 なし
ポイント 超有名ミステリー小説のゲーム化
フルプライスとしてはボリューム不足
良くも悪くも原作忠実


概要

横溝正史の推理小説「金田一耕助シリーズ」の一作品である「犬神家の一族」をゲーム化したニンテンドーDSソフト。
ゲームとしては「金田一視線で事件を解決していく」、一般的な推理アドベンチャーゲームと同じシステムでのプレイとなる。
「妖怪ヘヴィメタル」をコンセプトに掲げるユニット、陰陽座が本作のオープニング・エンディング楽曲を提供している事も売りとしている。


ストーリー

金田一耕助の元に一通の手紙が届いた。それは犬神家の顧問弁護士を務める古舘恭三の助手・若林富一朗からだった。
その内容は「犬神家に容易ならざる事態が起こりそうなので調査して欲しい」というもの。
犬神家では同年、信州財界の大物・犬神佐兵衛が莫大な遺産を残し、この世を去っていた。
調査の為に那須に向かった金田一だったが、依頼主である若林は何者かによって殺害されてしまう。
それをきっかけに、金田一は犬神家の遺産相続争い、そして凄惨な事件へと巻き込まれていく…。

(取扱説明書「物語」より引用)


主なルール

  • 任意セーブ方式。タッチと十字ボタン(ボタン)の両操作に対応しているが、一部タッチでないと行えない操作もある。
  • ゲーム開始前に3つの手帳(セーブデータ)を選び、そこからプレイヤーの名前とデータを作成してプレイを行う。

主なモード

  • 前回のはじめから各章のはじめから
    • 本作のメインシナリオをプレイできる。シナリオは全9章で構成されている。
    • 「前回~」は以前セーブした場面からの再開、「各章~」は今までにプレイした章を選んでプレイできる。
  • 設定
    • 「画面の明るさ」「音量関連」「メッセージ速度」の各設定が行える。
  • 重要語録
    • ゲーム中に登場した重要語(下記)・及びそれを相手に"ぶつけた"時の対象キャラのリアクションを確認できる。
  • 相関図
    • 金田一を含む、登場人物の相関図を確認できる。
  • 新聞一覧
    • ゲーム中に登場した新聞(下記)の確認・及びパヅルのプレイができる。
  • 捜査記録
    • ゲーム中に発生した全イベントからプレイしたいものを選び、そこからの再開ができる。
    • このモードは一度正規エンディングに到達していないと現れない。
    • 今までに到達した"正規・バッド・真エンディング"を個別で鑑賞できる機能も兼ねている為、エンディングリストとしての一面も持つ。
  • この手帳を捨てる
    • プレイ中のセーブデータを破棄する。

メインルール

  • ゲームの流れ。
    • いわゆる会話形式のアドベンチャーにてゲームが進む。
      • 上画面に金田一と主要キャラとの会話シーンが、下画面にコマンド一覧が表示される形となる。
      • 下画面中央部をタッチ・もしくはボタンを押す事で会話を進められる。タッチ(ボタン)長押しで会話の高速飛ばしが可能(朗読スキップではない)。
      • 下画面には「白い心電図風の波」が常時表示されている。これは金田一の勘を表し、後述する「重要語」をぶつけるべきタイミングになると、色が「青→黄→赤」へと変化する。
    • コマンドには以下の項目がある。
      • 「推理」…金田一のフケまみれの頭をスライドで掻きまくれる。掻き終わるとゲームに関する簡易なヒントが聞ける。使用制限はない。
      • 「重要語」…詳細は下記の重要語の項にて。
      • 「登場人物」…金田一を含めた登場人物のプロフィールを鑑賞できる。
      • 「保存」…任意セーブを行う。本作のセーブデータは個別扱いなので、他プレイヤーの手帳にセーブする事はできない。
      • 「履歴」…今までのプレイで流された会話履歴を確認できる。
      • 「メニュー」…上記のモードと同じ項目が選べる。
  • 重要語について。
    • キャラの会話中には時折「重要語」という言葉がストックされ、それを会話相手に"ぶつける"事ができる。
      • 重要語コマンドを選んだ後に"ぶつけたい"言葉を選択して、それを上方向へとスライドさせると、上画面にいる"ぶつけられた"対象キャラが何かのリアクションを起こす。
      • 但し、イベント中によっては重要語コマンドが一時的に選べない場面もある。また、重要語をストックしていない状態でも同様である。
    • 会話を特定まで進めると「質問中」というイベントが発生する。
      • このイベント中は強制的に重要語を"ぶつける"事となる。重要語の黙秘は許されず、何かの重要語を"ぶつけない"とゲームが進まない。
    • 重要語のぶつけ方によって、その後のイベント展開に影響を及ぼす場合がある。
      • 名探偵の観点から行なわれる「重要語」の扱いである。もし誤った重要語を"ぶつけた"場合、それは非常にまずい展開となるだろう。
  • 新聞について。
    • イベントを進めると「新聞」が金田一の元へと配られる。
      • 配られた新聞は実物感覚で鑑賞できる。新聞には大きく分けて「本件の事件記事」「本件とは無関係な記事」「パヅル」が記載されている。
      • 新聞は一画面では収まりきらないサイズな為、スライド(もしくは十字ボタン押し)で記事の位置調整を行わなければならない。
    • 新聞には「パヅル」が付いており、実際に遊べる。
      • パヅルには「クロスワードパヅル」と「虫食ひ算」の2種類がある。
      • クロスワードパヅルは指定された数文字のマスを回答すると新聞欄に「良」のマークが付き、すべてのマスを正しく埋めると「優」のマークが付く。
      • 虫食ひ算はすべてのマスを正しく埋めると「優」のマークが付く(このパヅルに良マークはない)。
      • パヅルプレイ中に「解答照合」という項目を選ぶと、マスの正解不正解の状況を確認できる。使用制限はなく何度でも照合可能。
      • すべての新聞のパヅルに「優(良)」マークを付けると、金田一の好奇心が過熱して新たな問題が出現するかもしれない…。
  • エンディングについて。
    • 本作はマルチエンディング制を採用している。
      • 無事に事件を解決すると「正規エンディング」、行動を誤ってしまうと「バッドエンディング(事件未解決)」が発生する。
      • 一度正規エンディングに到達すると、次回プレイ時において「真のエンディング」への道が開かれる…。

問題点

  • 相当なるボリューム不足感。
    • フルプライスソフトとしては割高感を覚えてしまう内容である。
      • メインシナリオにおける正規エンディングまでの推定時間は通常プレイで約3~4時間程度。明らかに短い。
      • 後は複数のバッドエンディングと真エンディングの回収・及びパヅルを全部解くだけでフルコンプができてしまう。
      • バッドエンディングは軽いイベントで終わってしまうものばかりで、ほとんど"あってない"レベルの終焉でしかない。
      • 真エンディングは正規のそれに比べても、少しの補足が追加された結末でしかなく達成感があまりない。正直、周回してまで達成する程の結末とは思えない。
  • 原作体験済み前提の難易度。
    • 重要語を適当に"ぶつけよう"ものなら、かなりの確実でバッドエンディングに陥ってしまう事請け合いである
      • 溜まりまくる重要語を順番通りに"ぶつけない"とならず、リアルで金田一並の推理力を持っていないと適当な"ぶつけ方"になってしまいがちである。
      • 「質問中」以外のタイミングはかなりシビアであり、前述した「心電図風の波」の変化と状況をよく見極めてぶつけなくてはならない*1
      • もし、ぶつけた重要語が地雷だった場合は、即バッドエンディング直行となり、前のセーブ箇所からロードしない限りはやり直しが一切効かなくなる。
      • 実のところ、原作を知っていないと初見攻略はまず不可能といっても過言ではない。まさに「原作が攻略本」な難易度である。
    • 推理コマンドがほぼ役立たず。
      • メーカー側は「捜査に詰まったら推理しろ」とアピールしているが、実際は得られるヒントがあまりにも断片的すぎてヒントになっていないことが多い。
      • 逆に原作既読者であれば、推理コマンドを全く使用せずとも正規エンディングを迎える事ができてしまう
      • はっきりいって推理コマンドは完全に死にシステムといっても過言ではない。「金田一のフケ散乱シーンが鑑賞できるだけのコマンド」とも。
  • 一部システム周りが不親切。
    • 朗読スキップがなく、周回プレイが若干苦痛になりがち。
      • 高速会話飛ばしを用いても、さほど早くは飛ばせない。結果、無駄なプレイ時間を消費するハメとなる。
    • 各手帳におけるセーブ箇所が1つのみ。
      • バッドエンディングフラグを踏んだ状態でセーブしてしまうと、どうあがいても後戻りは不可能。一端バッドエンディングに到達し、その章の最初からやり直すしかない。
  • 地味に難しいパズル問題。
    • 本作は昭和24年*2を舞台としたシナリオであり、パズル問題もシナリオ同様の時代性が含まれている。
      • 特にクロスワードパズルは「今時の若者ではまず分からないであろう知識」を要する問題がそれなりにあるため、マスを埋めるのが困難になりやすい。
      • マニアックな問題は新聞記事内にヒントがあることも。割合的には今でも通じる問題(ことわざなど)の方が多いので、わかるマスから埋めていって推理する、という手もある。
      • 時代性が左右されない虫食ひ算は"計算力と推理力"があればクリア可能だが、こちらの難易度も高め。
    • 知識や計算力がなくとも「適当にマス内に文字(数字)を書き、解答照合を繰り返せば」一応の完全クリアはできる。時間がかかる上、完全にカンニング攻略ではあるが…。
      • とはいえ、文字のバリエーションが多すぎるクロスワードパズルでこの攻略するのはきつい。どうしてもわからなければネット検索を活用するのもアリだろう。

賛否両論点

  • 原作を忠実再現したシナリオ。
    • 「推理小説という原作」を持つ本作だが、その再現度は非常に高く原作同等のノリが楽しめる。
      • 映像化の際は大抵カットされる「ある人物の正体」もしっかり描かれており、その点でも貴重。
      • しかし、これが大きな問題点とも評価点ともいえる要因となっており、プレイヤーにとっては賛否が分かれる事だろう。
    • もし「原作体験者」が本作をプレイするならば、「終始原作のおさらいプレイ」となるのは必至となる。
      • 5,000円近くの出費をしたのに、原作となんら変わりない内容であれば「小説や映像ソフトを観た方が安上がり」という感情を抱くだろう。
      • 原作の本質を変える様なIFストーリーがない本作においては、どうしても既出感との隣り合わせでのプレイは避けられない事実。
    • もし「原作非体験者・及び原作忠実派」が本作をプレイするならば、原作体験者との評価が180度変わりかねない。
      • 元の原作版の完成度が高いだけに、それを体験した事のない(忠実性を望む)プレイヤーにとっては非常に上質なシナリオが味わえるだろう。
      • 実際、AmazonやmkIIにおける本作のレビューにおいて、大多数の人は「原作に忠実」「シナリオが面白い」と挙げている。
    • 以上の事から、原作体験者にとっては「新鮮味のない原作おさらいゲーム」、それ以外のプレイヤーからは「極上シナリオのゲーム」として解釈されやすい。

評価点

  • グラフィック周りは優秀。
    • キャラクターデザインやグラフィックの書き込みに関しては、ほぼ全員一致で高評価を得ている。
      • 作中のデザインはすべて水彩画調で描かれており、金田一達の容姿もそれに合ったデザインで統一されていが、このデザインのセンスが非常に良い。
      • 原作における「独特の怪しい雰囲気」と作中のデザインが見事にマッチしており、違和感のない外観でシナリオに没頭できる。
      • 主要キャラの表情はなかなか豊富であり、金田一達の喜怒哀楽な感情が分かりやすく表現できているのも見事。
      • 色彩は基本モノクロで、「"斧・琴・菊"の家宝は金一色」「殺人現場における流血描写はドス黒い赤一色」で表現される手法が取られている。
        この手法により、家宝の"きらびやかさ"や殺人現場の凄惨さが強調され、シナリオをより魅力的なものにしている。
  • 大方便利なシステム周り。
    • 問題点で述べた不便さはあるものの、それ以外のシステム周りは使いやすいものが揃っている。
      • 会話履歴が確認できるのはもちろんの事、登場人物や相関図でシナリオの舞台背景が詳細に知る事ができるシステムがなかなか凝っている。
      • "各章のはじめから"や捜査記録を利用すれば、周回後にいちいち最初からやり直す手間が省ける。特に後者は残りエンディングの回収に大きく役立つ。
  • パヅルがプレイできる。
    • 暇潰しゲームとはいえ、こういうおまけ要素が含まれているのは地味に嬉しい。
      • 流石に単体パズルゲームソフト並みの問題数ではないものの、シナリオの合間にパヅルをプレイするのも乙ではなかろうか。
  • 陰陽座の楽曲も評価高し。
    • ゲーム開始前に流れるオープニングテーマ『相剋』は非常にかっこいいながらも、作品の雰囲気を損なっていない楽曲で聴く価値がある。一番しか流れないのが残念だが…。
    • スタッフロールと共に流れるエンディングテーマ『慟哭』は哀愁を漂わせる"しっとり"系楽曲。凄惨な事件を終えた後の"やるせなさ"もあって、心に染みるものとなっている。
    • 曲を個別に聴くモードがあれば更に良かっただろう。

総評

明らかにフルプライスとしては割高な作品であり、ゲームとしての粗も多々ある。
その反面、原作を忠実再現した上質シナリオや、それを引き立てる演出の数々を好意的に見る者もまた多い。


余談

  • 同じフロム・ソフトウェアから本作の次回作として『八つ墓村』がリリースされているが、こちらも本作の路線は健在である模様。
  • KOTYとしての位置付け。
    • 本作は「クソゲーオブザイヤー2009携帯機部門」の選外作である。
      • 一時期は候補作レベルにまで到達していた事もあったが、他の候補作があまりにも酷い出来であったが故に、本作は溢れる形で選外送りにされた。
    • 奇しくも本作と同年に、ミステリー系アドベンチャーの携帯機作品が多数KOTYに関わっていた。

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最終更新:2024年02月06日 23:36

*1 1ヶ所を除いて無視する(何もぶつけない)ことも可能だが、分岐を回収する上では必須

*2 原作では「昭和2X年」とぼかされているが、本作では新聞の日付から、昭和24年の11~12月にかけての出来事とわかる