ファイナルファンタジーIX

【ふぁいなるふぁんたじーないん】

ジャンル RPG
対応機種 プレイステーション
Windows 7~10 (Steam)
プレイステーション4
Nintendo Switch
Xbox One
メディア 【PS】CD-ROM 4枚組
【Win/PS4/One/Switch】ダウンロード専売
発売・開発元 【PS】スクウェア
【Win/PS4/One/Switch】スクウェア・エニックス
発売日 【PS】2000年7月7日
【Win】2016年4月14日
【PS4】2017年9月19日
【One/Switch】2019年2月14日
定価 【PS】7,800円(税抜)
【Win/PS4/One/Switch】2,547円(税10%込)
プレイ人数 1人
レーティング CERO:A(全年齢対象)*1
廉価版 アルティメットヒッツ:2006年7月20日/2,625円
配信 ゲームアーカイブス:2010年5月20日/1,500円
判定 良作
ポイント 世界観は良くも悪くも原点回帰
ただし戦闘面の調整は大味
明快で爽快なストーリー
デフォルメされた温かみある世界観
ファイナルファンタジーシリーズ


概要

『ファイナルファンタジー』シリーズの第9作。「原点回帰」と「生命讃歌」をテーマとしている。

機械文明や階級社会といった近現代的要素が『VI』~『VIII』にかけて次第に強まっていたのに対し、今作では再び『V』までのような中世ヨーロッパ的なファンタジー路線の世界観に回帰した。
ゲームシステムも、大胆な革新路線をとった前作とは逆にきわめて保守的な王道路線に戻っている。

3頭身の「ちびキャラ」風のポリゴンモデルが登場し、世界観やキャラクターデザイン含め、デフォルメの効いた可愛らしいデザインワークで統一されている
また、原点回帰の名の通り、本作ではキャラクター原案を『VI』以来となる天野喜孝氏が担当しており、旧作に登場した地名やキャラクター名が登場する、旧作の音楽がアレンジされて使われるなど、旧作プレイ者へのファンサービス的要素も多い。

音楽は前作までに引き続き植松伸夫氏が担当。氏が単独で全曲作曲を担当した最後のタイトルである。


ゲームシステム

  • 『VIII』がそのゲームシステムの複雑さにより賛否を招いた反動からか、今作のシステムは全体的にシンプルで分かりやすくなっている。
    • 装備品からアビリティを習得するシステムは、「装備したまま戦闘に勝利し、アビリティポイントを溜めて習得」という、『VI』の「魔石」のシステムに近いきわめてシンプルなもの。
    • 本作のアビリティは黒魔法や剣技など戦闘中に発動できるアクションアビリティと、キャラクターごとに定められた魔石力を消費して個別に着脱するサポートアビリティの二つに分かれている。
  • ヘルプ機能
    • メニュー画面でセレクトボタンを押すと、現在カーソルを合わせている項目の解説が表示され、モーグリが解説してくれる。
      • 解説だけでなく小ネタが混じっていることも多い。
  • フィールアイコン
    • 落ちているアイテムや看板や宝箱などに近づくと、操作キャラクターの頭上にアイコンが出現、その状態で○ボタンか□ボタンを押すとアイテムの取得や看板の閲覧などの行動をとることができるというシステム。
  • 合成
    • 2つの装備品を各地の専門店「合成屋」で合成することで、新たな装備品を入手できる新システム。
    • 特定のアイテムとギルさえあればすぐに作ってもらうことが出来る。ただし値段は少しお高め。

戦闘システム

  • 従来通りATBを採用している。そこに新要素としてトランスシステムが搭載された。
  • バトルメンバー数
    • 『VII』や『VIII』では、一度の戦闘に参加できるキャラは最大3名までだったが、本作では『VI』以前の作品と同様、4名まで同時に戦闘に参加できる。
  • トランス
    • キャラごとに存在するトランスゲージが満タンになると、自動的にそのキャラが強化された「トランス状態」になる。
    • トランスゲージは敵の攻撃を食らうと蓄積される。被ダメージ0でもゲージは増加し、特定のアビリティをセットすれば増加量を固定出来るので調整も利く。
    • トランス状態のときはキャラの外見が変化し、パラメーターが大幅にアップ。他にも上位の技に変化したり、コマンド自体が独自の物になるなどキャラによって異なる強化がされ、全体的に演出がド派手になる。
    • トランス中は行動する(コマンドを実行する)ごとに減少していき、ゲージが無くなると通常状態に戻る。トランス中に戦闘が終了しても、トランスゲージはゼロになる。
  • 原点回帰ということからか、V以降の作品に比べてコマンドの性能などは控えめで地味。
    • 『V』~『VII』の「みだれうち」などのように一度に連続攻撃できるものはない(強いて言えば「W白魔法」や「W黒魔法」が該当する)。
    • 上記に加えて『VIII』のように5桁を越えるダメージを叩き出せる攻撃方法もなく、1ターンに与えられる最大ダメージは基本的に9999ダメージまでとなっている。敵のHPも隠しボスですらあまり多くないなど全体的に数値がデフレしており、過去作と比べると爽快感に欠けるとの声も。
    • 行動の際に、スロットなどの何らかのミニゲームや特殊な操作が要求されるコマンドもない。
    • 大味な要素をなくしてゲームバランスを丸くした、と好意的に捉えることもできる。

やり込み要素

  • ミニゲーム
    • 前作に引き続きカードゲームがある。本作独自の内容になっており、前作のようにカードを有用なアイテムに変えるなどの要素はなく対戦と収集に特化した、よりミニゲームとしてのカラーが強くなったものとなっている。
      • 後にプレイオンラインでも全く同じルールのゲームが実装され、好評を博したことからも完成度の高さが窺われる*2
    • そのほかにも「なわとび」「かけっこ」のようなおまけミニゲームや、「チャンバラ」「だるまさんがころんだ」などの必須ミニゲームなど多岐にわたる。
  • ラストダンジョンのある場所にプレイ時間12時間以内に着くと、最強の剣「エクスカリバーII」が手に入る要素がある。
    • 普通にプレイしていては間に合うわけがない。さりとて、意識してプレイすれば特に厳しすぎるタイムというわけでもない。「最強の剣が欲しい」と思った非やりこみプレイヤーにタイムアタックを強いる程度の難易度。
  • 操作キャラ以外のキャラ等の様子を見ることのできる「ATE(アクティブタイムイベント)」も数多く用意されている。中にはプレイヤーの行動により展開が変わるものも。

評価点

ストーリー・キャラクター

  • 親しみやすいキャラクターが織りなす、笑いあり涙ありの明快なストーリーは多くのファンを獲得した。
    • ビビやジタンなどほのぼのとしていながら悲劇的な運命を背負ったキャラから、スタイナーやフライヤなど自身の境遇や生き様に悩む大人まで、多彩なキャラクターが登場する。
      • キャラクター達のビジュアルはバラエティ豊かで、パーティーメンバーにもいわゆる「亜人」型が半数。バトルでの実用性にも左右はされるが、どのキャラも「使ってみたい」と思わせる魅力がある。
      • 前2作のリアル頭身でシリアスな内面描写を伴うキャラづくりとは大きく異なる方向性だが、一人一人がとても丁寧に描かれており、本作の人気を支える一因になっている。
  • ストーリーは、「命」や「仲間」を正面から描いている。過去のFFで取りざたされてきた「自己犠牲」というテーマとは方向性の異なる重厚なテーマで、哲学的な問いかけも豊富に内包しているが、難解な表現は用いられず明快なものとなっている。
    • 重厚なテーマを扱う一方、軽妙で肩の力を抜いて楽しめる部分も多く、全体として重すぎず軽すぎずの絶妙なバランスになっている。
    • ハッピーエンドと悲哀とが絶妙に同居したエンディングは、流れるテーマソング『Melodies of Life』とともに高い評価を受けている。
  • 先述の「ATE」により登場人物の様々な面を見ることができるが多くの場合必須ではなく、本筋ストーリー以外でのキャラクターとしての奥行きを適度に持たせることに成功している。

世界観

  • 3Dとなった『VII』以降のナンバリング作品で唯一の、絵本のような柔らかみを帯びたファンタジー的世界観は作り込みが濃密で、今なお根強いファンを有し愛され続けている。
  • 本作の登場キャラクターは、メインキャラやサブキャラなどシナリオに関わるキャラのみならず、街を歩くモブに至るまでほぼ全員に固有名が設定され、その個性が細かく設定されており、本作の特筆点。
    • 会話内容や行動がシナリオ進行に伴って頻繁に変わるため生活感がよく醸しだされており、またマップを歩くだけでもパーティキャラとモブキャラが相互に反応を見せる演出が豊富に盛り込まれている*3
    • 本作の世界には、動物を擬人化したようないわゆる「亜人」も、差別などなく普通に暮らしている。
      • 亜人はゲーム中のポリゴンモデルの頭身が低いこともあり一歩間違えれば「幼稚」とされかねないデザインだが、その生活と行動が細やかに描かれ、また冒頭から一貫して描かれ続けることで世界全体との調和がとられている。
  • 世界にも調べられる場所が非常に多く、細かい部分にまでフィールアイコンによる反応がみられ、ここでも世界とキャラとの相互反応による世界観構築に成功している。
    • 豊かな世界には、思わず笑ってしまうような小ネタもふんだんに盛り込まれている。
      • 例えば領土同士を結ぶゲートの空がとある期間だけ虹がかかったりするというファンタジー演出や、泉にギルを投げ込み続けるとそこでしかとれないアイテムが手に入り、さらに投げ込みつづけると街の貧民が「金を拾ってためた」といいカードゲームで使用するカードが強力になったりする…など妙にリアルな描写まで、世界をくまなく探索したいと思わせる設計。

グラフィック

  • PS2ソフトに匹敵するともいわれた、美麗なグラフィック・ムービーもまた本作を語る上で欠かせない要素である。
    • 「絵自体は写真のように綺麗だが、どこからどこまでが通路で自分がどこにいるかわかりにくい」という『VII』以降で指摘されていた問題も、通路と背景でスクロールスピードを変える、セレクトボタンで操作キャラの位置を示すアイコンを表示出来る等で改善された。
    • フィールアイコンシステムの導入により、前作・前々作の「どこを調べられるかがわかりづらい」という欠点も解消されている。

音楽

  • 植松伸夫氏によるBGM群は本作においても名曲が多く、「この刃にかけて」「あの丘を越えて」「独りじゃない」などといったシリーズ中でも高い人気を誇る曲を数多く輩出している。
  • 通常の戦闘BGMには『VI』までのイントロが復活する、過去作の複数の楽曲がアレンジされて登場するなど、過去作品のファンを喜ばせるサービスも見られる。

やり込み要素

  • 「ここほれ!チョコボ」やチョコグラフの宝箱探しなどのミニゲームも豊富。
    • 本編や育成へのメリットを享受するのにひと手間必要だった前作のカードゲームと違い、ゲーム自体で景品がもらえるという明確なメリットがあるため、プレイの意義が大きい。
  • 前述のATE等、一周だけで全てのイベントを見ることは不可能な、ちょっとした周回前提の要素もある。
  • ただし、寄り道要素におけるやりこみ要素は豊富であるが、育成面におけるやり込み要素は非常に少ない(後述)。

その他

  • 前2作でシステムが難解だったとする声に呼応してか、今作の育成の基本システムは「装備品を装備し、勝利することでポイントをため、その装備品ごとのアビリティを習得する」という、非常にシンプルなものとなっている。
  • といっても、「最強装備だけつけていれば良い」というほど単純ではなく、お古となった装備や本流ではない特殊な装備をアビリティ習得のために使用できる、属性の耐性や強化の要素があるなど、装備の選択や育成にある程度の戦略性は担保されている。
    • また装備することで常時効果を発揮するアビリティに必要な『魔導石』の限界により装備可能アビリティ数の制約があり、アビリティ選択にもある程度の工夫が求められる。

賛否両論点

ATBの大味な仕様

  • アクティブタイムバトルのキモである時間経過の設定が極端である。
  • 魔法や技のモーション中にもバトル時間が経過する仕様で、なおかつ今作の行動には長い演出を伴うものが多い。この仕様は戦略の要素の一つとして組み込める一方、あまり考えずにバトルをするとATBが形骸化しやすい。
    • バトル時間経過中に補助魔法の効果が常に発揮される点は、特に賛否を招いている。
      • 戦闘中に一定周期でHPを自動回復する魔法「リジェネ」やその効果を常時発動するアビリティ「いつでもリジェネ」を使った状態で演出の長い行動をとると、パラメータ次第ではかなりのHPをノーリスクで回復できてしまう。
    • 逆に、物理防御力を一時的に上げる「プロテス」のような時間制限のある補助魔法は、演出の間に効果が切れやすく、やや使いづらくなっている。
  • この仕様を理解したうえで、かつウィンドウの開閉によって時間経過の停止を操れる設定にすれば、「単体出現した敵の行動時はウインドウを閉じてこちらのATBゲージを貯め、かつ味方の行動時はウィンドウを開いておき敵のゲージ貯めを抑える」という戦略として行使できる。
    • ただし、特に考えないでプレイする人の場合「誰か1人でも演出の長い行動をとると、それが終了するまでに他の敵味方全員のATBゲージが満タンになり、全員が順番待ちで行動する」ことになり、ATBが形骸化し実質ターン性になってしまう。
  • ただ、ボスに「瞬時にゲージが満タンになる」という内部設定の相手が多い点を見る限り、開発側はこの仕様を認識し、それを前提として制作している節がある。
    • このタイプのボスとバトルモードをアクティブにして戦うと、相手のエフェクトが終わった瞬間に相手の次の行動が入力されるため相手のエフェクトが終わるまでに入力が終わっていない味方は行動が割り込まれるという、アクティブタイムバトルの名前通りの非常に忙しい戦闘となる。 ウェイトゲージの意味は無いが。

難易度の低さ

  • 『VIII』での複雑さへの賛否ゆえか、今作はシステムの内容的にも平たく作られており、それに呼応してか難易度的にも物足りないと言われることが多い。
    • 先述のATBの仕様により、回復手段が充実していることがその一因ともされている。
      • 先述の「いつでもリジェネ」に、個人の時間経過を速める「いつでもヘイスト」を装備するコンボは、あまりに強すぎるとしてよく批判される。
      • また被ダメージ時のカウンターとして回復アイテムを使用する「オートポーション」はそれ自体も使いこなせば強力だが、 その発動モーション中に時間が経過することでリジェネの効果で更に回復がされる というコンボも可能で、きわめて効果的な回復手段となる。
  • また、後半のボス戦は大味でそこまで強くなく、仮にそれらなしでも苦戦しづらいとの指摘もよくされる。
  • 抑えめなゲームバランスには、当時メーカー側が攻略情報を規制していた事情(後述)も関係しているとみられる。
    • 多くの敵は対策を講じれば力押しせず低レベルでも倒すことのできるバランスである。
    • 後述のように今作は「育成」より「戦略」が重視された設計とも言え、幅広いやり込みプレイや縛りプレイが開拓可能な土壌となっている*4
      • 『V』のように、低レベルやりこみやキャラ縛りやりこみの研究を熱心に行うファンが複数いる。
    • またバトルの難易度はシリーズでも低い部類に入るものの、前3作で注目されたバランス崩壊級の連続攻撃手段はなく、安直で極端なバランスブレイカーは存在しない。
  • その一方、対策を講じづらい運要素も散見される。
    • 例えばラスボスの「グランドクロス(全員に各種ステータス異常を1/8の確率で発動。しかも即死・瀕死・ゾンビなどアビリティでカットしきれない凶悪なステータス異常も含まれており、運が悪いと一撃でパーティが壊滅することも)」や隠しボスの「メテオ(ダメージの乱数が大きく9999に達することも)」など。
    • 前作、前々作のような無敵化がないうえに、相手が素早く行動してリレイズなどの対策が打てないことがあるため、確実な対策手段はない。
      • 特に隠しボスのメテオは乱数によりダメージが大きく異なり、防ぎようのない凶悪魔法として多くのプレイヤーから恐れられた。

アビリティ関連

  • 「装備品を身につけたままAPを稼いでアビリティを習得する」のが今回の成長システムである。
    • 少し前に手に入れた弱い武器防具であっても、アビリティを習得しきるまでは存在意義があるため、一つ一つの装備に価値がある。
    • 終盤の強力な装備に序盤の弱い装備と同じアビリティがセットされているケースが散見される。
      • 序盤に弱い装備でAPを稼ぎきれず未習得のままとなったアビリティを終盤に覚える救済措置となっており、親切な仕様といえる。弱い装備を使い続けてアビリティを早期に習得するか、パラメータが強い装備にすぐ乗り換えてアビリティの習得は後回しにするかの選択の自由度が高まっている。
      • その一方、序盤のアビリティ習得にはそこまで労力を要さず、序盤から育成に励んだプレイヤーにとっては「終盤の武器に習得済みのしょぼいアビリティの使い回しが目立つ」と映ってしまう。
      • また本作は『弱武器:アビリティA・B、中間武器:C・D、強武器:B・E』のように覚えられるアビリティがバラバラになっている事が多く、『弱武器:A、中間武器:A・B、強武器:A・B・C』のように新武器がアビリティ面で「上位互換」なっているケースがほとんどない。そのため装備品の取捨選択は面白くもあるが、古い武器の売却タイミングをはかりづらく、煩雑ともいえる。
    • ただし、上述したように本作の難易度はシリーズでも低めで単純明快なシステムのため、効率の良い進め方ができなかったとしても前作のように攻略困難になる事はまれである。
    • アビリティの性能が、習得できる時期と見合ってないなど調整不足な面も目立つ。スタイナーの「剣技」などが特に顕著*5
    • 「リフレク倍返し」「魔法無属性化」など使用法によっては予想外の大きな効果をもたらす独特なアビリティもあるが、それに限って必要な魔石力が多く、他のアビリティとのコンボを組みづらい。
    • ただし、一般的に使われないような意外なアビリティが、低レベル攻略や縛りプレイなどで大いに活用される場合もある。
  • コマンドアビリティは各キャラ固有で、サポートアビリティも習得可能なものがキャラごとに決まっており、全メンバーを好きに育成できた前作に比して育成自由度は低い。与えられた戦力をどう活用するかに重点を置くという、『FF4』や『FF6』に近いスタイルとも言える。
    • しかしこの点は「複雑すぎる」と評されやすかった前作の反動とみれば一概に難点とは言いきれない。またキャラごとの個性を尊重し世界観構築にも寄与しているといえる。
    • また自由度の高い前作は突き詰めれば「全キャラ同パラメータ、最後に差を分けるのは固有コマンドの違い」という状態になり、今作のようなシステムと本質は大差ないともいえる。
  • トランスはゲージが溜まると自動で発動するため狙って有効活用することが難しい。
    • 初出のFF6や、似たシステムのFF7のリミットは条件を満たしていれば任意で発動可能だっただけに不便に感じる点である。
    • また、やはりキャラクター間で性能差がある。

「原点回帰」というキーワード

  • FF6以前のファンに向けた小ネタ(地名や人名など)が目立つ。
    • これをファンサービスと評価する声もある一方、本作で登場する必然性が不明な要素も多く、旧作の固有名詞をそのまま持ってきただけで新鮮味が無いという意見もある。
  • 『V』までのシリーズの象徴であり本作のロゴにまでなっている「クリスタル」の作中での扱いは、その最たる例とも言われる。
    • 「クリスタル、再び」という販促キャッチコピーまで与えられていたが、なんとラストダンジョンまで一度も姿を見せない。
    • 原点回帰を標榜していたことから、「FF=クリスタルの物語」という大々的な扱いの復活に期待した古参プレイヤーは拍子抜けすることになった。
    • もっとも設定的には物語の根底にある重要なもので、ある意味過去作以上に重要なポジションを担っているとも言える。後述の説明不足の影響を否定できない。

膨大な探索要素

  • 下記のようにアイテムや技の効果を自力で発見させる&他者との情報交換によって攻略させるという作り手の目論見自体はよいが、「説明不足」「面倒」と受け取られやすいスタイルでもあり、やはり賛否両論である。
  • 調べられる場所や落ちているアイテムが多い
    • フィールアイコンがシステムとして導入されたためか、様々な場所を調べられるため隅々まで調べようとするとなかなかに時間がかかる。
    • 特に、敵とエンカウントするダンジョンでは前述の通り戦闘のテンポの悪さも相まってしんどいとする声は少なからずある。
      • 中には有用なアイテムや時期限定品、数量限定品などが落ちていることもあるため完全に無視もできず、時間がないプレイヤーにはつらいところ。
    • 宝箱のようなわかりやすい目印がない場所が多く、アイテムの取り逃しが多くなりやすい。
      • 草むらや建物の影などならともかく、明らかに何もない場所に透明なアイテムが落ちている形式は少々不親切である。

説明不足なヘルプ機能

  • ヘルプメッセージ自体は小ネタなどが仕込まれており中々面白いのだが、肝心の解説としてはあまり機能していないものがある。
    • たとえば、ローブ系の装備はほぼ全て「装備すると火属性弱点になる」という重要な注意点があるが、ヘルプでもライブラでも触れられず、プレイヤーが作中で知る機会がなく不親切。そもそも気づかない人も多かったと思われる。
      • 一応ゲーム中のあるシーンで「ファイアの魔法でローブが勢いよく燃える」という描写があるにはあるが、ここから仕様を読み取るのは無理がある。
    • 技やアビリティの説明にも雑な物が散見される。
      • 例えば、「盗賊のあかし」「竜の紋章」など過去の戦闘の実績により効果値が変動する技や、クイナの青魔法「リミットグローヴ」*6など、かなり特殊な効果であるにもかかわらず「単体に無属性のダメージを与える」としか説明されておらず、作中だけでは効果を把握できない。このようなアビリティが他にも複数ある。
      • 同様の問題は『FF5』でもあったが、効果説明の場自体がなかった同作と違い、今作はせっかく説明機能が用意されているのに活かされていない。

ストーリー

  • 一部仲間キャラの描写の格差
    • 全員に見せ場は用意されているが、その中でも活躍するキャラとそうでないキャラの扱いの差は否定できない。
      • 特にエーコは、ストーリー的にもキャラ性能的にも恵まれており、一部のファンからは優遇が過ぎるとの批判もある。
      • 一方、エーコとほぼ同時期に加入するサラマンダーは、バトル性能は全キャラ屈指の強さで、設定的にも多彩なエピソードを掘り下げる余地のある人物だったが、ストーリー上は影が薄く、クローズアップされたイベントでも噛ませ犬に近い描写がされるなど、演出に恵まれなかった。
      • フライヤは設定的に恋人(フラットレイ)との関係が本人の人間性を構築する重要な要素のはずだが、この恋人はDisc1終盤に現れDisc2序盤にフェードアウトした後、いきなりエンディングで再登場するなど、描写不足が否めない。
  • 終盤はそれまでのわかりやすさと打って変わり、黒幕の言葉などに説明不足感がみられる。
    • またDisc3あたりより急にSF要素(超文明の存在)が出てくるため、一部プレイヤーは困惑した。
      • もっとも「超技術を持つ異なる文明の存在」はFFシリーズでは定番であり、本作の世界観そのものにも関係する重要な要素であるため、後述する説明不足の影響も否定できない。
  • 終盤の説明不足の極めつけが、ラスボスとされる。
    • 本作の最後の最後にて唐突に現れる。具体的には、因縁の相手と相討ちのような形で戦闘が終わったと思ったらいきなり「人間は心の底では滅びを望んでいる」「世界を滅ぼすのが私の使命」といった趣旨の語りと共に現れ、そのまま戦闘に突入するが、その過程でも詳しい素性について一切触れられない。
    • 今では本作の印象が薄れている当時のプレイヤーでも、難点としてこの「唐突なラスボス」を挙げる人は少なくなく、FFどころか「RPG全体でも屈指の超展開ボス」と揶揄する向きも強い。
    • ラスボスは連戦だが、前述のとおり1戦目は因縁の相手だったため「あいつをラスボスにしてほしかった」「あいつと決着をつけたかった」等という声もよく聞かれる。
      • ただし本作のストーリーの根底には「キャラクター一人一人が『生』と『死』に向き合う」というテーマが敷かれている。詳細は伏せるがこれは因縁の敵とて例外ではなく、「因縁の敵を死なせておしまい」ではこのコンセプトと乖離し作品のテーマが崩壊しかねないのも事実であり、本作のラスボスが「死の具現」たる存在であること自体はストーリー上むしろ必然と言え、その存在概念自体は理解できるとする意見も存在する。
      • 問題はとにもかくにも深刻な「説明不足」にある。上記のように本作を貫くテーマは重いが、全体としてわかりやすく説明されていた。しかしラスボスと因縁の敵との関係性については、非常に漠然とした抽象的な表現でしか語られなかった。このような表現は、テーマを踏まえれば制作側の意図的な演出であるとも考えられるが、結果的に多くの人に受け入れられなかったことは疑いようがない。
        本作のラスボスのわかりやすいオマージュ元である『III』では、ラスボスの存在と黒幕がラスボスを呼び出そうとしていること、その理由などは事前にストーリー上で示唆されていた。このように、具体的な登場理由がほんの少し述べられるだけでも理解の一助となり、プレイヤーからの評価は違っていただろう。
  • なお「大ボスを倒した後にポッと出てくる別人格のラスボス」自体、旧作のオマージュとも言える*7
    • 情報そのものが全く皆無なわけではなく、とある場所の壁の文字や会話などから推測は可能。

問題点

ゲームシステム

ロードの長さ・戦闘突入までの時間の長さ

  • エンカウント処理後、戦闘が始まり操作可能となるまでのロードが長い。
    • 画面暗転後、視点が回転する演出があるが、この間に敵も味方もいない背景を映しているだけのため、長く感じやすい。
    • その上、エンカウント率自体は高くはないが、エンカウントを軽減するアビリティがないため、体感的には実際以上にエンカウント率が高く感じられてしまう。
      • なおダンジョンではエンカウント率は上記の通りそこまでではないが、フィールドでのエンカウント率はやたら高い。数秒歩いたらエンカウントしてその度に待たされるため、大変ストレスがたまる。チョコボなしで探索するのは苦行でしかない。
      • PSの過去作である『VII』や『VIII』と比較して、バトルメンバー数が3名→4名に増えたことの弊害もあると思われる。
    • ただし、マップ移動時のロードに関しては『VII』より僅かに遅い程度で『VIII』より速くなっており、そこそこ快適になっている。
    • PS2の高速ロードに対応しており、ゲームアーカイブス版もロード時間の短縮が確認されているため、依然気になるレベルではあるもののいくらか快適になっている。
    • リマスター版では戦闘開始演出をカットできる機能がついた。しかしオンにしてもカットされないことも珍しくなく、またカットされていても数秒暗転状態で待たされることが多々あるなど、あまり役に立っていない。

戦闘のテンポの悪さ

  • 上述のロードの遅さもあるが、全体的に技や魔法や召喚獣、トランスなどの演出が長い上、コマンド選択後行動に移るまでの時間が長く、全体的にテンポがもっさりしているため一回あたりの戦闘に時間が掛かる。
    • 『VII』や『VIII』と比較して時間のかかる技を使ってくる雑魚も多いため、ロードの長さと合わせ『VII』『VIII』よりテンポが悪化したとの声も多い。
    • 前作までの欠点を解消しようとした努力が随所にうかがえる本作では珍しく、『VII』や『VIII』で散々叩かれたにもかかわらず改善されなかった点。
  • 先述のATB使用に関連して、敵味方キャラ全員が行動を選択しているのにもかかわらず誰一人動かず内部処理の都合でバトル自体が数秒静止してしまうという、俗にいう「ATB渋滞」が多発する。
    • こうなってしまえば、ATBの特徴のはずのリアルタイム感はもはやゼロであり、ドラクエのようなターン制とATBの悪いところだけを合わせた状態になってしまう。
    • 回復行動を選択したもののなかなか行動に移ってくれず、待っている間に攻撃されて戦闘不能、というのもザラである。
    • この点は『X-2』で行動開始までの時間が「ウェイトゲージ」として可視化されたことで改善された。

プレイヤー側の使える状態異常、割合ダメージ系の命中率

  • 今作の状態異常や割合ダメージ系の攻撃には「基本命中率」が設定されているのだが、プレイヤー側の使える物は(青魔法「夜」などの一部例外を除き)軒並み命中率が異常に低く、中には基本命中率0%という「当てること自体が無理ゲー」レベルの代物まで存在する*8
    • 当たるかどうかも分からない状態異常攻撃を使うくらいなら、その手番を使って普通に攻撃した方が明らかに速い.
    • ここまででも十分酷いが、よりによって今作の味方用の状態異常魔法は「全体化すると命中率が半減する」仕様がある。
  • ただしジタンの武器に秘められた状態異常を敵へ付与する「刀魂放気」やテント使用時に50%の確率で発生する「暗闇沈黙毒へび」は必中。またビビは「ためる」で簡単に魔力を上げられるため命中率も底上げされ、状態異常の魔法もボス戦などでは十分活用できる。旧作同様いくらかの状態異常はボスにも効くため状態異常そのものが弱いわけではない。

召喚魔法の仕様

  • 『VIII』で演出が長かったという批判に対する反省か、今回の召喚魔法は「演出と威力を抑えたショートバージョン」「演出は長いけれど威力の高いロングバージョン」の2種類が用意されている。
    • しかし、初期段階ではこの2種類の演出を任意に選ぶことができず、どちらが出るかはランダムで決定されてしまう。ショートVerのほうが圧倒的に出やすい*9ので「短くしてくれ」という声にはある程度答えてはいるが、ロングが不必要に出て演出がかったるくなったり威力が欲しいのにショートになったりする可能性は捨てきれない。
    • また、確実にロングに出来てついでに威力を更に上げられる『おうえん』というアビリティを習得可能だが、アビリティなので魔石力を使ってセットしなければならず、また「威力は低くて良いので確実に演出を短くしたい」という需要は根本的に満たせない。

「宝石」の仕様に関する説明不足

  • 「宝石」はアクセサリであると同時に、戦闘中に使用すると味方単体のHPを回復させる消費アイテムでもある。
    • 「宝石」はアイテム使用時の回復量が種類ごとに異なり、さらに種類ごとの所持数が増えるほど使用時の回復力が増すという性質があり、隠れた特性として「所持数によって対応する召喚魔法の攻撃力が変化する」という仕様がある。
      • これらの仕様はゲーム中に一切説明されず、特に召喚の威力と連動する仕様を知らないプレイヤーは召喚魔法に「演出ばかり長く威力が弱い」印象を抱きやすく、召喚での攻撃がメインであるガーネットがヒロインにもかかわらず弱キャラ扱いされる事態につながった。
      • 宝石を集められれば彼女も十分強いが、それには育成の手間に加え、他のキャラには必要ない膨大な作業を強いられることになる。
      • このことは、ヒロインではないエーコが白魔道士としてガーネットより優秀なことや、最強召喚獣の威力が宝石でなくエーコのレベルに依存するため育成が楽であることとあわせ、ガーネットの不遇さに拍車をかけている。

カードゲーム

  • 上述の通りミニゲームとしてカードゲームが存在するのは前作同様だが、シンプルでとっつきやすかった前作から一転、本作のものはルールが複雑でとっつきにくいものとなっている。
    • その割に、システムの説明は序盤に訪れる村でヒントを記した貼り紙からぼんやりと匂わせる程度にとどまり、細かいルールを作中で厳密に知ることはできない。
  • 各カードには上下左右斜めの8方向それぞれに対する攻撃の矢印の有無と、「5PA4」のように4桁の数字・アルファベットで表示される能力値*10とが個別に設定されており、これを盤面に並べてカードを取ったり取られたりして競うことになる。
    • ルールは単純に言えば「(1)敵カードの矢印がない側へこちらの矢印を向けたカードを置けば、無条件でその敵カードを取れる(2)敵カードの矢印とこちらが新たに置くカードの矢印が互いにぶつかる際は、こちらが2桁目の攻撃タイプ&1桁目の攻撃力で攻撃し、敵は攻撃タイプに対応した防御力で受け、数値の大小の比較で勝敗判定が行われる」と実はそこまで複雑ではない。
    • しかし、矢印は見た目通りの意味なのでまだよいとして、能力値の表記がとても複雑。数値は16進数でそれ自体に戸惑う人も少なくないうえ、攻撃タイプの文字表記に16進数と共通の「A」が含まれる点、物理・魔法で防御力が2つある点などは混乱を招きがちで、他の媒体で見方を知らない限り完全な理解はまず不可能である。
      • 16進数自体は「1~9より大きいのがA~F(10進数で言うところの10~15)である」くらいを理解できればいい程度だが、中高生以下だとそもそも16進数を知らない人も多い。
    • さらに「攻撃力・防御力は十の位(上1桁)のみが表記される」という大雑把な仕様で、同じ表記でも実能力に16段階もの開きがあることになる。なおかつ、カードバトル中のダメージは16進数から10進数に変換されて表示されており、なおかつダメージには『VIII』のものと違い乱数の要素まで加味されるため、極めてややこしい。
  • カードは成長要素を持つが、成長システムの関係上、一つのカードを育てるだけでもカードゲームを何十~何百回もプレイする必要がある。
    • 負けると育てたカードでも簡単に取られてしまい、同じカードを取り返すことは難しい。
  • カードの所持限界が100枚と種類数と同値であり、コンプリートを目指すのなら全種のカードを1枚ずつしか持つことができない。
    • 再入手不可能なレアカードがどれなのかを示す指標が無く、カードの登録番号で類推するくらいしかない。
  • また、カードを一切やらなくてもクリアできた前作と違い、今回はなんと Disc3序盤のストーリーを進めるにはカードバトル大会に累計二回以上勝たないといけない (負けた場合はリトライが3戦目の決勝以外何度でも可能)。このカードバトル大会の決勝戦の相手(の付き添い)に会うことで話が進むのだが、それが必須イベントだとまでは思わずしばらくいろんなところをうろついてしまった人もいるだろう*11
    • 一応ルールが分からず適当にやっていても何回か挑戦すれば運良く勝てる難易度ではあるが、カードが苦手、システムが分からないという人には苦行以外の何ものでもなかった。
    • 手持ちのカードを捨てているとトット先生から強力なカードを貰えるという救済措置はあるが、情報がないので気づかない。カードスタジアムでもカードが買えるが最弱クラスのものばかりである。

その他

  • 前述のタイムアタック要素である「エクスカリバーII」は、本作にふんだんに盛り込まれた他のやり込み要素や本作全体にわたる個別の演出の長さと噛み合っていない。
    • ほとんどのやりこみ要素を捨てないと「エクスカリバーII」の入手は困難で、これを含んだ全要素コンプリートは時間的に到底不可能である。
    • このようなタイムアタック要素があるのに、ムービーカットなどの機能がない。
      • そのため「ディスクオープンでのムービーカット」という邪道な荒業が通常のようにまかり通ることとなった。これにより故障の報告が急増したという話は特にないが、ハードウェア的に推奨されない行為を誘発しかねない仕様は批判の対象となっている。
      • なお、設計上はムービーをカットしなくても充分間に合うようになってはいる。
    • さらに、エクスカリバーIIは各キャラごとに用意された最強武器*12という位置づけなので、通常プレイではスタイナーの最強武器だけ手に入らないという問題もある*13
  • 後述する次世代機移植版は処理速度倍化機能やプリレンダムービーを飛ばす機能が追加されているが、エクスカリバーIIの条件は実際のプレイ時間で判定しているためこれらの機能を活用すれば事実上の猶予時間が倍以上になる。

総評

前2作とは方向性こそ大きく異なるものの、中世ヨーロッパファンタジーを基調とした温かみのある世界観、デフォルメの効いたキャラ造詣による独自の作風に、深みのあるシナリオが加わり、FFナンバリングにふさわしい作品となっている。
FF旧作ファンに向けては音楽や用語など過去作のオマージュが多数盛り込まれる一方で、そうでない人でも親しみやすく懐かしさを感じられる、情緒溢れる作風に仕上がっている。
ムービーのクオリティもプレイステーションのスペックでは最高峰ともいえる出色の出来であり、あらゆる表現が高いレベルでまとめ上げられている。

一方、前作のジャンクションシステムのような先鋭的な挑戦はあまり盛り込まれていない。
よく言えば初期の作風に回帰した古き良きFF、悪く言えばゲーム面においる目新しさに欠ける作品ともいえ、凝った斬新なシステムを好む層にはやや食い足りないと感じられる面もある。
戦闘面はロード時間の長さやATBの大味さ、易しめの難易度など手放しで評価できないとする意見もある一方で、メインシステムもシナリオもシンプルで素朴ながらも堅実な作りで纏め上げられており、特にシナリオの出来は今なお高く評価する声も多い。
「複雑なシステムのRPGよりシンプルな作風が好み」「王道的な中世風の世界観を堪能したい」「芯のしっかりしたシナリオを味わいたい」というユーザーには今でも十分おススメできる作品といえる。


余談

  • 本作には予約特典としてビビの人形が付属したが、当時はコンビニでゲームの予約ができるようになったばかりという時期で、渡し忘れもあったようだ。
  • 前作に比べると売上は伸び悩んだ。
    • 『VII』『VIII』と着実に売上を伸ばしてきた『FF』シリーズだったが、PS最終作となる本作では大きく失速した。 原因として考えられるのは以下の通り。
      • PSへの移行の際に掴んできたファンへのアプローチが十分に出来ず、旧作ファンからは原点回帰というキャッチフレーズを訝しがられたこと。
      • PSに初移行した『ドラゴンクエストVII』の発売に話題性を取られた。
      • 本作の発売時点で既にPS2が発売されており、PSのゲームの売り上げ自体が下火になり始めていた。
    • 事実、これ以降の『FF』シリーズは、こういった世界観の作風からは離れ、むしろ前作・前々作に寄った作りのものが多くなっていった。和田洋一氏のnote記事によると、本作のようなファンタジー・低頭身・人外などといった要素が共存する「クラシックFF」の系譜は『クリスタルクロニクル』シリーズに任せ、『VII』『VIII』『X』のような「ネオFF」の系譜とは分けられる方針になったことが語られている。ただし、『XII』『XIV』『XVI』のように、比較的ファンタジー色が高い作品も存在する。
    • なお、それでもゲームアーカイブスの売れ筋ランキングでは常に上位だった事や、配信や動画サイトでの公式生放送の時には多くの人気を集めており、本作の根強い人気を証明している。
      • いずれにせよシリーズ全盛期の一端を担った作品の一つであることに変わりはない。
  • 当初は重厚な『アルティマニア』シリーズなどに代表される、書籍としての攻略本は本作では作らない予定だった。理由は、当時既にインターネットがだいぶ普及してきており、ユーザーのやり取りで攻略情報を探してほしい、という坂口氏の目論見があったためである。
    • 実際に坂口氏の目論見通り、『IX』の攻略サイトや攻略BBSは過去のゲームと比べて大いに賑わった。
    • 何と、公式の攻略サイト「オンラインアルティマニア」まで用意され、実機調査では知り得ないデータも掲載されていた。
    • しかし、ユーザーからは「攻略本を作ってほしい」という要望も少なからずあった。有志による「FFIXあるてまにあ」などの攻略同人誌が作られたことからも、その需要は窺える。
    • 結局、本作発売から1年半の時を経て『ファイナルファンタジーIX アルティマニア』が発売された*14。ちなみに、『ファイナルファンタジーX アルティマニアオメガ』の方が先に発売されている。
      • 当時、『XII』の発売延期を受けて、『アルティマニア』シリーズの出版などを手掛けていたスクウェアの関連会社・デジキューブが経営危機に陥っていた。『IX アルティマニア』の発売は、この穴を補填するためだったとも言われている。『XII』の更なる発売延期により、結局デジキューブは倒産してしまったのだが…。
    • タイムアタックプレイにより入手できるエクスカリバーIIは最初期は「都市伝説」とも言われていたが、インターネットを介して証拠画像が多数広まり、一般にも認知されることとなった。この点では「攻略本を介さない、口コミとインターネットによる攻略情報の流布」という坂口氏の目論見は成功したと言える。
  • 先述の通りRPG開発ノウハウの無いハワイスタジオ制作のため、そのサポートとして『FFT』の一部スタッフがヘルプ要員として参加している。『FFT』のフォントがそのまま使われていたり、それまでのナンバリングには馴染みの薄い『FFT』由来のネーミングが散見されているのはここに起因している。
  • ゲーム中に前述した過去のFFネタ以外にも同社の別タイトル『パラサイト・イヴ』ネタや、『FF』どころかスクウェアとは何の関係もない『バイオハザード』ネタが仕込まれている。気になる人は探してみよう。
  • 後作の『XII』や『XIII』には、ミニゲームや地名などに本作のオマージュ的要素が含まれている。
  • 電撃オンラインのリメイクしてほしいゲームランキングで7位にランクインした。
  • 本作の主人公の名前は「ジタン」である。綴りこそZidaneだが「ジン」ではないので注意。
    • 『FF』のギャグ系ネタを集めたサイト等でも『IX』の部分だけ(ゲームを知らなくても書ける)某サッカー選手ネタばかりだったり…*15
+ ラスボスネタバレあり注意

ラスボス「永遠の闇」はペプシコーラのCMに登場するキャラクター「ペプシマン」に容姿が非常に良く似ているため、ネット上では「ペプシ」などと呼ばれている。

  • 「ペプシマン」呼ばわりされた背景には、本作がコカ・コーラとコラボレーション企画を行っていたことも起因する。当時のTVCMで『IX』のキャラクターたちが登場したり、コカ・コーラに『IX』のフィギュアのおまけが付くなどの企画を行っていた。おかげで「コカ・コーラのライバル=ペプシ」という図式ができあがってしまった。 ところでチョコボを育てていくと戦えるようになる隠しボス「オズマ」は外見がペプシコーラのロゴマークにかなり似ているかもしれない。 ちなみに、当時のコンビニのレシートは文字数が少なく、711の場合予約商品名が何と書かれていたかというと…?*16
  • 2021年6月にフランス・パリに拠点を置くアニメ製作・配給会社Cyber Group Studiosが本作をアニメ化すると報道された

移植

  • 2016年2月にiOS/Android版、4月にWin版としてリマスター版が配信開始された。制作はシリコンスタジオ。
    • グラフィックの高解像度化やこれまでのシリーズ移植で追加されてきたブースト機能やオートバトルが実装された。戦闘開始時の演出カットも選択でき、プレイヤーの声が反映されたものとなっている。
      • その他の変更点として、フィールド移動の際にオートセーブが追加、プリレンダムービーのスキップ機能の追加などが行われている。
      • また、カードゲーム可能なNPCはアイコン表示で分かりやすくなっていたり、戦闘のコマンド欄が4つから6つに変更されている他*17、名前入力画面がオリジナル版から別物になっているなど、細かい部分にも変更点が多い。
    • 高解像度化はされているが、背景はPS版の素材を引き伸ばしたような状態になっているため粗さがやや目立ち、滑らかにリモデルされたキャラの3Dポリゴンが相対的に浮いて見えてしまうという難点もある。
      • 他にもWin版や下記の家庭用機においてスティック移動がPS版と違って8方向しか移動できない、戦闘終了後マップのBGMが最初から再生されるなど(後にパッチで修正)、人によっては気になる点もあるが、遊びやすくなった調整やテンポの向上によって概ね良リマスターとして受け入れられている。
  • Win(Steam)版は、対応言語の一覧には日本語が含まれていないが、実際は日本地域への配信では日本語にちゃんと対応しており、このことはSteamのストアページでも説明されている。
    • ただしあくまでも日本のSteam公式ストアもしくはスクウェア・エニックスe-STOREで購入した場合のみ日本語が付く。このため、海外の外部サイト経由で買ったり、海外在住者などの場合は日本語が省かれてしまうので一応注意。後からDLCで追加することもできない。
    • Steamゲームではよくあることだが、Steamの言語設定にかかわらず、初期設定は英語で固定されている。日本語でプレイしたければタイトル画面で切り替える必要がある。
    • また、日本語に設定するとAボタンとBボタンが勝手に入れ替わる。設定で変更可能だが、タイトル画面の操作は変えられないので注意が必要。
  • Steam版は他のSteamゲーと同様、各種実績やトレカ&バッジにも対応している。
  • 海外では過去のFFシリーズが次々とSteam向けに移植されているのだが、日本では何故かFF8までが国内不売&日本語非対応(いわゆる「おま国」)となっており、正式に日本で販売されているのは長らく本作以降のみであった。後に『VIII』のリマスター版、『III』が日本向けに配信されている。
  • 2017年9月19日にはPS4版も配信。
    • 制作はギルドスタジオという会社に変わっているが、本作のリマスターを担当したスタッフが独立した会社である。内容も上記Win版をベースにしており、同様にトロフィーにも対応している。
    • 購入特典で板鼻利幸氏描き下ろしの背景イラストも含むオリジナルテーマがもらえる。
      BGMは「いつか帰るところ」、カーソルと選択音もFF9仕様になっているのでファンは見逃せない。
  • 2019年にOne/Switch版がリリースされた。
    • これを記念し、2018年末にスクエニ公式主催で「『FFⅨ』48時間ぶっ通しゲーム実況生放送」が行われた。(参照)
    • ちなみに、プレイされたのはPS4版。一部のムービーやイベントはネタバレ防止のために音声だけになったり、出演者があまり似ていない物まねをして笑いを取るという展開であった。

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最終更新:2024年02月21日 02:01

*1 アルティメットヒッツ版で付与されたレーティングを記載。

*2 カードの所持数及び新規カードの追加などの追加要素もあった。

*3 たとえば、女好きの主人公ジタンは町中で適齢の女性NPCが近くにいるとそちらを向くが他キャラを操作している際は向かない…など、プレイヤーがあまり意識しないようなモーションにまで徹底的にこだわっている

*4 育成面でも装備補正値によるステアップボーナスの概念があるためそちらも十分に楽しめる

*5 例えば、剣技「ストックブレイク」はゲーム最終盤に習得できる全体攻撃技だが、それを習得する頃には、雑魚敵もボスも強力な敵が単体で出現するパターンが大半となっており、使い道に乏しい。

*6 使用者のHPが1のときのみ9999ダメージを与える。

*7 それゆえに「なぜ叩かれているのかわからない」「名前がネオ○○○とかなら納得したのか」という否定派への突っ込みも見られる

*8 一応、LVと魔力を上げまくれば当たらないわけではない。が、そこまでやっても技自体が弱すぎるので明らかに割に合わない

*9 通常時であればショートになる確率は90%。ピンチの時は65%に下がる。

*10 4つの文字は、順に攻撃力、攻撃タイプ、物理防御力、魔法防御力を指す。

*11 3戦目の決勝戦は負けてもいいが、勝つとアイテムが手に入る。

*12 本作の各キャラの最強武器には「ヘルプでカタカナの説明文が読める」という共通点がある

*13 ただしスタイナーの武器でその次に強い「ラグナロク」はジタンの最強武器に次ぐ攻撃力を有し、エクスカリバーIIを入手できなくても他キャラより戦力的に劣るという事はない

*14 その後「オンラインアルティマニア」は閉鎖された。

*15 2006年7月にFIFAの決勝戦でジダンが起こした頭突き事件のネタ。なお、この事件の原因は頭突きの被害にあった選手がジダンに対し人種差別的な発言をしたことが原因だとされている。

*16 後半の単語を途中で区切ってみよう。

*17 左右入力で選択する形だった「チェンジ」と「防御」がコマンド一覧にまとめて表示されるように。