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フロントミッション サード

【ふろんとみっしょん さーど】

ジャンル ドラマチックシミュレーションRPG
対応機種 プレイステーション
メディア CD-ROM 1枚
発売・開発元 スクウェア
発売日 1999年9月2日
価格 6,800円(税抜)
レーティング CERO:B(12才以上対象)*1
廉価版 スクウェアミレニアムコレクション
2000年9月28日/3,800円
PS one Books
2002年1月17日/2,500円
アルティメットヒッツ
2006年10月5日/1,500円
配信 ゲームアーカイブス
2009年3月25日/600円
判定 良作
フロントミッションシリーズ




欲望の果てに 狂気がうごめき
        狂気の果てには 終焉が横たわる

   人類は何も学ばない




ストーリー

西暦2034年、アフリカ紛争。 2090年、第二次ハフマン紛争。 2102年、アロルデシュ・クーデター

そして、西暦2112年。OCU日本にて――

霧島重工のテストパイロットを務めながら横須賀高専に通う19歳の青年「武村和輝」は、親友であり同僚の「草間亮五」と共に新型ヴァンツァーを納品する為、日防軍横須賀基地を訪れる。
だが、2人がヘリから積荷を降ろした瞬間、基地の地下で謎の爆発がおこった。その爆発を機に、2人は全世界的な陰謀の渦中へと引き込まれていく。

帝北大学から特例的に横須賀基地へ出向していた、和輝の同い年の義妹「武村アリサ」。
敵国USNから密入国してきた若き女性科学者「エミール・クラムスコイ(エマ)」。
物語は2の二人の女性を中心に、二つの展開へ分岐していく。

MIDASとは? イマジナリーナンバーとは? アリサとエマ、全く接点のない筈の2人の過去に秘められたものとは?
紆余曲折を経て国外に飛び出し、愛する者のためにアジア圏を転戦することとなった和輝は、戦地で出会った仲間達に支えられ、策略に陥りながらも徐々に謎の真相を知り、黒幕へと近づいていく。


概要

近未来、パーツの換装が可能なロボット兵器「ヴァンツァー」の活躍と、その搭乗員たちが繰り広げる人間ドラマを描いた、スクウェアの鉄と硝煙が漂うシミュレーションRPG『フロントミッション(FM)』シリーズ。本作『3rd』はナンバリングタイトル3作目として、またPSで展開された最後の作品として世に出ることとなった。

キャッチコピーの「さらに深く、速く、リアルに。完成された第三のドラマ。」の通り、本作は前作『2nd』で酷評されたロード問題を完全解決し、システムの一新によって前々作から続いていた問題点の大半に解答を出すと共にやり込み要素を向上させた。

ストーリー面では、エマ編・アリサ編の2つにシナリオが分岐し、日本を始めとした東・東南アジア全域を舞台とするスケールの大きい物語が展開する。
ちなみに本作は『オルタナティヴ』を含むナンバリングタイトル中では、最も未来の時間軸に位置する物語である。


またこの作品には「 人類は何も学ばない 」というテーマがある。

本作もまた他人を顧みず、自らの弱さに向き合わない狭い心から争いが始まる。
大きく分けて2つのシナリオがあるが、いずれも綺麗な終わりを迎えることはない。

国家の利害関係から生まれる陰謀、生命倫理の軽視、いたずらに国を疲弊させたクーデターと、歴作で描かれた負の系譜は本作にも根付いている。

非人道的な政治的駆け引きや富の偏り、前時代的な一党主義国家など人間の負の歴史が積極的に示された他、
99年当時から問題となっていた「遺伝子操作」が物語の重要な位置を占めており、歪んだ研究から生まれた存在と主人公たちは対峙することになる。


本作のBGMは『超兄貴』や『ラストハルマゲドン』で知られる葉山宏治と、様々なジャンルで編曲・楽曲提供を行っている松尾早人が連名で担当している。また、SHIGEKI(林茂樹)が「政府」の作曲で参加している。


特徴

本作のシステムは戦闘・成長面いずれも前2作から大幅な変更・簡略化が行われた。
また本作ではやり込み要素の拡充が図られている。

  • 少数精鋭・軍備縮小 『1st』では18人、『2nd』では12人と傭兵部隊としての人数があったが、今作は8人まで縮小している。
    • また1ミッションでは最大4機、主人公の必須出撃も無い。
    • キャノン、バズーカのような武器種や武器腕や戦車型・車両型脚部パーツ、スキルもかなり少なくなっている。
      • その分一つ一つを育成してほしいということだろう。
  • ユニットタイプ「人間」
    • 生身の人間がユニットとして登場する。対装甲ライフルを装備した兵士の他、パイロットや民間人も。
      • HPも設定されており、パイロットの体力が尽きるとヴァンツァーは降伏扱いとなる
  • DBS(ディスチャージ・バトル・システム)
    • ヴァンツァーを自由に乗り降り出来るシステムの事。
      • フィールドに配置されているユニットや投降済みユニットが無人の場合、降りたパイロットが乗り代わってパイロットとなる事が出来る。*2
  • ボスやイベントに関する敵相手でなければ乗り換えは自由。代替機の現地調達やヘリによる空中戦も可能。

クロースアップされたフィールド

  • タクティクス系の作品は遠方から一枚のマップに描写出来るようにすることが多いが、
    今作は施設の一角にズームした 小さなマップによる小規模ミッション を重ねていくこととなる。

ミッションのクリアランク

  • ミッションのクリア時にブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナの四段階評価が行われるようになった。
    • 高評価では隠し機体が登場したり、シミュレーターの敵が特別仕様に変化ことも。

マルチ・アセンブリー・システム

  • パーツを改造して能力値を向上させるシステム。
    規格による差はあるが、上位互換、下位互換という扱いがなくなり初期パーツを最後まで使う事が出来る。
    • 大きくパラメータが分類されるのが、格闘・近距離・遠距離戦のそれぞれの戦闘スタイルによるものとなっている。
  • パーツごとのスキル設定
    • 発動することではじめて取得という閃きシステムとなった。
      • 一度発動したスキルはヴァンツァーのコンピュータパーツに登録が可能。
  • 武器の熟練度
    • マシンガンやミサイルなどの武器カテゴリ毎に設定されている。
      該当武器を使い込むと上昇していき、そのカテゴリの攻撃力が上昇する。

疑似ネットワーク「天網」

  • ミッション間のインターミッションで使用出来るネットワーク。
    一昔前のWorld Wide Webに近づいた形が利用出来る。
    • メール、情報、パーツ改造など様々な事が可能。

評価点

シナリオ面

  • 一人一人に焦点が当たるシナリオ
    • 歴代シリーズは人数が多いあまり、キャラのシナリオを超えるとほとんど顔を見せる事がなかったが、
      今作は人数が少ない分一人一人の感情や考えの変遷が最後までしっかりと辿れるシナリオになっている。
      • 特に主人公の和輝と、それぞれのシナリオのキーパーソンとなるエマ、アリサにはそれが顕著に表れている。
  • 細かいマップ演出
    • 世界を転戦する作品であるがゆえ、ロードマップ演出が挿入されプレイヤーがシナリオをより視覚的に理解しやすくなっている。
      • また巨大建造物の内部マップが表示される。内部構造が細かい建物が理解しやすくなった。
  • ドラマ仕立てのスピーディなシナリオ
    • 戦闘が小規模になったため、毎話一つの戦いが起きているような、合計120章ほどのドラマ仕立てになった。
  • 二部隊で全く異なる物語 ダブル・フィーチャー・シナリオ
    • 部隊が4機ずつの2組になりシナリオが展開するが、大まかな目的は同じでも内容は全く異なる。
  • 昨日の友は今日の敵よろしく、片方のシナリオで仲間だったキャラが片方では敵というパターンも往々にして登場する。
    • 大抵の場合敵側のキャラは殺害することになるので、終わってからそんなつもりではという後ろ髪を惹かれやすい。*3
  • シナリオでも分岐があり、選択肢によって生死が変わる。大抵は苦労が少なくなあなあで済みそうだと思う方で被害者が出る。
  • ヒーロー作品調で楽しめる話もある。
    • 部隊の都合、日本と中国がメインで、極東アジアと東南アジアを舞台としているが、歴史考証や現実の情勢がしっかり練られており、それが2112年という未来に反映されている。

システム面

  • ローラーダッシュの採用
    • 段差がなければ通常移動より早く移動出来る。

ヴァンツァーのカスタマイズ面

  • スラスターなどリアルな描写が多い。
  • へんてこ大型メカが使える
    • 歴代の蜘蛛や角が一本といった可愛げのある機体の他、水陸両用の四脚や、通常の二倍強はある大型ヴァンツァーなども使えるようになっている。
      • そしてビーム兵器搭載機も登場。ロマン。
  • パーツを大事に出来るシステム
    • 見た目はいいが性能が弱いパーツも育てる事で最後まで連れていける。パーツに愛がある人には嬉しい。

バトル面

  • バトルフィールドの一新
    • 命中率に影響する「地形効果」が無い一方「高低差による命中率変化」がある。高低差を意識してプレイングすることが求められる。
    • 立体オブジェクトがヴァンツァーと同縮尺で描かれるようになりリアリズムが増した。
      • オブジェクトの巨大化、立体化により「射線妨害」、オブジェクト破壊、地形変化のギミックもある。
  • 意外と強い歩行ユニット
    • ガンハザード』ほどではないが一定の役割がある。
      • 攻撃力が低い一方、ヴァンツァーのパイロットを強制的に降ろす事が可能。降ろされるとヴァンツァーが一時的に無力化される。
  • 流石に生身の人間だけあって、スキルで威力が上がったり、連続攻撃を受ければ普通に落ちる。
  • シンプルなAPシステム化
    • 初期状態では14ポイントが用意されており、移動1スクエア毎に1ポイント、攻撃時は3ポイントから15ポイントと威力に比例、アイテム使用に4ポイントと明朗になった。
  • 毎ターン12ずつ回復。またエースランクが1つ増える毎に最大値が2ずつ上昇していく。
  • 2ndからのシステムだが消費量が緩和されシステムとしても簡略化された。
  • 武器の得意不得意が明確化
    • 近距離の射撃範囲が隣一マスではなく数マスに延長、遠距離のミサイルは最小3マスから最大10マスへと拡大となった。
    • 格闘武器はロッド、ナックル、パイルバンカーとカテゴリが細分化された。
  • ヴァンツァーの鹵獲の簡略化
    • 敵ヴァンツァーを無力化させるとシナリオ終了後にヴァンツァーを奪う事が出来る。
      • 獲得したパーツはそのまま使うも売るも自由な重要な資源。
    • なお降伏後のユニットはバトルフィールドに放置される。放っておくとパイロット不在の機体に乗るので討伐が推奨される。
  • 強奪したヴァンツァーを自軍で回復し、現地調達を繰り返すことも出来る。
    • これを前提としたマップも。
  • 敵の大型兵器も使用可能のため、戦いはパワーを具現化できる。
  • リンクシステムの先駆けとして味方が敵を包囲している際、「射(格)援護要請」「包囲射撃(格闘)」が発生する。
    • キャラ同士の掛け合いが楽しいのだが、発動条件が厳しく目にする機会はやや少ない。
  • 小型ミッションが続くことでダレない
    • 味方出撃が4機の都合で相手の数もフィールドも小型化。それだけ聞くとマイナスに聞こえるが、
      タクティクスゲームにありがちな一ゲームが長いという問題が解消されている。
  • ランク査定と合わせ、いかに効率よく制圧するかという詰め方を楽しめるようになっている。
  • 歯ごたえのある高ランククリア
    • ターン数やレベル、ミッション内の戦闘回数、自軍の平均被ダメージなど様々な要素が参照されており、突き詰めようとすると頭を悩ませることになる。
      • あちらを立てればこちらが立たずとなりやすいので短いミッションながらたっぷりと楽しめるだろう。

育成

  • 付け外し自由なスキル
    • コンピューターパーツに容量パラメータが設定されており、この容量で覚えたスキルを割り振るシステムになっている。
      • 複数のスキルが発動条件を満たした場合には連続発動する。
  • 獲得スキルは次の周回に持ち込み可能。
    • とはいえシナリオを通して使えるのは和輝と亮五の二人なので恩恵は少なめ。

グラフィック

  • 近未来都市の描写、シャトル打ち上げのシーン、水の描写は初代プレステとは思えない緻密な描写。
    • ポリゴン一辺倒ではなく、視点や場所によっては従来の2D表現も用いて違和感を解消に努めている。「無理な3Dの使用」はない。
  • シナリオ描写が一枚絵ではなくポリゴンフィールドで3D化したヴァンツァーが動き回るようになっている。
    • ローラーダッシュで颯爽登場、相方を小突く、着地に失敗してこけるなど細かな動きでキャラ付けがされるようになった。
    • コックピットの「 パイロットの視点 」という演出も存在。臨場感が高まり、表現方法の拡大に成功している。
  • 迫力のある戦闘画面
    • ポリゴン数は多くなく動きはコンパクトになっているが、テクスチャやモーションの工夫により迫力は損なわずにヴァンツァーが動いている。

BGM

  • 近未来的なテクノ路線の楽曲、疾走感のある曲が多く、シナリオの重さの軽減を担っている。
    • 前者としては「街(日本)」、後者は「進攻」や「決戦」などがある。
      中でも「決戦」は壮大であり疾走感もある、本作を体現したかのような楽曲である。
      他、通常戦闘時のBGM「侵略」は後のシリーズでもアレンジが加えられ使用される、息の長い曲となった。
  • 疑似だがリアルなネットワーク「天網」
    • デスクトップは背景の設定が可能で、いじりがいのある楽しいガジェットである。
  • ミッション間のインターミッションで使用出来るネットワーク。
    • 時代を反映してか、2000年ごろの個人HP風。*4
  • 質問・雑談掲示板が供えられたフォーラムもあり、一般市民の生活感のリアルさも雰囲気の向上に一役買っている。
  • 規則に従って設定されたパスワードを解くミニゲームも存在する。
    • ハッカー気分でトライ出来て、必ず解く必要はないというのが息抜きとなる。
  • 情報や、ファイル解析に使うツールをダウンロード購入することも可能。
    • 利用することでストーリーの裏事情やフォーラムのパスワードなどが入手できる。
  • シナリオを補完するメール機能
    • サブストーリーが時折届き、返信も可能。
    • ゲーム序盤に届くとあるメールを追いかけていくとストーリーの深部に触れることも。
  • パーツ改造も可能なネットワークショップが存在する。
    • 出撃前だけに限らずいつでも改造出来るのは有り難い。
  • シミュレーター機能
    • いわゆる模擬戦闘。経験値、スキル入手、小銭稼ぎが出来る。
    • よってミッションに苦戦してゲームが中々進まないといったトラブルはない。

その他

  • コールサインで漢字が使える。
  • テンポの向上
    • 戦闘中のもっさりとしたロード時間がほとんどない。例外はシナリオデモぐらいのもの。

問題点

システム関連

  • カラーバリエーションがシンプルなものに大幅縮小。
    • そもそも8機しかいないので多くても仕方ないかもしれない。
  • あまりにも軍縮しすぎている
    • もとより登場味方パイロットが8人と少なすぎることからはじまり、
      戦車型、車両型の脚部パーツ、一部武器種、コンパチパーツなどカスタマイズの自由度と引き換えに絶対数が大幅削減。
    • にもかかわらず敵のみが使うカテゴリもある。
      • とはいえ陣営の違いにより使える武器に違いがあるのは歴代シリーズでもそうだが。
  • 一極育成の出来ない武器熟練度
    • 評価を無視するなら問題はないが、一つ高すぎても戦績評価が安定しない。
      • 「その戦闘で使用した武器の平均レベル」で判定されることが原因。
  • バランスが悪くなる性能効率
    • 定石が存在するため、性能を優先するとどうしても機体バランスがぐちゃぐちゃでダサくなる。
  • チュートリアルと一部のムービーが飛ばせない。
    • スタート押しっぱなしで加速は可能だが周回を考えると苦痛。

ネットワーク「天網」

  • 更新履歴がない。
    • お気に入り機能はあるが使いづらく、フォーラムを都度都度確認しなければならない。
  • ユーザーが余りアクセスしないであろうマイナーフォーラムの内容は優先度が低いのかしょぼい。
    • 現実でも人気のないスレッドはすぐ落ちるというのと同じか。
  • 入手時期が決まっているフォーラムやシミュレーターがある
    • 逃すと取れず、通知もないため毎回チェックしなければならない。

バトル関連

  • ヴァンツァーを通り越して、対人間にダメージを及ぼせるスキルだけでパイロットを撃墜出来てしまう。
    • リアルさを追求するならヴァンツァーごと落ちてほしいところ。
  • AP消費で二重取り
    • 反撃に際し、反撃のために使うAPと、反撃手段に使う攻撃APの2つが合算して消費されることとなる。*5
  • 小型スキル至上主義
    • スロット消費が少なく連続発動しやすく、それでいて初期機体で覚えられるスキル*6、ステータス異常を与えるスキル*7
      AP消費を抑えるスキル、強制排出させるイジェクトパンチなど、取得しやすく並べやすいスキルがやたら強い。
  • 一方でレアスキルなのに条件が厳しく、それでいてあまり優先度は高くないスキルも多い。
  • 簡略化された戦闘モーションにより、ヴァンツァーの動きのダイナミックさや重厚さがなくなった。

賛否両論点

  • お前は武村和輝を許せるか
    • この作品最大の争点。それが主人公たる和輝が許容出来るかどうかだ。
      カッと成りやすく利己的な面が表にでがちで、ユーザーとしてその選択はどうか?と思わせる行動も多いため歴代のプレイヤーからは不評を買った。
      ある程度自分優先でありながら、陰がありダウナー気味で、それでも世界の事を考えて行動できる 賢い主人公 とのギャップがあまりにも大きかったのも原因だろう。
+ 「バ和輝」たる由縁

「熱血シスコン石頭」この一言に集約される。

  • 熱血の時は仲間を信じ、弱き者を助け、悪を打ち破るため迷わず突き進む。一方で激しやすく、トラブルを起こしたり、周りが見えなくなることもしばしば。
    • とはいえ決して自己中心的なだけではない。仲間をフォローしたり、裏切りが疑われる仲間を信じ抜くというシーンも度々ある。…が、普段の言動が悪い。あまりにも悪い。
    • 和輝が提案する作戦の殆どが「正面突破」であることが槍玉に上げられる。血が上ると全く頭が回らないらしく、馬鹿にされてしまう事多々。
  • シスコンの時はアリサ絡みの話題となると途端に冷静さを失う。特にアリサ編で顕著。
    • 和輝とアリサはとても仲の良い兄妹である事がしっかりと描写されている。それだけに和輝の暴走も解らない事はないのだが、それでも弁護しきれない場面も多い。
    • 最たるものがアリサ編開始直後の騒動だろう。「基地の爆発にアリサが巻き込まれたかもしれない」と、納品に来た筈の新型ヴァンツァーで現場へ向かおうとし、制止した日防軍機を中破させ、軍警察に逮捕される。しょっぱなから重犯罪を犯す主人公たるや。
    • エマ編序~中盤でも事あるごとに「アリサが!」と妹の名を連呼する。エマ編ではアリサの安否が殆どわからない状態で、心配するのも無理からぬ事なのだが。
      • 挙句の果てにシスコン癖を敵に利用されることも。ちなみにこの「アリサアリサ病」は中盤以降落ち着くが、今度はアリサと深く関わるある人物に伝染し、逆に和輝がその人物を諌める場面が増える。
  • 石頭で熱血な性格という最悪の組み合わせを見せる事もある。
    • 特に父、伊佐夫との事で顕著に発揮される。父が妻の最後を看取りにこなかったことから不仲となるのだが、ろくに説明されず和輝が一方的にごねている様にしか見えない*8
      • ただそれらを理解したとして、あまりにも蛇蝎の如く嫌っている描写に見える事には違いない。
  • この「バ和輝」っぷりはファンも否定せずにそう呼んでいることから、シリーズの主人公として尖っている事がよくわかるだろう。
    • それを愛する人間も多く、大手ファンサイト「TEN-MOU」で行われている非公式のキャラクター人気投票では、和輝は大体3位~5位辺りの順位をキープしている。
  • 大幅に変わった作風
    • これもまた歴代シリーズのユーザーから不評だった点。主にシステム面の一新、シナリオの方針変更が違和感に繋がる要素が多かった。
      • 初期機体がゼニスではなく、主人公が未成年でロボアニメ風、ビーム兵器や大型機動兵器など全面的に現代風ロボゲーとは異なっている要素は賛否のある部分だろう。
        初代が2090年でたった20年ほどでそこまで変わってしまえば無理もない批判だとは思うが。
  • シナリオも世界の雰囲気も一つの作品として纏まっているのだが、硬派なシナリオという作品の空気をばっさりと切り捨てた以上、好き嫌いの差が出るのも当然である。
  • 特に「人殺しに向き合い、迷いを断ち切る」描写が薄い事が言及される。
    戦争とは縁遠いはずの和輝たちがあっさりと戦闘に順応してしまう他、亮五の「人殺しにはなりたくない」がその後触れられないなど、
    細部を見るシナリオの整理が出来ていない部分が見受けられる。

総評

前作までの不満点を見事に解消すると共に、優れたゲームシステムを構築した集大成的な作品であり、シナリオの新たな方向性を模索した意欲作でもある。
シリーズ随一の衝撃的なストーリーが光る『1st』、シリーズ集大成の『5th』とまではいかないものの、本作を「シリーズ最高傑作」に挙げるユーザーは決して少なくない。

しかし片一方、歴代フロントミッション「らしさ」に欠け、民間人が戦場を駆け回り跋扈する様などシリーズのファンからすれば眉を顰める要素もあり、必ずしも全てが評価されたとは言い難い作品である。
フロントミッションシリーズは作品ごとの良点・欠点がはっきりとする傾向にあるが、本作は特に既存作との差が欠点とされる作品となった。

とはいえ、単体のSRPGとして見れば間違いなく名作~傑作の部類に入る作品であろう。
気軽にさくさくプレイでき、なおかつ尋常でないボリュームのシミュレーションバトル。
ノリこそ軽いが熱い部分が光り、クライマックスの重い展開は他のシリーズにも劣らないシナリオ。
90年代末期の熱気と、制作陣の熱意が伝わってくる作り込み。
ゲームアーカイブスで手軽にプレイできるようになった今、フロントミッションの一つの終着点をぜひ体験してもらいたい。


余談

  • 制作者インタビューではランクの取得条件に関して「クリアだけなら簡単だが、プラチナ評価の条件はかなり難しくしている」と回答している。
  • 設定資料集によると、エマ編の和輝は『優しさや清らかさを表す「白」』、アリサ編の和輝は『強さや熱情を表す「赤」』というイメージ。
    • エマ編では不器用なりにエマを気遣い、アリサ編では何としてもアリサを守るため、荒々しい手段も厭わないという差。
  • 念頭にありそうな作品
    日本アニメ史に燦然と輝く押井守監督の2作品『機動警察パトレイバー the Movie』(劇パト)と『機動警察パトレイバー2 the Movie』(劇パト2)。
    本作にはこの二作を強く意識したような点が多く見受けられる。
+ 類似点・三作品のネタバレ要素を含むので注意
FM3 パトレイバー
街に日防軍兵士が1人立つタイトル画面 『劇パト2』での戒厳令の描写
アラスカ放射線研究所のシーン
『劇パト』冒頭の暴走レイバー事件の結末
本作の最重要地域・沖縄海洋都市 『劇パト』の最重要地域・「方舟」
沖縄海洋都市の政府広報 『劇パト』のバビロンプロジェクト政府広報
「春陽」起動シーケンスの描写 レイバーOS起動シーケンスの描写
数年前の日防軍海外派遣部隊
「満足な武装もないまま戦闘に参加して、全滅したってやつか」
『劇パト2』冒頭の国連軍部隊の結末
日防軍クーデター OVA5~6話「2課の一番長い日」、『劇パト2』の「架空の戦争」
沖縄海洋都市・内部構造データのパスワード「EHOBA」 『劇パト』の方舟解体用パスワード「E・HOBA」
沖縄海洋都市・ブロック分離シーケンスの描写 『劇パト』での方舟解体シーケンスの描写
警察用ヴァンツァー「MHX-12」*9 パトロール・レイバー「AV-98」
  • 警察がらみとして、ドラマ『踊る大捜査線』ならぬ『もえる大捜索線』なる映画の撮影に日本警察がヴァンツァー隊を出して協力した、という情報が日本警察機構のフォーラムで掲載される。
    また、本作の登場人物の一人「新条美穂」のモデルは、『踊る』の登場人物である、水野美紀が演じた「柏木雪乃」であることが知られている。
  • 2022年9月のNintendo Directで、1・2に続いてのリメイクの製作が発表された。
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最終更新:2023年12月11日 14:43

*1 廉価版で付与されたレーティングを記載。

*2 なお「放り出されたパイロットをヴァンツァーの火器でミンチにする」という凄惨極まりない光景はよくネタにされる

*3 顕著なのがエマ編のリュウ

*4 何せ「ISDN基地」が登場するほどだ

*5 例:近距離に対し、マシンガンで反撃すると、近距離で3ポイント、マシンガンで5ポイントの計8ポイントも使われることとなる

*6 弾数UPI、ズームI、熟練1↑、人間DMGI、タックルI

*7 スタンパンチ、fallショット、パニックショット

*8 ただし伊佐夫も「この親にしてこの息子あり」と思わせるような態度を取ることも

*9 型番の元ネタは「To Heart」のマルチから。