ARMORED CORE PROJECT PHANTASMA

【あーまーどこあ ぷろじぇくとふぁんたずま】

ジャンル カスタマイズメカアクション(TPS)
対応機種 プレイステーション
発売・開発元 フロム・ソフトウェア
発売日 1997年12月4日
定価 5,040円(税込)
廉価版・配信 PS one Books:2001年11月29日/1,890円(税込)
ゲームアーカイブス(PS3専用):2007年9月27日/600円
判定 良作
アーマード・コアシリーズ


ストーリー

『大破壊』と呼ばれる最終戦争によって、人類が地上を追われ、その居住を大地の底に移して半世紀。
「国家」という概念は既になかったが、それに代わって台頭した「企業」同士の争いは終わることはなかった。
全てが「企業」によって管理される世界で、唯一、それに含まれない存在があった。
報酬によって依頼を遂行し、何にも組みしない傭兵、彼らは『レイヴン』と呼ばれていた。

それは、ひとつの依頼から始まった。
世界最大規模を誇る地下複合都市「アイザック・シティ」を活動拠点とするひとりのレイヴンに、レイヴンズ・ネストのネットワークを介して普段通りに届けられた依頼だったが、その内容には奇妙な点がいくつか存在した。
奇妙な点のひとつは、そのレイヴンを直接に指名してきたことだった。ネット上で公募される通常の依頼とは明らかに異なり、直接そのレイヴンの端末に届けられていたのだ。
そしてもうひとつ、その依頼の内容はあまりにも単純であったが、同時にきわめて不明瞭なものだった。

──『地下複合都市「アンバー・クラウン」に侵入してほしい』──

たったそれだけの文面で依頼主の名前すら不明ではあったが、それとともに提示された報酬は莫大な金額となっていた。
勿論、この状況と提示された金額の多さから、相当に危険な任務であると判断することが可能であったが、レイヴンという職を生業とする以上、危険はある意味、日常と等価であった。
依頼を受諾したレイヴンは莫大な前金を手にし、愛機とともに、「アンバー・クラウン」に向かうのであった。


概要

自らパーツを組み合わせた戦闘用ロボット「アーマード・コア(以下AC)」を駆り、3D空間を舞台にしたスピーディーかつ爽快なアクションシューティングを楽しめるとして人気を博した『アーマード・コア』。
第二作となる本作(通称『ACPP』)は、初代『アーマード・コア』発売からわずか半年後に発売された続編である。

前作セーブデータの引継ぎ機能を搭載した本作は、より「レイヴンの日常」に迫るような作風を持って世に出た。
「レイヴンと呼ばれる傭兵となり、様々な任務を遂行する」という自由な、そして希薄なストーリー展開がACシリーズの恒例であるが、本作はそのシナリオに重点を置いた、シリーズでも異色の存在となっている。
ゲームシステム面では、CPUと1on1のデスマッチを行う「アリーナ」モードが初登場。新たなパーツも追加され、対戦ツールとしての魅力が強化された。


特徴・評価点

追加・新要素

基本的なゲームシステムは『初代』と同一。ここでは本作の追加・新要素を中心に述べる。

新パーツの追加

  • シリーズ初作故、用意されたACのパーツ数がやや少なかった『初代』は「自分の好きな機体を組める」というキャッチコピーは確かに満たしていたものの、特に武装面でのバリエーションはそこまで多いものではなかった。本作ではこれを補うように武器パーツを中心として幾つかの新パーツが追加され、戦術の幅が広がっている。
    • 絶大な威力とド派手な演出でレイヴンを驚愕させた超大型ミサイル「核」、チート級の火力と使い勝手を誇る伝説の凶武装「フィンガー」、ライフルの選択肢を広げた名銃「緑ライフル」「ピピコ」などが有名。装弾数をアップさせる補助装備・予備弾装も登場した。
    • 前作同様に隠しパーツが存在するが、本作の隠しパーツは全てアリーナを勝ち上がる事での入手となっており、ミッションで拾得する事はない。

アリーナ

  • コンピュータの駆るレイヴンと1対1で戦うデスマッチ・モード。今作では49機のランカーACが用意されている。
    • アリーナを勝ち上がる毎に賞金が授与され、一定順位ごとに隠しパーツも進呈される。まさに「副業」という感が相応しい、それでいてただのやりこみではない、世界観にマッチした仕様となっている。
    • 出場レイヴンそれぞれの個性あふれる紹介文を交え、キャラクターの個性づけにも成功したこのモードは好評を博し、シリーズ恒例のモードとなってゆく。
      • 本作のレイヴンは妙に個性的な人物が多い。また複数のレイヴンはチームでアリーナに挑んでおり、アセンブル方針とエンブレムの意匠がある程度統一されている。この「チームを組んで参加する」という設定は本作でしか見られない。また、そのはじけっぷりでユーザーを笑わせた最下位レイヴン「地雷伍長」は、長年にわたって愛されるキャラクターとなった。

テクノ路線へ走ったBGM

  • BGMは前作からの引き継ぎと、前作の未使用曲、新曲等で構成される。
    • テクノ調の個性的な音楽は当時のゲーム業界において異質であったがユーザーからはおおむね好評を得た。現在ではPS三部作における代表的な雰囲気のモチーフともなっている。
      • 共通するPS三部作のBGMはアレンジサウンドとしてオリジナル・ベスト・トラックが発売されており、Amazonの中古価格ですら9000円と高騰している事からも根強いコアな人気を窺わせる。
    • 無音のミッションが多かった前作に比べ、本作は(常に音楽が流れる)アリーナの登場によって名曲に接する機会が増えたことも、ユーザーにテクノ路線を認識させることに一役買ったのだろう。オープニングテーマと、名物レイヴン・スティンガーの専用BGM「Grip」は本作を代表するものとして有名。

シナリオ・ミッション

  • シナリオ
    • 物語を進める内に、冒頭の奇妙な依頼の謎とその理由が明かされる。
      • 女性レイヴン・スミカの一心の願いから『ウェンズディ機関』が極秘に進める人体と戦闘兵器の融合を目的とする『ファンタズマ計画』の阻止に協力することになる。ミッションを遂行していくレイヴンの前に立ちふさがる、もう一人のレイヴン『スティンガー』との死闘の果てに訪れるものは……
    • 敵役スティンガーはシリーズ通しての人気キャラであり、初登場時に発したセリフ、「俺は面倒が嫌いなんだ」は名言としてファンの間ではあまりに有名。
      • その落ちぶれ振り?も見所。最初はライバルとして華麗に登場するが、主人公と本作の依頼人「スミカ」に敗れ続けた彼が突き進んだ道の果ては……
    • CVについてもスミカ役に長沢美樹氏、スティンガー役に速水奨氏を起用するなど、シリーズの例にもれず豪華。
      • 頭部コンピュータシステムボイスの三石琴乃氏、田村ゆかり氏も続投しているが、新録はないため初代になかったシチュエーションには対応しておらず、その美声を聞く機会は少ない。
        ちなみにCOMボイスには今作からエフェクトがかかり、よりコンピュータボイスらしくなった。特にROUGHタイプは人間の生声で機械的な片言を発していたためにある種の気持ち悪さがあったが、それが改善されている。
    • シナリオそのものはシリーズ全体の傾向と比較するとやや特殊で、他シリーズのようにACの、ひいては世界のあり方に関わるような事はなく、あくまで王道的なストーリーを主軸とする「レイヴンの日常」を描いた意欲的な作品である。
      • 位置としては『アナザーエイジ』に通じるが、そちらがシナリオをほぼ完全に排した構造に対し、本作はストーリーに沿って進む形式を採る。
      • 余談だが、次回作『マスターオブアリーナ(以下『MoA』)』は本作のヒロイック要素とアリーナ、初代のレイヴンズ・ネストの核心に迫る部分を見事に融合させた独特なシナリオで、PS三部作それぞれの魅力的な独創性を窺い知ることができる。
  • ミッション
    • ミッションの難易度は前作と比べやや抑えられている。とはいえ決してヌルいわけではなく、やたらと火力やAPが高いMTが頻出するなど、前作とは違った意味での難しさがある。「難易度自体は高いものの、高性能なパーツが多いため攻略が容易」といったほうが正確である。
    • ミッション総数は少ないが、探索系から護衛系に加え、「演習場突入」「集結部隊奇襲」などド派手に掃討戦を行えるミッションまで、任務のシチュエーションは一通り揃っている。また、機関の要人捕獲など特殊な状況や(初めて人間の姿が登場)、因縁の相手が直接決闘を申し込んでくる等なかなかに多彩。
    • 中でもゲーム開始直後に始まる「強行索敵」は多くのプレイヤーに記憶を残した特異なオープニングで、前作のレイヴン試験ではなく「最初からレイヴン家業を生業としている主人公」を印象付け、世界観にのめり込ませてくれる特徴的なミッションである。
      • ゲーム開始早々、初心者プレイヤーに容赦のない洗礼を浴びせた前作に比べ、こちらのミッションの敵はザコMTと戦車のみであり攻略は容易になっている。
      • このミッションはオブジェクトの破壊に応じて報酬にボーナスが加わるため、一度ゲームをクリアすると稼ぎミッションとしても最適である。
    • 依頼人でありレイヴンでもあるスミカとの共闘ミッションもあり、それまでの孤独な戦いから世界観の間口が広がった。
      • 但し、この頃の共闘はあくまで状況のみである。スミカの駆るACは超耐久・攻撃力1固定というシステムの簡易実装を優先したきらいがあり、本格的な共闘は後のシリーズを待たねばならない。
    • 前作で不評だった無暗に広いだけのマップや、迷路状のマップを持つミッションは削られている。また、ミッション単体のボリュームはあるが、シナリオの性質上ミッションの派生は少なめで、ストーリーの分岐は存在しない。

問題点

全体的に、開発期間の短さからくる練り込み不足が指摘されている。

  • PS三部作最小のミッション数
    • シチュエーションが幅広いとはいえ、総数17という数字は前作の半分以下である。途中でミッション分岐があるため、エンディングまでのミッションクリア数はもっと少ない。
    • 本編に登場する敵レイヴン(つまりAC戦)はスティンガーだけで、残りは台詞のないアリーナに集約されている。
    • 頭部パーツの「ノイズキャンセラー」「バイオセンサー」を要求するミッションが存在せず、実質ダミーパラメータと化している。
  • アリーナACの作りこみの甘さ
    • 初登場のアリーナだが、ランカーAC達の機体構成やAIの練り込みは甘く、手放しで称賛はできない。
    • 下位ランカーのあまりの弱さ*1はともかくとしても、上位ランカーについては強化人間能力に頼った粗雑なロジックが際立っており、大抵は月光光波orトップアタックによるごり押しという画一的で嫌らしい戦法をとってくるだけであった。
    • もっとも下位ランカーの中には、後シリーズで言うところの「乗り越えるべき壁」に相当するレイヴンが存在するが。
  • 未修正の不満点
    • パラメータ表記が英語と数字で少々とっつきづらく、一部のダミーパラメータもそのまま。TPSカメラのクセも変化なし。仕様に慣れるまでは苦労する事になる。
  • SEの変更
    • 今作から次回作まで一部SEが変更されたがその中の一部に不満が出ている。
    • 例を挙げると一部マシンガンの発射音が初代と比べると貧弱な物になっていたり、ブーストを吹かすたびにかなり大きめの音が鳴る等。勿論全てのSEが悪評と言う訳ではないので注意。
  • OPがショボい
    • 第二作である事を考えると「ショボい」と言い切るのは少々酷ではあるが、前作と比べ手抜き感が強く漂う。『MoA』で劇的な進化を遂げている事も本作の貧相な印象を受ける要因か。
  • コンバート(引き継ぎ)に関する不満
    • 『初代』のセーブデータを引き継げるコンバートは前作経験者には嬉しい仕様であった。しかし……。
      • 『初代』の隠しパーツは、入手済みのデータを本作にコンバートしなければ使用できない。隠しパーツはプレイに必要不可欠という程ではないが、優秀な性能を持っているパーツも多く、当然所持していた方が本作をより楽しめる。この仕様は後の作品に受け継がれていくという。
      • 同様に、強化人間でのプレイにも前作からのデータコンバートが必要。特に本作のアリーナでは上位ランカーによる強化人間能力の凶悪さが前面に出ており、一部のプレイヤーからは不満の声が上がっていた。余談だが、この傾向は『2』『3』シリーズにも受け継がれてしまっている。
  • パーツバランスの調整不足
    • 発売までの期間の短さもあってか初代で不遇だったパーツの調整が殆どされていない。既存パーツの調整は『MoA』から本格的に行われる事となる。
    • 新規パーツは高性能すぎるものが多い。一部のパーツは、対戦での禁止や制限を取り決めるのが当たり前になるほど。
      • とはいえ禁止パーツを設定したときの対戦バランスはかなり良好とされており、脚部や右腕武器がほぼ固定されている『MoA』よりも対戦ツールとしては好まれている。

総評

追加パーツと、アリーナの登場によって今後の方向性を明確に打ち出した作品である。
アリーナがあまりにも有名だが、ストーリー・プランにおいてもサブタイトルの正しい意味で『アーマード・コア』という作品の世界観を補完する重要な一作。ただ、調整が重ねられているとはいえ依然として細々した部分に不備があり、前作のプレイヤー向けに作られている面は否めない。単体でも遊べる出来ではあるのだが、やはり前作あってこその『プロジェクトファンタズマ』である。
興味を持ったレイヴンの卵である諸氏、そして前作を経験したプレイヤーは、ぜひ世界情勢やレイヴンズ・ネストの本質とは交わらない「あるレイヴンの日常」を体験してみては如何だろうか。


『いいか、俺は面倒が嫌いなんだ』


余談

  • 本作はシリーズの中でも最も未登場パーツが多く、そのパーツ群は色々と独特な物が多い。その内の一つに、次のシリーズの主役機の頭部パーツも存在した。
  • 『MoA』に登場した「ナインボール=セラフ」もそうなのだが、本作からも主人公のライバル「スティンガー」*2が使用した特殊AC「ヴィクセン」と、本作のタイトルで有り最後の大役を務めた「ファンタズマ」がゲストとして後発作品に登場した。
  • 発売から約一年後にPlaystation the Best版がリリースされている。
    • 単なる廉価版ではなく、主要キャラクターの通信やコンピューター等の音声を英語に切り替えられるVOICEモード(音声切り替え)の実装や、デュアルショックへの対応といった追加要素がある。
    • 通常版との通信対戦も可能だが、Best版では防御力が通常版より低く計算されてしまう模様。バージョン違いで対戦すると一方的にBest版側が不利になるため、可能な限り同一バージョンで対戦しよう。

一部情報出典:RAVENWOOD.jp




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最終更新:2024年04月03日 21:07

*1 総火力が少なすぎてAC1機を撃破できるかどうかも危ういランカーさえ存在する。

*2 彼は口癖から『ありとあらゆる面倒が嫌いな人』として後のシリーズのジャック・OやCUBE等と並びネタにされているキャラでもある。