スカイ・クロラ イノセン・テイセス

【すかい・くろら いのせん・ていせす】

ジャンル ドラマチックフライトシューティング
対応機種 Wii
発売元 バンダイナムコゲームス
開発元 アクセスゲームズ
発売日 2008年10月16日
定価 6,800円(税別)
判定 良作
エースコンバットシリーズリンク


概要

  • 森博嗣著の小説『スカイ・クロラ』の世界観を舞台に、エースコンバットシリーズのスタッフ(PROJECT ACES)が開発したフライトシューティングゲーム。
  • 原作の森博嗣氏と劇場アニメ版『スカイ・クロラ』の監督を務めた押井守氏が監修している。
  • システムやブリーフィングの流れ、無線会話の雰囲気などは基本的にエースコンバットシリーズのものを流用しているが、操作はWiiリモコンの特性を活用した画期的なものとなっている。

ストーリィ

いくつかの大戦を経て、完全な平和が実現した世界。
そこでは、人々が平和を実感するために「ショーとしての戦争」が行われていた。
主人公の所属する戦争請負企業、ロストック社のエース部隊に、新人パイロットたちが着任する。
少年・少女にしか見えない彼らを前に、基地の大人たちは戸惑いを隠せなかった。
彼らは一体何者なのか……。
そして、その中でも一際異彩を放つ少女、「織科 真海」。
少女の瞳に映し出される空に、エース達の空中戦が展開する。
(説明書より引用)


特徴

  • プレイヤーはロストック空軍のエース部隊「クーガ隊」に所属するパイロット、TACネーム「リンクス」となり、敵対するラウテルン軍と戦っていく。
  • なんといっても最大の特徴はヌンチャクを操縦桿、リモコンをスロットルに見立てたWiiならではの操作である。
    • ヌンチャクを倒すことで機体を旋回させ、方向を指定する。
    • リモコンを前に起こすことで加速、傾ければ減速し縦に構えることで最高速になる。
      • これによりエースコンバットシリーズには無い非常に直感的な操作が実現されている。
      • ゲームキューブコントローラやクラシックコントローラーを使うことで従来のエースコンバットシリーズに近い操作もできる。
      • またミッション中に2Pコントローラーを使用することで、2Pが援護射撃をできるようになる。
  • エースコンバットシリーズとは違い、登場する機体はレシプロ機でミサイルは存在しない。機銃が主要な攻撃手段となる。
    • 機銃はミサイルのように敵を自動追尾しないため、敵をしっかりと照準に収めて狙撃しないと命中しない。
      • その分照準が大きめになっていたり、後述のTMCによって自動的に敵の背後に回り込めるようにするなど救済措置が施されている。
  • TMC(タクティカル・マヌーヴァ・コマンド)
    • 敵機の至近に詰め寄り、逃さないように追いかけるとTMCゲージが溜まっていき、一定以上まで上昇すると使えるようになるコマンド。
    • ボタン一つで敵機の背後に移動でき、撃墜のチャンスとなる。ゲージが多いほど成功率が高くなる。
      • TMC使用時は専用のカメラとなり、華麗な空戦機動を堪能できる。
      • かなり便利な機能でぬるい仕様かと思うかもしれないが、TMCゲージが溜まっている途中で敵機に大きく引き離されるとゲージが空になるため使いどころを考えさせられる。またボスクラスの敵はTMCだけでは背後を捉えきれないことも多い。
      • TMC前提のためか敵機が全体的に複雑な機動をしてくるため一筋縄ではいかない。
      • 上級者は敢えてTMCを封印することでかなり手応えのある戦いを楽しめる。
  • マニュアル・マヌーヴァ
    • ボタン一つでいつでも出せるマヌーヴァ。主に回避行動、敵機に背後を取られた際のリセットなどに役立つ。
  • 機体のカスタマイズ
    • 戦利品として獲たパーツを組み替えることで機体をカスタマイズすることができる。迅速さが必要なミッションでは速度重視、強力な敵を相手にするミッションでは火力重視など目的に応じたカスタマイズがミッションの明暗を分ける。

評価点

  • 「空を飛ぶ」ことを突き詰めた操作感
    • この作品の最大の評価点であり売りであろう。Wiiというハードだからこそできる直感的な操作は空を飛んでいる実感を体感的にわかせてくれる。
    • 多少慣れが必要だが、ヌンチャクを振るうことで起こる浮遊感とWiiコンを立てることで感じられる疾走感が素晴らしい。自在に空を飛べるようになればプレイヤーの体とゲーム中の機体がリンクしているかのような錯覚すら感じられる。
    • Wiiリモコンだけでビギナー、ノーマル、エキスパートといった複数の操作方法が用意されており、キーコンフィグも可能。それでも肌に合わない人に向けてGCコントローラやクラシックコントローラーが使えるなど操作性の配慮は完璧といえる。
    • このような操作はエースコンバットシリーズどころか他のゲームでも見られない独自のものだが、無理や破綻が無く爽快感に溢れた完成度の高いオリジナリティに昇華されている。
  • TMCの導入
    • エースコンバットとは違ってミサイルがないが、TMCや機体のカスタマイズが十分に救済措置として機能している。
    • 従来のエースコンバットシリーズなどでは敵機の背後を取るために時間をかけて追尾する場面が多々あったのだが、TMCにより一瞬で背後へつけるようになったため戦闘中のテンポがよい。
    • 使わないとバランスが特別厳しいわけでもなく、腕を上げればTMCなしでも十分に戦えるため使うかどうかはあくまでプレイヤーに委ねられている点も良い。
  • 美しい空の描写
    • 総合的なグラフィック面では流石にHD機に見劣りするが、この点は負けず劣らず素晴らしい。たなびく雲や解放感溢れる青空など本当に自分が空を飛んでいるように思わせてくれる。
    • またカメラワークが秀逸で、特にTMCが上手く決まった時のアングルが気持ち良い。見せ方を工夫して本来のグラフィック以上のかっこよさを表現できている。
  • 聞きごたえのある音楽
    • エースコンバットシリーズは音楽方面の評価も高いことで知られるが、この作品もそれらの作品と比べても遜色ない名曲揃い。特にラストバトルのBGMはシチュエーションやラスボスの強さもあいまってかなり盛り上がる。
  • あらゆる面で快適な仕様
    • 優れたキーレスポンス、全てのイベントがスキップ可能、豊富なコンフィグ、ステージセレクトで前の章で取り逃したパーツを回収したりイベントを再度見ることが可能、チュートリアルがミッション前にいつでも閲覧できる、など全体的にプレイヤーに親切な作り。
      • 強いて言えばシーンが切り替わる時に多少のロードが入ることぐらいがマイナス点。
  • バラエティ豊かなミッション内容
    • 多くの飛行機が入り乱れる空中の大会戦、味方機との演習、輸送機の護衛、難攻不落の要塞攻略、新型巨大兵器との戦いなど戦闘のシチュエーションは多岐に及ぶ。
    • それぞれのミッション内容がストーリーと密接に絡んでいる。またエスコン名物の無線会話も健在で、そこからキャラクターたちのポリシーや心境の変化がよく見える。

賛否両論点

  • ステージや音楽の使い回しが多い。
    • 空戦ゲームであることとシチュエーションやミッション内容が異なるのでステージが使いまわされているからといってゲーム性に関わるわけではないが、気になる人は気になるだろう。
    • 音楽は使われるシーンによってアレンジを施すなど工夫はされている。また元のクオリティは高いので下手な別曲を入れるよりはいいという意見もある。
  • 一部のミッションが突出して難しすぎる。
    • Mission06 芭瑠珂(バルカ)とMission17 沓岳天(トガクテン)の難易度が他のミッションに比べてあまりにも高い。
      • 前者は速度・旋回性能の低い機体と戦闘の役に立たない特殊兵装を強制的に使わされるミッションであり、その状況で敵に狙われた味方3機を救出しなければならない。複数の敵が縦横無尽に飛び回りながら味方機を狙い撃ちするため1秒の時間も惜しいのだが機体性能が貧弱であるためなかなか思うようにいかない。
      • 後者はラストミッションなのである意味仕方ない難易度ではある。とにかくラスボスが強い。最終局面で本気を出したラスボスはPROJECT ACES最強のラスボスとも言われるほどの発狂した変態機動と耐久力を誇る。追いつくだけでも苦労するのに時間制限もあるのでかなりの高難度。
      • もっとも何度も何度も挑戦すれば決してクリアできないものではない。特にラスボスはとある特殊兵装の有用性に気づけばエンディングは近い。
  • シナリオの賛否。
    • 説明されず謎のままの専門用語が幾つか存在する。エンディングも謎が残る(というよりどうしてこうなったかすっ飛ばしている)為、原作の作風を知らないでプレイすると置いてけぼりにされやすい。
      • プレイヤーは所謂ドラクエ型主人公の「喋らない」存在のため、個性的なキャラクター達が感情を発露し劇的に変遷していく様子とは対照的。親友設定である戒田の撃墜等、裏切りや離反の渦中にあってどちらの側にあるべきか理由や判断基準に葛藤を覚えさせる内容とは逆に、ただ盲目的にクリア条件に従わなくてはならず今一つシナリオへの没入感に欠ける。
      • ストーリィでも「ショーとしての戦争」が説明されているが、その辺りについてプレイヤー(主人公)や登場人物がどこまで把握しているか不明で、場合によっては離反するキャラクター達の思想が正しく感じられるケースも少なくない。
    • 登場キャラクターもクセが強め。
      • 模擬戦で主人公との空中戦の楽しさに目覚め、新鋭機を持ち出して敵軍に寝返る織科、合理的な設定に反して部隊不和の種ばかり持ち込む鵜久森、ショーとしての戦争に関する立ち位置が不明な司令官萱場等。理由付けは可能とはいえ、行動理念や規律の概念が著しく欠けている演出もしばしば。

問題点

  • ボリュームが少ない。
    • 全17章。1章が長くても20~30分で終わることを考えると長く遊べる作品とはいえない。クリア後要素も少ない。
  • 地上の造形がやや雑。

総評

  • Wiiリモコンを用いた操作性の評価が非常に高く、美しい空や盛り上がる音楽も相まってまさしく「空を飛ぶ爽快感」を追求した作品。
  • そもそも原作がマイナー気味であることや、発売時期が映画の公開時期とずれてしまっていたり、ロクに宣伝してなかったりしたため売上は今一つであったがこの操作感とスカイ・クロラの独特の雰囲気に魅了されたプレイヤーは少なくない。
  • そのためMK2では87点のA評価(参考までに『スーパーマリオギャラクシー』が82点のS、『ゼノブレイド』が90点のS)とかなりの高得点を誇り、流通量の少なさもあるにせよ近年のゲームにもかかわらずプレミアがつき始めている。

余談

  • 売り上げの低さや版権ゲームという都合上続編が出る可能性はほぼないが、プレイヤーの中には同じ操作性を用いたフライトゲームを作ってほしいという声も強い。
    • 近い操作方法が実装されている作品として、Gaijin entertainmentが開発した、WWII当時の航空機を題材としたフライトシム/フライトシューティング作品群(『IL-2 Sturmovik Birds of Prey』(日本未発売 PS3/Xbox360/DS/PSP)、『蒼の英雄 Birds of Steel』(PS3/Xbox360)、『蒼の英雄-War Thunder-』(PS4/PC))が存在する。

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最終更新:2024年03月23日 13:32