バテン・カイトスII 始まりの翼と神々の嗣子

【ばてん・かいとすつー はじまりのつばさとかみがみのしし】

ジャンル RPG
対応機種 ニンテンドーゲームキューブ
発売元 任天堂
開発元 モノリスソフト
トライクレッシェンド
発売日 2006年2月23日
定価 6,800円
判定 良作
バテン・カイトスシリーズ
バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海 / バテン・カイトスII 始まりの翼と神々の嗣子


概要

バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海』の続編。
前作の20年前を舞台にしており、前作に登場したキャラクターも大勢登場する。
致命的なバグが存在するものの、前作の問題点の多くが改善され続編として手堅くまとまった作品となっている。


ストーリー

遥か昔に邪神マルペルシュロが引き起こした大戦から1000年後の時代。
人々は空に浮かんだいくつかの浮遊大陸を領土とし、独自の文化を育みながら暮らしていた。

その大陸の一つを支配する機械帝国アルファルドは、発達した科学技術を後ろ盾に、
機械を使って全ての大陸を管理する"マキナ化政策"を推し進めようとしていた。

主人公サギは「精霊憑き」と呼ばれる少年である。この世界では精霊に憑かれている者は常人とはかけ離れた強さへと至り、計り知れない功績を上げるものだと信じられている。
サギは皇帝への復讐という野望を秘め、帝国アルファルドの精鋭「暗黒部隊」の新入りとしてパートナーのギロと共に機を伺っていた。
ある日のこと暗黒部隊に任務が下された。その内容は皇帝オーガンの暗殺。
サギはこのチャンスを逃さず任務に参加し、皇帝の館へ潜入。しかしオーガンは既に謎の男の手で殺害されていた。
しかもそこに駆けつけた暗黒部隊の別部隊がサギたちを皇帝を殺害した反逆者として追撃する。全ては罠だったのだ。

…逃亡の最中、サギは巨大な化け物と遭遇。何とか化け物を撃退するがその直後サギは意識を失い謎の白昼夢に襲われる。
どこかの山岳の中、周りに見知らぬ男たちがいた。彼らはサギのことをマーノと呼び、近くの村へと急がせる。
その村では人々が肉体を失い精神だけの姿になって彷徨う常軌を逸した光景が広がっていた。
そこでサギは意識を取り戻し、再び暗黒部隊の追っ手から逃げることとなる。

何故サギは嵌められたのか? 暗黒部隊の目的とは? 皇帝を殺した男は誰なのか?
逃亡の最中に遭遇した化け物「遺児」の正体、そしてあの謎の白昼夢は一体? 多くの謎を残しつつも彼は帝国からの脱出を図った。


特徴・評価点

シナリオ

  • プレイヤーは主人公サギに憑いた精霊の視点で物語に参加していく。
    • このシステムは前作と同じで、要所要所で主人公から問いかけられる選択肢を選ぶことでシナリオが進んでいく。
  • シナリオは現在の時間と主人公の見ている夢のパートが交代しながら並行して進んでいくシナリオとなっている。
    • このような二層構成にすることで、夢はいったい何なのか?現在の危機をどう乗り越えるのか?とプレイヤーをバテン・カイトスの世界へ二重に引き込んでいき、気づけばどんどん物語を進めたくなってくる。
  • 現在と過去、精神主義(精霊、魔法など)と物質主義(機械や肉体など)、帝国内においての機械化政策推進派と反対派など二極対立のキーワードが豊富。これらを骨組みにして物語が展開されていく。
    • 対立構造を多用するため、細かい部分こそ複雑ではあるが大筋は何と何が対立しているか理解しやすいようになっている。主人公は精霊憑きであるため『精神主義』に属し、敵である暗黒部隊は機械化された軍隊であるため『物質主義』に属する、といった具合。
    • 政治や軍といった要素が絡んでくることもあり、前作よりも全体的な雰囲気は重め。時には鬱々した描写がされるシーンも有る。この辺りは好みが分かれるところになるだろう。
  • 高い評価を受けている前作との矛盾が生じないように丁寧に作られている。
    • 新しい物語を展開しつつ、前作に登場したキャラの補完もされていて、今作から登場したキャラと前作から続投しているキャラが違和感なく絡んでいる。
    • 基本的に前作とは独立した話なので、前作を知っていなくても楽しめるし、知っていれば至る所に散りばめられたちょっとした描写でより楽しめるといった作りになっている。
  • 今作でも中盤から終盤にかけての急展開があり、そこに至るまでの流れが非常に印象的なもので、高い評価を得ている。その展開は前作とはまた違った方向性で、前作をプレイしていたプレイヤーも驚かせることに成功している。
  • ちなみに、今作のシナリオを担当したのは前作の加藤正人氏ではなく、後に『ゼノブレイド』でディレクターを務めることになるモノリスソフトの小島幸氏である。
+ 主要キャラクターの紹介

メインキャラクター

  • サギ(CV:浪川大輔)
    • 本作の主人公で辺境の小大陸ハッサレー出身。15歳。心の中に精霊を宿す精霊憑きの少年。
    • 帝国アルファルドのエリート組織「暗黒部隊」に所属し、母親が経営する孤児院のためにお金を稼いでいる。
    • 明るく前向きで素直な性格だが、何かを犠牲にすることを厭わないところがあり、かつて故郷に対して酷い仕打ちを行った皇帝オーガンを憎んでいる。
    • こころの翼は白鷺の羽のような形をしており、日本刀に似た両手持ちの長剣を使って戦う。
  • ミリィアルデ(ミリィ)(CV:小林ゆう)
    • サギ達が帝国から逃亡する際に現れた17歳の少女。本人曰く帝国貴族の箱入り娘とのことで、外の世界が見たいという理由で旅に同行する。
    • 気が強く高飛車な物言いをするが、根は優しく弱いものは放っておけない性格。サギのことを気にかけているが、ギロとはしょっちゅう口喧嘩をする。
    • アヌエヌエの魔法学校を首席で卒業したそうだが、魔法はからっきしで全く使えないようである。
    • 蝶の羽のような青いこころの翼を持つ。戦闘では2本のクラブを用いた格闘技で荒々しくかつ華麗に戦う。
  • ギロ(CV:小村哲生/野沢由香里)
    • サギが幼いころ土の中から掘り起こした不思議な人形。老人のような口調で喋り男性の声と女性の声が重なって聞こえるなど謎が多く、その詳細は不明である。
    • 帝国が開発している機械兵士「マキナウィル」に似ており、サギのマキナウィルという名目で暗黒部隊に入りサギと共に任務をこなす。
    • 思ったことは何でも口に出す性格で、物事を動物に例えて話す癖がある。サギとは仲が良いが、ミリィとは犬猿の仲。
    • 人形であるためこころの翼は持たないが、様々な属性の魔法を使いこなして戦う。

サブキャラクター

  • バアルハイト(CV:佐々木敏)
    • マキナと呼ばれる機械を開発し、帝国アルファルドに繁栄をもたらす男性。国民からの支持が厚く、次期皇帝の有力候補とされている。
    • サギが所属する暗黒部隊を直属として持ち、各大陸を機械化していくマキナ化政策を実行している。
    • 自らの信念に基づいて行動しており、時には武力行使も辞さない構えを取る。
  • シャナト(CV:真殿光昭)
    • バアルハイトの右腕にして、バアルハイト軍の参謀的存在。マキナ化政策の指揮を執り、サギ達と敵対する。
    • 誰に対しても丁寧な口調で話すが、皮肉が込められた物言いをし、残忍な一面も見せる。
  • ネロ(CV:横島亘)
    • 伝説の精霊憑きとして知られる帝国アルファルドの軍務官。バアルハイトと同じく次期皇帝の候補者。
    • サギ達をバックアップしていく存在であり頭脳明晰な人物だが、過去の戦いで左足が不自由になっている。
  • ゲルドブレイム(CV:茶風林)
    • ネロの右腕的存在で、帝国の行く末を案じる人格者。皇帝暗殺容疑を掛けられたサギ達の逃亡の手助けをする。
    • 20年後が舞台である前作にも登場するが、性格はまるで異なる。
  • ジャコモ(CV:三木眞一郎)
    • 暗黒部隊に所属し、13歳にして部隊内でトップクラスの戦闘力を持つ少年。皇帝暗殺容疑を掛けられたサギを執拗に追う。
  • ヴァララ(CV:井上喜久子)
    • 暗黒部隊に所属するバアルハイト配下の女性。自分に力を与えてくれるマキナを信奉しており、マキナ化政策の先遣隊長的な立場にある。
    • マキナアルマと呼ばれる帝国の兵器を操作し、何度もサギ達の前に立ちはだかる。生身では銃型マキナと足を使った格闘術で戦う。
  • ヒューズ(CV:小西克幸)
    • バアルハイトの配下の一人で、辺境サダルスウドのマキナ化政策を担当する。弟であるナスカを溺愛している。
    • 自らの拳を使った肉弾戦を得意としており、打撃系のマキナアルマを装着して戦う。
  • ナスカ(CV:斎賀みつき)
    • バアルハイト配下の一人でヒューズの弟。無表情でひ弱そうに見えるが芯は強い。
    • 兄の期待に応えるべく、マキナアルマに搭乗して雲の国ディアデムのマキナ化を行う。生身では短剣とグレネードを使う。
  • レイドカーン(CV:小林由美子)
    • 12歳にして雲の国ディアデムの国王である少年。まだまだ幼いところがあり、ギバリの父親に教育を受けている。
    • 前作ではあまり語られなかったギバリとの関係が今作では詳しく描かれている。
  • ギバリ(CV:吉野裕行)
    • レイドカーンの教育係ラムバリの息子であり、レイドカーンの大親友。ディアデムの漁村ナシラ出身。
    • 猪突猛進で力でおす傾向があり、レイドカーンと2人でいつも無茶なことをしている。
  • ティスタ(CV:檜山修之)
    • サギが見る夢の世界で現れる兄妹の長男。何事に対しても思慮深い性格でリーダー的存在。クィスという婚約者がいる。
  • ペッツ(CV:小山力也)
    • 兄妹の次男。喧嘩っ早い性格で人の話を最後まで聞かないことがあるが、正義感に溢れる熱血漢。
  • ピエーデ(CV:前田ゆきえ)
    • 兄妹の長女で母親的存在。落ち着いた性格で何事にも冷静。
  • ポルコ(CV:成瀬誠)
    • 兄妹の三男。泣き虫だが力持ちな少年。外見通り食べることが好き。
  • ワイズマン(CV:郷里大輔)
    • 夢の世界にある街クヤムを治める領主。鎧とマントに身を包み常人ではない雰囲気を漂わせる。
    • こころの力が強大で生物をマグナス化する能力を持ち、人をマグナス化するマグナス化政策を推し進める。クヤムの民たちからは尊敬されている。

音楽

  • 前作と同じく、桜庭統氏が担当している。
  • 桜庭氏自ら続編を望んでいたことだけあって、今作の音楽も好評である。
    • やはり戦闘曲の評価が特に高い。スピーディーになった戦闘に合わせて前作よりも全体的にテンポが上がっていて、プレイヤーを大いに盛り上げてくれる。
    • メインテーマは歌が入った神秘的なものになっている。ゲーム中で流れる場面は少ないものの、雰囲気がやや重くなった今作の世界に非常に調和している。
  • 舞台が同じなのもあり、一部の曲は前作の曲がアレンジされている。
    • 新曲の中にも前作のイメージを受け継いだ曲が多く、前作をプレイしているのならば「この曲は前作のあの曲を引き継いでいる曲だな」と比べてみるのも面白いかもしれない。
  • 一度聞いた曲はメニュー画面のサウンドテストでいつでも聞くことが出来る。

マグナス

  • 前作よりマグナスの種類自体は減ったが(1022種→655種)、これは戦闘システムの大幅な改装によるものである。マグナス収集の面白さ、やりこみ要素も前作と変わらず奥深いものとなっている。
    • 一方で前作では数多く見られたユニークマグナスのほとんどが削減対象となった。特に「時間経過やSPコンボで現時点のデッキに入ってる物よりも強いマグナスが得られなくなった」という難易度にも少なからず影響している。
    • 一部周回要素があるので、一周目で全てのマグナスを集めるのは不可能。期間限定で注意が必要なマグナスもあり、全てのマグナスを集めるのは前作と同様に計画的なプレイが必要である。
  • 持ち運べるマグナスの数が大幅に増えたので、やりくりに困るといったことがなくなった。
  • 前作のSPコンボに代わる要素として、マグナミクスがある。
    • 幾つかのマグナスを混ぜて新しいマグナスを生み出すというもの。2枚のマグナスで出来る基本的なものから6,7枚のマグナスを必要とする大掛かりなものまである。
    • レシピは全部で50種類あり、全て埋めるのは中々に難しい。

その他

  • ロードがほとんどない。システムが改善されたのもあり、前作よりも更に快適にプレイできる。
  • サブイベントがクエストリストとして表示されるようになったため、どこで何をすれば良いのか、今どのイベントを進行しているのかが分かりやすくなった。
    • ゲームを進めると自由に各大陸を移動できるようになり、複数の大陸を移動するイベントもあるため便利になった。
  • ダッシュが出来るようになった。目に見えて移動速度が上がる一方、ゲージが最大値になると息切れするようになる。
    • 通常マップで息切れに困る事こそあまり起こらないものの、敵の出現するエリアではゲージの増加量が早い。また息切れ状態でエンカウントすると、戦闘ターンが遅れるデメリットが発生するため乱用は厳禁。

完成された戦闘システム

前作のマグナスバトルの欠点を改善しさらに発展させた形。見た感じ前作とそう変わらないが操作感覚は大幅に忙しく、やり応えのあるものに変わっている。 数十個の装備欄に収集した装備用マグナス(攻撃や魔法、アイテムなどのコマンドの役割をするカード)を装備し、戦闘中はそれがランダムに手札に表示されてそれを選びつつ行動する戦闘などは同じ。しかしいくつかの点が改善されている。

  • マグナスの装備欄がパーティー共用になった。
    • 前作は6人の仲間に個別に装備欄があったため装備変更がかなり手間がかかるものだった。この作品では大幅に装備変更のハードルが下がった。
    • その代わり、キャラ専用のコマンドが手札に表示されると別のキャラではそれを選択できず、気づけば選択できないコマンドばかりということが起こるようになった。しかしそれは問題点ではなく戦略性を高める要素になっている。
  • 手札を捨てることが重要になった。
    • 前作では選択できる山札から手札を全て引いてしまうと山札を作るために1手番無駄に消費され、その隙に大打撃を受けると立て直しに苦労した。また、思い通りに行動することも難しかった。
    • しかし今作では使用したマグナスはすぐに山札に補充され、Bボタンで手札を捨てることが可能になった。
    • これによって、装備欄を全部埋めなくても最低限の装備さえ揃っていれば不利になることはなく、むしろ使用頻度の高い有利な手札をすぐに補充できる確率が上がる。手札をたくさん用意して行動の幅を増やすか、手札を厳選して行動の質を上げるか、というデッキ構成の戦略が増大。また、使えない手札はどんどん捨てて新しく有利な手札を引くまで粘ることが気軽にできるようになった。というか捨てないとまず話にならない。
    • 前作はドラクエのようなターン制であったが、今作ではFFのATBのようにリアルタイムに戦闘が進行するので手札を捨てるのには余計な時間がかかる(捨てる時間自体はそれほどかからない)。そのため有利な手札が出るまで粘るかすぐにできる別の行動をするかなどといった戦術性が向上した。
  • コンボ中はコンボがつなげる手札、ピンチ時には回復アイテムの手札が出やすくなる仕様が追加された。このため一般的なカードゲームにありがちな「必要な手札がなかなか出ずにストレスが溜まる」といったことがほとんどない。
    • この仕様のため、デッキ構成をしっかり練ってさえいれば10コンボくらい繋ぐことなら簡単にできる。(とはいえ極限までコンボを突き詰めようとするとかなり難度が高い)
    • 前述した手札を捨てるシステムと組み合わせることで、ピンチになったらひたすら回復マグナスを引くまで手札を捨てて粘るといったことも出来るようになった。ゆえに、ピンチになっても一気に全滅することが少なく、諦めずに何とか持ちこたえつつ立て直すことで、大逆転勝利という爽快感ある展開に発展しやすい。ただしその分敵の火力は高めに設定されている。
  • コンボ性能が進化し、更に重要・強力になった。
    • コンボは手札に書かれた数字が小さいものから順につないでいける。例:1→2→3 1→3 同じ数字や前の数字よりも低い数字の手札にはつなげられない。
    • 必殺技などの強力な手札はコンボをつなぐことで溜まるゲージを消費しないと使えない。必殺技にもランクがあり強いものほどゲージを多く消費し、使用できる順番も上がる。
    • リレーコンボというシステムが導入され、一人のコンボが終わった後、次の味方の手札に1の数字のカードがあれば複数人数でコンボがつなげられるようになった。この点が前作のコンボと決定的に違う点。
    • コンボの中には特定の手札の順につなげることで発生するEXコンボがあり、通常のコンボよりも威力・性能が強くなる。
    • コンボが複数人数でつなげられるようになったことで威力、爽快感、戦術性、テクニック性が大幅強化。あえてすぐに行動せずに他の味方がコンボ可能になるまで待機する、余計な手札を捨ててより強いコンボにできるような並びに調整するなどの駆け引きが熱い。
    • 今作では敵をコンボで連続攻撃すると、ダウンさせて一定時間行動不能にすることが可能であるため、リレーコンボを積極的に狙っていく価値は十分にある。
  • 手札事故の可能性が減った。
    • 精霊値というシステムにより、キャラクターとの好感度が高いほど、戦闘で有利なマグナスが引きやすくなっている。これにより前作で問題であった運の要素は大幅に緩和された。
      • 好感度の選択肢を常に正解に導かないといけないため、不正解のかけ合いが見たくても選びづらいという難点も備えている。もっとも後述の「こころの器」というマグナスである程度は回避できるのだが。
  • 全体攻撃を取り入れた。
    • 前作では全体攻撃がなかったため1体ずつ攻撃するしかなかったが、今作では一部の必殺技で全体攻撃ができるようになった。コンボの組み合わせによっては一度の行動でまとめて倒すことも可能になり、テンポの向上だけでなく爽快感も増している。
  • これらの変更によって、戦闘テンポがハイスピードになり、戦闘に時間がかからなくなった。前作の戦闘の最大の問題点であったテンポの悪さが改善、それどころか軽自動車がスポーツカーになったくらいのハイスピードテンポに。
    • 敵味方が入り乱れガンガン行動するようになったので、恐らくプレイヤーが最も戸惑う箇所。このテンポに慣れるまでは思考や操作が追いつかず、かなりきついように感じるだろう。しかし、システムをしっかり踏まえて予測を立てて行動すれば、すぐに慣れる。
    • このテンポの速さはそのままテクニック性と緊迫感を増大させた。味方が一方的に押している展開でも判断ミスによっては数十秒で逆転されかねないスリリングな戦闘になった。
  • パーティーバランスが調整された。
    • 前作では仲間の数は6人いたが、今作では半分の3人に減っている。しかし単純な劣化ではなくキャラクターごとの強さのバランスがよりとれている。
    • 安定した性能の主人公サギ、必殺技が強力だが耐久性が低いギロ、攻撃力は低めだがコンボ数を増やす性能に長けたミリィの3人。
    • 前作のリュードのように他の仲間に比べて明らかに使いづらい性能のキャラがいないためキャラごとのバランスはより洗練されたといえる。
  • 前作に引き続き派手な戦闘エフェクト。
    • 戦闘テンポに合わせるために一つ一つのモーションやエフェクトは短いが、これらがコンボになって積み重なるとやり過ぎなくらい派手に攻撃が繰り広げられる。
  • 実際にプレイしてみないと操作感覚がつかみづらいが戦術性、テクニック性、デッキ構成の重要性、運の要素などカードゲームの利点とRPGのリアルタイム戦闘の利点をハイレベルに組み合わさったものに仕上がっており、一度はまってしまうと非常に中毒性がある。
  • 問題点としては、慣れが必要な戦闘システムにもかかわらず、チュートリアルが短く、ゲームを開始してすぐに3人パーティーになるため慣れない内から操作の忙しさが増してしまうこと。加えて、3人になってすぐに戦うボスは強敵であるのが更にプレイヤーを苦しめる。しかし、ここさえ突破できれば戦闘に慣れてきたといえるだろう。

賛否両論点

  • 戦闘システム上ある程度は仕方ないのだが、仲間の数が減ったことを不満に思うプレイヤーも少なくない。
    シナリオや必殺技といったボリュームにも影響しているため、いずれに比重を置いているかで評価も変わってくるだろう。
  • 連動特典として前作のセーブデータが入ったメモリーカードか2周目以降でプレイをすると、ニハル砂漠である人物から「こころの器」というマグナスが入手できる。
    これは持っているだけで精霊値を上げる効果を持ち、精霊値は高いほど戦闘で有利なマグナスが引きやすくなるため非常に強力な物である。
    • しかしながらこのイベントそのものが一切ノーヒントであるため、もし前作のデータを消していたら存在自体に気づけない。後者の周回プレイでも「前回は何も無かったから行かなくていいだろう」と先入観で見落とされがち。
    • 前作も同様だが精霊値は確認する方法がなく隠しステータスに近い。マグナスのテキストからはその効果も伝わりにくく不親切さが目立つ。
    • このマグナスを渡す二人は前作では重要なキーパーソンな上、こころの器に至っては物語の根幹に関わる存在と言っても過言ではない。にもかかわらずイベント自体が非常に簡素。ボイスも用意されず、サギ達にも用途が知らされないままの幕引きと煮え切らなさが残る。

問題点

致命的なバグの存在。
本作はバグが多く、中にはゲームの進行を妨げるものまである。
ここではその中で最も致命的かつ発生しやすい、通称「ヌンキ渓谷*1バグ」について紹介する。

  • このバグは「ある状態でセーブすると、そのセーブデータがロードできなくなる」というもの。こうなってしまうと、もしバグが発生していないセーブデータが無い場合は最初からやり直すしか無い。
  • その状態というのが「ヌンキ渓谷のセーブポイントがあるマップのとある敵を倒した(敵シンボルが消えている)状態」というものである。前作・本作共にシンボルエンカウントの作品で、敵を倒した状態でセーブするというのは珍しいことではない。
    • また、固定のセーブポイントでセーブを行うタイプの作品であり、街以外のマップでセーブポイントがある場所というのは、ほぼボス戦がすぐ先に控えているマップと言ってもいい。このため、セーブポイントを見つけたらセーブして先へ進むプレイヤーが多い。
    • このような作り自体はプレイヤーに優しい設計なのだが、今回はそれが仇となってしまった。
  • 以上の理由から、致命的なバグでありながら発生してしまったプレイヤーは少なくなかった。
    • 対策としては、そのマップでセーブを行わないようにするか、マップを切り替えてシンボルを復活させた状態でセーブすればよい。
    • メモリーカードの空き容量に余裕が有るのならば、ゲームの進行度合いにあわせて、セーブデータを複数作成しておくことを推奨する。
  • その他にもイベントがループしてしまうバグ等、様々なバグがある。詳しくはこちらにまとめられているので、プレイする際は十分に注意してほしい。
  • 2015年末までは幾つかのバグが修正された修正版のディスクと交換することが出来たが、2016年現在は終了している模様。
  • 2023年にNintendoSwitchでリマスターが発売されたが、修正版でも残ったバグはリマスター版でも同じように発生する。
    • 新たなバグも発生しているが、いくつかのバグはアップデートで修正された。

シナリオ

  • 負けイベント(戦闘)が多い。
    • その時点でのHPでは耐えれないほどの攻撃をされるといったものではなく、ある程度ダメージを与えると、敵がパーティ全員をダウンさせる技を使ってきて、自動的に戦闘が中断するというもの。こちらが押していても、戦闘後のイベントでは劣勢になっているので、プレイヤーの心理との乖離が大きい。
    • 負けイベントがあるゲーム自体は少なくないが、本作はイベントの回数が多い。設定面でその時点では勝つことが出来ない理由付けがされており、中盤のある場面でそれが明かされ、その後は倒せるようになるものの、プレイヤーにとっては回数の多さに気分が盛り下がってしまう。
    • ようやく倒せるという点に爽快感を感じるプレイヤーもいることは確か。
  • 中盤までのテンポが悪い。
    • 前作でも同じような問題があったが、今作は更に悪くなってしまっている。
    • 序盤は各大陸を回ってストーリーが進行していくが、どの大陸でも基本的な流れは同じであるため少々マンネリ気味。とはいえ主体的に各大陸を回っていた前作と違い、今作は部下として指示を受けて各大陸へ赴くといった流れになっているため仕方のない部分はある。
    • 上記の負けイベントもこのテンポが悪い期間に起こるため、余計に印象が悪くなりやすい。
  • とある敵に関しての描写が少ない。
    • その時点までに登場したキャラとは明らかに異質な存在でプレイヤーの印象に残るのだが、そのキャラの目的や動機に関する描写が少なく、結局何をしたかったのかが分からない。
    • 物語上で重要な役割・設定を担っているため、もう少し描写が欲しかったという声が多い。

戦闘面のテンポの悪さ

  • シンボルエンカウントの問題。
    • 前作でも問題であったバトルスピードこそ大幅に改良されたものの、戦闘そのものもテンポアップしたとまでは言い難い。何故なら、シンボルエネミーが非常に好戦的になっているからである。前作ではただうろついてるだけで戦闘自体が回避しやすい敵も多かったのだが、今作では足も速い上に通路に陣取られたら回避はほぼ不可能という展開も散見する。集団で接近されやすい配置も増えており、そうなると半ば強制的に連戦を余儀なくされる。
      • それだけに逃げるにも「逃走」のマグナスを引かないといけないのが前作共通のままは非常に残念。
  • ザコ戦でのメリットの減少。
    • 上記の通りエンカウント回避に慣れていないとひたすら戦闘をしないといけない上に、戦闘報酬にそこまで旨みが無いというのも難点。今作で強力なマグナスはボスを除く戦闘以外で入手する機会が多い。経験値稼ぎもスムーズに連戦ができ、景品と交換できるポイントも集まる闘技場の方が効率が良い。システム調整のためにユニークマグナスというザコ敵独自のメリットを廃止したことも裏目に出るという皮肉な結果になってしまった。

総評

販売状況や製作環境が不遇に見舞われ、売り上げはいまいちで、ゲームとしてもバグという致命的な欠点があるため100点満点とは決していえない作品。しかしそれ以外の完成度は高く、素晴らしい出来であることは間違いない。王道的なシナリオや戦闘システムに飽きた方に是非お勧めしたい作品である


余談


その後の展開

  • 2023年2月9日配信の「Nintendo Direct」において本作及び前作のリマスター版をカップリング移植したNintendo Switch用ソフト『バテン・カイトス I&II HD Remaster』が発表され、2023年9月14日に発売された。
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最終更新:2023年12月12日 22:18

*1 ヌンキ渓谷というのは、ストーリー中で訪れるマップの名前である。