みつめてナイト

【みつめてないと】

ジャンル 純愛シミュレーションゲーム
対応機種 プレイステーション
発売元 コナミ
開発元 コナミコンピュータエンタテイメント東京
レッドカンパニー
発売日 1998年3月19日
定価 6,800円(税抜)
廉価版 コナミ ザ ベスト
1999年11月25日/2,800円
判定 良作
ポイント 一部選択肢やその反応はバカゲー色強めだが…
攻略の難易度がやや高め
ギャルゲーらしからぬシナリオは賛否分かれる
レッド・エンタテインメント開発ギャルゲー


概要

ギャルゲーブーム末期に『ときめきメモリアル』(以下、『ときメモ』)のコナミと『サクラ大戦』のレッドカンパニーによって制作された作品。
双方のエッセンスが端々に垣間見える作品であり、個性が強く人を選ぶ要素が強いのが特徴となっている。

内容

  • プレイヤーはドルファン王国にやってきた東洋人の傭兵として、戦いで手柄を重ね聖騎士の称号を得たり女の子との仲を深めたりする。
    • このゲームを語る際によく出てくる「東洋人」というのは主人公のことを指す。
  • 兵士養成所で体を鍛えて戦争を戦い抜き、時には国内の事件を解決して武勲を立て、傭兵としての給金や バイト代 で街に出て女の子と出会いデートを重ね、時には収穫祭やスポーツの祭典に参加し、教会で神父から女の子の恋愛度や不満度を聞き奔走するなど、割とフリーダムな3年間の傭兵生活を送るもの。
  • 自己育成のコンセプトや基本的なシステムは『ときメモ』を踏襲。『ファンタジー版ときメモ』と呼ばれることも。
    • キャラごとの連続イベント、クリアフラグの存在など、同作と比べストーリー性に比重を置いた作りになっている。
  • ヒロインは貧乏少女や12歳少女、馬車の御者にパン屋の娘にナースにウェイトレス、果ては王女に敵のスパイ、謎の科学者や 未亡人 など個性豊かな全16人。
  • ギャルゲーには珍しい近世(15~19世紀)ヨーロッパ的な世界観。劇中の広報誌「ウィークリートピックス」で、国内情勢について詳しく語られており、世界観を広げることに一役買っている。
+ 個性的なヒロインたち
  • ソフィア・ロベリンゲ(CV:小西寛子)
    • ドルファン学園高等部の学生。元騎士団の父親が貴族から多額の借金を抱えているため、バイトで家計を助ける心優しい少女。仕事で出会う場所が3kな所ばかり。
    • 借金を盾に貴族の三男と婚約させられているが、舞台に立って歌を歌いたいという夢を持っている。
      • ちなみにその三男坊はお約束のごとく気障で厭味ったらしい性格(なのだが、内情を知ると哀れみすら覚える)
  • ハンナ・ショースキー(CV:岡田加奈子)
    • ドルファン学園高等部の学生。スポーツ万能でボーイッシュなボクっ娘。
    • リンダとはスポーツで自他ともに認めるライバル関係だが、まだ勝てたことは一度もない。
  • ロリィ・コールウェル(CV:桑島法子)
    • ドルファン学園中等部に通う、12歳の少女。レズリーをお姉ちゃんと呼んで慕っている。
    • 夢見がちで、将来の夢は王子様に迎えに来てもらうことだというように、年齢よりもかなり幼い性格。
  • レズリー・ロピカーナ(CV:岩男潤子)
    • ドルファン学園高等部の学生。無愛想で人付き合いが苦手だが、ロリィのことは可愛がっている。
    • 両親が地方都市に赴任中のため、一人暮らしをしている。その寂しさをロリィを可愛がることで埋めている節がある、のだが…。
  • リンダ・ザグロイド(CV:根谷美智子)
    • ドルファン学園高等部の学生。財閥の令嬢で高飛車な性格だが、頭脳明晰・スポーツ万能と性格以外は非の打ち所がない。
    • ザグロイド財閥は彼女の祖父が一山当てて一代で築き上げたため、政財界や貴族からは成金扱いされており、高い能力はそれを跳ね除ける為に身に付けた努力の人。
  • ライズ・ハイマー(CV:冬馬由美)
    • ドルファン学園高等部の学生。何事にも淡泊で掴みどころがないが、ふとしたはずみで鋭い視線を見せることもある少女。
      • その反動で好感度が上がった時のデレっぷりに関してはファンが多い。
    • とある理由から真夏でも常に手袋を嵌めており、外そうとはしない。また、同じ理由でビーチへのデートはたとえ海水浴(夏)でなくとも決して誘うことができない。
      • 余談だがこの影響からか『みつめてナイトR』では他のヒロインに比べて彼女の水着コスだけは異様に条件が厳しい。
  • キャロル・パレッキー(CV:西村ちなみ)
    • レストランで働くウェイトレス。底抜けに明るく、とにかく楽しければそれでいいという性格。
    • イベントを進めると城のメイドに転職するが、主人公の側にいたいからというのがその本当の理由。……主人公は騎士ではなく「傭兵」なので、城に行っても滅多に会えないのだが。
    • 悩みもなく気楽に過ごしているように見える彼女もまた、この時代で懸命に生きる一人の人間。
  • スー・グラフトン(CV:水谷優子)
    • パン屋の娘でとにかく結婚願望が強いが、理想が高く、その理想を男に強要するためすぐ振られてしまう。
    • 自己中心的でエゴの塊のような人物であるが、それだけにこのゲームのテーマ(後述)にのっとった人物。
  • ジーン・ペトロモーラ(CV:新山志保)
    • 乗合馬車の御者を務める男勝りの女性。出身はドルファンではなく永世中立国のスィーズランド。
    • 見た目や言葉遣いとは裏腹に動物好きで思いやりのある優しい性格。
  • テディー・アデレード(CV:長沢美樹)
    • ドルファン国立病院に勤める看護婦。持病により少し体が弱い。
    • 少々潔癖症で生真面目なので冗談が通じないことが多い。
  • クレア・マジョラム(CV:井上喜久子)
    • 傭兵部隊の指揮を任された正規軍人であるヤング大尉の妻。ヤング大尉は主人公が参戦した最初の戦いで戦死し、その後に未亡人となった彼女と知りあう。
    • 自分が歳上であり未亡人であることを気にしているので、他に好感度の高いヒロインが一人でもいると身を引いてしまう。
  • セーラ・ピクシス(CV:皆口裕子)
    • 王女の従姉妹になる名家の令嬢。心臓を患っているので外出もままならない、まさに世間知らずの箱入り娘。
    • 彼女とだけは通常のデートをすることは不可能で、毎月第3日曜日の家庭教師という形で付き合っていくことになる。
  • プリシラ・ドルファン(CV:今井由香)
    • ドルファン王国の第一王女。王女に相応しいレディで、積極的に民間を慰問するため、庶民からは非常に人気がある。反面、城内の評判は微妙。
    • しかしその実態は、お忍びで街に繰り出すのが大好きという脳天気なお転婆娘。慰問も庶民の暮らしに興味津々というのが本音らしい。
  • メネシス(CV:永島由子)
    • 「化学の開祖」と呼ばれる人物を師に持つ研究者。しかしその格好は怪しげなローブ姿でどう見ても魔法使い(あえて言えば錬金術師)。
    • 化学の発展以外のことに興味はなく、森林区の奥のラボから滅多に外出することはない。そのためデートで誘えるのはラボか森林区に限られる。
  • アン(CV:國府田マリ子)
    • 経歴一切不明の謎の少女。恥ずかしがり屋で本音を口にするのが苦手だが、恋に関しては前向き。
    • 何故か主人公の名前を知っていて、一途にアプローチしてくる。
    • 素直過ぎる上に怒らない。
  • ノエル・アシェッタ(CV:山崎和佳奈)
    • これまた素性不明の謎の女性。お色気たっぷりで主人公に迫ってくる。
    • 主人公のことに関しては妙に詳しい一方で自分のことに関してはほとんど話そうとしない…が、その容姿や自己紹介の出オチで、ほぼバレバレである。

評価点

  • ノベル形式ではない恋愛SLGとしっかりとしたストーリーを組み合わせるのは難度が高いが、フラグ進行も非常に丁寧に組み合わされていて、ドラマチックに仕上がっている。
    • 登場人物(ヒロインのほか各種サブキャラクター含む)の人間関係が、仕事や個人的なつながりから国家間の陰謀レベルまで含めてさまざまに入り組んでおり、世界観を広げている。一度攻略したことのあるキャラクターでも次周以降のプレイで「あのキャラとあのキャラに交流があったのか」など、意外な接点が発見できる。
    • 人物相関が込み入ってることもあり、一部「このキャラの攻略になんで別のこのキャラのこのイベント見てないとダメなんだ?」と言う理不尽なものもあるが。
  • 『通称(いわゆる称号)』を集めると言う、やり込み要素。通称にはコマンドの成功率上昇などの効果があったり、一騎討ちで使える必殺技を覚えられたり、次周のプレイを助けるドーピングアイテムを入手出来たりする。
    • 獲得できる通称は108種類にも及び、中には1プレイで1種類しか獲得できない系統や、条件的に両立が困難または不可能なもの、ノーヒントで特定の条件を満たした上でランダム発生するイベントを見なければならないものなどもあり、コンプにはゲームシステムに対する深い理解と多大な時間が必要となる。
    • 『ときメモ』では、自己満足のレベルだったレアイベントなどを回収するモチベーションとなっている。
  • 休日に教会で「己のために祈る」と、それだけで全ヒロインの不満度が半減する。このため『ときメモ』と違い、爆弾処理に悩まされることが少ない。
    • 爆弾というのは、ヒロインの不満度が限界まで募ったときに他のヒロインへ悪評を流され、連鎖的に評価がガタ落ちしていくシステムのこと。『ときメモ』では各ヒロインへ直接会いに行くくらいしか不満度を下げる方法がなかったため、多数のヒロインと出会っていると処理が大変だった。
    • 本作でもシステム自体はほぼ引き継いでおり、不満を爆発させたヒロインが出ると人間関係がこじれて行くほか、爆発させた時点で騎士としての名声も下がる。不満度だけなら教会で一律に下げられるが、不満爆発の状態そのものは直に会って謝罪するまで解消されない。怒らせたままの状態では、下げた不満が再び募っていくのも早くなる。

異様なまでに力の入ったデートイベント
一枚絵付きで「イベント」扱いされているイベント数こそ少ないが、実はデートイベントのバリエーションがとんでもなく豊富。

  • 主人公は週末や祭日を迎えるたび、街へ繰り出して顔見知りの女の子をデートに誘うことができる。
    • 誘い方としては「その場で誘う」か、「後日の約束を取り付ける」かを選べる。その場で誘った方が効率はいいが、デート先はヒロインのいた場所の近所に限定される。約束を取り付けるなら場所を自由に選べるかわり、デート自体はまた別の休日となる。もちろんのこと、約束したデートをすっぽかすと大変に嫌われる。
      • 普通はすっぽかさないと思うだろうが、主人公は傭兵であるため戦争に召集されたり、負傷して強制的に入院させられたりといった学生とは一味違うハプニングにも見舞われる。デートの日であること自体はきちんと教えてもらえるので、うっかり忘れる心配はない。
  • デートに誘える観光スポットだけでも相当な数がある。ビーチや駅、遊歩道にカフェといったありがちなものから、ダンスホールにゴンドラ乗り場、神殿跡といった異国情緒の溢れる場所、砲台群に城門、墓地などという戦場の臭いを色濃くした場所まで。
  • ヒロインごとに好みの場所・嫌いな場所が設定されており、好みな場所でないと誘っても断られやすい。ただし大半のヒロインは、すべての場所へと連れだせる。断られやすい場所こそあっても、「必ず断られる」ような組み合わせは稀。
    • ごくごく一部、特定の場所を必ず拒否するヒロインもいる。また一部、そもそも出歩くことのないヒロインたちもいて、彼女らとは特定の決まった場所でしか会えない。いずれも限定的な例外だが。
  • どこへ行っても、必ずその場所独自の会話が用意されている。季節や好感度により会話の内容が変化するほか、同条件で同じ場所を訪れた際にも複数のパターンがある。
    • これに会話の三択までが加わるのだから飽きさせない。選んだリアクションによっても当然のこと、その先の展開が変化する。
      • 同じ会話の同じ返答に対しても、女の子側の好感度によってさらに違った反応が返ってくる。出会ってすぐの頃なら嫌われたような選択肢が好かれていると喜ばれたり、逆にかつてだったら評価された応対でも交際が進んでからだと不満を覚えられたり。
    • 攻略重視で「好かれる」特定の行き先ばかりを選んでいると、さすがに同じ会話の繰り返しも増える。世界観を、もしくはヒロインとの交流を存分に楽しみたければ、様々なスポットへ連れ出してみよう。
    • 相手が好まないような場所でこそ、意外な一面や世界観の作り込みを垣間見せてくれることも多い。「墓場」などは誰からも好まれていないスポットだが、戦時ということもあり、場所柄上かなりシリアスな会話が発生する。

深く重いドラマ要素
表面的な可愛らしさに反し、背景となる世界観は非常にシリアス。

  • 仮想ヨーロッパの暗黒時代が舞台となっており、ドルファンはもちろん、周辺諸国の情勢も不安定である。
    • ドルファンは隣国の侵略の脅威にさらされ続けている小国家だが、上級貴族による政治の専横、一部貴族と大財閥との癒着、騎士団の腐敗などで国力は衰退しており、情勢は決して明るくない。
  • 主人公の所属する傭兵部隊が戦場で勝とうが負けようが戦局そのものは一切変わらない。たとえば王城防衛戦で主人公が負けても、「親衛隊の活躍で守りきった」という扱いになる。
    • 戦局には影響しないものの主人公の評価や称号、一部ヒロインの攻略フラグには関わるため、戦闘の勝敗そのものは大事。ルートによってはその後のストーリーに影響することもある。
  • 戦争パートでは敵将視点でストーリーが進み、ドルファンが勝利した場合も後述の事情により、勇壮なマーチではなく悲壮な曲が流れる。
  • 敵傭兵団ヴァルファバラハリアン団長・破滅のヴォルフガリオは過去(上記の上級貴族の専横が関わっている)に囚われ、勝てる見込みがない戦争に参戦した。 そのため、この傭兵団の末路は悲劇的である。
    • まず、元々は13人(十三騎将)いたのだが、本編が始まる前のシベリア遠征で多大な被害を負い、5人の将を失っている。
    • 加えて、ヴァルファバラハリアン幹部「八騎将」の内一人は正体不明のまま行方をくらませており、更に一人は縁を切って別の勢力に雇われている。それゆえ、攻略ルート次第では「八騎将と名乗っていたのに6人(場合によっては5人)しか出てこないぞ?」ということもある。
      • 問題の2人と戦うにはそれぞれ関係するヒロインのルートを進める必要がある。
      • なおヴァルファバラハリアンに残っている傭兵達は事情を知らず「腑抜け相手に百戦錬磨の俺達が負ける訳無い」*1程度のつもりである。そもそも八騎将でさえ裏事情を知っているのは半分(軍団長と軍師と行方をくらませた2人)しか居ない。
    • 八騎将たちには裏設定も含めそれぞれに重い背景があり、「出来れば倒したくない」と思うプレイヤーもいた。
      • 場合によっては、特定の2人だけは殺さずに生かせる可能性がある。
  • 脚本担当の田村純一氏は攻略本のコラムで「 16人のヒロイン中精神的に健康なのは一人だけ 。他のみんなは歪んだところを持っています」と語っている。ドラマが重くなるのも当然だろう。
    • このゲームのテーマは「明日を夢見て」というものだが、その裏には「人間とはなんてエゴイスティックなんだろう」というものがあるとのこと。

バカゲー要素

  • タイトル。実際の内容はかなり重い世界観であり、タイトル詐欺に近い。
    • 「悪い点・恥ずかしい(買いづらい)タイトル」と言われがち。 『ときメモ』も似た様なものだが、あちらは最初からポップな世界観である。
  • 前述したとおり、週末には女の子を誘いデートに行くことができる。そして『ときメモ』同様、お約束の3択を選ぶことになるのだが……。
    • ふざけた選択肢が多数まぎれこんでいる。
    • ヒロインが死亡するなど、 冗談ですまない(どころか殺人事件的な)イベントも多数。
      • 建物倒壊に巻き込まれたヒロインを「見なかった事に*3。見捨てずに病院に連れて行くも輸血用血液が足りない「貴方の血液型は?」「アダムスキー型」。
      • 水嫌いのヒロインと海でデート「足がつった(迫真の演技)」、それを聞いたヒロインが助けようとして逆に溺れるのを見て「見なかった事に」のコンボ。
    • いずれも、見るからに地雷な上にメリットはほぼなく*4、普通に攻略していく上ではまず選ぶことはないネタ選択である。
      • しかし、これらの選択肢に好反応を返してくるヒロインがいたりするあたりが、この作品の一筋縄ではいかない所である。
    • 前述の通り、選択肢によっては主人公(プレイヤー)もまた「エゴイスト」な人間になれる。
  • 現代に近い近代(確実に20世紀レベルの技術で作られた外洋客船でドルファン入りしたり、港には大型の大砲が設置済み)なのに、入隊時の隊長の挨拶が「この国では銃は使わん。銃に頼っていたものは泣きを見るぞ」と言われ、三すくみの外にいる最強部隊の工兵は雷雲を召喚して攻撃するというモロ魔法使い。世界観ぐちゃぐちゃと見るか、魔法が科学に押されていると見るかで、評価が割れる。
    • ただし世界設定上では「この世界に魔法や奇跡といった要素は一切存在しない」と明確に定められている。
      • 兵種も「工兵」とあるので、見た目だけがあれであって、実際の戦法は現実のそれに当たる方法かもしれない。
    • 大砲と銃に関してはヒロインの台詞に「銃火器を否定しているわりには、こんな大砲を設置しているのね」とその矛盾を指摘しているものがあり、ゲーム中に軍に銃の配備が決定するなどむしろ「世界観を重視した結果」そのような描写になっているというべきである。
  • 傭兵で給料も貰っているのに、学生並みの長期休みがありアルバイトもOKという緩い軍隊*5。『ときメモ』ベースだから仕方ないが。この辺のつじつま合わせは、後述にある外国人排斥法について参照してみよう。

賛否両論点

鬱ゲー要素

  • ポップな題名に反して鬱ゲー要素が多い。とくにベストエンディングがバッドエンドなヒロインが存在する。
    + ネタバレ
    • 現実にはいない存在なので消滅という、ベストエンディング(?)を迎えるキャラクターが二人いる。
      • その一人は素性などに大きな謎を残したまま(推測はできる)、消えたくないと叫びながら消滅する。
      • もう一人は「自分は(個体として存在できる程の命をもらいながらも)人間とは違う存在であり、主人公が自分と付き合い過ぎて人間社会(つまり現実)を全否定したり捨てたりしないよう、ここで別れるべき」という、ギャルゲーを自虐したメタ描写、開発者からのメッセージとも取れる展開があり、多くのギャルゲーマーを絶望させた。
      • ただしこの2人には、強烈な共通点がある。形は異なるが、どちらも攻略の初期時点で「別のヒロインとの特定のイベント中、非常に不実な態度を選ぶ。仲良くなったヒロインとの縁を敢えて切る」ことがEDにたどり着くための前提。始まった時点から、既にボタンの掛け間違っている関係なのだ。
        • もっとも二人のうちの一方は、不実な選択をしていなくとも普通に遭遇できる人物。特殊な出会い方をしなければ絶対に攻略できないという、その仕込み自体が賛否の分かれるところだろう。もう一方は、イロモノとも取れる容姿と性格、出会いの展開に初見は驚くだろう。
    • 別のヒロインの1人はエンディング間近で主人公と決闘する展開があり、主人公勝利後選択肢次第で自害する。もちろん正しい選択をすれば救うことができるが、好感度が低ければ選択肢すら発生させずに自害する。
    • 他のヒロインでも「親が懇意にしていた政治家を爆弾テロで殺されて没落(しかも攻略条件)」「その爆弾テロに巻き込まれて死亡(条件を満たせば助かる。巻き込まれること自体は攻略条件)」「誘拐犯に殺される」「毒殺されかけて入院、面会謝絶(復帰無し)」「誘拐されたまま消息不明」「(サブヒロインだが)王家の闇を知る者として口封じに暗殺される」など、容赦が無い。
  • ゲーム開始から3年後、戦争の終結と同時に外国人排斥法が成立。東洋人はエンディング(叙勲の翌日)で国外追放される。例え 騎士の最高位である聖騎士に取り立てられていても 。バッドエンドの場合、主人公は1人(と1匹?)で国外へ発つ。
    • しかし、聖騎士の称号を受けた場合は旅立つシーンがきちんとあるエンディングとなり、BGMも専用のものが用意されている。BGMのおかげで哀愁が漂いつつも格好良く、人によっては「これこそが、このゲームの本当のエンディング」という声もある。
    • グッドエンドではヒロインの告白を受け主人公もそれに応じるものの、エピローグなどその後の描写は特にされない。ヒロインの中には国を出るのが実質不可能な人物もいるし、それ以外でも大半のヒロインが、その後の人生を主人公とともに歩むためには、家族やそれまでの生活すべてを捨てて国を出る必要がある。*6
    • そもそも自国の戦争を終結させるため戦っていた外国人傭兵を、戦争が終われば用済みとばかりに国外追放したのだから、再び侵略があった時には傭兵を雇用する事もできずドルファン王国は確実に滅ぶ、と指摘する声もある。
      • 傭兵部隊は中盤以降から大幅に縮小されており、最終的にはほぼ正規のドルファン軍のみになっている。このため、傭兵は自軍の体制が整うまでのつなぎの策だったとも言える*7。このあたりの事情は「ウィークリートピックス」に載っているのだが、読まなくても攻略には支障がないので印象に残りづらい。
      • さらにドルファンでは排斥法の直前に銃の配備が決定しており、時代は銃を主体とした近代戦術に移り変わっていくものと思われる。そういう意味で、剣士としての傭兵たちの時代はもう終わっているのだから、国の未来に不安はないという解釈もある。どちらにせよ主人公にとってはやりきれない話だが。
    • 外国人排斥法が成立したのは、外国から安価な労働力が流入して自国民が失業することが背景にある。「ウィークリートピックス」には外国人傭兵が国民に乱暴を働いた等の記事も見受けられ、ドルファン側にも相応の事情があることは確認できる。
  • 回避可能なものならまだしも、不可避な鬱要素が多分に含まれることが、当タイトルが以前までクソゲーwiki(鬱ゲー判定)に掲載されていたことの一因にもなった。
    • 無論、ヒロインの命に関わるような展開は一部のエンディングを除き回避可能な「バッドルート」であり、グッドエンドではきちんと主人公と結ばれる。不可避の外国人排斥法も単なる鬱というわけではなく「全てを失ったが結ばれた2人。2人のその後は想像に委ねられる」という一種の王道エンド。
      • 特殊なエンディングとなるヒロインも含めてその後が一切描かれていないので、二次創作の幅は大変広い。
    • しかも、ヒロインによっては己の負の部分をぶちまけたうえでの告白となる。
    • 人によってはすっきりしない思いになることもあるが、これらは作品テーマである"希望"とのコントラストを生むための"闇"でもある。

歯ごたえのある難易度

  • 一部のヒロインとのベストエンドには、別の女性との交際中に発生するイベントの結果が必須となる。一見すると関係のなさそうなキャラクターだったり、本当に関係のないキャラクター同士のケースも。極度に難易度の高い数人のみではあるが、理不尽といえば理不尽。
    • 爆弾システムへの対策として登場ヒロインを絞る、本命以外の好感度を上げ過ぎない、といった『ときメモ』に慣れたプレイヤーが自然に行う行動が罠になっているあたりが実に嫌らしい。
      + ネタバレ
    • 特に条件が込み入っているイベントとしてゲーム終盤の爆弾テロイベントを例に出すと
      • このイベントに関わるヒロインは4人(詳細なネタバレを避けるためA・B・C・Dとする)。イベントを発生させるためにはAかC、どちらかの好感度が高くないといけない。
      • A・Bは爆弾テロを阻止しないと攻略できない。阻止するためにはAのルートでイベントを起こし、自分で爆弾を解除するかBの好感度が高いか(こちらがBの攻略条件)のどちらか。
        • つまりBを攻略するためにはAの好感度も十分高くないといけない。しかもこの二人、普通にプレイしていては接点などまったくない二人。
      • C・Dは爆弾テロを起こさないと攻略できない。Cの攻略のためにはCルートでイベントを起こす(イベント発生時点ですでに爆弾テロ発生済み)必要がある。
        • Dの攻略にはAルートで阻止に失敗しても問題はないが、Bの好感度も高かった場合自動的に阻止されてしまう。さらにDも、A・Cどちらともほぼ接点はない。
  • 好感度だけならばどのヒロインも稼ぐのは比較的容易なのだが、同時に主人公のパラメータもエンディングの隠し条件になっていることがあり、条件を満たしていないとハッピーエンドに至れない。具体的な数値は攻略本などにしか表記されておらず、要求水準も全体的に意外と高い。そのため一部のヒロインは、具体的な数値を知っていてもハードルが高め。これに関しては、『ときメモ』時代からの伝統だったりするのだが。
    • 直前までいい雰囲気だったし大丈夫だろうなどと油断してると、容赦なくフラれる。繰り返すが好感度マックスでベタベタ甘々状態になっていようと、パラメータが足りなければフラれる。一見モブっぽいヒロインでもパラメータ条件はシビア。
    • 『ときメモ』プレイヤーにとっては常識に近いことなのだが、本作の「好感度」は何も考えずにただ高くすればいいパラメータではない。ある程度は意図して上げたり下げたりする必要もある、駆け引き要素の一端なのだ。
      本命一人に限れば上げっぱなしでも問題ないが、一点狙いのプレイ時ですらイベントを存分に堪能したければ「あえて程々を維持する」選択肢はあり得る*8。そして本命以外の好感度は、下手に稼ぐとむしろ足かせにすらなる*9
      そんな要素であるため、これだけだったら上がりやすくて当然である。他の一般的なギャルゲーと違い、好感度を高くすることそのものは、必ずしもゲームの攻略に直結していない。先述の通り、もちろん最終的に攻略する本命の好感度は、ゲーム終了時点で高めでないといけないが。
  • 部隊戦闘が、いわゆる三すくみのジャンケンで、相手のシャッフルを見切れる動体視力がないと、運頼み。スピーディで手軽と見るか、単調とみるか。まぁ、部隊戦闘は、負けても大抵は問題はないのだが。
  • 上記の内容に加え、一周がそこそこ長いため全ヒロインのクリアにはそれなりに時間がかかる。システムを熟知すれば複数人の攻略を並行して進めることもできるが。
    • 攻略が容易なヒロインはかなり容易であるが、難しいヒロインは本当に難しく、落差が激しい。

問題点

  • 訓練所における訓練の効率が悪い。
    • 傭兵の本分として作中では訓練所における訓練が推奨されるのだが、能力値の成長のみに着目してもアルバイトの完全下位互換に近い。おまけにアルバイトなら資金まで稼げる。アルバイトの解禁後は、訓練所に行く意味がほとんどない*10
    • 一つの訓練を集中的に行っていると、ゲームの後半から終盤あたりで必殺技を習得できる。これが数少ない訓練所特有の旨みだが、必殺技の利便性は苦労に見合うほどのものでないため自己満足的な要素に留まる。また一つの訓練へ相当に偏って専念しないと、ただ訓練所へ通うだけでは習得できないまま終わることも多い。
  • 「ウィークリートピックス」は奥深く設定された世界観と、快適なゲーム性を両立させることに一役買っているのだが、ログが一週間で流れてしまうため、見逃してしまった情報はその周回では二度と参照できない。
    • 困った事にドルファンの国内事情や他国の動向、発生した事件の結果*11などはほとんどこれが頼り。
      • 作り込みは素晴らしいので、1ヶ月分くらいのログが保存されていれば見返しやすくなったのではと悔やまれる。
    • 世界観や背景を深く知りたければまめにチェックすると情報が得られるし、軽く遊ぶだけならまったく無視していても問題がないのだが…。
  • デートイベントのCG回収が難しめ
    • この手のゲームではCG条件を探すのが難しいのは良くあることだが、このゲームの場合「特定の祝日のみ」「2年目の冬まで」「条件をそろえても発生がランダム」等、さらにこれに好感度やステータスの条件等もかかわってくる為、条件を調べたうえでも回収し損ねるレベルの物が多い。

総評

『ときメモ』で一定の完成を見たシステムを土台に、細部まで作りこまれた丁寧な世界観が展開される良作。当時の雑誌などでの評価は全般的に良好であった。

しかし、ルートによってはヒロインの死亡もあるシリアスな鬱要素などが、『ときメモ』のようなポップな王道ギャルゲーを期待していた層を中心に不評を買っており、最低のギャルゲーという評価を下す者も存在する。
一方で、ストーリーそのものは、各ヒロインたちが抱えた大小様々な困難や、完全なハッピーエンドとはいえないエンディング、主人公の戦いが大局的な趨勢そのものには直接影響しない戦争など、時代が大きく変わる節目において抗えないうねりに翻弄されながらも必死に生きる主人公とヒロインたちの物語でもあり、その作風を受け入れられることが出来たプレイヤーの中には、最高のギャルゲーと評価する者もいる。

設定面をピックアップすれば、主人公は傭兵として国を訪れただけであるため、積極的に恋愛に取り組む理由は無いと言えばない。「女性陣に脇目も振らず、傭兵として全力で生きる」のも本作のゲームの取り組み方の一つでもあり、そのようにプレイしないと到達できないエンディングも存在するという作りになっているあたり、プレイヤーが抱くギャルゲーのイメージと、制作側が目指していた作品の在り方に一定の開きがあったこともうかがえる。

質そのものは十二分に良作足りうるが、王道的なギャルゲーのカラーから逸れた異色の作風を肯定できるか否かによって、賛否が分かれる。
現在ではヒロインの死亡展開を含んだバッドエンドの存在するギャルゲー自体は珍しくないことを考えると、時代を先取りしすぎたゲームと言えるのかもかもしれない。


その後の展開

  • ドラマCDが全四巻で展開した。
    • これはストーリーの中核を担うヒロイン・ライズを主人公としたもので、ゲームで説明不足だった部分を補足する内容になっている。ゲームでは悲劇的に描かれていた敵軍ヴァルファバラハリアンに対しても筆を加えており、評価は高い。
  • 翌年、RPGとなった『みつめてナイトR 大冒険編』が発売されるも、セールスは振るわず、シリーズはここで立ち消えた。
    • キャラクター以外共通点のない完全にパラレルな内容であったこと、またそもそもRPGとしてのシステムがなっていないことが問題点として挙げられる。だが、ファンからはキャラゲーとして(およびバカゲーとして)人気ある作品となった。
    • こちらも一見明るい雰囲気と思わせておいて、陰惨な設定や異常な台詞などが散見される点は本家と似ており、鬱ゲー(バカゲー)としてのスペックは本家を大幅に上回っている*12
    • ストーリーもまた一見ライトな王道RPGのようでいて、その実かなり凝った仕掛けがあり、1周目・2周目・3周目で終盤の展開が大幅に違う。特に3周目はプレイヤーの選択次第でかなりダークな展開になる。
  • 現在、版権の関係で、リメイクはおろかゲームアーカイブス化の話すら立っていない。
    • 版権の問題のみならず、メインヒロイン・ソフィアの声を2000年に突然声優を廃業した小西寛子氏が担当していたため、面倒な状況にある。また、出演声優のうち何名かはすでに亡くなられているため、当時のキャスティングを再現するのは不可能である。
  • pop'n musicシリーズの15作目で、どのヒロインとも結ばれず、かつ高い評価を得て最高位である聖騎士になった場合のエンディングのBGM「The Man From Far East(~聖騎士のテーマ~)」が収録された(カッコ内は原曲についた副題)。
    • 本作にサウンドディレクターとして関わっていたのはポップンシリーズのサウンドディレクターであった村井聖夜氏であり、公式サイトの楽曲紹介に「恋にウツツを抜かしていると、硬派な聖騎士にはなれないどころか、最悪は国家自体も危機に陥っていく恐れがあるという、「人生におけるジレンマ」が主たるテーマなのです」「(典型的なギャルゲーとして売り出そうとする上層部に対して)制作者サイドは逆にこの「聖騎士」になるという目的にこだわっていました」と書いている。
      • ちなみに、本来ならばBEMANIシリーズ以外のコナミゲームからのBGMをポップンシリーズに収録する際にはジャンル名やキャラクターを原作から登用するのが通例(クイズマジックアカデミー→QMA、がんばれゴエモン→ゴエモンなど)だが、このゲームのBGMはジャンル名もキャラクターも原作に関連しないオリジナルのもの。一応、コナミゲーム出典の曲として「コナミゲーム曲」シリーズのひとつに扱われているが、ポップン15の公式サイトでは「みつめてナイト」からの収録楽曲であることが村井氏の口から語られるに留まっており、他ゲーからの移植曲として大々的に扱われていたわけではなかった。本作のサウンドディレクションも担当していた村井聖夜氏繋がりでの収録と言うのが強いのか、本作がマイナー故か…。

余談

  • 劇中で3年が経過するため、最年少の12歳のヒロインはエンディング時では15歳、最年長である 27歳の未亡人は30歳に なる。ゲーム中20歳を迎えたヒロインが酒場(20歳未満は入場禁止)に入れるようになる以外、特にグラフィックやイベントに反映されるわけではないが。
    • なおゲーム開始時の主人公の年齢は、酒場に入れる事と、スー(22歳)から年下と言われる事から、20~21歳と推測される。
  • 特定のルートを通ることでミニゲーム「ブラックジャック」と「パズルでナイト」が解禁される。
    • 「パズルでナイト」は、『ときメモ』の「対戦とっかえだま」や「対戦ぱずるだま」の流れを汲むパズルゲーム。ヒロインのほか教会のシスターやお城のメイドなど、総勢19名からプレイヤーキャラを選択する。全キャラクターの性能に個性が付与されているなど、妙に凝ったつくりなのも『ときメモ』譲り。
    • なお、ゲーム中のボイスはすべて本編からの流用の為、どの場面でのセリフなのか探してみるのも一興である。
  • 本作ではヒロインから告白された後に 告白を受け入れるか否かを選択する という、ギャルゲーとしては異質な演出が盛り込まれている。断れば当然攻略失敗になり、他のヒロインとエンディングを迎えられる訳でも無いので攻略上のメリットは何も無いのだが、「硬派な外国人傭兵ロールプレイ」を許容している本作らしい演出と言えるだろう。
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最終更新:2023年10月25日 12:43

*1 外伝では雇い主側の正規軍を侮辱したうえで、剣を抜いた正規軍士官に対して決闘を挑まれたとして殺害している。当然謝罪は無い。

*2 これ以降該当ヒロインは出現しなくなるので、爆弾防止に登場ヒロインを絞ると言う意味では有効な選択肢ではある。

*3 実はこの選択をすると掠り傷のみで助かる。が「私を見捨てたひとでなし」として完全に縁を切られる。しかもこれ「二人して巻き込まれそうだったところをヒロインが主人公を突き飛ばして助けた」状況である。

*4 CGも無いので所謂CG回収にも影響が無い。

*5 副業を許可する代わりに傭兵としての賃金を抑え軍費を節約するという方針なのだろう。実際にゲーム内でも傭兵の給金だけでは生活が厳しい

*6 以前から留学等でドルファン王国を出ることを匂わせていたヒロイン、エンディング時点で全てを失っていて、頼れる人が主人公しかいない。主人公と一緒にいられるならば、ドルファン王国に未練は無いヒロインなどもいる。

*7 史実においても、自軍の体制が整うまでの期間を傭兵部隊で補うというのは、決して珍しい事ではない

*8 好感度の高さによって発生するイベントや、共通イベントへのリアクション等も変化するため。多数のイベントや反応を楽しみたければ、「様々な好感度の状態で」デートをした方が「初期以外ずっと高いまま」より面白かったりする。

*9 だからこそ、同時攻略がより困難になってもいる。

*10 疲労が少ない、伸びる能力が一本なので分かりやすいといった、細かい利点はなくもないが。いずれの利点もゲームに慣れるほど恩恵が薄く、有難味のないものになっていく。

*11 例えば前述の「暗殺されたサブヒロイン」は(騒乱罪での)逮捕まではプレイヤーが関わるが、口封じに公判前に暗殺されたらしい事(獄中で服毒自殺した事になっている)は「ウィークリートピックス」の記事でのみ確認できる。

*12 同作の主人公は「RPGで不幸な主人公と言えば?」という話になったときに、話題に出ることがよくある。