ルドラの秘宝
【るどらのひほう】
ジャンル
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RPG
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高解像度で見る 裏を見る
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対応機種
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スーパーファミコン
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メディア
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32MbitROMカートリッジ
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発売・開発元
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スクウェア
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発売日
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1996年4月5日
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定価
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8,400円
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レーティング
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【VC】CERO:B(12才以上対象)
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配信
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バーチャルコンソール 【Wii】2011年6月7日/800Wiiポイント 【WiiU】2015年12月2日/823円
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判定
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良作
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ポイント
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プレイヤーが自由に魔法を作れる「言霊」システム 複数の主人公が絡み合う先進的なシナリオ BGMやグラフィックもSFC後期の良質なもの 対象層の狭さや発売タイミングが災いしセールスには恵まれず
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概要
『バハムート ラグーン』と並び、スクウェアのSFC末期を代表するRPG作品のひとつ。
開発は『時空の覇者 Sa・Ga3 完結編』、『ファイナルファンタジーUSA ミスティッククエスト』を開発したスクウェア大阪が行っている。
スクウェアの自社開発作品に限れば、本作がSFC最後のRPG作品である。
後述の「言霊システム」が非常に特徴的であり、特有のオリジナリティを形成している。
『バハムート ラグーン』や『ライブ・ア・ライブ』に知名度は劣るものの、同時期のスクウェア単発RPGの傑作として同等の評価を得ている。
ストーリー
そこは4000年周期で覇権種族の滅亡・新たな種族の台頭が繰り返されてきた世界。
5番目の種族である人間族がこの世界の中心種族になってから後16日で遂に4000年目…。大気は汚れ、各地で滅亡の予兆が起こっていた。
そんな混迷を極める時代に人間として生を受け、異なる土地で異なる生き方をしていた4人の主人公達。
大いなる意思に絡め取られるかのように、「ジェイド」と呼ばれる宝石を多様な経緯で体に埋め込まれた彼等は、事件と野望が交錯する終末の世界を駆け巡る、人間族の存亡を賭けた戦いへと巻き込まれていく。
特徴・評価点
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言霊(ことだま)システム
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メニュー画面の「さくせい」より、カタカナの1~6文字の単語を自由に入力することで、
その単語が魔法としての効力を持ち運用できる「言霊システム」が本作最大の特徴である。
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完成する言霊の効能は一切のランダム要素無しに同じ文字列であれば必ず同じ効能の魔法が再現可能である。たとえば「ア」の一文字のみならば、雷属性消費MP1の単体攻撃魔法が必ず生成される。
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このシステムはゲーム開始直後から解禁されており、メニュー画面を開くだけでどこでも言霊作成が可能。
言霊の所持数32個の上限こそあるものの、作成回数制限やリソースを消費することは一切無く、最序盤から思う存分言霊作成を試行錯誤できる。
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修飾語の法則
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1文字でも言霊として成立するが、火属性はイグ、風属性はテオなどの基本言霊が存在し、それを基本語としてその前に文字を付け加える「修飾語」により更に強力にした言霊を模索する事もできる。
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例えば最初から覚えている「コントアク」がある。
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これは修飾語「コント」+基本語「アク」という組み合わせになっている。これは修飾語「コント」を組み合わせた事により消費MPが増えるものの効果値が上がっているという事を指す。
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試しに、「コントアク」と「アク」を撃ち比べてみよう。
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本作で登場する言霊は修飾語と基本語の組み合わせが殆どであり、修飾語は消費MPと効果値を変えるという使い道が殆どである。
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基本語の派生版
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基本言霊「イグ」にはその複数版「イグナ」が存在したりする。更にはランク上の「イグルス」と「イグムル」、「イグトーム」と「イグランデ」、「イグレクス」と「イグナテース」などは早い時期に覚えられる。勿論それ以上の基本語も用意されている。
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実際に使ってみると分かるのだが消費MPと効果値が上がって行くのは勿論、戦闘エフェクトも異なるものが用意されて力が入っている。しかも、修飾語で効果値を一定以上になるとエフェクトが3段階で演出が強化されて行くのも良い。
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ちなみに「イグナテース」は既に6文字でありこれ以上は修飾語を付ける余地がないようだが、実はそれを実現した方法があったりする。
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法則性に則るだけでなく、自分自身で独自に文字を追加して試行錯誤していくのも面白い。
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同社のファイナルファンタジーシリーズ、当時はまだ他社だったがドラゴンクエストシリーズに登場する魔法名を入れると、大筋で似たような効果が現れる場合も多い。
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例:
ベホマ
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(HP回復)
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エスナ
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(状態異常回復)
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リレイズ
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(味方単体へ自動復活の効果を付与)
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テレポ
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(戦闘から逃走・ダンジョンから脱出)
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パルプンテ
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(何が起こるか解らない)
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メガンテ
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(術者の命と引き換えに敵複数へダメージ)
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それ以外のゲーム(サガシリーズや女神転生シリーズなど)の魔法名を入れてみるのも面白い。中には意外と名前に見合った効果が現れる事も…
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ゲーム中では人に教えて貰ったり本を読んだり酒場のカクテルという形などである程度の言霊を知ることが出来る。
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カタカナ6文字以内なら敵が使ってくる言霊をそのまま使う事もできるため、自分自身の手でラーニングするような楽しみもあり、法則が解らなくても強力な言霊を使う事ができる。
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また法則性はプレイヤー自身が覚えていくものなので、システム的な継続要素は無いが、二周目以降は非常に有利な状態で始められる。
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SFC末期の作品のため、ドット絵中心のグラフィックは『ファイナルファンタジーVI』『聖剣伝説3』等と同様、完成度が高く美しい。
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戦闘中の味方キャラのアニメーションが非常に細かく、滑らかに動きまくる。戦闘に参加するキャラクター数も総勢12人以上と多く、キャラ別に全く異なるアクションを見せる。
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更に敵全種が、パーツごとに複数のスプライトを重ね合わせた多関節制御で、待機中・通常攻撃・魔法攻撃と多彩にグリグリ動く。中には特殊技・食らいモーションで別の動きをする物まで。
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それでいながら戦闘はスピーディに展開し、ストレスを感じさせない。
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物語の流れを「シオンの章」「リザの章」「サーレントの章」の3つの視点で追い、4人の主人公が並行して様々に絡み合うシナリオはなかなかに優秀。
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例えば、ある主人公のシナリオで雨が降る時は、同じ時間軸の別主人公のシナリオで何故雨が降ったのか原因がわかったりする。
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セーブデータは各主人公別に管理されており、最初の3人のシナリオはどのような順番で進めてもよい。
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一人ずつ順番に最初から最後までクリアしていくのも、同時進行で均等に少しずつ進めていくのも自由。
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シナリオの全体的な進行度の目安として、「経過日数」の概念が存在する。シナリオ進行に応じて、作中の世界の時間(日数)が経過していく。3人の主人公はいずれも、クリアまでに要する経過日数は同じ。
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3人の主人公の各シナリオクリア後、4人目の主人公の「終章」が開始され、4人の主人公が一堂に会しラスボスに挑む事になる。
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個性豊かな仲間たち。
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今作では人間だけでなく巨人族、ダナン神族、爬虫類族、水棲族など多くの種族がパーティメンバーとして加入する。
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各章のパーティ構成も大まかに、物理専門+万能軽装+言霊師+僧侶という構成へと落ち着くためどのパーティも大きく偏ることなくバランスよく割り振られている。
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笹井隆司氏が手がけるBGMは非常に高評価。
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『サガ3』や『ミスティッククエスト』でもフィールド曲、バトル曲が好評であったが、
今作では各主人公キャラ毎に、それぞれ異なるボスBGMとフィールドBGMが用意されている。
結果本作は、当時のRPG水準では類を見ない程の豊富な戦闘BGMが堪能でき、いずれの曲も非常に高い評価を誇る。
賛否両論点
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ほとんどの防具に属性が付いている。
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属性のある防具を装備すると、防具と同じ属性攻撃の被ダメージ減の耐性が得られると同時に、相反する属性ダメージ倍化の弱点も発生してしまう。
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ただしこの仕様によって属性を持った下位の防具が上位の他属性防具よりボスに有効であったりするため、下位互換にならず最後まで使用できるといった戦略性も生まれている。
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また別の反属性の防具を同時に装備すると、特徴が相殺され無属性になる。複数の属性攻撃を持つボスへの択になる。
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ストーリー上仕方ないことともいえるが、自由度が殆どない。なので『ファイナルファンタジー』のような感覚でプレイすると、非常に窮屈に感じる。
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ストーリーを進めると二度と後戻りが出来なくなる、という箇所が多い。空を飛ぶ乗り物で自由に世界を行き来したりはできないし、一度訪れたことのある街に自由にテレポートできる言霊なども存在しない。
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特に4人目のシナリオは全編ほぼダンジョン攻略しかやることがなく、寄り道などはできずフィールドに出たり街に行くといったことも不可能。
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パーティメンバーの人数は全部で12人以上もいるが、パーティを自由に編成することはできない。また主人公ごとにパーティメンバーはほぼ固定されており、途中で変わることはほとんどない。
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雨宮慶太によるキャラクターデザインは良いのだが顔が濃く、パッケージで人を選ぶ。
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作中で顔グラを拝む機会は、オープニング以降エンディングまでは無い。オープニングを飛ばす場合は、パッケージ絵を見ない限りエンディングまで見ることはないので、人によってはエンディングで突然ヒロインの濃い顔に衝撃を受ける事も。
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MPの最大値を増やすアイテムを無尽蔵に入手できる場所がある。
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ただしこれができるのは終盤の4人の主人公が合流してからのため、あえて設定した可能性もある。
問題点
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すっきり終わらないエンディング。
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ネタバレ
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最後にラスボスより強大な敵の存在が明らかとなり、やがてその魔の手が世界に迫る事、そして今のままでは主人公達でも太刀打ち出来ない事が明かされる。
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そもそもの話として、ラスボスが世界をこのような状態にした目的が「その敵に太刀打ちできる強い生物を生み出す」というものであった。
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ラストは主人公達が「もっと強くなってその敵から世界を守ってみせる」と決意する形で終わるので後味の悪いバッドエンドという訳ではないが、「全て解決して大団円」を期待すると少々消化不良感を抱えたまま終わってしまう。
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4人目の主人公に感情移入しにくい。
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4人目の主人公は、他3主人公のシナリオが終了し合流する「終章」で満を持して操作可能となる。終章以前の行動は他のシナリオで断片的に描かれたり、想像したり察する事はできるが明確な説明はない。
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にもかかわらず、合流後3主人公を纏める終章の主人公は彼であり、プレイヤーや登場人物的には「何度もこちらの邪魔をしてくれた盗人」でしかない。今まで脇役だったキャラが突然でしゃばって主人公面したという感想を持たれかねない。
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3人の主人公のうち最後にクリアした主人公以外の持ち物と言霊は引き継ぐことができない。
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一応「ヌーク」と呼ばれる行商に武器防具を売り付けると他のシナリオの主人公でそれらを買い戻すことが可能という、疑似預り所のような運用でアイテムの統合も可能ではあるのだが、
売りつけたものを買い戻す時の売値が異常なまでに高く、そしてヌークがどの町にどのタイミングで出現するかという条件が解明されていない(2018年現在)ため積極的な活用は難しい。
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3章のうちの最後にクリアした章以外の主人公2名は、自身の章のラスボスを倒した時点で装着していた装備品のみを引き継ぐことになる。
最終章とパーティーの武器構成が似通る魔術師系のサーレントの章から引き継ぐのが最も無駄がないが、戦士系のシオンの章でラスボスと相性が悪い最強の鎧をあえて装備して倒さなければその鎧を引き継げなくなってしまうので注意。
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各章のラスボスを倒した後に長いイベントがあり、次のセーブポイントまでが遠い。
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各章の終わりにはフィールドでのセーブが出来ず、ゲーム内で最後に立ち寄るであろう町「タラーク」の宿屋は店じまいのため中断も出来ずそのまま続行しなくてはならない。終章開始後にほどなくボス戦もあるので負けた際はかなり戻されてしまう事になる。
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空中飛行・海底潜航まで可能な乗り物はあるものの、決戦の地へ出立の前に各地の町を巡っての準備等はさせてもらえず、いくつかのイベントを経てラストダンジョン方面に強制的に進まされてしまう。
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終章は死地に赴きもう引き返せないという状況であり、道具屋は利用できるものの、ゲーム内で最後に利用する武器・防具屋も大抵はタラークの町の商店となる。
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クリティカル率に影響する「うん」、回復言霊の効果に関わる「やさしさ」という隠しパラメータが存在し、ステータス画面に表示されていない。
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これらの隠しパラメータが上昇する装備品も複数あるものの、装備しても何がどれだけ上昇しているかを攻略・解析情報無しに把握することはほぼ不可能。
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特に「やさしさ」の数値は戦局を大きく左右し、攻撃言霊の威力に関わる「かしこさ」の高いキャラで回復の言霊を使っても効果が薄かったりすることもあり、この仕様に首をかしげたプレイヤーも多かった。
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「言霊師」(他のゲームでいう魔導士)にあたるキャラのパラメータ成長や装備アイテムの設定に優遇感がある。
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「かしこさ」はもちろんだが、最終的に「つよさ」までカンストする程に成長する。このため、「つよさ」のみカンストするが「MP」や「かしこさ」の低い物理攻撃専門のキャラは、能力的に下位互換になってしまう。
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もちろん装備可能な武器の性能差によっては物理キャラのほうが通常攻撃力は高い。だが、それでもせいぜい数百ダメージくらいの違いにしかならない。それにもかかわらず、物理専門キャラは最強武器が大抵両手武器のため盾が装備できず、防御面が疎かになりがち。
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そして終盤のボス戦では物理防御力より魔法防御力が戦局を左右し、物理キャラの装備できる鎧は大抵が魔法防御が低いものが多いため盾を持たない場合は魔法への脆さが特に顕著となる。ちなみに言霊師の装備できる衣は魔法防御が高いため防御面でも有利。
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入手アイテムに関わる問題点
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例えば「オーガローブ」はデータ上存在するものの手に入れる事が出来ず、ラージローブが2着手に入ったりしている。他にも入手時期と性能がかみ合ってないアイテムも結構あったりする。
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余談にある通り、ガイドブックには載っていても設定ミスにより手に入らない武具が存在するが、とあるキャラは最強武器どころか2番目に強い武器すら設定ミスによって手に入らず非常に不遇な扱いを受けている。
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前述の物理専門キャラ不遇の要因のひとつである防御面の不安も、この設定ミスにより最強の片手武器が手に入らないのが原因。
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エンカウント率がやや高め。エンカウント率を減少させる言霊も無い。
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確実に逃走できる言霊に消費MPを減らす修飾語を付けて消費MP1に出来るので、それを使えば若干ストレスを軽減できる。
総評
並行する3人の主人公の物語と、文字の組み合わせが魔法になる言霊システムが斬新かつ面白い作品である。
全体的に少しクセはあるがゲームバランスも良好なので、斬新ながらも多くのユーザーに楽しめる作品と言える。
余談
最終更新:2024年04月20日 03:25