マリオペイント

【まりおぺいんと】

ジャンル お絵かきツール
対応機種 スーパーファミコン
メディア 8MbitROMカートリッジ
発売元 任天堂
開発元 インテリジェントシステムズ
発売日 1992年7月14日
価格 9,500円 (税別)
プレイ人数 1人
周辺機器 スーパーファミコンマウス専用
備考 スーパーファミコンマウス・マウスパッド同梱
判定 良作
マリオシリーズ


概要

お絵かきツールだけに留まらず、アニメーション作成、音楽作成など様々な要素を取り入れ、当時普及機だったスーパーファミコンでそれを実現可能にしたソフト。
マリオキャラを採用することによって、身近に遊べるソフトとなっているのが特徴。
スーパーファミコンマウスとマウスパッドでの同梱発売だった本作によって、マウスに初めて触れたのが本作だったという人も少なくないはず。


システム

モードはお絵かきスクリーン、アニメーションランド、サウンドコラージュ、ハエたたき(ミニゲーム)の4種類。

お絵かきスクリーン

  • カーソルを動かして絵を描くモード。ペン、スプレー、スタンプ、直線や四角形、円、楕円などの描画ができる。描画線の太さを3種類に分けて変えることができ、スタンプは左右上下反転で描画も可能。ハケで塗りつぶしが出来たり、スクリーン一面を好きな色、模様にすることもできたりする。また、部分指定をしてコピーすることもできる。
    • ただし、自作のドット絵や決められた模様パターン、透明を含む16色の原色と限られた色でしか使うことができない。
  • 消しゴムも存在し、大小のサイズを決めて消すことができる。スクリーン全部を消すためのパターンが何種類か存在し、消すだけという作業を飽きさせない工夫がなされている。
  • 自作でドット絵を作ることができ、透明色含む原色16色で作る。作ったドット絵は15個まで保存も可能。
    • 既存のスタンプの画像を読み込むことができる。例えばマリオの赤を緑に塗り替えてルイージを作ることができる。
    • 1ドット分だけ黒い点を作り、スタンプで描画することで普通のペンより細い線を描くといった応用もできる。
  • 塗り絵を呼び出すことができる。呼び出せる塗り絵はスーパーマリオワールド、アクアリウム、動物、デコレーションケーキの4種類。

アニメーションランド

  • 画面を4/6/9分割に割り振り、各枠に絵を描いていくことで、枠毎の順で切り替わりコマ送りでアニメーション作成ができるモード。描画はお絵かきスクリーンと同様だが、画面の分割が多くなる毎に描けるスペースが小さくなっていく。
  • このモードのみ、枠全体をコピーできる機能がある。アニメーションをパスでお絵かきスクリーン上で移動させることができたり、アニメーションのコマ速度を自在に変えたりできる。また後述のサウンドコラージュで作成した音楽を再生することも可能。

サウンドコラージュ

  • 譜面に音色のアイコンを置いていき、音楽を作成するモード。
    • 一つの音階と、下のシ1音、上のレからソの4音の間までで、黒鍵部分となる半音を出すことは出来ない。同じ音階に異なる音色を同時に鳴らすことは出来ず、音の長さを任意に決めることができない。同時発音数が3音まで…など色んな制約があるが、テンポ、指定ループが可能。
  • 音色は15種類存在し、オルガン、ドラムといった基本の音色から猫や犬といった個性的な音色、「アッフン」と発する怪しげな音色まで存在する。
  • 3つのサンプル曲を呼び出すことができる。『スーパーマリオブラザーズ』のイントロ+『スーパーマリオワールド』のオリジナルアレンジ、きらきら星、CMで使用されたマリオペイントオリジナル曲の3曲。

ハエたたき

  • 文字通りパネル上に飛び回るハエをハエたたきでクリックして退治していくミニゲーム。4種類のハエが登場し、100匹全部倒すことでボスとなる巨大ハエと戦うことができる。
  • コースは3つあり、クリアしていく事にパネル上に現れるハエの数が増えて行き、最終面となるとハエの動きが速くなる。時折、画面上方から出現する点滅する手「1UPハンド」をクリックすると残機が1増える。
    • マウスの操作性を活かしたゲームで、当時放送されていた任天堂系列のテレビ番組「スーパーマリオクラブ」では企画のひとつとして人気があった。本来の用途そっちのけでハマった人も多いのではないだろうか。
      + ハエの種類
    • 小型のハエ:小さくすばしっこいので当てづらいが、ただ飛んでいるだけなのでダメージを受ける心配はない。最終面では叩かれると「アンッ」と悩ましげな声を発するヤツもいる。
    • 黄色のハエ:時折止まって、尾から小型のハエより小さいハエの群れを出してくる。小さいハエは触れるとダメージとなり、しかもハエたたきをホーミングしてくるので厄介。本体は真横にしか飛ばないので割と当てやすいが、同時に複数出現するとかなりの脅威となる。
    • 爆弾ハエ:ボム兵の姿をしたハエ。近寄ると追い回して自爆してくるが、自ら寄ってくる上に自爆する前に当てればいいので楽。
    • 青色のハエ:小型のハエ同様にすばしっこく、斜め4方向に火花を放つ、火花に触れるとダメージ。
    • 巨大ハエ:各コースのボスとなる大きなハエ。ロボットとハエを足したような風貌で、円型放射状に玉を飛ばす、小さいハエの群れを大量に出す、尾からバーナーを発して突進してくるといった様々な攻撃をしてくる。ある程度攻撃を受けるたびに変色していく。ここで倒せばクリアとなるが、ゲームオーバーとなると憎らしく笑う仕草を見せてくれる。

評価点

  • スーパーファミコンでグラフィック描画、音楽作成、アニメーション作成を可能にしたこと。
    • 視覚と聴覚を複合したことで、絵を描いたり音楽作りをする楽しさを生み出した。
    • お絵かきツールは当時は高根の花だったパソコンのソフトが主*1で、かつあくまで絵を描く機能しかなくあまりに質素なものばかりだったことを考えると画期的といえる。
  • 子供にとって無縁であったパソコンのデバイスを使って遊べるという点。
    • 今でこそ当たり前だが、マウスを使って絵を描くことは当時としては非常に先鋭的だった。
    • 後のパソコン普及を先見していたかどうかは不明だが、今となっては考えさせられるものである。
  • できることは限られているが、基本機能を工夫してゲーム的な小技に発展させることができる。以下は公式攻略本で触れられていた例。
    • スタンプを単発で使うのではなくマウスドラッグで描画し続けることで、そのスタンプの色柄で線が描ける。使い方によっては油絵風のタッチが出せる。
    • アニメーションのコマを全て同じ形にして色だけ変えることで、光り輝く物体を表現することができる。
      • ただし、明度の明るい色と暗色を組み合わせてアニメーションを作成しコマ速度を上げると目に重大な刺激が加わるため非常に危険(いわゆるポケモンフラッシュ)
        バックを真っ黒に染めると尚更である。くれぐれも実践しないようにしたい。(専門的解説は省略するが、補色同士の組み合わせだと余計に刺激が増すので注意)
    • サウンドコラージュで短い音を高速でループさせることで、カエルの鳴き声や機関銃のような効果音を作ることができる。
  • 現実にはまず起こりえない演出とBGMと効果音。サウンド面では時としてSFCとは思えない高音質な音が鳴ることも。
    • 開始時に体操する謎のキャラに併せてサンプリングのBGMが2種類。1つ目は歓喜とファンファーレ。2つ目は応援歌風。音質がとても鮮明である。
    • 描画画面で「取消しアイコン」を出したまま放っておくと、アイコンに描かれた犬がちょこまか動き出す。
    • 先述した「アッフン」や「アンッ」といった妙な声や、ハエの攻撃にやられた時の「アーッ!」という叫び声と顔。
  • ハエたたきのミニゲームも非常に中毒性が高い。
    • ハエをひたすらハエたたきで倒していくという妙な感覚がポイント。
      • とくに設定がハエたたきで無くてもいいような気もするが、敢えて皆が知っている害虫駆除方法をゲームの設定として取り入れたのがウリとなっている。
    • 一見単純そうに見えて実はかえって焦りを生じさせるという人間の本能のツボを押さえている。
      • 3ステージ制で同時に出現するハエの数もステージ1は2匹、ステージ2は4匹、ステージ3に至っては8匹と倍々に増えていく。数が増える度ハエの動きに翻弄されやすいために心理的にもわざと焦りを生む演出をしている。
      • ステージ3は難易度が高いが、それに加えて焦りを生むようなスピード感溢れるBGMもわざと焦らせるかのような仕上がりになっている。
    • やっている側は必死だが、見ている側としてはなんとなく楽しい気分にさせるという逆転した楽しさもある。
      • プレイヤーの手腕に委ねられることのないゲーム性と演出によってストレス無く見ていられるというのもポイント。黄色と水色のハエのコンボに梃子摺ったり、小バエの大群に追いかけられて刺されたりする様はゲームを見ているだけでも楽しい。

問題点

  • 先述のとおり描画時の使える原色が16色と限られ、色の合成もできない点や音楽作成時に音色や同時発音数が少ない。違う音色を同時に出せないなどといった点。
    パソコンと違って容量の少ないROMカセットであることを考えれば、致し方ない点ではある。
  • 白と透明の色の見分けが付きにくい点。透明色はわずかに灰色かかった白色なのでよくよく見ないとわかりにくい。
  • セーブデータが1つしか作れず、外部に保存することもできない。
    • 画像データは相当の容量になるので、技術的にはやむを得ない部分ではある。
    • 複雑すぎる絵を描いた場合は、データ圧縮が困難なためかセーブに失敗することがある。
    • 説明書では、作品を残す手段としてビデオテープに録画することを推奨していた。

総評

当時、お絵かきツールと言えばパソコンの独壇場であり、そのパソコンですらも一部のマニア層しか普及していない高嶺の花だった。
しかし、コンシューマーソフトとして登場した本作はお絵かきツールに娯楽性を取り込んだことで、子供や初心者でも手軽に芸術を楽しめるようになった。
テレビCMや番組企画の宣伝力もあって、お絵かきツールとしては高い知名度を得るまでに至っている。

現在はお手軽にイラストを描けるゲームソフトは増えているが、それらに無い本作独自の魅力も存在する。
マウス専用という仕様からかニンテンドー3DSやWii Uのバーチャルコンソールでは配信されていないものの、機会があったら是非遊んでみよう。


その後

  • 本作の「気軽にもの作りを楽しむ」というコンセプトを受け継ぐ任天堂作品は後にも登場しており、本作を意識したシステム・演出が取り入れられている。
    • 本作の直接の後継作として、ニンテンドウ64の周辺機器「64DD」専用ソフト『マリオアーティスト』が登場している。その他、『うごくメモ帳』も本作の系譜を継ぐ作品と言える。
    • メイド イン ワリオ』のミニゲームの一つとして、ハエたたきが収録されている。マウスから十字キーに変更されている都合上出典より操作性は落ちるが、その分1UPハンドの登場回数が増やされているバランス調整がされている。
    • 『メイド イン ワリオ』のミニゲームを作る『メイドイン俺』では、作成ツールやシステムの内容が本作を原型としている。また作成しているゲームタイトルに「マリオペイント」と入力すると、本作の曲が流れる裏技がある。開発が同じインテリジェントシステムだからできたファンサービスだろう。
    • マリオのコースを作って遊ぶ『スーパーマリオメーカー』では、メイキング場面や作ったデータの読み書きなど、本作の意匠を凝らした部分や場面が多くちりばめられている。ちなみにハエたたきのミニゲームも収録されている(GamePadをタッチしてハエを退治するように変更されている)。

余談

+ 参考動画(TVCM)

  • 起動直後のタイトル画面の「MARIO PAINT」をそれぞれクリックすることで様々なことが起こるというお遊び要素がある。
    • マリオが小さくなる、画面が一時反転し音楽が変わる、スタッフロールが流れる、アニメーションが流れる等々。
  • 基本的に「ツール」であり、特にストーリーはないので漫画化などはされていない…かと思いきや『スーパーマリオくん』の『スーパーマリオワールド』編では コクッパがマウス型のマシンに乗り込んで様々なイラストを具現化させて襲いかかってくる という強引極まりない展開で無理矢理ネタを拾われている。
  • 任天堂非公認ではあるが、後年になってサウンドコラージュをパソコン上で再現した「マリオシーケンサ」が開発されている。
  • 本作に続くスーパーファミコンマウス専用ソフトの第2弾『BLACK OUT』(仮称)が1992年11月下旬に発売予定…と告知されたチラシが同梱されていたが、同ソフトは結局発売中止となり、マウス専用ソフト第2弾は『マリオとワリオ』の発売を待つこととなる。
  • 大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』に「ハエと手」がアシストフィギュアとして登場している。

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最終更新:2023年12月14日 09:07

*1 当時のゲームハード用ソフトではメガドライブの『Art ALIVE』、PCエンジンの『アーティストツール』しかなかった。