ファイナルファンタジーIII

【ふぁいなるふぁんたじーすりー】

ジャンル RPG
高解像度で見る 裏を見る
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売・開発元 スクウェア
発売日 1990年4月27日
定価 8,400円(税別)
プレイ人数 1人
セーブデータ 3個(バッテリーバックアップ)
レーティング CERO:A(全年齢対象)
※バーチャルコンソール版より付加
配信 バーチャルコンソール
【Wii】2009年7月21日/476Wiiポイント
【WiiU】2014年1月8日/476円
【3DS】2014年4月23日/476円(各税別)
判定 良作
ポイント 『1』と同様の、4人の主人公に個性を付けない形式に回帰
ジョブチェンジシステムが初登場
その他システム、演出面も大幅パワーアップ
今なお語り継がれるラストダンジョンの長さ
ファイナルファンタジーシリーズ



そのグルガン族の男は静かに語った…
この大地震でさえも単なる予兆に過ぎぬと。



概要

ファイナルファンタジーシリーズの第三弾でファミコンにおける最後の作品(新作)となった。
ゲームシステム的には『I』のジョブの発展型で、それぞれのクリスタルから称号を授かることでジョブが増し、さらに状況に応じてその場で変えられる「ジョブチェンジシステム」が初登場した。


ストーリー

ウルの村に住む4人の幼なじみの少年は、度胸試しのつもりで入り込んだ洞窟で迷子となり、さ迷った末に、洞窟の最奥の祭壇に安置されたクリスタルを発見する。
クリスタルは少年たちに選ばれしものとしての使命があることを伝え、自らの中に秘められた光の力を少年たちに授ける。

こうして、クリスタルの啓示を受けた少年たちは旅立つのだった。


特徴・評価点

基本システム

  • 本作は4人パーティー
    • 各メンバーはデフォルト名を持たず名前をプレイヤーが決められるようになっている。
      • 4人の仲間がそれぞれセリフを伴って会話する場面も多いが、テキストにおける個性の描き分けなども特に無い。
        扱いとしては『主人公=プレイヤー』というドラクエ型のスタイルを踏襲していた『I』に近い。
      • OPで「4人の少年たち」と紹介されており、少女もいてもおかしくはないが、一人称は全員「おれ」である。
    • ジョブチェンジシステムの都合か、最初から4人全員揃った状態でスタートし、パーティメンバーの入れ替わりは発生しない。
  • その他、ストーリー進行上で一時的に同行するNPCもいる。
    • プレイヤーキャラの後をついてきてBボタンで会話も可能。会話の内容は進行に伴って進展する。
    • 但し前作の4人目枠の仲間と違って戦闘には参加せず育成もできない。
    • パーティキャラ全員がカエル、または小人になるとNPCのグラもそれに合わせられる。

ジョブチェンジシステム
これまでのRPGにもクラスチェンジ(転職)システムは多数存在していたが、「レベルが最低に下がり、戦力がガタ落ちする」「転職行為が拠点でしか行えない」といった難点やデメリットが存在するため、「転職は頻繁に行うものではなく、育成計画を立てて決め打ちで行う」という作品が一般的であった。

一方で、本作のジョブチェンジシステムは以下の特徴を持っている。

  • キャラクターのレベルとジョブの熟練度はジョブチェンジしても保持される。
  • 能力値はレベルとジョブに応じた数値になる。
    • ただし最大HPだけはジョブチェンジによる変動ではなく、体力に応じて成長していく。そのため体力が低いジョブでレベルを上げることが多かったキャラは最大HPが低くなり、体力が高いジョブでレベルを上げることが多かったキャラは最大HPが高くなる。
    • ラストダンジョンのボスの一部は全体攻撃一発で数千ものダメージを与えてくるため、これに耐えられないHPでは話にならない。レベルアップ時のみ体力の高いジョブになるという方法もあるが、後述のキャパシティポイントが必要になるので限度がある。
      • ちなみに高レベル帯までやり込む場合は、余程HP成長が悪いジョブを選び続けない限りは最終的に全員HP9999カンストを達成できるため、こだわる人も心配はいらない。
  • ジョブチェンジ時に『キャパシティポイント』を消費するが、それ以外にジョブチェンジのデメリットはない。
  • ジョブチェンジは戦闘中以外なら『いつでもどこでも』行える。
    これによって状況に合わせた臨機応変な立ち回りが可能になった他、各種ジョブの使い勝手を気軽に試せるようになった。
    • 厳密にはジョブチェンジに必要なレベルも設定されているため『いつでも』というわけにはいかないが、かなりの低レベルで突き進むプレイでない限り制限にひっかかることはない。
  • 転職できるジョブはストーリー進行に応じて増えていき、最終的には22職にも及ぶ。その全てに明確な特徴とドット絵が用意されている。
    • ストーリーが進むごとに初期ジョブで扱える武器や魔法が少なくなり、ステータスも低く続けるのが苦しくなってくるため、自然と上位ジョブを目指すバランスとなっている。
      • ただし、熟練度システムにより、ジョブチェンジしたての上位ジョブよりも使い続けた初期ジョブの方が強い時期も存在する為、まったく無駄になるわけではない。
    • 「ぬすむ」「ジャンプ」「ためる」といった後のシリーズでアビリティと呼ばれるジョブ専用のコマンドが初登場。特にシーフはフィールド上でも特殊能力の鍵開けが出来るなど、パラメーターや魔法以外での差別化が行われるようになった。
    • システムを攻略に活用させるために、特定のジョブが必須・有利になる場面も多く設けられている。物理攻撃力が激減する小人状態(魔法は普通に使える)で進めなければならないイベントには魔道師系のジョブが必要、食らえば大ダメージ必至の全体攻撃を繰り出してくるボスには「ジャンプ」でターン中の攻撃を完全回避できる竜騎士が有利、通常の物理攻撃で分裂する敵に対し、分裂を防ぐ「暗黒剣」を装備できる魔剣士で対抗…等々。
      • 特に4人が竜騎士になっての空中戦をはる「vsガルーダ戦」、バリアチェンジを学者で見極めながらの「vsハイン戦」等、これまでのRPGでは無かった戦法での戦いはボス戦のBGMの良さと見た目の斬新な動きもあって実に燃える。

ジョブ紹介

+ 初期ジョブ
  • たまねぎ剣士
    • 初期ジョブ。全員同じ外見でゲームを開始する都合か、このジョブのみ1番目と4番目のキャラを除きキャラごとにカラーパターンが違う(1番目と4番目のキャラのみ同じ赤色)。
    • 一応「剣士」を名乗るだけあって装備は基本的に戦士系のものが装備できるが、本職戦士に比べると立派なものは装備できない。
    • ただし隠し要素として、ゲーム中最強装備である「オニオンシリーズ」が存在する。これらはたまねぎ剣士以外では装備できない。
    • レベル90代になると能力値が飛躍的に上昇し、99になると全能力値がカンストする。
+ 風のクリスタル
  • 戦士
    • 文字通りの戦士で、属性剣を装備できるため敵の弱点を突く器用な戦い方ができる。
      • グラフィックは『I』の戦士や前作のフリオニールをアレンジしたものとなり、主人公らしい。
    • 重装備が可能だが、名前に反して防御力が低く設定されているため盾を装備しなければ防御力はむしろ低い。ただし属性付き防具により、魔法攻撃に耐性をつけられる。
    • 体力もあまり高くない。さすがに魔道師よりは高いがほんの若干高い程度となっている。とはいえ低レベル帯では体力の低さはあまり問題にならない。
    • 上位互換ジョブとして「ナイト」が存在。
    • ナイトにはない個性として、序盤の弱いものに限られてはいるが弓矢が使える。
    • 密かに終盤で購入できるようになる前衛職用防具の中で最強クラスのものであるクリスタル系防具も装備可能だったりするが、装備できる武器の方は最高性能のものでも中盤の剣止まり。言わずもがな特殊なアビリティもないため、終盤にあえてチェンジしても敵避けの的にしかならなくなる。
  • モンク
    • 『I』でもあった「素手の方が強い」ジョブで、序盤を除けば戦士をさらに凌駕する高威力になる。序盤の負けイベントのボスの討伐にチャレンジする場合にもよく使われる。
      • なおこれも『I』と同様、素手の強さはレベルに対応して上昇していくため、レベルが低いうちは素直に武器を持った方が強い。
    • 防具に関しては装備できる品が少ないうえに、『I』では持っていた「裸の方が強い(強くなる)」特性もなくなっている。このため防御の面では不安が残る。
      • もっとも実は戦士の防具もそこまで硬くないため、一時的にはむしろモンクの方が頑丈になる場面も出てくる。
      • また初期ジョブの中では唯一の「体力が高い」ジョブであるため、わずかでもHPを余分に上昇させたいのならば、モンクでレベルアップするのが妥当ということになる。そこまで大きな差が出るわけでもなく、また火のクリスタル以降はもっと体力の高いジョブも出てくるのではあるが。
    • 上位ジョブに「空手家」があるが、こちらは必ずしも上位互換とはなっていない。とはいえ、モンクが空手家に勝っている点は精神が「1」だけ高いのと、「にげる」コマンドが使えるという点だけではあるが。そして後述するように、本作の「にげる」は使いにくい。
  • 赤魔道師
    • ある程度の武器防具を装備でき、クラス4までの白黒魔法を両立できるが、『I』と違ってどちらも専門職に任せた方が強い。
      • 『I』で万能ジョブ過ぎたため、かなりの弱体化を受けたジョブ。魔法剣士ではあるが、専用の剣を除いては一切の剣を装備できず、戦士用武器は弱い短剣か弓しか装備出来ない為、完全に魔道師寄りになった。さらに、なぜか見た目に反して「はねつきぼうし」を装備出来ない。
    • 能力値は良く言えば平均的、悪く言えばまんべんなく低い。魔法の使用回数も専門職の白魔や黒魔に比べて少ない。
      • 専門職と大きな差が出るのはレベル9になったとき。戦士とモンクは素早さ、白魔は精神、黒魔は知性が16になり、それぞれ通常攻撃・白魔法・黒魔法の回数≒威力が倍になるのに対し、赤魔は何も16にならない。おまけにこの頃に黒魔にだけは勝っていた体力すらも逆転され、HPが伸び悩み後々まで尾を引くことになる。
    • とはいえ、最序盤イベントでその時点では赤魔道師専用装備になる強力な武器「ワイトスレイヤー」が手に入るので、序盤に限れば他のジョブよりも使いやすい場面もある。
      • 魔法もクラス4までは使えるので、火力やHPの低さを気にしないのなら新ジョブが手に入るまで使い通すことも十分可能である。
    • 見た目の人気に加え、白黒魔法を併用できて剣まで使えるというロマンも重なり、中盤以降も赤魔を活用しようとするプレイヤーや研究は絶えない。
      • 魔道師系で唯一盾が装備できるため、後衛両手盾で魔法で援護という持久戦に適している。小人状態でも魔法防御力は下がらないため生存性は高い。
      • 終盤の装備面で言えば初期ジョブの中でも優遇されており、白のローブと黒のローブの両方が装備可能、最終盤では戦士系ジョブ用のクリスタル系防具を装備可能で、盾も二つ持つことで下手な戦士系ジョブよりも高い防御力・魔法防御力を得られる。ただしHPはずっと低いままなので、実際にはそこまで丈夫ではないのがネック。
      • 武器攻撃力は物足りないが「徐々に石化」という強力な追加効果を持つゴーレムの杖で石化を狙えるなど、ポテンシャルは低くない。
  • 白魔道師
    • ほぼ全ての白魔法を扱える。武器は杖系や服系などの軽装備に限られる。
      • なお最上位であるクラス8の白魔法は使えず、上位ジョブ「導師」までお預け。ただしクラス8魔法の入手は導師はおろか賢者入手後なので、使えていたとしてもほぼ無意味だが。
    • 回復魔法はずっと出番がある上に、白魔法に属する攻撃魔法「エアロ」が強力なお陰で攻撃においても役割がある重要ジョブ。
      • ただしエアロの使用回数はとても少ないので、黒魔道師の立場を奪うほどではない。このあたり、上手く住み分けできている。
    • 「ミニマム」「トード」などイベント上で必要とされる魔法を使える点も優遇されており、実質上、ほぼ確実に出番がある。これらは赤魔道師でも使えるのだが、使用回数の面で格差がある。
  • 黒魔道師
    • ほぼ全ての黒魔法を扱える。武器はロッド(棒)系や服系などの軽装備に限られる。弱めのナイフや弓も装備できるが威力は望めない。
      • なお最上位であるクラス8の黒魔法は使えず、上位ジョブ「魔人」までお預け。ただしクラス8魔法の入手は魔人はおろか賢者入手後なので、使えていたとしてもほぼ無意味だが。
    • 本作では物理攻撃が役に立たなくなる「小人」の状態で攻略する場面が登場し、そこではほぼ必須ジョブとなる。
    • 『I』で無意味なステータスだった知性が攻撃魔法の威力に関係するようになった他、魔法使用回数の水準が高くなったお蔭で『I』の頃と違って雑魚戦で攻撃魔法を連発しても結構持つようになり、きちんと効果のある補助魔法もあるため強力なジョブになった。
      • 攻撃魔法のイメージが強めだが、実は補助魔法もかなり強い。特にクラス4の麻痺魔法「シェイド」は全体がけでも非常に高い成功率を誇り、敵を一瞬で無力化でき強力。厄介な分裂モンスターも麻痺させれば分裂しない。
    • ただ、『I』の頃のイメージで赤魔道師から入ったプレイヤーが「黒魔法そのものが弱い」と勘違いしてしまうケースがあったのは密かに不遇である。
    • 体力は白魔よりも低いため、ずっと黒魔でいるとHPが伸び悩む点だけは明確な弱み。体力が高い魔人にするか、体力の高めなジョブを経由するなどでカバーしたい。
+ 火のクリスタル
  • 狩人
    • 専用武器の「弓」を扱う。後列から攻撃しても威力が変わらない特徴を持つが、別途消耗品である「矢」を装備しなければならない。
    • 属性付きの矢を使い分ける事で黒魔法のように弱点を突いたり、ほぼオマケ程度ではあるが低級の白魔法も使えるなど、役割は赤魔道師に似ている。ここでチェンジすると、虚弱化が目立ち始めてきたHPの底上げができる。ついでに赤魔が装備できない羽根つき帽子も装備できる。
      • 個数限定だが「メデューサの矢」はほとんどのザコ敵を一発で石化させてしまう秘密兵器。
    • 防具はモンクの次に貧弱と言っていいほどの薄さで防御面が不安だが、後列にいるので物理攻撃ダメージを抑えられ、属性つき防具のおかげで魔法にも強い。きちんと使いこなせば色々に活躍できる玄人好みのジョブ。
  • ナイト
    • 戦士の上位版となる前衛ジョブ。「暗黒剣」と「特定ジョブ専用の剣」を除く剣系の装備を全て扱う事ができ、防具も最終盤レベルの重装備を使いこなす。体力も力も高い前衛のスペシャリスト。ラストダンジョンまで通用する最終ジョブとなれる。
      • グラフィックは『I』のようなゴリラではなく、戦士がサークレットとマントを装着した姿となり、非常に主人公らしい。次回作のセシル等にも影響がみられる。
      • 中盤になるとしばらくの間、新しい武器や防具が手に入らなくなり、他の物理系ジョブの追随を許してしまうが、最終盤には強力な装備が次々と手に入る為、再び主力に返り咲く珍しいジョブでもある。
      • 戦士と違い、きちんとイメージ通りに頑丈な防具が装備できる。物理のみならず魔法防御まで高く、安定感はピカ一。グラのカッコ良さもあって、人気も最高クラス。
    • HPが減って瀕死のキャラを「かばう」特殊能力がある。この「かばう」の存在故に忍者と比較しても完全な下位互換にはなっていない。
  • シーフ
    • ステータスよりも特殊技能で活躍するタイプのジョブで、「盗むコマンド」「鍵のかかった扉を鍵無しで開ける」「とんずら」の3つ。
    • 『I』では初期ジョブの一つだったが、今作ではやや遅れてジョブチェンジできるようになる。(リメイク版では初期ジョブに移行)加えて、特殊技能が実装され、盗賊らしい活躍ができるようになった。
    • 盗むは後のFFシリーズのイメージ通り、敵からアイテムを盗む。きちんと使いこなせば有用な能力ではあるが、後述の「アイテムドロップ制限」の影響をこれも受けるため、そもそも盗む事が可能なモンスターは全体からすれば一部しかいない。
    • 「鍵あけ能力」は、本作にはイベントアイテムではなく消耗品として購入する「まほうのかぎ」が存在し、それの消費を抑えられるという能力。財布が許せばかぎを大量に買っておけばいいだけの話ではあるが、ちょうどジョブを手に入れた少し後の時期にやたら鍵付きの扉が出まくるダンジョンがあるため、見せ場はある。
    • 「とんずら」は高確率で逃走可能な「にげる」の上位版コマンド。というか、本作ではとんずらでないとロクに逃走はできない。パーティの消耗を抑える手段として有用。
    • ジョブチェンジできるようになってすぐの時期は装備が貧弱で使いにくいが、少し進めると専用武器と防具が手に入り、物理攻撃キャラとしてナイトに引けを取らない性能を発揮する。
    • 見た目がシリーズのシーフでお馴染みのバンダナ姿となった。また本作のみちょび髭を生やしているという他のシリーズにはない姿となっている。 後述のバイキング同様に少年という設定のはずなのにおっさん感が出てしまうのが難点だったのか 後のシリーズやリメイク作でもあまり採用されていない珍しい特徴のデザインとなっている(ちょび髭では無いがFFⅤのガラフもシーフになると髭付きのシーフ(+ほっかむり)にはなれるが彼の場合はすっぴん状態で髭のある老戦士キャラであり、シーフ以外でも髭があるのでやはり本作のシーフは他の作品より特徴があると言えるだろう)。
  • 学者
    • 武器は本。魔法を使うのではなく本で殴る。知性が上級ジョブに匹敵するほど高いのに魔法を使う事はできず、ほぼ宝の持ち腐れになっている。通常攻撃か下記の2種の特殊コマンドしかすることが無い。
    • 特殊コマンドその1「しらべる」は敵の最大/残りHPを調べるというもの。
    • 特殊コマンドその2「みやぶる」は敵の弱点属性を調べるもの。ジョブ登場の少し後の頃のダンジョンに「バリアチェンジ」で弱点を頻繁に変えてくるボスが登場するため、まさにこのボスのためにねじ込まれたジョブと言って良い。
    • 武器の「本」は一応各種属性が一律で揃っており属性攻撃を使い分けやすいというのが利点。実は力・素早さとも戦士並みに高いため、通常攻撃でも十分戦える。
    • 登場時期が早めながらも知性が上級職クラスに高いのが特徴だが魔法は使えない。しかしながら魔法防御には関与するし、魔法を発動する消費アイテムを学者に使わせるという使い道もある。(ただし消費アイテムはレベル&知性&熟練度による魔法攻撃回数上昇がなく固定)
    • また、体力がたまねき剣士以下と非常に貧弱なので、このジョブでレベルアップする事は避けたい所。
+ 水のクリスタル
  • 風水師
    • 武器はベル。能力は魔法系だが、魔法の代わりに特殊コマンド「ちけい」を使える。これが良い意味でも悪い意味でも最大の特徴。
    • 「ちけい」はその時戦闘している地形に応じた攻撃を繰り出す。ノーコストで連発可能だが、地形によって出る攻撃が変わり、失敗して自爆する確率もあるという曲者。
    • 「海」系のフィールドならデフォルトで全体攻撃が出る上成功率がかなり高いので強力無比。特に海底にはダンジョンが3つもあるため活躍できる。
      • 一方、相性の悪い地形では半分以上の確率で自爆するなど、場所を選びすぎるきらいがある。
  • 竜騎士
    • 前作のリチャードの肩書きがジョブとして採用されたもの。主に剣を使用していた前作とは異なり、槍を主武装とし、特殊コマンド「ジャンプ」を使う戦士系ジョブ。
      • 逆に槍以外は一切装備出来ず、ジョブ入手直後は装備出来る武器がないという状態に陥る為、ジョブチェンジのタイミングには注意。槍を装備して、ジャンプを行うというFFの竜騎士は本作が初となる。
    • 本作はターン制なのでジャンプコマンド選択ターンに上空へ飛び上がり、次のターンに降ってきて強力な攻撃をするという効果になっている。なお隊列の影響をきっちり受けるので、後列からジャンプするとダメージが低下してしまう。
    • ジャンプ中は敵味方問わずあらゆる干渉を受けなくなる。
      • 敵の攻撃を回避できるというメリットはあるが、残った味方に攻撃が集中するデメリットもある。
    • 一部だけジャンプすると残った味方に攻撃が集中するが、全員でジャンプしてしまえば敵の攻撃を不発させられる。「ガルーダ」戦では非常に有用なジョブと言える。*1
      • 回復を不安視して白魔道師あたりを加えると、着地時に全体攻撃の雷を一緒に喰らってしまうリスクがあるので、この戦法を使うなら全員竜騎士に限る。
    • ジャンプ攻撃の効果は「右手の攻撃力を3倍にする」というもので、左手武器のダメージはそのまま。安全に行くなら左手には盾を装備したほうが良い。それまで圧倒的に二刀流にする者が多かっただけに陥りやすい罠。
      • 槍はガルーダ戦前にタダで4本手に入るが、サロニア内で盾を入手することはできず、勇者の盾など事前に手に入るモノを売り払っていると盾なしで挑むしかなくなる。
    • ブラッドランスが高性能なので、リスクを見込んだうえでなら、以降の活躍も可能ではある。一本きりしか手に入らないため、「全員ジャンプ」戦術に関しては活用し続けられないが。
      • 唯一装備可能な武器である槍は最強のものでも終盤では火力不足になってしまうものの、防具の方は前衛職用で最高性能のクリスタル系防具一式も装備できる。
    • 戦士系なのに体力が低めで、虚弱になりやすいということが最大のネックか。
  • バイキング
    • ごつい見た目通りの戦士系。武器は斧とハンマーで、防御力が高く、HP成長も空手家と並び優れている。
    • 「海の敵に強い」という特性を持つとされているが、その実態は海上、海底の敵=水系モンスターのほとんどが弱点とする雷属性の強い武器が、バイキング用武器である斧・ハンマーに多く用意されているというもの。
    • また攻撃回数に影響する「素早さ」がかなり低いため、思ったほど打撃の威力は伸びない。海底で滅法強い風水師に比べると使い勝手は劣る。ただし体力はこちらのほうが上。
      • 武器の斧・ハンマーは終盤では火力不足になってしまうが、防具の方はクリスタル系装備一式も装備可能。体力の数値も忍者と同等の数値を誇る(無論通常プレイでは忍者の下位互換になるだけだが)。
    • 少年なのに見た目がひげのおっさんになるので人気がないというのが最大の弱点かもしれない
  • 空手家
    • モンクと同じく素手での攻撃が強力なジョブで、名目上はモンクの上位に当たる。また体力がバイキングと並んで高くHP成長に優れている。
    • 時期によるが普通に殴ってナイトの武器より強いため、こと攻撃力に限れば最強クラスを誇る。厄介な分裂モンスターも「トドメを刺した場合は分裂しない」と言う特性を利用し、魔剣士の装備が揃うまで・揃った後でも分裂モンスターへの回答になり得る(ただ一撃で殺せるからと言うだけだが)。
    • 特殊コマンド「ためる」により攻撃の威力を上乗せする事が可能。ただし溜めすぎると自爆*2してしまう他、溜めている間は防御力が0になるというデメリットがあるので、使うならナイトに庇ってもらうというフォローが必要。
    • 装備可能な防具はモンクと全く一緒なため紙装甲。また、「ためる」が追加された代わりに「にげる」コマンドが無くなって逃げる事ができないジョブになっている。
    • ドット絵だと分かりにくいが、顔にネイティブアメリカンのようなペイント(タトゥー?)が施させているという、ワイルドな出立ちのデザイン。後のシリーズ作の格闘で闘う仲間キャラにも顔にタトゥーを入れているという人物が登場したりした。
  • 吟遊詩人
    • 特殊コマンドが「うたう」「おうえん」「おどかす」と3つもある。
      • 「うたう」は単なる「たたかう」の名前が変わっただけのもの。しかし武器の竪琴を装備していないとそもそも実行不可能という制限がある分、たたかうの下位互換。
      • 「おうえん」は味方全員の攻撃力を10上げる。ただしコマンドの特性上、持久戦になりがちなためアイテム使用する際、ウインドウイレースバグの被害を引き起こしやすいのが難点。
      • 「おどかす」は敵のレベルを3下げる。なお敵のレベルを下げて変わる事と言えば、敵とこちらのレベル差で成功率が変化する「にげる」の成否のみ。しかも、適正な攻略レベルだと敵のレベルとほぼ同じか敵の方が少しレベルが高い事がほとんどなので、よほど重ね掛けしないと目に見える効果は出ない。
    • かなりニッチな特性を持ったジョブだが、学者や竜騎士にあったような「使えと言わんばかりの見せ場」が全くない。
    • また、ジョブを入手して最速でチェンジすると「装備できる武器が何もない」状態に陥る。上記の通り武器が無いと通常攻撃すらできないので、誰もやる人はいないと思うが、万一全員吟遊詩人にした状態でお金もキャパシティポイントも使い切ってしまった…なんて状態になるとジョブを戻す事もできず何もできなくなる。
  • 幻術師
    • 召喚魔法の使い手。各召喚魔法が持つ効果のうち攻撃系が多い「黒」、補助が多い「白」がランダムで出る。
      • レベル1の「エスケプ(チョコボ召喚)」の白は有用。発動すれば敵の逃走不可特性を無視して確定で逃走でき、かつ逃げるコマンドではないので逃げ腰状態にならない。全スルーのつもりの道中なら幻術師を2人以上用意してエスケプを連打するというのもありといえばあり。
      • また他の魔法でも白の全体状態異常は、おおむね強力。黒が出たとしても相手にダメージを与えられる。
      • 白黒両方が攻撃魔法の「ハイパ」や、黒はともかく白はそのランダム性に見合うくらいの補助効果を得られる「カタスト」「バハムル」はボス戦で使用されることもある。
      • 召喚魔法は対象を選べないのだが、その代わり、発動した時点で対象がランダム選択されるため、目標が不在になっていて不発といった事態も起こらない。
    • なお白黒魔道師のような、上位ジョブでないと最高レベルの魔法が使えないという制限はない。幻術師の時点からレベル8まで使える。ただしレベル制限の方に引っ掛かる関係から、最強の召喚術を実用的な範囲で使用できる機会はほぼないが。
    • ただでもバクチ効果なのに、魔法の使用回数が極めて少なく、ガス欠しやすいというのが密かなネック。上記の「エスケプ」全逃げ戦略にしても、幻術師が一人か二人だと確実にダンジョンの途中、それも早めの時点でMPが尽きる。
    • 体力が学者に次ぐ最低ランクなのも欠点。ダンジョン逃走やボス戦など限定条件下で使い、このジョブでレベルアップしないように気をつけたい。
  • 魔剣士
    • 「暗黒剣」と呼ばれる刀系の武器、その同類の防具や源氏シリーズ等、限られた種類の装備品のみ装備できる特殊な戦士系。
    • 暗黒剣は分裂モンスターを殴っても分裂させないという性質を持つため、分裂モンスターが詰まっているダンジョンでは事実上の必須職。
    • FC版では専用の特殊コマンドを持たない代わり、低ランクの白魔法を少しだけ使う事ができる。
    • 対分裂モンスターの一発屋という側面も無い事は無いが、ボス戦1回だけという短期の活躍ではなく、装備を揃えたなら別にその後も使っていけるだけの性能がある。
    • 最終的には暗黒剣「マサムネ」や「ラグナロク」に加えて前衛職用防具最高性能のクリスタル系防具一式も装備できるため、ナイト同様最終職業としての素質を持つ。もちろん忍者を除けば、の話ではあるが。わずかとはいえ白魔法が使えるおかげで、忍者の完全な下位互換ではない、というのもポイント。
    • 吟遊詩人と同じく、ジョブ入手直後は装備可能武器が一切ないため最速で転職すると困る。こちらは素手で殴るという最終手段がある分まだマシだが…。
      • しかもこちらは通常の防具(服すら)も装備出来ないので、鎧戦士の見た目とは裏腹に素っ裸で殴る変なジョブになってしまう。この「服すら着れない」は現在でもよくネタにされる。
      • 専用装備の源氏系防具はクリスタル系防具に比べて防御力は多少劣るものの「毒耐性」があるので、トータルでの性能では上回っている。
+ 土のクリスタル
  • 魔人
    • 黒魔道師の上位職。全ての黒魔法を扱う事ができ、魔法使用回数も格段に多くなる。のちのシリーズでも常連となる「メテオ」や「フレア」を扱うことが出来る。
      • ちなみにメテオは本作が初出。フレアは前作まではフレアーという名前だったが、本作から「フレア」表記になり、以後のシリーズでも定着している。
    • 黒魔道師の弱点だった体力の低さが解消され、黒魔道師をレギュラーで使っていた人は当然、そうでない人も黒魔法担当として常に採用を検討される。体力に関しては一転し、むしろ全ジョブ中でもトップに近い方となる(厳密に言うと四位)。
    • また後述の魔界幻士も攻撃系でほぼ全部が全体攻撃なので上位互換に思えるが、魔法の使用回数ではこちらの方が格段に多いので差別化もできている。加えて黒魔道師と同様、補助系の魔法も豊富で優秀。
    • 体力が高い上に黒魔法で敵をサクサクと倒せるため、効率的にレベル&HP上げが可能。
    • ただ、このジョブを手に入れてからあまり経たないうちに「賢者」が手に入り、体力の高さ以外はほぼ賢者の下位互換になってしまう。
      • 本来ならばウリとなるクラス8の魔法も普通に進めれば入手は賢者入手後になる*3ためそちらに奪われがち。しかし知性は賢者をわずかに上回る。
    • いかにもなローブ姿だった黒魔道師から、かぼちゃパンツみたいな下半身になる所は人によって評価が分かれる。
  • 導師
    • 白魔道師の上位職。全ての白魔法を扱う事ができ、魔法使用回数も格段に多くなる。
      • 低級の白魔法「トード」「ミニマム」「テレポ」も使用回数が増えて連発し易くなる。これらの凶悪さについては後述。
    • すぐ後に手に入る賢者の下位互換なのは魔人と一緒で、魔人のような「何故か体力が高い」といった特徴もない…が、後のシリーズの女性キャラの白魔道師のような「ネコ耳フードの女の子」そのもののデザインをしているため、 可愛い という圧倒的メリットを持つ。 主人公達は全員少年だから女の子じゃないって?そんなことはどうでもいいじゃないか。
  • 魔界幻士
    • 召喚魔法を扱う事ができ「合体」の効果が出る。バクチ的な幻術師と違い、大部分は全体攻撃となる(幻術師と比べて全面的に強い訳では無い)。
      • レベル1「エスケプ」は、合体だとかなり強力な単体攻撃になる*4が、「逃げ腰にならず、かつ確実に逃走できる」白効果の利便性が高かったため、上位互換とは言い難い。
      • レベル6「カタスト」は、白(全体リフレク)・黒(全体ダメージ)共に有用なのに、合体だと成功率の高くない全体即死になってしまう。これは弱体化と言って差し支えない。成功すれば敵全体を一瞬でバラバラにして戦闘に勝利出来るので爽快感はあるのだが…。
      • その他の魔法は全て強力な全体攻撃となる。補助系が皆無で融通が利かないが、全体攻撃だけを連発するなら黒魔法などより遥かに使い勝手がいい。
    • ただし魔法使用回数は幻術師から据え置き。つまり少ないままなので、燃費の面に限れば黒魔法に劣る。強力な全体攻撃をどこで使うか、良くも悪くもピーキーな性能となっており、プレイヤーの戦術面が試される。
      • 賢者よりも素早いため、開幕召喚でザコ敵を一掃するのに向いている。ただ体力が低いのでレベル上げには向かない。また賢者を意識する場合、MPの低さも非常につらい(賢者は同じ魔法を極めて高いMPでいくらでも撃てる)。
    • 安定性重視なら賢者になるまでの運命である事は変わらないが、召喚魔法は白黒魔法よりもジョブ熟練度の影響を強く受けるため、それを意識して魔界幻士の熟練度を鍛えていた場合、賢者になって元の威力を取り戻すには相当かかってしまう。
      • そもそも普通に進行して、そこまで熟練度が伸びるかどうか疑わしくはあるが。うっかり集中的に鍛えてしまうと残念なことになる。「召喚魔法は熟練度の影響を強く受ける」ことを知っているプレイヤーが、賢者の存在を知らないというのも考えにくくはあるが。
    • 体力が幻術師と並び低いので、レベルアップ前に体力の高いジョブにチェンジするか、あらかじめ体力の高いジョブで鍛えておくかする必要がある。
    • エンディングのスタッフロールで各ジョブが顔見せするのだが、何故かこのジョブだけ登場しない。
+ 封印されし称号
  • 忍者
    • ほぼ全ての武器防具を装備でき、力・体力・素早さが全てトップクラスと言う戦士系ジョブの決定版。
      • 「さびた鎧*5」とオニオンシリーズだけは装備できない。
      • 唯一「手裏剣」を装備出来、通常攻撃により投げる事が可能*6。非常に強力だが、極めて高価な上に使い捨てで、後述のウインドウイレースバグにもろ引っかかってしまうという欠点も持つ。
    • ほとんどの前衛職を下位に置いてしまう強ジョブではあるが、極限までやり込むならば「フル装備たまねぎ剣士」という上が存在する事、「かばう」を持つナイトの方が適任な状況が一部あること、そのナイトとも決定的なほどの能力差が無い事、そもそもラグナロクやエクスカリバーを装備した忍者の攻撃よりも賢者や魔界幻士の合体召喚の方が遥かに威力が高い上にあちらは全体攻撃であるため、最終的に前衛職をパーティに加える事の必要性自体が微妙になる事などの理由もあり、前衛ジョブとして完全な一強とは見られていない。
  • 賢者
    • 全ての白・黒魔法と合体召喚魔法を使う事ができ、魔法の成功率や使用回数も魔人や導師と同等以上に高い。
    • このジョブがあるせいで土のクリスタルの魔法職3種の存在価値が薄まってしまっており、後衛職は賢者を置いとけば何でもできてしまうため魔道師系ジョブの大半を下位にしてしまう。
      • 一方で幻術師の白黒召喚は再現できないので、皮肉にも下位ジョブのはずの幻術師は賢者の下位互換でないという、不思議な関係性になっている。
    • 魔法が使い放題に近いので殴る機会は「すべてのぼう+ゴーレムの杖」以外ではほぼないが、武器や防具も魔法使い系のものをほとんど使える。

ゲームバランス面

  • 魔法は『I』と同様の各レベル毎の使用回数制。
    • ただし、『I』では最大9回だった使用回数上限が今作では最大99回までと大幅に増加したためガス欠にはなりにくくなった。
    • また本作では、ジョブチェンジとの兼ね合いの為か、魔法も装備品と同様に自由に着脱できるようになっている。
      • 同じくジョブチェンジを柔軟に試せるようにとの配慮か、誰かの魔法と別の誰かの魔法を、まとめてごそっと入れ替えることもできる。
  • 「召喚魔法」と召喚獣が初登場。以降の作品に欠かせない存在となった。
    • 本作の時点では使用者が「召喚士」の名称ではなく、魔法名も呼び出される存在の名前ではなく、その呼び出される存在も「冥界に住む精霊」と設定されていた。現在でこそ「幻獣」または「召喚獣」という名称が定着しているが、そうした名が付くのは次作以降になってからである。
    • また、本作ではジョブによって召喚獣の効果も変わる。
      • 早期に就ける「幻術師」だと白・黒のいずれかランダムに、後に登場する「魔界幻士」「賢者」だと合体魔法になる。
        後のシリーズでは合体魔法の効果がその召喚獣の効果として定着している。
    • ちなみに、召喚システムは『半熟英雄』からの逆輸入となっている。
  • 難易度も過去作に比べると低下しており、事前情報無しでも程よい難易度でクリア直前までは進められる。
    • ジョブの工夫を行うことで、難関と知られている「暗黒の洞窟」も楽に攻略することが可能。
    • ただし、強ボスも存在するため何も考えずにゴリ押しできるほど甘くはない。
    • 後述にある通りラストダンジョンは難易度が著しく上昇するためこの点も油断はできない。
  • 「バックアタック」の概念が登場。
    • 時折、敵に背後をとられる事があり、隊列がすべて逆転した上で先制攻撃を受けるというもの。
    • 後列に下げた魔道師系ジョブが前に押し出されてあっけなく死んでしまったりと、かなりの確率で死人が出る恐ろしい要素となっている。後述する「にげる」の使い辛さと合わせて本作のバトルの難易度を押し上げる原因の一つとなっている。
    • 特にモンスターに設定されたレベルよりも低いと起こりやすくなる為、レベルが足りない状態でダンジョンに挑むのが難しくなっている。
    • 隊列の概念は前作『II』にも存在したが、前作では後列に立つと弓以外の攻撃が当たらない代わりに物理攻撃を受けないという極端な状態だったのに対し、本作ではダメージ率や攻撃力の減少といった補正がかかる程度とマイルドな効果に変更された他、前作と違い戦闘中に隊列を変更する事も可能になった。

グラフィック・システム面

  • 過去作よりも戦闘テンポが良くなった。
    • 本作では前作『II』までと同様にドラクエ式のメッセージ表示形式が用いられているが、ダメージ及び回復値はキャラクターグラフィック上に数値がダイレクトに表示されるようになった。全体攻撃/回復時にはそれらがまとめて表示され、魔法エフェクトの表示時間が短縮された結果、前作で顕著かつストレスの要因の1つだった「全体攻撃に要する時間が長い」点が改善されている。
      • むしろ全体攻撃で一度にとどめを刺すと敵が一気に消滅する為、爽快感の向上に繋がるようになった。
    • 味方キャラの物理攻撃時には過去作同様武器を振るモーションが入るのだが、これも高速化&多段化。
      • 『II』での素手攻撃のようにすべての武器攻撃でのヒット数がアニメーションに反映されるようになったが、ストレスを感じさせず、それでいて爽快感があるギリギリのラインの演出時間であったため好評を博した。*7
    • 「たたかう」で攻撃する際、対象が既に倒されていた場合に自動で対象を切り替えるオートターゲット機能が導入された。
      • 魔法は対象がいなくなっていると不発になるため不便なままだが、詠唱が必要なので咄嗟には標的を変更できないのだと考えれば、これはこれで独特なリアリティがある。
        また大半の魔法は対象を全体化できるため、全体指定で放っておけば不発のリスクは回避できる。ただし全体化した魔法には、別のリスクが発生してくる(後述)。
  • 戦闘時のグラフィックもこれまで以上に派手になっている。
    • また、各ジョブのドット絵は石井浩一氏、渋谷員子氏らが担当しており、かわいらしさは健在。中でも白魔道師の上位互換ジョブである導師は「被っている猫耳フードがとてもキュート」と評判になった。
    • 前作からキャラクター(ジョブ)が大量に増えたのにもかかわらず、前作には存在しなかったダメージモーションが追加されたり、攻撃時の顔の表情の変化など細かい部分が追加され、より表現が豊かになった。石井氏によるとポーズの使いまわしをせずに差別化するように心がけたため、あらゆるポーズにジョブの個性が色濃く見られる。
      • 特に死ぬと装備品だけを残して体が消滅する魔剣士や魔人は多大なインパクトを残している。
  • アイテムは1種類につき99個までストックできるようになった。『I』では消耗品のみだったが装備や魔法など全アイテムに適用される。さらに、持ち歩ける枠そのものも大幅に増えた。
    • また、特定の場所で呼び出せてアイテムの預かり所となってくれる「でぶチョコボ」も登場。すぐには用途がないが捨てたくもないというアイテムは、預かっていてもらうこともできる。
      • 利用には専用のアイテム(消耗品)が必要となるが、そこそこ早い時点から、要所要所で会えるように配置されているため不自由することは少ない。
    • 『I』『II』で悩みの種だったアイテム欄の不足は、本作でかなり解消されたといえよう。

シナリオ面
物語の最序盤の段階からプレイヤーの意表をついてくるストーリー展開と、空や海中をも縦横無尽に駆け回る世界観の広大さにより、壮大な物語世界を形成している。

  • ゲーム開始直後にいきなり飛空艇が手に入るのも今までにない展開で意表を突かれる。その後もストーリーが進めば船が変形するエンタープライズ・改等の様々な個性的な乗り物が登場するようになった。
    • 特に飛空艇ノーチラスのスピードはナーシャ・ジベリ真骨頂ともいえ、ファミコンとは思えないほど超高速に移動できる*8
  • ゲーム開始直後に唐突にダンジョンに放り込まれた少年たちが訳も分からぬままボス戦に挑み、そして自身の使命を知って旅立ち雄大なフィールドマップに降り立ったところで名BGM「悠久の風」が流れだす……という、絶妙なつかみと流れのシナリオ展開で幕を開けることになり、これまで以上にないスケール感を感じさせてくれる序章となっている。
    • ただし物語自体は王道的かつわかり易い展開であり、「主人公=プレイヤー」という図式を1作目から引き継いだこともあってドラマ性はやや薄まっている。これは「前作がストーリー寄り過ぎたことへの反動」だとDS版の攻略本で語られている。
    • ストーリーは王道ながらも印象的なものが多い。特に親しくしてくれた登場人物の死に直面する事が多く、その死をどのように感じ、乗り越えていくかといった後のFFシリーズにも深く語られるようになる「死」というテーマが色濃く出始めたのも本作の特徴である(前作『II』でも多くの登場人物が死ぬが、戦争による犠牲と言う側面の方が大きく、テーマとして大々的に「死」を扱っていたわけでない)。
      また、ストーリーが重くなり過ぎないように前作では見られなかった4人組のじいさんなどのコミカルなイベントも挟まれるようになった。
  • また、複数のフィールドマップが登場した初めてのシリーズでもあり、前二作に比べてスケールの大きさを感じさせる要素となっている。
    • 特に初めてフィールドマップが移り変わる瞬間はシチュエーションも相まって非常に印象に残るものとなっている。以後のシリーズでも『VI』までは複数のフィールドマップが存在する事が定番となっていた。
  • チョコボと並んでFFのマスコットとなる「モーグリ」が登場したのも本作が初。しかし、まだ設定が固まっていないせいか「ニャー」と鳴いたり、ですます調で知的に喋るなど、後のシリーズとはずいぶんと違う。
  • 入るためにカエルや小人に変化する必要のある場所が登場。
    • 「トード」による「カエル」、「ミニマム」による「小人」は前作にもあったものの何のトクもないただの状態異常でしかなかったが本作ではこれらの状態が進行に必要になってくる。
    • 姿を変える魔法の活用法として、かなり独特な使われ方をしており印象に残る。イベントで強制的に使われるのではなく、自分でコマンド使用しカエルや小人になって進むというのがまた面白い。
    • 特に小人については、小人のままダンジョンを攻略することになる箇所もある。武器攻撃の威力は雀の涙になってしまうため魔法系のジョブへのチェンジが必須に近い。
    • さすがにカエル(戦闘能力皆無)のままで戦闘が必要になる箇所は無く、こちらは侵入口を通過後、即座に解除可能。
      • ただし、カエル状態を解除していいというヒントは皆無。
        小人ダンジョンのほとんど直後に配置されている都合もあり、カエルのまま突破する場所だと思い込んで雑魚を相手に逃げ惑ったあげく、ボスへの攻撃手段がなくて途方に暮れたプレイヤーも少なくなかったことだろう。同行している仲間に話かければカエルから戻っても大丈夫なことを教えてくれたり、道中の敵がトードを使ってくれてカエルから戻れることのヒントになる様な行動でもしてくれればこの様な悲劇はおこらなかっただろう。

BGM

  • 特に幻想的な曲調のフィールド曲「悠久の風」は本作を象徴する名曲で、後のDSリメイク作では「悠久の風伝説、再び」というキャッチフレーズが用いられたほどの人気である。
    • また、収録曲数も倍増。特にイベントがない「ギサールの村」にすら専用のBGMが用意される等、非常に多彩になった。
    • 浮遊大陸脱出直後の「果てしなき大海原」と「水の巫女エリア」も「悠久の風」に劣らない名曲でありながらストーリーを進めるとすぐに聴けなくなってしまう為、直前のセーブデータを残すプレイヤーが続出した。
    • また上記2曲の陰に隠れがちだが「巨大都市サロニア」も勇壮で力強く、そのエピソードをクリアしてしまうと二度と聴けなくなることを惜しむプレイヤーが多い。

問題点

ゲームバランス面
ジョブの性能格差

  • 「状況に応じてジョブを使い分ける」という建前のジョブチェンジシステムだが、後作と違い、多種多様なジョブを使い分ける必要性は(ごく一部のボス戦を除けば)あまり高くない。「戦士→ナイトのような上位互換が存在するジョブ」や、「活躍できる場面でも使う必要がないジョブ」も散見される。
  • 最終盤では実用に堪えるジョブが半分にも満たず、選択肢が非常に狭い。
    • 特に終盤に手に入る武器防具が装備できないジョブは不遇であり、加えて装備品も剣以外の種別があまりにも少ない。結果として終盤になると大半のジョブは選択する事自体が縛りプレイになってしまう。
    • 一方でジョブの使い分けの観点から批判を受ける事のある『忍者』『賢者』についても、後述する非常に長いプレイ時間や初見殺しからのリトライも相まって円滑な攻略のために頼らざるを得ず、一概に難点とは言い切れない事情がある*9。やり込み派のプレイヤーでない限りラストダンジョンの攻略には欠かせない。
    • ジョブのバランスに関しては開発スタッフも反省点として挙げており、リメイク版で調整される事となるが、ジョブ間の上位互換に関しては発売から時間が経ってから出た反省点であり、当時は序盤の初級ジョブから終盤の上級ジョブに乗り換えていくシステムとして作っていた事も述べている。
    • 余談だが、現在ではそれなりに研究が進み、通常プレイでは使用しないジョブの一部コマンドや専用武器に局地的な活路を見出して使用したり、所謂弱ジョブを縛りプレイ的に使用して楽しんだりしているプレイヤーも多く存在し、極端に偏らせたジョブ編成でなければクリア自体は可能である事が判明している*10

全体化した魔法が弱い

  • 大半の魔法は対象を単体/グループ*11/全体の三種類から任意に指定できるのだが、複数の対象を指定していると効果がものすごく低くなる。
    • これは与えるダメージ量や回復量を単純に対象の数で割っているためである。
  • なお、状態異常を与える魔法に関しては、さすがに成功率が数で割られることなどなく、独自の計算式が適用される。また最初から効果範囲が全体で固定されている攻撃魔法については、対象が何体いようと効果が変わらず、総じて高めの威力を発揮する。

一部のダンジョンの難易度が高い

  • 特にラストダンジョンの長さは今なお語り継がれており、多くのプレイヤーにトラウマを刻み付けたという。
    • 本作のラストダンジョンは『クリスタルタワー』と『闇の世界』。流れとしては、「クリスタルタワー最上階でボスを倒す→イベント後『闇の世界』に到達→闇のクリスタルを守る4体のボスを倒す→ラスボスを倒す」となるのだが、途中にセーブポイントがない上に脱出不可能であるため、一気に攻略することを強いられる。時間的にも非常に長く拘束*12され、熟練したプレイヤーでさえ2時間はゆうに超える。
      • まず『クリスタルタワー』自体が本作屈指の長丁場となるダンジョンであり、そのうえで後に控えた『闇の世界』も広いため、探索だけでも非常に時間がかかる。
      • さらに一部のボスが非常に強く、ラスボスに至っては闇のクリスタルを守る4体のボス全てを倒してからでないと絶対に倒せない。それでいながら「闇のクリスタルとその守護者」に関してはほぼノーヒントなうえ、画面上も少し意地悪な構造で隠されていて気づきにくい。素直に進むと、絶対に勝てない状態のままのラスボスへ直行してしまう*13
      • 結果、長い時間をかけてクリスタルタワーを登ったはいいが、闇の世界のボスに全滅させられたり、そもそも仕掛けに気付かずラスボスに全く歯が立たなかったりして、またクリスタルタワーを登るところからやり直し…という事態に遭遇したプレイヤーは数知れず。
      • ラスボス戦に関しては本当ならば一度は直行して全滅するのが織り込み済みで、そのあと戦力を整えるためレベル上げをしているうちに「闇の世界」の秘密に気付く、というのが想定された攻略ルートだったと思われる。
        だが、実際は搭載予定だったセーブポイントが削られたため(後述)、闇の世界でレベル上げをしたり、その過程で隅々まで歩き回るだとかいった発想へも至れなくなってしまっている。
      • 「闇の世界」のスタート地点が、ラスボスに向かう進路の真正面(しかもものすごく近い場所)になっているのも、うっかり闇のクリスタルに向かう前に突入してしまい返り討ちに遭う原因の一つになっているとも言える。「闇の世界」に入って早々にいかにもな入り口が見えてしまっており、闇のクリスタルへ向かう道の方は正直なところ何かあるとは思いにくい構造をしていて、そちらの道に比べるとラスボスへ至る道ということもあってか非常に存在感がありよく目立つ。この様な造りになっているのもまた引っかかる人が出てしまいやすい原因なのではないかと思われる。スタートの位置が闇のクリスタルへ向かいやすい様な場所になっており、ラスボスに向かう通路より先に発見出来る様になっていれば被害者も少なくなっていたと思われる。闇の世界のマップが完成済みで今更直せないといった大人の事情もあったのかもしれないが。
      • そもそもの話、「闇の世界」に向かう前に助太刀に来てくれた仲間たちとのやりとりがあるのだが、 誰も"まずは闇のクリスタルを探して、闇の戦士達の力を借りる様にする"ということを教えてくれない のも返り討ちに遭う原因になってしまっているとも言える。この当時のゲームは今ほどユーザーフレンドリーに溢れているとは言えないものも多く、自分で気付いてなんぼというものも多かったので、ノーヒントで気付かなければいけないものも多かったので仕方がないところなのかもしれないが、本作に限っては かなり長いダンジョンを経なければならない という気軽にやり直せるものになっていないので、この辺りの配慮があってくれればかなり違ったと思われるところである。
      • 半ば冗談めいて「真のラスボスは時間・親の呼び出し・ペットによるリセット」とまで言われるほど。
        実際、当時ファミコンのプレイ時間を制限していた世帯例は枚挙に暇がなく、エンディングも含めると3時間は要するため、子供達にとってオールクリアは極めてハードルが高かったという。
    • ラストダンジョン以外では「長い」「メインで出現する敵が逃走不可能なうえに分裂する者ばかり」「隠し通路満載で迷いやすい」という三重苦の『暗黒の洞窟』『古代遺跡』も難所として挙げられる。
      • 特に『古代遺跡』の下層3階層(地下5階~8階*14)では「分裂モンスター」が初登場する。攻撃力もそれまでよりグンと高く、何より厄介なのが「魔法、もしくは暗黒剣以外で攻撃すると分裂*15する」というもの。この段階では正規の方法で暗黒剣を入手する手段がない。かといって魔法系で行くと、そこまでの道中で出る「増殖モンスター」が出るため魔力を消耗しやすい。
        実は麻痺状態なら増殖はもちろん分裂もしないので、それまでの主力であるナイトでも二刀流の内、マヒ効果を与える古代の剣を片手に持っていれば分裂も増殖も防げる。
    • 小人にならないと進めないダンジョンも難しいという程ではないが面倒な点が多い。
      • 魔法以外の攻撃が通用しないため黒魔道師に強制的にジョブチェンジする必要があるのだが、その度にキャパシティを消費するのも煩わしくなってくる。
      • しかもMPを持たないジョブを1度でも経由すると、強制的にMPが全て空っぽになる。魔法職へのジョブチェンジ後は、宿屋か回復の泉でのMP回復がほぼ必須。
        なお赤魔道師や狩人などMPが少ないジョブを経由した場合も、そちらの上限の方に合わせて現在MPが減る。
      • このタイプのダンジョンは全部で3ヶ所あるが、1つだけしかボスがおらず後はただ通り抜けるだけで良いのが救いか。
      • 最後の場所限定にはなってしまうがMP切れが不安な場合、風水師を使用して行く方法もある(失敗が怖いが)。
      • 最後の場所に限って言えば、シーフのとんずらや幻術師の白エスケプでガン逃げしていくという手もあり。ボスも登場しない場所なので悪く無い戦略かと思われる。

魔法のバランス

  • 即死魔法全般
    • 本作では変化・空間転移・一発石化などの様々な魔法が、敵に対しては即死と同様に一撃で倒す効果として扱われている。
    • 問題は、それらへの完全耐性を有する雑魚敵が非常に少なく、ほぼ全ての雑魚敵に通用することである。
      • 成功率は基本魔法命中率やジョブの熟練度、キャラのレベルによって変化するため序盤こそ使い辛いが、極めるとたいていの雑魚敵は複数掛けでも高い成功率で即死が決まってしまう。
      • 特に白魔法の「トード」と「ミニマム」は必要な魔法レベルも低く、最後のほうになるとこれが40回近くも使えるようになる。成功率も高位即死魔法の黒魔法「デス」「ブレクガ」等とさほど変わらないため、それらの価値が相対的に下がってしまっている。
    • また、本作の即死魔法はボス戦では敵・味方が唱えたもの問わず無効となるという設定であるが、これがまた新たな問題を生み出している。
      • 例えば、序盤で戦う事になるボス「メデューサ」は8割の確率で「ブレイク」を使用してくるが、上記の仕様の為絶対に発動しないブレイクを唱えまくる雑魚と化してしまっている。「メデューサといえば相手を石化させる」というイメージを再現しているという意味では石化効果のある行動をとることは間違ってはいないのだろうが…。
  • ヘイスト、プロテス
    • 前者は物理攻撃のヒット数増加(=与ダメ増)、後者は防御/魔法防御力を上げて被ダメージを減らす魔法。問題なのはこれらは重ね掛けが有効である点。重ね掛けをすることで前者ならヒット数がカンストして物理攻撃で大ダメージを与えられるようになり、後者なら大半の攻撃を1ダメージにまで減衰させてしまう。
    • ただし、当時は強化魔法の効果を強制解除してしまうバグ、通称「ウィンドウイレースバグ」の存在が明らかになっておらず、その影響でこれらの魔法の強力さがあまり認知されていなかったこともあり、そこまで大きく問題視はされていなかった。
  • 追加効果でブレイクが発動する武器
    • ブレイクは対象にステータス異常「徐々に石化」を付与する魔法。内部の蓄積値がある値にまで達すると石化状態となるのだが、追加効果でブレイクが発動する武器を二刀流して攻撃した際は、武器の組み合わせにもよるが一発石化が狙えてしまう。
      さらに前述した通り雑魚敵の大半は石化完全耐性を有していないため、ラストダンジョンの敵であっても一撃で倒せることが多い。
      • 特に忍者と賢者は、徐々に石化の効果がほぼ確実に発動するので「ブレイクブレイド」や「ゴーレムの杖」等の武器を両手に持って攻撃していくと雑魚戦に限るが、ボコボコと相手を石化させていくことが出来るという凄まじい性能を発揮することが出来る。
    • 余談になるが、黒魔法の「ブレイク」一発では絶対に石化しないので、本来のブレイクの方は何度も重ねがけして成功を繰り返さないと意味が薄いという、恐ろしく使いにくいものとなってしまっている。現在の「ブレイク」の様な一発で石化は、上のレベルの「ブレクガ」に譲ることになる。
  • 黒魔法が不遇気味
    • 上記の通り序盤から終盤で回復に必須、極めると攻撃・補助も強力な白魔法に比べると、黒魔法はやや不遇と言わざるを得ない。
      • シリーズでの黒魔のウリとして「ファイア・サンダー・ブリザド」の3属性の攻撃魔法を相手の弱点に合わせて使っていくというものがあるが、本作の敵は〇〇属性に弱点持ち、より耐性持ちの方が多く、(特に中盤以降で)弱点魔法を突くといった運用がし辛い。比較的序盤に属性武器が手に入る事もあり、弱点を突く際も魔法より属性武器二刀流で叩いたほうが遥かにダメージが稼げるのも難点。
      • 「こびと」状態でも一定のダメージを与えられるので強制こびとダンジョンでは必須、「まどうしハイン」のバリアチェンジにも必須、と活躍の場が無いわけではないが、どれも強いというよりはギミックに必須という感じで使い続けるにはやや辛い。
      • 終盤で上位ジョブの「まじん」「けんじゃ」になると無属性の「クエイク」や「フレア」が強力なのでやや復権できる。

『逃げる』コマンドの使いにくさ

  • 本作では「メンバーの内誰か1人でも『逃げる』コマンドを選択すると、メンバー全員が『にげごし』という状態になる」という仕様が存在する。
    • 『にげごし』状態だと敵の攻撃力が2倍、物理防御力・防御回数・回避率いずれも0として被物理ダメージが計算されるようになる。ステータスにもよるが受けるダメージは通常時比で約4倍程となり、ただの通常攻撃が即死級の大ダメージに跳ね上がる。
    • さらに『逃げる』コマンドの成功率が低い。シーフの『とんずら』や白召喚の『エスケプ』による逃走以外で逃げるのはほぼ無理。しかも『逃げる』『とんずら』では逃げられない雑魚敵がいるなど制約だらけ。基本的に「雑魚戦で逃げる」という選択肢は本作にはない。
    • 加えて逃げる可能性が上昇する「せんせいこうげきのチャンス」が判明するのはコマンド入力後となっており、ギャンブル性が高い。
      • 裏を返せばこれらのことから魔剣士、空手家、竜騎士など「にげる」コマンドを持たないジョブは、それが気にならない。
      • 例外的に使い道があるのは「小人にならないと進めないダンジョン」攻略時。小人状態のダメージ計算式は、防御力が1になる以外は『逃げる』を選択した時と同じになっている。該当ダンジョンではそれを見越して敵の攻撃力も低めに設定されており、また『にげごし』で防御力が0になったところでほとんど変わらないため、『逃げる』ことも選択肢に入ってくる。
    • このリスクは製作スタッフによると「逃げないで戦闘してほしいから」という意図によるものらしいが…。かなり不評であったのだろうか、続く『FFIV』では「逃走成功時に確率でお金を落とす」ようにデメリットが変更され、『FFV』以降は逃走時のデメリットは撤廃されている作品が多い。

敵の行動パターンの単調さ

  • モンスターの数は200匹以上いるものの、行動パターンが「通常攻撃のみ」というモンスターの割合が多く、やや単調。
    • 通常攻撃でなくても攻撃パターンを1つしか持っていない敵が非常に多く、これは終盤を含めたボスにも多く存在する。
      • 厳密にいうと、プログラムの仕様上か必ず通常攻撃のパターンも組み込まれているが使用確率がかなり低くされているため、実質1パターンという形になっている。
      • 直接な攻撃魔法はだいぶ後半になってもラ系止まりで、ガ系を使うのはクムクムのみ(ブレクガならファハンやプラティナル等も使う)。
    • 前作『II』ではザコ敵やボスも含めて多彩な攻撃を仕掛けてきていたため、余計に気になるところである。
    • 必ず単体出現の大型サイズや2匹まで出現する準大型サイズのモンスターも、同時期の小サイズのモンスターとステータス的に大差ないものが多く、出現数が少ない分だけ相対的に弱いので、見掛け倒しな存在と化している。

攻撃アイテムが後半役立たず

  • 「攻撃魔法の効果を持つ使い捨てアイテム」が複数種類存在するが、黒魔法や白魔法と違って「レベル16毎、知性16毎、熟練度32毎、の魔法ヒット数増加」が適用されないため、浮遊大陸を脱出したあたりから威力的に役に立たなくなっていく。後半に登場する攻撃アイテムはほぼ換金用にしかならない。
  • 一部、とはいえ、そこそこ多くの装備アイテムからも、魔法を発動することができる。こちらは使ってもなくならないのだが、消耗品と同様にヒット数が増加しないことから、実用性はほぼゼロ。
    • むしろ消耗品よりもヒット数が低く抑えられている傾向がある分、より一層に使えない。
    • 赤魔道師や白魔道師が「アイテム使用によりタダで「ファイア」を使える「もえるつえ」が早々に手に入るため黒魔道師の素材意義がない」などとする考察も存在するが、自前の魔法とアイテム発動した魔法の効果は比較にならない域で差がある。中盤で購入できる「ルーンのつえ」(18000ギル)は「ブリザガ」の効果とはいえ、これも黒魔道師が使う「ブリザド」と比べても弱くいくらタダとはいえ実用に適するものとは言えない。
  • アイテム効果には、使用者の知性が反映されていないと勘違いするプレイヤーも少なくなかったレベル。
    • 実際は反映されているのだが、肝心のヒット数が増加しないため上昇効率が非常に悪く、反映されていないのに近いというのが実情ではある。

有用な回復アイテムの入手制限が厳しい

  • 序盤では無料の泉を除き、戦闘不能を回復できるのは「フェニックスの尾」だけなのだが、今作では非売品で個数限定なので、おいそれと使えない。レイズの魔法が登場するまでは、極力泉での回復だけで我慢せざるを得ない。
  • また、MPを回復できるアイテムがやはり非売品の「エリクサー」しか存在しないため、やはりそう簡単に使えない。
    • ただし、ラストダンジョンまで来れば落とす敵が登場するので一応量産は可能。
  • 序盤のダンジョン「山頂へ続く道」で登場する「ダイブイーグル」は石化*16の追加効果を持つ攻撃をしてくるが、この時点では石化を治すアイテム「金の針」が買えない。
    • 一応、町中や道中の宝箱から金の針がいくらか手に入り、ダンジョンそのものは短く、突破後に「回復の森」があり近いうちにリカバー可能なので、ちょっとしたスリルととらえることもできる。
    • リメイクではカナーンで金の針が売られるようになり、この脅威はだいぶ緩和されている。

ゲームバランスを激変させるバグが多い。
以下、有名なものを特筆する。

  • アイテム99個技
    • 何かのアイテムを99個所持させた状態で、アイテム欄の並びを特定の配列にし、その状態で敵から99個持っているのと同じアイテムをドロップで入手すると引き起こせるバグ。
      • 色々と効果があるが、特に酷いものは「対象にしたアイテムのIDを1つ次の物に変更する」「先頭のキャラの経験値がカンストし、以降戦闘終了毎にレベルが上昇していく」の2つ。見て分かる通り最序盤でやるとゲームバランスが完全に崩壊する。
      • オープニングで風のクリスタルの力を得て地上に戻ってきた直後、最初のダンジョンに出現するゴブリンが落とすポーションで早速実行可能なのがこのバランスブレイカーぶりを助長する。ポーションを99個買い込むだけの金を稼ぐまでが若干手間だが、一度達成してしまえばいきなりオニオンフル装備を揃える事も、それらを売り払って使い切れないほどの金を生み出す事も何でもできる。
    • 長丁場のダンジョンに備えて回復用のハイポーションを99個持って突入したら、敵がハイポーションを落として意図せずバグってしまうといった事故も起きる。
  • ウィンドウイレースバグ
    • 戦闘中にアイテム欄を開くと、一定の法則に従ってかかっていた強化効果が強制的に解除されてしまうバグ。防ぐ方法は一切なく、間違えてアイテム欄を開いて閉じただけでも発動してしまう。
    • 本作の時点では強化されている状態が画面上のキャラ表示に反映される演出がまだ無いため、強化が解除されていることにも気づけない。
    • これにより、「強力な強化魔法であるヘイストやプロテスが役に立たないと勘違いされる」「忍者専用の超強力武器『手裏剣』がこのバグの影響をもろに受けてしまう」といった損害を知らず知らずのうちに受ける。
  • アイテムドロップに関するバグ
    • ドロップアイテムが設定されているモンスターの場合、本作ではほぼ常に8種類ものアイテムが設定されている。
      しかし乱数の拾い方に問題があり、実際に落とすのは「落としやすい」設定の3つに限られ、「落としにくい」側の5つは絶対にドロップしない。
    • このため攻略本ではドロップするかのように書かれているアイテムの半数以上は、実際にはモンスターから手に入れることができない。
      ここには非売品・貴重品が多く含まれており、例えば蘇生アイテム「フェニックスの尾」や、事実上の最強の矢「メデューサの矢」などが、宝箱から少数を拾えるだけの限定品になってしまっている。
      宝箱から拾う機会すらない「かめのこうらわり」「ちんもくのおふだ」に至っては、入手する機会がゼロの没アイテムと化した。どちらもそこまで欲しくはないが。
    • せめてもの救いは、ゲーム中最強を誇る隠し装備品オニオンシリーズ(「オニオンソード」「オニオンシールド」「オニオンヘルム」「オニオンアーマー」「オニオレット」)のみが例外的に、きちんとドロップ判定されているということだろうか。
    • また本作では「アイテムを落とす可能性のあるモンスター」そのものが一部に限定されており、4分の3近いモンスターは元から何も落とさない。
      しかし裏を返すと4分の1近いモンスターが、そこそこの確率でアイテムを落とすため、影響を軽視できないバグともいえる。
  • 不憫な武器「ラミアの竪琴」。
    • 「時の神殿」の宝箱から手に入る武器で、攻撃力ゼロながら攻撃の追加効果で混乱させるというものだが、実際に使ってみると「われにかえった」と出るだけ。
      • 実は、これは「追加効果で混乱させる」→「ダメージを与える」→「そのダメージで我に帰る」という形で処理されているので混乱状態にすることができない。もちろん攻撃力0なのでダメージもしょぼい。一応敵よりも先に行動して我に帰らせることで敵の行動をキャンセルすることが可能。これでも吟遊詩人の役に立たなさを考えるとまだマシな効果というのが泣けてくる。
    • 結局のところ物珍しさなのでハナから脱線したお遊びの域を出ず、純粋な戦闘手段として扱った者など限りなくゼロに近かったのが不幸中の幸い。
  • 属性強化バグ
    • 魔道師用のロッド「炎の棒」などを装備すると「ほのおのまりょくアップ!」というふうに炎魔法の威力が上がりそうなメッセージが表示されるが、実際には全然強化されていない。冷気や電撃も同様。

総評

FFシリーズを『ドラゴンクエスト』と並ぶ家庭用国産RPGの国民的タイトルへと伸し上げた名作。
ジョブ間のバランスやゲームバランスを激変させてしまうバグの存在などの粗はあるが、高水準のグラフィック、壮大なスケールのシナリオ、「悠久の風」等の耳に残る名曲の数々等で人気を博し、シリーズ初のミリオンヒットを達成した。
SFC以降のシリーズの基礎もほぼ本作にて確立されており、シリーズの大きな転換点となったといえよう。


余談

  • FF3制作当時、坂口氏が実家で発生した火事で母親を亡くすという痛ましい出来事に見舞われ、大きなショックを受けたそうだ。『悲しみをどう乗り越えたらいいのか、残された者のすべきことは何なのか』を強く考えるようになったといい、この経験がゲーム中での死別イベントに大きく影響していると語っている。
    • これら次回作『IV』以降も一貫して見られるようになったほか、「火事」に関連するイベントが多く登場しているのもこの出来事の影響だという。
  • 本作で登場したチョコボ牧畜の村「ギサールの村」に由来した「ギサールの野菜」は村そのものが出ない後々の作品まで受け継がれている。
    なお、たまに「ギール」と誤植されるが、初出の本作では「ギサール」である。『VII』等、正式に「ギザールの野菜」になってしまっている作品もあるが…。
  • ラストダンジョンが長くセーブポイントもないのは、テストプレイ時に「ラストダンジョン、セーブポイント多かったから余裕でした」と言われたことに開発者の坂口博信氏が反発したためである。その結果、セーブポイントを廃止するなど難易度が大きく引き上げられてしまったとの事。(ファミ通のインタビュー記事)プレイヤー側からしたら、八つ当たりもいいところである。
    • 相当な難易度だったため、前述のアイテム変更のバグを救済措置的に利用して強力な武器を増やしまくることでごり押すプレイヤーも多かったらしい。
  • 本作は各地の村や町に置かれたピアノを弾くことができ、その際の専用曲も用意されている。
    • その内の1つ、アムルの街で弾ける『スイフト・ツイスト』は、同社が本作以前にディスクシステムで発売した『アップルタウン物語』からの流用曲である(そちらの作曲も植松氏)。
  • 今作で死に別れをするゲストキャラクターが大幅に減った事について、「『II』で殺しすぎたため」とファミリーコンピュータMagazineのインタビューで答えている。
  • 攻略本(発売:NTT出版 / 編プロ:エーワンオフィス)が発売されたが、「全3巻なのでお財布的に厳しい」「エンディングを含めてストーリーが完全ネタバレされている」「没モンスターがあたかも登場するかのように記述されている」など、攻略本としての信憑性・あり方に若干疑問符が付く。
+ 詳細
  • 「フリアイ」や「さまよう金貨」など没モンスターが含まれている。メーカーからの資料のデータリストを検証せずそのまま載せていたせいと思われる。
    • その一方で何故か没モンスターではない「ニンジャ」と「ザンデクローン」が載っていない。どちらもメインの攻略頁では写真付きで載っているのに、肝心なモンスターの一覧の頁ではハブられている。
  • 「アズリエル」と「ハニエル」のキャラグラフィックの写真が逆になっている。色違いだがアズリエルは増殖モンスター、ハニエルは分裂モンスターであり性質が全然違うので、対処法を間違えると大変なことになる。
    • またアズリエル分裂モンスターではないのに「暗黒剣以外の攻撃で分裂」と誤記されていた(「イーター」も同様)。
  • 「デスニードル」の攻撃による追加効果が「蛙」になっており、解説の文言でも「運が悪ければ蛙にされてしまう」とあるが下位種の「ニードルモンキー」同様追加効果は「毒」でしかない。
  • 終盤の中ボス「アーリマン」が回復魔法を使うことをやたら大袈裟に書かれているが何かと思えばまさかのケアルラ。しかも8ターン目とタイミングも遅く、オニオングッズやリボンで鉄壁の防御を固めた上で相当ナメてかからない限り見ることはないレベル。一応回復を使うボスは唯一とはいえ、その大袈裟な文言から回復量を上回る火力がないと倒せないといったようなイメージをしていようものなら拍子抜けもいいところ。
    むしろ3000超のダメージを全体に与えてくるメテオの方がよっぽど恐ろしいはずなのに、それはまったく無視している。
  • お頭、影、ヨルムンガンドがクリスタルタワーだったり、グラシャラボラスが闇の世界だったりとモンスターの出現場所の誤りも目立つ。
  • アイテムにせよモンスターにせよ名前の誤記がチラホラあり中でも「トールハンマー」が「トールマンマー」と誤記されていたのは特に有名。
  • バイキングの武器「ダブルトマホーク」や「トリトンハンマー」が何故か剣に分類されている。前者は剣っぽいデザインになっているのでわからなくもないが後者はどう見ても剣ではない。ちなみにこの2つはバイキング専用武器ながら雷撃属性になっていないものという点で共通している。
  • 8000ギルの「サンダースピア」と10000ギルの「ウインドスピア」がともに攻撃力50となっているが「サンダースピア」の方は誤りで実際は35。
  • 「まもりのゆびわ」が「負の力で鍛えられた指輪。その魔力により指輪でありながら小手と同じ働きをする」という説明文のためか装備者が魔剣士のみになっているが、実際のゲーム内では説明文とは逆に魔剣士以外の他の全てのジョブが装備でき、唯一魔剣士1ジョブのみが装備できない(魔剣士専用ではなく魔剣士以外専用)。
  • 「トンファー」の武器のイラストがどう見ても「釵(さい)」(「タートルズのラファエロ」や「ラストブロンクスのナギ」が使うことで知られる武器)にしか見えない物になっている。逆に「さんせつこん」の方は、どう見ても「トンファー」にしか見えない物が描かれている。イラストの担当、もしくはどんな物を描くのか指示を出した人物が勘違いをしていたのか、もしくは知らなかったということだろうか。ちなみに「ヌンチャク」は有名なためか、しっかり「ヌンチャク」が描かれている。
  • アイテムは上述のドロップ仕様の不具合で正攻法では見られないアイテムも、しっかりイラスト付きで載せられている。
    • その中でも「あくまのためいき」はそのイラストもなかなかリアルで目を引くものがある。説明文でその効果は「エスナ」とあるが実際バグ技で入手して使うと「キル」の効果が発動する。そもそも「悪魔の」と付く名前の時点で攻撃的なイメージになるのが一般の見解なので「なんで悪魔なのにエスナなんだ?」と疑問を抱き入手してみたくなった人もいたとかいなかったとか。
      スタッフもこれを気にかけたか後のリメイク版で「天使の溜息(てんしのためいき)」という本当にエスナの効果のある新アイテムとして実装した。
  • ジョブ構成のサンプルは割と無難だがいい加減な一面もある。
    • 上記の暗黒剣のない時期に分裂モンスターと戦わなければならない古代遺跡がいい例で、魔道師系の構成はともかく、問題なのは「空手家3人+白魔道師」構成で「分裂されないように溜めて一気に叩く」と推奨している。実際は溜めている間に喰らうダメージがバカにならず、適正レベルではそれでも一撃で倒し切るには少々力不足。
    • 「禁断の地エウレカ」では「ナイト・魔人・魔界幻士・導師」「ナイト・魔界幻士・魔界幻士・導師」と魔道師パーティーを押しているが、エウレカでは戦士系武器が4つも手に入るので二刀流するとしても戦士系はナイトだけでなく魔剣士とのコンビにして臨んだ方が無難。
    • 「古代の民の迷宮」も「ナイト・魔界幻士・魔人・導師」「ナイト・ナイト・魔界幻士・魔界幻士」「魔人・魔人・魔界幻士・導師」と戦士系をナイトのみにしているが、この時点でナイトが使える武器は攻撃力95のディフェンダーで、魔剣士の菊一文字(攻撃力125)に比べると弱いので、ナイトを2人も入れるぐらいなら魔剣士を含めた構成にした方が効率的。また魔界幻士は基本的に全体攻撃なので、単体出現限定の大型モンスターや、2体までしか出現しない中型モンスターばかりが出るこの洞窟ではその効率も良くないので不向き。
  • 本作品で確立された「ジョブチェンジ」の概念やクリスタルを神格化する世界観は、『FF5』や『FF11』に色濃く受け継がれていくこととなる。
    • 『FF5』では本作同様のジョブチェンジシステムを搭載し、『FF3』の問題点であったジョブ性能も全体的に強化されたため格差は縮んでいる。
      『FF11』では「ジョブをメインとサブの2つ付けられる『サポートジョブシステム』」が実装されていたり、ストーリー面でも「『クリスタルの戦士』が敵として立ちはだかる」などしている。
  • 本作にバグが多い理由は、メインプログラマーがシリーズ初代から関わってきた敏腕プログラマー、ナーシャ・ジベリ氏であることも大きい。
    • 彼が組んだプログラムは極めて高度な技術力の元に構成されているため、かなり複雑かつ繊細な性質を持っており、ゆえにバグも発生しやすかったのである。
    • ゆえに「本作がなかなかリメイクされないのは彼のプログラムを解析できないからだ」と揶揄するファンもいた。そして、それがあながち間違いではなさそうだと思わされてしまう辺りがまた凄まじい。
      • 実際のところ、ジベリ氏は限られたファミコンのスペックで高度な表現を実現すべく、ハードウェアの性能に極度に依存したプログラミングを行っており、ゆえにリメイク・移植の上で根本的なゲーム性を忠実に再現するために相応のハードスペックが求められてしまうことが、長らくリメイクの実現しなかった原因だったという。(『WEEKLYファミ通』907号(エンターブレイン、2006年)104頁(田中発言))
        本作はある意味、ファミコンの限界を超えた作品なのである。上位機種でも容易に再現できなかったくらいに。
  • WSCへの移植が予定され画面写真も公開されていたが、結局発売中止になってしまった。
    • 名作シリーズの『I』『II』に続く移植作品でWSCの期待の目玉として発売予定だったが、元々のプログラムが複雑だったことと、WSの売上が芳しくないことなどから中止となった。
    • WSの不振については、当時スクウェアは任天堂と断交状態*17にあったため、GBAのライバル機種のWSへの主力タイトル投入を表明していた。
      • しかし、GBAの好調なセールスと他のサードパーティの勢力伸長(特に当時最大のライバル企業であったエニックス)、任天堂とスクウェアの関係が雪解けムードに移行したことも手伝い、スクウェアはWSへのリソースを急速に縮小させていた。
    • 本作を目当てに、そこまで行かなくとも発売を前提としてWSCを買ったという人も少なくはなく、落胆する声も複数聞かれた。未だに「WSC版は?」というネタが出る程である。
    • 結局『III』のFC以外の機種への進出は約5年近く経過した後で、本作から16年目に発売されたDS版が初になった。ただしDS版はリメイクであり、『III』の正式な移植作はさらに時を経た2014年の3DSバーチャルコンソールまで待たせられることに。DS版はその後PSPにも移植されている。
    • 別件でGBAへ移植する話もあったらしいが、これも同様に音沙汰がないまま消えた。
      • 任天堂が「FC版をそのままGBAに移植したもの」をデモとして持ち込んできていたという話がDS版の攻略本に掲載されたスタッフインタビューに存在しているが、同じ物を指しているのかは不明。
    • なお、当時本作は海外で発売されず、後に北米で『FFVI』が『III』の名称で発売された。PS1世代以降はシリーズのナンバリングが日本版と統一されたが、それまで海外では「III=日本でいうVI」だった。
    • それからさらに15年後(オリジナル版から31年後)に2Dリマスターである『ファイナルファンタジー ピクセルリマスター』シリーズ(Steam/iOS/Android)の一作にラインナップされ、2021年7月29日に発売された。⇒ファイナルファンタジーIII (ピクセルリマスター)
    • ベタ移植ではなく、ジョブ性能や一部仕様に調整が入ったアレンジ移植である。グラフィックはSFC時代のFFシリーズを彷彿とさせるドット絵となっている。
  • 「悠久の風伝説」というタイトルでコミカライズされている。
    • 原作は勿論寺田憲史氏で作画は衣谷遊氏。マル勝ファミコンで連載。全3巻。
  • 「シナリオ/寺田憲史」「キャラクターデザイン/天野喜孝」「プログラム/ナーシャ=ジベリ」「音楽/植松伸夫」のオリジナルのスタッフが集結した最後の作品である。
    • 本作発売後10年以上経過した頃、シナリオライターの寺田憲史氏は雑誌『ゲーム批評』のインタビューにて、「FFには興味も無いし、二度と関わる気も無い」と発言。『IV』以降関わらなくなったのは喧嘩別れであったことが確定してしまった(少なくとも2020年4月末現在までは一作品も存在しない)。曰く「シナリオのことをよく知らない人が作品全体に権限を持つようになりましてね。そうなると、もう滅茶苦茶でして、ああもうどうぞ後はご勝手にって感じで離れましたね」*18との事だという。ここまでの喧嘩別れはなかなかお目にかかれないもので、当時のファンは驚きを隠せなかった。
      • おかげで『IV』『V』は以前とは路線が変わり、「起承転結の無い素人シナリオ」とゲーム批評だけでなくファミコン誌からも苦言を呈される様になる。ストーリーがわかりやすくなり多くのネタセリフも生み出すことになったが。しかし、同様の苦言をされつつも後々の『VI』あたりから「イベントを積み重ねるジェットコースターの様なシナリオ」と別方向に評価が上がっていく様になる。
      • なお同号の別の記事ではFFシリーズのシナリオについて、初期作品はキャラ死亡で子供心に世間の厳しさを刻み込むイベントばかりで純粋に感動できるような代物は少なかった。『IV』以降はプレイヤーに用意されたドラマを体験する方向性を打ち出した一方で、主人公の主体性は感情移入の妨げになると否定的なプレイヤーも多かったが、『VI』で場面ごとにプレイヤーキャラが変わるようになり主人公1キャラではなくパーティ全体の物語を体験させる姿勢が鮮明になった。『VII』以降はムービー多用も含めて好き嫌いが分かれる作品になったが新たなファン層を獲得した。という評価。
      • ただ寺田氏の他のインタビューや公演、件のゲーム批評の前年に発行された自著『ルーカスを超える』でも特にスクウェアを悪く言ってはおらず、否定的な意見が出ているのはこのゲーム批評のみと言って良い(スクウェア以外のゲームの仕事についてはそれなりに不満を述べている)。上記のコミカライズも92年つまり『IV』発売後も特に問題なく連載が続いているし、その後も寺田氏の宣伝文句として「FFのシナリオ担当」という肩書がしばしば用いられている。
        何よりゲーム批評はアンチスクウェアで有名な雑誌であり、この件に関しては信憑性が高いとは言えない。インタビューが捏造されているとまではいかずとも、冗談のような発言が悪く取れるようにニュアンスが歪められている可能性がある。
    • 『IV』をキャラ立ち重視路線に変更した背景には、ジャンプ編集者のマシリトこと鳥嶋氏の影響がある。
      • 週刊少年ジャンプの2代目ゲーム紹介コーナー「ファミコン怪盗芸魔団」の若手ライター達*19が「『FFIII』が最高傑作だ」と推すのに対して、一度は『III』を途中で投げ出していた鳥嶋氏はドラクエシリーズの方が良いとライター達を論破してやろうと改めて『III』を最後までプレイしたところ、「彼らを論破するよりも作ったやつに言いたいことがあるぞ」となって坂口氏と話す場をセッティング、セーブポイントが少ない、ライト層向けの視点がない、ストーリーが立ってない、ラスボスもあまりキャラが立ってないから倒してもカタルシスが少ない、これらを意識したら売上3倍になる、など様々な指摘をした。(坂口氏と鳥嶋氏の対談記事)
  • 当時、ファミコン末期という事もあって本作にはカスタムチップが組み込まれている。ほとんどは各社独自で作られていたが、今作は『マリオ3』等に使用された任天堂謹製MMC3チップが使われたソフト。
    • よく間違われるのは「このチップのおかげであの飛空艇の速度が実現した」というのだが、飛空艇の速度はプログラマーのナーシャ=ジベリの手腕によるもので、このチップは戦闘シーンの大きな表示等、『マリオ3』と同じく画面表示を担っている。
    • また、このチップを大っぴらに広告に使った唯一のソフトでもある。他のゲームは雑誌記事では仄めかされても広告で書かれたのはこのゲームのみ。
  • 当時、アスキーが音頭をとって「4大RPG」と煽っていたのがこの『III』と『ドラクエ4』・『女神転生II』・『ウィザードリィIII』。発売時期が見事に並んでバッティング状態で、丸勝ファミコンでなくとも話題性があった為にファミリーコンピュータマガジンやファミコン通信(当時)でも大々的に盛り上げていた。
    • その中で「ハイスコア」という雑誌で、読者がハラハラドキドキ心配する程の廃刊前の暴走がみられた。一例だが「馬車と気球の世界ツアーでみんなで仲良く魔王退治のドラクエなんか中古屋にとっとと売っぱらって、『ファイナルファンタジーIII』を買いなさい」というとんでもないもの。このハイスコアの廃刊前は突然、雑誌内容がアグレッシブになりハラハラする事があり「大丈夫か?」と心配されていたが、随分な最後っ屁だった模様。
  • 本作発売前のファミリーコンピュータマガジン1990年6号(3月23日号)の「ファミマガジャーナルマンガトピックス」にて、クリエイターの坂口博信氏へのインタビュー漫画が掲載されており、「映画的な面白さは本物の映画には絶対に勝てません。ゲームならではの面白さを追求していきたいと思っています。」と発言している。
    • 関連しているかは不明だが、本作『FFIII』製作時に週刊少年ジャンプの名物編集員・鳥嶋氏に「なぜ『ファイナルファンタジー』はダメなのか」を説教されたことをきっかけに、物語を重視するようになったと語っている。
      • 後に大容量の光ディスクを求めてVII(1997年)ではプレイステーションに移籍*20。しかしそれがピークとなり以降どんどんムービー路線に走っていったことも災いし以降売上本数では下降線を辿ることになる。
        果ては同時期に映画そのものに手を出し(公開は2001年)史上稀に見る大失敗に終わりスクウェアそのものが倒産必至の大損失となった(ソニーの資本参加により倒産そのものは免れた)。かつての自身の公言が正しかったことを、自身がそれを破って自滅する形で証明する皮肉な結果になった*21
  • 同じくファミマガに絡むものとしてはの1990年12号(6月22日号)の裏技コーナー「超ウルトラ技50+1」で「でぶチョコボを召喚できる」というウソテクネタが掲載された。
    • ウソなので当然できないが、やり方は下記の通り(原文ママ)。
      まずチョコボの森へでぶチョコボに会いにいこう。でぶチョコボにテレポの魔法書を預けると「でぶチョコボ」というレベル8の魔法書がもらえる。これを魔界幻士が戦闘中に唱えると、なんとでぶチョコボが4匹現れて敵に体当りして攻撃してくれるんだ。
    • 画面写真ではでぶチョコボが4匹揃って現れるていが、あくまでフィールド上のグラのままなので、このあたりが少々怪しく見えるポイントである(「エスケプ」で出てくるチョコボはそれ専用のものになっている)。
    • これがゲームでも後に輸入されたか否かさだかではないが『V』では、チョコボを召喚した時、レアパターンで「デブチョコボ」が出現するようになった。デエフェルトの「チョコボキック」が敵1体でのキックに対して、それ以上のダメージを敵全体に与えるという完全上位互換。因みに『V』ではアイテム欄が限りなく無限に近くなったためデブチョコボはこのレアパターン召喚でのみ登場する。
  • 1990年はそれまでの「ドラクエ1強体制」から「ドラクエ・FFの二大巨頭体制」に時代が変わったと言えるだろう。
    • ユーザー評価も『ファミコン通信』の『ベストヒットゲーム大賞』ではドラクエ4に僅差で奪われた一方、『ファミリーコンピュータMagazine』の『ファミマガゲーム大賞』では本作の方が大差でドラクエ4を破って制している*22
    • 以降の作品も『ファミコン通信』のクロスレビューではドラクエシリーズが全体的に最高点クラスを叩き出し続け、本シリーズはわずかに及ばず後塵を拝したのに対し『ファミリーコンピュータMagazine』の『ファミマガゲーム大賞』『ゲーム通信簿』では本シリーズが30点満点中の27点台と歴代でもトップクラスの評価を叩き出し続けたのに対し、ドラクエシリーズは26点台と全体の中では高評価ではあるものの、決して飛びぬけた高評価ではなくなった。
  • 本作は同シリーズだけでなく、スクウェアとしてもファミコンの新作では最後の作品となった。
    • 元々は翌1991年に『ファイナルファンタジーIV』を予定していたが開発前段階でボツとなった(同時に進行していたスーパーファミコンの『V』を『IV』に詰めて1991年7月発売)。
    • これ以後のスクウェアのファミコンソフトは1994年2月27日発売の『ファイナルファンタジーI・II』があるが既存作の合本版*23のため新作ではない。
      • 1994年は完全にスーパーファミコンの時代(4月に最新作『ファイナルファンタジーVI』を発売)だが、これは1993年末に任天堂がAV対応のニューファミコンを発売したためそれに伴う展開を目的として発売された。
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最終更新:2024年02月24日 23:09

*1 同様の戦法は全体攻撃が強力な「バハムート」「リバイアサン」「オーディン」でも有効。ただしキャパシティポイントが大量に必要で、そうそう乱発はできない。

*2 『ファミリーコンピュータMagazine』(ファミマガ)の1990年11号(6月8日号)では、これが裏技コーナー「超ウルトラ技(テクニック50+1)」であたかも裏技のように扱われていたが仕様そのものである。

*3 道中に置いてある封印された杖をスルーして、先にダンジョンの最深部に行かないと賢者より先に入手できない。

*4 厳密にいえば最初のうちは火力も低い。ただし熟練度が成長すると急速に強くなっていく。

*5 忍者に限らずすべてのジョブで装備できない。

*6 後発の作品と違い「投げる」コマンドは存在せず、またアイテム欄から直に「使う」こともできない。

*7 過去作ではどれだけヒット数が増えてもアニメーションでは2回しか武器を振らない

*8 ゲーム中で閲覧できる飛空挺ザ・ベスト(略)という本ではノーチラスが1位。

*9 相対的に強ジョブでなく他のジョブの不遇さに問題がある。

*10 やや極端な例だがニコニコ動画で赤魔、狩人、バイキング、幻術師の編成でLV50前半でクリアしている動画が存在する(sm8827419)。

*11 モンスターに対してのみ選択可能で、「同種のモンスター全て」が対象となる。

*12 レベル上げを考慮しなければシーフのとんずらで敵から逃げ続けるなどして短縮する事は可能

*13 直前に負けている相手なので、そのまま何の工夫もなくまた挑んでも、勝てるはずがないということ自体は道理なのだが……。

*14 地下7階が欠番。

*15 一応その他の攻撃でも一撃で倒せれば分裂しないが、そこまで持っていくのは難しい。

*16 攻略本には「だんだん石化」とあるが、実際には一発石化してくる。

*17 PSへのハード移行の際に任天堂に対して礼を失する言動があったことが当時の山内社長の逆鱗に触れたというのが定説化されているが、両社から公式に言及されたことはない。

*18 『ゲーム批評 2001年11月号』p26より引用

*19 後に『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の原作を担当する三条陸など。

*20 スーパーファミコンのVI(1994年)では24Mbitでも容量不足で当初の構想から削減を余儀なくされた。

*21 そのSCEも後にプレイステーション3でゲームの本道を外れたコンピュータ路線に暴走して膨大な赤字を叩き出し、結果的に事実上倒産の憂き目に遭うことになる(ソニー本体からの分散の形で形式的に違う会社として新生)という更なる皮肉な結果になった。

*22 ただし前哨戦的な位置づけの「ゲーム通信簿」では紙一重の差ながらドラクエ4の後塵を拝した。

*23 『ドラゴンクエストI・II』のようなリメイクではなくそれぞれの中身は旧来のまま。ただしIのビホルダー系モンスターのみ権利問題からグラフィックが変えられている。