実況パワフルプロ野球5

【じっきょうぱわふるぷろやきゅうふぁいぶ】

ジャンル スポーツゲーム(野球)
対応機種 ニンテンドウ64
メディア 128MbitROMカートリッジ
発売元 コナミ
開発元 コナミコンピュータエンタテイメント大阪
(ダイヤモンドヘッド)
発売日 1998年3月26日
定価 8,900円
判定 良作
ポイント サクセスは初の高校野球編
猪狩進・影山スカウトの初登場
サクセスが大幅に進化
唯一『パワポケ』と世界観が繋がっている
実況パワフルプロ野球シリーズリンク


概要

  • 言わずと知れた人気野球ゲームのメイン5作目。N64パワプロとしては2作目。
    • これまでは実在プロ球団2軍編だったが、本作は高校野球編。それに伴ってイベントも彼女候補のバリエーションも増えた。
    • 当時あったプロ野球脱税事件に関与していた疑惑がある選手は収録されていない(後に攻略本などでパスワードを発表して対応)
    • 本作『5』までは後のパワポケシリーズを作ったメンバーが開発に関わっていた。そのため初代『パワプロクンポケット』は本作の外伝・後日談であり、世界観を共有しているなど共通点が多い。

評価点

大幅に進化した高校野球編サクセス

  • 固有キャラクターとイベントが大きく増え、ストーリー的な楽しさが増した。
    • 『4』以上に相棒キャラが板についた矢部、2つ年上で初心者に親切な谷田キャプテン、1つ年上で初期パワプロサクセスを支えた鮫島キャプテン、1つ年下の凸凹バッテリー松倉&香本、2つ下の天才選手駒坂など主人公を取り巻く仲間も多い。
    • 以前のシリーズでは「3年の間に1軍入りを目指す」というのが目的であり、1軍入りしてしまえばそれっきり育成は終了してしまう。
      • しかし本作は高校球児となって甲子園制覇を目指す高校野球編がサクセスとなる。それに伴い今までの「評価が上がり過ぎてゲーム終了」という事が無くなり、3年間のタイムリミットまでじっくり遊べるようになった。
      • 実力と運があれば1年目から甲子園を狙う事も不可能ではないが、序盤はかなり運に振り回される展開が多い(後述)。
    • サクセスで作った選手に音声設定が使えるようになった。
      • ただし当時の機械音声は技術力がそれほどなく不自然な発音になっている。
  • 前作『4』から更にグラフィック・音声が向上。N64/PS世代の基礎が本作で完成した。
    • 完成度の向上は特に音響面に明確に現れている。顕著なのが応援歌であり、単純な音色でみてもより重厚で聴き応えのあるものとなった。
      その上12球団それぞれに通常・チャンス時の固有の応援歌が設定されるようになった。著作権の問題で原曲をそのまま収録しては居ないが、それぞれの球団の有名選手の応援歌をモチーフに作られており、当時のファンであれば違和感なく受け入れられるものであった。
    • 本作の応援歌フォーマットは後の『8』まで引き継がれた。その間にも何度か改訂が行われている。
  • 初登場の『4』では徹底的な小悪党でしかなかった猪狩守は「あかつき大附属高校」出身のエースピッチャーである事が付け加えられ、強敵度を増した。またお馴染みの「河原での勝負」も本作から。
    • また弟の猪狩進も登場。この時点で兄よりも人の良さそうな人物として描かれている。
    • 本作の猪狩守はまだ嫌味な側面が強いが、終盤、極亜久商業の外藤によって進がトラックにはねられる事故にあった後、弟の分まで頑張ろうと燃える描写があり、前作よりも小悪党分はかなり減っている。
      • なお進が事故にあって退場したのは後のパワポケスタッフ曰く「ライバル2人居るとわけがわからなくなるから」とのこと。
      • 後のシリーズでは進は再起不能には陥らないものの兄にコンプレックスを抱きつつも温和な側面が強調されるようになり、ライバルキャラの兄・猪狩守とはまた違う別の魅力を持つようになった。
    • 外藤が所属する極亜久商業もビーンボールを放ってデッドボールを意識的に狙うなど本作では悪役の側面が強いが、『パワポケ1』で極亜久商業が舞台になった事で印象が変わったという人も多い。また進の救済もある意味では行われている。
  • 甲子園常連の帝王実業、最終年に現れオールAに近いチームデータを誇るアンドロメダ高校などの強敵も本作から登場。
    • 山口・大西などの固有名詞はなくピッチャーの名前は毎回ランダムだが、それらしき人物の台詞と描写はある。
    • また、アンドロメダ高校のピッチャーは後の大西とほぼ同じ能力だが、大西と違いコントロールも正確な強敵。
  • 他にも『ときメモ』のきらめき高校、阿畑のワンマンチームであるそよ風学院、走力重視の流星高校、サイン盗みを行うインターネットハイスクール、逆境○持ち選手で締められ高い実力を誇る雪国高校などこの時点で特徴のあるライバル校が登場する。
    • 主人公が所属しなかった学校がライバル校になる事もある。
  • 彼女候補も、これまではプレゼントもセリフもほぼ同じで顔グラフィックと名前だけ違う形だったが本作はある程度のバリエーションが出た。
    • マネージャーの花咲桜・クラスメートの金井靖子と青木由利・眼鏡をかけた一見地味だが実は美人な天野華織・甲子園に出場すると無理やり付き合おうとする上にワガママ放題な緑川明美・そして顔があまり良くないので体力の回復が悪い代わりに放置しても我慢強くプレゼントが良い豪田佳代など。
      • 「(色々な意味で)付き合いづらい子ほど良いプレゼントがもらえる」というお約束要素も本作から。
  • 選べる高校は、中堅のパワフル高校、レギュラーになりやすい弱小の赤とんぼ高校、設備がよく強豪だがレギュラーになりにくい白鳥学園がある。
    • この内、パワフル・赤とんぼはマネージャーが彼女候補で王道ヒロインな花咲桜だが、白鳥学園は男子部員の冬野がマネージャーになってしまう。パワポケと違って選手にはならないが。
    • 冬野と桜以外の登場キャラは全く同じであり、バリエーション自体が出てくるのは『6』からとなる。
    • 赤とんぼ高校は二年目の秋季大会までに一勝も出来ないと廃部になりゲームオーバー。白鳥学園は一年目か二年目に複雑骨折などの大怪我をすると退部になりゲームオーバーになる。
  • サクセスの試合BGMは「巨人の星」のような王道スポ根風。
    • 次回作『6』では別のものになるが、『99』からは再び使用されている。
  • 『4』でなくなったシナリオが本作で再び追加された。

問題点

  • サクセスが大きく変わったとはいえ、まだ難点も多い。
    • イベントが多くなったと言ってもあくまで当時の基準で、今から遊ぶにはやや単調になりがち。
      • また交通事故の発生率も後のシリーズに比べると比較的高めな時期である。
    • サクセスが3つに増えたが、選手を3人作らないと他の高校が出ないなど快適な作りではない。
      • 最低でも同じ高校を3回クリアする必要がある。前述のようにイベント量が多くない事もあり単純に面倒。
      • また苦労して解放した所で、他のサクセスもマネージャーなどが変わる程度で大きな変化がない。
      • 次作『6』では1度でもクリアすれば高校が解放されるようになったため、この仕様は本作のみとなった。またサクセスのバリエーションも比べ物にならないぐらい増している。
    • 休むコマンドがないため、勉強か相談コマンドでしか体力を回復できない。
      • 勉強は体力が少ない時のみ疲れで爆睡して回復できるが、それ以外はイベント次第で減る事がある。
      • 相談も安定しないが、相手が彼女の場合のみ大きく回復可能。
      • 上記の仕様であるため、彼女作りは半強制的となっている。一応勉強コマンドは彼女候補の好感度が上がるイベントも起きるのだが、これはなぜか体力が多い時限定のためリスクも大きい。
  • 甲子園球場での全国大会でコールド制が採用されている。
  • 「花粉症」「不眠症」を持っていてその週の終わりや、試合後などの特定のタイミングでリセットすると、その時点の経験点や評価を引き継いだまま前の週に戻る裏ワザがある。
    • これを繰り返せば能力カンスト、多数の特殊能力を持った選手も作れる。
    • ピッチャーを育成する場合、変化球が貧弱な基本形ばかりになってしまいがち。HスライダーやSFF、ナックルといった強力な変化球は監督のレアイベントに期待するしかなく、発生しても会得できる確率も高くないのでそれを使う選手を作りたいなら上記の反則技を多用しがちになる。
  • パワフル高校以外は中盤まで運に振り回される展開が多い。
    • 赤とんぼ高校は2年生の秋季大会までに1勝も出来ないとゲームオーバーなのだが、キャプテンになれるのは2年生の秋以後で、主人公がいくら頑張っても負けてしまう事が多々ある。白鳥学園についても怪我に注意しつつ練習をしていても交通事故に遭ってしまえば即ゲームオーバーである。つまりは2年生の秋までは片やどれだけ投手が炎上しないかを、片や交通事故が発生しないことを延々と祈り続けるだけの完全な運ゲーである。
    • しかしその赤とんぼ高校はというと非常に弱く、守備CPUが最弱レベルエラー率劇高と言うあり得ないほどの弱さである。
      • その為に打たれたら凡打でも*1出塁され、どれだけ点を取ってもそれ以上取られ、2ケタレベルの失点が日常茶飯事のレベルである。キャプテンモードでも失投頻発でホームラン、送球エラーで点を取られる事が多発する。
      • のちの作品では弱小チームでもチームメイトの評価次第ではCPUが改善されたり自動進行時の補正がマシになる等の措置が取られるようになった。
      • その後の作品では運要素の強いシナリオこそ登場したものの、運の影響は選手育成程度に留まり、本作の赤とんぼ高校や『6』の熱血大学のような「いくら頑張っても運が悪くてゲームオーバー一直線」という展開は無くなっていった。例として『9』のそよ風高校や『12』のアカデミーB組等は運の影響が多いが、強い選手を作れずとも一応プロ入り自体は決して難しくない。
  • それ以外のイベント
    • 地区大会決勝では必ずあかつき大付属と戦うがこの戦いはミットカーソルが見えない
      • オマケに投手の猪狩がかなりの能力を持つ為にヒットを打つ事すらおぼつかずこれまでは楽勝だったのにここで敗退するプレイヤーが続出した。
      • 猪狩はバッターとしても強い為、投手側でも苦戦は免れず甲子園への鬼門となっている。
    • 更に甲子園での戦いは全戦打球の落下位置が見えなくなるので守備が苦手なプレイヤーがキャプテンをするのは命取りになる。
      • かといってキャプテンにならないとチームが殆ど強くならず*2試合に勝てなくなるというジレンマに陥る。
      • ただし甲子園出場が出来なくても試合以外で手際良くスカウト評価を上げていけば一応クリア自体はできるので、面倒くさければキャプテンになった上で地方大会決勝でわざとコールド負けしてしまうのも一つの手である。
    • 監督がかなり理不尽で、評価が悪いと彼女との仲を引き裂いたり、逆切れして雑用を押し付けたり、スカウトの視察を妨害したり、合宿中に言いがかりをつけて滅茶苦茶な練習を敢行して体調を悪化させたりしてくる。
      • 同時期の98開幕版ではこちらの相談に親身になってくれたり滅茶苦茶な介入イベントが無かった事もあって更に理不尽に写る事となった。
      • 合宿中の滅茶苦茶練習は後の大学野球編*3社会人野球編でも似た様なキャラが登場していたが、流石に理不尽過ぎると判断された為か、特殊能力が身につく等の特典が付加されるようになったり最後までやり遂げると回復アイテムを貰えてある程度はリカバリーされる等調整が加えられるようになった。
    • 白鳥高校を選択した場合、マネージャーが男子生徒の冬野に変わり彼女候補が一人減ってしまう。
      • 更に相談すると高確率でバッド能力が付加されたりするので相談候補も事実上一つ潰される羽目になる。
  • どんなに能力が高くても「威圧感」は体得できない。
    • 能力自体はそこまで超強力なものではないが、いかにも強さの象徴のような能力なのでやっぱり欲しい。
      • 試合後リセットのイカサマ技を駆使すればサクセスを極めればイチロー以上の俊足巧打、松井を上回る強打と走守を兼ね備えた5ツールプレイヤーを作れるが、そんな究極のバッターでもその象徴とも言うべき「威圧感」がないとどうにも不完全燃焼気味なものになってしまう。
    • 次回作では佐々木を特別扱いするために投手型威圧感が新設された関係で相対的に価値が下がった旧来通りの野手型威圧感ならば体得可能になった。
  • イベント省略が裏技扱いかつ初回でコマンド入力しなければずっと省略無しのイベントを見せられる。
    • 裏技の仕様上3人選手を作るまではイベント省略は行えない。
  • 投手が年功序列制なのか、後輩の松倉よりも能力の劣るモブ同級生が先発になる事が多い。
  • サクセスで作り上げた選手は問答無用で「新人」という扱いとなってしまう。
    • まったくオリジナルな選手を作るなら気にする必要もないが、実在選手のすり替え目的(例・引退間近な大ベテランで衰えが隠せなかった日本ハムの落合博満を全盛期のような能力にしたい等)で作る場合とは相性が悪い。

総評

サクセスが大きく進化し、ただの野球ゲームではない魅力を少しずつ持ち始めてきた作品。
高校野球編は後のシリーズでも人気が高く甲子園を目指してプロ入りを果たす青春を評価するファンは多い。
サクセスの世界観は『7』から一新されたため本作のストーリーは残念ながら以降にほぼ関係してこない。(『6』も同様)
しかし本作で登場したキャラの基本設定は後々まで使われており、まさにパワプロシリーズの基盤となった一作だと言える。


余談

  • PSPで『6』と共に『サクセス・レジェンズ』としてPSPでリメイクされている。
  • 本作の主人公は『3』に登場した戸井鉄男という裏設定があり、「パワポケ」でも本作の主人公=戸井という設定である。
    • それ故に本作を「戸井」という登録名で始めると、50%という高確率でセンス○がつく裏技がある。
    • なおリメイク『サクセスレジェンズ』では戸井で初めても効果はなくなっている。
  • 本作は成績やそれに付随する能力は前年の1997年、選手のラインナップは当年である1998年開幕時に準じている。このために割を食ったのがオリックスブルーウェーブでなんと捕手は高田誠1人だけしかおらず、サブポジションでの捕手すらいない。
    • 前年で一軍出場した捕手は高田以外に中嶋聡と三輪隆がいたが、このオフの間に中嶋はFAで西武ライオンズへ移籍し、三輪は脱税絡みで1ヶ月の出場停止処分を受けたため、このような事態になった。
    • 高田は肩も守備も強く「キャッチャー○」を持っており頼れる捕手だが打撃能力が低く打線ではモロに穴。にもかかわらずチャンスの場面で代打が出せない。
      一応システム的には出せなくはないが代打の後守備を迎えると、捕手の適正ゼロの野手がマスクをかぶらざるを得ずアッと言う間に投壊するハメになる。もし高田が故障で戦線離脱すれば、終始ザルな素人捕手になり何点取っても足りたものではない。
      • 一応高田は特殊能力「ケガしにくい」は持っているが100%ケガしないわけではないので、常に最悪のケースが付きまとう超ハイリスクなチームになってしまった。

パワポケ1との繋がり

  • 『パワポケ』シリーズはパワプロシリーズとは別ベクトルで進む世界観になっていったが、パワポケ3まではあくまでパワプロ外伝として一部キャラが参戦していた。
  • 特に『6』と連動するために作られた『パワポケ1』は『5』の外伝の側面が強く、選べる高校が『5』でも悪役度の高い極亜久高校(『5』では極亜久商業)というのがファンを惹きつけた。
    • ちなみに『パワポケ1』の主人公は、『パワプロ5』の主人公(戸井)より一つ下で、松倉&香本や進と同世代。
      • それ故に『パワポケ1』ではパワフル高校の新キャプテンとなった松倉が、極亜久高校に対して嫌悪を示す描写があるのだが、『パワポケ1』の主人公によって改革された極亜久高校を見て彼らを認めるという熱いイベントもある。
    • 『5』の頃は進を交通事故に合わせる要因を作った外藤に対して、「あいつなんてひどいヤツや」「あんなヤツは警察に捕まってしまえ」という意見がたくさん届いたと『パワプロクンポケット大全』という本で西川氏が語っているが、外藤なりの事情があったかもしれないという事をパワポケで掘り下げることで考え方が変わるのではないかと考えたとのこと。
      • 『パワポケ』でも外藤は同じことをしているのだが、主人公・亀田・智美に対して面倒見のいい先輩としていい人だった事や、外藤にもそれ相応の事情があった旨が描かれた事で現在は外藤への非難は全くなくなっている。
  • また本作の進に関してもプロペラ団に改造され「野球マスク」になるものの、甲子園での決着をつけた後に兄・守やパワポケ1の主人公に正体が判明し、ある種の進に対する救済となっている。
    • 『パワポケ7』では怪我を引きずってコーチの道を志す進が登場。兄に対して想う所がある姿を見せている。またその頃にはパワフル高校に『パワポケ1』の水原君が監督として就任している事が発覚。
    • 『パワポケ14』ではライバル「デリック」のコーチとして「ススム」なる人物の名前が登場している。
    • また進は『パワプロ9』で交通事故にあうものの、それ以後は本作よりも重傷ではなかったらしく猪狩カイザースに参加したりメジャーで頑張っている様子。
    • ちなみに『パワプロ99開幕版』においても「高校時代に守と共に『黄金バッテリー』と呼ばれ甲子園でも優勝経験があるが、何らかの事情で猪狩コンツェルンに入社するまでの間、長期間野球が出来る体ではなかった」本作と同一人物の可能性がある進が登場している。
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最終更新:2023年12月24日 16:58

*1 フライレベルの打球が飛んできても棒立ちで、落ち始めてようやくゆっくりと動くほどのレベル

*2 同時期の98開幕版ほど露骨ではない物のやはり能力上昇に大きく違いが出る。

*3 防ぐ手段はあるが初見ではほぼ回避不能、また1コマンドのロスは避けられない。