【ねっけつこうこうどっじぼーるぶ】
ジャンル | スポーツ(ドッジボール) |
対応機種 | アーケード |
発売・開発元 | テクノスジャパン |
稼働開始日 | 1987年11月 |
プレイ人数 | 1~2人 |
レーティング |
CERO:A(全年齢対象) ※アーケードアーカイブス版付与のレーティングを記載 |
配信 |
アーケードアーカイブス 【PS4】2015年7月31日/838円(税10%込) 【Switch】2020年8月27日/838円(税10%込) |
判定 | 良作 |
くにおくんシリーズ |
テクノスジャパンより1987年11月に稼働開始したアーケードゲーム。
『熱血硬派くにおくん』に続く、「くにおくんシリーズ」の第2作目となる。
くにお率いる熱血高校ドッジボール部の面々が世界の強豪と対戦し、世界一を目指すというものとなっている。
なお、ルールの元となっているのはドッジボールだが、内野のメンバーは相手のシュートが当たっても外野に出ることは無い。
メンバーそれぞれの持つ体力が0になるまでは内野にいることになり、体力が0になったメンバーはそのまま脱落するという、ケンカドッジボールとなっている。
なお、前の試合で脱落したメンバーも次の試合ではしっかり復活している。
一般に広く知られているであろうファミコン版の元となっている作品だが、ファミコン版は本作から大きくアレンジを施されたものとなっているため、それとの違いを基本に簡単に紹介する。
なお、ファミコン版の後に出たPCエンジン版(PC番外編)は本作とファミコン版のそれぞれの要素を足して2で割ったような内容となっている。
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良好な操作性
BGMとボイス
キャッチ可能なタイミングがかなり緩い
対コンピューター戦において、全体的にプレイヤーが不利
ハードルが高い
アーケードという関係上、インカムの問題もあるのだろうが、やはりプレイヤーに不利な要素が多い事とくにお以外使い物にならない自チームの構成など、慣れるまでとにかく理不尽に感じてもおかしくはないものとなっている。
とはいえ、何度か繰り返しプレイしているうちにだんだんと勝手が解ってくるようにはなっており、一旦勝手が解ればむしろ操作性の良さと相まってやり応えのあるゲームとなっている。
本作の後に出た移植版(特にファミコン版)がくにおくんシリーズのドッジボールゲームの大元として何かと注目を集めがちであることは否めないが、本当の意味でのシリーズにおけるドッジボールゲームの大元である本作も完成度は決してファミコン版に劣ってはいない。
というよりも、移植版は本作をベースにしつつも別物レベルのアレンジをされているため、ゲーム性で同列に語ることは難しい。
これまではバーチャルコンソールなどで配信されているファミコン版・PC番外編と違い、移植されているのが、後述する今となってはハード・ソフト共々探すのも一苦労なX68000版と移植度が劣悪なPS2版しか無く、プレイのハードルが高めであった。
しかし、現状はPS4とSwitch向けにアーケードアーカイブスシリーズの1タイトルとして配信され、こちらはアーケード版をほぼ忠実に再現したもので、価格も比較的安価であるため、プレイのハードルは大きく下がったと言えるだろう。
いずれかの対応ハードがあってかつ興味があれば、是非プレイしてみて欲しい。
1988年7月26日にはファミコン向けに本作のアレンジ移植である『熱血高校ドッジボール部』が発売されており、難易度設定や必殺シュートの導入、加えて各種時間制限・相手チームの人員補充が廃止された事で本作に比べてハードルが大きく下がった。
また、インド・ソ連・謎の軍団が追加され、選手それぞれに強い個性と名前が与えられ、更にはその登場するチーム間のバランスも詰んでいるような組み合わせも無い、優れたゲームバランスを誇る対戦ツールともなっている。
ただし、ハードスペックの問題で内野は3人に減らされており、キャラクターの点滅やスプライト欠けが激しい上、バグや設定ミス等も少なくない。
ちなみに、本作で追加されたクラブ活動において、設定した難易度によって背景が異なるといった仕掛けが用意されていたりする。
1988年9月にはX68000向けに本作の移植がなされている。
こちらは裏技を使用することで様々な追加、変更要素を楽しむことが出来る。
BGMはオリジナルの曲がステレオ化されている。
1990年3月30日にはPCエンジン向けに『熱血高校ドッジボール部 PC番外編』が発売、こちらはアーケード版とファミコン版の要素のごった煮となっている。
アーケード版準拠の要素としては内野メンバーが4人となり、グラフィック(*9)や参加チーム(*10)に加えて試合時間の概念が導入(*11)され、各国と戦う世界大会モードはループ仕様となっている。
ファミコン版の要素としてはキャラクターそれぞれに名前と能力、必殺シュートの設定、表示されている体力等の要素があるが、選手個々の個性付けではファミコン版よりは弱くなってしまっている(*12)。
2006年1月26日にはプレイステーション2向けに「オレたちゲーセン族シリーズ」の1つとして本作の移植がなされているが、移植度が劣悪な上に「MAME(*13)」の利用規約違反疑惑(*14)が持ち上がっていたりとゲーム以前の根本的な問題を抱えている。
しかしながら、本作BGMの唯一の音源化であるサウンドトラックが付属されている点だけは元々質の高いBGMであることを踏まえて評価出来る点であるとも言えるが、付属のトラックリストの曲目順を間違えているというオチをしっかり付けていたりする。
また、このサウンドトラックにはボーナストラックとして各BGMをアレンジした上でミックスした「熱血高校ドッジボール部 (Super Sweep Remix)」が収録されていたり、ボイスや効果音も合わせて収録されている。
本作は海外でも『SUPER DODGE BALL(スーパードッジボール)』のタイトル(*15)で稼働している。
最初は日本版同様、国内の決勝戦という体を取りプレイヤーチームがダラス、対戦相手をシカゴとして対戦をする(*16)。
その後、ダラスチームはアメリカチームとして各国のチームと対戦し、決勝戦は日本となっている。
もちろん、編成は日本版アメリカのものが流用されているため、全員怪物である。こんな日本人がいてたまるか
また、くにおが怪物にボールをぶつけられるシーンと熱血高校が新聞に載るシーンはカットされ、グラフィックは日本版熱血高校のお供のチビの髪を金髪、同じく日本版アメリカチームの怪物の髪を黒髪にした以外は全く手を加えられていない。
そのため、アメリカチームなのにユニフォームは日の丸カラー、日本チームのユニフォームも日本版のアメリカチームのものという、違和感が強いものとなっている。
ボイスに関しても差し替えがされており、自チームのキャプテンがシュートを打つと怪物の「フンッ!」に、日本チームの怪物がジャンプシュートを打つと「なめんなよ!」と逆転している。
海外版でもループ仕様となっているのだが、表彰式でトロフィーを渡すのが日本版のスーパーマンというのも大概だが、海外版では忍者が出てきて手裏剣型のトロフィーを渡すという、どこからツッコミを入れればいいのか解らないものになっている。
ファミコン版では残り体力が15以下の選手にボールが当たり、かつそこで脱落していない場合に該当の選手が肩で息をするような動作をするが、もちろん本作でもその動作はある。
体力が表示されているファミコン版ではあくまで駆け引きの要素の1つという側面が強いが、本作では体力が表示されていないため、この動作の回数で残りの体力を大まかに把握するしかない。
ほとんど体力が減っていなければ1回ですぐに戻るが、ダメージが増えるごとに最大5回まで動作をするようになる。
つまり、起き上がったくにおが肩で息をする動作を4~5回した時点で次は無いとも言え、殊更慎重な立ち回りが必要になるということ。
また、上に書いた通りお供のチビは一撃で脱落することが多いので、ある意味でお供のチビのその動作を見られるのは貴重である。
ゲームを始めると、校門前に立っているくにおに怪物タイプの選手(*17)がおもむろにジャンプシュートをぶつけ、倒れた後に「待て!この野郎!」とチビ達が追いかけるデモが入る。
前作のステージ開始時のデモのオマージュなのだが、ユニフォームを着た外人(?)がわざわざ日本にまでやって来て高校生にボールをぶつけるというツッコミどころ満載なストーリー展開となっている。
ボールをぶつけられた事に対する復讐劇(?)という設定だが、花園高校を倒した時点で目的が世界大会の制覇に切り替わっており、エンディングにおいてもなかった事になっている。
なお、くにおが校門前に突っ立っていた理由については、X68000版で取説に「くみこ(*18)と待ち合わせをしていた」とあるが、他作品と同様にボールをぶつけられて追いかけていく展開になるので、結局この待ち合わせはすっぽかされたままになってしまったことになる。
また、PC番外編は基本的にアーケード版に準拠しているため上記のデモも収録されているのだが、オリジナルモードである「クエストモード」では、校門前に飛来したUFOからくにおめがけてボールが飛び、
くにおがボールをぶつけられた仕返しに世界中を飛び回って犯人を探すといった、このノリをさらに発展させた内容となり、モード自体の作り込みも含めて評価が高い。
ファミコン版では取扱説明書にも最初からストーリーとして「目指すは、世界一のドッジボールチームだぞ!(一部抜粋)」とあり、あくまで熱血高校ドッジボール部として世界一を目指すのが目的となっているため、当然ながら上記のオープニングデモも存在しない。
ファミコン版やPC番外編でのアフリカステージは「沼地でぬかるんでいるため、ダッシュ初動が遅くなる」という特徴があるのだが、本作では他のステージと同じようにダッシュすることが可能となっている。
本作ではダッシュの歩数で特殊なシュートが出せるといったものは無いので影響はあまりないが、後の移植作品の感覚でプレイ出来ない(*19)ので注意。
もっとも、ステージそのものはどう見ても沼地でぬかるんでいるのだが…。
*1 アーケード版の時点ではこれに名前が設定されておらず、ファミコン版の仕様変更を受けて名前が設定された。
*2 旗は当時のRSAの国旗が使用されている。
*3 ただし、アイスランドに関しては国名と北の方にある国という点を誇張したためか、氷原に作られたコートの上にペンギンもいたりするが、実際は北海道以上に温暖な気候なため、実情と合っていない。この国に関してはあくまでフィールドのイメージと置き換えて欲しい。
*4 くにおが決め台詞である「なめんなよ!」を言ったのはこれが初めてだったりする。
*5 花園戦後の新聞記事にも『熱血高校(優勝)世界大会へ』と書かれている。
*6 一応、試合の制限時間自体はPC番外編にも存在している。
*7 助走等の予備動作無しで使用可能で、更に以降の移植作と異なり、外野にいる選手でも元々使わないチビとアフリカを除いた痩身以外は特殊シュートを使ってくる。
*8 ただし、相手が強化される上に制限時間が短縮される周回プレイに関しては話が別。
*9 厳密には、痩身の顔より下がチビの流用となっているという違いがある。
*10 つまり、インド・ソ連・謎の軍団が登場しない。
*11 ただし、ボールキープの時間制限は導入されていない。
*12 グラフィックがアーケード版準拠な為、同じグラフィックのキャラクターが複数いるのは当たり前で、それ以外にも細かい能力概念(「シュートテク」など)が削除されている。
*13 アーケードゲームの汎用エミュレーターである「Multiple Arcade Machine Emulator(マルチプル・アーケード・マシン・エミュレーター)」の略称。「マメ」「メイム(メーム)」と呼ばれる。
*14 「MAME」は、2016年3月にライセンスをGPLv2(ただしソースコードのファイルの大半は3条項BSDライセンス)に変更するまで非商用利用に限って利用することを条件としてソフトウェアやソースコードが公開されていた。つまり、仮にこの疑惑が真実でMAMEのソースコードを使用して移植を行っていた場合、完全に規約違反の盗用ということになる。
*15 なお、このタイトルは後のファミコン(厳密にはNES)移植におけるタイトルの他、日本では未発売となっているアーケード(MVS)ゲーム『くにおの熱血闘球(ドッジボール)伝説』の海外版タイトルでもある。
*16 ダラスチームのメンバー編成は日本版の熱血高校の、シカゴチームのメンバー編成は花園高校のものである。
*17 花園高校のユニフォームを着ているが、花園高校チームには該当タイプがいないため花園高校の生徒か不明。
*18 前作『熱血硬派くにおくん』のみすずの子分(チェーンを持っている片メカクレの女子)に同名の人物がいたが、後述のように本編で「待ち合わせ相手のくみこ」が出てこないので彼女と同一人物かは不明。
*19 言い換えれば、本作の他のステージ同様の感覚で戦えるということだが。