この記事では、アーケード作品と『忍者くん 阿修羅ノ章』とそのファミリーコンピュータ移植版について扱う。判定はいずれも 良作
MSX2移植版は参考記述扱いとして軽く触れている。



忍者くん 阿修羅ノ章

【にんじゃくん あしゅらのしょう】

ジャンル アクション
対応機種 アーケード
開発・販売元 UPL
稼働開始日 1987年
配信 アーケードアーカイブス/838円(税込)
【PS4】2015年6月5日
【Switch】2018年10月18日
判定 良作
忍者くんシリーズ

概要

忍者くん 魔城の冒険』の続編。即死制2Dアクション。海外タイトルは『Ninja Kid II』


システム

  • 8方向レバー2ボタン式。ボタン操作はオーソドックスな攻撃+ジャンプ。
    • 基本攻撃方法は手裏剣投げ。3面ごとに設定されているチャレンジングステージをクリアすると武器が追加される(課題をクリアした褒美として師匠から授かる、という設定。武器入手を諦めてギブアップすることも可能)。武器はレバー上で切り替え可能。
      • 追加される武器は、(最後の回転火の玉を除き)前作で敵キャラが使っていた武器。
    • 前作では移動性能が2方向レバーによる横移動と ジャンプと一段下降が同じボタン (横移動中は横ジャンプ、停止中は一段下降)というシビアで癖のあるシステムであったが、本作では8方向レバー採用により素直でオーソドックスな操作系となった。加えて、垂直ジャンプや三角跳び、壁のぼりといったアクションが増えてより忍者らしくなった。
      • 垂直な壁に向かってジャンプしているとき、壁の方向にレバーを倒すと壁に張り付く。その状態を維持したままジャンプボタンで少しずつ壁をにじり昇る。一度壁に張り付いてしまうと、張り付くのを止めて落下するか登り切るかする以外に解除方法は無い。
      • 垂直な壁とは逆にレバーを入れ、タイミングよくジャンプボタンを押すことで三角跳びができる。高次ラウンドでは垂直な通路が多数配置されており、三角跳びを駆使して上下移動するのが前提のステージ構成となっている。(最初のチャレンジングステージである3面は、三角跳びの練習ステージとなっている。)
      • 初心者を脱する上で文字通りの壁となる三角跳びの操作は実は先行入力が可能となっており、壁に向かってジャンプ→すかさず壁と逆向きにレバーを倒し、ジャンプボタンを一旦離して押し直す(このときジャンプボタンは押しっぱなし)→壁を蹴ったことを確認したら再びレバーを逆向きに倒してジャンプボタンを押し直す…の繰り返しで、三角跳びを連続成功させて垂直な通路を登ってゆける。
      • なお敢えて三角跳びの操作をしないと、壁に当たって跳ね返りながら落ちてゆく。高次ラウンドでは敢えて三角跳びを休んで垂直通路を下りるシーンがわずかだが存在する。
    • 体当たりによる気絶・死体撃ち・相殺といったテクニックは継続されている。
    • 高所から落下すると挙動が変化。そのまま地面に落ちると着地失敗になり気絶して一定時間動けなくなる。
      • 落下中にジャンプボタンを押すと回転を始め、着地時のタイミングにより気絶・着地成功(1000点のボーナス)・一定時間そのまま転がり続けてしまう、の3通りに分岐する。実は着地の瞬間にジャンプボタンを押すと確実に着地に成功する。
  • ステージ選択制。ゲーム開始時に坊主めくりを行い3つのルートから一つを選択。以降は二つあるゴールのどちらかを到達という形で選択していく。

評価点

  • 未だ人気の衰えないBGM。
    • テンポの良さを持ちながらどこか哀愁の漂う曲調が多く、琴線に触れた人は多い。
    • 特にメインテーマでもある「忍者くんのテーマ」、水中での「水中のテーマ」、そして全面中4回しか流れない「洞窟のテーマ」は人気が高い。
    • BGMはゲームアーツ作品でもおなじみのメカノアソシエイツが手掛けている*1
  • 武器チェンジシステム。特定のステージをクリアすることで様々な武器を入手でき、状況に応じて切り替えられる。
    • 但し水中ステージでは刀しか使えない。
  • 死体撃ちで追加点、高所からの落下後着地成功でボーナスと、稼ぎ要素が豊富。
    • これが後述の問題点の原因になっているのだが。
  • 岩山・平原・水中といった多彩なステージ構成。
    • 全31面。ルート分岐があるので総ステージ数は更に増える。

問題点

  • その可愛らしい見た目とは裏腹に難易度が高く、1面ですら舐めてかかるとゲームオーバーになってしまう。
    • 後述の永久パターンへの対策(同じ位置でじっとしているとすぐ永久パターン防止キャラが現れる)も難易度上昇の一因となっている。
    • タイムが一定以下になると常時永久パターン防止キャラが出現するようになり、特定のステージでタイムが0になるとスコアが減算され始める。これでエクステンドスコアを下回ると残機が減少し、残機がマイナスになると即ゲームオーバーになる。また、スコアが0点未満になるとミスになる。
  • 一定点数で最大6機まで残機が増える*2が、稼ぎ方法が多岐にわたるので多くの面で永久パターンが可能。
    • そのため、傍から見ると比較的簡単そうに見えるので性質が悪い。
    • 永久パターンの存在はインカムの悪さに繋がるので、設置するゲームセンターは多くなく、割と有名なのにレアという矛盾を抱えている。
    • すでに6機持っている状態でスコアエクステンドの条件を満たすと、 そのプレイ中は残機が減ってもエクステンドが一切できなくなる というバグがある*3。これを回避するために、分かっている上級者は6機になったら(エクステンドスコア到達前に)わざと死ぬのだが、傍から見るとプレイヤーの意図が永久使用・不使用どちらとも取れてしまうため、勘違いされやすい面もある。
      • その一方で、レトロゲームとしての人気は高く、レトロゲームを扱うコーナーでは比較的よく見かけるゲームでもある。
  • ラスボスは剣を振り回すのだが、その当たり判定が理不尽。当たっていないように見える距離でも当たったと判定されることがある。
    お金を取るためなら何でもしていいと思っている理不尽さがある。

総評

高い難易度と時代相応のグラフィックに永久パターンと、BGMがいいだけの凡作的な印象を受けるが、難易度の高さが永久パターン(残機を限界まで補填)できるようになってからが本番であることを告げている。
前作同様、敵AIによる変化に富んだステージ構成と言い、時代を超えて愛される手ごたえのあるACTに仕上がっている。
しかし、永久パターンを前提とした設計がアーケードゲームで許されるわけがないのは、当時の稼働状況が物語っている。良作ではあるが、同時にオペレーター泣かせの商材としても知られる。


移植

  • 1987年にMSX2版が発売されている。発売元はHAL研究所、開発元はオペラハウス。
    • 頑張ってはいるもののハードの制約上8ドットスクロールとなり容量の都合からかいろいろカットされている。
  • 1988年5月27日にファミコン版が発売されている。詳細は後述。
  • また、UPLスタッフが個人的にPCエンジンに移植していたらしいが、日の目を見ることはなかった。UPL墓掘人>小ネタ集

その他

  • ゲームクリア時に合成音声(おそらく忍者くんの物)が流れるが、具体的に何を言っているのかは不明である。
    • 「やったーウキャキャ」と聞こえる人が多いようだ。
  • サブタイトルの「阿修羅」は本作のラスボスである。
  • 現時点では4つのバージョンの存在が確認されている*4
    + 見分け方
  • コインを入れずにデモを放置しておくと海のシーン(SCENE 5)が出てくるが、このデモ画面で忍者くんがミスした時の残りタイムである程度は判別可能。
    • ミス時の残りタイムが299なら「バージョンA」、280なら「バージョンB」、296なら「バージョンCかバージョンD」。
    • 尚、バージョンCとDの見分け方は「プレイヤーミス後、その時点での残りタイムに20追加された形で再開するならバージョンD」もしくは「SCENE8の下段の出口から出た後、シーン9~13が別々のルートに分岐しているならバージョンD」であることが現時点で判明している。
  • 初期版(バージョンA)と比べて、巨大ガイコツの足元を潜り抜けられるようになる、巨大ガイコツが剣を振り下ろす前に一瞬硬直する、アイテムとしてステージ上に配置されている武器「火の玉」が複数所持できなくなった、等の調整がされている。ステージ9でのステージ分岐が機能しているのは最終版(バージョンD)のみ。
  • 会社の金策のため開発途中バージョンを量産されてしまったことが元社員のウェブサイトで暴露されている。これが事実なら最終版のみがゲームデザイナーの意図したゲームバランスであることになるが、最終版では「戻り復活であるにもかかわらず、死亡時に残りタイムがわずかしか回復しない(バージョンDより前のものは初期タイムまで回復する)」という改悪がされてしまっている。
  • アーケードアーカイブス版ではアーケード版の初期バージョンと後期バージョンをプレイできるが、内容自体はそれぞれバージョンAとバージョンDとなっている(ハイスコアモードとキャラバンモードは後期バージョンでのプレイになる)。

忍者くん 阿修羅ノ章(FC)

【にんじゃくん あしゅらのしょう】

ジャンル アクション
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 UPL
開発元 マイクロニクス
発売日 1988年5月27日
プレイ人数 1人
定価 5,300円
配信 バーチャルコンソール
【Wii】2009年5月19日
判定 良作
ポイント アーケードをほぼそのまま劣化感少なく移植
BGMに関してはむしろ良化している?
忍者くんシリーズ

概要(FC)

1988年5月27日にUPLから発売された上記作品のファミリーコンピュータ移植版。
前作はジャレコ販売だったが本作はUPL販売。またUPL発売では唯一のファミコンソフトでもある。


特徴(FC)

  • ほぼすべてアーケードそのままで、豊富なステージ、多彩な武器、忍術などほぼ完璧なほど移植されている。
    • ただし演出面で少々容量の節約のため簡素化しているところがある。
      • 処理能力の関係上、一部の背景がカットされている。
      • またクリア時の光の演出も簡素化している。

評価点(FC)

  • 移植を担当したマイクロニクスは劣化移植が多いメーカーとして知られるが、本作は同社らしからぬ良移植として評価する声が多い。
    • 元々のキャラが簡素だというのもあるが、膨大なステージが一切カットされず、武器などは要となる物だけでなくすべてムラなく移植がされている。
    • そのため、よくある「ファミコンで家でできるけど劣化感は否めず」という少々残念な出来になる慣例を見事に打ち破っている。
    • アーケードの頃から特徴的だった高速アクションのスピードも、殺すことなく受け継がれている。
  • BGMはむしろファミコンになったことで良化したと感じられる一面もある。
    • 音源の性能では劣るものの、哀愁漂うBGMはファミコン音源と好相性な一面もあり、それがうまい具合にプラス作用しているようにも感じられる。
    • また上記の「ウキャッキャ」も(音声合成ではなくPSG音源で再現したものだが)しっかり取り入れられている。
  • 操作性はファミコンの十字ボタンと相性が良く、三角蹴り、しがみつきなどアーケードで少々難しかった操作もやりやすくなった。

問題点(FC)

  • フレームレートが低い。
    • アーケード版は滑らかな60fpsだがファミコン版では実現できておらずガクつきが目立つ。
    • ファミコンの性能上やむを得ないとも言えるが、アーケード移植かどうかに限らず、過去のマイクロニクス開発作品のほとんどが同様の問題を抱えており*5、技術的な要因である可能性が高い。*6
  • 一部容量の問題で簡略化されている。
    • 一部背景がカットされている。またクリア時の七色の光もボール状で一色に簡略化されている。
      • とはいえ、あまり気にならないものなので、容量の節約の上手さを褒めるポイントと言えるかもしれない。

総評(FC)

アーケード作品のファミコン移植はカットされる要素が多くいろいろな意味で劣化感が強くなる傾向にあるが、本作はそれをほとんど感じさせず全体的にアーケードでのゲーム性やボリュームを殺すことなく実現している。
背景の一部カットやクリア時の演出の劣化は勿体ないが、BGMはチープな音源がうまい具合にプラス作用してファミコンとの相性が良い形で落とし込めた一面もある。
ファミコンでの操作性との相性の良さも見逃せないポイントで、昭和期にありながら、これほど理想的な形での移植が成功した例は希少であることは間違いない。


余談(FC)

  • 実は本作は元々1987年発売が告知され2月に発売される予定だったが、延期を繰り返し最終的には6月近くにまで持っていかれた。
    • ソフト売上げ本数が伸び悩んだ理由として延期により焦らしすぎた事もあるだろう。
    • 『忍者くん』とそのスピンオフの『じゃじゃ丸くん』が「ジャレコ」販売であったのが、本作は「UPL」という当時のFCユーザーには見覚えのないメーカーからの発売であったことも買い控えの要因となった可能性もある(当時のFCユーザーは「ジャレコ」が本家だと思っていた人が多かっただろうが、本家はこちらである)。
    • とはいえ2月に発売していたら社会現象にまでなった『ドラゴンクエストIII』と完全に被ったことを思えば、むしろ良かったのかもしれない。


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  • 忍者くん
  • 1987年

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最終更新:2024年02月15日 22:28

*1 UPL作品では『アトミックロボキッド』や『オメガファイター』のBGMも手掛けている。

*2 デフォルト設定では初回3万点、以降は5万点ごとにエクステンドする。

*3 但し、最終版と言われているバージョンDだけは「残機が6の状態ではエクステンドスコアに達しても残機が増えない」のみで残機が減った状態からのエクステンド自体は可能。

*4 便宜上、最初期版を「バージョンA」、最終版を「バージョンD」と呼んでいるケースが多い

*5 代表的なところでは『エグゼドエグゼス』、『ソンソン』、『魔界村』など

*6 余談だが、ファミコンでも60fpsを実現している『闘いの挽歌』や『1943』などはカプコン開発であると言われている。