ガンダムメモリーズ ~戦いの記憶~

【がんだむめもりーず たたかいのきおく】

ジャンル タクティカルチェンジアクション
対応機種 プレイステーション・ポータブル
発売元 バンダイナムコゲームス
開発元 ベック(芝村組)→B.B.スタジオ
発売日 2011年6月23日
定価 6,279円 / DL版:6,270円
判定 クソゲー
ポイント 意味のない機体属性
不遇過ぎる射撃機体
爽快感皆無な戦闘
(歩けないから)翔べ!ガンダム
原作再現やシナリオ面も微妙
ガンダムシリーズ


概要

キャッチコピーは「記憶を巡り、数多の戦場を駆け抜けろ!」
歴代「ガンダム」作品を基にしたステージを、原作に登場したMS*1を操作して駆け抜けていく。
三機一組でチームを組む「MSシフトシステム」を採用し、状況に応じて機体を使い分けていく。
画面構成こそガンダムバトルシリーズに似ているが、開発元を見て分かるように、その流れは全く汲んでいないタイトルである。


特徴

  • MSシフトシステム
    • 本作の機体は「接近」「射撃」「スピード」の3タイプに分かれており、それぞれに得意な分野や相性がある。
    • また、耐久力は各機ごとに個別なので、被弾した機体を控えに下げて回復させるなど戦略性が求められる。
  • スペシャルトリガー
    • ゲージを溜めることで発動できる3種類の特殊モード。
    • 能力の上がる「覚醒」、QTEで派手な演出攻撃を放つ「クイックアタック(以下QA)」、ゲージを三つ使用して僚機と共にQAを使用する「コンビネーションアタック」。
  • コンボ
    • 本作には武器の持ち替えが無く、コンボを成立させることで次々に武装を変えながら攻撃していく。コンボの最後に強力な武器を使用することもあり、ステージ攻略には欠かせない。
  • 巨大MA*2
    • 圧倒的な大きさと破壊力を持つMAとの対決も用意され、普段とは違った戦略が求められる。もちろん向こうもQAを放ってくるので、油断すると致命傷に…。
  • 本作のデータ総量は292MB。PSPのアクションゲームの中ではかなり低く収まっている。
    • データが大きければいいというものでもないが、データが軽いのは徹底した使い回しや省略と手抜きのせいと見られており、そのせいでゲーム性そのものが損なわれている部分もある。

問題点

システム面の問題点

  • MSシフトシステム
    • 攻撃力にすぐれた近接タイプは対ボス戦、手数が多い射撃タイプは集団戦、速さに長けたスピードタイプはバランスよく立ち回れる…と棲み分けがあるとされているが、実際にはモーションの使いまわしが多すぎてタイプによる性能差がまったく分かれていない。
    • 後述する射撃性能の問題から、射撃タイプは使い勝手が特に悪い。
      • 射撃タイプ以上の射撃性能を持つ接近タイプやスピードタイプはザラにいるのに、射撃タイプの格闘性能は極めて悪くお話にならない。『ガンダムVS.シリーズ』などでは、格闘コマンドに射撃技が設定されるといった工夫が行われているが、本作では低威力・隙だらけの体当たりを抱えさせらえた射撃タイプも散見される。
      • 好きな機体だからといって射撃タイプオンリーの編成でミッションに挑むと敵が倒せずタイムアップになってしまう恐れがある。
      • 格闘と射撃のパラメータがATK(攻撃力)としてひとまとめにされているため、攻撃力が高い近接タイプはそれだけで射撃の攻撃力も(わずかだが)高くなる。根本的なシステムそのものが成立していないありさま。
  • 出撃枠
    • 出撃し戦闘を行うのは一人のみ、味方はコンビネーションアタックのとき以外は全く出てこない。どこで何をしているのか。
      • 操作キャラになっていない機体は味方CPUとして参加するとか、画面に映らないだけで戦闘には貢献しているといったシステムではなく、本当に戦場に出てこない。文字通りにプレイヤー単独で複数の敵を相手にしなければならないため、気を抜けばすぐに集団リンチに繋がり、さながら劇場版00におけるELSと対峙するデカルトの気分を味わえる。
      • 味方NPCといった概念もないため、「ソルブレイヴス隊全機、フルブラスト!」と威勢のいい出撃ボイスがありながら単機で出撃するグラハムといった、悲しい設定無視も見られる。
    • 編成は三機の総コストが3以内にならなければならないが、ユニコーンガンダムのみコスト2で他の機体はコスト1なため、実質ユニコーンに対するハンデ以外の何物でもない。ユニコーンが何をしたというのか…。
  • QA
    • 演出そのものはバンク仕様。その機体が攻撃しているシーンだけを写し、最後に敵が被弾するシーンを流すという、ガンダムSEEDを髣髴とさせる演出になっている。が、「画面上は広範囲を砲撃しているのに、当たるのは一機」とか「乱舞にしか見えないけど1ヒット」というどうにも腑に落ちない絵が多い。
    • エース級の敵はフィールド上にいる他の機体とコンビネーションアタックを仕掛けてくる。なぜ敵ができるのにプレイヤー側には実装されていないのだろうか。
    • そもそもが悪評名高いQTEであること。
      • ぴったりに入力すると「エクセレント」と表示されるが、エクセレントでも攻撃が当たるとは限らない鬼畜仕様。押し間違えれば失敗となり、相手に防御されたり反撃を受けてしまう。
      • 難易度の高いミッションではエクセレントが当たり前で、一瞬でも遅れるだけで反撃もしくは回避されてしまう。敵エースのQAは即死級の威力を持つため、入力ミス=ゲームオーバー。その上敵ユニットが入れ替わり立ち代り連続でコンビネーションアタックをしかけてくることも。リンチもいいところである。
  • 移動とフィールド
    • 本作には「地上を移動するモーション」が存在しない。初代ガンダムもνガンダムもどんな機体も飛行したまま移動している。単独では飛行できない機体でさえ、フワフワ浮きながら移動。ミノフスキークラフト*3でも積んでいるのだろうか?
    • 「地上と宇宙で機動力が異なる」ということも一切ない。スペック上におけるスピードの高さだけが「速さ」である。

アクション面の問題点

  • 射撃武器
    • 威力があまりにも低く、まるで使い物にならない。基本3コンボの射撃ダメージより近接格闘1回分のダメージのほうが大きいのはどうしたことか。誘導もかなり悪い。
    • □→□→□とボタンを押すことで射撃をつないでいくのだが、止まっていなければコンボが出来ない。「敵に囲まれた時に効果を発揮する旋回攻撃」や「集中して射撃を行う連続攻撃」は3コンボ以上繋がなければ発動できない…というのは「アクションゲームとしてこれはどうなの?」と思わずにはいられないだろう。移動しながらの射撃もできないことはないが、豆鉄砲をポツポツと垂れ流すようなもので非常に心もとない。
    • 射撃にはガードブレイクの効果をもつ攻撃が存在しないため、射撃で敵エースを倒す事はほとんど不可能になっている。このせいで、基本的に格闘がだめな射撃タイプではミッションクリアができない場合もある
    • 射撃ボタン長押しでチャージ射撃ができる機体もあるが、何故か射撃チャージ中は移動も防御もできない仕様のため普通にフルボッコにされてしまう。
      • チャージ射撃には照射ビームやミサイル、ファンネルなどが採用されているが、ことごとくが低威力で隙だらけだったりと使い物にならない。照射ビームは弾速が非常に速いが敵エースには至近距離で放っても防御されるし、ファンネルは相手が移動しているだけで外れてしまう
      • 前述のように地上モーションが無いこともあり、本作には床の概念がない。このせいで着地時の隙を狙うこともできず、ミサイルやファンネルによる牽制すらできない。一般的なアクションゲームにある駆け引きやせめぎ合いは皆無である。
    • こうした仕様とバランスの悪さから、最終的には射撃を封印して格闘武器に頼るしかなくなるが、格闘も格闘で後述の問題点が立ちはだかる。
  • 格闘武器
    • 見た目こそスピーディであるが見えない隙があり、エース級の敵はこちらが攻撃している最中でも防御をしてくる。ガードブレイク攻撃も発動前の隙があるせいで、攻撃が当たる前に回避されてしまう。一体どうしろと。
    • 格闘ボタン長押しでチャージ格闘ができる機体もあるが、射撃チャージと同じく格闘チャージ中も移動と防御ができない。射程も短いため、迂闊に近寄ってきた相手にぶっぱすることしかできない。
  • 格闘と射撃に共通する欠点
    • モーションのバリエーションが少ない、というよりほぼ使いまわし。
      • 格闘3パターン、射撃2パターンに大別できるほど少ない。
    • 初期状態では攻撃のコンボはロックされた状態であり、ボタンを押しても使うことができない。ミッションで獲得したポイントでロックを開放することでのみ扱えるようになるため、初期状態ではできることが少ない。
    • 覚醒中のみ使える格闘攻撃や射撃攻撃が存在するが、技が変わるのではなく増やされる形で使えるようになるため実用性が低い。ただでさえコンボ中は足が止まるのに…。
      • 覚醒技はコンボを繋いだ後にチャージをしなければ使う事が出来ない(ガンダムハルートのシザービット等)。が、技を出すまで手間と時間がかかる割に威力は低く、まるで使う意味がない。
  • 防御
    • ダメージ蓄積によるガードブレイクはなく、ガード中の相手に攻撃しても削りダメージはほぼない。しかし敵は四方八方から攻撃を浴びせてくるためこちらの耐久値はすぐに削られてしまう。
    • ガードブレイクコンボは隙が大きく、距離をとられてしまう。まるで調整されておらず、敵が異様に硬く感じる原因となっている。
    • ガード中に○ボタンを押す事で、当たり判定を無視してブーストダッシュを行う「ステップ」を行う事ができる。のだが、こちらが格闘コンボを叩き込んでいる最中でも敵エースは防御→超反応のステップにより簡単に抜け出すため、コンボを繋ぐ爽快感と謳っておきながらコンボをろくに決めることができない仕様になっている。このせいで基本の3コンボ以外は魅せ技に成り果て、爽快感も大きく削がれている。
  • 劣悪なロックオンシステム
    • ボタンはLボタン一つ。複数の敵がいる場合、ロックオンを1→2→3→…と順に回していく方式で、同じロボットアクションゲームで言えば『ACE P』に近いシステム。この仕様上、複数の敵がいる時に咄嗟に特定の敵を狙うのが難しく、アクションゲームなのに狙った相手に目標を付けることができないという有様。
    • また、原作では多数の敵に同時攻撃を仕掛けた機体が複数参加しているのに「マルチロックオン」が存在しない。どんな武器も単独の目標へと向けて放たれる。
  • 敵の問題点
    • 味方との性能差は歴然。エース級の敵は、こちらが近づこうとすれば逃げ回り、攻撃しようものなら防御を固め、ガードブレイク攻撃で崩そうとすれば距離をとり…と、非常に倒しにくい。強敵を倒す爽快感は皆無である。

ミッションと機体の問題点

  • 使用機体はフリーミッションを購入することで増えていくが、フリーミッションモードはシチュエーションモードのどれかひとつでもクリアしなければ遊ぶ事が出来ない。シチュエーションモード自体が苦行そのものである上、機体購入システム自体に多大な問題が散見される。
  • シチュエーションモード
    • シチュエーションモードの話は劇場版ガンダム00、ガンダムSEED DESTNY、ガンダムUCの3つを再現したストーリーが売りだったが、シナリオに『エンブレム オブ ガンダム』で散々酷評された芝村裕吏氏が参加している点でお察し。どこか性格がおかしいキャラクターや独自解釈によるあきれたストーリー展開など、当時指摘されていた問題点がさらに悪化して帰ってきている。
    • 各話数は00とSEED DESTNYは11話、UCのみ3話と極端に差がでている。
      • 端折っても話が通る00とSEED DESTNYに比べ、UCは原作となっているアニメ版が当作発売時でEP3までしか出ていなかったとはいえ、序盤も序盤、クシャトリヤとの初戦で話が終わってしまう。
      • SEED DESTNYを再現したシナリオは特に酷い。ヒロインの一人であるステラ・ルーシェ視点で話が進められていくという、一見すると工夫の見られる展開だが、ステラは原作通りに途中退場してしまう。その後は何事もなかったかのように主人公のシンにスポットが当てられるなど、何をしたかったのか分からないシナリオになっている。
    • 3つのストーリーをクリアするとオリジナルシナリオの「ガンダムメモリーズ」が解禁される。内容は推して知るべし。超多用される「一方その頃」
  • シナリオの会話シーンにはボイスが一切無い。その上、人物は一枚絵のみ。ポーズや表情のバリエーションはなく本当に一枚絵のみと、時代錯誤もいいところである。
    • ミッション中にモノローグや仲間からの無線が入るが、そこもボイスがなく、顔写真と文章が画面上部に差し込まれる形で入る。はっきりいってかなり邪魔。
    • 一部のシナリオのミッションでは、いきなりキャラクターの顔面ドアップの絵が差し込まれることがある。画面全体に表示されるキャラの絵はシュール極まりない。
  • フリーミッションモード
    • フリーミッションは、購入する事で解放されていないミッションからランダムに一つ解放される誰得仕様。しかもミッションをクリアしなければ機体を手に入れる事は出来ない。
    • 使いたい機体を出すにはポイントで手当り次第にミッションを購入するか、セーブとロードを繰り返すしかない。
      • ただし、出現させたミッションをクリアせずに次のミッションを購入すると上書きされて消えてしまうため、無駄なポイント消費が強いられる事となる。
  • 機体
    • パイロットは機体毎に固定。それだけならまだしも、そのパイロットのボイス量も異様に少ない。一人あたりのボイスが10パターン越えているかどうかも怪しいほど。
    • 上記にも述べたが、基本モーションの使い回しが余りにも多すぎて機体の個性が損なわれている。
      • 機体の特徴を反映した攻撃はチャージ攻撃や複数の射撃コンボを繋がなければ使う事ができない。敵が多い+射撃コンボとチャージ中は脚が止まるという仕様上、使おうとする間にフルボッコにされる。リアリズムの追及方向を間違っている。
    • 機体の強さはポイントをつぎ込む事で強化する事が出来る。だが…。
      • 一部の機体は改造段階の上限がやたら低く設定されているため、高難易度のミッションでは性能不足に陥ってしまう。
      • パラメータ上限の開放は存在しないため、弱い機体は弱いまま打ち止めになってしまう。
  • 本作には各作品から大火力の機体が多数参加しているのだが、先に述べた仕様からその設定を活かせている場面は全くない。
    • 劇場版ガンダム00の参戦も目玉の一つであったが、実際のゲームでは非常に残念なものであった。
      • ガンダムサバーニャ…ビットを一切飛ばす事が出来ず、覚醒中かQAの演出でしか見ることができない。
      • ラファエルガンダム…ビットが格闘攻撃にされているせいで、文字通りに手の届く範囲にしか飛ばす事が出来ない。
      • この以外にも他項目で挙げたガンダムハルートやグラハムなど、残念すぎる描写や仕様が目立つ。

評価点

  • カスタムサウンドトラックが使いやすい。
  • F90の参戦
    • 人気の高い機体ではあるものの、この手のゲームでは出番の少ないF90が参戦している。元がマイナー作品故に、「ゲームに出てくれただけでも嬉しい」という年季の入ったファンも少なくない。
    • パイロットは漫画版のデフ・スタリオンが採用されており、CVはGジェネ準拠の関俊彦氏。関氏は他キャラのCVとしても参加しているので、いわゆるついで撮りで参戦できたのかもしれない。
      • ただし、本作で使用できるのは漫画版の終盤で登場していた混成装備型のみで、しかも上記で散々に述べた射撃タイプでもある。F90最大の特徴であるミッションパックによる多彩な換装形態*4はもちろん、火星仕様のF90や敵勢力のオールズモビルなども再現されていない。

総評

本作を一言で言うなら「期待はずれ」だろう。
アナザー作品の多数参加や新システムなど、上手く使えば良作となれる要素は十分にあった。が、それらを手抜き仕様や劣悪なゲームバランス・シナリオなどでことごとくふいにしており、キャラゲーとしても評価できないクソゲーにしてしまっている。
その後「原点回帰」とばかりに『3Dバトル』や『新ギレンの野望』など宇宙世紀に特化した作品が続いたのは、本作での失敗が原因のひとつとも推測できる。


余談

  • ガンダムインフォにて、ガンダムシリーズに出演する緑川光氏、子安武人氏、阪口大助氏ら3人による通信プレイの映像が配信されている。公式でゲーム動画を配信するというのも面白い試みであるが、『機動戦士Vガンダム』はこのゲームには登場しないため、阪口氏だけがこのゲームには全く関係していない。なぜ呼んだのか。
  • 公式サイトにて『機動戦士ガンダムAGE』のアニメ公式サイトへのリンクバナーが張られているが、『機動戦士ガンダムAGE』はこのゲームには登場しない。ガンダムAGE目当てで購入しようとする人はご注意を。
  • なお本作の3Dモデルやステージ、モーションはモバゲーのソーシャルゲーム『ガンダムキングダム』に流用された。上記のQAの演出方式も使われている。
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最終更新:2022年06月15日 14:48

*1 モビルスーツと読む。「ガンダム」シリーズに登場する機動兵器で、わかりやすく言うと人型ロボット。

*2 モビルアーマー。人型をしていない機体のこと。ビグ・ザム、ビグロ、アプサラスなどのほか、定義によってはボールなども含まれることがある。

*3 宇宙世紀作品に登場する浮遊装置。実際に搭載しているのはホワイトベースのような戦艦や、巨大MAなどといった一部機体のみである。

*4 F90には状況に応じて装備を換装する機能があり、設定上はA~Zまで26種類もの形態が存在する。なお、発売時点で各媒体にて実際に登場していたのは漫画版のADS及び混成装備型、ガンプラのADSPVLY、ゲーム『フォーミュラー戦記』のADVPがあった。