東尾修監修 プロ野球スタジアム '91

【ひがしおおさむかんしゅう ぷろやきゅうすたじあむ きゅうじゅういち】

ジャンル スポーツ(野球)
対応機種 ゲームボーイ
メディア 1MbitROMカートリッジ
発売・開発元 徳間書店インターメディア
発売日 1991年8月9日
定価 4,200円(税別)
プレイ人数 1~2人
※2人プレイは対戦プレイのみ
周辺機器 通信ケーブル
判定 クソゲー
ポイント 連打とバントが全て
個々のシステムは悪くはないが…


概要

元西武ライオンズのピッチャー、東尾修氏監修による、日本プロ野球を題材とした野球ゲーム。

1991年の頃はまだ多くなかった、登場するほぼ全ての選手が実名となっている作品である。
ただし、文字数制限の絡みで一部表記が簡略化されている*1


システム

ピッチャー

本作では、まず投球の際にどの高さの球を投げるかを十字ボタンで選ぶ。
高・中・低の中で高さを決めた後でAボタンを1回押すと画面に表示されているバーが動き出す。
最初にバーが左に向かうので、最初の位置に戻ってくるまでの間にAボタンを押して球速を決める(左で止めるほど高速になる)。
その次は投げたい方向に合わせてAボタンを押すことで球速とコースが決定され、投球が始まる。

バッター

バッターもまずはどの高さにスイングするかを決める。
Aボタンを押して決めるか、ピッチャーが投球を開始した時に指定していた高さにスイングする。
Aボタンで高さを決めていた場合、ピッチャーが投球を開始していなければもう一度Aボタンを押すことで高さを決め直すことが出来る。

通常Aボタンでスイングするが、ABボタンを同時押しした場合はバントが出来るようになっている。

ランナー

出塁した選手は次の塁に対応する十字ボタンの方向*2とBボタンを同時押しするとリードし、リード5回目で次の塁目掛けて盗塁を試みる。
ただし、コンピューターも幾度かリードすると牽制球を投げてくる。

ランナーはABボタン同時押しでその場に停止、対応する十字ボタンの方向(2塁に向かって走っている場合は1塁に対応する十字ボタンの右になる)とAボタンでその塁に帰塁するようになっている。

また、ホームにいるキャッチャーにボールが渡っている状態でホームに向かって走ると、一般的なゲームではホームでタッチアウトにされるが、本作ではホームベース周辺がアップ表示され、Bボタンの連打勝負によるクロスプレーが始まる。
ランナー側が勝つと、キャッチャーを薙ぎ倒し、その拍子にキャッチャーがボールをこぼしてしまうので、ホームインが成立する。
キャッチャー側が勝つとそのままランナーがアウトとなる。


ゲームモード

1P

コンピューター相手に対戦を行うことが出来る。
同じチームを選択することは出来ないが、セパ両リーグの制限を無しに自由にチームを選択することが出来る。

2P

通信ケーブルを使用して2人のプレイヤーで対戦出来る。
基本的には対戦相手がプレイヤーになる以外は1Pモードと同じ。

ペナント

ペナントリーグを勝ち上がって優勝を目指すモード。
まずプレイヤーはセパどちらのリーグに参加するか決め、その後チームを選択する。
選ばれなかった同じリーグの残り5チームと対戦して勝ち上がると、今度は日本シリーズとして別リーグの優勝チームとの対戦が行われる。
更に、日本シリーズに勝利すると今度は東尾修氏が率いるオールスターズチームとの対戦が行われ、これに勝利して初めてエンディングとなる。
本作には選手のコンディションの設定があるが、日本シリーズで対戦するチームとオールスターズチームは全選手のコンディションが最高となっている。


評価点

実名で登場する選手達

  • 前述した通り、名前表記には4文字の制限があるため、それに引っかかる選手は簡略化されてしまうが、それ以外は問題なく選手が実名で登場する。
    • 現在では選手が実名で登場するのは当たり前のこととなっているが、当時はまだまだ選手が実名で登場する作品が珍しいと言っても過言ではないほどであった。

レジューム機能

  • 本作はゲームボーイという携帯機向けのソフトであり、それを活かした機能としてこの「レジューム機能」がある。
    • これは回の表裏が終わった段階でオートセーブし、途中で電源を切られた場合、電源を切った時の回の表の最初からやり直すことが出来る(7回裏で電源を切った場合は7回表からと言うこと)。
      • 地味ではあるが、携帯機であることを活かした親切な機能であると言えるだろう。

割合守備が容易

  • 本作では一部のゲームに見られる、オートの守備は存在していない。
    • しかしながら、一部の鋭いライナーの当たりなどは反射神経を問われるものの、大抵の場合はそこまで球速が速くないこともあって、割合落ち着いて対処が出来る。
      • そのため、他のゲームで守備が苦手で大抵オートにしているという人でもすぐに慣れることが出来ると思われる。

問題点

コンピューター戦において有効すぎるバント

  • スリーバント失敗なども起こりうるので絶対ではないのだが、折角スイングの高さなどの駆け引き要素があるにもかかわらず、実際には中段でのバントでほとんど安定してしまう。
    • すぐ真下に落とすようなバントに出来れば、キャッチャーが動けばアウトに出来るであろうにもかかわらず、キャッチャーはその場で棒立ち、ピッチャーが拾いに行っておもむろに送球となるため、ほぼ確実にセーフになる。
      • 更に、バントホームランとは違うが、バントで転がした球が物凄い勢いで外野の奥まで転がっていってしまうこともあるため、バントでランニングホームランも狙える始末*3
  • これだけならまだ良いのだが、後述の問題点の合わせ技で普通にスイングするメリットが薄くなってしまっている。
    • 前述の通り、絶対安定という訳ではないが、バントを徹底していればそのうちにバントだけで繋いでいける展開になってしまうことがほとんど。

連打が全てのクロスプレーとコンピューターの送球判断

  • ボールを持つキャッチャーがホームベースにいる状況でホームに向かって走るとクロスプレーが始まるのは前述した。
    • これは裏を返せば、いくらキャッチャーがボールを持っていようとも連打に自信があればそれをこじ開けることが出来るということになる。
  • コンピューターの送球は一番進んでいるランナーの次のベースに投げることを最優先とする。
    • つまり、3塁にランナーがいる場合、打球をフェアグラウンドに転がすことが出来れば、コンピューターはどれだけバッターをアウトに出来る状況であってもホームにしか投げない。
      • つまり、3塁までランナーを進めることが出来た時点で、バッターはフェアグラウンドに転がすことが出来れば確実に2塁までは進めるようになるということである。
    • ただし、これは2アウトを取られるまでの話であり、2アウトになると確実にアウトを取れるベースに投げるようになる。
  • また、前述のバントではファールグラウンドに転がることはあっても、フライになることはまず無いため、2アウトを取られるまではランナーが2塁3塁の状況であれば、バントをフェアグラウンドに転がし、連打さえ出来れば点数を取り放題となってしまう。
    • バントを転がした直後の2塁と3塁ランナーを安全のために一旦ベースに帰塁させると、元々3塁にランナーがいるため、コンピューターはホームにボールを投げるので、打ったバッターはこの時点で1塁に入れる。
      • その後、1~3塁の各ランナーを一斉に次の塁に進めさせると、ホームでクロスプレーが発生するので、連打勝負に勝利すればこれをなぎ倒せる。
      • 更に、連打勝負中の進塁は確実に成功するので、1点を取った上で更にランナーは2塁3塁にいる状況となるので、これを繰り返すだけである。
  • たまに連打合戦に負けたり、スリーバント失敗などでアウトを取られたりすることもあるが、2アウトにならなければこの繰り返しでいけるし、2アウトになってしまっているのであれば、2塁と3塁ランナーを投げる前に進塁させてしまえば、連打勝負に勝てば少なくとも2点は取れる。
    • 詰まる所、折角の読み合いを楽しめるスイングコースの選択の要素が形骸化してしまい、バントとホームでのクロスプレーの繰り返しで安定してしまうというあんまりな試合運びが繰り広げられることになってしまう。
      • おまけに、本作には点差によるコールドゲームが存在しないため、どんなに一方的な試合運びになっても必ず9回までプレイすることになる。
  • ただし、これを実践する際はホーム上でキャッチャーが動き回っている時は普通にタッチアウトにされてしまうので、ホーム上でキャッチャーがボールを持って止まっていることを確認してからする必要がある。
    • その状況で進塁出来なかった場合は、次のバッターでピッチャーが投球する前に全ランナーを進塁させてしまえば、3塁ランナーはクロスプレーに移行、1塁と2塁ランナーはそれぞれひとつ進めるので、元の形に戻すことが出来る。

総評

オブラートに包まずに言えば、東尾氏は一体何を監修したのかと本気で問い詰めたくなる作品。
恐らくはピッチャーである氏なので、ピッチング部分を監修したのかもしれない。
そうだと考えれば、確かにピッチングのシステムは面倒に見えてしまう所はあるが、なかなか面白いシステムとはなっている。

しかし、本作の場合は打高投低などではなく、打撃部分のシステムが少なくともコンピューター戦ではバント一択という状態になってしまっているため、完全に形骸化されてしまっている。
また、折角のクロスプレーの再現も強すぎるバントと、所謂コンピューターのフィルダースチョイスとも言うべき送球判断、更にはシステム上連打さえ出来れば強引にホームベースをこじ開けることが出来るため、完全に裏目になってしまっている。

元プロ野球選手が監修し、選手も実名で登場とするという、プロ野球ゲームファンにとっては嬉しい要素となり得るものを持っていたにもかかわらず、肝心のゲーム内容が余りにもお粗末すぎてものの見事に無にしてしまった、ある意味勿体ない作品であると言えるだろう。


続編

  • 1992年7月17日に『東尾修監修 プロ野球スタジアム '92』がゲームボーイ向けに発売されている。
    しかしこちらも多少の調整はされているものの、コンピューター戦においては結局バントと連打が命のゲームになってしまっている。
  • 1993年9月30日に『東尾修監修 スーパープロ野球スタジアム』がスーパーファミコンで発売されている。
    これもやはりバントと連打命。そして選手を合体させて強力にするという謎の試みがなされている。東尾氏は一体何を監修したのだろうか。

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最終更新:2023年10月17日 21:49

*1 例:デストラーデ(元西武ライオンズの外野手、オレステス・デストラーデ氏)→ですとら、きたべっぷ(元広島東洋カープのピッチャー、北別府学氏)→きたべぷ、など。

*2 なお、十字ボタンの対応は1塁:右、2塁:上、3塁:左、ホーム:下となっている。

*3 ただし、大体はホームでのクロスプレーで勝利してという形になる事が多い。