特殊報道部
【とくしゅほうどうぶ】
ジャンル
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超常現象報道アドベンチャー
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対応機種
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プレイステーション・ヴィータ
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発売元
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日本一ソフトウェア、メ~テレ
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開発元
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日本一ソフトウェア
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発売日
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2012年8月23日
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定価
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Vitaカード版:5,800円 ダウンロード版:5,000円
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判定
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なし
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ポイント
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日本一ソフトウェア20周年記念作品 テレビ局×超常現象
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概要
地方テレビ局「尾張テレビ」が不定期に放送する深夜番組「トクホウ」のスタッフとなり、超常現象に関わっていくADV。
同社の『流行り神』シリーズに近い傾向ではあるが、あちらが怪談や都市伝説を主に扱っていたのに対し本作はエイリアン・アブダクションやエシュロンなど、『X-File』的な題材を多く扱う。
作中でも「心霊は専門外」と言っているが、一部心霊ネタもある。
愛知県のテレビ朝日系列の放送局「メ~テレ(名古屋テレビ放送)」との共同制作であり、テレビ局が舞台だからこその演出もある。
シナリオ担当は『流行り神』シリーズや『My Merry May』シリーズなどにも参加していた長井知佳。
登場人物
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クリックして展開
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柚原 遼(CV:前野智昭)
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本作の主人公。ある事件をきっかけに、報道部からトクホウへ移ることになった新米テレビマン。報道への情熱は人一倍。
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しかし気合が空回りすることも多く、そこも含めて未熟さが目立つ。
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鷲見 衛(CV:細谷佳正)
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トクホウのアシスタントディレクター。無口だが基本的に万能で、どんな仕事も完璧にこなしてしまう。
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その経歴は謎だらけで、かつては要人警護などもしていたとか。
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棚橋 彩(CV:沢城みゆき)
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リーダー気質の男前女子、実質的なトクホウのトップ。一応肩書きはディレクター。
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実は大酒のみでガサツな面も。また考えなしに動いてしまうことも。
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度会 楓(CV:瀬戸麻沙美)
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ある取材からトクホウとかかわるようになった女子高生。アルバイトとして出入りしている。
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歳不相応に利発で大人びており、感情の起伏が表情に出にくい。しかしそれらには理由があり、実は誰よりも頑張り屋。
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佐曽利 昭雄(CV:藤原啓治)
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トクホウのプロデューサーで、バブル華やかなりし頃の雰囲気がバリバリ。実は有能らしいが、働いている所をまず見かけない。
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飛騨山中に潜むというUMA「ヒダゴーン」に並々ならぬ執念を燃やし、隙あらばロケを組もうとする。子供の頃に見たというが、飛騨の山奥は子供がホイホイ行ける場所じゃない気が…。
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村瀬 知華(CV:藤田咲)
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トクホウだけでなく、様々な番組で活躍するアナウンサー。爆乳。その笑顔と胸で、地方局のアナウンサーながら全国区の知名度をもっている。
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報道への熱意は遼にも負けないが素顔は天然で、好意を寄せる衛にストーカーじみたアプローチを掛けている。
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システムの特徴
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マテリアルチェック
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写真や動画、音源などの放送素材をチェックして気になる部分を洗い出す作業。
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写真の場合は1枚〜複数枚のCG、動画は連続した一連のCGの中から探し出していく。気になった箇所をタッチ、或いはカーソルを合わせて決定する。
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基本はどちらも同じだが、前者は推理による調査、後者は間違い探しの要領に近い。
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音源の場合は台詞の中から気になる語句のあるものを選ぶだけ。こちらは細かい箇所まで指定しなくて良い。
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間違えた場合は指摘を受けて選び直し。指摘の中にはヒントがあることも。
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プランニングチェック
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番組の方向性を決める作業。『流行り神』で言う所のセルフクエスチョンに近い。
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現在追っている事件について二通りの企画書を提案し、どちらか選択する。これによってシナリオ後半の流れが大きく変わる。
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例えば、「アブダクションの被害者」と「その周囲に現れた怪しい黒服達」のどちらに目を向けるか、など。目の前の出来事をしっかり追うか、話を飛躍させてでもその先を見据えるかと言った分かれ道が多いが、どちらを選んだから真実に迫りやすいという法則性は無く、実際に調べなければ分からない。
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プログラムディレクション
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各シナリオの最後、主人公達が体験した事実を「トクホウ」で放送する。
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村瀬知華が読み上げる原稿に合わせ、画像を表示する。
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「○○を撮影した映像があります。画面をご覧ください」などのアナウンスに沿って画面上に4つの画像が表示される。同時に「3⇒2⇒1⇒Cue!」のカウントダウンが始まり、「Cue!」のタイミングで正しい画像をタッチすれば良い。タイミングがズレたり画像を間違えると評価が低くなる。
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マテリアルチェックとプログラムディレクションの結果によってシナリオの評価がSABCDの五段階で下される。パーフェクトだとSになる。
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評価がC以上で次のシナリオに進める。Dだった場合はやり直し。
評価点
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ツボを押さえたシナリオ展開
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アブダクション、エシュロン、人体発火、予知能力などの有名な超常現象をしっかり踏襲しつつ、独自の視点で物語をしっかり作りこんでいる。
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いずれの事件にもテーマ以上の真相が存在し、各話タイトルから想起される超常現象で終わりだと思っていると驚愕させられる展開が待っている。
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同ライターが後に手掛けた『真 流行り神』のような文書の拙さも無い。
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プランニングでルートが分かれるのも面白い。どちらを選んでも事件の真相は変わらないが、主人公の行動方針によって展開は全く違ったものになる。
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ルート次第では真相に肉迫できずに終わってしまうパターンもあるが、それはそれで明らかになる事実もある。両方の番組を作らなければ全てを知った事にはならない。
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また、この「二つのルートが存在する」こと自体が終盤で意味を持って来る。
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登場人物の、いい意味でのアクの強さ
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上記のようにバブル時代のテレビマンのような佐曽利P、無口だが万能ADの衛、男前で仕事も優秀と思いきや私生活はトンデモな彩、カメラの前と素の姿のギャップが激しい知華など、個性豊かでしかも物語を損なわない。
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第二話、第三話は衛と彩にそれぞれ焦点を当てたものであり、掘り下げも成されている。
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ヒロインの楓は「ある事件の所為で賢く大人びたポーカーフェイスのように振る舞っているが、内面は普通の女の子」という面が作中でしっかり描かれており、ストーリーが進むにつれて色々な顔も見せてくれる。
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最終話でキーとなる彼女のノートにはその内面が実によく表れており、そこまで進めたプレイヤーなら感慨深くなるかもしれない。
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「撮影機材風」のエフェクトや専門用語、業界の事情など、如何にも「テレビ局と組んでやってます」というのがわかる部分が多い。
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画面表示も通常は「STANDBY」、カメラを回している時は「●REC」になるなど、演出も細かい。また、バッテリー量がシナリオの進行度と連動しており、現在がその話の何割程進んだ所なのかが大凡分かる。
賛否両論点
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登場人物は悪い意味でもアクが強い
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主人公の遼は「情熱は人一倍だが未熟者」というキャラで、その成長を描く内容でもあるのだが、「頼りない」「未熟」という点がとにかく強調されるので人によっては鼻に付く。
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事あるごとに未熟さを指摘されたり弄られる他、自分でも「僕はなんて情けないんだ」「自分のバカさ加減に腹が立つ」「バカですみません」など自虐的な地の文が非常に多く、そのくせ周囲はとにかく持ち上げるので、腰が低いを通り越してただの卑屈に見えてしまう事も。
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勿論、やるときはやるし、自ら事態を打開したり周囲を動かす事もあるのだが、空回りで終わってしまう事もやはり少なくない。そんな主人公と終始付き合う訳なので流石にうんざりするかもしれない。
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この未熟さの強調や自虐ぶりはクライマックスに至っても出てくるほど。後述の通り最終盤は「トクホウ」があまり関わってこなくなる関係もあってか、最終的に事態を収束させても彼のテレビマンとしての成長はあまり描かれない。
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トクホウに身を置くだけあって考え方も柔軟な方なのだが、時折偏った視点で勘違いしたまま思考を進めることがある。
例えば、知華に言い寄られる衛は色恋沙汰に関心が無いのと彼女が苦手なのもあって、その都度それを躱しているのだが、その様子を見た主人公は「あの村瀬さんの誘いを断るなんて理解できない」「ひょっとして男に興味があるのか」などと自分本位の妄想を膨らませる。それがほんの一時ならあまり問題は無いのだが、その調子でしばらく衛との会話が続く(衛をそう言った目で見る)ため、プレイヤーを辟易させる。
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その一方で仲間達はやたら優秀に描かれており、特に衛に関しては御都合主義に片足を突っ込んでいるほど。
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楓は上述したようなキャラなのだが、前半のとあるシナリオの片方のルートでは大人を背後から奇襲し、倒れた相手の顔面を殴りつけるという荒業を顔色一つ変えず行う。どう考えても普通の女の子のやる事ではない。
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かと思いきや以降のシナリオではこのような行動に出るシーンは無く、寧ろ子供のように超常現象に怯えたり、あっさり人質に取られたり、主人公に助けられるなどか弱いヒロインのように描かれる事が多いため、尚更このシーンの異様さが際立っている。
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村瀬知華は何故か不自然なほどの巨乳。別にお色気要素でも、エッチなサービスシーンがあるわけでもなく、メインテーマからも外れているキャラクターデザインである。
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不可解すぎるキーパーソン
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詳しく書くとネタバレになるが、本作のキーパーソンの行動はかなり変。端的にいうと行き当たりばったり。
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あるシナリオでは敵対するかのような行動を取ったかと思えば、別のシナリオでは情報をリークしてくる。最終的な目的はあるのだが、手段が滅茶苦茶。
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最終話では、「落としたら簡単に壊れるもの」に主人公たちの記憶を封じ込め、それを適当な場所に放置。
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当然のようにアクシデントで破損し、それが元で主人公たちが記憶を取り戻してしまう。
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彼らが探し始めたのを知って、ようやく部下を向かわせて回収しようとするのだが、下手に人を動かしたせいで「ここにあるんじゃないのか」とあたりをつけられてしまうという杜撰ぶり。
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また「他に方法はない」と主人公に詰め寄りながらも反論されると「そういう事もあるのか」と納得してしまう。
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他に可能性がないからこそ非常手段に出ようとしたはずなのに、その辺が適当にもほどがある。そんなだから大変な事態になってしまったんじゃないだろうか、彼らは…。
問題点
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ボリュームの薄さ
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一般的なADVのような選択肢は無く、最終話を除けば分岐はプランニングのみ。全七話だが一話あたりが短めでやりこみ要素もない。急ぎでプレイすれば一日で全トロフィーがオープン出来てしまうほど。圧倒的に不足しているという程ではないが値段を考えるとやはり少なく、『流行り神』並のボリュームを期待すると拍子抜けする。
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プランニングによる分岐は各話が既に佳境に入った頃なので分岐した後は短く、ルートによってはマテリアルチェックの一つも無く終わってしまうものもある。最終的にトゥルーエンドを迎えるには全ルートをクリアする必要があるのだが、プランニング以前は全て共通なのでスキップすれば回収は早い。
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マテリアルチェックも正解を選ぶだけであり、色々調べ回る楽しみは無い。最終話以外は両方のルートをクリアすれば既読率が即100%になる。最終話ではある不正解を選ぶとトロフィーが貰えるがそれぐらいである。
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評価もシナリオには影響せず、間違えて悪いルートに進んだり、オールSで隠しシナリオが出現するようなこともない。
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最終話は一部マテリアルチェックで間違えるとバッドエンドになるがその程度。プランニングチェックはどちらを選んでも同じ。
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量だけではなく質も薄い面がある。
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専門的な解説や説明台詞は多く、文章だけなら濃いように見えるのだが、要約するとそこまで複雑な話ではないパターンが少なくない。
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各話の超常現象も、両方のルートを通っても謎が残るものも幾つかある。敢えて全て解き明かさず尾を引く形で終わらせた方がテレビ的という意図もあるのかもしれないが。
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しかし最終話でそれらについてされる説明は「それを言われたら何でもアリじゃないか」というようなもので、それまでのエピソードも結構ぶち壊しな上、上述したキーパーソンの態度にも繋がっている。また、曖昧にぼかした表現も多いため最終的に残る謎も少なくない。
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最終的に主人公達の体験はほぼ全て「トクホウ」で公にされるのだが、第一話を除いてプログラムディレクションが終わったら即シナリオ終了なので、それを放送した事による反響や、プログラムディレクションの成否の結果はシナリオ上では一切描かれない。
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作中では怪奇ネタの投稿やハガキ(主に抗議)も相当数来ていることが描写されるので、相応の視聴者は居るはずなのだが…。
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これは最終話まで同じで、主人公達の手で事態は収束するのだが最後は「トクホウ」とは殆ど関係無く終わってしまう。精々、敵を出し抜く為に「トクホウ」の企画を利用する程度で、あとはラストシーンにて一連の出来事を番組にする流れで終わるだけなので、結局「トクホウ」自体は大して本筋に絡まないし大きな役割を果たす訳でもない。
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トゥルーエンドもかなりあっさり目。丸く収まったのは分かるのだがトクホウ内での最低限のやり取りしか無く、第一話から引っ張っている「あるキャラの再会」など描かれるべきものも描かれていない。
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スタッフロール後にエピローグはあるものの、これも主人公の短いモノローグだけという呆気なさ。各キャラの後日談などは無い。
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物語は大抵、遼、楓、衛、彩の4人で進めていくため、この4人以外の掘り下げは今一つ。
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一話丸々使って掘り下げられる衛と彩、本筋のキーパーソンとなる遼と楓は全編に渡って目立つ一方、佐曽利Pは賑やかし役ばかりで活躍シーンはほぼ皆無に近い。隠れた手腕を発揮したり、あるシナリオではファインプレーを見せるなど全く活躍の場が無い訳ではないのだが、なんと最終話では殆ど出番無し。クライマックスにすらろくに関わらない。最後ぐらい良い所を見せるべきでは。
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知華も
衛に付き纏ったり主人公達に協力するなどそれなりにストーリーには絡み、各シナリオの締めも担当するのだが、最終話はプログラムディレクションが無いのでその見せ場も無く、エンディングにはラストの集合写真に写る程度にしか登場しない。クライマックスでの出番もやや取って付けた感のあるもので、かと言って全てが終わった後の様子は前述の集合写真しか無いので消化不良が否めない。
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また、主人公である遼も掘り下げ自体はあまりされていない。重い過去がある事をうかがわせる一幕があるのだが、結局それは明かされないまま終わる。
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マテリアルチェックに入るとバックログが参照できない
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マテリアルチェックが始まる予兆は主人公達の台詞だけなので、うっかり読み飛ばすと何を探すべきなのか分からなくなってしまう。そして間違えると評価に響く。
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調べる場所が一目瞭然な時なら良いのだが、ちゃんと考えてよく見ないと分からない時も多いため、情報不足は痛手である。
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プログラムディレクションもいきなり始まるので、セーブしないまま突入してついミスをしてしまい、評価が下がる事も。
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そのため、バッテリーが0になった(事件が終わり、最後のまとめのシーンに入った)ら、すぐにセーブした方が良い。
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雰囲気は出るが、走査線風のエフェクトは常時かかりっぱなしなので少々見辛い。
家でもカメラ構えてるのか、遼…。
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隠れる部分があるのに加えて全体的にやや薄暗くなっている。鮮明なCGが観たければトゥルーエンドを迎えてエクストラを解禁するしかない。オプションでオフに出来れば良かったのだが。
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その為なのかは不明だが、主人公は作中で殆ど姿を見る事はない。立ち絵は当然ながら一度たりとも表示されないし、CGにおいても片手で数えられるほどしか出ないという徹底ぶり。
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トゥルーエンドを迎えるとタイトル画面に描かれた楓の絵が変わる演出があるのだが、説明書でネタバレしている。
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トゥルーエンド後に解禁される「エクストラ」の写真を載せているためで、こちらでは背景がタイトル画面のままなので、結果としてクリア後しか見られない絵が載ってしまう事に。ちゃんと説明書を読むプレイヤーなら、クリア後に変わったタイトルを見て「あれ?この絵、見た事あるぞ」と思うだろう。
総評
テレビ局という舞台設定と、超常現象というテーマは合致性が高く、『流行り神』とは一味違った個性を発揮している。
しかしシナリオは質、量ともに全体的な詰めの甘さが見られ、「日本一ソフトウェア20周年記念」の看板を堂々と掲げられる作品に仕上がっているとは言い難い。
独自性も魅力もある題材であるため、これでボリュームがあり、シナリオももっと突き詰めていれば良作扱いされても良かっただろう。
残念なことに、何はともあれ新展開を見せた『流行り神』と違って本作は現状では続編やスピンオフなどの動きは無い。
最終更新:2024年01月09日 16:41