パックマン

【ぱっくまん】

ジャンル ドットイートアクション
対応機種 ATARI2800
発売元 アタリ
発売日 1983年
判定 クソゲー
劣化ゲー
ポイント 劣化移植の原点
マネージャーの忠告にも拘らず発売強行
投売り・返品の嵐
北米版クソゲーワースト5位(参照)
パックマンシリーズリンク


概要

大ブームを巻き起こしたナムコの人気アーケードゲーム「パックマン」の海外向け移植作品。
アタリがナムコから家庭用への移植の権利を買い取って制作したものである。

あのパックマンが家で楽しめるとあってユーザーの期待は相当なものであり、アタリは本ソフトが本体の台数分売れるものと確信していたらしい。
アタリはアメリカでの本ゲームの発売の1か月後にあたる1982年4月3日に「ナショナル・パックマン・デー」と銘打った大々的な販促イベントを全米27都市で挙行しており、力の入れようが窺える。参照

なお本作は日本でも1983年にATARI2800(日本市場向けATARI2600)用ソフトとして発売されたためATARI2800用ソフトとして扱うが、開発状況など基本的な記述は北米(ATARI2600)版に準拠する。

特徴

  • いわゆる初期の 「劣化移植」 作品として知られる。
    • こちらも『E.T. The Extra-Terrestrial』と同じくプログラム期間は6週間と非常に短い。
    • またコスト削減のため一般的な8KBカートリッジで無く4KBカートリッジを使用。
    • この影響もあってかなりの低スペックでの移植を余儀なくされており、結果的に低クオリティに繋がってしまっている。
  • 概要で述べた通り、制作・販売に当たってはきちんとライセンスを取得している。
    • 当時はヒットしたおもちゃやゲームに無許可のコピー品・類似品が付きまとうことはよくあり、パックマンもまたその例に漏れなかったが、本作の制作・販売に当たってはアタリはナムコから家庭用への移植の権利をきちんと買い取っている。

問題点

  • グラフィック・サウンド共に ATARI2800であることを差し引いても劣悪 。実際、同ハードで展開された続編の『ミズ・パックマン』(日本未発売)のグラフィックはかなり良く、サウンドもできる限りアーケード版に近づけている。
    • 食べた時のSEもオリジナル版のような小気味良さはなく「ガガッガッガッガッ」とぎこちない機械音のようなものになり聴き心地も悪い。
  • 同時に4体のモンスターを描画できなかったため、描画がかなりチラつく。
    • ATARI2800は形のあるスプライトの描画能力は(ライン中)同時に2個。本ソフトでは1つを常にパックマンに割り当て、残り1つで4体のモンスターを描画している。
    • なお発売元のアタリはチラつく理由を説明するため、モンスターを「お化け」と呼んでいた。
    • また、「モンスターが瞬間移動する」や「見えないモンスターに当たって突然死ぬ」といった記述がネット上に見受けられるが、これらは60fpsの出力を正しく記録できていない映像から判断したための誤解。下記60fpsプレイ動画を参照のこと。
  • パワーエサを食べてもモンスターのグラフィックがほとんど変わらない。
    • 厳密にはモンスターのグラフィックが青白くなり、切れる寸前にはピンク色に変わるのだが、元のグラフィックが非常に淡い上にチラつくので判別は困難。
  • アーケード版におけるモンスターのアルゴリズムが全く再現されておらず、無個性化している。
    • アーケード版ではモンスターにはそれぞれ個性があり、特定の場所で縄張り→パックマンを狙う→再び特定の場所で縄張りを繰り返すのだが、本作では簡略化されてただパックマンを追いかけるだけになっている。
  • アーケード版でのパックマンのコーナリング挙動が再現されておらず、コーナーの中心で曲がるようになっている。
    • そのため曲がる途中でモンスターに追い付かれやすくなり、距離が詰まった状態では難易度が上がる。
  • 巣の下(中央やや下)にフルーツターゲットらしきもの(説明書曰く「ビタミン」)が出るが、ミスしても消滅せず時間経過でのみ消滅する。
  • アーケード版にあったコーヒー・ブレイクがカットされている。
  • 配色が原色ばかりである上、前述のチラつきもあって目に非常に悪い。

評価点

  • 強いて評価できる点を挙げるとすれば、迷路の形が独自のものである事ぐらいか…。
    • ゲーム内容外の部分においても、前述のように時代背景的に無許可でのコピー・移植が多い中、きちんとメーカーからライセンスを獲得して移植している点くらいである。

総評

単純なドットイートゲームとしては最低限遊べなくもないものの、大人気ゲーム『パックマン』の移植作として見た場合、もはや別物と言えるほどアーケード版のクオリティを再現できていない。
元のアーケード筺体とATARI2800版を比較してみると、ROM容量は1/4、RAM容量に至っては1/16しかない。
ゆえに相当なスペック差があることを考慮すれば大幅に質が落ちてしまうのも致し方ないといえるが、だとしても酷い出来であることは否定できない。
後に発売されたAC移植作である『ドンキーコング』や『Qバート』(いずれも日本未発売)は、スペックの制約の中でも一定のゲームクオリティを再現できている。
つまり、ATARI2800の性能的にも、もっと良いものが作れたはずなのである。『ミズ・パックマン』の移植版はそれを証明しているともいえよう。


余談

  • 広告ではグラフィックの質の酷さを隠して宣伝していた。下記のデモ写真では、機種はATARI2600であるものの、画面に表示されているのは本作と同時発売された ATARI800移植版 である。こちらはシステムとしてもかなりアーケード版に近い移植となっている。
+ 発売前に公開されたパックマンの偽デモと現実
理想 現実


偽デモの画面は実際にはATARI800版である。もっともATARI2800のそもそもの解像度を考えれば偽デモがハメ込み合成なのはバレバレなのだが。

  • 本作が海外のATARI2600の売り上げを押し上げたことは確かなようで、売り上げはアタリ製ゲームで史上最高の700万本。 (参考までに、初代スーパーマリオブラザーズですら681万本である)
    • なお、社はATARI2600を持つ全ユーザーが本作を買った上、新たに200万人のユーザーが増えるという甘い試算をしており、生産本数は1200万本にも上った結果、大量の返品等による不良在庫を抱えることになった。
      • 1980年に発売したスペースインベーダーはそれまでの出荷台数が200万台のところへ200万本の売り上げ、本体もさらに200万台増加するという実績はあったが…
  • パックマン公式サイト「PAC-MAN WEB OFFICIAL SITE」の年表ではATARI2800版についての記載なし。公式で黒歴史化されていた(というより忘れられている)が、Tiny Arcade ATARI2600の収録や『PAC-MAN MUSEUM+』に本作の背景が壁紙として収録されていたりと完全に黒歴史化されたわけではない模様。
  • マネージャーは、プレイを見て 「流石にこれはまずいから発売を中止しよう」と忠告した。それでも発売は強行された。
    • ゲーム史上初の強行発売。ファンの抗議どころか、身内であるマネージャーの忠告すら無視。結果が上述の通りである。
  • 北米版クソゲーのランキングではワースト5位。ちなみに1位は『E.T. The Extra-Terrestrial』である。

関連動画等

+ プレイ動画

…とてもあのパックマンとは思いたくない出来。
※注: 瞬間移動に見えるのは動画のフレームレートが低いためで、実機でこのように見えるわけではない。

互換機(TV-BOY)だが60fpsのプレイ動画。設定から「720p60」にしないと正しく見られない。
4匹がまんべんなくチラつくのが見て取れる。実機でも同様のはず。

  • 当時のコマーシャル。
    • グラ自体は発売されたものとほぼ同じだが、明らかに現物より質がいい。
      + CM動画
+ タグ編集
  • タグ:
  • アタリ
  • クソゲー
  • パックマン

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最終更新:2024年03月08日 17:47