ドラベース ドラマチック・スタジアム ドラえもん超野球外伝

【どらべーす どらまちっく すたじあむ どらえもんすーぱーべーすぼーるがいでん】

ジャンル (スーパー) 野球 (ベースボール)
対応機種 ニンテンドーDS
メディア 256MbitDSカード
発売元 バンダイナムコゲームス
開発元 バンダイナムコゲームス(ファミスタチーム)
コスモマークオンライン
発売日 2007年12月20日
定価 4,800円(税別)
判定 クソゲー
ポイント プロモーション詐欺の先駆け
使えるチームがドラーズだけ
劣悪なグラフィック
BGMすらクソ
野球ゲームではなくドラベースごっこ
ドラえもんシリーズ
コロコロコミックシリーズ


概要

月刊コロコロコミックで2000年~2011年に連載されていたドラえもんの設定を用いた人気野球漫画『ドラベース ドラえもん超野球外伝』*1のゲーム化。
本作は韓国、台湾、シンガポールなどといった海外でも人気の破天荒なSFスポ根漫画であり、一度もアニメ化されたことがないということも相まって、原作ファンの子供たちの期待は非常に大きかった。
しかし発売されたソレは、原作の雰囲気こそそれなりに再現しているものの、それ以上に歪さも目立つ代物であった。

特徴

  • 他の野球ゲームとの違いは、原作同様「ひみつ道具」を試合中に使用できること。
    • 例を挙げると、「タケコプター」はホームランをアウトにしてしまうことが可能。
    • 攻撃時及び守備時にしか使用できない道具もあれは、両方で使えることもできる道具もある。ただ道具は原作同様3つまでしか使用できない。
    • また使える道具は原作よりも少ない。さすがにこればかりは仕方ないのだが。
  • 「必殺打法」と「必殺投法」
    • 試合中にタッチペンで線をなぞると特定の選手のみ使用することが出来る。
    • 打法は3回、投球は5回の使用制限がある。投球はストライクを取るだけの効果しかないので、いざと言うときに使用することが大事になる。
    • なおこれを使うと力の入った静止画が写される。見る価値はあり。
    • どちらかを使用された場合には止める方法は同じく必殺技を使うしかない。しかしこの仕様には問題がある(後述)。
  • 「カップトーナメント」
    • 本作はストーリーモードが無い代わりにこのモードがある。ようは様々なチームにトーナメント方式で勝っていくモード。「グリーンカップ」など6つのカップがある。
    • 決勝には原作の強敵が待ち構えており、勝つと相手チームからライバルキャラを引き抜ける。

問題点

キャラゲーとしての問題

  • 長期連載されている原作付きのキャラゲーにも拘らずストーリーモードはなく、対戦しかできない。
  • キャラゲーであるのにも拘らず、使えるチームは江戸川ドラーズただ1つ
    • 原作では多くの魅力的なライバルチームが存在したし、本作内でもチーム自体は多数が収録されているだけに、他のチームを全く使えないというのは残念なところである。
      • ただしドラーズとの対戦時を除けば、ライバルチームの描写は原作でも本当に最低限だったため、ドラーズのみが主人公なのはそこまで間違っているわけでもない。
        ゲームだからこそ他のチームでも遊ばせてくれよ、という思いは少なからず生まれてしまうが。
    • 一応条件を満たせば、助っ人としてボスチームの主要キャラクターや隠しキャラのアカえもんが使える。ただしチームとしてではなく、あくまでドラーズの補助メンバー扱い。
      • 原作でも山寺ベアーズのポコえもんや、荒川ホワイターズのシロえもんがドラーズの試合に臨時で登板したことがあったため、これらの展開を再現できる要素にはなっている。
  • 敵チームの選手は大半がモブ扱い。
    • 登場する選手のほとんどは外見上の違いが無い。主人公チームのみ全員が固有の外見と名前を持つが、他は各チーム数人のライバルキャラのみが固有のグラフィックと名前を持っている状態。
    • 確かに原作でも数人のライバル以外は人数合わせのモブに近い描写だったが、極端な巨漢や小兵、目立つ髪型など見た目上の個性は出ており、全て同じというのは流石に切り捨てすぎ。
    • またカップは6つあるが、作中でそこそこ目立っていたドラ一朗が所属する房総タートルズと、レツが所属する江戸川ボローズが何故かモブ扱い。
      たしかにキャプテンと投手以外はロクに作画もされていなかったチームではあるが。

野球ゲームとして完全に破綻している

もっとも、『ドラベース』としてなら許容範囲のものも多い。

  • バッターの必殺技がほぼ確実にホームランになる*2。必殺持ちのバッターに必殺打法を使用されるとどうしようもなく、必殺投法持ちの投手でしか対抗できない。この点は『ドキドキプリティリーグ』(PS1:1997:エクシング)と同じシステムである。
    • そもそもの話、必殺技を使わなくとも異様に長打率が高い。ただしこれについてはおおむね原作通りの再現ではある。
  • 守備にも色々奇妙な挙動がある。
    • 原作では捕手だったキャラに外野をやらせるといきなり肩が良くなったり、一塁手のキャラが捕手をやると肩がよくなるといった意味不明の仕様が存在する。
    • タッチアップが無い 。たしかに原作は草野球という扱いだったが犠牲フライはあった。
      • なお、ここでの「草野球」とはアマチュア野球のことを指しており、実際作中登場する選手のほとんどは本職持ちである。このため「草野球のドーム大会」などという一見奇妙な設定もある。
    • 守備側がボールを取ると足がめちゃくちゃ速くなり、速いランナーが遅いはずの選手にタッチアウトにされる。
    • 外野が動いていたら内野もみんな同じ方向に動く。ファミコン時代の『ファミスタ』じゃないんだから……。
      • ちなみに捕球は完全なオート操作で、実質的に運次第。とはいえ、このこと自体は操作の簡略化や、ゲーム進行のテンポアップにつながってもいる。ただ、オート操作なのに野手が全員そろって同じ動きをするため、見た目がとても格好悪い。
      • また格好悪いだけでなく、塁を守っているはずの野手が平然と持ち位置を離れるという、ゲーム上の難点にもなってしまっている。
      • 捕球まではオートだが、送球はプレイヤーが手動で操作する必要があり、独特すぎる選手の挙動に慣れないうちは送球させた塁に野手が居なくて暴投に化けるエラーが頻発する。
        いくらプレイヤーの指示とはいえ、誰も守っていない塁に向かって送球するのは明らかにおかしい。しかもたいていの場合、そこは捕球した本人が放棄した守備位置である。そして繰り返すが、この事故はプレイヤーが熟練するまで頻繁に起こる。
      • 念のため補足しておくと、ボールが捕球された後は、手の空いている近くの野手が自動的にベースカバーへ走る。カバーに入った選手が塁についてから投げれば、暴投にはならない。
  • 売りの秘密道具もいつでも使えるわけではなく条件付きでの強制発動
    • その「条件」についても、ゲーム内や説明書からは参照できない。そのため何も知らないプレイヤーからすれば、実質的にランダム発動の単発イベント扱いのようなものである。
    • 一応、どの道具を使いたいかは毎回の攻撃・守備の切り替えタイミングごとに選択できる。あくまでも使用するかもしれない候補になるだけで、必ず使ってくれるわけではないが。
      なお使用された道具はもう選べなくなるが、選択しただけで使われなかった道具は以降の機会にまた選べる。
    • ただし一回の攻撃・守備ごとに一つずつしか選べないので、立て続けに複数の道具を使ってたたみかけるといったことはできない。ゲームバランス上の調整なのだろうが、原作では連続して使うことも多かったため、ここは少し残念なところである。
    • 道具は一試合ごと毎回ランダムに三種類が割り当てられ、すべて一回ずつのみ使用できる。このこと自体は原作における試合ルールそのまま。
  • 打つ、投げるをタッチペンで行うのはまだしも、走塁や守備もタッチペンのみで操作性が悪い。
  • 必殺投法と必殺打法には実は相性の概念があるのだがゲーム中での説明は無い
    • また全選手には『パワプロシリーズ』のように特殊能力が設定されているのだが、こちらも説明がない。
    • これらは後々原作の掲載誌にて説明された。……説明書かゲーム中で説明すべきでは?
    • 一応、原作における必殺打法の大半は特定の魔球を破るために編み出されたものなので、相性に関してはその再現であると言えなくもない。また特殊能力も、選手の個性化にはなっている。
      参照する手段がゲーム内に存在しないのは困りものだが。

その他の問題

  • グラフィックはかなり貧相。ファミコン並みとまで言われるほど。
    • 実際のところファミコン並みは言い過ぎなのだが、後述の音声面も含めて、DSソフトとしてはかなり残念な部類になってしまっている。正確に言えばゲームボーイカラー並みといったところか。
      • 影等がほとんど描写されずベタ塗りのフェンス、1ドット線で書かれた文字、妙に小さく完全につぶれてしまっている守備選手等々……
      • 初報では3Dポリゴンで描かれたクロえもんが掲載されていたのだが、その後は情報が途絶え、久しぶりに情報が出たと思えば何故かこうなっていた。
    • またゲーム中の顔グラは、とある非公式ファンサイトから顔イラストを流用したものとされている。何故本編イラストや描き下ろしを用意しなかったのか…。
  • BGMに関してもただピロピロピロと電子音声を垂れ流しただけで、お世辞にも出来がいいとは言えない。
  • SEも酷い。バットの音などに迫力がほとんどなく、投手が球を投げるときには「ピュ~」とやる気の無いSEが出る。
    • 「アウト」「セーフ」「ストライク」などのボイスもただの電子音声であり、熱さもへったくれもない。
    • また作中でキャラのボイスが流れることはない。アニメ化されていない作品なので仕方ないといえば仕方ないが…。
  • ドラえもんがいない。
    • 『ドラベース』の再現としてはあまり間違っていないのだが、原作を知らない人にとってはかなり問題。
    • よくよく見れば違うとはいえ、知らない人が見れば「ドラえもんのゲーム」と勘違いしかねないパッケージではある。
      パッケージ裏には「ひみつ道具が使える」旨がうたわれていたり、おなじみ「タケコプター」や「ビッグライト」などのカットインが紹介されていたりするのもそれを助長している。
    • にもかかわらず、本作は説明書にもゲームの中にも『ドラベース』の世界観やキャラクターに関する説明が一切存在しない。
      知らずに買ってしまったプレイヤーは、まるきり意味が分からないまま、ドラえもんのパチモノめいたキャラクターたちが行う野球のような何か、というシュールな世界を強要される。
    • また出番自体は非常に少ないとはいえ、一応『ドラベース』本編にもドラえもん本人は登場し、ドラーズの一員として野球へ参加していた。
      そのためメインキャラとしては難しくとも、隠しキャラとして登場させる程度のファンサービスはあってよかったように思われる。

評価点

  • OPとPVは良質。アニメ化されていないドラベースが声無しとはいえアニメになっているのはファンにとっては嬉しいところ。
    • 原作者のむぎわらしんたろうも単行本で「長年の夢が叶いました」とコメントしている。
  • キャラゲーとして最低限の再現性はある。
    • とりあえず、ドラーズを操作し試合をしている気分は味わえるようになっている。ドラーズに限れば、各選手の見た目もおおむねきちんと再現されている。
    • やたらと長打が飛び交う大味な試合展開や、どこか間の抜けた守備の動き方なども、ドラベース「らしい」展開ではある。必殺打法やひみつ道具などと合わせて、読者の印象に残りやすい「超プレー・珍プレーが続出する野球」をイメージして意図した設計とも思える。
  • 試合の臨場感は楽しめる。
    • ひみつ道具や魔球、必殺打法などが使われる際には迫力のあるカットインが入り、試合の流れを盛り上げる。演出としてはやや簡素に終わるが、試合の邪魔にならない的確なテンポともいえる。
    • 魔球や必殺打法などは、独特のスライド操作で使用する。余計な手間と言ってしまえばそれまでだが、自分が魔球を操っている手ごたえを感じられるような、適切な操作性にはなっている。
      • こと魔球ごとに違う「書き筋」は、いずれもまさにその魔球、まさにそのキャラクターといった描線で差別化されており、原作を知っていれば納得感は高い。
      • 過剰に複雑な操作が要求されることもなく、一度覚えてしまえばわかりやすい操作で気軽に投げられるのも評価できる。
      • ただし書き方はゲーム内のチュートリアルを読んで覚える必要があるため、プレイヤーが使い方を覚えるまでのハードルは少し高い。チュートリアルはムービー表示されるだけで、実際に使い方を練習できる場面が実戦のみというのも困りどころ。
      • なおデフォルト投手の「ひろし」は魔球を使わず基本的な投球だけで戦うスタイルなので、魔球の使い方に慣れないままでも戦い抜くことは可能。
        というか魔球を使うには投手をわざわざ助っ人に選んで入れ替えなければならないため、魔球をほとんど使わないまま終わったプレイヤーも多かったものと思われる。
        しかもゲームバランス上の配慮か、魔球を投げる投手は魔球以外の面でひろしより劣る。そのため魔球の扱いに慣れていないなら、下手に入れ替えるよりひろしのままの方が安定するのもそれに拍車をかけている。
  • 試合ごとの所要時間がコンパクト。
    • そもそも原作からして草野球のため、原則として7回制になっている。本作では5回制や9回制に変更することもできるが、いずれにしても試合はテンポよく消化していける。
    • 投打については簡素ながらも最低限の駆け引き要素がきちんと入っており、その一方で守備は半ばオートという思い切った省力化。このことによりメリハリや臨場感は残しつつ、気軽にどんどん試合を進行できるテンポも両立させている。
    • 何より、体感的には漫画の中で描かれる「草野球」の展開に近い流れが楽しめるという点は評価できる。あまり細かく「現実の野球」の再現に寄せた場合、「漫画の中の野球」のテンポからはかけ離れてしまっていた可能性が高い。
    • 当時のファンの多くが子供であったことを踏まえれば、一回当たりのプレイ時間が長引きすぎないことも立派な評価点となる。過度に短すぎるわけでもなく、適度な没入感を味わったうえで終えるくらいのうまい落としどころへ調整されているのは高評価。
  • 細かいところの再現が豊富。
    • こと敵チームに関しては、かなりマニアックなところまで多数が採用されている。
    • 選手の大半がモブ扱いとはいえ、意外なキャラクターが名前とグラフィックをもらって再現されているケースもある。
  • システムの説明が丁寧。
    • 紙の説明書だけでなく、ゲーム内にマニュアルが用意されており、必要に応じ動画も交えて分かりやすく操作を説明してくれる。
      項目ごとに分けて参照することができ、検索性も悪くはない。
    • ただ、本編のプレイ中には参照できないという欠点がある。ゲーム内のマニュアルでは動画による指示もあるのに、その場で実際の操作を試すことができないという点も少々残念。
      前述のように、特殊能力などの深い部分についての説明がないといった難点もある。

総評

原作の再現性はそこそこ高く、『ドラベース』のファンなら楽しめなくはない完成度にはまとまっている。
対戦相手のチームなど細かいネタも意外に拾われていて、ゲームテンポの良さも加わり、気軽な繰り返しプレイに向いた一本と言っていいだろう。

その一方で「ドラベースを知らない人」に対してはひたすらに不親切なつくりであり、まさに典型的なキャラゲーと解釈されかねない存在ともなっている。
そもそも『ドラベース』のゲームとしても残念な要素が多々ある上、「アイテム入り野球ゲーム」と見ても無視できない問題点を抱えている。
特にシナリオ要素が全く存在しない件に関しては、本作のゲーム性やコンセプトからして、あまりに残念な欠落となってしまっている。
更にはシステム、グラフィック、BGMなどの目立つ部分に粗削りな面が集中しており、クソゲーと言われてしまっても仕方のないところではある。

『ドラベース』のファンアイテムとしては悪くない面も多数あるだけに、それを抱擁するゲームシステムに粗が多すぎたことがただただ悔やまれる。


売上

開発中の事故で仕様変更が繰り返されたとしか思えない凸凹な出来ではあるが、人気漫画の初ゲーム化ということもあり、クリスマス商戦なども手伝って発売後には品切れが続発した
最終的には20万本程度を売り上げているが、本作の評価がたたってか続編では売り上げが半減している。

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最終更新:2022年10月20日 21:29

*1 作者は、むぎわらしんたろう。藤子・F・不二雄の最後のチーフアシスタントであり、彼の逝去後にドラえもん作品を引き継いでいる。

*2 原作では必殺打法がセカンドライナーやピッチャーフライなどの凡打になることもあった。