サイベリア

【さいべりあ】

ジャンル シューティング

対応機種 3DO
セガサターン
プレイステーション
発売元 インタープレイ
開発元 Xatrix Entertainment
発売日 【3DO】1996年1月26日
【SS/PS】1996年2月16日
定価 【3DO】7,480円
【SS】6,500円
【PS】5,800円 (全て税抜)
判定 クソゲー
ポイント 説明書≒攻略本
ストーリーなんてなかった
1994年レベルのグラフィック
方向転換の度にフリーズ
謎の無音
洋ゲーを体現する鬼畜難易度


概要

元は1994年にMS-DOS(IBM-PC用)向けに発売されていた同名ゲームの移植。
3Dレンダリングによる美麗なグラフィックや、日本版は豪華な吹き替え声優陣を売りにした洋ゲー。
内容としては『バイオハザード』のような3D探索をメインに、要所要所でパズルやシューティングなどのモードに移行する。
敵弾に突っ込んでパワーアップという斬新な内容で多くのシューターを虜にした縦スクロールSTG『サイ"ヴァ"リア』とは無関係。
もちろん、ファミリーレストランチェーン店の「サイ"ゼ"リヤ」とも関連性は全くない。


問題点

デザイン・グラフィックについて

  • パッケージ裏の宣伝文句でも「3Dレンダリングで美しく表現されたキャラクターを操作。戦闘中の背景から宇宙船内のメカにいたるまで、画面展開もリアルなレンダリング画像を採用しています」とグラフィックは売りのように扱われているが、正直『美麗』とは言えない稚拙な出来である。
    • 1996年には3Dを主体としたゲームでは先ほど比較対象に挙げた『バイオハザード』や、『鉄拳2』『トバルNo.1』が発売されている。それらと比べると『サイベリア』のCGは明らかにレベルが低い。
    • キャラクターは皆妙にてかっており、造形のレベルも高いとは言えない。例えば主人公のザークは全身にパイロットスーツのような薄手の身体にフィットしたスーツを着込んでいるのだが、光の加減でかなりの頻度で全裸に見える。サングラスもまるで顔面に張り付いているかのよう。
      • このサングラスは実は「ブレード」と呼ばれる各種センサーを内蔵したいわゆるバイザーのようなもので、「ブレードは顔に貼り付けるように装着するもので、サングラスとは違う」と考えれば、一応擁護できないことはない。
      • モーションは一見普通にぬるぬると動くように見えるが、方向転換のモーションが無い。別の方向をむこうとすると一瞬フリーズし、直後にその方向を向いた状態で現れる。ヤシガニ屠る」じゃないんだから。
    • だが、これよりもっとひどいのがゲーム前半に登場する女性・ジイア。
      + こちらをご覧いただきたい
      • おわかりいただけただろうか。ブサイクを通り越して人間の顔かどうかを疑うレベルである。
      • ゲームに登場する女性の顔はどれもジイアと似たり寄ったりの超絶的ブサイクであり、萌えもクソもあったものではない。
      • ちなみに、選択肢によってはコイツと主人公がキスをすることになる。プレイヤーへの嫌がらせか?
  • キャラデザそのものもどこかおかしく、どう見ても假屋崎○吾なザークの上司デブリンなど、全力でプレイヤーの腹筋を殺しにくる。
  • この時代錯誤なグラフィックには理由があり、前述にもあるが元は1994年にMS-DOS用のゲームとして作られたということに起因する。本作をCS機に移植する際、おそらく原作のDOS版から何も変更を加えずに発売したのだろう*1
    • つまり、グラフィックのレベルが2年前の物なので、劣っているのも当たり前。発売前の空白の2年で、改善はいくらでもできたであろうに…。
  • ただし、ステージや背景のグラフィックは割と悪くない。

ゲーム内容について

  • ゲームは探索と戦闘を組み合わせたいわゆる『バイオ』や『エネミー・ゼロ』のようなもの。だが、内容はそれらとは雲泥の差である。
  • まず探索についてだが、比較的操作は『バイオハザード』に近いものの、進める場所はある程度限定されており、実際は「ステージに引いてある見えないレールの上を自由に動ける」と言ったほうが正しい。
    • この中で気になる場所を調べたりして進んでいくのだが、すでに探索の段階でプレイヤーを殺す罠が満載。
      + 以下、一例
    • 序盤、基地に降り立ったザークがある場所を歩くと足元のオイルで滑って転ぶのだが、これを2回続けると頭を打って死亡。
    • こちらも序盤、ある場所を調べると謎の液体がザークの指を溶かして唐突にゲームオーバー。
    • 基地に進むと先ほど紹介したジイアがこちらに銃を向け、「ゆっくりこっちを向いて、武器のカートリッジを頂戴」とプレイヤーに武装解除を要求するのだが、左を入力しないと即座に死ぬ。遅くても(何もしなくても)撃たれて死ぬ。
    • 基地が襲撃され、ジイアに案内されて進む場所で少しでももたつくと扉が閉まってゲームオーバー。本作はこんなちょっとの時間切れで死ぬトラップも非常に多い。
    • TF-22という戦闘機を操作する場面があるのだが、乗り込む前に機体に仕掛けられた爆弾を発見しないと基地が木っ端微塵になって死ぬ。
    • 爆弾にはなぜか起爆スイッチがあって押すと即座に爆発する。解除するにはまず振動センサーのスイッチを押さないと、どこを押しても爆発する
    • 寒い場所にザークを放置しておくと勝手に凍えて死ぬ。
    • 敵の基地のある一室に踏み込むと、踏み込んだ途端に敵の監視員が謎のシステムを作動させザークは苦しみもがいて死ぬ。
    • 通気口を通って基地に侵入する場面において、移動のタイミングを誤ると換気扇の刃に切り裂かれて死ぬ。どう見ても人体を切り裂くような換気扇には見えないのに…。
    • ほか、中盤からかなりの頻度で敵が死角から突如攻撃を仕掛けてきて後述するシューティングモードに突入する。もちろん、反応が遅ければ容赦なく撃ち殺される。
    • 初見殺し自体は他のゲームにも大いにある要素で問題はないのだが、サイベリアにおいて問題なのは「常に初見殺しのような状態が続く」と言えるほどの初見殺しの量、そしてプレイヤー側に初見殺しを察知するためのヒントがほとんど与えられないという二重苦である。
    • それを見越してか、ゲーム内のチェックポイントは結構多い。それでバランスを取ったつもりか。
    • また、探索ステージは全くBGMが無いことも多い。
  • 道中で何度か遭遇するシューティングは、物陰に隠れながら敵の兵士と銃撃戦を行うというもの。これに前触れがあるならまだいいのだが、これが探索中に突然起こり、多くの場合反応できずに撃ち殺されてしまう。
    • 始まったら始まったで敵を撃つには「物陰から出る>相手に銃を向ける>発砲」という手順を踏まねばならず、相手を攻撃するのにいくらかもたついてしまう。それに対して相手は超反応でこちらを的確に銃撃し、ゲーム後半では数で押してくる。
    • また、先述したTF-22や機銃砲座で主観視点のシューティングを行う場面があるのだが、これが超絶的に難しい。
    • 特に序盤の機銃砲座シューティングは鬼の難易度。例えるなら難易度Lunaticのキジュー、あるいはインタープレイ版サルベーション
      • 銃座の可動範囲が狭い上に常時処理落ちしたかのようなカクカク具合で敵を狙いづらい。その上敵は物量で押してくるので、たった1人のプレイヤーはほとんどの場合為す術がない。
      • 何故かオレンジ配色のレーダーがあるが、ほとんど役立たず。ただ機雷が海中から接近しており、これは画面を下にしないと見えないのでレーダーで確認する必要があるのだが、よりによって機雷は灰色の点で表示されているので非常に見づらい。初見では知らぬ間にダメージを食らってそのまま体力を削られることになる。機雷が飛んでくることは一応ジイアが教えてくれているのだが、不親切さは否めない。
      • 銃座シューティングに失敗すると基地が木っ端微塵に吹っ飛ぶ。銃座シューティングを終わらせないと吹き飛ぶ基地を何回どころか何十回も見続けることになる。
      • しかも困ったことに、この銃座シューティングは序盤で起こるイベントである。クリアできなければサイベリアウエポンの真実にたどり着くどころか、次のステージにさえ進めない。
    • 戦闘機でのシューティングも、敵の攻撃は弾を撃ち落とすか攻撃する前に撃破するしかない。回避という選択肢はないのだ。
      • この戦闘機ステージ自体もかなり冗長で、さらに初見では絶対に反応できないような位置に敵が配置されていたりする。
    • 一応パズルとシューティングはそれぞれ三段階で難易度を設定でき、初級設定では謎解きが簡単になったりステージが省略されたりするのだが、どちらかは必ず中級以上にしなければいけない。理解不能。
      • 両方を初級にしようとすると「楽しようなんてダメよ」と諭される。この後の難易度の高さを考えると煽ってるようにしか聞こえない。
  • パズル・謎解きは基本的にノーヒントだが、その内容は説明書を読んでいればすぐにでも解けるほど簡単なものや、クリアを困難にさせるほど難しい物も存在する。
    • 最初のTF-22の爆弾の解除は非常に難しく、しかもこれまた序盤に登場する。クリアさせる気はあるのか。
    • 中には「論理回路」を組み込んだ仕掛けが存在し、正しいボタンを押してドアまで電気を通電させなければならない。「AND回路」・「OR回路」・「NOT回路」の特質を知らないと説くのは難しく、適当に操作すると落とし穴のトラップ起動装置に電気が通ってゲームオーバーしてしまう。専門知識なしに解くのは厳しめ。
      • 幸い分岐ルートになっているのでこちらを無視することも出来るが、その場合はシビアなタイミングゲーに挑まなければならない。

ストーリー・その他

  • はっきり言ってストーリーは超展開であり、ないようなもの。
    • 一応の筋書きとして、主人公のスーパーハッカー・ザークは国家に対する危険分子として捕らえられていたものの、保釈と引き換えに謎の建造物「サイベリア」への潜入、そしてそこで研究されているという超兵器「サイベリア・ウエポン」の正体をつかむというミッションを受け、サイベリアの謎へと迫る…というストーリーが存在する。
      • 取扱説明書ではやけに凝ったキャラクター解説や奥の深そうな設定が見え隠れし、プレイヤーの期待を膨らませてくれるのだが…。
    • ところがどっこい、劇中でそのストーリーに付いてほとんど語られることはなく、ゲームは淡々と進んでいく。ゲーム中でも物語の理解を助けるようなヒントなどがなく、プレイヤーは状況を理解するどころか、二転三転する状況と難易度に振り回されながら淡々と進んでいくことを余儀なくされる。
      • 序盤の基地からして話がカオスで、ジイアと仲良くなると恋人のサントスがブチ切れ、ザークを拷問にかけて殺しにかかってくる。それを見かねたジイアがサントスを止めにかかるのだが、
    • 本作は基地→戦闘機→敵の本拠地の順に進むのだが、中盤を担う戦闘機での移動シーンは7つものシューティングステージを挟む割には、その間は一切ムービーシーンが入らない。ゲームボリュームの水増しと言われても仕方のないレベル。
      • そして最後の最後には、理解不能の超展開が待ち受ける。
+ 最後の展開について・ネタバレ注意
  • サイベリアの最深部にたどり着くと、ザークはウエポンとおぼしき銀色の謎の生命体と接触する。どうやら、その生命体こそがウエポンらしいのだが…。
    • 直後、デブリンから通信が入り、唐突に「ウエポンはお前だったんだよ、ザーク」と言われ、これまで触れられもしなかったザークの頭に埋め込まれた核爆弾の存在が明らかになる。
    • しかし、唐突にウエポンはザークに「自分と融合すればザークは死を免れる」と提言。ザークはウエポンと思しき生命体と融合し、銀色のひしゃげた菱形のような形態となって宇宙に飛び出していく。
    • ウエポンは瞬時にデブリンとの通話を逆探知し、デブリンの居場所が宇宙にあることを突き止め、これまた唐突に「抹殺シマス」とデブリンの抹殺に赴く。
    • そして、デブリンの宇宙要塞を攻撃する最終面が始まる。最終面はこれまでなんどかあった3Dシューティング形式であり、正直最初の銃座シューティングよりぜんぜん簡単。その難易度設定はおかしい。
      • そしてデブリンを抹殺するとザーク(ウエポン)は地球に墜落し、エンディングに突入。エンディング内でザークが何者かに回収された、という内容の通信を聞くことができる…つまりは、思いっきり『2』を出すという引きが入っているのだ。
      • 実際、海外では1995年に続編である『Cyberia 2:Resurrection』がMS-DOS/Win用のソフトとして発売された。
      • サイベリアを占拠した組織の目的とは?結局ウエポンとはなんだったのか?デブリンの思惑とは?重要なことに一切触れぬままにゲームは終了する。脳内補完しようにも、与えられた情報が非常に少ないため困難を極める。

評価点

説明書が実質の攻略本

  • 極悪な難易度を相殺するためか、説明書に「攻略の手引き」が記載されており、そこに攻略本レベルのヒントが載っている。
    • そのため、説明書を読みつつプレイすれば死亡回数はかなり減らせる。しかもこの攻略の手引にはかなり後半の謎解きに関するヒントが載っており、極めつけは最終ステージ「サイベリア基地」の見取り図が載っている。なんとも歪な難易度調整の仕方ではあるが、これで極悪難易度を相殺していると考えられなくはない。 あれ、こんなゲームが前にもあったような…頭が痛い…。
    • また、先程も述べたようにチェックポイントがわりと頻繁にでるので、死にやすいが、死ぬ直前の状況への復帰も簡単にできる。

フルボイス

  • 当時のゲームとしては珍しくキャラクターは全編フルボイスである。それどころかゲーム開始前のネームエントリー、果ては難易度調整画面でも難易度を選択するたびに「初級」「中級」と丁寧にしゃべると言う徹底ぶりである。
    • また、フルボイスであり、台詞の文字おこしが表示されず流れるように話が進む点は評価されることが多い。
      • だが、このネームエントリーの「声の人」は実にウザい。何故かというと、文字を入力するたびに入力した文字をしゃべる上に、文字を削除するときにもしゃべるため、耳障りなのである。文字を連続で消すときは音声がダブり「さく「さく「削除」」とかさなって聞こえるためますますウザい。

グラフィック

  • 1994年初頭のCGのレベルを基準に考えれば」まぁ、よくできた方と言える。

総評

一昔前の日本人が考える洋ゲー像(理解不能なキャラデザやCGの多用、極悪難易度など)を体現したかのような存在であり、その難易度は不安定で済まされるような生易しいものではない。

多種多様な死に様からバカゲーと捉えることもできるが、そのバカゲーポイントに付いても極悪すぎる難易度がほぼ完全に相殺してしまっている。「ゲーマーのどの層をターゲットに考えて移植したのか? それもPC版発売の2年後に?」という疑問ばかりが浮かぶ、正しく誰得な洋ゲーである。


余談

  • 実は日本市場ではPS/SS版の前年にFM-TOWNS版がリリースされており、PS/SS版発売の約1ヶ月前には3DO版が発売されている。なお、3DO版はEAビクターが発売元になっている。
  • 本作のデベロッパーであるXatrix Entertainmentはこの作品が処女作であり、本作と続編の後にBuildエンジン四天王の1作である『Redneck Rampage』やギャングを題材とした暴力/残虐表現のドギツさでも知られる『Kingpin: Life Of Crime』といったFPSを手掛けている*2
    • ちなみにこの2作については『サイベリア』とは全く違い、PC用のFPSの中でもまともな評価を得ている。
  • なお、現在は原作であるPC版がSteam/GOG.comでダウンロード配信されている。当然ながらローカライズはされていないので購入/プレイしたい場合は注意が必要である。

その後の展開

  • 1995年に続編『Cyberia 2: Resurrection』が発売された。内容は本作と比べればマシな出来である。詳細はこの動画を参照。
    • 本作とは異なり、発売されたのはMS-DOS/Win版のみだがこちらも現在はSteam/GOG.comでダウンロード配信されている。

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最終更新:2024年02月17日 00:58
添付ファイル

*1 CS機版の1年前に発売されたFM-TOWNS版は「海外パソコンゲームを日本のパソコン向けに移植した」という位置づけであり、当時のPCゲーム事情等の情勢を考えればそこまでの違和感はない。

*2 その後、Gray Matter Interactiveに社名を変更後も『Return to Castle Wolfenstein』を、Activision傘下になってからは『Call of Duty: United Offensive』を手掛けたが、2005年に同じActivision傘下のTreyarchに吸収合併された。