武田信玄

【たけだしんげん】

ジャンル シミュレーション
対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 1.25MbitROMカートリッジ
発売元 ホット・ビィ
発売日 1988年3月28日
定価 5,800円
判定 クソゲー
ポイント 便乗クソゲー
理不尽なゲーム初期のバランス
パスワードで全て解決


概要

同名の大河ドラマに便乗したものと思われるシミュレーションゲーム。

ゲーム内容

  • 信長の野望』のようなシステムで内政パートで富国強兵を行いながら甲斐周辺の13国を制圧する第一部、第二部の上杉謙信との戦い、第三部の織田信長との連戦を経ての全国統一までの全三部構成。
    • 第二部、三部は戦争のみとなり、内政パートは無い。
    • 内政パートではコマンドを一回実行する度に一月が経過するので、「信長の野望 全国版」に近い。
      • また、第一部では国をすべて失うか、寿命(1601年)*1を迎える事で、第二部、第三部では連戦で負け越してしまう事でゲームオーバーとなる。

特徴

  • レベル制
    • 各大名にはレベルが設定され、戦争での兵の強さに影響する。最大で20。
      北条氏康や、今川義元といった大大名は最初から高レベルかつ軍備が整っているため、非常に手強い。
      このゲームに訓練コマンドはなく、戦争を繰り返す事によって経験値を得て、レベルアップしていく。
      第二部、第三部でも影響がある為、第一部でレベルをあげておく事は非常に重要。
    • なお、プレイヤーの担当する信玄のレベルはなんと驚愕の0。当然、周辺国の中でもぶっちぎりの最下位なので、序盤は周辺の豪族にすら歯がたたないという状況からスタートする事になる。
      • タイトルで放置する事で見られるデモでは甲斐は豊かではないが、治める大名は強かった…や、武田軍の怒涛の侵略が始まったといった勇ましいテロップが流れるが、あんまりな数値である。
  • パスワード制
    • 歴史シミュレーションゲームというジャンルにおいて珍しくパスワードによる中断を行う。
      しかもパスワードは15文字という異例の短さなのだが、'保存されるパラメーターは信玄のいる国の兵力とレベル、占領した領地の数のみ。
      それ以外のパラメーターは
      お金や領地の内政値といった超重要パラメーターですら全て初期値に戻ってしまう''のである*2
      つまり、戦争や内政でお金を2500まで増やしたのに、パスワードをとって再開すると金が50になるという事が平気で起こる。
    • また、あと一歩で倒せそうな国や、他国に滅ぼされた国もゾンビのごとく復活するので中断のタイミングには注意する必要がある
      パスワード制ゲームではパスワードの字数を減らすなどの理由でパラメータの再現が不完全になるという事はよくある話だが*3、本作の場合はシミュレーションとしてあきらかに行き過ぎであり、もはや再現を放棄したレベルになっている
      なお、中断する際に、何故か信玄は「仕方のないやつだ。パスワードをおしえてやろう。悪用するでないぞ!」と釘を差してくる。
  • パーセント制
    • コマンドを実行する際はそれをどれだけの割合で行うか5パーセント刻みで決める事が出来る。
      割合を増やせばより多くの資金を使い、大きな効果が得られるが、ケチると金を消費した上に何も起こらないという最悪の事態を招いてしまう。
      最初は物資が少ないので大盤振る舞いが出来ず、試行錯誤をしている間に攻められてゲームオーバーになりやすい。
      なお、徴兵の際もパーセントで決めるので民を100%徴兵する事が可能。冗談ではなく、やり尽くすと100%にしても兵士が一人も増えなくなり、領民を徴兵し尽くした事になる。
      • 実際には徴兵で裕福度が下がり過ぎると徴兵が出来なくなるものであり、裕福度を回復するには多くの金を農民援助しなければならない。でもそんな事をするよりは…(後述)
  • 戦争
    • 他国へ出兵するか攻められると戦争になる。「野戦」と「攻城戦」の2種類があり、野戦を勝ち抜いた後に侵略を続けると攻城戦となり、最終的に攻城戦に勝つ事で領土を奪うことが出来る。
      このため、野戦では勝ったが攻城戦は行わずに引き上げるといった事も可能。
      • 戦闘では「足軽」「弓」「騎馬」「鉄砲」「槍隊」それぞれの兵科に一日に1度、命令することが出来る(騎馬隊のみ、2回命令可能)
      • 「いどう」:部隊を動かす
      • 「たたかう」:攻撃をしかける。「弓」と「鉄砲」は遠距離の射撃が可能。(鉄砲の方が1マス多く飛ぶ)
      • 「きあい」:部隊がその場で気合を入れる。気力や士気というステータスはないので単なる待機
      • 「にげる」:選ぶと全軍撤退。当然、その戦は敗北する。
    • 戦争に勝つと大量の金と米が得られる上に、レベルを上げる為の経験値も得られる為に攻略に欠かせないものになる。ケチな内政が必要なくなるぐらい。攻城戦へ持ち込まずに退散し、何度も野戦に持ち込むのが基本戦術となる。
    • なお、第一部では20ターンを経過すると引き分けになる。(第二部以降は30ターン)その時にどれだけやられていようが、全滅していなければ引き分けになる。
  • 七連戦
    • 無事に甲斐周辺の13国を制圧し終えると今度は上杉謙信との川中島の戦い、織田信長との関ヶ原の戦いが待っている。
      • これらは七連戦で表現されており、連戦を勝ち越す事でクリアとなる*4
    • 先述の通り、連戦に入ると内政要素はなくなり、決められた兵力で構成された7つの部隊を指揮して戦う事になる。
      • 開始時に4部隊までは増援を送って各兵科の兵力を増加させることが可能、増援の数は第一部の最終戦で生き延びた部隊の4分の1となっている。
    • 増援を設定し終えると、どの部隊を相手の何番目の部隊にぶつけるかを決める。相手の部隊も同様に兵力は固定だが戦うまでは表示されない。その為、初見ではなかなか難しい。
      • 敵の戦力とは互角ではなく、特に本陣がいると思わしき部隊と当たった場合は絶望的な戦力差により勝つ事そのものがほぼ不可能な事もある(特に織田信長の第二戦目は全部隊が99という鬼畜な数になっている。)
        クリア条件はあくまで勝ち越しなので負けなければ問題はない。

評価点

  • 甲斐の国の貧弱さや、信玄堤といった、武田信玄の雰囲気をしっかりシミュレートしようとしているところはある。
    レベル制やコマンド実行時のパーセンテージの割り振りといった、面白さの土台はあり、次回作への布石にはなっている。
  • 甲斐の国の城(躑躅ヶ崎館)が攻めやすく、北信濃の城(砥石城)や相模の城(小田原城)が攻めにくいなど当時の城塞の評価を一応マップに反映している。また、野戦のマップも地方によって河原だったり沼地だったりとある程度だが特色を出すようにはしている。
  • エンディング後のエピローグは史実の江戸幕府の描写に割と忠実。また、スタッフロールは遊びがあって好みは分かれるだろうが見ものではある。
  • パスワード式のために現在でも問題なく実機でプレイ可能。使い物になるかどうかはともかくとして
  • ステージクリア式のシミュレーションという点も独特である。第二部、第三部は決められた兵力で如何に勝つかというウォーシミュレーションゲームの色が強い。

問題点

  • いくら山国とはいえ、本拠地の甲斐の国力が低過ぎて役に立たない。
    • 初期のパラメーターが低い上に物資も雀の涙ほどしか無い。内政を行うにも軍備を整えようにもあっという間に金を使い果たしてジリ貧になる。
      大名のレベルも前述のとおり0で、兵力も(騎馬:1 弓:1 鉄砲:0 槍:2 足軽:2)というあわや片手で数え切れる程の兵力で石高も30までしかあがらないという弱小国。武田騎馬隊なんかなかったんや…
      その上で、北条(レベル20)、今川(レベル18)といった最強の国が最初から周辺に配置されている。
      • もちろん甲相駿三国同盟なんてものはなく、今川も北条も容赦なく攻めてくるので気をつけなければいけない。
    • また、敵の強さは実は領有する土地によって決められている。北条や今川が強いのは領国の相模や駿河が強いからである。
      • 当然大名レベルが高いのも一因だが、相模や駿河の国力が甲斐の数倍なのが最大の原因。
      • 「敵は弱い国を占領したので、弱くなった」と言う意味不明な現象が発生する。
  • ランダム性がキツい
    • 物資の取引などは商人が国に来ている時しか行えないが、来る確率はランダム*5
      取引も一度だけ、売買を行うとその時点で終了となる為、軍備を整えづらい。
      しかも商売のレートが一定ではなく、買いたいときに高く売りつけられ、売りたいときに安く買い叩かれるというのが日常茶飯事。何故か鉄砲よりも弓が高くなるような滅茶苦茶なレートになる事も。
    • ランダムで敵が攻めてくるので開始直後に攻められると数ターンでゲームオーバーとなる。
      一応、野戦で打って出なければ何もせずに引き上げてくれる事もあるが、下手に迎撃したり、本当に攻め込まれるとそのままゲームオーバーへ直行することになる。
      • 属領が攻められそうな場合、その前月に「狼煙」が上がるので、事前に対処をする事が出来るが信玄のいる本国が攻められるときは一切狼煙があがらない。優先順位がおかしい。
  • パスワードでリセットされる数値。
    • 貧弱な国力でもやりくりして…金と米を貯めても、石高をあげても、信玄堤を作っても、これらはパスワードで全部初期値に戻るため、内政はほとんど意味が無い。
      むしろ、レベル上げや、戦争による報酬が主な収入源となる為、国民皆兵(徴兵率100%)、隣国を侵略しまくるプレイがクリアに近い。
      また、徴兵する事で「石高」「服従度」「裕福度」が下がるが、パスワードを使用すると兵力(記録される)は上がっているのに、いずれも初期値にリセットされてしまうので徴兵後にパスワードを取ってやり直すことでタダで徴兵できるというテクニックが裏技として紹介されていた。
      即ち、徴兵や戦争で軍事力が整ったが国力が荒廃したところをパスワードで国力は元通りに…信玄「悪用するでないぞ!」
      • 製作者側もこの点に気付いているのか、先述の信玄の台詞だったり、プレイヤー初期国の甲斐の国のパラメーターが絶望的に低い為、パスワードをとったところでお金のかからない足軽しか整わず、他の軍備を整える事は難しい。
        しかしどこか適当な国を取った後、属領から本国へ兵を引き入れてパスワードを取る事で簡単に悪用ができてしまうため、プレイヤーのモラルが問われるものとなっている。
  • 動いているのか謎なパラメーター
    • 米や服従度というパラメーターがあるが、米は俸禄で支払われている様子もなければ、戦争で消費している様子も見られない為、換金用のパラメーターになっている。
      • しかし、一度の売買で99までしか売れないので後半腐るほど米が余るハメになってしまう。したがって米の収穫量を上げる「石高」はほぼ死にパラメーターと化している。
    • 服従度は民の忠誠を示すと思われるが、善政を敷いて最大の100にした状態でも一揆が発生する
  • シミュレーションとしてのバランスの悪さ
    • 兵を増やすには「裕福度」が必要となるが、「徴兵」を行うと簡単に下がる割には上げるのが難しい。…というのも「裕福度」を上げるには実に領内のお金を60%以上「農民援助」に使わなければならない。
      • おかげで支出が馬鹿にならない事になる。つまり、お金を10000以上もっていようが55%以下の施しならば1たりとも増えず、逆にお金が700しかない状態でもほぼすべてを援助に使うとわずかながらに上昇する。どういうこった?
      • そもそも所持金の6割以上を一度に施すという行動自体があまり行われないものである為、「裕福度」の回復は攻略に必須でありながら気づかれない事が多い。
    • 「鉄砲」を自作するコマンドがあるがお金をすべてつぎ込んでも2丁しかできない罠コマンドと化している。当然商人から買った方がはるかに揃えやすく、何のために存在するかわからないものになっている。

賛否両論点

  • 戦争画面における敵の行動ルーチン
    • 必要以上にこちらの飛び道具を警戒しているのか、圧倒的な兵力差があっても弓隊や鉄砲隊の射程から逃げようとすることが多い。
    • 実は待機すると、攻めにかかってきておきながら直前でフラフラするので時間を稼ぎやすい。
      • つまり、最序盤で北条に城まで攻められてゲームオーバー確定のような状態に陥っても、城の中で気合を入れまくるだけで時間切れで帰ってしまう事も起こりうる。
      • 思考ルーチンの拙さからくるものだが、「待ち」の重要性も加わるので一概に欠点とは言えない。動かざること山の如し。

総評

完成度に問題があり、SLGの体裁を整えているように見えるが、初期値が厳しすぎる為、開始時はとにかく攻めこまれてゲームオーバーになりやすく、肝心の内政も、効果を実感し難いというよりも、効果を感じる前に物資が尽きるか、攻め殺されるかのどちらかといった状態に陥りがちである。更には全くパラメーターが再現されないコンティニューのおかげで内政コマンドの有用性が失われているばかりか攻略に有効なコマンドがパスワードを取る事という、SRPGとしてはあるまじき有様である。
パスワードを使わない場合でも、米を全て売り払う。敵がこちらの兵力にあわせて迎撃してくるのを見通して、弓兵(鉄砲兵)1で敵を攻めて射撃で勝って大量の物資を手に入れる…といったシステムの穴をつかなければ攻略は非常に難しい

史実の上では、信玄が継いだ直後の武田家は信濃の諸豪族とようやく肩を並べられるかどうかといった程度の勢力で、甲斐国内にもいつでも主家にとって代われるような家臣が何人もいた。さらに大した産業はないうえ内乱直後でいつ滅ぼされてもおかしくないというこのゲームさながらのひどい状態だった。その点を鑑みると、史実を忠実にゲーム化しようとしたものの結果的にそのことが災いして無茶なバランスに繋がってしまったのではないかと思える節がある。せめてもう少し作りこんでうまくンバランスを整えられさえすれば、面白いゲームに化けた可能性はある。この点、同じ発売元の星をみるひとと共通する残念な点である。



余談

  • 便乗ゲームのわりには続編まで出た。
    • もっとも、システム的には本作の様々な反省点が生かされており、作り込みもきちんとしている為にだいぶ遊びやすくなっている。