機動戦士Ζガンダム ホットスクランブル

【きどうせんしぜーたがんだむ ほっとすくらんぶる】

ジャンル シューティング
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 バンダイ
開発元 ゲームスタジオ
発売日 1986年8月28日
価格 5,300円
備考 GBA『ファミコンミニシリーズ』に登場(非売品)
判定 なし
ポイント スピード感があるが爽快感に乏しい3Dパート
ありたきりで単調気味な2Dパート
敵モビルスーツの種類は豊富
名作になれる可能性はあった
ガンダムゲームの歴史の記念すべき第1号(バンナム公式)
ガンダムゲームリンク


概要


内容

  • 本作は性質の異なった3つの場面で構成されており、それらを順番にクリアすることで1ステージのクリアとなる。
  • 全16面。エンディングはなく、全面クリアすると出現敵や要塞面の構成が変化する2周目が始まる。
    • 2周目から先(17面以降)でゲームオーバーになると、テレビ版EDを模したスタッフロールが流れる。
  • 本作に登場するモビルスーツは全20種類。
    • タイトルデモ画面では各機体の型番、全高、ジェネレータ出力などの公式スペックが表示される。
    • 戦艦もアレキサンドリア、ドゴス・ギアなど全8種類登場する。
  • BGMは3曲。いずれもアニメ主題歌のアレンジである。
    • タイトル画面は前期OPの『Ζ・刻を越えて』。ゲーム本編は後期OPの『水の星へ愛をこめて』。ゲームオーバー画面はEDの『星空のBelieve』。
  • ポーズ時の効果音はアニメのアイキャッチ音。

ステージ解説

地上・宇宙面

  • 今で言うFPSに近い画面の3Dシューティング。
    • 十字キーで自機兼照準を動かし、Bボタンで射撃。Aボタンはターボモード(ただの早送り)発動。
      • 地上面は左右に360°スクロールするようになっている。上下のスクロールは限度あり。
      • スタートボタンでポーズ中にセレクトボタンを押した分だけコマ送りのようにゲームを進めることができる*1
    • 出現する敵はプレイヤーの照準を補助する目印のような赤い円に囲まれている。
    • 敵の攻撃を受け続けて、画面左下表示の自機のエネルギーが全てなくなるとゲームオーバー。
    • 「一定時間経過」「特定の敵を撃破」などのクリア条件を満たすと、高速で大気圏を離脱して宇宙面に進む。
  • 宇宙面は背景が宇宙空間になり、左右だけでなく上下斜めにも360°スクロールするようになる。
    • 地上面と同じく「一定時間経過」「特定の敵を撃破」などのクリア条件を満たすと、コロニーや小惑星への自動的突入または敵戦艦との交戦が発生。後者は一定量のダメージを与えることで戦艦内への突入となり、次の要塞面へ進む。
      • この時、ちらりとウェイブライダーの姿が映る。

要塞面

  • 迷路探索系の2Dアクションシューティング。エネルギーは地上・宇宙面から持ち越しでステージクリアまで全快しない。
    • 無限沸きする敵を撃破しながら進み、ボスである最深部のコアを破壊すればステージクリア。
    • Bボタンで射撃。十字キーを組み合わせて正面・上・下・向いている方向の斜め上・斜め下の5方向に撃ち分けが可能。
      移動しながらの射撃もできる。画面内に出せる数は1発のみだが弾速自体は速い。
    • Aボタンでジャンプ。ジャンプボタンを押し続けると、ウェイブライダーに変形して上下左右斜めの8方向に飛んで移動できるようになる。
      再びAボタンを押すか、壁に垂直方向からぶつかると変形が解除される。
    • 要塞内の特定の場所にはアイテムが置かれている。
      • 「シークレット・パック」コンテナのような見た目で取得すると自機のエネルギーを回復する。回復量は物によって異なる。
      • 「パワー・シールド」Zガンダムのシールドの見た目で取得すると敵の攻撃を数回無効化する。
      • 「Hiパワー・ライフル」Zガンダムのビームライフルの見た目で取得すると射撃が敵を貫通し、コアに与えるダメージが倍になり砲台トラップも破壊できるようになる。
      • パワー・シールドとHiパワー・ライフルはステージクリア後も持ち越しが可能。
    • 要塞内部でも、ハイザックやガザCなどの量産型モビルスーツが敵として登場する。どの敵も動き自体は同じだがステージが進むと撃ってくる弾が速くなる。
      • 最終ステージではキュベレイとファンネルが登場。キュベレイは無敵だがファンネルは攻撃によって撃ち落とせる。
    • ステージが進む度に一定間隔を往復する回転ノコギリのようなトラップや砲台、特定の地点を繋ぐワープ扉などのギミックが登場する。要塞自体も広大になっていく。
    • ボスであるコアは自分からは攻撃してこないが、こちらが攻撃を当てる度に高威力の撃ち返し弾を扇状に放ってくる。威力は高く、ステージが進むたびに弾の速度が上昇していく。
      • ステージによっては邪魔な地形が追加され、撃ち返し弾の回避が難しくなる。

問題点

地上・宇宙面の問題点

  • 敵の表示時間があまりにも短過ぎて状況把握がし辛い。
    • ゲーム開始直後、多数の謎の飛行物体が画面奥から現われ、1~2秒ほどで手前や上、横に消えて行く。
      • 実体はベースジャバー*2に乗った連邦軍カラーのハイザックなのだが、初見ではモビルスーツと判別できるか怪しい。
    • 敵の挙動が全体的に不自然なので、自機の照準近くに現れた敵以外は狙って撃つことは難しい。出てくる敵を片っ端から撃ち落とすといったことは不可能。
    • 自機の照準と移動による敵弾の回避が一緒くたになっているせいで敵を狙おうとすると被弾が重なりやすい。一応こちらの射撃で敵弾を相殺できるが敵弾自体が高速なので難しい。
    • ステージが進むと敵の攻撃頻度も高くなり、敵を狙いに行くこと自体が難しくなる。エネルギー残量も要塞面に持ちこされる以上、被弾を最小限に抑えるために画面の一方向に移動しながら射撃を垂れ流し、敵が偶然当たってくれるのを待つというプレイに自ずとたどり着いてしまう。
      こうなるともはや爽快感は皆無である。
  • 戦艦を除き、どんな敵も射撃一発で撃墜できる。原作でのボス的存在のサイコガンダム、ジ・Oやキュベレイですら一撃。
    • もっとも、攻撃自体は異様に激しいので撃墜は容易ではない。

要塞面の問題点

  • ステージの広さや砲台・ワープ扉などのギミック、コア戦の障害物の有無などステージごとに細部の変化はあるが、根本的な内容は変わらない。そのため要塞面自体が単調に感じやすい。
  • ウェイブライダーの変形がらみの操作にクセがあり、慣れないうちは壁に垂直にぶつかって変形解除してしまうことも多い。
    斜め移動なら変形解除しない、解除後の降下中でもAボタン押し続けで再変形できるといったコツを覚える必要がある。
  • ステージ解説の項での説明の通り、敵の量産型モビルスーツは全て見た目が同じだけで1撃で倒せる。
    • 一方で、最終面のキュベレイは完全無敵。ファンネルの撃墜のみ可能で、本体はどれだけライフルを撃っても倒せないと両極端。
  • ワープ扉に入った時にワープ先に敵が待ち構えていることがあり、接触ダメージを回避できないことがある。
  • シークレット・コンテナのエネルギー回復量が不安定。1メモリ分しか回復しないことも多く、エネルギーが回復せずにスコアが加算されるものも存在する。

ガンダムゲームとしての問題点

  • 敵側のMSが豊富な反面、味方(エゥーゴ)側のモビルスーツがZガンダム1機のみ。原作の前期主役機のガンダムMkIIやパッケージ絵に描かれている百式は登場しない。
  • キャラクターもスタッフロールに登場するファ・ユイリィとハロのみ。名前だけならオープニングデモでシャア(クワトロ)も登場しているが。
    • 発売年やゲームデザインを考えると仕方のない部分ではある。

その他の問題点

  • スコアがエクステンドなどのゲーム性に関わっておらず、完全に自己満足要素になっている。
    • 要塞面は時間制限なし&ザコ敵が無限沸きする以上、理論上は永久パターンが可能。

賛否両論点

  • 問題点の項での説明の通り、地上・宇宙面は多数の問題点を抱えているものの、プレイするうちにたどり着きやすい攻略法(1方向に移動しながら連射)を実行すれば突破自体は困難ではない。
  • 要塞面も上述の通り構成の単調さが目立つが、地形を把握しての敵やギミックの対処、撃ち返しや障害物の対処を含めたコア戦など、攻略性はある程度は存在する。
  • 総じて1周の難易度は高いものの、これと言うバグもなく、コンティニューも無制限なのでゲームとしては遊べなくはない。
  • メインBGMに使われている『水の星へ愛をこめて』は本来ゆったりとした曲調なのだが、アクションシューティングゲームに使われるせいか、ユーロビートを彷彿とさせるハイテンポな曲にアレンジされている。
    • また、同曲はゲーム内のほぼ全編にわたって使われるため、人によっては飽きやすい。

評価点

  • ゲームの展開がスピーディでテンポが良い。
    • 地上・宇宙面のクリアに必要なノルマ自体は緩く、1~2分程度で要塞面に移行できる。要塞面は自機のスピードが速め。操作性は上述の通り変形回りにクセがあるが、それを除けば良好な部類に入る。
  • 地上・宇宙ステージの質感
    • 3Dシューティング部分は立体感とスピード感に優れており、特に地面が表示される地上ステージのスピード感はファミコンにしては飛び抜けている。プレイヤーの記憶に強く残ったであろう。
    • ファミコンの3Dシューティングは『コズミックイプシロン』『アタックアニマル学園』『ファルシオン』『スカイデストロイヤー』などがあるが、それらと比較しても決して負けていない出来。
  • 敵側の登場モビルスーツの種類が豊富。
    • ティターンズ・アクシズ側の主要な機体はほぼ網羅しており、意外とモビルスーツのドット絵も綺麗で、変形もする。
    • 要塞ステージでは、ティターンズ系とアクシズ系で登場モビルスーツは区別されており、原作での敵対関係も一応再現されている。
      • 最終ステージでは実質的にファンネルが雑魚扱いとなっており、キュベレイと共に登場する点も原作通りではある。
    • ただし、敵弾が1種類である都合上、一部モビルスーツの特徴的な武装やサーベルなどによる近接攻撃は再現されていない。ゲームジャンルや時代を考えると仕方のない部分ではあるが。
  • 動く「MA形態のサイコガンダムMk-II」は本作が初お披露目である。
    • サイコガンダムMk-II自体はアニメ『Ζガンダム』の終盤に初登場した機体だが、この時点では変形機能を活用せずに退場しており、結局本編で変形を披露したのは続編の『機動戦士ガンダムΖΖ』で再登場してからとなる。
      このゲームが発売された時、その『ガンダムΖΖ』はまだダカール編の途中で、機体も再登場前であった。
  • 原作の前期・後期OP主題歌、EDテーマのアレンジ曲の使用やポーズ時の音はアニメのアイキャッチ音など、音周りに関しては原作再現へのこだわりを感じられる。

総評

ガンダムの世界観をファミコンで表現しようとした意欲作ではあるが、はっきり言えばキャラゲーの体裁を保っていない一作。
肩透かしの原作再現要素で原作の魅力の多くを伝えられたとは言い難い上、3Dパート→2Dパートの繰り返しが単調でシューティングとしての爽快感もあまりなく、存在意義が不明と見なすプレイヤーも多い。
ただ、キャラゲーとして見なければクソゲーと断じられるほど致命的に粗悪なゲームではない。
時期的にはシステムは整っている方なのも事実で、少なくとも当年代前後のまともに遊べない・クリアもままならない難易度といった作品が乱発された時代にあっては、本作はあくまで「凡庸な」ゲームである。


その後の展開

  • 現在は携帯電話アプリにも移植されている。
  • 遠藤氏がナムコを退社してまでバンダイに売り込んだことが縁なのかどうかは関係無いが、後にバンダイとナムコは「バンダイナムコゲームス」→「バンダイナムコエンターテインメント」としてゲーム事業で合併することになる。そしてそのバンナムでは「ガンダムゲーム30周年」として、本作がガンダムゲームの記念すべき第1号として紹介された
    • その30周年記念の一環として、アニメ『ガンダムビルドファイターズトライ アイランドウォーズ』で「スクランブルガンダム」、公式外伝漫画『ガンダムビルドファイターズトライ アメイジングレディ』で「ホットスクランブルガンダム」が登場している。どちらもΖガンダムをモデルにしたカスタムガンプラという設定。
      • その後、各種ガンダムゲームでもホットスクランブルガンダムが登場する事となった。

余談

本作の開発経緯

  • 今日ではキャラゲーと言うと、版権元がメディアミックスを行うために、短い納期で下請けに適当に作らせたゲームという物を想像するが、このゲームは実は開発者の遠藤氏側からの持ち込み企画である。
    • アニメに感銘を受けて「ガンダムのゲームを作りたい」と思った氏が、バンダイに直談判したのが事の始まり。氏はこのゲームを作るためにナムコを退社までしている(当時のナムコは版権物を作らない方針だった)。
  • こうして出来上がった試作版は、まだ2Dステージが存在せず、敵の動きにZ軸(奥行き)と行動パターン(奇襲・牽制など)を持たせた本格的な3Dシューティングゲームであった。広い宇宙空間の中、レーダーで敵を索敵し、遠距離から攻撃し合うという形式でガンダムの世界観を上手く表現していた。
    • ところが、実際に子供達を集めてテストプレイさせてみたところ、「敵がいない!」「撃っても敵に当たらない!」「ガンダムが出てこない!」などといった不満が噴出し、急遽、仕様変更することになった。
    • 結局、3Dステージは大幅な簡略化。さらに、「グーニーズみたいなのが面白い!」という意見を取り入れ、新しく2Dステージが付け加えられた。こうして、当初の構想とは全く異なる形で製品版が完成し発売された。
      • この2Dステージの開発に遠藤氏は係わっていない。なお、開発者は2Dステージも含めて全3名とのこと。
    • たらればの話だが、もし「子供ウケ」を狙った幼稚な仕様変更がなく、ファイナル版がそのまま製品として発売されていたら……現在は一体どのような評価をされていただろうか。ガンダムの原作者の富野由悠季監督は、本の一説を引用して「子供に向かって、あなたにとってこれはとても大事なことなんだよということを、大人が一生懸命話せば、その時に全部理解できなくても、絶対にその話を思い出してくれる」と語っている*3が……。
      • もしかしたら『スターラスター 』のような早すぎた名作として評価されていたかもしれない。
      • とはいえ、ファイナルバージョンの実物を見るに「敵がいない!」「撃っても敵に当たらない!」「ガンダムが出てこない!」といった指摘は決して的外れでは無い。説明書か攻略本でうまくフォローされればヒットしたかもしれないが。
  • 後日、試作版は「ファイナル版」と名を変えて抽選プレゼントされた。非売品で数量が少なかったことから、現在は数万円のプレミアが付いている。
  • これらの裏事情は長らく公にされることは無かったが、2001年4月、2ch「レトロゲーム板」内に立てられた『「Ζガンダム ホットスクランブル」被害者の会』スレッドにおいて遠藤氏本人が釈明したことで明らかになった。そのスレ内で、氏は製品版を「商品Ζ」、ファイナル版を「作品Ζ」と称し、マーケティングと作家性の間で葛藤するクリエイターの苦悩を語っている。
  • 遠藤氏のインタビューによると、嘘か真か、当時の子供の中には本作をして「このΖが青春だった」「ファミコンの中で5本の指に入る面白さ」と評する者もいたらしい。
  • 最終的な売り上げは40万本。ヒットには報われなかったが、営業的には黒字である。
  • 裏技でモニターコマンド(デバッグモード)を操作できる。
  • 要塞ステージの戦闘機型に変形する自機や、青いブロックで構成された迷路が驚くほど『テグザー』に瓜二つ。色々とおおらかな時代だった。
    • おまけに劣化移植として名を馳せたスクウェア製のFC版『テグザー』より出来が良い。このモードをもう少し作りこんで本編にしていれば……
+ タグ編集
  • タグ:
  • STG
  • バンダイ
  • ゲームスタジオ
  • ガンダム

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2022年07月17日 06:10

*1 説明書に記載。

*2 モビルスーツ輸送用の航空機。宇宙世紀ガンダムではSFS(サブフライトシステム)に分類されるメカ。

*3 『月刊ガンダムエース』2009年9月号より。