ASH -ARCHAIC SEALED HEAT-

【あるかいっくしーるどひーと】

ジャンル シミュレーションRPG

対応機種 ニンテンドーDS
メディア DSカード(大容量2ギガbit=256メガbyte)
発売元 任天堂
開発元 ミストウォーカー
ラクジン
発売日 2007年10月4日
定価 5,800円(税5%込)
プレイ人数 1人
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 なし
ポイント 操作性が今一つ、システムが活かしきれない
ゲームとしては及第点、DSの限界を超えたグラフィック
DS最大の暴落ゲー


概要

任天堂があの『ファイナルファンタジーシリーズ』の産みの親として知られる坂口博信氏と組み、満を持してニンテンドーDS向けに発売したシミュレーションRPG。発売前に公開された画像がとんでもない美麗さであり、期待度は極めて高かったのだが…。

タイトルの『アルカイックシールドヒート』とは、「古に封印された炎」という意味。これは本作の根幹に関わる重要な概念であり、同時に略称の『ASH』が本作のキーワード「灰」を意味する英単語になるというダブルミーニングである。

物語

ミリニア王国の王女アイシャは17歳となったその日に王位継承の儀式を受けていた。
王位の証であるミリニアの腕輪を受け取ったその時、突如、火炎蛇が現れ、ミリニア王国を燃やしつくした。
そしてその火炎蛇はアイシャにも襲いかかるのだった。アイシャを庇った仲間たちは火炎蛇の炎によって焼かれ、唯一生き残ったアイシャは絶望に襲われる。
しかし、その後仲間たちは灰の体で蘇り、その体の謎を解き明かすため冒険の旅に出るのであった…。(Wikipediaより)

特徴

本作はシミュレーションとRPGを組み合わせた独特のシステムを持つ。

  • 基本的にフィールド上での行動はシミュレーション的である。三人一組のチームで行動し、チームごとの行動順は完全に固定されている。
    • 各チームのフェイズ(順番)開始時にチームのメンバー数に応じて「AP」というポイントが与えられる。このポイントを消費して戦闘や移動を行っていくことになる。移動の際は距離に応じてAPを消費することになる。
      • APさえ残っていれば移動回数や戦闘回数に制限はない。ただし、移動を繰り返すと一歩の移動にかかるAPが増えていくので、できる限り1回の移動で長距離動くのが望ましい。
  • 戦闘は敵との距離が一定以下になれば仕掛けることができる。
    • 敵もまた、チームを組んでいるため基本的には3対3の戦いになる。
    • 戦闘の際重要になるのが相手との距離。個々のキャラクター同士で個別に算出されるので、チームメンバーの一人だけが突出して離れていると、そのキャラクターは相手の攻撃をほとんど受けない代わりにまともに攻撃することができなくなる。
      • 補助魔法であっても、味方との距離が離れると効果が落ちる。常に距離は意識する必要がある。
    • 敵のフェイズでは敵から攻撃を仕掛けてくることもある。
      • この際は敵が一通り攻撃を終えると戦闘終了となり、こちらから反撃することはできない。後述するが、この仕様がとある問題に繋がっている。
  • 戦闘は基本的に一般的なRPGのそれである。単体魔法と範囲魔法の区別はなく、基本的に同じ魔法でも単体と複数で撃ち分けが可能(範囲を広げると威力が落ちる)。
    • 特徴的なのは、敵にダメージを与えたり逆にダメージを受けると貯まっていく左下のゲージを消費して、リーダーだけが強力なエクストラ攻撃を使えること。
      • エクストラ攻撃は敵にヒットした時に!マークが出る。これに合わせてタッチすると威力が若干上がる。
  • 本作の汎用キャラ「灰の戦士」について。
    • 本作の汎用キャラは炎に焼かれて蘇った「灰の戦士」という設定である。
      • このため資金に当たる「エレメント」を消費して復活させて仲間に加えることができる。なお、レベルは味方のレベルに合わせられるので面倒な経験値稼ぎは必要ない。
      • 「復活させる」とはいっても一度死んでしまった灰の戦士は完全に消滅(いわゆるキャラロスト)してしまうため、昔の仲間がそのまま帰ってくるわけではない。実質新キャラ雇用と思ってもらって差し支えない。
    • 「灰の戦士」の詳しい種類は以下の通り。
      • バトラー:主に仕える忠実な騎士。専守防衛が身上で、敵に攻撃しつつ防御したり、敵の攻撃を発動前にキャンセルしたりする技を持つ。
      • ホワイトマジック:いわゆる白魔法使い。味方の回復を得手とする魔法使いで、攻撃力は低いが一人はいると死亡率が大幅に低下する。
      • ブラックマジック:こちらは黒魔法使い。敵にダメージを与える魔法を得意とし、単純なダメージ源としては最強クラスとなる。
      • スティーラー:身ごなし軽く、手癖の少し悪い少女。盗賊+格闘家といったところ。トップの素早さで敵を翻弄する。
      • アイテマー:道具の扱いに長けた道具士。アイテムの効果を高める能力を持ち、唯一攻撃アイテムを使用できることもあり攻防両面で活躍する。一方、本体性能は最弱ランクで序盤は資金面でも悩まされる。
      • ロングソード:バトラーと異なり攻撃特化の近接キャラ。守備には不安があるが、鎖で繋がれた二本の剣を自在に操り遠くの敵や複数の相手を軽々といなす剣豪。
      • モンスターマジック:汎用キャラでは唯一、直接攻撃手段を持たず完全に魔法に特化している。森の力を借りて味方を強化したり敵を弱体化させる魔法を専門で扱える。
    • 一方チームリーダーは全て生きた人間である。彼女らに特徴的なのは「エンゲージステム」と言って、一定以上チームリーダーと戦いを共にした灰の戦士を取り込むことができる点にある。
      • 能力値の強化だけでなく、(制限はあるが)魔法を取り込むこともできる。できるだけ長く共に戦った灰の戦士であるほど、エンゲージ時の能力上昇値は大きくなる。

問題点

操作性が悪い

  • レビューサイトなどで大半の人が真っ先に挙げる問題点。DSクソゲーにありがちな「タッチペン操作の強要」により、シミュレーションで必須となる「マスの移動」がしにくい。
    • ボタンが使えないのか? そうではない。なぜかキャンセルだけはBボタンで出来る。こんな謎なゲームは他に類例がないであろう。
  • エクストラのタッチ操作はほぼ取って付けただけに近い。
    • タイミングがややシビアにもかかわらず、成功させても威力補正は小さい。しかもどのキャラクター、どの技であろうとやることは同じ。
  • タッチペンで範囲を指定する関係上、3人並んだキャラの内左右2人だけを対象にする際には特殊な操作が必要。

汎用キャラの問題

  • 本作に登場する汎用キャラ「灰の戦士」の種類が全7種類と少ない。
    • シミュレーションゲームとしては、かの名作『タクティクスオウガ』など言うに及ばず、あろうことかFCの『ファミコンウォーズ』の16種にすら劣っている(ゲームシステムが違うので単純な比較は難しいとはいえ)。
    • しかも最序盤でこれら全てがそろってしまい、以降は汎用キャラについて変化は一切ない。
      • さらに固有のキャラクターは8名(一時参加含む)おり、汎用キャラの種類よりも固有キャラの種類の方が多いというシミュレーションとしてはかなり変なことになっている。
      • 擁護するならば、RPGとして本作を見た場合むしろこのぐらいの数が丁度いいと見ることもできる。キャラクターの性能被りもなく、いずれも個性豊かなのは評価できる。

キャラロストが厳しすぎる

  • キャラロストの条件は「HPがゼロになったまま戦闘を終了する」。こちらから仕掛けた戦闘なら敵を全滅させる前に復活アイテムを使えばいいだけなのだが、前述の通り敵からの戦闘は敵の攻撃のみで終了してしまうため、復活させることができない。
    • 「もう一度新しいキャラを雇えばいいだけではないか」という指摘もあるだろうが、本作のスキルは使い込めば使いこむほど威力が高まるので、古参キャラのロスト被害はかなり大きい。またこのスキルの仕様は、別の問題の原因になっている(後述)。
    • 固有のキャラクターはロストせず撤退扱いになる。チームリーダーも同じなので「王女が盾になって一般兵を守る」などという奇妙な戦略が有効になる。むしろチームリーダーが倒れれば全てのチームメンバーが撤退するので、一般兵がピンチになればなるほどリーダーを前に出しておいた方が安定する。

エンゲージシステムの問題

  • 前述の通り「長い期間共に戦うほどエンゲージ時のパラメーター上昇値は上がる」。しかしこの仕様に「スキルは使い込むほど性能が高まる」というものが組み合わさると、老練な兵をエンゲージに使うべきか否かの二律背反に悩む羽目になる。
    • 魔法が欲しいだけなら、適当な兵を適当に連れまわし、エンゲージできる最低ラインまで達したらとっととエンゲージしてしまうのがいい。
    • 「名前を自由に決めることができない」ということも合わさり、「キャラに愛着がもてない」「使い捨てを推奨しているように見える」と非難されることも。

全体にシミュレーションとしての作りが甘い

  • マップに高低差の概念がなく、移動に余計なコストを要するような地形も特になし。敵の配置もかなり適当で、ほとんどのマップは「画面手前に味方、画面奥に敵」という配置が崩れない。要するに包囲戦などのシチュエーションがない。
  • 敵を全滅させた後、多くのマップでは「目的地にたどりつけ」という目標が出てくるのだが、これの存在意義もわからない。
    • 敵が一切いないマップを目的地(やはりほとんどの場合マップ最奥である)に向かうだけ。無駄に時間がかかる。
    • 一応これのおかげで宝箱の取り逃しは少なくなっている。しかし逆に言うと多くのマップでは、敵がいるうちに危険を冒してアイテムを回収するメリットが薄い。
  • 敵の増援が多い割に、一つのマップで登場する敵が2~3種類しかおらず、単調でダレやすい。
  • 戦闘時のモーションがかなりもっさりしている上にスキップなどの機能が無いため、戦闘のテンポが非常に悪い。

グラフィックが美麗な割に少々残念な部分が多い

  • 攻撃のエフェクトがしょぼい。
    • 「斬るだけ」「殴るだけ」の直接打撃系はまだいいにしても、攻撃魔法ですら全体に貧相。
  • フィールド上のキャラグラがかなり変。
    • キャラクターを小さく表示せざるを得ないフィールド上でのグラフィックは結構難しい問題で、『タクティクスオウガ』ではキャラを3頭身にすることで顔を大きく表示し、表情の変化をわかりやすくしている。
    • しかし本作ではあろうことか5頭身ほどで表示するという全く新しいことに挑戦している。このためキャラクターが非常に細身で表示されるうえ、表情を表現するどころか顔そのものがないという事態に至っている。
    • 一部のキャラはさらに変。特に重要キャラ「エースシン女王」は被っている冠がやたら目につき、一見敵対しているはずの機械兵のようにも見えてしまう。

賛否両論点

  • 中断セーブが何度ロードしても消えない。PS版『タクティクスオウガ』にも通じる欠点を抱えてしまっている。
    • 嫌なら使わなければ良いので、救済処置とも言える。
  • 寄り道やサブイベント皆無の完全一本道ゲー。
    • 最初から最後まで分岐などは一切ない。一度クリアしたステージはもう一度プレイできるが、ある程度より前には遡れないため、すべてのステージを再プレイできるわけではない。

評価点

  • DSにおいて最高レベルを誇るグラフィック。
    • これは純粋に素晴らしい。解像度において他ハードに後れを取るDSにもかかわらず、同じくDSとしては美麗なグラフィックで評価された『ファイナルファンタジーIII (DS)』の2倍もの容量を誇る2ギガbitDSカードをフル活用し、PSPクラス、下手すればPS2や3DSあたりにも匹敵するグラフィックを実現。
      • 随所に流れるムービーの完成度も高い。
    • エクストラ技の演出は非常に派手で見ごたえがある。むしろこれだけのものができるのに、なぜ他の技の演出がショボイのか謎である。
  • 音楽が良い。
    • 幻想的、かつ流麗で世界観によく合っている。
  • 声優陣が非常に豪華。
    • 主人公の王女「アイシャ」役の明坂聡美氏を始め、子安武人、坂本真綾、植田佳奈などベテランの有名声優がそろっている。
    • ボイス量もハードの制約を考えればかなり多い。
  • ストーリー、キャラクター共に評価は高い。
    • 王道ファンタジーに近いが、機械兵なども登場し、あえて「外した」側面なども見られる。終盤の展開に感動したという意見も多い。
      • キャラクターの造形も、やや典型的でありながら個性が感じられる、という独特なもの。各キャラクターの立ち絵のセンスもよい。
    • テンポの悪さも含んでの時間なので、一概に良いとも言えないが、ボリュームも40~50時間ほどと、長すぎず短すぎないほどほどの分量。
  • 戦闘そのものは、緊張感もあり白熱する出来。
    • 同じような戦闘を1つのマップで何回もさせられるのが難点ではあるが。それでも戦闘バランス自体は意外に整っている。
      • 距離、APも戦略性を高める要素としては悪くない。とはいえ、シミュレーションとしてはかなり微妙なところではあるのだが…。

総評

「シミュレーションRPGとして致命的な問題点はない」「キャラクター、ストーリーも及第点」「なによりDSとしてはグラフィックレベルが非常に高い」と、評価できる点は多いのに賛否がかなり分かれる作品である。
全体的に「少数の大きな評価点」VS「多数の小さな問題点」といった感じで、問題点の方が目についてしまった人には「100円でもいらないゴミゲー」だが、問題点を乗り越えて楽しめた人には「クソゲーと聞いていたのに意外と面白かった作品」となる。
とりあえず、安く手に入ることだけは間違いない。興味を持ったらやってみるのも一興だろうが、合わない人にはとことん合わないことは重ねて強調しておく。

余談

  • 意図したものかは不明だが、どこか『ファイナルファンタジーシリーズ』を思わせる要素がある(公式でのつながりは一切ない。プロデューサーが同じだけである)。
    • 例:魔法のランク「フレア→フレアラ→フレアラス」、「HP回復アイテムが『ポーション』、MP回復アイテムが『エーテル』」など…。
  • 本作はDS最大の暴落ゲーとして知られる。
    • 発売からしばらくした後の相場で、一般的な中古のDSソフトは、人気のあるもの(ポケモンスーパーマリオなど)で1,000~2,000円ほど、評価が低く今一つ売れないもので1,000円を切って700~900円ほどであろうか。
    • しかし本作はほとんどのソフトショップで100円~300円程度で手に入ってしまう
    • 発売直後からワゴンの主だった、という情報もある。とにかく安価に手に入ることに関しては他のソフトの追随を許さない作品である。
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最終更新:2021年06月13日 21:25