メダロットDS カブト/クワガタ

【めだろっとでぃーえす かぶと/くわがた】

ジャンル ロールプレイング

対応機種 ニンテンドーDS
発売元 ロケットカンパニー
開発元 デルタアーツ
発売日 2010年5月27日
価格 5,040円(税込)
判定 ゲームバランスが不安定
ポイント 「知恵と勇気」よりも火力がものを言う対戦バランス
一度は改善の兆しを見せたが…?
旧来のファンが首を傾げる矛盾点・違和感
メダロットシリーズ


概要

真型メダロット』以来5年越し*1の『メダロット』シリーズ作品。
プラットフォームをニンテンドーDSに移した完全新作となっている。

本作の発表当時、メダロッターたちの期待は大きな高まりを見せた。
その証明として、キャラクターデザインの変更により大批判を受けた『真型』から一転、メダロットの生みの親である「ほるまりん」の帰還が期待のボルテージをさらに上げた。
そして、Wi-Fi通信を生かした、全国のメダロッターたちとのロボトル。いままでケーブルを介して身近な友達としかできなかった通信対戦の輪を、全国にまで広げられる。この新要素も、対戦派のメダロッターたちの魂を燃え上がらせていた。
こうして多くのメダロッターが無意識に本作へのハードルを上げていく中、「期待の完全新作」はこの世に誕生したのだった。


従来からの変更点

メダロットについて

  • 参戦メダロット
    • 本作に登場するメダロットは新型機もあるが、半分以上は過去作からの機体が中心。
      • 過去作の機体でも、名前や行動内容・パーツには変更がいくつか加えられている。
    • また、過去作で顕著だった「下位・上位互換」のパーツが減っている。
  • 機体のカスタマイズについて
    • 機体に名前を付けられなくなった。機体名は自動的に、装備している頭部パーツに該当するメダロットの名前に決定される。
  • メダルについて
    • 「熟練度≒レベル」という、今までの作品にないシステムとなった。熟練度はすべてのメダルに3つずつ設定されており、これらの合計が99になると一切熟練度は上がらなくなる。
    • 3』で初登場した、メダルを強化するアイテム「メダリア」が復活。しかしその能力は初登場時の「メダルの熟練度を補助or追加する」効果から一転、パーツの性能を補正したり特定の攻撃に対し耐性をつけるなど、戦闘の補助的なものに生まれ変わっている。

ロボトル(戦闘システム)について

本作はナンバリング作品から引き続き、ファンの間から非公式に「シャトルラン式ロボトル」と呼ばれる伝統のロボトル形式を採用している。
しかしそのルールは細かく変更されており、どちらかというと『3』以前のロボトル形式に近い。

  • ロボトル描写の進化
    • 本作ではDSの性能を生かし、移動中・戦闘中もメダロットが3Dで画面内を動きまわる。一部のメダロットには専用モーションやエフェクトが用意されているなど、その作り込みは決して甘くない。
  • メダチェンジなし
    • 本作は『5』同様メダチェンジはない。そのため、後述する過去作から登場するメダチェンジ機能を搭載した機体は変形せずにノーマルモードのみで戦う。
  • メダフォースの復活・仕様変更
    • 本作では『5』から一転メダフォースが復活している。しかしその発動方法は「メダフォースを最大まで貯めると発動可能」と大きく変更されており、それにともなってメダフォースの効果も強力になっている。
  • 攻撃ペナルティの仕様変更
    • 相手にダメージを与える攻撃のための行動「うつ」「ねらいうち」「なぐる」「がむしゃら」のうち「うつ」以外にはペナルティがあり、それぞれ「次の行動まで回避不可能」「防御不可能」「どちらも不可能」というデメリットがあった。
      従来はこのペナルティは次の行動を取るまで持続したのだが、本作では行動後、次の行動を選択するまでの「冷却」の期間だけにペナルティが適用されるようになった。
  • 防御行動の仕様変更
    • 一定時間、仲間に向かう攻撃を身を挺して守り、代わりにダメージを受ける「まもる」系の行動(防御、未満防御など)の仕様が変更され、従来は「行動選択→次回行動時」まで防御の効果が持続したのだが、今回はセンターラインに一定時間とどまり、とどまっている間攻撃を受けつづけるという仕様に変更された。
      • その他、症状(所謂状態異常や補助効果)が1体のメダロットに複数重複可能、トラップの制度の変更、基本的に戦闘アニメのみ違っていた行動(ソードとハンマー等)に明確に追加効果や性能差が加えられるなど、旧作から変更された点が多い。

対戦バランスの崩壊

  • 発売後、多くのメダロッターがWi-Fiへと繰り出した。しかし、そこに待っていたのは決して素晴らしい対戦環境ではなかった。
    発売後、対戦環境の研究が進むにつれ「パワーがものを言うゲームバランス」が判明し始めたからである。
    • バランス崩壊の原因は、一部のパーツによる速攻戦術と、メダフォースに依るものが大きい。以下に、ゲームバランス崩壊級のパーツ・メダルを一部例に挙げて解説する。
+ パーツ編
  • トランプル(頭部パーツ)
    • ゾウ型メダロット「ギガファント」の頭部パーツ。『メダロット1』では「メガファント」の頭部パーツであり、当時は格闘攻撃だった。
    • ねらいうちの重力攻撃(ブレイク)で、命中率が非常に高い上に重力攻撃の特徴「成功率*2二倍」の特性と、ねらいうち行動の「クリティカルしやすい」という特性が合わさって、「高威力」と「命中率」という本来トレードオフになるべきパラメータが両立してしまっている
    • しかも、一発だけでも致命傷になりかねない威力の一撃を二回も撃つことができる。これだけでも強力なのだが、後述するメダルとの組み合わせでさらに猛威を振るった。
      • 同様に一撃を重んじたビーム攻撃を放つアークビートルの頭パーツ「プロミネンス」が採用される場合もあったが、こちらはビーム攻撃のため成功率が低く、行動「うつ」でクリティカル補正がかからないため、専らトランプルが採用されることが多かった。
  • サンメーン(頭部パーツ)
    • ヘベレケ博士が使用するメダロット「スペナグメノーグ」の頭部パーツ。
    • この頭部パーツは「ダブルシール」という攻撃を繰り出すのだが、ダブルシールは命中すると「防御・回避を封じる」「ダブルシール症状を受けているメダロットに対する攻撃を全てクリティカルとして扱う」という凄まじい症状を付与する。
    • その強大な効果故にパラメータ自体はおとなしく、かつがむしゃら攻撃のため使用には相応のリスクが伴う。ただし後述するメダフォース「タイラント」と組み合わせることで、がむしゃら攻撃のデメリットは踏み倒せてしまう。
    • さらにスペナグメノーグのパーツは性別が「ニュートラル」になっており、男性・女性どちらのティンペットにも装着できる特殊な仕様になっている。そのためカスタムの幅が広く、様々なタイプの機体に組み込めた。
      • 後述する「ルール」でも禁止パーツの常連になっており、そしてルールの配信終了までついに解禁されることはなかった。
    • 次回作『7』で一度はダブルシールという攻撃自体が削除されたものの、大幅な弱体化調整を受けて後の作品では「フラッシュ」「デスロック」と名を変えて復活している。
  • アサッシン(がむしゃら攻撃)
    • がむしゃら攻撃のひとつで、使い手こそ少ないがその効果は「必中+クリティカル+貫通」と強烈。
    • この攻撃の初出となる『4』ではパーツの性能が低く抑えられておりバランスが取れていたのだが、本作ではこれが強烈な威力と必中特性を持つ強力な武器として蘇り、各地で猛威を振るった。貫通するので一撃の被害も大きい。
    • 一応欠点として、クリティカル前提の威力からか後述する「モノケロース」など、火力の高いがむしゃら攻撃と比べると威力が劣るという欠点があるが、それでも並の装甲のパーツなら悠々と致命傷まで持っていく高威力*3なので大きな欠点とは言いがたい。
      • 全盛期には、パーティ内でアサッシン可能なパーツを装備したメダロットがかならず一体はいたと言われるほど。
  • モノケロース(頭部パーツ)
    • 強力ながむしゃら攻撃で付加効果こそないものの、がむしゃら特有の「脚部の推進値*4に応じて威力上昇」という追加効果によって一撃必殺の威力を持つ。
    • 本作初出の、パーティ全体の推進力を強化する「ドライブブースト」と併用され、アサッシンと共に猛威を振るった。
    • これ以外にも強力ながむしゃら攻撃パーツは多々アタッカーに採用され、一撃で2パーツ・3パーツを破壊することも珍しくなかった。
  • ホーリーウォール(頭部パーツ)
    • 『2』初出のヒロインの一人、カリンのメダロットである「セントナース」の頭部パーツで「完全ガード」という、自機を含めた全ての仲間に対する攻撃を無効化するという強力な効果を持つ。しかしその反動か、効果時間は防御パーツの中でも格段に短い。
    • 強力な攻撃パーツが跳梁跋扈するWi-Fiではそれに対抗すべく自然とこのパーツの採用率は高まっていき、このパーツも最盛期はパーティの必須パーツと化していた。
+ メダル・メダフォース編
  • メダル性格「スナイパー」
    • メダロットの頭脳であるメダルには「性格」が設定されており、それぞれ「特定の行動をするパーツを狙う」「特定の部位を狙う」などのクセがあるのだが、その性格の中でも特に凶悪だったのがこのスナイパーである。
    • スナイパーは防御・回避をされない限り「頭部を優先的に狙う」というクセを持っている。頭部の破壊=機能停止というこのゲームのルールを考えれば、どれだけ“極悪”であるかの説明は不要だろう。
  • ニードルショット
    • 確実に対象メダロットの頭部を攻撃するメダフォース。メダフォースはいかなる行動でも回避・防御不能であり、相手の頭部パーツの装甲によっては「無傷から即死」という信じられない展開も起こりうる。
    • 一応火力では他のメダフォースや後述するタイラント・ガンスリンガーには劣るが、確実に頭部を潰せる上に、劣るとはいえ中途半端な装甲程度なら致命傷に持っていける程度の威力は持っているためそこまで問題にはならなかった。
  • タイラントガンスリンガー
    • 前者は装備した攻撃パーツ全てで、後者は両腕を使って対象に連続攻撃を仕掛ける。これもメダフォース扱いで回避不可能であり、しかもパーツの効果(症状など)もしっかり発動する。
    • それに加え、ガンスリンガーは「発動までのタイムラグが少ない」という付加効果があり、出された場合まず妨害することは不可能である。
  • ノンイバーシブ
    • 攻撃力のない、全体版ダブルシール。放置しておけばその後の相手の攻撃でほとんど全滅確定の恐ろしい効果であり、これを対策するためのパーツを装備するためにメダロットのカスタマイズの幅を狭めることになった。

紹介したメダフォース以外にも多くの強力なメダフォースが存在し、対戦全盛期には猛威を振るった。

発売後、Wi-Fiでは超絶火力の攻撃が飛び交い、それを防ぐためにホーリーウォールで相手の攻撃を耐え、そして戦場が停滞している間に互いのメダフォースがたまり、メダフォースの応酬…という、緻密な戦略もクソもない戦いが繰り広げられた。
「防御しなければ高火力での瞬殺、完全ガードすればチャージの余裕を与えてしまい、メダフォースの格好の的」という狂ったバランスが成立してしまったのである。
これを防ぐため、多くのメダロットに「装甲を上乗せするためだけに使えもしない防御用パーツを搭載する」という光景が多々Wi-Fiでは見られた。
そして永遠の難問である、チートを使用したプレイヤーへの対策もおろそかで、スレッドではチーターの報告が後を絶たなかったという。

元々メダロットシリーズの作品はゲームバランスが悪いことが多かったが、始めて導入されたWi-Fiによる通信対戦の影響により、本作の劣悪な対戦バランスは主に対戦派のメダロッターから従来作以上に大きく取り上げられることになった。

最狂のメダリア「MF-MAX」

公式サイドは、この混沌とした状況に歯止めをかけるべく、通信対戦で「ルール」を導入した。
これは一種のレギュレーションのようなもので、開発側は即座に対戦バランスを揺るがしかねないパーツを規制したレギュレーションを制定、Wi-Fiに一種の「隔離部屋」を作った。
また、ユーザー側も強パーツ・メダフォースを使用したいわゆる「量産型戦術」「厨構成」に対抗策を練り、依然として高火力主軸のゲームバランスではあったものの、ある程度戦術の採れる幅は広まった。
このふたつが重なったことで、ロボトルには一時的に平和が戻った。戦略とセンスがものを言う「歯ごたえのあるロボトル」が活気を見せ始めたのである。
毎月行われる開発からのレギュレーション配信や追加要素も相まって、メダロッターたちには一時的な安息の日々が戻ってきていた。

しかし、8月の配信で解禁されたある一つのメダリアが、そんな平穏な状況に終止符を打った。
それこそが最のメダリア、「MF-MAX」である。
このMF-MAXというメダリア、公式に使用可能ながら「ゲーム開始時からメダフォースをMAXにする(≒開幕からメダフォース発動可能)」という反則的な効果*5を持っている。
これにより、かつて『3』『4』の時代に大会を席巻した「速攻メダフォース戦術」*6と同様に、「開幕メダフォース戦術」がWi-Fiを席巻したのである。 そこにあったのは、発売当初のWi-Fiの「高火力vs高火力」という地獄を超えた、「メダフォースvsメダフォース」という世紀末の様相であった。
その戦いの苛烈さは、攻略サイトで「MF-MAXを装備しないということは勝利を放棄することと同義である」とまで書かれるほどであった。

その敵味方互いにメダフォースを連発する姿に、古参のメダロッターはかのトラウマ製造機「ゴッドエンペラー*7」以降のラスボスの姿を思い浮かべたという…。

本作には「フォース制御」*8や「フォースドレイン」*9は登場しない。
一応メダフォースに「メダフォースがそれ以上たまらないようになる」ものは存在するが、それでも発動そのものを抑制することは出来ない。つまり、どうあがいても開幕のメダフォースを止めることは出来ない
MF-MAXの事を考えなければMFの発動にはフルチャージという手間がかかるため、あえて登場させなかったとも考えられるが、その場合“対策”という面白みのある部分を無くすことになるので、入れるべきだったとする声が多い。


バランス以外の問題点

このゲームを問題作たらしめたのは、ゲームバランスだけではなかった。
多くのファンは、そのストーリーにも失望させられることになった。

ストーリーの問題点

  • ストーリーは過去作品と比較すると盛り上がりに欠け、単体の作品としてもキャラクターにもいまいち魅力が感じられない。
    • 特に終盤・クリア後に明らかになる謎や伏線に関しては、本作で十分に回収されないまま終わってしまっている。
    • 特徴が何も無く空気以外の何ものでもない主人公、何一つ役に立たない幼馴染達と、主人公サイドについてはあまりキャラが立っていない。一番目立つのは過去作キャラのアリカである。
      • とくに幼馴染は戦いの場に一緒に付いてきたりはするのだが、メダロットを呼ぶためのケータイが使えない等でまったく助けにならない。ロボロボ団との最終決戦でも「あとから行く」と言っておいて入口に立ったまま何もしない
    • 主人公は空気であるばかりか、なにかあるたびに仲間や後述するウィローズやロボロボ団に押しのけられる。彼が何をした。
    • 中盤のストーリーにて起こるイベント「メダベースボール」は専用イラストが何枚も使われているが、ただ観戦するだけでストーリーの進行上とくに必要も意味もない。イベント内容も球場前でメダロットのテストと中でロボロボ団と接触と、野球場の必要性がまったく無いもの。
    • そしてメダベースボール中に発生するクイズ(選択肢)も「メダベースボールはどんなスポーツ?→やきゅうorサッカー」「メダロットはどうやって動いている?→決められた通りに動いているor自分で考えて動いている」など、わかりきった内容のものばかりで、どことなくピントが外れている。なお正解したところで何かあるわけでもない。

最強最悪のワルガキ「ウィローズ」

  • 本作のいわゆる「ワルガキ三人組」ポジションである「ウィローズ」の数々の悪行はプレイヤーに殺意を煮えたぎらせた。
    • それまでの「ワルガキ」ポジションのキャラクターは基本的に主人公に微笑ましいちょっかいをかける程度の役回りであり*10、対立しつつもなんだかんだ言ってピンチの時には助けてくれるツンデレっぷりに定評のある『2』~『4』に登場した「スクリューズ」*11や、最初は反目しているものの後に互いに認め合う仲間となり、主にコメディリリーフとして活躍した『navi』の「ソーナンズ」など、「憎めないヤツ」というキャラクター付けがなされていたが、本作のそれは憎めない どころか憎しみしか湧かない。
    • 序盤から終盤まで主人公を馬鹿にするか利用するかの二択しかなく、裏切りや横取りは当たり前で、状況が悪くなるとあっさりと掌を返し、主義主張をコロコロ変えてその場しのぎを繰り返す。そもそも劇中でトラブルを起こしたり、さらに状況を悪化させてるのもだいたいこいつらのせい。正直セレクト隊*12に捕まっても文句は言えないレベルである。次回作『7』でも序盤からやらかしてくれるが、こちらは徐々に改心し、最後半では協力・共闘するなど改善されている。しかし本作では反省することなく終始ウザいだけの存在である。
      • とにかく身勝手・自己中心的であり、主人公達の足を引っ張ったり余計なちょっかいを出しては手酷い目に合うものの、反省するどころかますます増長していく。ただし最後の最後で主人公の堪忍袋の尾が切れ嫌味たっぷりに反撃を食らった。
    • ちなみに本作では二人組になっているが、なんと終盤に主人公が加わり三人組になる。しかしその理由も大会の優勝賞品目的であり、ムリヤリ加入させられる。ウィローズに嫌悪感を抱いてるプレイヤーには最悪の展開であろう。

続投キャラクターの扱い

  • 発売前もその登場をクローズアップされていた、『2』から主人公を務めてきたイッキをはじめとする前作からの続投キャラクター。しかし劇中での扱いはお世辞にも良いとは言いがたく、キャラ描写についても従来の設定との矛盾を抱えたキャラクターも存在する。
    • ちらっと出てきて空気化してしまう前作主人公・天領イッキ。序盤に主人公にメタビーを託す、ロボロボ団との戦い前にパーツをくれるという重要な役割を果たした後は、何故かイベント皆無になりただのモブコンビニ店員と化す。
    • 彼とは逆に八面六臂の活躍でバルフレア化している前作のヒロイン・アリカ。大人になっても代わらず主人公を引っ張り回し、主人公のサポート、情報提供など、あらゆる場面で序盤から終盤まで活躍する。そのため他のキャラを食っており、とくに幼馴染はただいるだけの端役も同然になってしまっている。
    • 他に最終盤に登場するヘベレケ博士はおちゃらけた雰囲気の全く失い悪の権化と化しており、旧シリーズ経験者からすると違和感を覚える部分が多い。
      ヘベレケの世界征服の行動原理は従来は「ギャルにモテたいから」とおおよそ悪の大首領にはふさわしくないギャグチックな理由であったのだが、本作ではそんなことがまるでなかったかのような、コメディ要素のないキャラになっていることに違和感を感じるファンは少なくなかった。
    • 一応、ヘベレケに関しては「漫画版のキャラに寄せている」という擁護意見もある…のだが、『DS』発売当時、漫画版はゲームの過去作以上に入手困難*13な状況にあった。その為漫画版に触れていないプレイヤー層の多くが困惑することになった。
    • またヘベレケは『3』・『4』では事件解決に協力するという条件で釈放されており、特に『4』においてかつての弟子がイッキに負けたことに対し「ワシもお前もメダロットにかける情熱が足りなかったから負けた」と潔く負けを認めている*14シーンまであるため、本作の言動へは全く繋がらない。例によって本作でのヘベレケに対してメダロット博士は「こんなことをするのはヘベレケしかおらん」と『4』での敗北宣言を完全スルーしている。
      • イッキの空気化は「前作主人公がでしゃばっては本作主人公の影が薄れる」という配慮、と受け取ることも出来なくはないが、その代わりにアリカが活躍しまくって一番目立つ存在になっているため、フォローのしようがない。
    • 初登場から約10年が経過しているはずのロボロボ団幹部だが、経過した時間相応に成長したイッキ達と比べてほとんど外見(デザイン)が変わっていない。このため、イッキ・アリカと並べると非常に違和感が生じる。
      • 幹部の一人・シオカラのキャラ崩壊っぷりは多くのプレイヤーを失笑させた。幹部の一人・サラミは幼稚園児の姿のまま、中学生相応という無理があり過ぎる設定になっている。
    • イッキから譲り受けるメタビーは序盤でボロボロに壊され、治ったと思ったらまた壊される。言及はされてないためイッキの使っていたものか市販のものかはわからないものの、ボロボロに壊れたメタビーを二回も見せられるのは、本シリーズに愛着のあるプレイヤーにとってはあまり気の良いものではない。さらに二回目はメタビーのパーツそのものを奪われ失うことになる。

従来の設定との矛盾

  • また、従来の設定と整合性が取れていない部分も多い。
    • 『3』の時点で月面都市が存在していたが、本作の月は更地(まだ未開の地と言わんばかりに何の施設もない)。
  • 旧作組であるはずのイッキ達とロボロボ団との会話が、まるで今初めて会ったかのような内容だったりとツギハギ・チグハグである。
    • 『2』から『4』、そして外伝作品においても長い付き合いだったために知らないのはおかしい。
    • また、こちらはあまり話題には挙げられていないが、幼馴染の女の子がうっかりメダロットを馬鹿にするような発言をしてしまっているほか、序盤で「メダルはモノではない!」と主人公を叱った父親が、終盤では「(そのメダルは)知人のモノだ」と発言してしまっている。
    • 元から『メダロット』という作品自体が、漫画・ゲーム・アニメといったメディアミックスで同キャラ・共通の世界観を用いながら設定が交錯・矛盾していることが多いのだが、ゲーム版は漫画版ほどではないものの、「ゲーム版(ナンバリング作品)の中での設定」がぶれることは少なかった。本作は発売元・開発元・シナリオライターの変更によるものか、上記の「ゲーム版メダロットシリーズの中である程度守られていた設定」が崩れてしまったことが、ファンの違和感や不満に繋がっている。

インターフェースなど

  • ティンペット及びメダルに名前をつけられないという誰得な退化した仕様は多くのメダロッターの顰蹙を買った。この作品を除く全てのRPGシリーズ作品で可能だったことである。
    • 主人公は愛機を各バージョンの看板機体にちなんだニックネーム*15で呼ぶのだが、看板機体のパーツを装備していないと違和感を覚える。
  • メダルのレベルの仕様変更は「否」寄りで賛否両論を呼んだ。
    • メダルのレベルはリセットが効かず、何らかの原因で熟練度配分をミスしてしまった場合、新規データを作る以外はもうどうしようもなくなってしまう。
    • また、先述したような極端なゲームバランスだったので、実戦を目指すなら熟練度配分にあまり自由度はなく、いわゆる「極振り」*16が最適解になってしまう。
    • ゲーム中で手に入るメダルは入手時期によって初期レベルが異なり、レベルに応じて熟練度が最初からある程度割り振られている。この仕様のために中盤以降に入手可能なメダルは殆どの場合完璧な極振りが不可能となっており、対人戦などのガチ環境への投入は厳しいものが多い。
    • パーツバランス同様メダロット草創期からの問題なのだが、メダル間の性能格差も健在。使用可能なメダフォースにも恵まれていない、扱いにくいメダルも存在する。当然ガチ環境ともなると選択肢に入るメダルは限られてくる。
  • 画面構成と操作系がいまいち噛み合っていない部分がある。
    • パーツリストや機体選択画面の端にタッチペンを意識したような矢印があるものの、タッチペンに対応していない。
      • ページ単位で切り替えできないので後ろの方のパーツを閲覧するのにストレスがたまる。
    • ロボトル中のメダロットの指示のマニュアル・オートの切り替え、戦闘アニメーションのオン・オフの切り替えはなぜかタッチオンリー。
      • 空いているY・セレクト・スタートボタンにこれらの機能を割り振っておくべきだったのでは?
  • 「ローテーション」(ロボトル中オート時の行動内容の予約・ループ)の設定ができない。
  • 参戦メダロットについても偏りがひどく、機体数自体もやや少なめ。
    • モデリング自体は作り直され、ディティールも追加されてはいるものの、大多数が従来作である『R』と『BRAVE』(『1』『2』『3』)のメダロット。
      • 序盤に主人公機であるメタビー、ロクショウがウィローズに古臭い、旧式だと笑われるシーンもあるが、その笑っているウィローズの使うメイン機体も『2』で初登場した古参機体である。主人公機もウィローズが使う機体もこの作品でデザインが少し変わっているのでどちらも厳密には旧式とはいえないのだが……。
    • 参戦メダロットはある程度ファンのツボを抑えたラインナップではあるが、シリーズを通して扱いの大きいカブト・クワガタ・サーベルタイガー・ライオン型メダロットのラインナップがかなり歯抜けになっている他、ビーストマスターやブロッソメイルなど、人気の高いボス機体が不在であるなど、選定基準には首をかしげざるを得ない部分がある。
      • 行動(わざ)の配分やゲームバランスを考えた上でのラインナップという説もある。無闇にボス級機体やカブト・クワガタ機体を採用したら行動が被る・パーツ数の増加による上位・下位互換の増加、性能調整する必要が出てくることも考えられる。
    • データ上にはCPU専用機体(通常登場するものの色替え・若干能力を変更したもの、戦闘はできるが通常プレイでは入手不可)が本作に普通に登場する分と同じ数存在する。
      • 「CPU専用機体を作るぐらいなら、もう少し普通に登場するメダロットを増やしてよ…」という声も上がっている。
  • 本作は一部の施設などを除いて、建物内には基本入れない仕様。…と思いきや、ゲームクリア後に一部を除いて多くの建物内に入れるようになる。しかし一般宅に何か強力なパーツや重要な会話などがあるわけでもなく、クリア後の特典にする意味がわからない。そもそも入れるようになったという告知も無いため、気付かないプレイヤーもいたと思われる。気付いたところで何も無いのが幸いだが…。

バグについて

  • バグに関しても数は少ないが、ゲーム進行に支障をきたすバグがある。
    • 行動不能バグ:メニューを開いた後、通常マップ画面に切り替える際にDSの下画面がブラックアウトして一切の操作を受け付けなくなる謎のバグ。発生条件が不明かつ、メニュー画面を開くという頻繁に使う動作で発生する可能性があったため、多くのファンを悩ませた。
    • ベースボール前進行停止バグ:あるイベント前に発生する、パッケージの看板機体のパーツを一式装備して戦うイベント戦闘があるのだが、この前にそのパーツを一式装備していないと戦闘突入後に 「サンジューロ or ガンノウズのパーツが揃っていません」 と表示され、戻ることも戦闘に進めることもできなくなり実質進行不能になる。
    • メダル復元不能バグ:こちらは進行に支障は及ぼさないが、クリア後の「メダル復元イベント」に大きな支障をきたす。このイベントでは「各地に散在する『メダルのカケラ』」を集めて復元させ、一つのメダルにするというものなのだが、メダルのカケラを半端に集めた状態で復元してくれる人物に話しかけても復元してもらえず、しかも全部集めていても復元してもらえないこともある。一枚のメダルに狙いを絞って一枚ずつ復元させれば発生しないものの、それを知らずに多くのメダロッターが泣きを見るハメになった。
      • 後日、このバグは公式からの配信で修正された。
    • もろこし公園バグ:ストーリークリア後のもろこし公園で発生するあるイベント戦で負けてしまうと、もろこし公園から出られなくなってしまう。気付かずにセーブしようものなら、泣く泣く初めからやり直す羽目に…
      • またバグではないが、ストーリー進行上で移動も買い物もフリーバトルも出来ない場面になることがあり、ここでセーブしてしまうと詰まる可能性がある。

評価点

  • 3Dで動くメダロットが見られる*17
    • 演出もDSのスペックを活かしてなかなか頑張っており、アニメーションもスピーディ。邪魔ならカットすることもできる。
  • Wi-Fiを利用した通信対戦で、多くのメダロッターと対戦可能。
    • 発売当時はシリーズ唯一のWi-Fi対戦が可能であった。
  • 通信によるパーツ交換が「パーツのコピーを渡す」という方式に変更。
    • 相手さえいればパーツのコンプリートは容易。各バージョン限定のレアパーツも気兼ねなくプレゼント・量産できる。
      • ちなみにパーツを全て揃えたメダロットは、3Dモデルだけでなくイラストが見れる特典がある。イラストは全てのメダロットに用意されている。
  • ロボトル(戦闘)に関するハードルの低下。
    • 旧作にあった「ロボトルに敗北したらメダロットのパーツを1つ奪われる」というペナルティの廃止。
      • 勝利すれば従来通り相手が使用していたメダロットのパーツを1つもらえる。通信対戦でも同様。
      • ゲーム冒頭でロボトルに敗北した主人公の友人が「ワルガキ」達からパーツを取り上げられるという昔ながらのロボトルと思われる描写はある。
    • 戦闘回避アイテム「ロボロボメダル*19」の入手が容易になった。
      • 基本的にこのアイテムは敵対組織「ロボロボ団」との戦闘に勝利して入手するのだが、本作では1回の戦闘で一般団員相手でも3個程度まとめて手に入り、幹部相手なら数十個手に入る。また場所自体は隠されているが、安価で大量購入が可能になった。これにより不要なロボトルから逃げやすくなった。
      • ただしエンカウントの頻度自体はいつも通りである。
    • ランダムエンカウント時に登場するメダロットの数が1~2体程度に抑えられ、ロボトル(雑魚戦)にかかる時間が短縮・テンポアップ。
      • 当然だが相手が3体のメダロットを使用するロボトルもある。主にシナリオ上のイベント戦や特定のキャラクターにロボトルを挑んだ場合に採用されている。
      • ちなみにランダムエンカウント時のメダロット構成はパターンはあるものの『1』・『2』・『R』時代のように他機体を混ぜて組み替えている構成がほとんど。『3』以降のナンバリング作品では雑魚戦時に登場するメダロットたちはパーツ純正構成で登場していたため、「いろいろな組み合わせのメダロットが登場し通常戦闘が単調になりにくい」一方、「1つの機体(パーツ)を狙ってパーツを集めにくい」などと意見が分かれる。
  • MF-MAXをのぞけば、戦闘バランスに関してはレギュレーションを併用することである程度バランスを取ることには成功している。メダリアの復活もあり、採れる戦術は幅広い。
  • 過去作に比べて上位・下位互換パーツが減少したことは評価すべきであろう。同じような行動を取れるパーツでも、その性能は多くの場合相互互換の関係にあり、カスタマイズの幅は広がった。
    • また、レギュレーション・イベント・パーツなどの配信でゲームを積極的に盛り上げた公式側の姿勢も評価されることが多い。
  • セーブデータ枠が3つ用意されている。
    • 旧作は1カートリッジ1セーブデータ*20だったため、ちょっと嬉しい。
    • なお上記の配信データ・レギュレーション・Wi-Fi対戦の成績といった通信に関するデータの保存場所は1つのみで、各セーブデータで共有される。
    • また、本作でもヒロインによる全員一枚絵ありのED分岐がある。ヒロイン候補三人と母親の合計4パターンで、終盤の選択肢から分岐するようになっている。ただし候補の一人である母親は選択時には伏せられており、親友の男を選ぶことで母親エンドになる。
      • ちなみに選んだヒロイン(か男)からオススメのパーツ一式を貰えるのだが、一人以外は最序盤で集められるものばかり。しかも普通に店売りされているもの。最終盤に貰ったところで今更である。

総評

メダロッターたちが「5年越しの新作」ということで心の期待値を上げていたこともあり、ガッカリゲー、ひどいときは名前だけ借りた駄作として扱われることも少なくない。
完全新作ということを差し引き一つのゲームとしてみても、ゲームバランス(主にWi-Fiによる対戦に関して)が不安定なことは擁護できない。
評価すべきポイントもあるものの、いささかゲームとしての完成度は過去の名作に劣ると言えるだろう。


余談

  • 本作のシナリオライターは手塚一郎。評価の高い『アランドラ』のシナリオを手掛けた人物であるが、2008年発売の『ファイナルファンタジーIV』のノベライズなどは評価が低く、それを知る者からは不安視されていた。
  • ほるまりん氏による漫画版も存在する。『デンゲキニンテンドーDS』において2009年から1年間連載されていた。しかし残念ながらコミックスは発刊されていない。
    • 一応、専門レーベル「デンゲキニンテンドーDSコミックス」はあるので出る可能性はなくもないのだが…。
  • ゲーム単体の出来は上記の通り賛否両論だが、2009年に本作の発売決定を発表後、ゲーム以外の『メダロット』にも動きがあった。
    • 上記の通り、本作の発表と同時にほるまりん氏による漫画連載、雑誌等による久しぶりのメディア露出。
    • 2010年に長らく入手困難だったアニメ『メダロット』・『メダロット魂』のDVD-BOXが発売。また、2011年からニコニコ動画のフルアニMAXにて公式配信も行われている。
    • 2011年に入ってコトブキヤから本作に登場する主役メダロット「ガンノウズ」と「サンジューロ」、初代主人公機「メタビー」と「ロクショウ」のプラキットが発売(バンダイからも可動式フィギュア「D-Arts」が発売された)。
      • 「本作の発売によって各方面にも動きがあった」点は作品全体・ファンから見ても良い流れとして歓迎されている。
  • ロケットカンパニーは2010年9月末という早い段階で『メダロット for Nintendo 3DS(仮)』の製作を発表、2012年9月13日に『メダロット7』という正式タイトルで発売。雑誌『最強ジャンプ』にて漫画も短期集中連載(ちなみに作者はほるまりん氏ではない)。
    • 本作で登場したキャラクターはほぼ続投だが、ストーリーのつながりなどはリセットされた。
    • 開発元は本作と同じ。戦闘テンポの向上、演出面の強化、新システムの追加、本作の問題点の解消等システム面は大幅に改善された。
    • シナリオ担当も本作と同じ手塚一郎。過去作からの変更など気になる点はあるものの、キャラクター描写やシナリオに関しては段階的にまともになっている。

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最終更新:2022年08月09日 08:48

*1 一部ゲーム誌やニュースサイトでは「8年越し」と書かれているが、これは最後のナンバリング作品である『メダロット5』から数えた場合になる。

*2 命中率・クリティカル率に関連するパラメータ、攻撃力にも少なからず影響を与える。

*3 熟練度が低くても余裕で100ダメージ以上は叩き出せる。

*4 機体の移動速度に関連するパラメータ。

*5 装着したメダロットの頭部パーツ使用回数が0になるペナルティはあるものの特定のメダフォースで回復が可能なため、リスクとリターンのバランスがまったく取れていない。

*6 文字通り速攻でメダフォースを発動させて相手に大打撃を与える戦術。メダフォースを上昇させるパーツを使って一体にメダフォースを供給し、発動役が強力なメダフォースで敵に大打撃を与えるというもの。当時の対戦環境で猛威を振るい、昔のメダロットのずさんな戦闘バランスを物語る戦術として否定的に語られる事が多い。

*7 『2』のラスボス。超絶的火力を誇る上に開幕からメダフォース値がMAXで、メダフォースを開幕早々ぶっぱなしてくる為、メダフォース制御を使うなどの様々な対策を練らないといけない。

*8 フィールドを制御し、一定時間互いのメダフォース発動を封じる行動。

*9 相手のメダフォースを吸収する行動。

*10 その後、大体しっぺ返しを食らうのもお約束。

*11 アニメ無印では笑いあり涙ありの成長劇まで用意されており「救いようのない嫌な奴」「単なる悪役」ではないことが強調されている。

*12 メダロットシリーズにおける警察組織。

*13 現在では新装版、オリジナル版の電子書籍化がされている。

*14 これにはイッキも驚いており、メダロット博士も「なんだかんだでヘベレケはイッキ達を認めた」と発言している。

*15 カブトならガンノウズなので「ガン」、クワガタならサンジューロなので「ジュウ」。

*16 一つのパラメータを重点的に強化する振り方。

*17 3D化は本作が初めてではなく、PSの『メダロットR』が初。ただしあちらは完全なクソゲー扱いである。

*18 さらなる余談になるが、セッティング時現在装備していたパーツと変更時のパーツとの能力値の変化を比較してくれる・パーツの変更を確定し組み替えから抜けるときに特定ボタンで確定しないといけない、というパーフェクトエディション独自の仕様も本作で再登場している。

*19 エンカウント時に使用することでロボトルを断れる消費アイテム。旧作では一部の敵に勝利した時の戦利品やミニゲームの粗品として入手できる。

*20 旧作でもメモリーカードを採用したPSの『R』は3枠まで可能。