邪聖剣ネクロマンサー

【じゃせいけんねくろまんさー】

ジャンル ロールプレイングゲーム
当時のパッケージ
PCエンジンミニ版
対応機種 PCエンジン
メディア 2MbitHuカード
発売・開発元 ハドソン
発売日 1988年1月22日
定価 4,500円(税抜)
配信 バーチャルコンソール(Wii/Wii U)
Wii 2006年12月2日/600Wiiポイント
※2019年1月31日配信終了
WiiU 2017年3月29日/572円(税別)
ゲームアーカイブス(PSP/PS3/PSV)
共通 2009年12月16日/572円
セーブ方式 パスワードコンティニュー
※29文字~64文字まで可変
レーティング CERO:A(全年齢対象)
※バーチャルコンソール版以降より付与
判定 スルメゲー
ゲームバランスが不安定
ポイント 徹頭徹尾ダークな世界観
仲間次第で難易度が激変
インフレしていく装備と敵の強さ
高過ぎるエンカウント率
非常に長く間違えやすいパスワード
後味の悪いエンディング
難易度に反してシステムはシンプル
色褪せない作風は今でも高評価
邪聖剣ネクロマンサーシリーズ
邪聖剣ネクロマンサー / NIGHTMARE REBORN



夜、1人では遊ばないで下さい



概要

PCエンジン初の記念すべきRPG。
ドラクエ』ライクのRPGでありながら、当時としてはあまり例のない、クトルゥフ神話をモチーフにしたダークかつホラーな世界観に徹した作風を特徴としており、「夜、一人では遊ばないで下さい」というおどろおどろしげなCMのキャッチコピーが話題となった。

シナリオは後に漫画『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』等の脚本で有名となる三条陸氏。パッケージイラストに映画『エイリアン』シリーズで有名なH・R・ギーガー氏の既存作品「Spell 3」を許諾を得たうえで使用している。ただし、PCエンジンミニに収録された際にはゲーム内タイトル画面の背景に差し替えられている。


ストーリー

「魔空王アザトース」の復活により、世界は再び闇に包まれようとしていた。
旅の勇者である主人公は、今は亡きランダメリア王・ジェイノスの遺志を継ぎ城を守る老人ギムルから二人の家来を借り受け、
「魔空王アザトース」の討伐に必要となる神々が生んだ武具「邪聖剣ネクロマンサー」を求めてランダメリア王国を発つ。


特徴

  • 覚醒の言葉システム
    • 『ドラクエ』の「復活の呪文」のようにパスワードコンティニューを採用している。
    • 使用できる言葉は名前入力と同様で「『を』以外のひらがな」「全ての濁点付きひらがな」「「ぱ・ぴ」だけの半濁点付きひらがな」「「AからY」までのアルファベット」「「ア~ト」までのカタカナ」「「ガ~ド」までのカタカナ」の合計128文字。
      • ゲーム進行に応じ、少なくとも29文字、多くて50から58文字、最大で64文字まで膨れ上がる。
  • パーティシステム
    • 「万能型の主人公」に加えて5人のうち選んだ2人の計3人でパーティを組む。
      それぞれ「攻撃魔法を得意とするライム」「補助魔法を得意とするカオス」「攻撃力と体力が高いバロン」「素早さが突出しているマイスト」「大器晩成のロミナ」
+ パーティメンバー紹介

パーティメンバーは選んだ段階で固定となり、途中で変えることは一切できない。

  • 主人公
    • ランダメリア王国で知られていた猛者*1
      魔法の種類こそ魔法使い3人には劣るが、一方で力の伸びが良い万能型。
      タイトルにもある「ネクロマンサー」を唯一装備することができ、その高い攻撃力は他のキャラの追随を許さない。
    • 主人公専用魔法である「セルス*2」は、雑魚敵が強くエンカウント率の高い本作で、無駄な消耗を避けるのに便利。
    • 使用可能な魔法に最大MPが伸び悩むのが欠点。調子に乗って使いすぎると痛い目を見るため、通常攻撃中にどうしても回復に回したい時に使わせるのがベターか。
  • ライム
    • 攻撃魔法を得意とする女性魔術師。
    • 典型的な魔法使いでMPとINTが伸びるが本作最重要ステータスである素早さの伸びが良く、範囲攻撃魔法も使えるため雑魚の殲滅に優秀。
    • レベルで効果の上がる装備が中盤に用意されている、成長のピークが最大レベルの1つ前でステータスダウンのペナルティが少ないと、 彼女を加入させないだけでやり込みに片足を突っ込む程の強キャラ。
    • 一方防御力はブービー。そして補助魔法の一部と攻略上重要な魔法である全体回復魔法の「ゼライガス」と敵1グループの素早さを下げる「イーガス」が使えないという弱点もあり、長期戦には向かない。
  • カオス
    • 豊富な回復、補助魔法が使える僧侶系魔術師。 本作における地雷キャラその1。
    • ライムが使えない「イーガス」「ゼライガス」が使える他、移動魔法、無属性魔法、雷属性魔法以外の殆どが使える魔法専門。
    • だがHPと攻撃力、防御力が最下位、さらに素早さがバロンに次いで低い事が彼の評価を落とす事に。「私がいれば死ににくくなるぞ」などと豪語するが、 実際には彼の低い素早さのせいで結果的に他の2人がとばっちりで敵の連続攻撃の嵐に晒される羽目になり、死ににくくなるどころか逆に死にやすくなってしまう。
    • カオス専用の魔法に「グフトス(敵1グループにダメージ+毒)」「ウォルズ(敵1グループに混乱)」があり状態異常付与も担当できるが、終盤になると効かない敵が多くなってしまうので、それを目当てに彼を加入させる価値があるかどうかとなると…。
  • バロン
    • 「10人力の力と不死身の身体が自慢の種」という魔法とは無縁のタンク系戦士。 本作における地雷キャラその2。
    • 攻撃力と最大HPはずば抜けて高いが素早さと賢さが最下位。そして魔法が一切使えない。
      • こと素早さは、最大レベルになっても他のキャラの中程度のレベル相当ほどしかない *3
    • 結果、中盤以降は攻撃を外しやすい上、連続攻撃の被害に遭いやすく、 その矛先を他の味方に流してしまうことも多い。
    • 素の防御力はやや高めに設定されており、鎧と盾の選択肢も多い。なのに 「兜を一切装備できない」 という欠点があり、防御面で不安がある。
    • ピークレベルが最大レベル、アイテム枠が1つ多い、足が遅いため行動順を固定出来るとデメリットをメリットに活かす運用ならば採用出来るかもしれないが、そこまでする位ならライムやマイスト、ロミナでいいじゃん…という話になってしまう。
  • マイスト
    • 通称「はやてのマイスト」と呼ばれる魔法戦士。
    • 素早さの成長から命中率と回避率の信頼度は高い。序盤から中盤にかけては凄まじいまでの雑魚殲滅能力を誇る。
      • だがしかし、この長所の素早さのステータス参照にバグがあり、255を超えると「敵の行動順決定時の素早さ」に255が加算されるため、マイストの位置を最前線に置くなどの工夫が必要となる。
      • こちらには敵の素早さが255を越えてても恩恵がないのに……。*4
    • それ以外の数値は終盤になると全体的に凡で留まってしまい、装備や魔法もそこまで多くなく、MPもあまり伸びないため先陣を切って敵を減らしてもらうことで活躍の場が広がる。
  • ロミナ
    • 主人公の助けになりたいからと旅への同行を健気に懇願する、「これと言って取り柄はありませんが」などと自虐する内気な少女。 本作における地雷キャラその3。
      • その自虐通り序盤から中盤にかけては成長率が低く、正真正銘の器用貧乏。回復やバーンの杖でのサポート位しか出来る事が無い。
      • だがその一方で Lv30から一気に成長するという典型的な大器晩成キャラ。 育てれば充分に前衛のアタッカーを任せられ、素早さも充分に確保されている。
      • 全体的には「主人公の下位互換」という印象は残るが、少なくとも中盤以降完全に戦力外になるバロンやカオスよりは余程戦力として計算出来る。
      • 最大MPは潤沢ではないが、非常に強力な魔法である「ゼライガス」と「ラミール(味方全体に魔法反射)」が使えるのは採用ポイントとして高い。特にラミールはラスボス戦で極めて重要であり、あると無いとでは大違い。

評価点

  • クトゥルフ神話をモチーフとしたホラーな世界観
    • 邦ゲーに珍しく、敵の多くにクトゥルフ神話がモチーフとして採用されている。
    • ラスボスの「魔空王アザトース」以下、配下の中ボスは「ナイアラトテップ」「ツァトゥグァ」「ハストゥール」「ヨグソトース」。また半魚人「インスマウス」などの面々も。
    • 同じ地域では平地より海辺近くの敵が強力というのもクトゥルフ神話を尊重した要素の一つだろう。
    • とは言え名前とエッセンスを拝借している程度である(キャラ性能までそのまま持って来ると、さすがにゲームにならないだろう)。
  • ダークホラーなモンスターデザイン
    • 邦ゲーらしくないグロテスクなデザインで、それらがうにょうにょと動くためホラー感満載。
      • アニメーションする余裕のない貧弱なスペックとメディア容量の中でこの演出なのだから、当時としては衝撃であったのは想像に難くない。
      • 倒された際には植物や亡霊などでも血しぶきが飛ぶという引っかかる部分はあるが。
    • ホラー且つグロテスクな演出があるにもかかわらず、のちにバーチャルコンソールで配信された際にのレーティングは「CERO:A(全年齢対象)」。ギャップの凄まじさゆえに一時騒然に。
  • 雰囲気に合うBGM。
    • ボンバーマンシリーズ』などハドソンのゲームで有名な、竹間淳氏が作曲を担当。
    • フィールドの程よい静かさからの戦闘時の恐ろしさと緊迫さ、ダンジョンの不気味さを増長する雰囲気に、隠しダンジョンの緊迫さ…と、どれをとっても必聴である。
  • 美麗なグラフィック
    • PCエンジンのグラフィックの優位性でファミコンを凌いだ。
      • フィールド上の草原、岩山の山肌、蒼く透き通った海など、いずれもPCエンジンの描画能力を十分生かしている。
    • キャラクターの頭身が高く、リアリティさがある。
  • 魔道書としての魔法
    • 魔法は魔道書を入手し所持することで初めて使用可能となる。
      • フィールド上では魔道書の受け渡しも可能。使わない魔道書を売却して枠を開けることも出来る。
    • 使用可能魔法はキャラクター毎に分かれており、一定のINTに到達していないと使用できない。
  • 後攻蘇生回復が可能
    • キャラが死んだターンに単体回復魔法やアイテムが該当キャラに付与された場合、蘇生呪文でなくとも生き返る事が出来る。
      • 失敗した場合に出るメッセージ「○○はよみがえらなかった」が、ちゃんと伏線となっている。
        雑魚戦よりもボス戦のほうが若干復活確率が高くなっている。
    • 全体魔法では出来ないため、魔道書の処分も頭を悩ませる。
  • 恐怖度の存在
    • どちらかというとTRPGの文脈だがSAN値に近しい「恐怖度」が隠しパラメータ。そのせいで難易度が高くなったが。
  • オートターゲットの採用。
    • ドラクエやFFシリーズに先駆けて採用されている。魔法や道具が空打ちになる場合は通常攻撃に切り替わる。
  • 複数回攻撃の存在
    • 攻撃側のAGL/防御側のAGL+1が4以上なら2回攻撃。6以上なら3回攻撃が可能。
    • 故に速さ自慢のマイストやAGLを2割落とす「イーガス」が重要な要素となる。
  • 道具の処理ミスに対するフォロー。
    • 道具を誤って捨ててしまった場合でも、その場で「さがす」を使うと道具を拾い直せる。
    • 重要なアイテムを捨ててしまっても、該当品をくれた人に話しかけることで回収できる。
      • 街間移動のアイテムがないので、序盤の大事なアイテムを取り戻しに最初の大陸に東奔西走する事もあるが。
  • 『邪聖剣ネクロマンサー』の設定と入手の展開
    + ネタバレあり
  • 長い旅の末、復活を遂げたネクロマンサーの攻撃力はそこまでに手に入った剣よりも弱い。
    • 神と悪魔が協力して作ったため『邪聖剣』と呼ばれているが、復活したネクロマンサーはただの『邪剣』であるため大した能力ではないが、神の祝福を受けることで『邪聖剣』として真の力を発揮し、神と悪魔が持て余したという設定にふさわしい圧倒的な攻撃力を誇るようになる。
  • 衝撃的なエンディング
    • エンディングの後味の悪さは20年経っても語り草となっているほどに非常に有名である。
+ EDのネタバレ

強大な力を持つネクロマンサーが人々の欲望を煽り新たな争いを生みかねないことを危惧した主人公は、ギムルにネクロマンサーを託し、地底深くに封印するよう言い残してランダメリア王国から去っていく。
喜びと希望に満ち溢れた明るい雰囲気でエンディングが締めくくられるのだが……。
その後、陰気な曲調のBGMと共にスタッフロールが終了した後、ブラックアウトした画面にタイトル画面に表示されている不気味な顔が現れ、神々ですら持て余したネクロマンサーという強大な力を目覚めさせた人間に対する警鐘の弁を語る。
そして、「ザッザッザッザッ……」という効果音と共に何者かが土を掘り返していることを示唆するテキストが表示され、ゲーム終了となる。

人間は欲望には勝てないと喝破する衝撃的なエンディングであった。


問題点

  • シナリオは淡白なお使いゲー。
    • 極端なゲームバランスとダークな世界観の陰に隠れがちだが、シナリオはそこまで深くはない。
    • 目的は「魔空王アザトースから世界を救う」なのだが、重要なキャラクターとの対峙も少なく街から街へとお使いをこなすぐらいでゲーム時間の8割は戦闘に費やすこととなる。
      • 唯一、主人公とは別に名高い勇者たる「ホーク」という人物がいるがそれぐらいか。
    • クトゥルフ神話の神々の対決は本当にラストのみでシナリオ面の盛り上がりは少ない。
      • 広げた風呂敷を畳んでいないということがないのが救いか。
  • パスワードが非常に長い
    • 冒頭で触れた通り、29文字から最大64文字と進行に応じて膨れていく。
      • 今でこそ写真や録画で賄えるが、手書きのメモが最善だった時代にこの量は復元ミスが起きるのも当然のことであった。
    • 道具の所持数に応じてパスワードも長くなる。
      • 単純に所持数が少なければパスワードが目に見えて短くなる上、装備品を着脱する際にアイテム所持数に応じた読み込みと思われる静止時間が入るのも、この仕様が影響しているのだろう。
    • PCエンジン最初期のソフトのため、後に発売された外部バックアップユニットに対応していない。
  • 装備品や魔法の価格が性能に見合わない
    • 装備を揃えるお金と工面するために雑魚と戦い、強いマップの街に滑り込んで装備や魔法を整えて……とした結果が街周辺の雑魚と対等に戦えるレベル。
      • 元々装備品を買い替えるほどの量や街がないという事情もあるのだが。
    • 度重なる苦労の末にようやく「ネクロマンサー」を入手できれば、一転してフィールド上の大半の雑魚は蹴散らせるようになるが、それでもラストダンジョン付近の雑魚は中々手強い。
  • 隠される強力武器の存在
    • 2番目に強力な「レジェルダー」は入手経路どころか存在に関するヒントも皆無
      事前知識がないとまず入手することはできない。これがあるか否かで大きく難易度が変わってしまうほど敵は強いのに、である。
    • HuCard版の取扱説明書に「レジェルダー」を装備している画面写真が掲載されてはいるが、当然取説が手元になければどうしようもないし、見えない通路の先がわからなければ、どのみち拾うこともままならない。
  • 仲間キャラ間の格差
    • パーティキャラクターの項目で言及したが、仲間はどれも尖った性能をしており、それが格差に直結する。
      • 組み合わせが変更出来ないことから触れ込みに誘われて選んだ挙げ句、騙されたユーザーも多いことだろう。バロン、お前のことだ。
    • 特にこだわりがなければ 「ライム+(マイストorロミナ)」 の組み合わせで進む事が定石。
      • ライムは加入させない理由が見当たらない程の優秀なキャラで、マイストは終盤は火力不足だが序盤から中盤にかけては雑魚の殲滅能力が凄まじい。ロミナは逆に序盤から中盤にかけては辛いが終盤から俄然頼りになるキャラである。
    • 一方でバロンとカオスは素早さが低く防御面でも一級品でないことからハイリスク。
    • 余談だが高橋名人はすべての組み合わせをデバッグ作業でクリアさせているため、どの組み合わせでもクリアは保証されている。余計な事を
      • いわく、最もつらかった組みあわせは「バロンとロミナ」。「ノイローゼになりそうなほど辛い旅だった」との事。
      • この組み合わせの場合、終盤における物理攻撃力「だけ」なら最強だが、中盤にかけて「攻撃を外しまくる上に敵の連続攻撃を味方に晒しまくるバロン」と「そもそも戦力外のロミナ」、「この2人を必死に介護しながら孤軍奮闘する主人公」という壮絶な罠が待ち受けている。終盤になればロミナが育つので、何とかしてそこまで辿り着ければ幾分か楽になるのだが…。
  • 成長のピークがレベル上限ではない
    • 一定ラインまではRPGとして普通に成長するが、ある地点から強くなるどころか逆にステータスが低下する
      一説には『ウィザードリィ』よろしく「老化現象を再現した」と云われている。
      • 必要な経験値が段階的に減ってレベルアップしやすくなるという前触れはあるが、そこまで疑ってプレイする人はそうはいないだろう。
    • 例外はバロン。ピークレベルが最高レベル。
      • 準じてライムとカオス、マイストはピークが後ろで神経質になるほどではない。
    • この仕様の影響を一番受けているのが、よりによって主人公とロミナ。
      • ピークレベル設定が比較的低いうえ、最高レベル62になると、レベル51のステータスと同等にまで落ち込んでしまう。
      • とはいえクリアに必要な能力値はしっかりと確保されているので、詰む事は無いが。また普通にプレイしていれば能力減退が起こる頃にはラスボス戦に到達していると思われる。
  • 見えない通路
    • 洞窟には大概隠し通路があるのだが、見た目では判断が出来ない。
      • なんと最序盤の洞窟にも用意されている徹底ぶり。
    • 大半はアイテムやGPの入った宝箱と他のRPGでも採用されているクラスの隠し方だが、牙を剥くのは最後の大陸に向かう際のタガル島。
      • その通路の存在は終盤のイベントで「魔物が壁に入っていった」と教えてくれることでわかるのだが、この通路はイベントに関連するアイテムの入った宝箱の更に奥。
      • エンカウント率の高い洞窟の中でニ段構えのミスリードを用意するのはあまりに極悪。
    • このヒントが無くとも後ろを歩いている仲間がいきなり壁にめり込む事で気がつく事もあるとはいえ、必須項目するには優しくない。
  • アイテム所持数上限の厳しさ
    • 道具は一人8個まで、魔道書は一人7冊まで。戦闘中表示枠は「どうぐ」が6枠、「まほう」は9枠。
    • よりにもよって一般アイテム、装備品、重要アイテム全部が「どうぐ」枠に集約されている。
      • なお「やくそう」などの一部道具は『ドラクエI』同様に複数持てるが4つまで。一戦一個薬草を食べるような戦闘バランスで4つは苦しい。
    • 重要アイテムが多い。
      • 序盤で手に入る「バーンの杖」は、終盤でも使う事があるが間が空くため、捨ててしまっている事も多い。泣く泣く最初の大陸に戻ることに。
      • 「バーンの杖」絡みで呪いを解くのに使う「スターサファイア」は天空城への移動にも使う。一度ならずニ度までもである。
  • 名称から判断し辛いアイテム
    • 「○○の剣」「○○ソード」や「○○の鎧」などはそのままだが、「クライトー」「ティールペルツ」「エルサーパ」と並べられるとそのジャンルが特定しづらい。
    • 魔法も使ってみないとまずわからない。説明書の説明も簡易でやや当てにならない。
    • 重要アイテムである「ごうせい」は漫画版では五芒星(ごうせい)となっており、鳳声(ほうせい)を掛けたかばん語ではなく誤表記のもよう。
  • エンカウント率が異常に高い
    • ハドソン製でも極悪な部類で平地でも画面半分は歩かせて貰えない。
      森、砂浜、ダンジョンはエンカウント率がさらに上がる。
      • 特に最悪なのが「天空城」で、戦闘後に一歩動いたらまた戦闘、といったことが当たり前のように起こる
    • ダンジョン自体は一階層かつ構造も単純だがリソースの消費が平地のそれとは比にならない。
    • シンボルのない固定エンカウントも存在する。
      • この固定戦闘は逃走すると、逃走直後にまた一からやり直すことになる。セルスを使っても同じなので必ず処理すること。
      • 一方でこれを逆手に楽に倒せるようになった固定エンカを倒し続けることも可能。
    • 戦闘でゲームのプレイ時間を水増しするのはこの時代は普通であるが、難易度の高い戦闘で延々と必要なレベル上げに従事しなければならない点が評価を落とした原因。
  • 魔物が異常に強い。
    • 敵の強さが著しいインフレを起こす。
      • マップにある橋1本が変動の目安だが、それまで余裕で戦えていたのが嘘のように苦戦する。 レベル上げ前提のゲームバランスというのは同時代のRPGでは常識ではあったが、極端すぎる。
    • 仲間の組みあわせによっては、イベントを飛ばして次の町に強引に行き、買い物をしないとまともに戦えないことも。
    • シナリオでその存在を示唆されている「ネクロマンサー」は入手して鍛えている事が前提。
      • ラスボスは異常に防御力が高く、攻撃魔法も一切通じない。真の力を解放した「ネクロマンサー」以外の物理攻撃では、本当に雀の涙ほどしかダメージを与えられない。
  • 素早さのステータスによる影響が極端
    • ハドソン製RPGの例に漏れず、素早さはこのゲームにおける最重要ステータス。
    • 反映されるのは行動順、逃亡率、物理攻撃の命中率、回避率、連続攻撃の発動回数(最大で3連撃まで)。
      • 素早さが高いと物理攻撃がほぼ必中、相手の攻撃もよく避ける、連続攻撃で与えるダメージも高い。逆もまた然りなので鈍足キャラに優しくない。
    • 魔物は魔法攻撃で連続攻撃もできる。ようやく上陸した先で全体攻撃魔法を連打されて壊滅することも珍しくない。
    • 重要過ぎるにも程がある。本作において素早さが低いバロンとカオスが地雷扱いされているのは、この為である。
      • 対策としては魔法反射効果のある「ラミール」「まよけのみず」を重ね掛けするしかない。
    • この全てを解決するのが「イーガス」という魔法。
      • 相手の素早さを最大値の2割ずつ下げ、5回重ねがけすると0になる。
      • ラスボスにも通用するため、主人公かカオスのどちらかが覚えていないと難易度が跳ね上がる。
  • 戦闘中に勝手に「味方が」逃げることがある
    • 「恐怖度」が隠しパラメーターとして採用されており、ダメージを受ける、仲間が倒されるなどで加算され、確率で戦闘中に突然逃げ出すようになってしまう。クトゥルフ神話という題材に合致してはいるが・・・。
      • 戦闘難易度が高いこの作品で、味方がやられる事も多いのに採用してはいいシステムではない。
      • 恐怖度は通称で、制作側としては「忠誠心」という認識だったようである。
    • 魔物が強いほど逃げやすく、しかもボスとの戦闘中であろうがおかまいなしに逃げ出すことも。しかし、戦闘終了後はなにごともなかったかのようにパーティに復帰する。
      • ラスボスのアザトース戦でも容赦なく逃げるようになる有様
    • 忠誠心の変動は以下の通り
      • パスワード復帰時の初期値が100、最小0で最大200の幅。
      • 忠誠心上昇:敵を倒す(+5)、勝手に逃げる(+20)、水の女神エルネリアで回復(+20)、宿屋に泊まる(+20)、治療屋(+20)、回復魔法ライル(+10)、回復魔法ゼライガス(+10)。
      • 忠誠心減少:ダメージをくらう(-2)、自分以外が死ぬ(-20)、主人公が逃げた時戦闘にいる仲間(-10)、全員逃走完了(-10)、全滅(-20)。
      • 自分以外の仲間が逃げる、自分が死ぬ、自分が手動で逃げる、蘇生屋、蘇生魔法ザリムの使用は無関係。
    • 目安として仲間が死ぬ、全滅、主人公が先に逃げるといった仲間の信頼を失わせる行為が特にマイナス。
      • よって一人に経験値を集める場合は二人を落としてレベルを上げ切ってから仲間を蘇生させると効率が良い。
  • 座標の管理設定ミス
    • 「トルース」という中盤までの強力な武器が最初の街の外れに落ちている、「トルースバグ」というものがある。
      • 宝箱はマップアドレスの座標で管理しているのだが、地上とダンジョンで共通のアドレスで管理していたことが原因。入手フラグ自体は正常のため、地上で取るとダンジョンでは空箱となる。 有名なのは名称通りの「トルース」、そして「エルサ―パ」という魔法。しかし他にも優秀な装備品の「ミゲルアーマ」「ミゲルシルド」なども拾えるためプレイヤーに有利な不具合。
      • 但し、「トルース」の入っている宝箱には鍵が掛かっているため、鍵を売っている町まで進める必要があり、ゲーム開始直後にいきなり取る事は出来ない。
    • イベントフラグもアドレスが共通らしく、洞窟のど真ん中から天空城にワープするバグも存在する。
    • これを問題点とするにはゲームの難易度が非道だが、不具合を塞がなかったということで問題点とした。

総評

色彩豊かな風景に頭身の高い人物グラフィック、独特の雰囲気を醸し出すモンスターのドットアニメーション、パッケージに採用されたH・R・ギーガー氏の描く世界観をモチーフにしたといわんばかりのホラーな世界観…。

上記の通り、当時としては斬新であり、今見ても見劣りしない要素や雰囲気を持っていたのにもかかわらず、極端なゲームバランスから起因する高難易度などから、かなり人を選ぶゲームになってしまったのが非常に勿体無い作品である。
このような難易度と世界観になったのは「高橋名人の弟子」という設定で活動していた桜田名人(当時)が企画・バランス調整に携わっていたことを後年HP上で明かした際に、「スタンダードなRPGからははずれたものにしよう」と言う形で、元々の企画段階から意図していたことによるものだった。
故にこのような事態になるのは必然だったのかもしれないが、手に取るユーザーからしてみれば、ゲームそのものが目指す方向性とゲームバランスの良し悪しは別問題なのは言うまでもない。
ただ、難易度が非常に高いのは確かな一方で、理不尽極まった運ゲーと言うような領域ではなく、しっかり攻略を行えばクリアすることは可能である。高橋名人のエピソードからも分かるように、破綻しているのではなく意図的な難度設定と言える。

後に配信された携帯アプリ版がシリーズ累計30万ダウンロードを達成し、本作発売から20年近くを経て続編が発売されるなど、現在でも熱心なファンが居ることが窺えるほどに一定の人気と知名度をもつタイトルであることがうかがえる。

インパクトある世界観を秘めているだけに、淡白なシナリオや不便な仕様といった問題点があれど、ゲームバランス云々を超えた存在感を今でも輝かせているのかもしれない。


移植版

『邪聖剣ネクロマンサー』(携帯アプリ版 2004年11月22日)

  • 全体的にゲームバランスが大幅に調整されており、精々死んで覚える程度の難易度に抑えられた。少なくとも理不尽なゲームバランスはかなり改善されている。
    • 戦闘バランスの調整、仲間の入れ替えが可能、物価が多少安く、装備可能魔法の変更、新規装備品の追加、移動魔法「ゲルニダン」で任意の町へ行けるようになったなど、遊びやすくなっている。
    • イベントや中ボスの追加により、淡白なシナリオも多少改善されている。
    • 隠し通路に目印が追加されるといった改善がおこなわれたうえ、アプリ版公式サイトでは攻略情報まで載せているというサポートぶり。
    • 逆に強すぎた面も調整されており、特にネクロマンサーが弱体化された点が大きい。また、座標の設定ミスだった道端の強力なアイテム群も、本来の場所でしか入手できなくなっている。
    • バロンが兜を装備できないのは「鎧を着込んだ大男」といった外見から考えると不可解であったが、携帯アプリ版ではその理由づけのためか「燕尾服とシルクハットで正装したマッチョ」といった感じのデザインに変更されている。バロン(男爵)という名が体を表しているとも言えるが、旅の目的を考えればネタキャラじみている。
      • バロン・マイスト・ロミナの3人については、もともと衣装がまったく同じで「緑色の鎧を着たキャラ」でしかなかったため、外見の差別化も兼ねていたと思われる。

PCエンジンmini収録版

  • こちらはバグも含めて本作の完全移植となっている。
    • PCエンジンminiの収録タイトル全てに言える事なのだが、いつでも中断セーブとロードを行う事が出来るので格段に遊びやすくなっている。

余談

  • 恐怖度(忠誠心)について
    • 高橋名人が自身のブログで恐怖度(忠誠心)について言及している
      • 高橋名人のブログの「87年の開発時には、それぞれのキャラに「忠誠心」というパラメーターがあって、例えばHPの回復などをしなければ、バトル中に逃げる事が多くなる。というのを聞いていたのですが、2009年にプログラムを解析した時、そんなパラメーターは見つからないと言われたんです。」と言う部分がその箇所。
      • 高橋名人は「もしかしたら製品版では削除されたのかもしれない」と考えたことをブログに綴っているが、実際は 2009年に『邪聖剣ネクロマンサー2』の開発スタッフが解析してみたものの特定できなかった というだけの話のようだ。
    • なおこの言及以前から、恐怖度は下げられないという誤った情報がネット上で広まっていた。
    • 逃げやすくなる行動・逃げにくく行動などある程度の定説はあったが、2020年のPCエンジンmini発売を機に調べたユーザーが居て詳細な挙動が判明した。
  • 中井貴一氏が主演したTBSのドラマ『運命の逆転 盗まれた企業秘密!』では、本作が「ドラクエ並みの超人気RPGで、3作目まで発売されている」という設定になっており、さらにこのゲームを超えるソフトが『天外魔境II 卍MARU』という設定になっている。高橋名人もちゃっかり登場している。
  • 双葉社と勁文社(ケイブンシャ)よりゲームブックが発売されている。
    • 双葉社版は『邪聖剣ネクロマンサー イシュメリアの悪夢』。同社のゲームブックではよくある現代の地球からの異世界転移もののフォーマットで進むことになるが、主人公たちは日本人ではなくスコットランド人という珍しいパターン。
      • ちなみにレーベルは「PCエンジン冒険ゲームブック」ではなく「冒険ゲームブック」となっている*5
    • 勁文社版は『邪聖剣ネクロマンサー イシュメリア魔空戦記』。ゲーム版の後日談で、長い時を経て復活したアザトースを主人公・イシュメリアの王女アーイシャが倒しに行くという設定。
      • 「アドベンチャーヒーローブックス」レーベルのNo.44となっている。

タグ:

RPG ハドソン
+ タグ編集
  • タグ:
  • RPG
  • ハドソン

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年03月15日 10:27

*1 ゲーム冒頭のランダメリア兵からもこの旨を聞くことができる

*2 戦闘中に使うとパーティキャラ全員を確実に戦闘から離脱させ、フィールドで使った場合だと一定回数分エンカウントしなくなる。

*3 バロンの最高レベルでの素早さは「65」。他のキャラであれば素早さ65は簡単に超えてしまう。

*4 「連続攻撃の回数決定時の素早さ」には影響しない為、格下の敵から連続攻撃をもらうような事態にはならない。

*5 同じようなレーベルの付与になっている作品は『ガイアの紋章 エルスリード英雄列伝』がある。