ヘクター'87

【へくたー はちじゅうなな】

ジャンル シューティング
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 ハドソン
発売日 1987年7月16日
価格 5,000円
判定 ゲームバランスが不安定
ポイント 連射パッド必須
キャラバンシューティングシリーズ


ストーリー

星暦1024年、地球に起こった第3次世界大戦は人類の遺産や記憶を焼きつくしてしまった。
その失われた過去を求めて、星暦4622年、時間旅行(タイムリープ)社の調査船団が、太古の地球へと旅立つ。
しかし、調査船のほとんどは、異様に発達したバイオメカの群れに遭遇し、追撃された――。*1
ただ一隻生きのびたノア号は、バイオメカの謎をさぐるべく、古代地球での戦闘を開始した。

(取扱説明書より)

概要

好評を博した『スターフォース』、『スターソルジャー』でFC黎明期におけるシューティングゲームのスタンダードを築き上げたハドソンによる、SF設定の世界観を持つシューティングゲーム。全6面。奇数面は縦スクロール、偶数面は横スクロールとなる。

十字キー、2ボタン(対空攻撃、対地攻撃)で操作。

自機であるノア号は、Bボタンで対空攻撃である光粒子砲、Aボタンで対地攻撃であるクラスター爆弾で攻撃する。 縦スクロールステージでは対地と対空とでヒットする対象が分かれるが、横スクロールステージでは軌道が異なるだけでどちらの攻撃もすべての敵に有効となっている。

残機制とライフ制を併用しており、敵や敵の弾に当たると減少するライフが全て無くなるか、横スクロールステージの地形に接するとミスとなり、ステージの最初に戻される。ライフはステージ内の特定キャラに攻撃(縦スクロールステージではクラスター爆弾のみ有効)を撃ち込むと放出されるリカバーカプセルを取ることで回復できる。

問題点

  • 自機の性能が基本的に低い。
    • 移動速度が遅く当たり判定も大きい。さらに、パワーアップは一切存在しない。
    • 被弾後の無敵時間も短く、しかも被弾した瞬間からわずかの間ショットが撃てなくなる時間が存在する。
  • 上述のライフ制導入との兼ね合いか、敵の攻撃頻度が完全に被弾前提で、ミスすると必ずステージ最初に戻される事もあって「死んで憶えろ」を地で行くシビアなバランスとなっている。
    • ライフこそ初期値は16と多く設定されているものの、全体的に敵の攻撃力が高く(一番低くても4ポイント食らう)数回の被弾であっという間に空になる。さらに、一部の敵に接触するとライフが満タンであってもミスになったりとかなり極端。そのくせ回復アイテムは一個につき一ポイントしか回復できないのでジリ貧になりやすい。
      • その割にはデモでは1ポイントずつのダメージでしか食らっていない。
    • しかし、ランダム要素はほぼボスの攻撃だけなので、敵の配置・攻撃を覚えて攻略パターンを構築していくパターンゲームとして考えればクリアは十分可能である。
  • 敵の耐久力も高く、連射パッドが無いと辛い。キャラバンの大会でこれまで禁止されていた連射機能付きコントローラー「ジョイカードMk-II」の使用が許可されたほどである。
  • 肝心のハイスコア要素についても、派手なボーナス得点が入るようなフィーチャーは極力抑えられ、基本通りに「できるだけ敵を多く倒す」ことを最重要視したシステムとなっているため、爽快感が薄い。
    • 前作である『スターソルジャー』が爽快感溢れる「打ちまくり、敵を次々に撃破しまくり、派手なボーナス入りまくり」テイストだっただけに、余計に比較されてしまう。
    • 高橋名人も本作の説明書において、「本作はあくまでも『戦略シューティング』であって、敵を倒す爽快感を得る物とは違う」と語っていた。しかしそんな小難しい事を素直に受け入れてくれた子供たちが、果たして何人いただろうか。
  • 横スクロールのステージでは、光粒子砲(対空)もクラスター爆弾(対地)も弾道が違うだけで公平に攻撃でき、クラスター爆弾は地面を走ることができることを考慮してか、カプセルを提供するキャラ「ナブロ」のカプセル供給は8発で1個になっている(縦スクロール面では各ステージごとに違うグラフィックの「エナジーブロンズ」というキャラにクラスター爆弾を4発撃ちこむと1個出る)。だが、そのナブロに光粒子砲とクラスター爆弾と同時に打ち込んでいると判定しきれなくなり、カプセルを出さなくなってしまう。
    • また、この「ナブロ」は体当たりダメージ17の敵キャラ扱いとなっているため、うっかりぶつかるとやられてしまう(縦スクロール面のエナジーブロンズは背景扱いで当たり判定はない)。また被弾後の無敵状態でぶつかると破壊できてしまう*2

評価点

  • シリーズ初のキャラバン用モード(2分間・5分間)が用意されている。2分モードの場合は1面のショートバージョンのみで終了。5分モードの場合は普通の1面+3面をプレイして終了となる。
  • 細かく描き込まれたグラフィックの質はFCにしてはかなり高い。
  • 国本剛章によるBGMは良曲揃い。曲数もなかなかで、テンションを盛り上げてくれる。
  • 上記の通りダメージは最低4ポイントだが、直後は無敵時間がある。また敵の体当りではそれ以上喰らうのがザラ。なので敵が密集している場合、ワザと敵の弾に当たって無敵時間を利用してガンガン体当りして得点を稼ぐという逆手に取った荒業もあり。
    • スコアアタックではこれがかなり有効で、もちろん失敗するとやられる危険も高いのである意味ギャンブル。裏を返せば連射が多少苦手でもこのような技でカバーできるのは面白い要素といえるだろう。
  • スターソルジャーに比べると普通に空中で現れるキャラに2000点や5000点の高得点が多くなり「スコアアタックが特定のボーナスばかりに依存するゲーム性」は緩和されている*3
  • 当時のウケこそ悪かったがゲーム自体の出来が悪いということはなく、どのステージもしっかりと作りこまれている。シビアな難易度を許容できるならばそれなりに楽しめるゲームではある。

総評

本作は『スターフォース』『スターソルジャー』に続く全国キャラバン認定ソフト第三弾であったが、前2作とは全く毛色の異なるゲームデザインになった。というより、難易度の高さ故に、稼ぎ以前に「まずクリアできるか」が第一目標となるプレイヤーが大半であろう。

上述の難易度の高さ故、本作は前2作と比べるととっつきが悪く、それらほどの反響は呼べなかった。
またゲーム自体の出来は良かったものの、時代がRPG全盛期に向かう中、シューティング自体が衰退期だったという時期的な不運にも見舞われてしまった。

余談

  • ボタン連射を要求するゲームの為か、Wiiなどのバーチャルコンソールで配信されているキャラバンシリーズにおいて、本作だけが配信されていない*4
  • 同年10月にPCEが発売されたこともあり、この作品以降ハドソンはファミコンでシューティングをリリースする事は無かった。
    • 同時に全国キャラバンの対象ソフトも翌年以降はPCエンジン(1988年は『パワーリーグ』)のものとなったため、ファミコンでのキャラバンは本作が最後となった。
  • 本作と同時期に、公式コントローラとして『ジョイカードMkII』の特別限定版が発売されていた。通常版のファミコンレッドの部分がブラックになっており、「HECTOR'87」のロゴがプリントされていた。性能は通常版と同じ。
  • 海外版の名称は『Starship Hector』。…自機の名前はノア号だし、そもそも宇宙船ではないのだが。
  • 高橋名人のコラムによれば本作のプログラマーの1人のあだ名が『ヘクター』でそれが由来の一つらしい。
  • 小学館から攻略本が出ているのだが、敵のデータにおいて書き洩らしやミスがいくつかある。
    • 1面にのみ出てくるホフ・ホフの書き洩らしは特に危険で、「撃破数4 ダメージ4 1000点」とあるがこのステータス通りなのは中盤の森の前に出る体当たりしてくる2体だけで、その他の体当たりせずにジグザグに降りてくるだけのやつは「撃破数4 ダメージ16 2000点」と別物になっていることが書かれていない。このせいでホフ・ホフは邪魔なら体当たりで押し通れると誤認してしまいやすい。
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  • ハドソン
  • キャラバンシューティング

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最終更新:2023年12月21日 00:04

*1 おそらく「撃墜」の誤りではないかと推測される。

*2 破壊不可とされているが実際には256発で破壊できる(爆発のエフェクトがなく静かに消える)。しかもどちらで破壊しても0点。

*3 『スターソルジャー』による名人対決の映画『GAME KING 高橋名人VS毛利名人 激突!大決戦』では実況を務めた声優の飛田展男が「トルードは1個400点の高得点キャラだ!」と、たかだか400点如きを高得点と言ったほど。

*4 厳密に言うとスターフォースもハドソン名義のFC版は配信されていないが、テーカン(現・コーエーテクモゲームス)が開発したAC版は配信されている。恐らくコーエーテクモゲームスとの権利関係の問題からだと思われる。