ゴルゴ13 第一章 神々の黄昏

【ごるごさーてぃーん だいいっしょう かみがみのたそがれ】

ジャンル アクション
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 ビック東海
発売日 1988年3月26日
定価 5,700円(税別)
判定 ゲームバランスが不安定
バカゲー
ポイント ストーリーやセリフ回しは本格的にゴルゴ
でもこんなのゴルゴじゃない
明らかにスーパー系の内容
無駄に頑張っているカラオケとお色気シーン
かなりの高難易度
狙撃手のくせにしゃがんで撃てない仕様
BGMは絶妙
ゴルゴ13シリーズ

用件を聞こう……



Part1 概要

言わずと知れた名作劇画『ゴルゴ13』のゲーム化作品。
プロデュースを、作者である「さいとう たかを」氏本人が担当している(スタッフロール参照)。
超A級スナイパー・ゴルゴ13ことデューク東郷を操り、世界征服を企む組織の陰謀に立ち向かっていく。

そのストーリーはまさしく『ゴルゴ13』の名を冠するに相応しい重厚な内容なのだが、ゲーム性自体は通常のゲームの斜め上を行く要素ばかりで構成された「ビック東海らしい変なゲーム」になってしまっている。


Part2 問題点

基本的にはオーソドックスなサイドビューアクションである。ゴルゴを操作し、ジャンプや銃撃などのアクションを駆使して進んでいく。敵を倒すとライフや銃弾を得ることができるが、倒した敵は何故か爆発する

ステージは全部で13章あり、それぞれに英語の副題が付けられている。有名な映画や小説の題から取られた名前も。

  • 癖があり厳しい操作性。
    • ゴルゴは決して走ろうとしないため、移動速度が遅い。
    • ビルを軽々と飛び越すほどの跳躍力を持つにもかかわらず、左右方向への移動力は小さい。また頂点に達する速度が速いため高さの調節も難しい。
    • 銃は空中やしゃがみ状態では撃てず、撃ったときの硬直も大きいと、非常に使いづらい。拳銃でも驚異的な早撃ち、動体射撃を見せるゴルゴの技とは思えない*1。さらに、ゲーム開始時は弾を一発も持っていないそんなんでよくスナイパーが勤まるな…?
      • 一応、原作では『アクシデンタル』『黄金の男』等、市街地にいる際でも日本やコロンビアなど銃規制が厳しい土地では銃を持っていないことも珍しくはない。だが開始地点の場所はテーゲル空港(ドイツの首都ベルリン)であり、銃を持っていないのは考えにくい。…というか弾を入手すれば撃てるので 弾がないだけで銃は持ってきている。 いよいよもってマヌケである
    • 愛銃であるアーマライトM16はイベントで入手できるが 普段は全く使うことができない。 ラスボスを倒したあとに狙撃するためだけに用いる。普段から使えばもっとまともに戦えただろうに…
      • こちらも原作のアーマライトM16は狙撃にも乱戦にも使えるように高度に改良された愛銃で、奪われて取り戻せそうにない場合は解析される前に破壊を検討するレベルなのだが、だからといってこれでなければ狙撃ができないと言うことはなく他の狙撃銃を調達して狙撃した例も珍しくない。つまりアーマライトを奪還するために拳銃だけで敵のアジトへ無理に突っ込むくらいなら一度他の銃火器を入手するのが原作のゴルゴに近い。
    • 敵はしゃがみながら銃を撃ってきたり、バイクに乗って跳ね回りながら突っ込んできたりするため、なかなか銃弾を当てられず、一方的にやられることも珍しくない。攻撃手段はタイミングを合わせたジャンプキックが中心になる。仮面ライダーのゲームじゃないんだから。
      • なおこのキック、タイミングさえ合っていれば銃弾を蹴落とせる。その際弾は敵キャラ同様爆発する。
  • 特定の場所に来ると突然銃撃のエフェクトが入り、主観視点でのガンシューティングが始まる。敵を倒したときのライフ回復量が大きいので難しくはないが、いきなり襲撃されるゴルゴは間抜けとしかいいようがない。しかも、戦闘機や潜水艦、果ては戦車や飛んできたミサイルですら拳銃で撃ち落とすそれはどちらかといえばシティーハンターのノリじゃないのか…?ライフルでヘリを撃墜したことはあるが…。
    • ゴルゴを倒すべく、街中で攻撃ヘリや戦闘員を投入してくる敵。まるで戦場である。こういうのもゴルゴではなくルパン三世や007のノリだろう。
    • ゴルゴの世界においてこのような周りの目を気にせずに襲撃が行われることは少ない。原作にて市街地でゴルゴに大規模な襲撃をしかけた人物と言えば『カリフォルニア軍団』のモランド大佐が筆頭だが、彼は一般人を巻き込まないように気を払っており、襲撃地点を人気のない所にして、手投げ弾を使用することすら渋っていた。
      • 早い話、このような派手な戦闘が頻発するのはゴルゴのノリではない。
  • ラスボスもこの主観ステージである。敵はヒトラーの脳とクローン軍団であるが、クローンは倒しても生首になって襲いかかってくる。
  • 地上ステージだけでなく、空中ステージや水中ステージも登場する。上下左右に動き、弾をばら撒いてくる敵に対し、水平方向にしか弾を撃てない点は地上面と変わっていない。ガンシューティングが突然始まる点も同じ。
    • 空中面では自機がヘリなのに対し、戦闘機や重爆撃機まで投入してくる。周囲に光球を回転させている謎の敵もいる。いくらなんでもやりすぎではないだろうか。なお、自機は進行方向にしか弾を撃てない。
    • 水中面は上下左右に動けるため、迷路のような構造になっている。サンゴが敵キャラ扱いになっているなどおかしな点もある。
      • 水中では移動時の横泳ぎとは別に静止時の立ち泳ぎのモーションが用意されており手が込んでいるが、これがかえって邪魔。見た目通りに食らい判定が横長・縦長で切り替わってしまうため、上述のサンゴの上で一時停止したらゴルゴが急に足を下におろして立ち泳ぎ姿勢になり、足がサンゴに突っ込んで1ミス…なんて事が頻発する。
  • ゲームが進むと3D迷路ステージが登場する。シャッターを手榴弾で爆破する、敵との銃撃戦などの独自要素が盛り込まれている。敵が現れた場合は、素早く照準を合わせて撃たないと撃たれてダメージ。ダミーのフロアがあったり、大ダメージのレーザートラップが仕掛けられていたりと、やはり難易度は高い。
    • なおレーザートラップは「ゴーグル」を取得すると見えるようになり、避けて進むタイミングを図れる…という体だが はっきり言って見えててもまったく避けられないし、完全乱数でパターンもない。 なのに「見えてるなら避けれるよね」ということを前提にした設計の箇所がある。
    • ダンジョンステージのボスキャラとして原作・アニメにも登場した有名なライバルキャラ、スパルタカスが登場しているが、キャラはあまり似ていない。しかも一発撃てば死ぬ。人間なので当然といえばそうなのだが…。偽ゴルゴとの戦いもあるが、スパルタカスの色を変えただけ。しかしダンジョンステージではこいつに限り3回ダメージを与えないと倒せない特性がある。
      • しかもこのスパルタカス 緑のゴリラ ともいうべき異様な顔グラフィックをしており 「あんたをころすためにやとわれたスナイパーだ。おれのサブマシンガンにかてるかな。。。フフフ」 というツッコミどころ満載なセリフを吐く。
    • 非情に凶悪な難易度をしているのが「リオデジャネイロ」の3D迷路。今までの迷路の3倍はあろうかという広さ。数多く設置された落とし穴トラップ。前述のレーザートラップ3連続抜け(失敗すると体力MAXでも死亡)など完璧なマッピングをしてなおクリアが難関というとんでもないステージ。
  • ゴルゴの代名詞、狙撃シーンはゲーム全編通して2回しかない。うち1回はラストバトルのイベント的なもので、ゲームとして楽しめるのは序盤の1回だけ。
    • しかも画面を左にスクロールする事でズームインが行われて狙撃が可能になるという初見殺しあり(画面に説明書きはあるが英語表記
    • 狙撃シーンではゴルゴの目が光るカットインが挿入される。この絵の質はとても良い。
  • 序盤のあるステージで「緑の館に行け」というヒントが出される。しかし周辺の建物は全て緑色
  • 横スクロールステージは特定場所で十字キー上を押すことでステージ移動するのだが、 アマゾンステージでは背景が全て木でできていて移動場所が全く見分けられない。 広いステージを総当りさせられる始末。
  • 後述もするが、 こんな超難易度なのにセーブもないし、コンテニューは回数制限がある。 さらにゲーム内容自体はかなり長い…大多数の人は半分もクリアできないうちにコンティニューが尽きてしまうだろう。

Part3 バカゲー要素・評価点

  • このゲームのコンティニュー方式は非常に独特である。
    • ゲームオーバーになると「つづく」と表示され、次回予告のテロップが表示された後タイトル画面に戻される。そのままスタートすればコンティニューとなるが、そのたびに、ゲームスタート前は「㐧1回」だったタイトル画面の回数(話数)表示がひとつずつ増えていく。
    • 50回コンティニューしたあとの㐧52回が「最終回」になり、ここでゲームオーバーになると「完」と表示され、タイトル画面の表示が「㐧1回」に戻る。こうなると再スタートしてもコンティニューとならず、最初からやり直しになってしまう。
    • 完結していない原作への配慮と、テレビ放送のパロディの併せ技であろうか。週1回、1年放送すると50~52話になる。ちなみに2008年に公開された『ゴルゴ13』のアニメは全50話だった。
      • 基本的にアニメやドラマは、13週をひとつの単位(=「1クール」)として扱う業界的な慣習があるため。ただし、長期の放映である場合は途中で特番などが挟まるケースがあり、必ず13週単位でピッタリ収まるとは限らない。
    • なお、時代的に仕方がないとは言えセーブ機能はない*2
    • 余談だが、「52」は13の倍数である(13×4=52)。この事はゲームラボ最終回のトリビアに掲載されていた。
      • そもそも上に書いたように1クールが13と言う所から計算しているので、何クールを再現しても13の倍数になるのは当たり前だが。
    • ちなみに原作は、2020年(第600話)に連載52年目にしてはじめて休載した(新型ウイルスの影響)。
  • ファミコン史上に残るお色気シーンの存在。
    • 原作でも様々な女性と交わってきたゴルゴであるからして、本作でも2度ほど濡れ場がある。その際にファミコン画質とはいえ脱衣、下着姿が表示される。
    • この脱衣シーンは「おとなはそのまま こどもはBボタン」という有名な台詞どおり、Bボタンを押せばスキップできる。
    • Bボタンを押しても押さなくても、ホテルの窓を遠くから見た画面で、ゴルゴと女の抱き合うシルエットが表示され、部屋の明かりが消える。そしてその後、なんとライフが全回復する。……それはむしろ減るのではないだろうか。
      • 特定の場所に落ちている煙草を吸っても全回復する。
  • 謎のテーマソング。
    • オープニングのBGMにもなっている曲はゲーム自体の内容も相まって強烈なインパクトを残している。
    • デンデデンデンデーン」というイントロが非常に印象的であるが、何よりも恐ろしいのはポーズ画面がこの曲のカラオケモードになっていることだろう。
    • 曲自体はハードボイルドな歌詞もぴったり合っており非常に良い出来なのだが、ポーズするたびに歌うプレイヤーは果たしていたのだろうか。また、この画面を抜けるまでゴルゴが睨みつけてくる。
      • さらに驚くべき事に、歌詞が表示されている間に2コンのマイクで歌うと採点してくれる機能までついている。他にもっと力を入れるべき場所があるのでは?
    • 歌詞の締めに持ってきているだけあり、中盤で敵に奪われたアーマライトM16を奪還するとBGMがテーマソングに変わる。同時に体力と弾が全回復するボーナスがある。
  • 会話シーンではボタンを押すまでゴルゴが画面手前を向いている。プレイヤーに「俺の背後に立つな」と無言の圧力をかけているのかもしれない。

Part4 結論

多彩なステージとミニゲーム的なシチュエーションが盛り込まれているが、いずれも難易度が高く、超A級のテクニックが要求される。

原作の対象年齢からして子供向けではなく大人向けのソフトを狙ったものだろうが、純粋なゲームとしてみた場合には高すぎる難易度や厳しい操作性などの難点があり、キャラゲーとしてみた場合もゴルゴ13を象徴する「狙撃」という要素がゲーム中に乏しい。その他のゲーム全体を構成する要素に関しても欲張りすぎてまとまりがなくなった結果、微妙になってしまった節があり、惜しくも名作に昇華されるまでには至らなかった。

だが、妙なところに力が入っていて怪しい魅力があるのも確かで、原作の知名度も手伝ってか、ネットで本作に言及した記事が見受けられたり、テーマソングのアレンジ動画を投稿するものがいたりと、それなりに本作を愛好するプレイヤーも多いようである。


Part5 余談

  • 本作は特に海外でのセールスが非常に好調*3であったため、それを受けて続編『ゴルゴ13 第2章 イカロスの謎』が1990年7月27日に発売された。
    • グラフィックが格段に良くなっており、しゃがみ中も銃が撃てるなどいくつかの欠点が改良された。
      • しかし高い難易度や、3D迷路などは健在。カラオケモードは無くなってしまったが、テーマソング自体は受け継がれている。お色気シーンはシルエットのみになった。
  • ゴルゴ13は1998年にOVA版が発売され、2008年にテレビアニメ化されたが、本作のテーマソングは使われなかった。このことに落胆したファンもいたようである。
  • 最終面でコンティニューすると再開がステージ12になる。またパカパカ(背景色を激しく点滅させる/していること)が多いので(特に3D迷路シーンで顕著)注意。
  • 裏技として面セレクトが使用可能。
  • リイド社から攻略本も発売されている。「これでキミはゴルゴ13になれる」とあるがこの作品をやり込んでもゴルゴ13にはなれないだろう。こっちならともかく…。
  • 原作でもナチスとネオナチを題材としたエピソードはいくつかある。ヒトラーのクローンを誕生させる計画をゴルゴが阻止するというこのゲームに近い話もかなり後になって発表された。

E N D

《1988年 ファミリーコンピュータ作品》

+ カラオケモードの動画と歌詞

(1番)

けもの 狙う 非じょうの さが

奴らを やるのは だれの だれの ためでも ない

牙を むいて いのち 光る

奴らに ささげる くろく あかい 死の レクイエム

オレを しんじる 奴が いる

オレの 狙う マトがある

オレの しんじる ジュウがある

アーマライト が…

(2番)

いきを ころす 非じょうの ワナ

しじまを かきけす 奴の 奴の みけん とらえ

かぜを まとい やみに 光る

奴らを とむらう くろく あかい 死の レクイエム

オレを しんじる 奴が いる

オレの 狙う マトがある

オレの しんじる ジュウがある

アーマライト が…

(3番)

神に いどむ 非じょうの さが

せいぎの ためでも 平和 ねがう ためでも ない

丘に きざむ 十字 光る

あくま も ふるえる くろく あかい 死の レクイエム

オレを しんじる 奴が いる

オレの 狙う マトがある

オレの しんじる ジュウがある

アーマライト が…


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最終更新:2023年02月01日 20:49

*1 作中ではビルから降下しながら一瞬だけ窓に映る標的を撃ち抜いたりしていたのだが。

*2 裏技になるが、ステージセレクトなら可能

*3 海外版の初期ロット3万本が1週間もしないうちに完売、1カ月後に出荷した第2ロットの3万本もすぐに完売。最終的には25万本近くの売り上げを叩きだし、全米ヒットチャート第2位を記録している。