注意:本稿では、『ヘビーバレル』のAC版・FC版双方を扱います。判定は両機種共「ゲームバランスが不安定」に指定されていますが、それぞれの不安定要素のベクトルが異なります。



ヘビーバレル (AC)

【へびーばれる】

ジャンル アクションシューティング
対応機種 アーケード
発売・開発元 データイースト
稼動開始日 1987年
判定 ゲームバランスが不安定
ポイント 制限時間短すぎ
ジェットパック兵の自機重なりバグ
巨大クレーン強すぎ
アーケードゲーム史上最強の赤ヘリ
ラスボス固すぎ→制限時間が(ry&俺(プレイヤー)たちの怒りは頂点に達した!

概要(AC)

  • データイーストがSNKより『』のライセンスを取得し製作した、『怒』の公式改造のようなゲーム。
    • 全7面。2人同時プレイが可能。「ショット」と「手榴弾」という基本ゲームシステムや全体的な展開などはやはり『怒』や『バトルフィールド』などに準じているが、赤兵が落とす「鍵」を消費して武器箱を開けてパワーアップアイテムを得るという変わったシステムが追加された。

評価点(AC)

  • 「ヘビーバレル」による撃ちまくりのカタルシス。
    • 各地の武器箱に隠されたパーツを6つ集めると、ザコだろうがボスだろうが一撃で倒す巨大弾を連射可能な3mはある巨大な銃「超絶的最終・最強兵器 ヘビーバレル」(正式名称)が1分近く撃ち放題になる。
    • この極端すぎる一定時間のカタルシスは1987年当時までのゲームでは前代未聞ともいえる豪快な要素であり、当時のアーケードゲーマーに絶大なインパクトを残した武器であったともいえる。
    • この作品より後々…格闘ゲームの「超必殺技」や、例えば怒首領蜂大往生の「ハイパー」など、凄まじい一発逆転の要素が存在するアクションゲームやシューティングゲームなどが数々発売されるが、本作がその先駆者であったと言ってもよい。自由な発想・自由な味付けが持ち味だったデコには先見の明があったのではないだろうか。
  • 変に癖のある日本語ボイス
    • アーケードのデコゲーといえば、『ウルフファング 空牙2001』や『ファイターズヒストリー』といった外国語によるボイス演出をウリにしているが、本作は何と全編デコ社員による日本語ボイスというACのデコゲーにしては珍しい構成。
    • しかも、各種ボイスもゲーム開始時の「ごー!」、アイテムを取得すると「よぉし!」、自機がやられると「うわぁ!」、ヘビーバレルのパーツを取得する度に「ワン」「ツー」、そしてヘビーバレル完成後の「へウ゛ィィィィィバレェル!!」と妙に味がある。このため本作の主人公はある意味では溝口誠の先祖とも言えるだろう。
    • ちなみに海外版のボイスはいつものデコゲーと同じく外国語が中心の構成なので、「デコゲーは英語が至高なんじゃ!」と思う熱烈なデコファンは海外版をプレーするべし。

(ゲームバランス的な意味で)呪われし「怒」の系譜

  • 『怒』や『バトルフィールド』同様爽快感はかなりのものなのだが、本作「」ゲームバランス上の重大な欠陥が目立つ内容であった。
    • 実は『怒』→『バトルフィールド』→『ヘビーバレル』→『怒号層圏』、果ては移植版のファミコン版『』(マイクロニクスによるアレンジ移植)『怒II』(こちらもマイクロニクスによる怒号層圏のアレンジ移植)、ファミコン版『ヘビーバレル(デコが移植…本記事下部にて解説)』にまでも共通してしまっている。
      • 『怒』直系の作品は基本的にどれも爽快感があるものの、機種が違おうが時期が違おうが開発会社が違おうが例外なくゲームバランス上の重大な欠陥が必ずいくつもあるという犬神家もかくやの呪われようの悲痛な作品群であったと言わざるを得ないだろう。
    • 以下、本作『ヘビーバレル』の問題点に迫る。

問題点(AC)

制限時間

  • 本作はタイムオーバーになると、伝統の「赤手榴弾」が画面下外からひっきりなしに多量に飛んでくるため事実上ミス確定となる基本システムが存在している。
    • …のだが、実際はミスして復活しても一度赤手榴弾モードになるとステージクリアしない限り永遠に赤手榴弾モードが解除されず事実上「タイムオーバーになるとゲームオーバー確定」になる。おそらく設定ミスと思われる。
    • それだけならまだ「厳しい仕様」で済むが、なんとその肝心の制限時間が短すぎる上残り時間が不可視。「怒」の様に警戒しながら進めば、容赦ない強制ゲームオーバーの洗礼が待っている。あまりにも厳しすぎる。

ジェットパック兵

  • 自機のまわりで一定距離を保ち、倒さない限りいつまでもまとわりつくザコ敵。多くの面に登場する。
    • なのだが、運が悪いと「自機に重なった状態」をいつまでも保つバグ挙動でこちらをゲームオーバー確定に追いやる。
  • ジェットパック兵には他の敵同様接触判定がある上、本作では敵に触れるとミス。自機が触れた敵も倒れてはくれない。しかもミスした自機はミスした座標でそのまま初期装備で復活する。そして、ミス復活後の自機は数秒間無敵だが攻撃判定を持っていない。
    • 前述の仕様に加えて、自機の初期状態の攻撃手段(通常ショットと小さな手榴弾)攻撃判定は自機のかなり前方から発生する。つまり、「一度完全に自機に重なってしまったジェットパック兵を始末する手段は存在しない=重なられた瞬間ゲームオーバー確定」である。

巨大クレーン(2面ボス・6面中ボス)

  • 狭い足場、あまり速くない自機の移動速度、あまり長くない自機の攻撃のリーチ。無茶な接近を強要する条件下で「極太レーザー」に等しい高速のアーム伸ばし攻撃をほぼノーモーションで繰りだす(一応、一瞬だけ動きを止める)。
  • しかも攻撃判定がアームの見た目より広い詐欺判定持ちな上、横移動速度が恐ろしく速い上、耐久力も高い。序盤からいきなり極悪なボスである。もちろん、その強さは本作屈指。
    • なお、このボスは6面で2機同時に再戦することとなるためその難度は未プレイ者も推して知るべし。

赤ヘリ2機(4面ボス)

  • アクションゲームやシューティングゲームの赤ヘリは『プラスアルファ』や『ゲーム天国』のプーペラ、『ツインコブラ』の1P、『メタルスラッグX』3面のPRショーブ(赤)、『ケツイ~絆地獄たち~』のティーゲルシュベルト(Aタイプ自機)、『UNDER DEFEAT』の1P…などなど、敵だろうが味方だろうがとにかくやたら強いと相場が決まっている。しかし、本作の赤ヘリは想像を絶する強さだった。
  • 見た目は青いザコヘリの色違い(青ヘリはのろのろ一方向に飛びながらザコ兵と同じ銃弾をちょこっと連射するだけ)。だが、その強さは別次元に達している。
  • このボスは高速で画面中をふらふら飛び回りながら、所かまわず「戦車砲を薙ぎ払うように5連射する」という極悪な攻撃手段を持つ。戦車の主砲を連射できるヘリを開発するとは、さすがヘビーバレルを作り上げた組織である。
    • 戦車砲は爆風による攻撃判定も弾そのものの判定も見た目以上に大きく単発でもそこそこ脅威。それを2機左右挟み撃ちで位置取りがフリーダム、しかもそれぞれが至近距離からでも遠距離からでも乱射してくる。つまり戦車砲5連射は基本的には回避不能。
    • さらに、赤ヘリ戦では足場の横幅が非常に狭いため都合良く大きく避ける事は不可能。前述の戦車砲乱射により細かい避けも不可能。
  • 耐久力もしっかり他のボスに引けをとらない高さという理不尽そのものの強さ。
  • 繰り返すが、赤ヘリの攻撃を避ける事は基本的に不可能。しかもその耐久力の高さから、ミス後の初期装備で残機押しで勝とうにも残機がまず足りない。ヘビーバレルを持ち込めるよう調整して出現と同時に2機とも始末しない限りゲームオーバーが待っている。かの有名な「死ぬがよい」を通り越して、ヘビーバレル無しで戦闘開始すれば「死んだ」としか言いようのないバランス調整放棄ボスである。

やたら固いラスボス

  • 非常に固い。
  • しかも、足場は画面下4分の1程度の狭い範囲のみ。
    • 赤ヘリ同様ヘビーバレルで出現と同時に始末しないと制限時間切れでゲームオーバーになる可能性大。

総評(AC)

『怒』と差別化されたゲームシステムや妙に愛着のある社員ボイスについては良いものの、シビアな制限時間や厄介な敵の存在から人気を得ることなくマイナーゲーに沈んでいった一作。


移植(AC)

  • 一応、アーケードやファミコンのデコゲーやテクノスジャパン、カルチャーブレーンのゲームを収録したハード『ジェネレーション3』にAC版が収録されているが、海外版での収録の為、国内版に愛着のあるプレイヤーは注意。
    • ゲーム的には国内版と殆ど変わりないが、タイトル画面でメーカー名が『DATAEAST USA』名義になっているのと、先述の通り音声がネイティブな英語になっている点。

ヘビーバレル (FC)

ジャンル アクションシューティング
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売・開発元 データイースト
発売日 1990年3月2日
定価 5,800円(税別)
判定 ゲームバランスが不安定
ポイント ヘビーバレル涙目
赤手榴弾と火炎放射器が間違った性能に
滑る自機
一部武器アイテムが識別不能

概要 (FC)

  • 業務用のファミコン移植版。
  • 十字キーでプレイヤーの操作、Bで銃を撃ち、Aで手榴弾を投げる。
  • FCへ移植されるに当たり、鍵無しで入手可能なアイテムは廃止され、全てのアイテムが鍵付きの武器箱から入手する方式に変更された。

問題点 (FC)

ぶっ壊れ性能に変貌してしまった「赤手榴弾」と「火炎放射器」

  • 本作がウリにしていたのは、業務用同様パーツを6つ集めるとザコだろうがボスだろうが一撃で撃破する巨大銃「超絶的最終・最強兵器 ヘビーバレル」(正式名称)を1分ほど撃ち放題になる…という当時までのゲームでは前代未聞のカタルシス。
  • なのだが、各ステージのそこら中でいくらでも入手できる「赤手榴弾(初期弾数40発)」と「火炎放射器(初期弾数90発)」にまでヘビーバレル並の攻撃力があるという致命的な調整ミス。
    • ヘビーバレルの存在感もぶち壊しなうえ、そもそも全てのボスが「出現と同時に赤手榴弾2発と火炎放射器の炎を重ねておく」事で攻撃を繰り出す様を拝むことなく撃破できてしまい、あまりにも低難度が過ぎる。

等速直線運動で数ドット滑る自機

  • ゲームバランス面とは少し違う話であるが、移動が地味にすごく変。十字キーの入力を止めてから8ドットほど強制的に等速直線運動で滑るように勝手に歩行する。これもプログラムミスなのだろうか。
  • ちなみに、同じくデコの業務用『コブラコマンド』もほぼ同じ重大な移動仕様ミスが存在している。(ファミコン版では直っている)

一部アイテムが区別不可能

  • 手榴弾と赤手榴弾のアイテムのグラフィック、ショットガンと火炎放射器のアイテムのグラフィックがなぜか完全に同一である。色も同じ。おそらく設定ミス。
  • 配置アイテムは固定なので、どうしても欲しくないアイテムがある場合は配置を覚えるしかない。

エンディングが簡素過ぎ

  • エンディングは真っ暗な画面にお褒めのメッセージ(英語)が表示され、それが流れてスタッフロール、最後に「THE END」。味気ない。

評価点 (FC)

  • ファミコン後期に発売されたゲームらしく、グラフィック・音楽共にクオリティが高い。

賛否両論点(FC)

  • ゲーム性の変更
    • 業務用ではループレバーを採用したゲーム性であったが、ファミコンに移植されるに当たってよくある『戦場の狼』タイプのゲーム変化を遂げている。
    • この点は先に発売された『ゲバラ』でも同様でもあり、ファミコンではループレバー操作の再現が難しい事から妥当な点ではあるが、業務用の操作がオミットさせられた事は残念に思うプレイヤーも少なくは無い。

総評 (FC)

業務用の雰囲気は頑張って表現できてはいる。
しかし業務用とは真逆の「ゲームが極端なヌルゲーになる」方向と、「操作が不快になる」方向で問題が浮かびあがっている。


余談

  • 本作は後発のデータイースト作品にも色々と影響を与えている部分が多い。
    • ヘビーバレルのシステムは『シークレットエージェント』のゴールデンガンに転用され、パワーアップアイテムの一部は『ミッドナイトレジスタンス』で採用されている。
  • 概要の方で『怒』の公式改造のような作品と記述されているが、実際に『怒』基板を解析し、更にとんでもない事にプログラムソースの一部を盗用してSNKから文字通りられるという情けないエピソードがある。

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最終更新:2021年03月21日 16:39