School Days L×H

【すくーるでいず えるあんどえいち】

ジャンル フルアニメーションADV

対応機種 プレイステーション2
発売元 ガンホー・ワークス
開発元 ガイズウェア
レジスタ
発売日 2008年1月17日
定価 6,800円(通常版)
9,800円(限定版)
レーティング CERO:C(15才以上対象)
判定 劣化ゲー
ポイント 規制による致命的な演出不足と矛盾
原作の魅力台無し&ファン激怒の追加ED
初回限定版特典が本編
原作側が事実上の黒歴史認定
Daysシリーズ


概要

アダルトゲームとしては非常に珍しいフルアニメーションであることに加え、アドベンチャーゲームとしては類を見ない程の超絶修羅場とBADENDで「Overflow」を一躍有名ブランドに押し上げた『School Days』。(以下スクイズ)
本作は、この作品のPS2移植である。なお、副題の『L×H』の意味は『L』がLove(愛情)で『H』がHate(憎悪)に相当する。
意図的に原作以上の主人公や展開にし、最終話の放映自粛に加えて「Nice boat.」で視聴者に強烈な印象を残していったアニメ放映から約4ヵ月後に発売された。

Win版とは違い18歳未満がプレイできる上に、追加EDが存在することが公表されていた事により、原作ファンやアニメからの新規層の期待は非常に大きかった。
特に追加EDへの期待は非常に大きく、グランドエンドや逆に新たなBADENDの追加を待ちわびる人もいた。
中でも、人気ナンバーワンのヒロイン「桂 言葉」はPC版においては不遇な扱いを受けており、アニメにおいては出番、演出等では優遇されていたものの結末から言えば不幸の極みであったこともあり、彼女のファンは他のキャラのファン以上にハッピーエンドの追加を強く求めていた。

同時に、PS2への移植に伴い作品の肝である性的描写と暴力描写が削除されたり、展開に修正が掛かることも予想されていた。
しかし、それでも作品をプレイ可能になる層が大幅に増えることは歓迎されており、需要は非常に高かった。


問題点

  • 性的描写、暴力描写の規制によって演出不足となり、話の辻褄が合わなくなった。
    • 性交渉のシーンはキスに置き換えられていることもあり、「キスをしたと思ったら妊娠していた」などという展開が発生してしまう。
    • また、原作において非常に有名なBADENDである「鮮血の結末」は大量出血描写が完全に削除されているため、「貧血の結末」と揶揄されてしまった。
      • このEDでの凶器は今でこそ有名だが、本来なら凶器として用いられる事は無い、そもそも殺傷自体困難と断言できる物であり、前知識無しでプレイした場合には死因が全く理解できないものと思われる。
    • パッケージを見ると暴力、グロテスクシーンへの警告を示すマークが付けられているが、実は全然大したことはない。ごく一部で血が少し出る程度。
    • 規制される部分のみを修正して結末を修正しなかった結果、過程と結末がつながらなくなってしまったのである。
  • Win版はバグ修正済みの「リニューアルパッケージ版」が2005年7月24日に発売されているが、リニューアル版では修正済みである「芋弁当」などが修正されていない。
  • 本作を制作するに当たって収録された新規収録ボイスに異常があり、同一人物の声とは思えないものになっている。
    • 収録環境に問題があったらしく、ピッチを変えると本来のボイスに戻るとの事。
    • 「同一人物」としているが、これはWin版の声優と本作(及びアニメ版)の声優が俗に「魂の双子」「生き別れの兄弟(姉妹)」などと呼ばれる関係であるため。つまり、そういうことである*1
  • ED6つに加えて後日談1つが追加されているが、そのいずれもがBADENDとなっている。
    • BADENDの内容自体にも問題点が非常に多く、その約半数がGOODENDからの派生による蛇足BADENDである事が批判の的となった。
      • 原作でのGOODENDには人間関係の問題が解決していないものがいくつか見られるが、その後の展開についてはほとんど触れていない。GOODENDはあくまでGOODENDである。
    • 6つの追加EDの内「電車による轢殺ED」が3種類存在するためワンパターンであると言う批判が多い。
      • 轢殺EDの構想自体は原作の時点で存在した(実際に動画も存在するが没になった)が、いくらなんでもここまで多いと食傷気味である。
    • それだけならまだしも、キャラを正しく把握していないとしか思えないEDが存在する。

最悪の後日談

  • PC版から存在するBADEND「我が子へ」の後日談として「愚行の果てに」が追加。
    • 本来のEDでは、メインヒロインの1人である「西園寺 世界」に主人公の「伊藤 誠」が殺害されるが、ダブルヒロインである言葉、世界の両名が誠の子供を妊娠しているという結末。
  • この後日談では2人が孕んでいた子供の父親が、誠の友人でありルート次第では強姦魔と化す「澤永 泰介」であったことが判明する。
    • しかし、彼が2人と性交渉を行った事を思わせる描写、会話等は全く存在せず辻褄が合わない。
    • 彼女らの子供の姿が見られるが顔は見えず、後姿は泰介を髣髴とさせる容姿。
      • 会話内容から察するに泰介が言葉と世界を強姦したと思われるが、前述の通りそのような事件が起こったとは全く分からない。
    • そもそも泰介によって言葉が手篭めにされるルートは原作において最も嫌われているルートの1つであり、ファンからしてみれば言葉が泰介の子供を孕まされるなど悪夢でしかない。世界ファンから見ても同様である。
    • 他のEDは度々擁護されたが、このEDは矛盾点があまりにも酷過ぎる上にファンが望むEDの対極であるため、まともに擁護されることはほとんど無かった。
    • この後日談が「話の筋が通っている」のならばここまで批判されることは無かったと思われる。ストーリー上どう考えても有り得ない展開と言うことが、最大の問題点だろう。
      • もっとも、ファンの要望に逆行している以上批判は避けられなかっただろうが。

評価点

  • 「冷たいマフラー」に限っては、賛否両論あるものの受け入れられることが多い。
  • 他に「青い微笑」は「永遠に」のEDを少々変更したものだが、こちらも受け入れられることが多い。
    • 本作において、唯一評価されている追加EDと言っていいだろう。

総評

散々な評価を受けた本作は、「初回限定版特典のOVAが本編」「語る価値も無い黒歴史」などと揶揄された。
アニメ版の出来が非常に良かっただけに、このゲームの追加要素には多くのファンが落胆、絶望した。

しかし原作ファンからの評価はクソゲーレベルだが、規制によるルート落ちは2つのみであり、一部ルートが不自然な点を除けばゲーム性も破綻しているわけではない。
よって、年齢等の理由でPC版が買えない人のための「入門版」としてはそこまで悪いわけではない。追加EDと一部の不自然な展開に目を瞑ればの話だが。


公式認定の黒歴史

  • 発売日前日に原作のキャラクターデザイン及び、アニメ版の総作画監督を担当した「ごとうじゅんじ」氏が、自身のブログに追加EDの内容を知らないという旨の記事(1月16日の日記を参照)を載せていたということを皮切りに、Overflowが追加EDの監修を行えていないという疑惑が持ち上がった。
    • 本作のスタッフを確認すると総作画監督として氏の名前が挙がっているが、それならば追加EDの作画をチェックしていて当然と言える。もちろん、追加EDのストーリーを知っていたとしても何の不思議も無いのだが、ブログの内容と矛盾している。
      • ちなみに氏はアニメ版及び外伝作品のストーリー構成に対しても大きな発言力を持っている人物であり、そのような人物が本作のような、矛盾が多くファンの要望と逆行するストーリーを認めるとは考えられない。
    • 発売後、Overflow側がこの作品に全く触れようとしない*2ことからも、Overflowが追加EDの監修を行えていないという疑惑の信憑性が増す結果となっている。
  • 発売から1年以上が経った2009年4月1日、Overflowの公式エイプリルフール動画「Kotonohasama Days」が公開され、動画のラストでは「Kotonoha Memory」として「我が子へ」の数年後と思われるシーンが描かれ、言葉とその息子である「言成」が登場した。
    • ごとうじゅんじ氏の発言や、顔を見る限り誠の血を受け継いでいることがはっきりと分かる事から、「愚行の果てに」とは無関係であると断言できる*3
    • Overflowのエイプリルフールネタは非常に手が込んでいることで有名であり、時には密かに本物のネタを仕込んでいることもある。事実、嘘ネタ用に用意したページに新作の製作発表を隠していることもあった。
      • ごとうじゅんじ氏による「Kotonohasama Daysは嘘です」と言う旨の発言はあったのだが、これを逆手に取ると「Kotonoha Memoryは嘘ではない」と言う意味にも取れる。
      • また、言葉のイラストを多数収録したムックでのインタビューにおいて、言成は「誠の死亡が前提」のキャラであるとする言及があり、「愚行の果てに」を打ち消す意図があるキャラであるのは確定と言っていい。
        また、ごとうじゅんじ氏は同ムックのインタビューでは本作に対して当たり障りのないことしか言及しておらず、Overflow社長のメイザーズぬまきち氏に至ってはガン無視である。
      • 止めを刺す形として、ニコニコ生放送においてメイザーズぬまきち氏が本作を「他社の作品」と断じ、本作の追加EDをスクイズリメイク版である『School Days HQ』に入れるつもりは無いと発言している。
    • 上記の事情から、Overflowが今作を完全に黒歴史認定したと言って問題ないだろう。

その後の展開・余談

  • Amazonにおいては限定版が定価の4割程度で売られていた時期もあった。そのため、本当にOVAだけで十分に元が取れたとも言える。
    • そのOVAも作風がギャグ寄りで原作と大きく異なることから、原作からのファンにはやや不評なシナリオではあったが、ゲームそのものに比べればずっとマシな出来である。
      • また、逆にその作風の違いを「明るい作品」「アニメ版の息抜き」として評価する声も一定数存在する。
  • 同年のエイプリルフールには新作『Cross Days』の製作発表がこっそりと行われたこともあり、ファンの関心はそちらへと集中した。
    • しかし、本作の大失敗に加えて『Cross Days』自体も延期に延期を重ね、その内容が色々な意味で超強烈だったこともあり、多くのファンが失望し、流出してしまうという事態になってしまった。
    • 一応、本作についてはOverflowに同情的な意見が多かったのだが、それでも本作のダメージは決して無視できるものではなかった。
  • 失敗の理由として、追加EDのシナリオを書いたライターがこの作品の人気の秘訣を全く理解していないのでは?と言う説も度々挙がっている。
    • スクイズは所謂「ヤンデレ」ネタが有名な作品だが、ヤンデレネタのみで人気を得たわけでは決して無い。当然、BADENDのみで人気を得たわけでもない。結末に至る過程がしっかりと書き込まれているからこそ、魅力のあるBADENDとなったのである。
      • ヤンデレネタばかりに目を向けると言うのはライト層(主にアニメ版からのファン)に多く見られる傾向だが、メイザーズぬまきち氏及びごとうじゅんじ氏はこの傾向に苦言を呈している。
      • いくら原作がBADENDとヤンデレで有名になったからといって、過程を描写せず説得力も魅力も皆無なBADENDを安易に量産しても意味が無いと言うことである。

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最終更新:2021年12月01日 17:40

*1 実はこういった事例は日本のアダルトゲームにおいては珍しいことではなく、むしろエロゲ業界の伝統になっている。声優業界の闇である。

*2 OverflowホームページからL×H公式サイトへのリンク切れが修正されていないなど。

*3 また、名前からも誠の息子であることがわかる(言 + 成 ⇒ 誠)。