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源平討魔伝 (FC)

【げんぺいとうまでん】

ジャンル コンピュータボードゲーム(自称)
対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 1.5MbitROMカートリッジ
発売元 ナムコ
発売日 1988年10月21日
定価 4,900円
判定 なし
ポイント 微妙なジャンル替え作品
RPGなのに運要素強め
音楽は高クオリティ
源平討魔伝シリーズ
源平討魔伝 (FC版) / 巻ノ弐


概要

名作の誉れ高いアクションゲームである、アーケード版『源平討魔伝』。
本作はそのファミコン版だが、なぜかジャンルが変わってボードゲーム風のゲームになってしまった。
そのため、FC移植を待ち望んでいたユーザーの不評を買うことになってしまったのである。

特徴

  • ゲーム自体が「コンピュータボードゲーム」を自称したことや個性的な付録の印象が強すぎるため、後年「FC版のジャンルはボードゲーム」としばしば誤解されがちだが、厳密に言うと、ゲーム自体は「ボードゲーム要素付きのドラクエ型RPGの戦闘スタイルをとったシミュレーションRPG」である。
  • ボードゲーム要素はあくまでクリア難易度やクリア後の成績・ゲームオーバー判定に使われる程度。
    • ついでに言うと後述の通りボードやカード無しでもプレイは十分可能。
  • 本作はカセット本体だけでなく、地図やコマやカードなどの付属品が同梱されている。
    「コンピュータボードゲーム」を自称していたように、本作はこれら付属品も用いて遊ぶようになっている。
    • ボードゲームがメインではないので、付属品が無くても支配国管理が多少めんどいだけで問題なくプレイは可能。
      カセットに付属する、カードやコマがなくても一応ゲームとして成立させることはできる。
  • 主人公の「景清」を操って、各国を回りながら陣取り合戦のように支配国を増やしつつ鎌倉を目指し、ラスボスの「頼朝」打倒を目指す。
    「壇ノ浦周囲の国からスタートし、頼朝打倒を目指す」というところはアーケード版と同じなのだが…。
    • 各国内は迷宮状の2Dマップになっており、つづら・鳥居・城などのオブジェクトが存在しており、基本的には城主のいる城を目指すことになる。
      ハッキリ言ってしまえば、後述の『月風魔伝』のマップシステムそのもの*1である。
      • 神社では景清の能力(剣力、防御力、機敏さ、妖力)を、祠では景清の体力をそれぞれ徳、銭を支払う事によって向上、回復させる事が出来る。同じ神社、祠での強化に必要な徳、回復に必要な銭は立ち寄るごとに高くなっていく。
      • 攻撃力は景清の直接攻撃力、防御力は敵から受ける直接攻撃のダメージ量、機敏さはこちらの先制攻撃確率・敵の特殊攻撃の回避確率、妖力は景清が使用できる術の種類に影響する(妖力を上げると使える術の種類が増える)。術はマップ上のつづらや敵撃破時のつづらから手に入る呪文の素(最大10個固定)を消費して使用する。
    • 敵との戦闘はドラクエ型のコマンドバトル。
      アーケード版でお馴染みの弁慶や義経も登場し、かなりの強敵。ステータスをよほど強化した状態でないと瞬殺される。
    • 帝領・関東の頼朝直轄領を除く各国の城主を倒せば(一部の国は金で城主を買収すれば)支配することができる。(複数プレイの場合)相手プレイヤーや(1人プレイの場合)頼朝の支配下にある国も支配可能だが、城主が強くなる(一部の国では買収に必要な金が多くなる)ので強奪は難しくなる。
    • 城主を倒したり、交渉が成立すると、スクロールアウトさせた&出現しなかった魔物を徳に変換してもらえ、体力も全回復した上で、出口を教えてもらえる(好きな隣接国に移動できる)。
    • 魔物を全て倒すと、一定時間後に要石が出現し、触れてしまうと隣接国のどこかに強制的に飛ばされてしまう。なので、モタモタとマップ上を探索している暇はない。
  • 1人プレイでは頼朝を倒せばクリア。クリア時の年貢に応じて称号がもらえる。プレイヤーが別の国へ移動する度に頼朝の侵略が行われ、頼朝に帝領を除く全ての国を支配されるとゲームオーバー。
    • 最高の称号「天帝」を狙う場合、後述の「えんまさま」の術を使いつつ、呪文の素の入手・管理や景清の侵略順などを緻密に計算しながら攻略する必要があり、なかなかに頭を使うことになる。
  • 複数プレイではいずれかのプレイヤーが頼朝を倒した時点で終了(頼朝の侵略はないのでゲームオーバーはない)。支配国から手に入れられ る年貢の多いプレイヤーが勝ちとなる。当然年貢次第では頼朝を倒さなくても勝ちになるが、複数プレイに限り頼朝を倒せば年貢の多い関東の頼朝直轄領を総取りにできるので、よほど変な攻略法をしていない限りは頼朝を倒す=実質勝利となる。
    • 1人プレイ・複数プレイを問わず、帝領(神社マークのある国)は支配できない。また、関東の頼朝直轄領はゲーム中には支配することができない。
      • 帝領・頼朝直轄領の城主は、景清を追い返そうとするが、何度も食い下がると体力を回復させてくれた上に、出口も示してくれる。
    • 命が0になってもゲームオーバーや脱落にはならず、徳と金が半減した上で、地獄に落とされてスロットを経た後に復活できる。ただしスロットの結果によっては壇ノ浦まで戻される*2上に、3回地獄に落とされた場合は隣の国に強制移動させられてしまう。なお、頼朝戦で敗北した場合は地獄には行かずに壇ノ浦まで戻される*3
  • また、複数プレイの場合、IIコン担当プレイヤーは魔物を操ることでIコンの景清を妨害することができる(国によって魔物の種類・数が決まっている)。魔物によって景清の体力を0にした場合、その時点でのIIコン担当プレイヤーは徳と銭を景清側から半分づつ奪える。

評価点

  • BGMはAC版を手がけた「のりぼう(=中潟氏)」が担当しており、AC版源平を上手くアレンジしたものに独自の曲が加えられ評価は高い。
    • たった三和音しか使えないFCだが、AC版をプレイした人なら、「あ、これはあの曲だな!」とニヤリとすること請け合いである。
    • 特に義経のテーマや頼朝のテーマは三和音とは到底思えない凄まじいデジタルサウンドとなっており必聴である。
  • AC版でおなじみのキャラ(源義経・弁慶・琵琶法師・三首龍・魔人など)は一通りちゃんと出てくる。
    • ラスボスの頼朝もAC版では没になっていた第二段階への変身姿が実現している。

問題点

ゲームバランスはあまり良いとは言えない。

  • 敵を倒したり景清を成長させたりRPG的な要素はあるのだが、最初にその国を攻め込む時にくじを引き、その結果で難易度が異なってしまうため運ゲー要素が高い。
  • しかも各能力のレベルが16で打ち止めで、最終盤ともなるとたとえ攻撃力や防御力を最大に上げていても苦戦を強いられるような敵が出現する。終盤は「べんけい(弁慶)」や「よしつね(義経)」といったAC版にも登場した武将が雑魚敵として大量登場し、最終盤には「みどりのたぬき」「きんのりゅう」「しゃくねつりゅう」「はくねつりゅう」といった強力な敵も出てくる。
    これらの敵の能力値はラスボスに匹敵するほど高く、通常攻撃1発でHPが3~4分の1くらい削られるため、特殊攻撃を使わずに直接攻撃を連発されると力負けしてしまう可能性も十分。
    • 加えて、終盤はこちらも機敏さ16になったり三種の神器のひとつ「八咫の鏡」を手に入れたりで敵の特殊攻撃が実質全無効化するため、後半は敵がデレてくれる(=特殊攻撃を使ってくれる)のを祈りながら攻撃するだけの作業ゲーと化してしまいがち。
    • ちなみにこちらの最大HPが99固定なのに対し、唯一の回復魔法(いのちのみず)は一人用だと回復量がたったの48固定*4
      対して上述の敵の攻撃は守備力MAXでも30~40位ダメージを与えてくるので戦闘中の回復魔法が追いつかず、さらに運ゲー要素が高まる。
    • 一人用の場合、ラスボス戦(2連戦)は仮にこちらが全能力MAX+3種の神器フル装備でも運悪く特殊攻撃を使わず物理攻撃ばっかりされると、回復が追いつかずに京都or壇ノ浦へ強制送還される*5

また、終盤だけでなく、序盤のゲームバランス(特に攻撃力関連)もシビア

  • 初期位置である壇ノ浦から少し外に出ただけで、「まじん」「つちくいむし」「びわほうし」といったやたら硬い敵が登場する。
    • これらの敵はよほど剣力特化で鍛えていない限り(びわほうしの場合は剣力特化でも)物理ダメージが一切通らないため、逃げるしかない。
  • 特に「びわほうし(琵琶法師)」は壇ノ浦の2つ隣の国に出現するにもかかわらず、HPがカンストで防御力と素早さが全雑魚中ぶっちぎりでトップ*6という嫌がらせとしか思えない能力を持つ。この時点ではびわほうしと出会った瞬間に「攻撃が当たらない上にまず逃げられない」という状態となり死亡が確定する*7
    • 普通にレベルを上げてもよほど計画的にステ振りしていないとこれらの敵には傷一つ与えられない状態となり、面開始時のおみくじが悪い場合は逃走成功率も低いためクリアが困難となる。
    • 対策としては壇ノ浦エリアで地道にレベル上げするくらいしかないが、その間に頼朝の領地がどんどん増えてしまい今度は隣国城主が硬くなってしまうというジレンマが待っている(支配城主は「まじん」に輪をかけて硬くなる)。

シンボルエンカウント上の問題点

  • 敵シンボルは出現後にワンテンポ置いてから景清以上のスピード&地形無視で一直線にこちらへ向かってくるため、動き始めたら逃げ切るのは不可能*8
    硬直時に画面外に消すことは可能だが、景清自身が鈍足な上に魔物出現口となっている「渦」もまた地形無視+高速で動くため安定して消すことが出来ない。
    • しかも「びわほうし」「べんけい」「よしつね」など特定の敵(親王系)のシンボルは登場直後に硬直無しでいきなり突撃するため、低レベルの場合はシンボルが出現した瞬間に地獄行きが事実上確定。
      終盤でも弁慶や義経(およびみどりのたぬきなどの非親王系ユニット)にHPを幾度も削られその度に地蔵で回復することになりテンポが悪い。
    • ちなみにこの「鈍足な景清」は、後に発売された『ファミリーピンボール』でも「景清のフリッパーは動きが全体的に鈍足」という設定の元になっている。

頼朝の支配ペースが非常に速い

  • 1人プレイ時は頼朝に占領できる国全てを占領されるとゲームオーバーだが、頼朝が国を占領していくペースが非常に速い。景清が国を出る毎に、頼朝は0~3国を占領する。運悪く3国を占領される状況が続くと、どこに行っても頼朝支配下で城主が強力な国ばかり、という事にもなりかねない。
    • プレイヤーはなるべく倒されること無く徳を貯め、早期にパラメーターを強化していき、確実に自領を確保していく必要がある。
    • 勿論、一度こちらが占領した国も頼朝軍は再び奪い返していく。場合によっては隣の国に移動した途端に、先ほど占領した国が頼朝軍に占領されたなんて事もある。
    • 頼朝軍に一度占領された国の城主はかなり強いが、二度以上頼朝に占領された国の城主は後半に出てくるザコ敵に匹敵するほど強い。ただでさえ手強い城主がさらに強化されてしまうのである。
    • 唯一の対抗策が「えんまさま」という、頼朝の侵攻を1回だけ足止めする術。ただ呪文の素を5つも消費する上に、習得に必要な妖力も高めでそうおいそれと使えるものではない。
      • ちなみにこちらが支配国を増やした場合のメリットはクリア後の称号・順位の他には、国移動時に上納金として多少の金が手に入る程度。普通にプレイすれば中盤過ぎくらいには金も経験値もカンストしている場合が多く、メリットは薄い。

ボード・マルチプレイ関連

  • 複数プレイの場合、ズルをすることが可能。正しくプレイするために実物化された呪文カードの存在があり、手持ちのカードしか呪文は使えないことになっている…ルールをきちんと守れば。
    • 具体的に書くと、複数プレイ時は呪文の素が無表示となり術が無限使用可能になる。
      これを悪用してマルチプレイ時は(プレイヤーがその気なら)術が使い放題となる。
    • 特に槍玉に挙げられるのが、複数プレイ時の「おしゃかさま」「えんまさま」*9。説明書では1回しか使えないという規定があるのに、ゲーム上ではどういうわけかこの規定が無視されて2回以上使えるようになっている。ゆえに速攻でおしゃかさまを覚えて全能力カンスト、といったプレイも可能になっている。
    • もっと言えば1人プレイの場合も結果的に付属品は必要ない*10

その他

  • 真面目にやると何時間もかかるが、パスワードやバックアップ機能は存在しない。当時としても不親切極まりない仕様。

総評

ボードゲームとしてもシミュレーションとしてもRPGとしても中途半端な出来に仕上がってしまい、原作の純粋な移植を待ち望んでいたファンからはそっぽむかれてしまった。
ジャンルが変わった経緯は不明であるが、せめて本格的なRPGなどであればまだ評価は違っていただろうだけに、もったいない作品であった。


余談

  • AC版そのままの移植はX68000、PCエンジン、プレイステーションの『ナムコミュージアムVol.4』、バーチャルコンソール(PCE&AC)等に出ている。
    • PCEオリジナルながら正統続編の『源平討魔伝 巻ノ弐』も発売された。AC版初代源平にはなかった「烏帽子姿の頼朝から甲冑を着た魔物のような頼朝に変化する」FC版の設定が活かされている。
  • エンディングの文章がAC版と大きく変更されている。
    • 「神様は死んだ 悪魔は去った」で始まる名文句ではなく、新たな文章が一から書き下ろされている。但し内容は微妙に製作者の心情・私情やナムコの未来への懸念を平家物語の「諸行無常」な世界観に乗せた意味深なものとなっており、こちらの方もAC版同様に制作陣の心情が色濃く重ねられている。
  • 敵に「あかいきつね」と「みどりのたぬき」が出てくるなど、変な所で狙っている。同様のネタが『ラサール石井のチャイルズクエスト』にもある。ナムコは東洋水産の製品が好きなのか。
    • 単なるネタキャラなのかと思いきや、実は両敵とも直接攻撃力がラスボスよりも高く生半可な実力では瞬殺される。
    • ちなみにこの両者はなぜか特殊攻撃に「詫びを入れる」が入っている。無断使用へのお詫びのつもりだろうか?
  • 『源平討魔伝』のゲームブックが双葉社から発売されているが、ベースとなっているのは本作である*11

『月風魔伝』との関係

  • FC版『源平討魔伝』発売よりも前に、同じFCでコナミが『月風魔伝』(1987年7月7日!)という、世界観もアクションも『源平討魔伝』にクリソツなゲームを出した(制作者自身が『源平討魔伝』に影響を受けて作ったと認めている)。
    • しかもFCながらなかなかの力作ぶりに、家庭用への『源平討魔伝』の移植を待ち望んでいたプレイヤーはこちらに流れてしまい、このFC版『源平討魔伝』の評判をさらに落とすことになった。
      • その意趣返しか、FC版『源平討魔伝』では名前入力で猥褻な言葉や敵の名前などを入力すると伏字で表示される機能があるが、その中に「げつふう」が含まれていたりする
  • なお月風魔伝は後にWiiと3DSのバーチャルコンソールで配信されたが、源平討魔伝の方はAC版・PCE版と「巻之二」が配信されたのみで、FC版は配信されていない。このため現在FC版のプレイ自体が困難になっている。
    • そもそもカードやボードマップなどの付属品がないと完全再現プレイが不可能なので、ネット配信自体がほぼ絶望的。付属品の入手も今では難しい。
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最終更新:2023年02月12日 22:18

*1 さらに遡れば『リンクの冒険』も同じシステムである。

*2 京都で帝から札をもらえば戻される先が京都になる。

*3 こちらも帝から札をもらえば戻される先が京都になる。

*4 2人以上のマルチプレイ時は回復魔法がHP全回復になり丁度良い按配になる。

*5 もし運要素ナシで勝利を狙う場合、呪文の素を溜めた状態で頼朝戦に挑み第2形態の2ターン目に雷鳴などの術を使うことになるが、これでも攻撃魔法が景清のHPも消費するシステム上それまで食らったダメージ量によっては勝てない場合もある

*6 守備力はラスボスに次いで僅差の2位、素早さはラスボス含め全モンスターでトップ。ちなみにラス面の鎌倉にも登場する

*7 一応妖力特化のステ振りならば序盤でも「かまいたち」などの呪文でギリギリ倒すことも可能だが、それだと呪文の素の消費量が激しい上に剣力や防御力が低すぎて大抵は他の敵に殺されがちとなる。

*8 マルチプレイ時のみ、神社や城などに入ることで敵シンボルを消すことが出来る

*9 どちらも1人プレイと複数プレイとで効果が全く違い、複数プレイ時に使用した際に選べる効果はおしゃかさまが「能力アップ」「3回連続大吉」、えんまさまが「別プレイヤーが3連続大凶」「別プレイヤーの術使用禁止」など超強力な効果揃いになっている。

*10 呪文カードが不必要で代わりにRPGのMPに相当する呪文の素を消費して現在覚えている呪文を選んで唱えることになる。ボードも単にクリアするだけなら不要で、称号を追求するやりこみプレイでもない限りせいぜい序盤に近隣国が頼朝の支配下になってるか確認する程度

*11 レーベルがファミコン冒険ゲームブックであり、さらに作中で利用可能な術が本作由来であるため。