北斗の拳 世紀末救世主伝説

【ほくとのけん せいきまつきゅうせいしゅでんせつ】

ジャンル アクション
対応機種 プレイステーション
発売元 バンダイ
開発元 ナツメ
発売日 2000年10月26日
定価 5,800円(税別)
判定 良作
バカゲー
ポイント ファンにとっては爆笑ものの神ゲー
本編以上におまけモードが凄まじい
単体のアクションとしては凡作相応
しかしそれを補う程の溢れる原作愛
北斗の拳シリーズリンク


概要

漫画『北斗の拳』を原作とするゲーム。
本作の発売以前の『北斗の拳』のゲームは、あまりにも原作からかけ離れたシナリオ展開や、捏造された必殺技の名称、そして何より劣悪すぎるゲームバランスなどからほぼ間違いなく「クソゲー」の烙印を押される代物ばかりであった。
そのため「北斗現れるところクソゲーあり」と言われ続け、いわば典型的なクソキャラゲーの見本市状態となっていたのである(そしてそれは現在でもほぼ同様)。

そんな中、本作はあまりにもあふれた原作愛とイメージの再現性の高さから、ゲームとしては粗くとも北斗ゲーの中で屈指の名作・良作と評される一品となっている。


特徴および評価点

ゲーム全体の内容

  • キャラゲーらしく、アクションメインと言うよりムービーの合間にアクションがちょくちょく入る、いわゆるムービーゲー。
    • …なのだが、そのムービー内容はアニメ取り込みでもプリレンダリングされた3Dムービーでもなく、リアルタイムレンダによる3Dポリゴンのキャラが動き回るイベントである。
    • 本作のキャラモデルは、PS1の解像度では見えないような部分まで丁寧に描き込まれており、後のパチンコに流用されたという噂まである。真相は不明だが、それほどまでに本作のキャラ造形への評価は高い。
      • リンの村の長老やマミヤの村の長老、マミヤの弟コウ、ライガ・フウガの弟ミツ、でかいババアや拳王親衛隊シーカーなど、名あり・名無しを問わず多くのサブキャラがほぼ専用グラフィックで登場しているのだ。
      • 2000年という発売時期にしてはやや粗いが、キャラの特徴はほぼ完璧にとらえている。PS1のハードスペック上の制約の中でこのようなキャラ数の多さを考えると十分クオリティが高いと言えるだろう。
      • パターンは多くないものの、キャラの表情も場面に合わせて変化する。秘孔を突かれて目を見開くリンや、死の間際に苦悶の顔を浮かべるジードといった、ワンシーンのみの表情もしっかり作られている。まあ、スペードなどはニヤケ顔のまま秘孔を突かれたりしているが。
    • そして、かの有名なアニメ版OP「愛をとりもどせ!!」もポリゴンでほぼ忠実に再現。ここだけで原作持ちのバカゲーとして成立しているとさえ言われている。
      • 実際には違うところも多いのだが、それでも違和感のない構成に仕上がっており、特にケンシロウのアップなど印象に残りやすい部分の再現は完璧。
      • シンの出番多めである初期OPをベースに、本作のラスボスに合わせてシンや途中の大男の登場部分をラオウのカットに差し替えている。
      • アニメ版OPの最後には正体不明の大男が出てくるが、本作ではデビルリバースになっている。あまりに自然すぎる差し替えなので気づかない可能性大。そもそも、こちらの方が演出としては原作に沿っているので問題ないだろう。
      • 極めつけに、OPで歩いている民さえも専用グラフィックで構成。ここだけのためのキャラ一人まで一人々々作りこむ等、こだわりっぷりはただごとではない。
    • そして、OPムービーを見終わると「STARTボタンを突け!!」と来る。その潔さに、悲しき聖帝サウザーの姿を見た諸氏も多い。なおボタンの配置が表裏逆なんてことはないので、裏をかいてSELECTボタンを突いたりする必要はない。
      • そこからのメニュー選択画面でも、アイコンカーソルがあの「頭維」を突く形である。制作者の北斗へのこだわりは尋常ではない。
      • スタッフが「みんな北斗の拳のマニアだった」と言う、攻略本にあるプロデューサーの発言も頷ける出来と言えよう。
  • シナリオは8章構成*1。容量の都合で端折られている部分も多いが、ラオウ昇天までの原作の流れは大体つかめる構成になっている。
    • シナリオ・セリフにはところどころ調整が入っている。言葉遣いなどの統一が図られていたり、全く違う形で表現した部分もある。
      • 例えばセリフに関しては、原作初期のケンシロウに見られた荒々しい言葉遣いがアニメ版と同様に抑えられた口調に変えられていたり*2、ハート様については漫画版準拠の展開だがアニメに倣って丁寧口調になっていたりする。
      • ラオウの一人称も原作、アニメ共に登場時は「俺」「わたし」「わし」とコロコロ変わる事で有名だったが本作では全て「俺」に統一されている。
      • シナリオの変更例としては、ジャッカルがバットの故郷でトヨを襲うシーンは原作ではトヨが撃った銃の音を聞いてケンシロウが駆けつけるが、本作では銃がなくバイクの音で来襲に気づくようになっている。
        また、原作第1話でジードの偵察隊が壊滅する一部始終など、オリジナル要素もいくつか存在する。
    • シナリオがラオウ戦終了までのため、原作だと以降徐々に増えていく後付設定による矛盾が本作では少なく、ある程度まとまっている。
    • 聖極輪の構えなど、細かい部分の再現度も上々。悪党にとどめを刺す技のカットインや、断末魔の再現まで完璧に仕上がっている。
    • シナリオの途中で一部、ミニゲームが入る場合もある。
    • 章によってはいくつかの分岐が存在する。いずれも、戦闘が増えるor減る、操作キャラが変わるといったもので、大きくストーリーに影響を及ぼすことはない。
      • 例えば、1章の2話ではミスミじいさんの生死で分岐する。生存すれば村へ移動した後スペードと決着を付ける原作通りのストーリーになるが、死亡した場合は村での戦闘が無くなりシンの城へ直行する。
  • 基本的に原作準拠であり、アニメオリジナルの要素*3は採用されていない。ただし、奥義を決めた直後の演出(技を決めた後に字幕と共に奥義名を叫ぶ)などはアニメに準拠している。
    • レイやマミヤ、ユリアが黒髪でラオウが銀髪など、メインキャラのカラーリングは原作版準拠となっているが、アイリやジャッカル、デビルリバース等、一部アニメのカラーリングが取り入れられている場合もある。
    • 技名もほぼ原作版準拠(南斗獄『屠』拳など)。ただし、シンへのとどめはアニメ版の「北斗十字斬」である。原作では無名の技だったので、アニメの技名を使っただけかもしれないが。
    • ゲーム作品では奥義の名前を間違っていたり、まったく別物と言えるほどのストーリーやキャラの改変が加えられる事が多いが、本作ではそういう事は無く、ストーリーの変更も調整の範囲内に収まっており、原作ないしアニメ版を大きく逸脱していたりはしない。
  • 声優はメインキャストがほぼアニメ版準拠*4。そしてアニメ版ではカットないし変更された「うわらば」の断末魔*5やケンシロウの「お前のようなババアがいるか*6」などの名(迷)台詞、の数々もオリジナルキャストが忠実に演じてくれている、ファンのツボを抑えたアイテムである。
    • なお、ジャギ(CV:大塚周夫氏)とハート(CV:滝口順平氏)は1986年の劇場版準拠*7
    • ナレーションはもちろん千葉繁氏。お馴染み「199X年、世界は核の炎に包まれた…」のナレーションも千葉氏がしゃべる*8。また、名無しモブキャラの数人も千葉氏が演じている。
    • ただしサブキャラについてはこの限りでなく、多くがTVアニメ版と違うキャストに差し替えられている。たとえばでかいババアはウイグル役の郷里大輔氏*9。しかしいずれもキャラに合った配役のため、違和感なく聞ける。
    • 2024年現在ではオリジナルキャストの大半は高齢化による声質の変化ないし鬼籍に入られた方が多く、今後北斗の拳のゲームが出たとしても声優の変更は避けらない為、賛否を呼ぶ要素となる事が多い。
      その中でも本作はアニメ版のキャストが多く、かつ原作にも忠実なので、アニメファン、原作ファンの双方が納得できる貴重な作品と言える。
  • BGMや効果音はほぼ本作のオリジナル。ただし、OP「愛をとりもどせ!!」やED「ユリア…永遠に」、闘気の音や敵雑魚が破裂する際の音、また秘孔「ピブー」という音など、アニメ版のものを再現しているサウンドも少なくない。
    • 曲数は多くはないが、耳に残りやすい印象的なものが多い。中ボス戦などで流れる軽快ながら勇ましい戦闘曲も人気が高い。
    • 余談だが、何故かヒルカ戦のみでしか流れない曲もある。

アクション

  • ムービー分が多めなこのゲームではあるが、雑魚をなぎ倒したり、強敵(とも)と戦うアクションパートも普通にある。普通にあるが、そのシステムが(バカゲー的な意味で)おかしい。
  • それが「秘孔&リアルタイムあべしシステム」だ。北斗の拳の名脇役・モヒカンたちの断末魔を総計約200種類楽しめるという、モヒカンマニア垂涎のシステムである。何故か説明書では「&リアルタイムあべし」の部分が削られているが。
    • 敵が点滅している瞬間に攻撃する(カウンターヒットを取る)と、通常のザコなら一撃で炸裂。
      赤服のザコに決めた場合は「秘孔システム」(説明書より)に突入し、雑魚が口上を述べている間に、表示されている通りにボタン(○×△□のボタン)を秘孔に見立てて突く。いわゆるQTEである。
    • 1つ成功する度に打突音付きのカットインが入り、開始時・入力時・全成功時に自キャラが叫ぶため、激打さながらの爽快感が得られる。
      • 成功すると「あべしデモ」(説明書より)に突入。原作よろしく雑魚は、口上と成功タイミングによって違う断末魔を吐きながら炸裂。「この作品には、暴力・出血・ホラー表現などが含まれています」というアイコンが他のゲームに比べてやや控えめに配置されているだけはあり、遠慮無く破裂してくれる。
      • このときなぜか衝撃波が発生して、これに当たった敵もなぜかまとめて爆死。理由は不明だが体力も少し回復する為、やたらと被弾するこのゲームでは嬉しい。ちなみに秘孔の成功が速いほど衝撃波の範囲が広くなり、回復量も増える。
      • 攻略本によるとこれらの断末魔は「スタッフのみんなで出し合って作った」という。断末魔をやっていて楽しかったとコメントを残したキャストもいる。
  • そしてたまにボス戦が入る。もちろん一対一の戦闘が基本だがこちらも秘孔システムがあり、やはり光っているときに攻撃すると発動。
    • 破裂こそしないが、成功すれば一定のダメージを確実に与える。また体力を削り切ったボスは必ず秘孔を突いてとどめを刺す必要がある。とどめを刺すとムービーが開始、話が進む。
    • シンやアミバといったライフが表示されるボスは、こちらが劣勢になると特定の台詞を発してくる(「お前の弱点は知り尽くしている」等)。また、ハートの当て身技で攻撃を防がれると、原作のハートの肉体自慢台詞が発生した後に反撃されるというちょっとしたイベントが発生する。
  • 敗北してコンティニュー画面に移ると死兆星が輝いていて、コンティニューを選ぶと消滅する。心憎い演出である。
    • そのコンティニュー画面も章によって数パターンある。全クリア後に章を選択出来ることを利用していろいろ見てみるといいだろう。
      • コンティニュー画面で流れるセリフもバリエーション豊かで展開に即しており芸が細かい。例えば、ラオウとの初戦でトキの秘孔を破ったケンシロウがラオウと対峙する場面で倒れると、リンが「ケーン!」と叫ぶ。原作を読んだ人ならば納得のチョイスである。
  • ストーリーで使用するキャラはケンシロウだけでなく、レイやトキを操作する場面も。操作性が違うので新鮮である。
  • 体力ゲージは一つの章で共通であり、バトルの合間に多少の回復は挟むものの基本的に受けたダメージを背負ったまま進んでいく。
    操作キャラが変わろうが明らかに日数が経過していようがダメージは継続なので、あまりにダメージを受けすぎていると瀕死でボス戦に挑む羽目になることも。そのため、秘孔システムによる回復も活用しながら極力ダメージを抑えて敵を倒していく必要がある。
  • ムービーの人物モデル数よろしく、中ボス・雑魚ともに豊富。メジャーな雑魚からマイナー雑魚までたくさん揃い、そいつらにそれぞれの口上と断末魔もある。
    • 中ボスにはかのでかいババアフウガ&ライガ等がいる。後述のモードで使えないのは少し悲しいところ。
    • キャラクターのモーションも凝っており、雑魚敵に関しても「自称北斗神拳使いの男」は北斗百裂拳を模したと思われる連続パンチを放ったり、「首長処刑刀術の男」は原作通り刀をグルグル回して攻撃してくる。

その他のモード

  • 「その他のモード」と銘打ちながら、実はこれこそがこのゲームをバカゲーとしての確固たる地位に押し上げている要因でもある

世紀末シアター

  • 本編ムービーの台詞を入れ替えられるギャラリーモード。恐るべき点は台詞入れ替えに一切の制約がないことにある。もちろん音声付き
    • そのため、シリアスなシーンも一転、抱腹絶倒モノのギャグコメディに変えることが可能。素材は豊富であり、発想次第で色々な名シーン・迷シーンを作り出す事ができる。
      • 実際、ゲーム雑誌で世紀末シアターの読者投稿を募っていたことがあった。
      • 動画投稿サイトが流行してから、このゲームも徐々に再評価の動きが進んでおり、なかなか投稿数も増えてきたので、これから世紀末シアターを作り出そうと言う諸氏は参考にしてみてはいかがだろうか。
    • あまりにインパクトがあったためか、こういったおまけモードの方がメインより有名になるという事態に。投稿された動画を見てこのゲームを買った諸氏も多いかもしれない。
      • このモードのおかげで「GOLANがあれば」と、間違った意味で登場キャラの不足を悔やむファンも多い*10
    • シアターで使用するセリフは本編クリアでそれまで聞いたものが使える。他にも、条件を満たして本編をクリアするとアクションパートのボイスが隠しセリフとして解禁。ある意味こちらが本編というのは間違っていない。
    • 「原作破壊じゃないのか」とか「よく版元が許したな」という考えが浮かばなくもないが、『3』や『5』といった東映動画・ショウエイシステムの前科を考えると、今更この程度では問題なかったのかもしれない。
    • ただし、シーンひとつ作成する毎にメモリーカードを1ブロック使用してしまうので、本腰を入れて作成するならばメモリーカードを潤沢に用意するか、PS2のメモリーカードやPS3の本体にバックアップを取る必要がある。
    • ナレーションや戦闘時の掛け声以外ならほぼ全ての台詞が揃っているので、ボイス鑑賞モードとしての価値も高い。

THE ()・あべし

  • 説明書に記載されていないどころか存在を匂わせる記述も一つとしてないおそらく南斗無音拳使いと思われるモードである。本編全8章をノーコンティニューでクリアするとプレイ可能。
    • 名目上はザコを倒した数を競うモードだが、その本質は名前通り、「秘孔&リアルタイムあべしシステム」を堪能する為のモードであり、出現するのは全て赤ザコ。
    • 親切にも出現雑魚がラウンドごとに区切られ、身体が光らずとも秘孔システムが発動するので、ハイスコアを狙いながら断末魔コンプリートを目指そう。
      • 一部だが本編にしか出現せず、このモードに出てこない雑魚がいるのが惜しまれる。専用のセリフパターンもあるのに…。
  • もはやモード名とその読みに突っ込むまい

問題点

あまりに長すぎるムービー

  • 確かにムービーによるシナリオの再現度とアレンジの完成度は評価点なのだが、さすがにムービーが長すぎる。
    • 本作はセーブが章の終わりでしかできないうえ、ムービーの長さもあって1章が非常に長い(ムービーだけでも20分から40分はかかる)ため、クリアとセーブに時間がかかる。
    • ムービーのスキップ機能は、一度クリアしなければ有効にならない。そのため初回プレイ時には出来るだけ長い時間をとってプレイすることを推奨する。

削除されたエピソード

  • 上記の通り容量などの都合上削除されたエピソードがある。
    • GOLAN編やラオウVS南斗五車星それとリュウガのエピソードに関してがバッサリカットされている。GOLANや五車星共に味のあるキャラクターが多く、彼らの台詞を世紀末シアターで用いれないのが非常に残念である。
    • 一部のエピソードは台詞や内容変更によって省略されている。容量の都合もあるし原作を読んでいなくても大体の事情は飲み込めるので大した問題ではない。…サウザー編を除いては。
      • サウザーの人物像を表す「お師さん」ことオウガイのエピソードがターバンのガキの不意討ちが無い為に丸々カット
        彼はただの卑劣な悪党としてしか描かれず、撃破後は聖帝十字陵の真下で唐突に原作の台詞のやりとりの後、そのまま死ぬ。エピソードがぶつ切りにされたために原作を知らないとケンシロウの最後の締め台詞に違和感を覚えることになる。
        これでもジョジョ5部ゲーのぶつ切りの仕方に比べれば十分マシである

余談ではあるが、後の劇場版『真救世主伝説』でもオウガイ関連がカットされており、サウザーが唯の悪役に成り下がっていた。

アクション部分の問題

  • 操作性が悪い。例えるなら「ファイナルファイトを3Dにしたようなもの」「爽快感の薄い無双ゲー」といったところ。
    • アナログスティックに対応しておらず、位置や向きの調整が難しい。敵キャラのロックオンもできない*11ので、攻撃を当てられるようになるまでに慣れを要する。
      また、ステップ及びダッシュが方向キー2連打なので暴発しやすい。
      • 複数の敵を相手にする雑魚や中ボス戦はまだいいが、1対1のボス戦では難がある。ボスはライフをゼロにしてダウンさせるとしばらく棒立ちになって秘孔システムのチャンスになるのだが、この操作性により攻撃を空振ってせっかくのチャンスを無駄にしてしまうことが多い。
    • モーションが全体的に固く、使うボタンの数も少ないため動きは多彩にならず、コンボの要素も非常に少ない。
      • 攻撃のキャンセルはできないので、技を出し切るまで操作することが出来なくなる。連続技などは当然非常に大きい隙を晒すことになる。威力が高い技ほど隙ができるという点では釣り合いは取れているものの、操作ミスによる暴発をしやすいのが難点である。
    • 防御・回避行動が少なく、ガードもパンチを1発出さなければ発動しないので先読みが必要。上記の多彩ではない動きと相まって、一部の強力な攻撃に頼る単調なプレイになりやすい。
    • カメラは特定の方向で固定。場所によっては自キャラが遠すぎたり、柱などに隠れて見づらくなることもある。
      • 敵はカメラに映っていない死角からでも攻撃してくる。上記のように瞬時にガードが使えないため、画面外からの遠距離攻撃や特攻が非常に厄介となる。
    • ただし、カウンターをとればどんな雑魚も一撃死*12、それに加え赤雑魚は即死衝撃波もつくため、上手くやれば原作のケンシロウのような戦いぶりを再現できる。
    • モーションの堅さによる動きの鈍さは敵も共通しているので、敵だけが理不尽に強いということもない。メイン操作キャラであるケンシロウもダッシュ攻撃からコンボを繋げられるなど、高性能な部類で使いやすい。
    • 強いて言うなら、人間のモヒカンどもよりもバイク*13*14にやられがちになるのが難点と言うべきか。
      • バイクと雑魚敵が同時に襲ってくる長槍騎兵は本作屈指の難所であることで有名。その後に戦うことになるヒルカもやたらと強く、ノーコンティニュークリアの壁となりやすい。
  • 前述のとおり、一部レイを使う場面もあるが、なぜかレイも秘孔を突いてボスを倒す。牙一族編でのケンシロウとのやりとりからわかるとおり、南斗聖拳に秘孔の知識がまったくないわけではないが…。
    • レイの攻撃モーションそのものの完成度は高いのだが、南斗水鳥拳を受けたザコはバラバラになるのではなく、立ち上がった後に北斗神拳と同様に破裂するので違和感が強くなっている。
    • 後述の覇者決定戦でも、すべてのキャラに秘孔システムがあるので、恐らくキャラ毎にシステムを差別化する余裕がなかったのだろう。
  • 既に述べた通り、秘孔システムはQTE。初見ではいちいちアイコンを確認しなければならず、面倒。
    • ザコとの戦闘ならセリフの間に成功すればいいのだから制限時間は長めだし、使わなくても攻略は十分可能だが、問題はこれをボスには確実に決めなければならないこと。
      • ボスはシステム実行時の挑発台詞と断末魔の変化がない関係からか、制限時間を短めに設定されているため、急いで入力しなければならない。
      • 終盤になると「回転するアイコン」が出現する。これは直前のアイコンを入力するまでどのボタンに対応するかわからないというもので、ボス戦では特に厄介。
      • ただし、秘孔のパターンは敵の種類やボスごとに完全に固定であるため、何回も挑戦し秘孔を突いていれば、回転アイコンをものともしない程度に覚えられる。コマンドの長さはすべて7回で固定。

覇者決定戦

  • おまけモードの一つ。対戦モードなのだが、上に述べた通り基本的なアクションがあまり多彩な動きができるとはいいがたい上に、ボス戦がベースである為ザコ戦闘やTHE・あべしのような爽快感がますます薄れており、対戦ゲームとしてはイマイチ面白くない。
  • キャラ間の性能バランスが非常に悪い。
    • 大半のキャラは□連打のコンボが連続ヒットになっておらず、途中で割り込みガードされてしまう。連続ヒットするコンボについても、背後から当てない限り□+×で割り込みガードされる仕様(?)がある。このため、浮かせ技や高威力の単発技を持つキャラが有利。
    • 本作の飛び道具は弾数無限。総じて低威力ではあるが、所持しているキャラクターが遠距離から一方的に攻撃できてしまう。
    • 高性能の飛び道具を持つマミヤ・ユダの二人が強すぎる。しかも、マミヤは長リーチのヨーヨー、奇襲用の娥媚刺、カウンター技まで持っており、ユダにも前進しながらの連撃、ジャンプからの突進技2種がある。ユダはともかく、マミヤは原作の最強争いには到底加われそうにないのだが……。
      ちなみに、ジャギの飛び道具は癖が強いので読まれやすい*15
      • マミヤのボウガンはリロード不要。中距離以遠から単射するだけでなく、ローリングからの追加入力で横に滑りつつ3連射することもできる。しかも、ローリング中は無敵状態かつ8方向にいつでも方向修正が可能。ガン引きと軸ずらし対策が両立した反則級の技である。
        ちなみに、本編のムービーではケンシロウ・ラオウが二指真空把でボウガンの矢を投げ返すが、アクションパートでは実践できずガード・回避の二択となる。
      • ユダの伝衝裂波は赤い弾を4連射する*16。射程は若干短いものの、隙が非常に小さく連発可能。しかも、相手が壁際で喰らった場合は無限コンボが成立する。
    • トキ・ラオウ・マミヤ・ハートはカウンター技(格ゲーで言うところの当身)を持っている。待機中と成立時にガードゲージが溜まるものの、ガードと違って瞬時に出せるうえ、1.5秒ほど判定を出し続けることも可能。ただし、飛び道具は防げない。
      • トキは成立時に浮かせコンボで大ダメージを狙える。マミヤは構えと直立モーションの判別が難しい。
      • ラオウのカウンター技は「相手に背を向け、攻撃を食らったら後ろ蹴りで反撃する」というもの。北斗神拳奥義「無想陰殺」の再現なのだが、原作では「たとえ背後から攻撃されても無意識の攻撃を繰り出せるため隙がない」というものであり、わざと背中で攻撃を受け止める必要はない。
    • ウイグル獄長も蒙古覇極道による突進やリーチの長い泰山流双条鞭がある等、やはり一般的な格闘ゲームとは違ったバランスを感じさせる。
  • 使用できるキャラはストーリーモードで条件を満たすことで増えるのだが、その条件は「対象キャラが登場するバトルをノーコンティニューで勝利する」とかなり厳しい。
    もっともこの条件は、前述した世紀末シアターモードのボイスなど、他の隠し要素の条件と重複しており*17多くのユーザーは否応なしに満たすことになるが。
    • ジャギやアミバなど、連戦となるボス戦は特に難しい。章のラストに控えているバトルだと失敗したときのショックも大きい。
  • 中ボスたちは使えないため、中ボス扱いのジードや牙大王達は使えない。牙大王の崋山鋼鎧呼法など、使えたら面白そうだと言われていたネタもその中に含まれているため、惜しまれるところ。
  • 人操作とCPU操作を切り替えることができ、CPU同士の試合を観戦することも可能。ただし、2P側の設定には2Pコントローラ、ステージ選択には1Pコントローラが必須となっており、コントローラが1つしかない場合は非常に面倒。
    • CPUはAIの出来が悪く、秘孔システムをなかなか決めてくれない。そのためCPU観戦するとかなり長い時間対戦していることがある。
    • 重ねて言うがモーションが固く地味なため、見た目もあまり派手ではない。見ていてむしろストレスが溜まるかもしれない。
  • あまり面白くないが、後の格闘ゲーム『北斗の拳 (AC)』には存在しないキャラもいる為、そのキャラクター目当てで遊ぶのもいいだろう。
    • ACには存在せず、本作に存在するキャラは、シュウ、フドウ、アミバ、ウイグル。そして対戦の組み合わせによっては特殊なセリフもある。アミバVSトキなど、ACではできなかったドリームマッチを組むのもいい。ちなみにACのキャラは全員使用可能。
    • アミバは□+×の技を北斗・南斗タイプで切り替えられる等、このゲームにしては比較的細かい仕様になっている。アクション全体で見るとそこまで自由度があるわけではないが。
    • 同キャラ戦で2P側が色違いになる、R1ボタンを押しながら選択すると一部キャラのコスチュームが変化する点も芸が細かい。

その他

  • 本作における闘気の色はケンシロウが赤、ラオウが青。アニメ版やパッケージ画像、キャラのイメージと異なるので違和感あり。

総評

思い出したようにバカゲーを出すナツメの怪作
アクションゲーム部分だけを見てしまうとクソゲーとまでは呼べずとも、あまり優れた出来ではない凡作である。
しかし、それを補って有り余りすぎる原作愛の存在が、この作品の評価を押し上げている。キャラゲーとしてみれば、充分納得できる出来である。

既に述べたように、このゲームが出る以前にも『北斗の拳』のゲームは存在していたが、それらの大多数がクソゲーであったため、相対的にもこのゲームの評価を上げることになった。


アニメとほぼ同キャストの声優陣、アクションの評価と原作再現度、双方の平均が本作に匹敵すると言える『北斗の拳』ゲームは、本作より前は14年前のマークIII版(リメイク版を除く)であり、 そして本作の後も5年後の『北斗の拳 (AC)』の2本くらいしか存在していない。
しかし後者にはバランスブレイカーであるトキの存在、さらに極端すぎるゲームバランスのせいで「世紀末ゲー」と揶揄され、複雑なシステムや操作性のなすハードルの高さと、圧倒的なゲームバランスの不安定さから初心者同士or修羅といった本当に近い実力同士でないと対戦を楽しめないうえ、同キャラ&同程度の実力者同士ですら一方的な展開になりやすい仕様などから、万人向けのゲームとは断じて言えない。
ハードのスペックが向上した現在では本作が見劣りする存在になっているのは否めないが、そんな時代になっても未だ本作は北斗ゲーの完成度の指針であり、比較対象とされているのである。
新世紀に北斗ゲーの存在を刻みつけた世紀末救世主的存在…それがまさにこのゲームであることに疑いの余地はない。


余談

初回特典として「ジャギ様メタル銅像」が500名に当たるキャンペーンが行われていた。

  • 当時の開発者のインタビューによると「原作ファンの方からは、『わかってる〜!』『ただものじゃない』という声が届いた」とのこと。ちなみに現物の写真もある。
  • 同インタビューでは「『くだらない』と思われてしまいそうなこともしっかりとこだわって作りました」とまさに本作の本質を突いているコメントが出ている。
    • ちなみに本作の売り上げは「凄く売れた」というコメントにもあるように十分な成果を上げることができたとも言えよう。

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最終更新:2024年04月07日 13:54

*1 それぞれサザンクロス編・ジャッカル編・牙大王&ジャギ編・アミバ&カサンドラ編・ラオウ初登場&ユダ編・サウザー編・トキVSラオウ&五車星編・最終対決編。

*2 例として、初期の有名なセリフである「てめえらに今日を生きる資格はねえ!」も、アニメ版に近い「お前たちに今日を生きる資格はない!」に変更されている

*3 原作では死亡したがアニメでは生存したキャラクターが死亡したり、ジャッカルがシンの手下である事や、その集団の名前がウォリアーズであるといった設定等

*4 本作発売の半年前にレイを演じる塩沢兼人氏が急逝したため、氏がレイを演じた最後の作品の一つである

*5 原作ではアミバの断末魔として有名だが、アニメ版では「拳王様~」に変えられており残念がられた。本作ではオリジナルキャストの土師氏による「うわらば」が実現した作品となる。ただ、本作のアミバはアニメ版とは異なり終始正体がバレた後のギャグキャラような演技になっているのでだいぶん印象が異なる。

*6 アニメ版では諸々の事情か「おまえのような婆さんがいるか」になっている。その他も放送コードの都合上替えられたと思わしき敵への罵り文句の多くが原作準拠になっており、神谷氏によるボイスで再現されている

*7 TVアニメ版でのハートの声優は山のフドウと同じ飯塚昭三氏なので、カブりを避けたものと推測される。ジャギに関しては、TV版の戸谷公次氏は他にも多数のキャラを演じていることから、劇場版の大塚氏の方が固有CVとみなされたものと考えられる。

*8 アニメ版では後にサウザーを演じる銀河万丈氏が担当。余談ではあるが、アーケード版の該当ナレーションも銀河氏による

*9 TVアニメ版は二又一成氏

*10 後述の通り、GOLANや一部南斗五車星は容量不足で入れることができなかった

*11 CPU操作のキャラは名あり・名無しを問わず、明らかにこちらをロックオンしているので不公平感がある。

*12 相手が光るのでカウンターを取るタイミングはわかりやすい。その行動をとってくれるかはランダムだが。

*13 横または空中から攻撃しないと倒すことができない。

*14 中型犬くらいのサイズなので、攻撃を当てるだけでも一苦労。当然パンチ系攻撃は全くと言っていいほど当たらない。

*15 ショットガンは2発毎の強制リロードがあり、起き上がり攻撃でも弾を消費する。投げナイフは予備動作が非常に長い反面、投げる直前までは無敵状態。

*16 地走式ではなく、発射音も小鳥の鳴き声のようでチープ。

*17 こちらは「ストーリーモードの各シナリオをノーコンティニュークリア」とよりシビア。