ノットトレジャーハンター

【のっととれじゃーはんたー】

ジャンル 3Dアドベンチャー
対応機種 プレイステーション
発売元 アクティアート
発売日 1996年12月20日
定価 5,800円
判定 クソゲー
バカゲー
ポイント 単体ではクソゲーだが笑いどころ満載
スーツ姿で遺跡探索する紳士
劣悪な操作性と事故死要素
水増し極まりないマルチED
素手でトカゲを蹴り倒す紳士
ヘタレシャア紳士


概要

私の名はジェームズ・アークライト。
イギリス人だ。
学生時代にマヤ、インカなどのいわゆる「古代文明」の魅力に取り付かれた私は、29歳になった今でも、その謎を解き明かすために様々な遺跡を探索している。
ただ、世の中にはそんな魅力あふれる遺跡を金儲けの道具としてしか見ていない輩がいる。
一般的に「トレジャーハンター」と呼ばれる連中だ。
奴らは遺跡に眠る財宝を持ち出しては金に換えているのだ…。
おっと、私をそんなトレジャーハンターと一緒にしないでほしい。
私の目的は純粋に古代神秘の追求にあるのだから。

スーツとキックで未知の神秘に挑む、英国紳士による英国紳士的な英国紳士のアクションアドベンチャーここに開幕!

※一部のPS2では起動しないor動作が安定しない不具合が確認されている。
更にPS3本体ではゲームは起動してもセーブ時に確実にフリーズを起こす不具合も確認されている。
プレーする際はPS1本体を必ず用意しておこう。

特徴

  • 妙な信条を持った英国紳士の冒険家・ジェームズを操作して洞窟を探検する、マルチエンディング形式のアクションアドベンチャー。
  • 変わったタイトルの由来は「主人公は遺跡から宝を漁って飯の種にするのではなく、遺跡から古代の謎を解き明かすことを生き甲斐としている」。即ち「金目当てのトレジャーハンターではない」という主人公の信条からのようである。文法間違えてるのは良いのだろうか
    未知の洞窟にスーツ姿で入り込むというのはむしろ探検を舐めているとしか思えないとかいうのは禁句

単純な問題点

ゲーム性の薄さ

  • 「エンディングが50種類以上」と謳われているが、実際は選択肢ミスによるバッドエンドもカウントしただけ。本作を100%クリアしようとすると、その細かな差分をダラダラ埋める作業に費やされる。
    • ただグッドエンディングを見るだけならそこまでボリュームは無く、ソフト一本の内容としては非常に薄い。
    • その上、ゲームオーバーの度にタイトルに戻され、メモリーカードもロードし直す必要がある。このため、異なる選択肢を選び直すだけなのに数十秒待たされ、テンポが悪い。
      • この点はかの『デスクリムゾン』にも似ているが、本作はゲームオーバーになる事が目的である分、ある意味余計タチが悪い。
      • 既に見たEDに到達すると判断した場合、本体のリセットボタンを押した方が早い事も。
    • 全EDをコンプリートすると隠しEDが流れるが、その内容はアクティアートの社内をそのまま撮影したホームビデオである。

劣悪なインターフェース周り

  • やたらとロードが長い。しかも移動中だろうが平然とストップ&ロードが入る。
  • 操作性が最悪。アナログスティックがない時代なので、スラスラ移動するのが困難。
    • そのため、敵に殺されるよりも崖に落ちて死ぬ事の方が多い。そのぎこちない走りは某実況動画にて「ダバダバ走り」と例えられた程。
    • 方向キー2回押しでダッシュが可能だが、判定がシビアで思ったように反応してくれない。
  • 当時はポリゴンによる3Dムービーが大流行していた時期であったが、本作のグラフィックはかなり粗くカクカクである。

シナリオ間の凄まじい格差

  • 本作のシナリオは大きく分けて「謎の洞窟編」「キャプテンゴールド編」「時の繰り返し編」「マヤの墳墓編」「アマゾネスの村編」の5つに分岐し、それぞれに細かい分岐が存在する。
    • 前述した隠しムービーの条件になるEDは全57種類だが、そのうち28種類がキャプテンゴールド編に、21種類がマヤの墳墓編に集中しており、残りはアマゾネスの村編が4種類、時の繰り返し編と謎の洞窟編は各2種類のみ。
      • 謎の洞窟編はグッドエンドが存在せず(3秒EDと別ルート序盤の選択ミスのみ)、時の繰り返し編は内容が異様に薄いため、残りの3本がメインのルートとなる。
      • これら3大シナリオの分岐は何故か序盤に出てくる敵を倒すか無視するか等の一見関係なさそうな条件がフラグになっている。該当の敵は演出と共に現れ襲いかかって来るので無視して先に進める事に気付きづらい。
    • キャプテンゴールド編はグッドEDもバッドEDも数が多いが前述した通り選択肢による微妙な差分で水増ししている。ちなみにグッドEDが15種類ある内、10種類がこのルートの物である。
      • 後述するが、このルートのみ内部パラメータの増減によってシナリオが微妙に変化する為、他のルートと比べてEDを埋めるのが面倒。
      • シナリオ自体は同じキャラでもルート毎に立場が変わるなど他のルートよりも展開はやたら幅広い。とは言え流れは「カルミスとのエレノアの奪い合い」のワンパターンに集約されてしまうが。
    • マヤの墳墓編はED数こそ多いがグッドEDは1種類のみの完全な一本道シナリオ。
      • 20種も存在するバッドEDの殆どが謎解きや会話で不正解を選んだ時の物で、しかも不正解の選択肢ごとに1つづつ用意されているという無駄っぷり。面倒なフラグこそ無いが埋めようとするとかなり疲れる。
    • アマゾネス編はグッドEDが3種類、バッドEDが1種類という構成だが……
      • グッドEDの分岐条件はシナリオ最後の村娘との会話での選択肢一つのみ(しかも選択肢自体は「また来るよ」などの他愛もないもの)で、こちらも実質一本道でしかも展開の少なさはマヤ編以下という有様である。
      • ちなみに道中にはどっちを選んでも同じ展開になるか、選んでも話が進まず選び直しになる無駄選択肢がやたら多い。そして選択肢ミスによるバッドEDも存在しない*1。ADVとしてそれでいいのか。
    • 最も酷いのは時の繰り返し編で、グッド、バッドが各1種類のみ。登場キャラもジェームス以外は画面に写りすらしない謎の声のみで、たった一部屋で話が完結してしまう。
      • シナリオは条件を満たしてすぐ終わらせるか何度かループを発生させて死ぬかという薄さで、もはや何のために存在してるかも分からない。ここを作る容量や労力を他のルートに割いた方が良かったのでは?とすら思える。
    • それぞれのルートはいずれも毛色は異なっておりシナリオも(時の繰り返し編以外は)それなりに出来ている為、1本の作品で様々な物語を楽しめる様にしようという意図は見えるが、キャプテンゴールド編ばかり無駄に展開が多様かつ複雑で他は乏しいというアンバランスな結果となっている。

主役以外の演技は棒読み

  • 後述の評価点の通り、池田氏の演じるジェームズと塩沢氏の演じるカルミスをはじめ著名人を起用していることで知られているものの、それ以外のキャラはほぼ無名声優で基本的に棒読み。スタッフロールから察するに代々木アニメーション学院の卒業生を起用しているのだと思われる。
    • 特にジェミーというキャラの声優は声が妙に野太かったり発言の最後に不自然に間を置いて「だわ」とつけるなど際立って低レベル。

バカゲーたる所以

強力過ぎる英国紳士パンチ・キック

  • 外れているはずのパンチ、キック攻撃が敵に当たる。全然別の方向向いててもHIT。拳銃などの武器も手に入るが、素手の方が強力で、無理に使う必要は無い。
    • あまりも強力なため、ディープなファンからは「英国紳士パンチ(キック)」の愛称が付けられている。
      • ホームズ』といい、ゲーム界の英国紳士は「素手喧嘩(ステゴロ)」が信条なのだろうか?
      • キャプテンゴールド(の亡霊)との戦闘では、自動的に落ちていた剣を装備して剣同士での決闘というシーンになるが、律儀に剣で戦うのは罠でしかなく、無視してキックを連発した方がいいという始末。

おバカなゲームコンセプト

  • 「1プレイ5分のお手軽アドベンチャー、遊ぶたびに物語が違う」が売りであったが、ストーリーがあまりにハイテンポすぎて呆気に取られてしまう。
    • 例:女「道に迷ったので出口まで案内してください」→10歩ほど歩く→女「出口だわ!」
    • ちなみに最短でEDを見るには、ゲームスタート→遺跡に入る→入ってきたところから出る→どこからか矢が飛んできて胸に刺さる→エンディング。…この間僅か3秒である。
    • 洞窟に入ってすぐにトカゲ(リザードマン)が襲い掛かってくるが、その時の行動で行き先が変わる。
      • 英国紳士キックで倒すのも良いが、放って先に進むと勝手に穴に落ちて自殺する(通称鬱トカゲ)ため無視するのもアリ。しかも前述した通りここでトカゲを見殺しにする事やそもそも出現させない事がシナリオ分岐のフラグとなっている。
    • 他にも、途中で見つけた遺体をどう扱うかなど、細かい行動でストーリーが分岐する。何故それで分岐するのか意味不明なものも多数。
    • 紳士的な行動や、紳士らしからぬ行動をとると増減する内部パラメーターが存在しており、これにより選択肢の数や内容が増えていく。
      • 選択肢を全て開放するのは意外と面倒だが、実は隠しコマンドで全開放可能。
      • なお悪方向に傾くと選択肢が増えるのは後述のネタ選択肢のおかげで有名だが、その逆で善方向に傾くと出現するエンディングや選択肢が存在する事はあまり知られていない。悪選択肢も同じだが、このシステムに気づけないとED埋めが困難、または隠しコマンドに頼る羽目になる。
    • その選択肢も無駄に多彩。敵に勇ましく立ち向かうものもあれば、情けなく命乞いをするものや、明らかに無駄な行動も。
      • 特にはっちゃけたものになると、女性がトカゲに襲われている場面にて「(トカゲと)共に女性を攻撃する」。別の女性が怪物を倒すのを目撃した後で「今度は私が相手だ」。いや、なんで!?
        後者については「トレジャーハンターが好きではない」ということでまだ納得はできる…のだが、本当に襲い掛かると刺し違えられてジェームズが死亡する。
    • マヤの遺産編の終盤の展開が、奥に隠されていた石仮面をライバルであるカルミス(悪役)が被ったことで不死身の怪物となるという清清しいまでの『ジョジョの奇妙な冒険』のパクリ展開を見せてくれる。マヤの石仮面という設定や石仮面のデザイン等言い逃れが出来ないレベルである。
      • さらに、決着のつけ方もジェームズが銃撃を受けるもペンダントに当たって無事だった為、そのまま死んだフリをして、「気絶しているだけかもしれん。死んだかどうか確認せねば」と言って近づいて来たカルミスに不意打ちを食らわせるというこれまたジョジョ第3部を彷彿とさせるノリ。
      • ちなみに、ジェームズ自身が仮面を被って自ら人間をやめることもできる。
      • カルミス役の塩沢氏も実は あのクソゲー(のCM)で元ネタの張本人を演じたことがある 。流石にスタッフも意識しなかっただろうがクソゲー同士は惹かれ合うのかもしれない。
  • キャプテンゴールド編の終盤ではエレノアという宝石箱を巡ってカルミスと対決するのだが、勝つ方法が「エレノアが開封された際の閃光を利用して逃げる」というトリックを複数のエンディングで流用されている。
    • ちなみにカルミスの部下はサングラスをしているのに閃光で視界を奪われる

その他おバカな点

  • 水の中に入ると崖から落ちるのと全く同じ速度で落下してゲームオーバーになる。その液体はオイルか何かですか? というか探検家なのに泳げないというのはアウトだろ…
    • どうやらジェームズはカルミスに「ジェームスは泳ぎが苦手なはずだ」と言われる程に有名なカナヅチらしい。もっとも泳げないにしても水に入った際の死に方は不自然すぎる。
  • 何かと演出があるたび「デェーン!!」とBGMが入り込むため、それだけで笑えるという声も。
  • データロード画面の決定音が何故か銃声
    • ご機嫌なカントリー調のBGMから突然響く銃声で不意打ちで笑える。
  • ダッシュモーションが前述通り妙にダバダバしており、走る姿だけでも笑いを誘う

評価点

惜しみなく起用された著名人

こんな内容なのに主役クラスの声優やキャラクターデザインにBGMの担当者は無駄に豪華。おまけにほぼフルボイスと言う豪華仕様。この時期のPSタイトルにありがちな傾向である。

主人公ジェームズがまんまシャア

  • 主人公ジェームズの声はかの『機動戦士ガンダム』のシャア・アズナブル役で有名な池田秀一氏。しかも容姿は金髪オールバックという劇場版の『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』時代のシャアの容姿まんまである。狙ったとしか思えない。
    • 今作はほぼフルボイスなのでどんなに間の抜けた台詞だろうとも、「(女を見捨てて)私だけでも助けてくれ!」「で、でたー」などの情けないセリフも容赦なくシャアボイスで喋ってくれる。
      • その中でも上記の「共に女性を攻撃する」の選択肢を選んだ際は必見。シャアなら死んでも口にしないようなはっちゃけた声で「私も仲間に入れてくださーい!」と言い、女性を蹴った後に頓狂な声で「おやぁ?」と喋る一連の行動は声との違和感も合わさって腹筋崩壊レベル。ちなみに女性は戦闘シーンに入るまでもなく英国紳士キック一撃で即死する
      • 一応フォローしておくとネタまみれという訳ではなく、紳士らしい選択肢を選べば氏の二枚目演技も堪能できる。数あるゲームの中でも、ここまで池田秀一ボイスの極端な演技が堪能できるのは本作くらいではないだろうか。ちなみに主人公が前述の通りもろにシャアを意識したキャラだが、流石にシャアの名言を口にしたり等はしないので、そこは期待しないように。

その他起用された著名人

  • 敵対するカルミス役は『北斗の拳』のレイや『機動戦士ガンダム』のマ・クベ大佐などでも知られる塩沢兼人氏*2
  • また見落としがちだが、BGM担当は1996年5月に解散したメジャーレーベルバンド「Human Soul」の藤野和良氏。こちらの品質もゲームの出来の割には無駄に壮大であり評判は上々とか。
    • BGMの作風は映画調のオーケストラ風楽曲となっており、冒険・洞窟探検の雰囲気には合っている。上記通り「デェーン!!」が笑えるのだが。

その他

  • ストーリーや謎解き自体は最低限練られており、プレイヤーの意表をつく展開や丁寧な伏線回収もところどころ存在する。
    • 例えば、マヤ編中盤の謎解きはプレイヤーがきちんと知恵を絞ることで突破できる内容になっている。
    • もっとも上述した通りボリュームはそこまで多くないため、満足感が得られるかどうかは別であるが……
  • 取扱説明書の文章がジェームズの手記のようになっており、読んでみるとなかなか面白い。
    • 目次前のごあいさつを除きすべての文章がジェームズの視点で描かれており、一人称も「私」かつゲーム内での口調も意識しておりなかなか凝っている。
    • 攻撃の解説で「殴るなんていうのは私の趣味じゃないが」と書かれている割に前述通りキックが異常に強いのは笑える…かもしれない。

総評

純粋にゲームとして見ればクソゲーと言わざるを得ないような完成度だが、笑える要素が目白押しである。
特にガンダムファンであれば、このシャア似の男がシャアの声でシャアが絶対に言わないセリフを言う光景は絶大な破壊力を持つことだろう。
声優ファンやガンダムファンがネタで盛り上がること必至のゲームである。

サクッとプレイ可能、笑い所満載、現在は「出来の割には」値段が高騰してしまったが、それでも笑えるクソゲー入門としては最適である。

余談

  • 今作に限らず、96年前後にはこうした「ポリゴンを使えば売れる」「喋らせれば売れる」「大物を起用すれば売れる」「お手軽なら売れる」といったタイトルが散乱していた。それだけPS1が世間に与えたインパクトは大きかったのである。
    本作もまた、そんなバブルに乗っかる形で一発儲けようと企てられた末に産み出されたゲームなのかもしれない。
    • しかし今作を発売したアクティアートは本作のみを発売した後に解散してしまった。上記のことからも「大物3名へのギャラを払うので精一杯だったんじゃないか」という憶測もある。
  • 全EDコンプリートの際に流れるキーワードを送るとクリア記念グッズ(末弥純のイラストタペストリーと終了認定レリーフ)が当たるという内容のキャンペーンが施行されていた。
  • Amazonでは一時期14円(『SDガンダム G-CENTURY』よりは高い)という破格の値段で売られていた。
    • プレイ動画などを含め、ネタゲーとしての需要が高まったため現在では中古のPSソフトとしては比較的高めの値段になっている。
  • シャア似のジェームズに対してライバルのカルミスは「ONE PIECEのサンジに似ている」と言われることもあるが、ONE PIECEの連載より今作発売の方が先である。
  • AT-Xで放送されていたゲームバラエティ「ヘカトンケイルの選択」のゲーム紹介コーナーで本作が紹介されたのだが、ゲームの版権がどこにあるかわからないため画面を映せないということもあり、メインMCの中村悠一氏が画面を見て感想を述べるというシュールなこととなってしまっていた。
    • 似たような事例は同じゲームバラエティ番組の「東京エンカウント」でも行われており、こちらではトイレキッズなどが紹介されていた。

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最終更新:2023年10月27日 22:07

*1 あるシーンで先に進まず後戻りしようとした時のみバッドEDとなる。

*2 『クレヨンしんちゃん』の初代ぶりぶりざえもんと言えば判る人も多いのではないだろうか。