太陽のしっぽ

【たいようのしっぽ】

ジャンル 原始生活ゲーム(3Dアクション)

対応機種 プレイステーション
発売元 アートディンク
発売日 1996年4月26日
定価 5,800円(税抜)
廉価版 PlayStation the Best:1997年6月27日/2,800円
PS one Books:2001年12月13日/1,800円
配信 ゲームアーカイブス:2006年12月21日 /617円
判定 バカゲー


概要

  • プレイヤーは、原始人を操作して自由気ままに野生生活を送ることになる。
    • 副題は 「WILD・PURE・SIMPLE・LIFE」
    • 「自由気ままに○○」は、ある意味『A列車で行こうIII』から続くアートディンクの作風の一つともいえる。
    • ゲームの主目的は、マンモスを狩り、その牙を積み上げていくことで太陽まで届く塔を完成させること、そしてそれを登って「太陽のしっぽ」を掴むことである。
      • クリア時の原始人の能力値等によって、9種類あるエンディングのどれかになるマルチエンディングである。

特徴・システム

  • フィールドに落ちている見た目が和菓子のアイテムを食べることで知力・脚力・繁殖力等の各種能力を伸ばすことができる。
    • 知力を伸ばせば文化レベルが上がって使用武器が強力になっていき(最初は素手)、繁殖力を伸ばせば家族(残機)が増えていく。
    • 動物を倒すと肉を残すが、これを取ると「Return」するかどうかの選択肢が出る。Returnしなければその場で食べて能力や体力Up。Returnした場合は開始場所に持ち帰り(自動的にワープ)、集落を大きくすることができる。
  • 原始人(プレイヤーキャラ)には寿命の設定があり、一定時間経過後に問答無用で死ぬ。寿命は画面右上で回転する数個の人魂(のようなもの)によって表現され、時間経過と共に数が減っていく。全ての人魂が無くなった時、パッタリ死ぬ。食べ物をほおばる瞬間だろうが、大地を疾走している時であろうが、唐突に死を迎える。
    • 寿命の長さには個体差がある。時々人魂が表示されない場合があるが、これはとても寿命が長いことを意味している。残り寿命が少なくなってくるとちゃんと人魂が出現する。
  • また、寿命とは別に体力の概念もあり、野生動物からの攻撃や、息継ぎを行わずに水中に居続けた場合に減少し、尽きれば寿命を全うすることなく死を迎える。
    長時間食べ物を摂取していなくても、やがて飢えにより死ぬ。体力を回復する手段は一つのみ。とにかく食べる事である。
    • 分かりやすく目に見える体力ゲージなどは存在しないのだが、原始人が衰弱すると全身が紫色に変色し、加えて頭上から 死神 が徐々に近づいてくる。
      この死神が原始人に触れたときが、命の尽きるときである。つまり、死神との距離から体力の残量を推し量る事ができる。
  • 操作している原始人が死亡した場合、集落から次の原始人を選択してゲームを再開する。個体によって性別と顔グラフィック、そして寿命の長さが異なる。それ以外の能力については、成長させた分を引き継いでくれる。
    • 集落が大きくなるにつれ、選べる原始人も増えていく。しかし、一度死んだ原始人は二度と蘇らない。
      そして、全ての原始人が死んでしまった時が、このゲーム唯一のゲームオーバーである。
    • 集落の最大規模は決まっているため、1データにおける原始人の人数には限りがある。
      とはいえ、意図的に自殺を行わない限り、エンディングを迎える前に原始人が全滅するようなことはほとんど無い。
  • 昼夜の概念があり、原始人は夜には眠ってしまう。天候の概念も有り、雨や雪も降る。
  • 自キャラ・野生生物・フィールドのオブジェクト問わずポリゴンは粗め。
  • BGMは非常に独特。
    • 環境音楽的なものからダンスミュージック、はては殆ど無音に近いものまである。

おバカな点

  • 原始人の特徴・挙動
    • 勝手に寝る。 夜になると、そこが猛獣が闊歩する危険地帯だろうが、ダッシュ中だろうが攻撃中だろうが、いきなりバッタリうつぶせに倒れ、熟睡してしまう。
      • 睡眠の前兆は一切ない。とにかく、突然寝てしまうのだ。
        食料を今まさに食わんと持ち上げた瞬間でも容赦なく寝る。しかもその食料は放り投げられて四散してしまう。
      • 寝ている間は何の操作も出来ない為、プレイヤーは原始人の寝ている姿をひたすら見続けることになる。ちなみに原始人はいびきもかく。
      • 斜面で寝ると、重力に従ってずるずると落ちていく。山登りの最中に寝てしまうと、目覚めた時は麓……という笑える事態も発生する。
      • 猛獣などに攻撃されたりといった何らかの刺激があると目覚めるが、序盤では逃げ切れないサーベルタイガーや、一撃死の攻撃力を持つマンモスなどに睡眠中に強襲されて即死することもたびたびある。
        低空飛行の鳥に突かれて起こされ、その鳥を狩ろうにも序盤では鳥に追いつけずバカにされながら逃げられることも。
    • ジャンプの挙動が明らかにおかしい。斜め45度に垂直跳びをしているようにしか見えず、非常にバカっぽい。ジャンプ時の脱力感溢れるSE「ボヨォ~ン」がそれに拍車をかけている。
    • 原始人の顔グラフィックが、世代を重ねるにつれカオス化。終盤の原始人はもはや原始人というか霊長類の顔ではなく、サイケな覆面。
      • 芸術文化レベルの進化による「化粧」の概念が発生している、という設定でもあるのか?
    • 広い世界を走り回れるが、何も食わずに走り続けていると、体力が消耗し走れなくなり、しまいには衰弱死してしまう。
      これを回避するには落ちているアイテムを食べて体力を回復させなければならない。
      • 水の中では息ができないため体力が激減する(心肺能力に依存)が、水中で魚を獲って肉を食べると体力が全回復するため、息ができなくてもちょくちょく魚さえ食っていれば溺死しないという原始時代ならではの仕様になっている。
        結果、肉がアクアラング代わりになり、より世界が広がる。実際、この技を使わないと到達が極めて困難な孤島・名所が存在する。
  • 世界観
    • 世界各地に点在するオブジェクトは何なのか、一切不明。というより、一部を除いて何の意味も無い。
    • 各能力を伸ばすアイテムは全て和菓子の外観をしているのだが、原始時代にあって何故和菓子の外観なのか、説明は一切無い。
      • 季節や風土に合わせた情緒を醸し出せる、という効果を狙ったのか?
        だが、シュールかつシンプルな世界にいきなりクォリティの高い和菓子オブジェクトを投入しているため、その世界観の不思議さに拍車をかけている。
      • 「柿」や「栗」、「まつたけ」等(を象った和菓子)は野に生っていてもさほど違和感はない。
        だが、砂漠に 「マカロニ」 が落ちている光景はシュールそのものであるし、山間に突然「 組み紐 」や「 練り飴 」が落ちている光景を目にしたときは絶句する事請け合いである。
        川や海の付近には、貝などに混ざって不可解な青い渦巻き状の食料が落ちているが、これは「」である。
      • また、どうみても食べ物の「リンゴ」は 投擲アイテム である。
        食べようと思って持ち上げた直後、突然それを放り投げた原始人にわが目を疑ったプレイヤーも多いのでは無かろうか?
      • なおメニュー画面にて「アイテムを作るに当たっては、和菓子屋『鶴屋吉信』さんの商品を参考にさせていただきました。この場で御礼申し上げます」という趣旨のメッセージを観ることができる。
    • 登場する生物は、マンモス、デスモスチルス、サーベルタイガーなど、時代区分で見るとややアバウトながら「原始時代」のイメージに沿った真面目なチョイスが多い。
      • しかしながら 人間のケツから下部分が独り歩きしている としか例えようのない、理解に苦しむ謎の生物も存在している。名称は 『怒涛の脚だけ野郎』(公式) である。

問題点

  • 地面に落ちている和菓子や岩が拾いにくい。ちゃんと原始人を物の真正面に立たせないと拾ってくれない。
  • 上記の睡眠のせいでコンセプトの『自由気まま』のように動く事が出来ない。
  • ジャンプが地形に対してほぼ垂直に飛び上がるため、斜面を駆けあがっている時にジャンプするとそのまま背中側にすっ飛んでいくという訳の分からない挙動になる。

評価点

  • (もちろん良い意味で)バカではあるが、想像力をかきたてられる独特な世界観とBGM
    • 走り回っても果てが見えない、本当に広大なフィールド。そしてそのフィールド上に点在する謎の石碑や意味深なオブジェ。
    • また、ご当地それぞれの雰囲気に合った――極端なものは広大なフィールド上に数個しかない――アイテム(食料)の配置が心にくい。
    • 謎に満ち溢れた世界観にマッチしたサイケなBGM。
  • エンディング
    • クリア時の能力値やそれまでの行いによって変化するマルチエンディングなのだが、そのどれもがエンディング時の哲学的な文と相まって一種独特な魅力を持っている。
      • 人類の進化の行く末を暗示する不思議な夢を見るのだが、中にはトラウマになりそうな不安を掻き立てるEDもある。
    • エンディングの分岐条件のうちいくつかは不可逆な要素が関わっている(上げることは出来ても下げることの出来ない武器レベルの高低など)ので、全てのエンディングを見たい場合は複数のデータが必要になる。
  • その他
    • 原始人が死んだ場所には、骨(?)の墓標が置かれる。それを見て生前の原始人を悼み、自分の先祖に対する畏敬の念を仮想体験することが可能。
    • 今まで狩った獲物をラスコーの洞窟壁画よろしく見ることができる。

総評

 睡眠や空腹といった生理現象の煩わしさはあるものの、それ以外は何をするにも自由。野を駆け、果実をもぎ取り、獣を狩る。まさにワイルド・ピュア・シンプル・ライフ。世界に散らばる不可思議なオブジェと哲学的なエンディングが、他のゲームと比較できないシュールな雰囲気を醸し出している。太陽のしっぽをつかむという目的こそあるものの、それにこだわりすぎる必要もないのびのびとしたゲームである。ただ、そのシンプルさ故に飽きが来やすいのも確か。ゲーム側からのメッセージらしいものもほとんど無いため、プレイヤーが自分なりの目的を見つけられるかどうかで、このゲームの面白さはかなり変わってくる。
文字と数字と人間関係だらけのゲームに少し疲れてしまった時は、原始時代に戻ってみるのもよいだろう。

補足

  • 攻略本の関係者インタビューによると、本作ではゲームにおける「お約束」からの解放を盛り込んだとのこと。
    • 独特な世界観&BGMとシステムは、ゲーム開発にあたってスタッフに企画書だけ渡して自由に作らせた結果。
      能力アップアイテム(食料)が和菓子の外観をしているのもその為であるとのこと。
  • ニコニコ動画及びPlayStation Storeで配信されているゲーム番組『GAME DIGGIN'』において、ディレクターの飯田和敏氏自身による「回復アイテムが和菓子である理由」が語られている。
    • 曰く、喉が渇くから水分が補給できるようなアイテムがほしいと思ったが、なかなかいいアイデアが浮かばない。ペットボトル置いてみようなど試行錯誤したものの行き詰まり、デザインの雑誌をパラパラめくっていたら「水をモチーフにした和菓子特集」を発見。「 これだ! 」と即座に閃いた飯田氏、早速その和菓子屋に「 原始人のゲーム作ってるんですけど、和菓子を貸してもらえませんか 」と電話。快くOKを頂き、和菓子を作るときに使う木型等も無償で貸与していただいたのだという。

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最終更新:2022年09月13日 11:34