KARATEKA

ジャンル 格闘アクション
対応機種 AppleII
Commodore64
Atari 8bit
IBM-PC
発売元 Broderbund
発売日 1984年6月1日
判定 良作
ポイント 非常に滑らかなアニメーション

概要

後に『プリンス オブ ペルシャ』を作るジョーダン・メックナーによる空手を題材にした格闘アクションゲーム。
Akumaに攫われた恋人のMariko姫を空手家の主人公が助け出しに行くという若干『和』を履き違えたストーリーである。
独特なシステムを搭載しておりとっつきづらいが、キャラのアニメーションは非常に滑らかでよくできている。

システム

  • 1対1の対戦方式
    • 現れる敵を倒しつつ先へと進み、Mariko姫を救い出す。
    • 敵を倒すと一定時間ごとに次の敵が登場する。
      • その為、倒した後にもたもたしているといつまでも敵が出続ける事になる。
    • 消耗した体力は勝利する度に戻る。また戦闘中も、何もしないでいると自然回復する。ただしこれは敵も同じ。
  • 攻撃の種類
    • 「パンチ・キック」の2種類に「上段、中段、下段」が存在する。
      • 敵と同じ高さの攻撃をすると相殺が発生する。
    • 攻撃は三発まで連撃が可能で、最初は中段、次に下段、次に上段というようなコンビネーションができる。
  • 主人公の状態
    • 「移動状態」と「戦闘状態」の2種類が存在する。
      • 「移動状態」では走る事しかできないが、素早く移動可能。
      • 「戦闘状態」ではすり足となり移動速度は遅くなるが、攻撃、後退ができるようになる。
        このすり足は戦闘時の間合いの調整の他、トラップを回避する際にも重要な動作となる。
  • 礼(挨拶)
    • ゲーム的には意味無いが、相手に頭を下げる文字通りのが可能。一人目の敵はちゃんと礼を返してくる。『古事記』にも書かれている。

評価点

  • 非常になめらかなアニメーション
    • 当時のPCゲームとしては驚きの中割コマ数を使っているため、走ったり、攻撃したり、礼をしたりする動作がやたら滑らか。
      • 実際の人間の動きをアニメーションに落とし込むロトスコープ技法を用いている。
  • 攻撃の相殺効果とコンビネーションにより、格闘ゲームとして独自の駆け引きを生み出している。
    • 当時の格闘ゲームは、せいぜい当てるか避けるか程度のものでしかなかった。
  • すり足の存在により、移動の微調整が可能。当時の一般的なアクションゲームの、一定単位で動くものとは一線を画す。

問題点

  • 操作に癖がある。
    • 行動の発生・前スキが全体的に大きめで、後の格闘ゲームでいう先行入力のような感覚で操作することになる。このため考えなしに連打していると、思うように動かせない。
  • 即死要素が多い。ただし、トラップを除けばいずれも序盤以外で引っかかることは少ないと思われる
    • 主人公はスタート時何故か崖を背にして立っており、一歩後ずさりをすると崖に落ちて死亡。なんと、この落下時専用のアニメーションまで用意してある。
    • 「移動状態」で攻撃を一度でも受けると死亡。よって、走ったまま敵に当たってもアウトである。
    • 途中にある、柵が落ちてくるトラップを食らっても即死。これを越える間合いはシビアであり、慣れるまでは敵よりトラップの方が強いとも言われているほど。

総評

後の『プリンス オブ ペルシャ』でも滑らかなアニメーションが評価されたが、その腕前は本作の時点でも発揮されている。
独自の駆け引きがあるなど、アクションゲーム部分も当時のゲームとしては十分よくできている。
一方とにかく即死条件が多く、初見では死ぬ要素が多い。総じて、地道に繰り返しやりこんでいくタイプのゲームと言えよう。

余談

  • 開発者のジョーダン・メックナーは空手を習っていたことがあり、それが本作作成のきっかけとなったという。
    • この後、彼はミリオンセラーを達成した『プリンス オブ ペルシャ』を開発。このゲームのアクションの細かさやタイミングのシビアさはまさにカラテカ譲りである。
  • 見事をMariko姫を救い出せばエンディング……なのだが、AppleII版では戦闘モードを解除しないまま姫に接近すると、なんと姫から蹴りを食らって即死する。
  • 主人公がスタート直後に崖から落ちて死亡する場面はかなりシュールであるため、本作のお約束としてよくネタにされる。
  • 2012年にまさかのリメイク版がPlayStation Network(PS3)とXbox Live(Xbox360)とSteam(PC)で発売された*1。原作者であるジョーダン・メックナー氏が直々に手かげている*2ということで期待されていたのだが、QTE感覚の戦闘システムや、「こちらから先制攻撃を仕掛けても全てガードされてしまう*3」仕様などが災いし、賛否両論な出来になってしまった。
  • 2023年には、『SNK 40th Anniversary Collection』などのレトロゲー復刻タイトルを手掛けたDigital EclipseよりThe Making of Karatekaが発売された。
    • オリジナル版(AppleII、Commodore64、Atari 8bit)、 オリジナル版のデータを元にリメイクされた「Karateka Remastered」、 さらに当時の開発資料やインタビュー映像やAppleII版のプロトタイプのデータ(実際にプレイ可能)、 ジョーダン・メックナー氏が開発していたものの、発売されなかったシューティングゲーム「Deathbounce」及び、 そちらをベースにリメイクした「Deathbounce: Rebounded」が収録されている。

カラテカ(FC)

ジャンル 格闘アクション
対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 192KbitROMカートリッジ
発売元 ソフトプロ
発売日 1985年12月5日
定価 4,900円
判定 バカゲー
ポイント 滑らかさは健在
理不尽になった「礼」

概要(FC)

上記ゲームのFC移植版。

Apple IIでは良くできたゲームではあったが、FCでは既に大ヒットアクションゲーム『スーパーマリオブラザーズ』が同年の9月13日に発売されていた事もあり、評価は芳しくなかった。

変更点(FC)

  • 容量の都合により演出がいくつかカットされた。
    • 主人公やマリコの合成音声によるボイスやOPデモ、一部背景が削除されている。
    • 海岸や館の窓から見えていた富士山がカットされているかわりに、潮騒の効果音が追加されている。
    • 戦闘突入時にBGMが挿入されるようになった。
    • また、Apple II版で屋外に建っていた鳥居がただの木柱に変更されている。
  • ラスボスの名称及びデザインの変更
    • ラスボスがアクマ「将軍」となり、部下が「アクマ」になった。
    • 「将軍」になったのだが、デザインは戦国武将を思わせる派手なものから、主人公と同じような道着姿に変更された。せっかくの将軍要素が…。
    • ラスボスを倒した後にマリコ姫に蹴り倒される即死パターンは削除。
  • がゲーム的に意味あるものに変わった。
    • 礼を返すのは一人目だけではなくなった。更に戦う前に礼をしておくと敵が弱くなる。実は攻略上、超重要なアクションなので必ず礼はしておくべし。(後述)
      • 敵に近づきすぎると礼をしても間に合わずに戦闘に突入してしまう。戦闘時同様、間合いが大事。

バカゲー要素

  • 日本人から見るとおバカにしか見えない要素の数々。
    • 偏った日本観が随所にみられるのは原作時点からであるが、敵は道着に兜という姿。恋人を奪った側と救う側が、律儀に礼をする。日本人からすれば苦笑いするしかない。

評価点(FC)

  • 一部デモがないなど削られた部分もあるが、ゲーム性はほぼ継承。
    • 半歩単位の間合いの取り合いや、連続ヒットを狙える連携といった攻略のセオリーも存在している。
  • 滑らかなアニメーションはFCでも健在。
    • FCの他のゲームと比較しても十分上質なアニメーション。

問題点(FC)

  • PC版からほぼベタ移植
    • オリジナル版自体は優れたゲーム性を備えていたものの、FC移植時点ではゲーム性がやや時代遅れになってしまっており、他のアクションゲームと比較して非常に地味で、UIも悪かった。
    • また、ダメージ制なのに一発死もあるなど、理不尽と思われる点も不評だった。
    • 独特な操作も、慣れないと満足に動かす事も出来ない。
  • 理不尽な『礼』の新仕様
    • 前述の「戦闘前の礼」だが、実は『礼をしないまま戦闘に突入すると敵の強さが最高ランクに上昇し、難易度が跳ね上がる』という、地味に嫌らしい罠が存在している。ゲーム上の意味を持たせていること自体はいいにしても、難易度に関わるというのは少々意地が悪い。
    • 敵に接近しすぎると即座に戦闘に突入して礼が成立しないため、ダッシュでの移動時に勢い余って間合いを詰め過ぎてしまい、礼が間に合わずに難易度が上がったまま戦闘に突入する羽目になりやすい。

総評(FC)

原作由来のアクション性や滑らかな動きはしっかりと再現されているものの、『スーパーマリオブラザーズ』発売後という時代の流れが本作の評価を下げてしまうことになった。
もはやスピード感に欠ける動きのキャラクター、カセットビジョンの様なシンプルグラフィックなど、見た目だけでもマリオと比較されて地味な印象に取られてしまった。さらに、癖のある操作性、数多くの一撃死要素等もプレイしにくさに拍車をかけていた。
爽快なアクション性が重視されるようになった発売当時の状況では、シュール感漂う遊び難いゲームとして映ってしまった。

余談

  • バカゲーに見えてしまうという点から、「ファミコン通信」(現:「ファミ通」)の1コーナー『ゲーム帝国』でよくネタにされていた。
  • お笑いコンビの『カラテカ』は、コンビ名の由来の一つが本作のタイトルであるとコンビ本人が語っている。

カラテカ(PC98)

ジャンル 格闘アクション
対応機種 PC-9801VM/UV以降
発売元 ブローダーバンドジャパン
開発元 MASTERNET*4
発売日 1988年11月
定価 6,500円
判定 クソゲー
劣化ゲー
ポイント 版権元自らの移植
原作破壊レベルの劣化移植

概要(PC98)

遅ればせながら日本のPCに移植された本作。しかも版権元からの発売。だが出来上がったものは、ひどい劣化ゲームであった。

問題点(PC98)

  • 自慢の滑らかさは雑に。
    • オリジナル版から大幅に高解像度化した事によりキャラに輪郭線や目などが描かれているものの、基本的にはオリジナル同様のベタ塗り。加えてキャラのドット絵がヘタウマ漫画寄りな不自然なデッサンとなってしまい、オリジナルのロトスコープ技法がすっかり台無しになっている。
    • まだ解像度が低い機種なら十分だった中割も、対象機種レベルだと不十分。その点を補っていない。おかげで、動きがあまり滑らかに感じない。
    • タイルパターンを駆使した中間色や陰影を表現し始めていた同時期のPCゲームに比べ、グラフィック全般はひと昔前のクオリティである。
    • FC版でカットされた崖を上るアニメに加えて落ちるアニメまでカットされ、落ちると一瞬で消えてしまう。
  • 敵の動きが単調。
    • 原作と動きが違い、前進あるのみの敵*5。駆け引きも何もあったものではない。
    • 引き下がりながら戦えばなんとかなるのだが、戦う度にかなり下がるので中々先に進めず、グダグダな戦いが長々と続く事となる。
  • 場違いで低レベルなBGM。
    • コミカルなゲームのような、妙に明るいBGMが終始流れている。曲そのものも出来が悪い。
    • 出来はともかく全編BGMが流れている反面、戦闘開始時や勝利の際の気合いの掛け声はFC版と同様に未実装。

評価点(PC98)

  • すり足移動や、打撃の相殺効果など、基本システムは辛うじて継承している。
  • 機種にもよるが、オリジナルやFC版にあったもっさり感は大分軽減されている。
  • OPやEDのストーリー解説、背景の富士山*6、マリコ姫に倒されて即死パターンなどは実装された。

総評(PC98)

版権元がまさかの劣化移植をやらかしてしまうという失態を見せつけてしまう有様。やっつけ仕事感まるだしの移植である。

  • ただ、本作のプレイ動画に寄せられた感想コメントを見ると、好印象な意見も比較的多く見られる。ブローダーバンド側や移植会社も開発当時は同じ印象だったのかもしれない。
  • 本作の教訓からか、次作「プリンス オブ ペルシャ」のPC98版の外注先はアルシスソフトウェアへと変わり、高い技術力でハードの特性を活かしたハイクオリティな出来となっている。

マスターカラテカ(GB)

ジャンル 格闘アクション
対応機種 ゲームボーイ
メディア 512KbitROMカートリッジ
発売元 新正工業
開発元 トーセ
発売日 1989年12月28日
定価 2,900円
判定 バカゲー

概要(GB)

1989年に新正工業からGBで発売された、カラテカのリメイク的作品。

評価点(GB)

  • FC版と異なり「ガード」と手裏剣等の「アイテム」の使用が可能になった。
    • さらにパワー・ライフ・スピードの三種類のパラメータの振り分けが出来るようになった。

賛否両論点(GB)

  • ビジュアル面に関しては、FC版よりはマシになっている。だが、元がチープ過ぎるので……。

問題点(GB)

  • スピードを重点的に上げておかなければ詰み確定。
    • これは攻撃の速度が正比例的に増大し、しかもキャラの移動速度も同様の変化をきたすため、非常に有利に展開できるためである。そのためスピードを重点的に上げていかないとクリア不能に。
      • キャラの移動速度が速いと無限に出てくるザコ共の数を最低限に抑えられ、そしてボス格のキャラとの対戦では移動速度が遅ければ勝負にならない。

総評(GB)

グラフィックが幾分はマシになり、キャラのパラメータ調整ができるようになったため、全体的なゲーム性は向上したものの、結局スピードを重点的に上げなければ詰み確定のバランスと言った偏った点が目立つため、依然として移植元譲りのシビアな難易度である点は覆らなかった。

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最終更新:2023年10月21日 03:51

*1 翌年にはiOS版とAndroid版もリリースされた

*2 実際はアメリカのデベロッパーであるLiquid Entertainmentとの共同開発

*3 要は「最初に来る相手の攻撃をガードしてからでないとこちらの攻撃はヒットしない」というもの

*4 制作スタッフは全員日本人名な為、国内のゲーム制作会社と思われるが。本作以外に目立ったゲーム開発の実態は見られない。なお、ISP「ZERO」の1987年の設立当初の社名は「マスターネット株式会社」だが、本作の移植会社と同一かは不明。

*5 攻撃を食らった際、多少後ずさりして間合いを取る場合はある。

*6 よーく見ると、ドットでFujiと描かれている。