ハーメルンのバイオリン弾き

【はーめるんのばいおりんひき】

ジャンル アクション
対応機種 スーパーファミコン
メディア 12MbitROMカートリッジ
発売元 エニックス
開発元 ダフト
発売日 1995年9月29日
定価 9,600円(税別)
判定 なし
ポイント フルート虐待ゲー(ただし原作再現)
ゲームバランスに難ありのキャラゲーの典型例
唯一のハーメルンのゲーム化作品
少年ガンガン関連作品リンク


概要

  • エニックス自身が発行している『少年ガンガン』に連載されていた人気漫画のゲーム化。
    • 音楽で魔族を打ち倒す勇者ハーメルとその一行による、魔王打倒の旅を描いている。
    • ガンガン創刊時から連載されており、『南国少年パプワくん』『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』『突撃!パッパラ隊』等と並ぶ看板漫画であった。
    • 原作は10年近い連載が終わった後も高い人気を誇り、外伝や続編も出ている。

システム

  • 本作は『パプワくん』同様に、主人公ハーメルを動かすだけでなくヒロインのフルートを様々な手段で動かし、途中の敵を倒したり仕掛けを解いたりするのだが……
    • はっきりいってフルートの扱いが酷い 。敵や障害物に向かって投げつけられるのは基本。様々な着ぐるみを着せられて危ない所に突撃する様はリアルの芸人よりも体を張っているのではないだろうか。
      • 更に、隠しコマンドで「マリオネット状態」にする事も出来る*1
    • Wikipediaによると、このシステムは当時「ギャル投ゲー」と呼ばれていたそうだ。
      もっとも、ヒロインを投げつける事の出来るゲームなどそうそう無い為、この名称が定着する事は無かったのだが……
      • 追い討ちをかけるように1面をクリアしてフルートが仲間になると、縛られたフルートがハーメルに雑に引きずられている一枚絵が映し出される*2
    • 念のために書いておくが、フルートが酷い目に遭うのも着ぐるみを着せられるのもれっきとした 原作再現 である*3。ただしTV版ではこういったギャグ要素が全て廃止されているので、TV版しか知らないとゲーム版スタッフの悪ふざけに思えるかもしれない。
  • フルートは主人公のハーメルとは別にHPが設定されており、満タンの場合は可愛らしい表情になるもののHPが減っていくと涙目になっていく。
    もっとも、ギャグ漫画調のイラストのため、あまり気にならないのが救いか。
    • フルートのHPが0になってもゲームオーバーにはならないが、ダメージを受けるとお金が減っていく他、フルートが動けなくなる。逆にHPが満タンだとフルートで敵を倒すことでお金が多く手に入る。
    • ちなみに、ゴール地点にフルートが居ないとクリアにはならないため彼女を置いて行く事は出来ない。

評価点

  • 良質な音楽が流れて来る。
    • 原作がクラシック音楽をモチーフにしているだけのことはあり、流れるBGMは有名な作曲家の音楽ばかり。
      『パプワくん』と同じスタッフが手がけていることもあり、音源はかなり良い。
    • とりわけ、ゲームをスタートさせた後に聞こえてくる鳥の鳴き声は本物と見間違う程。
  • グラフィックも丁寧に作りこまれている。
    • 前述の描写だけ見ているとフルートが酷い目に遭ってばかりだが、
      初めてハーメルを見たときや放っておくと退屈そうにしている様子、そしてOPで心地良さそうにハーメルの音楽を聴いている様子はとても可愛い。
    • 敵キャラやサブキャラも、原作の絵柄を忠実に再現している。
  • 本作独自のゲーム性
    • 着ぐるみはいずれも原作に出て来たものばかり。見た目は勿論、効果もゲームにうまく表現されておりあらゆる場面で使い分けるゲーム性がある。
      • ついでに言うと、着ぐるみを選択している際に別な着ぐるみにカーソルを合わせた際は輪郭の形状が滑らかに変形する表現も細かい。
  • 原作要素も充実している
    • 至る所では色々な人たちとのやりとりがあり会話が行われ更には一枚絵も表示されており、物語に没頭する実感を与えてくれる。

賛否両論点

  • 難易度は高め
    • 全体的にステージが長く所々には色々と難所があり手際の良い操作や殆どミスをしないで切り抜けるという事も度々要求される。
      ボス戦も簡単ではなく、例えば第2楽章のボスに至っては攻撃範囲が広く、こちらの投擲をあっさりガードするので隙がなく勝つのは苦労する。
    • 構成は一本道であり、道中で越せない箇所や倒せないボスがあるとそこで詰んでしまう。
    • ストーリーを辿るつもりでプレイしたいと思ってもステージの長さや難所が障壁として立ちはだかって来る事になる。
  • 音声の類は無い
    • かけ声があるだけでもかなり違うのだが、このあたりも賛否が分かれるところであある。

問題点

  • セーブもパスワードもない
    • ストーリーは全4章だが、各章に幾つものステージが含まれており*4、クリアするまでに大体4~5時間以上かかる。ゲームに慣れていないプレイヤーだと更にかかってしまうため、「息抜きにちょっと」というわけには行かない。
    • 昔のゲームならまだしもこの時代においてアニメ数話分のストーリーを1プレイで終わらせろというのは酷な話なのでは?
  • 肝となっている着ぐるみは全部で16種類あるが、中には性能がかぶっていたり、効果が無いものもある。
    • 例えば「トリ」は「マンボウ」の強化版と見なしても問題はない。
    • 「オランウータン」「怪獣」はイベントでしか使用しない。つまり プレイ中に使っても何の役にも立たない
  • 中途半端な所でゲームが終わってしまう。原作コミックスで言えば4巻頃。本作が出た頃には既に12巻まで出ていたのだが……
    • そのためラスボスは魔王ケストラーではなくサイザーである。一応、「魔界軍王No.3・妖鳳王*5」と言う肩書なので、(続編が出る事が前提だが)本作のラスボスとしては十分な存在と言えなくもないが。
      • そもそもこのゲームの時間軸でのケストラーはパンドラの箱に封印されている時期なので登場する方が原作無視である。
    • ライエル、オーボウは出てくるが、トロンやクラーリィ、コルネットは全く出てこない。
      • そのライエルも最終面ぐらいしか出てこないため、ゲームの登場キャラは実質ハーメルとフルートのみ。オーボウはステージの合間で会話に登場するが、プレイ中はハーメルの周りを飛び回っていて、フルートを呼ぶ時頭上に「CALL」のサインが出るのみ*6

総評

「原作の再現度は高いがゲームとしてのバランスがおかしい」という典型的なパターンどおりのキャラゲー。
この時期ガンガンは『パプワくん』や『魔法陣グルグル』など様々なコミックをゲーム化しておりその流れで製作された物だが、フルートの着ぐるみシステムや音楽の美しさなど光る物こそあるものの全体的に見て作りこみが甘く、他の二本ほどの名作とは言えない。
中でもこの時期のソフトであれば搭載が普通だった「セーブ・パスワードの廃止」は評価を大きく下げていると言っても過言ではない。
また、一つ一つの再現度は高いもののあまりにも中途半端な場所で終わっているのも残念。*7せめてファン人気の高いスフォルツェンド編~サイザー加入、オル・ゴール登場編ぐらいまでをゲーム化できればよかったのだが……

余談

  • TVアニメ版同様、ファンの間では微妙な扱いを受けている。
    • もっとも、一部原作ファンから黒歴史に認定されたTV版*8と違い「難しかったけど懐かしい」という評価を受けているだけこちらの方が救いがあるかもしれない。
    • 本作は原作よろしく可愛らしく仕上がっておりギャグ要素も盛り込まれている、ただし高難易度と長時間のプレイが要求される厳しい仕上がりとなってしまっている。
      それゆえにフルートが色々な着ぐるみを着こなす楽しそうなゲームだと思って手を出すと間違いなく心を折られるだろう。
    • また、クリアしたところで物語の途中で終わっているのだが、本作には続編も発売されていないのでゲームとしては打ち切りという扱いになってしまっている。
      したがって、新規ファンは原作に触れる方が現実的と言えるであろう。
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  • ダフト
  • 少年ガンガン

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最終更新:2022年08月03日 08:19

*1 ハーメルの音楽(催眠術)で体を操られている状態(意識は保ったまま)。ついでに火事場の馬鹿力も発揮させられ凄まじく強いが、効果が切れた後は「地獄の筋肉痛」が待っている(火事場の馬鹿力(所謂バーサーク状態)後の筋肉痛は科学的にも正しい)。

*2 原作第一話準拠。フルートの村を救った報酬代わりに、無理やり召使にさせられた。

*3 原作ではフルートを敵に投げつける行為は「フルートミサイル」と呼ばれている。フルートが一番多いが「ライエルミサイル」「オーボウミサイル」も存在する。

*4 隠しステージ等を除けば計32

*5 あくまでも魔界軍王(いわゆる四天王)のNo.3であり、魔王であるケストラーは別格扱い。

*6 尤も、この時点では「物知りなしゃべる鳥」でしかなく、先代妖鳳王である事は隠されていたため、ゲーム的な活躍が無いのは当然とも言える。

*7 ハーメルンのゲーム化作品は本作のみであり続編も発売されていない。

*8 前述の通り原作のギャグ要素を一切廃している他、止め絵を多用した結果「紙芝居」と揶揄された。結末(原作継続中なのでオリジナル展開)などを評価する者もそれなりにいるのも確かだが。