ゲゲゲの鬼太郎
【げげげのきたろう】
ジャンル
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3Dオカルトアドベンチャー
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対応機種
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プレイステーション
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発売元
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バンダイ
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開発元
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ベック
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発売日
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1997年1月24日
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定価
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6,800円
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判定
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なし
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ポイント
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鬼太郎ゲーの中ではトップクラスの怖さ 主役は全て一般人 鬼太郎はお助けポジション 中古ショップでは謎のサブタイトルが
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ゲゲゲの鬼太郎シリーズ
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概要
水木しげる氏の代表作『ゲゲゲの鬼太郎』をベースとしたリアルタイム3Dアドベンチャー。
他の『ゲゲゲの鬼太郎』関係のアイテムと区別するためか、ネット上のゲームブログや中古ゲームショップの商品リストなどでは『ゲゲゲの鬼太郎 呪いの肉人形館』など恐ろしげな副題がついている。
が、副題のない『ゲゲゲの鬼太郎』が正式タイトルなうえ、肉人形編はあくまで一番印象的なシナリオの1つに過ぎない。
原作モチーフのエピソードではなく、『クロックタワー』系の演出が多い怪談系ホラーになっている。
「怖かったゲームは?」という話題で本作を挙げる人も少なくはなく、一部では語り草となっている。
特徴・システム
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常に主観視点で、操作は初期の『バイオハザード』のように、前進・後退・左右振り向きを行いながら移動するラジコン操作になっている。
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「調べる・話す」と「扉の開閉・場所移動」に使うボタンが違う。慣れないうちは混乱しやすい。
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道中で手に入れたアイテムは、調べたり使ったりすることが出来る。一部進め方によっては何の意味もなさないアイテムが出てきたりする。
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まず、本作を語る上で外せないのは鬼太郎は主人公ではないということ。
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主人公は別に特殊能力があったりするわけでもない完全なただの一般庶民。当然、戦うことは一部を除いて出来ないし、鬼太郎や他の妖怪と親交があったりするわけでもない。
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アニメ版では第3作目のユメコや、第4作で登場した小学生3人組のような鬼太郎と知り合うキャラが登場したが、本作では完全な初対面。
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ちなみに、シナリオごとに全て主人公は異なる。境遇、年齢、性別、全てにおいて共通点がない。
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つまるところ、依頼人の目線で鬼太郎のエピソードを体験しているような感じとなる。
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鬼太郎達の声優
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本作は1996年1月7日から1998年3月29日まで放送されたゲゲゲの鬼太郎アニメ第4作目の声優を起用している。
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ゲストキャラも、レギュラーの兼役や、実際当時の本編において声優出演していたキャストが起用される。
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三本のシナリオ
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行方不明事件が続発する校舎の中で友人を探す「学校」。
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学校建設の際、移設された首塚にまつわる事件に少女が巻き込まれるエピソード。
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鬼太郎が途中から援護に来てくれるが、しばしば別行動となるため、鬼太郎と離れた時の不安感はとてつもない。スタートしてすぐに危機に陥るので、緊張感も相当なものである。
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人間の世界からゲゲゲの森に迷い込んだ少年が、元の世界に戻ろうとする「ゲゲゲの森」。
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いわゆる鬼太郎ファミリーと交流を深めつつ、鬼太郎を探し出す内容で、ファミリーは総出演する。
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唯一怖くないシナリオな代わりに、難度は一番高い。また、非常識な行動を何回も行っていると…。
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繭の中で目覚めた記憶喪失の主人公が自分の記憶と真実を求める「肉人形」。
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先の通り、ゲームショップで副題を付けられた際にモチーフにされるほど本作で最も怖いシナリオ。
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謎解き難度は高めだが、ゲゲゲの森に比べれば立ち位置はわかりやすいほうで、仕掛けも少し考えれば一部を除いてわかりやすい内容である。但し、ある理由でスタート時から時間制限があり、それを過ぎるとある仕掛けを動かす時にゲームオーバーになってしまうのでのんびりもしてられない。
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「ゲゲゲの森」は、主人公が鬼太郎を探し出す過程を描くシナリオで、いつもと立場が異なるが雰囲気は鬼太郎的。
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逆に「学校編」と「肉人形」は鬼太郎が人間を助けに向かうという展開で、悪い妖怪と戦うというスタンスは鬼太郎チックだが、そのホラー的な雰囲気は通常の鬼太郎と大きく異なる。
評価点
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キャラゲーらしからぬ恐怖度の高さ
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前述の通り主人公は一般人で、恐怖に対する手段を一切持たない。そのため、他のホラーアドベンチャーにあるような「打開策」が存在しない。
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このゲームデザインのおかげで鬼太郎が来てくれた時の安心感がすごい。ゲーム的に安全になったかは別として。
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逆に鬼太郎が目玉親父に主人公の護衛を任せてどこかへ行ってしまう展開が多く、去ってしまった後の孤独感と不安感は計り知れない。
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恐怖演出の本格的さ、こだわりの強さ
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微かな物音や暗がりの中で蠢く「何か」の存在を感じさせる演出も、恐怖に拍車をかけており、上記に合わせて計算づくなように見えるほど見事。
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「学校」の序盤で教師に追いかけられるシーンは非常に怖い。教師は人相がゾンビ化しているので、鉢合わせた時の恐怖感はかなりのもの。
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さらにボタン操作の不便さもあって「なんとか鍵をかけようとしたが、混乱して操作を誤って捕まってしまう」というホラー映画さながらの展開になることもしばしば。
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「肉人形」のキーとなる童謡はトラウマになること請け合いな他、シナリオで起こる怪現象や家柄の設定はかなり恐ろしい。
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鬼太郎らしからぬボス「肉人形」の造形も、鬼太郎チックというよりバイオハザードチックで不気味。
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キャラ造形が人形チックで不気味
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これはハード性能の問題で、グラフィックが野暮ったく、実際は「そう見えてしまうだけ」である。
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しかもこれは水木しげるチックというより第4作目のキャラデザをイメージしているようだが、良くも悪くも淡白。
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…なのだが、このグラフィックの淡白さや未熟さがむしろ恐怖面に大きく貢献しており、大の男が悲鳴を上げるレベルの恐怖体験を楽しめる程度のクオリティを成立させている。
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鬼太郎達との会話は主にフルボイス
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当時の第4作目の声優によるアニメそのまんまな演技なため、試聴経験のあるプレイヤーであればより安心感を感じられることが出来るだろう。
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特に目玉親父役の田の中勇氏の声は、キャラの造形上頼りない反面、その声で癒される場面もしばしば。
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それ以外のゲストキャラの演技もかなりの熱演。肉人形編は特に鬼太郎らしからぬヘビーな内容にその演技が上手く噛み合っている。
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意外と凝っている戦闘シーン
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大ボスと鬼太郎が戦うパートがあるが、その時のアクションは結構よく練られている。
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技を駆使しながら時間を稼ぐ姿は特に大きな意味があるわけではないが、その点に関しては鬼太郎的な見応えはある。
問題点
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操作性はあまり良くない
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システムの都合もあるが、対抗する手段がない状態でのラジコン操作は、かなり手を焼かされるだろう。
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アイテムはいわゆるアイテム欄から選ぶのではなく、一つ一つスクロールしていかなくてはならないのでストレスが溜まる。
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特に「肉人形」は大量のアイテムが手に入るため、スクロールの時間もそれ相応に伸びてしまう。
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ボリュームが薄い
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前述のように内容は全3話で、隠しエピソードなどはない。
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1話1話のボリュームも、謎解きが得意な人や、効率的なプレイが出来る人ならすぐに解決することが出来るので余計に薄く感じやすい。
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マップの広さに反して地図が存在しない
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しかも「調べる」を使わないとそこがどの部屋なのかわからないことが多く、それどころかそこがどの部屋なのかすら示されないことも…。
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そこがどこかを確認するため、一々調べるのコマンドをつかわないといけないのはかなり面倒くさい。
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幸いにも解説書に地図が掲載されてはいるが、ゲゲゲの森は地図が複雑でエリア同士との繋がりすらも示されていないため解りにくくなっている。
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ゲゲゲの森の単調さとわかりにくさ
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住人から話を聞いて鬼太郎を探し森を出るファンサービス的な内容で、本作の売りである恐怖感とは無縁。
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鬼太郎の居場所を鬼太郎ファミリーに聞いていくのだが、その場所を律儀に案内してくれるのは一反木綿くらい(しかも悪意はないとはいえ見当外れ)。砂かけは親身に答えてくれるのにも拘らず、先導してくれない。
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ただ他の二つが怖い分、妖怪達の私生活を見ることができるので、とても癒される。
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ただし、ゲーム上このシナリオは同じ風景をひたすら迷い歩き、鬼太郎に会う手がかりを探るシナリオで、先の通り地図がないので無駄に迷って時間がかかるだけ。シナリオに密度も他の二作と比べると濃いとは言えない。
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各シナリオのラストは唐突感や不完全燃焼感がややある
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学校編は実は当時のアニメ版的な終わり方を見せているが、ラストの余韻がイマイチ不足。
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ゲゲゲの森編は、「お化けなんていない」と高をくくっていた少年が、最後に友人に「妖怪を見た!」と言ってシナリオが終わる。怖い内容じゃないだけに少年のテンションにやや疑問が残る。
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肉人形編は恐怖感の演出こそすごいが、シナリオの締めは強引なハッピーエンド。しかも「全員元の鞘に収まりめでたし」的な終幕ながら、よくよく考えると救われていない人が1人いる。
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ある意味自業自得かもしれないが、一言も触れられないのは違和感が強い。
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説明書には「マルチエンディング」と明記されているが、「ゲゲゲの森編」は最後の会話が少し変わるだけ、「学校編」は2種類しかエンディングがない。
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エンディングについて(ネタバレ注意)
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「学校編」
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バッドエンディング
: 校長室で入手した飾り物の刀の鞘を焼却炉に置き、おぼろ車を封印。先生と良子は帰還するも行方不明の生徒は帰還しないまま、体育館建設工事が進み、首塚が破壊され、事件の真相が迷宮入りとなる。
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ハッピーエンディング
: 昔の時代にタイムスリップし、首塚で入手した古い刀の鞘を焼却炉に置く。事件の真相が明らかとなり、先生と良子と行方不明となった生徒が帰還する。
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「ゲゲゲの森編」
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バッドエンディングのパターン
: 人間界に連れて帰る際に発する鬼太郎のセリフが主人公が犯した「イタズラ」の数により異なり、イタズラは「砂かけばばあに無断でタケノコを取る」「ぬりかべに炭で落書きする」「立札に落書きする」「地蔵に泥団子を供える」の4種類。
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イタズラの数が1つ
: 「あ、そうだ。君、ゲゲゲの森でイタズラをしたでしょ。あんまりイタズラしちゃダメだよ」
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イタズラの数が2~3つ
:「あ、そうだ。君、ゲゲゲの森でイタズラをしたでしょ。きっと皆カンカンだよ。もうゲゲゲの森には来ないほうがいいかもしれないよ」
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全てイタズラを犯した
: 「ねぇ君、地獄流しって知ってる?悪ーいことをした人間を地獄へ流しちゃうんだ。もちろん、イタズラをした子もね。今このカラスの行き先を変えようかなぁと思ってるんだ。うーんどうしようかなー」
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ちなみに治癒の実を鬼太郎に渡すとセリフの重さが2段階下がる。
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鬼太郎でやる意義がやや薄い
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キャラゲーでありながら、全てのエピソードに登場するレギュラーメンバーは鬼太郎と目玉親父くらいで、ファミリーが全員登場するのは本筋の内容とは言えない「ゲゲゲの森」のみと寂しい。
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作風は、原作の「不気味だけど、どこか愉快」といった風でも、題材としたアニメ第4作目のものともかけ離れている。
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なお、本作のCMでは「君は、本当のゲゲゲの世界をまだ知らない…」というキャッチコピーが流れていた。むしろ本家から離れた作品なのだが。
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画面にチラチラと映る鬼太郎のシュールさ
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鬼太郎が追従するパートが結構あるが、行ったり来たりする間、鬼太郎とすれ違うと無表情の鬼太郎が画面にチラチラ映ってシュール。
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主人公よりも鬼太郎の方が背が低く歩幅が狭いため、お互いの距離が離れると学校の中や洋館の中を下駄を鳴らしながら全力ダッシュで追いかけて来る姿もかなりシュール。
総評
原作付きのゲームにもかかわらず異色度が高く、キャラゲーとしてあまり良い出来とはいえない。
第4作目の声優陣が揃っているため、4作目のファンが声目当てに買うのもアリといえばアリだが、それ以上の恐怖がプレイヤーを待ち構えている。
その一方で、鬼太郎らしさはあまりないが鬼太郎の頼もしさを感じ取ることが出来る、という珍しい作品でもある。
鬼太郎の世界観に没入することは出来なくとも、鬼太郎に助けられる依頼人の気分に浸ることは可能なので、キャラゲーとしてまるで見所がないわけではない。
本作自体の持つ恐怖度の高さから、どちらかと言えば鬼太郎のファンよりも怪談系ホラー物が好きなプレイヤー向けの作品である。
特に「肉人形」は先の通り勝手にサブタイトルが付けられるほどの恐怖を描いており、作品の舞台・設定・黒幕、どれをとってもホラーとしての完成度は高い。
「ゲゲゲの森」がその分難ありだが、この点はキャラゲー故に仕方がないといったところだろう。
最終更新:2023年12月02日 09:51