RPGツクールVX Ace

【あーるぴーじーつくーる ぶいえっくす えーす】

ジャンル RPG制作ツール
対応機種 Windows XP/Vista/7 日本語版(32/64bit版OS両対応)
メディア CD-ROM 1枚
発売元 【パッケージ版】角川ゲームス
【Steam】Degica
開発元 エンターブレイン
発売日 2011年12月15日
定価 【パッケージ版】13,440円
【Steam】6,980円
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 良作
ポイント ツクールシリーズの「切り札」
VXをベースに正当進化だが、VXとの互換性無し
『RGSS』の評価は高い
初心者でも馴染み易い
VXと関係のない新作と見れば優秀
ツクールシリーズリンク


概要

PC版の『RPGツクールシリーズ』の一作。 『VX』の後継作のようなタイトルであるものの、ユーザーインターフェース等が似通っていることを除けば特段互換性はない。 『VX』から続投となったスクリプトであるRGSSはバージョン3となり、より高速化、効率化が図られている。

新要素

  • データベースの設定項目として「特徴」が追加された。
    • 旧作では、属性の有効度やステートの有効度などはA,B,C,D……などの段階でしか設定ができず、細かい数値の設定をしようとするとスクリプトの利用が必須であったが、特徴ではある程度任意の数値で設定することが可能となった。
      • 例えば属性有効度はこれまでAであれば200%、Bであれば150%、Cであれば100%(つまりダメージに変動なし)、Dであれば50%……といった具合であり、特定の属性に20%だけ強い(有効度80%)といった設定や、非常に弱く3倍ダメージ(有効度300%)といった設定はデフォルトでは不可能であったが、本作では直接数値指定することで実現可能である。ちなみに、有効度は1000%(10倍)まで入力できるため、かなり自由度は高い。
      • 前作までの「前衛」「中衛」「後衛」の設定は要するに狙われやすさに影響があったが、本作では直接的に「狙われやすさ」というパラメータで設定できる*1。狙われやすさを0%にすれば、単体攻撃では全く狙われないキャラを作ったり、逆に狙われやすさを極端に高くすることで事実上他のキャラをかばうような挙動も実現できる。
      • 特徴の中には行動回数や反撃率などもあり、複数回行動できるキャラクターを作ったり、一定確率でカウンターをしたりするキャラもスクリプトなしで再現可能。
    • 特徴は、アクター(キャラクター)やクラス(職業)だけでなく装備品やステートにも設定することができるため、一時的に狙われやすくなるステートや、装備中は一定確率で反撃する防具などといったものも簡単に設定できる。
      • 特徴の中で一時的にスキルを追加したりスキルカテゴリを追加(例として「特技」や「魔法」)することも可能なので、装備中のみ魔法が使える、とか装備中のみ特定の特技が使えるといった設定も自由自在。
    • 特徴の設定項目は多岐にわたっており、アクターと装備などで同じ特徴が指定されている場合は必要に応じて加算や乗算などをしてくれるため組み合わせもしやすくなっている。
      • 前作までが大まかな設定しかできなかったというのに対し、緻密に設定することができるのでかなりこだわった設定で自由なキャラが作成可能となっている。
      • 一方で、命中率も特徴の設定に移行しているため、武器などの命中率を設定し忘れると特徴なしで命中率0という自体も起こりかねないためシンプルな作品を作る上では面倒と言えなくもないが、命中率が特徴に移行しているため、攻撃力を代償として命中率を犠牲にするステートなども実現がしやすくなっている。
      • この特徴は以後のPC版ツクールでも標準機能として搭載されている。
  • ステータスは運が追加された。また、『VX』の精神力は魔法攻撃力、魔法防御力に二分化された。
    • 「攻撃魔法が得意だが、魔法に対して打たれ弱い」とか「攻撃魔法は苦手だが魔法に対して打たれ強い」といったキャラクターが作りやすくなっている。
    • 運は状態異常の成功率等に影響を与えるパラメータとなっており、極端な数値でなければそれ程影響は大きくない。
  • スキルカテゴリが追加された。
    • 魔法や特技などを分けて設定することができるほか、キャラ固有のカテゴリを作ってスキルを分化可能である。
    • 上記のとおり特徴によって特定のカテゴリのスキルを一時的に利用可能・不可にすることもできるため、特定の種類の武器を装備中のみ使える技というのも作りやすい。
  • 二つ名と設定
    • 職業とは別に二つ名を設定できるようになった。
      • 職業と異なりパラメータなどに影響せず、イベントコマンドで変更可能であるため、気軽に使いやすい。
      • 『正義の剣士』などの正統派の紹介から『邪○心眼の使い手』などの中二病満載の紹介も作れる。
      • 二つ名についてはイベントコマンドで変更出来るため、物語の途中で二つ名を変えることも可能。
  • パーティの並び替え・隊列歩行(DQのような方式)ができるようになった
    • 旧作では「パーティメンバーは4人までで並び替えも不可」「マップ上は先頭キャラ1人が歩く」といったスタイルであっため、パーティの並び替えや隊列歩行はスクリプト導入が必須であった。
      • この機能がデフォルトで出来るようになったということで本作を買うきっかけとしたツクラーも少なくない。
  • スキルやアイテムのダメージの「計算式」が設けられた。
    • これまでスキルやアイテムには固有のダメージ計算式があり、特殊なダメージ計算式を導入するためにはスクリプト必須だったが、計算式の導入により「割合ダメージ」など特殊なダメージ計算式を持つスキルの作成がデータベースで完結するようになった。
      • 更に、計算式には変数も利用可能なので、変数を組み合わせれば「敵を倒した数でダメージが決定するスキル」や「逃げた回数が少ない程ダメージが大きくなるスキル」なども作成可能。
  • 新たなパラメータ「TP」の追加
    • これまでのMPとは別に戦闘での行動によって貯まる「TP」が追加された。
      • 使い方はプレイヤー次第だが、魔法と異なり、戦闘中の行動によって使える特殊技等を作ることが可能である。

評価点

  • 初心者にとって、作成できるゲームの幅が広がった(特に戦闘面)
    • 従来のツクールでは、スクリプトを使わない限り変更できなかった「戦闘計算式」をデフォルトで変更できる。
      スキル単位で設定できるため、これだけでキャラクターの特徴はおろか、ゲーム全体の特徴や世界観すら作り上げることも可能。
      • 計算式を自作できるのでバランス調整も容易に行えるようになっている。
      • 前作までは物理攻撃スキルは「防御力」、魔法攻撃スキルは「精神力」で判定を行っていた。
        だが、本作では計算式を用いることで放つ側の「攻撃力」-受ける側の「魔法防御力」でダメージを与えるスキル、というものも作ることができる。
        --従来のツクールでは状態やプレイヤー、スキルに設定できる要素が限られていた。
        しかし本作は「特徴」という、統一的かつ可変的なパラメータを用いることで、設定できる個性のパターンは事実上無限大に。
    • デフォルトで扱えるパラメータの種類が2つ増え、かつそれらの用途も「計算式」で変更しやすくなった。
      そのため、スクリプト無しでもキャラクター間の個性を出しやすくなった。
  • マップタイルの導入が簡単になった
    • 前作では限られた枠にしか入れることが出来なかったが今作では加工をすることもなく設定が可能に。
      • これによって様々な形のダンジョンが作れたり、過去から未来と言ったような演出方法にも使えるようになった。
  • アニメーションが豊富になった
    • 新たに加わった武器必殺技に加え、属性毎の召喚魔法も設定出来る。
  • 透明機能
    • オープニングで主人公を表示させたくない場合に使用する地味に便利な機能である。
      • これまでは、最初にアクターを入れずに開始する、グラフィックを設定していないアクターを使うといった方法が必須であった。
  • 影ペン
    • マップに建物などを配置した際に、描画ソフトのペンと消しゴムのような感覚で影の追加・修正を行うことが可能になった。
      • 自動作成される影にどうしても不自然な部分があった場合、容易に修正できるようになった。
  • イベントコマンドの充実
    • これまでのツクールにあった物は勿論、上記あるような便利なコマンドも加わって取っ付き易さが大幅に上昇している。
      • RGSSを使わなくても、一般的なRPGや簡素なミニゲーム程度なら自作できるレベル。
  • 全体的な高速・軽量化
    • 使用しているプログラミング言語・Rubyのバージョンがアップデートされ、処理が高速化したため、多機能化と引き換えに動作が遅くなるという問題を回避している。
    • プリセットスクリプトも、「必要最小限のスプライトのみ用意する」「画面外にいるキャラクターの自律移動処理を省けるようにする」といった軽量化を優先した構造となっている。
    • その為にVXやXPと比べて起動時の読み込みや動作がスムーズになっており、何度も繰り返す事になるテストプレイ時のストレスの軽減に繋がっている。
  • デフォルト設定が豊富
    • アクターや職業、モンスターやサンプルマップ等の素材が豊富であり、イベントさえ作れればこの素材をそのまま、或いは名前だけ変えて使うだけで一般的なRPGを短時間で作成できてしまう。
      • 一から作り込むユーザーには邪魔ではあるが、ツクールに不慣れで仕様を理解しにくいユーザーには優しい要素であるし、今作自体新要素が多いのである程度の指針が用意されて仕樣理解の時間が短縮できるという事はこれまでのツクールに慣れたユーザーにもメリットである。
      • また、有料で使用には手間がかかるものの素材がDEGICAツクールストア*2で販売されておりサポートも豊富。

賛否両論点

  • 似通った作品ができがち
    • イベントの簡易設定をはじめとしたデフォルトの設定が充実しているため、取っつきやすくなった反面、イベントコマンドなどで違いを見せないと似たような作品しか作れないという難点がある。
      • ただし、これはあくまで他人と似たような作品しか作りにくい、という話であり、自分だけで楽しむならデフォルトの機能が充実しているに越したことはない。
        スクリプトを扱えたとしても、デフォルトの設定で行う方が作業効率が良く、管理もしやすい。
    • RGSSがバージョンアップされ、高速化には成功しているのだが、記法が「行数が少なくなる分、高度な文法」を多用しており、補足のコメントも少ない為前作で作り慣れているツクラーはさておき、本作から始めたツクラーには厳しい。
      普通の文章で例えるなら、噛み砕いた表現だった部分が略語や専門用語に置き換わり、文字数が減ったのと引き換えに読み解くのが難しくなったようなものである。
      • 知識がある人間からすれば、効率よく作業出来るというメリットがあるが、初心者にとっては理解が難しくなるという結果を生み出してしまっている。
      • ただし、マニュアルのRubyの説明はかなり丁寧であり、しっかりと読めば知識なしの状態でも十分理解出来る。
        次回作ではマニュアルが不親切になってしまったため、ある程度仕様が似ている本作のマニュアルを次回作のプラグインを読み解く上で活用できるほどである。
  • キャラクター生成ツール
    • 自分で絵を用意出来ないツクラー向けに用意された機能であるが、正直残念な出来となっている。
      • 自分でオリジナルキャラクターが作れる! という触れ込みだがその実はRTPキャラとは馴染まない絵柄で、尚且つ真正面を向いている顔グラ*3であり、正直利用が難しいというのが本音。
      • どうしてもRTPのキャラを使いたくなく、オリジナルキャラクターを使いたいが絵は描けない、という場合には使えるかも知れないが、それにしてもこの絵柄を許容出来るかどうかはかなり微妙なところか。
    • ただし、歩行グラフィックはRTPと馴染むレベルのキャラクターが生成可能。そのため、顔グラフィックやピクチャ画像を表示する必要のない、モブキャラや町の住人のバリエーションを増やすには大変重宝する。
  • 発売当時は前作より価格が高かった
    • 前作のVXまでのPC版ツクールは10,290円(税抜9,800円)と10,000円前後で購入できたのに対し、Aceは12,800円(税抜)と以前のWin版ツクールに比べて高くなり、税抜価格が10,000円の大台を突破してしまった。
      • 前作になかったバトル背景や様々なイベントに対応できるBGM、そして前作での不満点は洗い直され、ツールとしては大幅に進化し、万人向けになっているので「使いこなせない」、「性能が自分に追いつかず物足りない」と言った事も起こりにくいため、値段相応の価値はある(少なくとも旧作に比べ理不尽に高くなっているということはない)が、手を出しづらいという印象は拭えないか。
    • PCゲーム配信サービスである『Steam』で「RPG Maker VX Ace」として発売されており、こちらはパケ版よりも格安(7000円)な上、時折割引セールが行われる時がある(70%OFF等)。
      当初は日本語版はなかったが、2016/2/6に日本語版が発売開始、そしてDEGICAツクールストアでもDL版が同価格帯で販売されるようになったので、実質7000円でVX aceがプレイ可能となったため、パッケージ版発売から約4年後のことではあるものの、現在では価格については(発売当初の)旧作より安価でプレイ可能となっている。
      • なお、『Steam』では無料版である『Lite』も配信されている。

問題点

  • 前作『VX』とのデータの互換性が皆無
    • 同じ『VX』の名が付くからと、発売前はVXからのデータの移行も出来ると思い込んでいたツクラーが多かったのだが、前述のようにシステム面の変更点が多い為、グラフィックや音楽など素材データぐらいしか共有出来ない。
      • これが判明してから、当初Aceへの移行を予定していたツクラーの中にはVXに留まったり、2000に戻る者もいた。
    • ただし、上記の「新要素」「評価点」を見てもわかる通り、VXから戦闘面でのカスタマイズ機能は大幅向上し、『VX』とは別物と言って良いほどに進化している。これまでの作品同様引き継げない方が寧ろ自然といえる。
      • 公式ページでも「データ互換はない」と記載されているものの、互換性があると勘違いされるような名前をつけてしまっていることは否めない。仮に『RPGツクールAce』という名称であればこのような勘違いは起きなかったと思われる。
  • midiファイルがインポート画面で表示されない仕様
    • midiとはツクラーにはお馴染みの軽くて有難がられる音楽ファイルの1つ
    • 実際にはAceでも問題無く使用出来るのだが、選択可能なファイル形式のリストから外れているため、「ファイル名の項目に『*.mid』と入力して検索する」という手順を踏まないとインポート画面の欄には表示されず、この仕様に多くのツクラーが戸惑った。

総評

『VX』の続編と銘打っているものの、実際のところはこれまでのツクールシリーズ同様新たな一作として正統進化したツクールといえる。
特に、RPGの根幹をなす戦闘面の設定は、スクリプト抜きで自由に設定できる要素が大幅に増え、初心者向けのRPG作成ツールとしてはタイトルよろしくまさに切り札といって差し支えない出来。
ニコニコ動画とタイアップしたコンテストも開催されるなど時代の流れにも合わせ勢いを大きく伸ばした。
効率化と引き換えに難解さが増した部分は否めないとはいえ、RGSSなしで初心者でも設定できる項目が増え、同時にRGSSの高速化により高度な処理も低負荷で行えるといった具合にインターフェース面はかなり優秀である。
最大の問題点は「タイトルに『VX』と名乗ってしまったこと」と言ってよく、ユーザーインターフェースこそ似ているが、完全に別作品としてみれば間違いなく優秀なタイトルと言える。

MZ』が発売されサポート終了してしまったものの、『MV』や『MZ』が発展途上であり、仕様が研究されて動作も安定しており、かつ、RGSSが使える最後のツクールであるこのツールを用いているユーザーも多い。

余談

  • 伝説のモンスター「スライモ」
    • Ace体験版が配布された時に入っていたサンプルゲームの登場モンスター。
      • 単に「スライム」の打ち間違えなのだが、その妙にしっくり来る語感のせいでツクラーの作ったゲームに「スライモ」が登場することも。
  • RPGツクール SUPER DANTE & RPGツクール2 楽曲データ集(デジタルリマスター版)
    • エンターブレインの通販サイトで購入すると貰える特典CD。
    • その名の通り、SFC2作のoggとmp3ファイルが入っているファンなら感涙ものの特典。
      • oggファイルは素材に使用することが出来る。
    • なお、現時点で上記特典CDに収録されている音楽素材が素材集としての一般販売はされていない。
  • その後、本作をベースとして、スマートフォンやブラウザゲームも作成可能なツクールとして『RPGツクールMV』が2015年12月17日に発売された。
    • 『MV』のシステムは基本的に本作を踏襲したものとなっており、ツールとしては本作が一通りの完成形であることがうかがい知れる。
      一方で、MVではRGSSが廃止されJavaScriptとなったため、RGSSを使ってゲームを作成出来るツクールとしては本作が最後となっている。
      • その影響もあってか、2016年7月時点で、Aceのパッケージ版は新品5万円、中古でも4万円という超プレミアがついている。
        この価格が、(RGSSを含めて)いかにAceが完成されたツールであるか、ということを如実に物語っている。
      • なお、先述の通り、ダウンロード版で構わないなら7,000円程度で購入出来る(クレジットカードがなくともコンビニ払いも可能)ので、パッケージ版が欲しいというこだわりでもなければDL版を買うと良い。
  • 2020年8月20日『RPGツクールMZ』が発売された際に、本作の技術的サポートが2021年1月24日をもって終了されることが発表された。
    • 同時にXP、VXもサポート終了が発表されたため、RGSSを導入したツクールは全てサポートが終了されることとなる。
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最終更新:2023年12月11日 21:56

*1 ちなみに、本作の仕様を当てはめると中衛が狙われやすさ100%だとすると、前衛が133%(中衛の4/3)、後衛が66%(中衛の2/3)となる

*2 DL版のRPGツクール公式販売サイト

*3 言ってしまえば、顔半分をコピペして反転させた左右対称顔である。鼻や髪形など完全な左右対称ではないが、どうしても違和感のある顔になってしまう。