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THE KING OF FIGHTERS '95

【ざ きんぐ おぶ ふぁいたーず ないんてぃふぁいぶ】

ジャンル 対戦格闘
対応機種 アーケード(MVS)
発売・開発元 SNK
稼動日 1995年7月25日
プレイ人数 1~2人(同時プレイ)
レーティング CERO:B(12歳以上対象)
配信 アーケードアーカイブス
【PS4】2017年4月27日/823円(税8%込)
【Xbox One】2017年3月30日/823円(税8%込)
【Switch】2017年10月12日/823円(税8%込)
判定 なし
ポイント 記念すべき八神 庵のデビュー作
シリーズの方向性を定めた意欲作
火力過多。ガードキャンセル万能説
対戦バランスは「あって、無いようなもの」
KOFシリーズ関連作品リンク


ストーリー

1995年。
KING OF FIGHTERSを開催する。
対戦方式は前回同様チーム対戦にて取り行う。
前大会参加者の再参加を心待ちにしている。
以上……。[R]

またもや世界中の強豪達の元に「キング・オブ・ファイターズ‘95」の招待状が届いた。
この差出人[R]は、果たして前年の大会で空母とともに自爆したはずのルガールなのだろうか?

今回の大会参加者の中には、前回のアメリカチームを破って「ビリー・八神・如月」のチームが出場を果たした。
新たな挑戦者を加え、アメリカチームを除いた前大会の参加者を巻き込み、
巨大な陰謀は「キング・オブ・ファイターズ‘95」を中心に渦巻き始めていた。


概要

SNKゲームの人気キャラが登場するオールスター対戦格闘ゲーム『KOF'94』(以下「前作」)の続編。
後に「オロチ編」に区分されるストーリーの導入部が描かれる。

前作の参戦チームからはアメリカンスポーツチームを除く7チームが続投。そして、新たに「ライバルチーム」が加わった。


特徴

  • 参戦キャラクター(太字は新規参戦)
    主人公チーム 草薙京 二階堂紅丸 大門五郎
    餓狼伝説チーム テリー・ボガード アンディ・ボガード ジョー・ヒガシ
    龍虎の拳チーム リョウ・サカザキ ロバート・ガルシア タクマ・サカザキ
    怒チーム ハイデルン ラルフ・ジョーンズ クラーク・スティル
    サイコソルジャーチーム 麻宮アテナ 椎拳崇 鎮元斎
    女性格闘家チーム ユリ・サカザキ 不知火舞 キング
    キムチーム キム・カッファン チャン・コーハン チョイ・ボンゲ
    ライバルチーム 八神庵 如月影二 ビリー・カーン
    中ボス 草薙柴舟
    最終ボス オメガ・ルガール
  • 「デフォルトの8チーム×メンバー3人」に「隠しコマンドを入力すると使えるようになるボスキャラクター2人」を加えた総勢26人のキャラクターから、3人1組のチームを組んで戦う。
    • チームエディットシステムが採用され、デフォルトの組み合わせ以外のチームを組む事ができるようになった。
    • 同システムは後継作にも受け継がれるが、元祖である本作のみ、キャラクター選択前に「チームエディットしますか?(YES/NO)」と問われる。以降のシリーズ作品では、最初からキャラクターを名指しで選択する方式になった。
  • 基本的なシステム面は前作のものを継承している。
    • 「『餓狼』+『龍虎』」システムをベースとした、3on3の1ライン2D対戦格闘。
    • 前作ではバグ的な存在だったテクのいくつかが、正式にシステムとして取り入れられた。
      • 大ジャンプ:レバーを上or斜め上に一瞬入れると、対空時間据え置きでジャンプの飛距離が1.5倍になる。
      • 6回以上の連続ガード時、またはパワーMAX時のガードポーズ中に、必殺技コマンドを入力するとガードキャンセルできる。
    • 前作で今一つ使いにくかったスルーアタックは廃止され、代わりに攻撃避け中に攻撃ボタンで出せる「カウンター攻撃」として再実装された。無敵判定はなく、全キャラが必殺技でキャンセル可能になっている。
    • 挑発のコマンドは「レバーニュートラル+B+C」に変更され、相手との距離と無関係に出せるようになった。
      • 挑発はキャンセル可能になるまでの硬直時間が付加された。
    • パワー溜めでゲージをMAXにした時のパワーMAX持続時間が、前作の10秒から15秒に増加した。
    • 勝利時の体力回復のバランスが変更され、残りタイムによる回復量の差が大きくなった。
      • 前作では残りタイムによる変化が少なく、最低回復量が多めだったため回復量が比較的安定していた。後のシリーズでは本作の回復量が基準となっている。
    • ガードキャンセルの手段が増えたためか、必殺技の削りダメージが前作の「ヒット時の1/8」から「ヒット時の1/4」に増加した。
    • 前作の空中ふっとばし攻撃はジャンプ強Kとグラフィックと当たり判定を共用していたが、本作からは専用のモーションが用意されている。
  • 純粋にお祭りゲームとして作られていた前作と比べると、本作ではKOFシリーズ独自路線のストーリー展開、キャラクター設定を前面に押し出す作りになっている。
    • 主人公チームの筆頭メンバーでありながらストーリーが薄く空気気味だった主人公「草薙 京」に対応するライバルキャラクター「八神 庵」が今作で初登場し、日本古来の"三種の神器"の力を守る一族と、その敵対勢力である「オロチ」の一族の戦いという明確な背景設定が明かされた。
      • 庵は美形キャラクターながらバンドマン風の特徴的な衣装やヘアスタイル・「青い炎を操る」「完全に悪人ではないが悪役寄り」などのいわゆる「中二病」心をくすぐる設定の数々により、京とともに若年層と女性を中心に爆発的人気を獲得。このような典型的な「邪気眼」キャラを1995年という早い時期に登場させていたことは注目に値する。そのキャラクターデザインのセンスは卓越したものであった。
        京と庵の人気は瞬く間に広く浸透、シリーズは勿論、対戦格闘ゲームを代表するキャラクターの一人となり、シリーズに抱く第一印象は「KOFといえば京と庵」というファンも多い。
    • 中ボスとして京の父親「草薙 柴舟」が追加登場*1。前作のラスボスだったルガールも「オメガ・ルガール」となって再登場した。この二人はアーケードでも隠しコマンドを入力することによりプレイヤーも使用可能(しかも性能はほぼそのままで、特にルガールは三強に入るトップクラスの強さ*2)。
  • 全体的に技の隙が小さくなり、前作と比べるとゲームスピードは少し上がった。また、コマンド入力受付の引っかかりが緩和されている。
    • 「パワーMAX中は攻撃力1.5倍」も含めもともと一撃あたりのダメージの大きいゲームだったところ、
      今回は「MAX状態中に受けるダメージ1.125倍」も追加されたためにゲーム展開は相当に早回しとなっている。
  • 前作からの続投キャラクターは、ハイデルンを除いて新必殺技が追加されている。
    • 厳密にはタクマ・サカザキに新必殺技の追加はないが、前作でコマンド投げ技だった翔乱脚が弱でコマンド投げ、強では移動投げと技の性質に変化がある。
    • 『餓狼』『龍虎』出身キャラも、アンディの「撃壁背水掌」やユリの「ユリちょうアッパー」などのように原作にはない必殺技が追加されたキャラクターもあり、KOFシリーズとしての独自色を強めていくこととなった。
    • これに合わせ、幾つかの必殺技は削除された。
  • ステージデモがスキップ可能になった。
  • 今作より超必殺技のコマンドがインストカードに掲載されるようになった。

評価点

  • チームエディットは大好評。
    • もともと1クレジットで3人も遊べる仕様はなかなか太っ腹であると評価されていたが、今回からキャラクター選択の縛りもなくなった。
      同社発の人気作品から参戦してきたお気に入りのキャラクターを好きに組み合わせて使えるのはファンにとって喜ばしいことであり、ゲームの自由度も格段に増した。
  • 小技連打などの安易な戦法が弱体化した。
    • 例外として影二と柴舟は屈み弱Pを連打可能で、柴舟はそれだけで気絶に持って行けたりする。屈み弱Kを刻んでキャンセル必殺技に繋げられるキャラも未だ多い*3
  • ドラマチックなストーリー。
    • ライバルキャラクターである庵は、本来三種の神器の守護側でありながら宿敵「オロチ」の勢力とも関わりを持つ一族という微妙な位置づけのキャラクターとして登場し、その強烈なキャラクター性で主人公のキャラクターを引き立てている。
    • 庵の所属する新たなチーム名は「ライバルチーム」であり、残りのメンバー2人もそれぞれ『餓狼伝説』のビリー・カーン、『龍虎の拳』の如月影二という敵方キャラクター*4という配役の妙が効いている。
    • デモ絵は、クセの強かった前作と比べ、万人向けのスッキリと見やすい画風になった。
  • SNKのお家芸とも言える迫力満点の多種多様な効果音。
    • 各技や攻撃、ガード、被ダメージなど各種アクションに応じたSE(効果音)が用意されており、試合を盛り上げてくれる。
    • 音は全体的に重厚で、強く弾いた感じが強め。その傾向は同社の『龍虎の拳』シリーズでお馴染みの独特な打撃音まで採用されているほど。また、投げ技で叩きつけたりした時などに鳴る爆発したような音や、ガードした時の重く受け止めたような音も人気が高い*5
      • 加えて、それら重い音に相応しく?全体的に火力が高いことも相まって印象に残る。

問題点

  • キャラクターバランスは非常に悪い。
    • 強キャラ同士であればいい勝負になるのは確かだが、弱キャラで強キャラに勝つのは至難の業。いくら後述するパワーMAXによる攻撃力強化や同時に使えるようになるガードキャンセルという強力なシステムが全キャラに共通システムとして用意されているとはいえ、その差は覆せないほど歴然なものとなっている。
      • 余りにも差があるため、いわゆる「弱キャラだが強キャラには相性で勝負できる」ということが本作にはない。
    • 前作ではチーム単位で総合的な戦闘力のバランスを取る方向で調整されていたが、チームエディット可能になったためそういったバランスは消滅。対戦末期で見かけるキャラは京、庵、ハイデルンやルガール(コマンドで使用できるボス)ばかりだった。
      • 京/庵/ルガールが不動の三強であり、その下に極めれば強いとされる舞/影二と対応能力の高いハイデルンが位置付けされている。
      • 近年行われている店舗大会ではコスト制(キャラごとに数値を割り当てて、決められた値内でチームを組む)を取り入れてる場合が多い。例を挙げると、最強格の京は合計コストと同等コストになっているため、残りの二人は最弱キャラ数人から2人選ばなくてはならないため非常にリスキーとなる。
    • キャラ差の特殊な例として「餓狼ステージでの鎮vs庵」がある。開幕・操作可能直前に両者が奥からステージに飛ぶ演出があるのだが、鎮が飛んで地面に着地するのが庵より遅い。先に着地した庵はまだ演出中の鎮に攻撃ができ、鎮は避けることもガードすることもできない。問答無用の先制攻撃が可能なこの状況で庵は半永久コンボに持っていくことができる。*6
      • 半永久と言ったのは庵の永久(後述の強弱すり替えバグを利用して空中の相手に葵花を当て続ける)は画面端に到達すると途切れてしまうため(所謂「お手玉、準永久」)。実際は上記の状況では即死コンボにならず、かつて言われていた「鎮側が絶対に勝てない=10:0」の組み合わせというには語弊がある。
        とはいえ、体力が殆ど消えた上で画面端を背負って起き攻め食らうのだから、鎮側は8:2くらいの歴然の差を理不尽に背負わされているのに変わりはないが…。
      • と長らくの間上記状況下での10割コンボは半ば都市伝説扱いされていたが、2023年10月28日に現役勢J・M氏により10割コンボが達成された。
      • 同氏は離陸入力というジャンプ動作キャンセルで出す葵花(コマンド:2147P)を使用する事でこれが実現したとしている。
        当初は2P側での達成であったが、後に同氏の検証により1P側でも可能なことが確認された。
      • なお、下記のランダムダメージの概念により、実際には改良コンボパターンを使っても即死し切れないこともある。ただ、J・M氏は即死し切れなかった時の対策も構築しているため、鎮側が詰みであることには変わりないとの事。
      • これら10割コンボ周りの動画は現在も動画サイトにアップロードされているので、興味のある方は視聴してみるのも一考。
      • 根本的な話をしてしまえば、そもそも操作可能にする前に両者着地させるのは当然の処理だと思うのだが……。
    • 逆に弱キャラとされているのはビリー、チャン、チョイ辺り。共通点としては連続技に乏しいことが挙げられる。ビリーに至っては後述するように限定的な状況で相手を一撃即死させられる一方で、基本技の弱さから弱キャラとされている。
  • 平均火力とあいまって強すぎるガードキャンセル
    • この時代のガードキャンセルは、本当にただ「ガードモーションの隙をキャンセルして必殺技を出すだけ」のものが主流でガードキャンセルを出すのにゲージなどのコストやKOできないといった制限も一切なかった。本作もその流れに沿い成功時の無敵による発生保証が無いが、必殺技だけでなく超必殺技も出すことができた。
      • その条件とは、連続ガード6回、またはパワーMAXなら1回目からガードキャンセルでコマンド技を出せるというもの。つまりパワーMAXの相手に攻撃をガードされたらガードキャンセル超必殺技で返されて大ダメージまたはKOなんてことも普通に起こっていた。
    • これにより、後期の対戦シーンでは待ちプレイが横行した。ビリーのように超必殺技の威力が非常に高いキャラはもちろん、ただでさえ強キャラの1角であるルガールに待たれるとパワーMAXジェノサイドカッターで体力半分持っていかれたり、さらに強い京からは即死コンボパーツである七拾五式・改の脅威におびえなければならなくなった。
  • 即死・永久連続技が大量に存在する
    • 主人公である草薙京を例に挙げると、新技の七拾五式・改と弱強すり替えバグで手軽に即死連続技が作れる。つまりすばやく『236B236D』の繰り返しだけで永久(パワーMAX時は画面端のみ)。
    • しかも弱七拾五式・改は小足や攻撃避けからのカウンター攻撃*7からでも繋がってしまうため、冗談抜きに京から打撃を一発でももらったら即死確定という有様であった。
    • 京のこれは極端な例だが、そうでなくとも火力過多。当時は格闘ゲーム界全体が攻撃力インフレ傾向の真っ只中だったせいか、本作も例に漏れず技の威力が平均的に上昇。
      • パワーゲージMAX時は特に顕著。どのキャラも強攻撃2回ヒットで体力半分ぐらい、超必殺技なら単発でも約7割前後はザラに消し飛ぶ。
        特にわかりやすい例として、両者MAX状態でビリーの超必殺技、もしくは攻撃側がMAX状態&体力ゲージが赤い状態でビリーや紅丸の超必殺技を根元からクリーンヒットさせるとノーダメージ状態から即死することもある*8。本作の中でも屈指の弱キャラであるビリーですら一撃で即死に持ち込める可能性を持つのだから、バ火力度合いは相当なものである。
      • 「必殺技ガード時の削り量がヒット時の1/4」になったため、鎮の超必殺技などは「ヒット時は1ヒット、ガード時は4回削り」のためヒットしてもガードしてもダメージが変わらない事態にもなった。*9
    • 本シリーズには体力の減少によって防御力に上昇補正が掛かる根性補正システムがあるのだが、本作では内部的な体力の値ではなく画面上の体力ゲージ表示を対象に使っているため、攻撃がヒットしてから防御力が上昇するまでにタイムラグがある。
      • つまり「相手の体力ゲージが減っている間に攻撃を当てると(状況によっては)防御力上昇をある程度無視したダメージが入る」という逆コンボ補正が存在する。
    • 加えてランダムダメージ*10の概念もあり、同じ相手、同じ状況で同じコンボパターンを使っても即死しきれなかったり気絶しない事がある。
  • 例によってCPUが極悪。
    • 前作もそうであったように、この頃の格ゲーのCPUの超反応は珍しくないが(特に同時期のSNK製やネオジオ発なら尚更)、このゲームのCPUは一つの行動に対する反応を最大8種類からランダムで決定するため、超反応とランダムな動きの割合が絶妙で大変嫌らしい。うまいことCPUを操ることが出来なければクリアは遠い*11
    • ボスに辿り着くまでの時点で既に難しいが、そのボスも当然ながらさらに難しく、しかもただでさえ超反応で強すぎる中ボスの草薙柴舟とラスボスのルガールと連続で戦わされることになる。
      • 「連続」の意味を詳しく説明すると、柴舟とルガールは同一ステージの1チーム扱いで、前者を倒した際に倒されたこちらの人数が、後者との試合で復帰することがない。倒す際に減った体力も当然ながら全回復しない。つまり実質「柴舟とルガールの2人チーム編成」状態となっているのだ。中ボスとラスボスの区分けとは一体.....。
    • これだけでも極悪というのに、CPUには専用の攻撃力・防御力補正までかかっている。またCPUのルガールは前作の1ラウンド取得時と同様、気絶値の回復が速いため絶対に気絶しない*12
    • 例外は『餓狼伝説』の主人公テリーで、通常のCPU戦と同じくクラックシュート→パワーダンクを繰り返すだけで簡単にクリア可能。これは当時のゲーメストの攻略記事でも紹介されていた。
  • キャラクター選択画面の制限時間があまりにも短すぎる。
    • 『'94』と『'98』を除くネオジオ時代の『KOF』全体の問題点。本作からキャラクターの組み合わせを自由に選べるようになったのだが、制限時間が前作と同様に15秒しかない。
    • この15秒の間に3人選ばなくてはならないので、1人当たりの制限時間はたったの5秒。キャラクターの配置を覚えなければ目当ての組み合わせにするのは困難と言っていい。
    • 本作含めて隠しコマンドを入力してボスを出すのにも、(コマンドを事前に知っているのは前提としても)やはりこの制限時間の短さがプレッシャーとなってしまっている*13

総評

オールスターお祭りゲーム(『サムライスピリッツ』を除く)というだけでなく、『KOF』の一枚看板を背負えるまでにシリーズが躍進したのは本作の存在が大きかったと思われる。
これ以降、SNK世界の格闘大会『King Of Fighters』が『餓狼伝説』などにおける背景設定のみの言葉ではなくなると同時に、『餓狼』『龍虎』『サムスピ』に代わる新しいNEO・GEO看板タイトルとしての地位を確固たるものにした。
空気気味だった主人公たちも存在感が増し、ライバルともども『餓狼』『龍虎』勢に負けない人気キャラに育っていった。

対戦格闘ゲームとしてのバランスは大味もいいところで、一般的な格闘ゲームの範疇で内容を吟味した場合に良作に当てはまるか否かの判断は難しい。
しかし、本作のコンセプトが「SNKの人気キャラクターが戦うお祭り格闘ゲーム」である事をふまえた場合、それは致命的なマイナスにはなりにくい。
チームエディットシステムもその通りであり、バランスを悪化させた欠点というよりユーザーの望む形をそのまま叶えた長所だといえる。
この大胆なチャレンジ精神が、後のシリーズのアイデンティティを固めていく足がかりになった事は確かだろう。


家庭用移植

※全てSNK製。

  • 家庭用ネオジオ(ROM)版(1995年9月1日発売)
    • MVS(業務用ネオジオ)と同規格であるため、当然ながら完全移植。
  • ネオジオCD版(1995年9月29日発売)
    • 94以上にロードが長くなったが、CD版限定で新たなKOFの幕開けを予感させる予告や、「サイコソルジャーチームでクリアすると、スタッフロールの演出及びBGMが変化する」などの演出が追加されている。
  • セガサターン版(1996年3月28日発売、開発:るつぼゲームズ)
    • SNKが自社で発売した、他社ハードへ移植したネオジオ作品は本作のサターン版が初となる*14。ちなみにSNKが他社ハードにサードパーティーとしてソフトを卸したのも、1990年にゲームボーイで発売した『ファニーフィールド』以来約6年ぶりであった。
    • 専用の拡張ROMが同梱されており起動に必須となる*15。その性能は劇的であり、当時のディスク媒体の格闘ゲームにおいてロード待ちのストレスを感じさせない*16程のスムーズさと、高い移植度と相まって良移植として評価が高い。しかし弱点として拡張ROMが接触不良になりやすく、この現象に陥ってディスク単体になると起動できないという問題点がある。ベースはネオジオCD版だがサイコソルジャーチームのエンディング以外のBGMはROM版のものとなっている。
    • 後の96、97では通常の汎用拡張RAMを使用しており、当然ながら本作の専用ROMとは互換性がない。後に96・97セットで発売された『KOFベストセレクション』にも本作のみ専用ROMつきで入っている(他2作品は別途汎用RAMが必要)。
  • プレイステーション版(1996年6月28日発売)
    • NCD版程ではないにせよロード時間が長いばかりか、移植度までもガタガタとかなり評判は悪い。しかも再現度が悪いだけでなく、PS版で新たに大量のバグが発生してしまってもいる。また、ロード画面も共通していたNCDとサターン版から変更されており、そちらはセンスの良い各キャラクターの描き下ろし白黒イラストが用いられていたり配置がなされていたのに対してこのPS版のは単に対戦キャラクターのニュートラルポーズの静止画を貼っただけと手抜きでセンスが悪い。
      ちなみに、LRボタンで必殺技を出せる1発出し機能が搭載されている。
    • 2007年5月31日からPS3/PSPのゲームアーカイブスにて配信中、要600円。データベース機能が搭載されているのが他の移植版との大きな違いだが現在ではオムニバス集やアケアカなどで手軽に遊べる完全移植版の存在からほぼ買う価値はない。
    • 数少ない評価点としては、アーケード/ネオジオ版や他の移植版とは異なりCPU戦がある程度易しくなっているため、クリアしやすくエンディングを自力で見るのが楽になっていたり、「同じキャラ3人でチームを組める」裏技がPS版独自の追加要素としてある事が挙げられる。
      あとは大量発生しているPS版独自のバグが「ネタとして笑える意味で」価値があるくらいか
  • かつてはWiiのバーチャルコンソールやPS3・PSPのネオジオステーションでも家庭用ネオジオ版が配信されていたが、現在は終了。これらは購入済みであれば現在もプレイ及び再ダウンロード可能なほか、後者のPS3版ではネットワーク対戦にも対応している。
  • オムニバス集 ※全てSNKプレイモア製。
    • 『NEOGEO オンラインコレクション ザ・キング・オブ・ファイターズ -オロチ編-』(プレイステーション2、2006年4月20日発売)
    • 『ザ・キング・オブ・ファイターズ ポータブル '94~'98 チャプター・オブ・オロチ』(プレイステーション・ポータブル、2010年6月24発売)

またこれらの移植以外にもタカラから熱闘シリーズのひとつとして本作をベースとしたアレンジ移植版が発売。

  • ゲームボーイ版『熱闘ザ・キング・オブ・ファイターズ'95』(1996年4月26日発売)
    • 出場キャラクターが大幅減少しており、デモもBGMも少ないと言った欠点があるが、本作独自の隠しボスとしてサムライスピリッツシリーズからナコルルが登場。ちなみに、番外リメイクではあるがこの作品が初めてサムスピのキャラクターが登場したKOFとなっている。
    • 勝ち進んでいくとルガールの秘書バイスが報告を行うデモは再現されている。が、次回作では相方に出場枠を取られ彼女自身は欠場となった。

その後の展開

続編『KOF'96』では、システムの大枠が変わった事で発売当初は評価が割れた。ストーリーとしての「オロチ編」は、後の『KOF'97』まで続く。


余談

  • 相変わらずバグは多かったが、戦術として有効利用できるものの大半が残っている。
    • ゲーメスト制作の攻略ビデオではシステム解析で「強弱すり替え(強弱切り替え)」「投げキャンセル」「強制キャンセル」が解説されていたりと、半ば仕様として受け入れられていた。
    • もっとも開発スタッフのインタビューでは前作のバグをある程度意図的に残したとしているため、正式な仕様と考えられるものもある。
    • キムの仕様に関しては『'96』以降の空中鳳凰脚や後の覇気キャンなど、本作までのバグを由来としたような特性が多い。
+ バグについて
  • 強弱入替……特定の必殺技を弱で出した直後、間髪をいれずに同じ技の強のコマンドを入力することで、発生した弱版の動作による必殺技に強の性質を持たせることができるというもの(逆も可能)。
    • 例えばバーンナックルの場合、弱から強に切り替えることで、弱版の発生の早さと強版の長い移動距離を兼ね揃えた状態になる。
    • 弱強弱、強弱強と複数回の入替も可能。
    • 最速入替…サイコリフレクターの場合、641236BCと入力する事で強の攻撃持続の弱サイコリフレクターが出せる(入力途中の623Cで強サイコソードのコマンドが完成している為)。
  • 強制キャンセル……ボタン連打で出る必殺技を持っているキャラは通常4連打で必殺技が出るが、その4度目のボタンを押した時に他必殺技のコマンド入力が完成していると他必殺技が出る、しかも出した通常技がキャンセル不可能な技でもそれをキャンセルして出せる。
    • これはボタン連打技が「本来キャンセル不可の攻撃でもキャンセルして発動する」、そして複数の必殺技が同時に成立した場合の優先度が「連打技」より「コマンド入力技」の方が高く設定されているために「キャンセル不可技からキャンセル可能な連打必殺技を出そうとするが、それを更に他の必殺技が上書きして発動」という流れになっている。
  • 投げキャンセル……成立条件が設定されている必殺技(必殺投げ・爆裂拳フィニッシュ・極限流連舞拳・極限流連舞脚)が成立しなかった場合、硬直が解けて即座に行動可能になる。必殺投げでよく使われるのが名前の由来。
    • 例:ジョーが通常技をヒットかガードさせた直後に爆裂拳フィニッシュを入力すると、技が出ないまま通常技のモーションがキャンセルされる。爆裂拳は連打コマンドなので、先の強制キャンセルと組み合わせると10割コンボもできる。
  • 空中超必殺技……リョウ・ロバート・キム・拳崇・舞は空中必殺技と超必殺技のコマンドを重複させるように入力すると、後者が優先されて空中で超必殺技が使える。原理は連打キャンセルと同様に「空中必殺技を認識→それをさらに優先度の高い超必殺技で上書き」という形。
    • このうちリョウの龍虎乱舞とキムの鳳凰脚以外は条件が複雑になっている*17
    • コマンドの優先順位の関係上、舞は通常必殺技の飛翔龍炎陣も空中で出すことができる。
  • 援護攻撃の相性の設定ミス
    • 本作より援護攻撃におけるキャラクターの「相性」が設定されるようになり、特定の相手に対して「相性が悪い」となっている場合は絶対にその味方への援護が発動しないようになった。とは言え、本作で設定されているのは、京と庵は互いに援護しない、柴舟はルガールに対してしか援護しない、等ごく一部のみだった。
    • そして、ラスボスのルガールは部下である洗脳した柴舟とCPUロデム以外の援護を受けられない…という設定のはずだったのだが、何故か悪を憎むはずのキム・カッファンもルガールを援護する貴重なメンバーの一人に加わっているというミスが存在する。その他のキャラクターはほぼ全員ルガールを援護しないのにもかかわらず、である。
      • もちろん『'96』以降は修正され、キムは悪人キャラクター全般を援護しないようになった。

また、その後のプレイヤーの研究によって発見されたバグも数多い。

  • 多段百合折り……庵が屈み状態からジャンプするか、もしくはレバー入れっ放しでジャンプを2回行い、着地の直前に百合折り(ジャンプ中に4+D)を出すと最大3ヒットする。
  • 必殺技の中段化……一部の必殺技を離陸入力(ジャンプの呼び動作中に必殺技コマンドを完成させる)など特定条件下で出すと、使用キャラに「屈んだ相手との押し合い判定が無くなる」貫通属性が付加され、キャラの組み合わせによっては屈み状態の相手を貫通する。この属性が付いた必殺技を、使用キャラが相手の背後に抜ける瞬間に当てると下段ガード不能になる。
    • また、必殺技コマンドの成立直後に攻撃避けを成立させると押し合い判定が無くなる(接触消失属性)為、こちらは相手キャラを選ばず貫通する。
    • これは「振り向き動作中は下段ガードできない」という仕様によるもの*18
  • ガードキャンセル不能……ムーンスラッシャーが出ている間、相手はガードキャンセル技が出せない。具体的には、直接ガードさせたムーンスラッシャーと、お互い画面端で弱クロスカッター→ムーンスラッシャーと出した場合の弱クロスカッターがガードキャンセル不能。
  • 必殺技・超必殺技以外でのガードキャンセル……上記の投げキャンセル可能な必殺技をガードキャンセル技として入力して成立しなかった場合、コマンドの最後の入力に対応した通常技(条件によっては投げ)が代わりに出る。例えばジョーの爆裂拳フィニッシュ(強)のコマンドは「236+C」なので、ガードキャンセル立ちCもしくはC投げが出る。
    • このガードキャンセル通常技を発生前にさらにキャンセルすることで、様々な行動でガードキャンセルが可能*19。例としてジョーの場合は「立ちAorC・屈みAorC・昇りジャンプAorC・C投げ・ジャンプ・大ジャンプ・攻撃避け」でのガードキャンセルが確認されている。
  • ブロッキング(仮)……ロバートのガードキャンセル極限流連舞脚が成立しなかった場合、ガードが解けていきなり行動可能になる。一部他のキャラクターでも可能だが、そちらはTASレベルの操作が必要*20
  • 他にもかなりの数のバグが発見されている。
  • 登場人物がプロフィール上で前作から「歳を重ねた」のは本作のみで、以降は年齢がオリジナル・客演キャラ問わず固定となった*21
    • そもそも本作はオールスターのお祭りゲームという性質上、時系列上では『餓狼伝説』シリーズと、それの過去にあたる『龍虎の拳』シリーズのキャラ達が、時系列を無視してそれぞれの作品上での年齢と姿で一同に会しているパラレルワールドの時点で、客演キャラ達の出典元作品に基づく整合性は一旦無視している為、本作に限って言えば年齢という概念も結局「あって、無いようなもの」とも言えるが。
    • しかし本シリーズ自体のメインストーリーは普通に進行しているため、この影響で本作以降「大会の西暦は普通に1年ずつ進むのにキャラクターは一切年を取らない」という奇妙な世界観になってしまっている。
  • 当時ほぼ全キャラの即死連続技が開発されていたが、発売から長い時間を経た後もレベルの高い大会が開かれた。
  • 前作から唯一続投しなかったアメリカンスポーツチームの「ヘビィ・D!」は、立場を同じくする「藤堂竜白」(『龍虎』→『龍虎2』で唯一消えたキャラクター)とともに背景で登場
    • 彼らは同じ背景にいる『餓狼伝説』の「ダック・キング」と共に、KOF背景トリオまたはデラレーズと言う名前をファンにつけられて散々ネタにされた他、公式としても彼らは後のKOFで毎回背景として登場するお約束となった。
    • このうちヘビィ・D!とダックは後のKOFにプレイアブルとして出られたものの、藤堂は娘の超必殺技の演出やストライカーで似たような人物が出た事があれどプレイアブルとしては未だに出演していない…。
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最終更新:2024年04月05日 23:37

*1 前作の日本(主人公)チームのボス前デモで登場していたが、本作ではその後ルガールに洗脳されたという設定となっている。

*2 それでもルガールは飛び道具の硬直の増加やジェノサイドカッターの無敵時間の短縮といった、プレイヤーが使用することを前提とした調整を受けている。

*3 98以降は屈みBから直接キャンセル出来るキャラクターがほぼ居なくなった。

*4 庵以外の2人は前作ではメキシコステージの背景に登場している。

*5 後の『'98』のリメイクこと『'98UM(及びFE)』では、隠しキャラクターの'95草薙京(本作準拠の京)を使用した場合のみ、ガードさせた時の音が『'95』のそれと同じものになるオマケでありファンサービスが用意された。またその作品では龍虎チームの各裏キャラクター使用時のみ、『龍虎の拳』の打撃音も各技をヒットさせた時に鳴る。

*6 もっともこの開幕の演出は1ラウンド目のみのものとなっているので、これに関して「だけ」言えば鎮を1番手にしなければ回避は可能となっている。

*7 京のカウンター攻撃は発生が早くリーチも長いという全キャラ中飛びぬけた高性能でヒットさせやすい。しかも間合いによっては地上めくりが可能。

*8 通常ならこれらの技が根元からクリーンヒットすることはまずないのだが、本作はガードキャンセルで超必殺技を出すことが可能なため充分実戦で狙えるレベルである。

*9 多段ヒットする攻撃には「ヒット・ガードさせる毎に攻撃力が半減する」という補正が掛かるのだが、必殺技に関してはポーズが変わる毎に補正がリセットされるものや全く補正が掛からないものなど、補正の掛かり方が個別に異なる。

*10 「ストII」にも存在した仕様で、各技の攻撃力自体は決まっているが、実際のダメージ決定の際にランダムで振れ幅が設定されている。今作のように気絶値にも振れ幅が存在する場合もある。

*11 テリーは弱クラックシュートをCPUにガードさせ、その直後にパワーダンクを出すと反撃しようとしたCPUにカウンターヒットするのでパターン化が簡単に出来る。ルガールを使うと立ち弱K・しゃがみ弱Kとダークバリヤーだけでもクリアできる。

*12 タクマの龍虎乱舞による演出上の気絶はする。ちなみにペットの黒豹の援護攻撃は継承されているので、ルガールにつかみ技を決めれば援護攻撃を見ることが出来る。

*13 隠しコマンド入力の度に制限時間がリセットされる『'97』やそのコマンドがスタートボタンのみの『'98』と例外もあるが。

*14 それまでの他社ハードへの移植作は、SNKからライセンス許諾を受けていた各社からの発売しかなかく、代表的な一社のタカラ(現:タカラトミー)による移植は品質が芳しくなかった。

*15 このCD-ROMとROMカートリッジの両方を使用する「アドバンスドROMシステム」を採用したのは、本作の他はバンダイの『ウルトラマン光の巨人伝説』のたった二本で、なんとハードメーカーのセガは対応作品を一切出していない。

*16 ローディング自体はは発生するものの、起動時を除けばローディング画面を認識したらすぐにロードが終わってしまう程速い。同キャラ戦だとほぼ一瞬。

*17 キャンセル可能な空中技を(空振り)キャンセルした上で、コマンドの最後のボタン入力をずらす必要がある。空中超必殺忍蜂を例に挙げると「632147D→6BC(BCはズラし押し)」というコマンドになる。

*18 「ロバートに密着して出したクラークの近立D」など、特定条件下で下段ガード不能になる攻撃は前作の時点で存在する。

*19 本作の地上通常技など一部のアクションは入力された時点では発生が確定しておらず、その後の3フレーム間の操作で別アクションに移行できるものがある。これは技の引っ掛かりを無くすための仕様と思われる。

*20 ガード中に投げキャンセル可能な必殺技と他の必殺技のコマンドを重複させて入力し、後者の1フレーム後に前者を成立させる。ジョーなら1236+BorD、1フレーム後にAorCなど。

*21 本作で唯一出場を逃したアメリカンスポーツチームの3人は、『'98』で再登場した際に『'94』から1つ歳を重ねている。