プロ野球ワールドスタジアム

【ぷろやきゅうわーるどすたじあむ】

ジャンル 野球
対応機種 PCエンジン
メディア 2mbitHuカード
発売・開発元 ナムコ
発売日 1988年5月20日
定価 4,900円
プレイ人数 1~2人
判定 なし
ポイント 賛否両論のエラー
手強い隠し球団とやや過度な悪ノリの謎チーム
ファミスタシリーズリンク


概要

  • ファミコンのヒットタイトル『プロ野球ファミリースタジアム』(以下86年度版もしくは87年度版と表記)のPCエンジン版。プラットフォームをPCEに移し、グラフィックとサウンドを強化、一人用で勝ち進むと手強い隠しチームとの対戦が待っている。同名の業務用ゲームがあるが、本作の内容はファミコン版に近く、業務用にあった球場選択やオーダー変更といった要素は存在しない。

ゲーム内容

  • ゲームモードはファミコン版同様、勝ち抜き戦の1Pモード、2人で対戦する2Pモード、COM同士の試合を観戦するWATCHモードの3つからなり、1Pモードはパスワードによる継続プレイが可能、なおパスワードは4桁から3桁に変更となっている。
  • 選手データは87年度版をベースにB.ガリクソン・D.デシンセイ・T.ハーパー・長島一茂などの新入団選手を追加、選手名はほぼ実名での登場となったが、ファミスタシリーズの無認可実名使用は本作が最後となった。
  • 使用できる球団が2つ減り、86年度版と同じ10チームとなる。ただし操作できない隠し球団(後述)が6つあるためチーム数そのものは87年度版よりも増加している。
  • 隠しチームが登場。1人用を勝ち進み、プレイヤーが選択できる9チームを全て倒すと、隠しチームが出現。87年度版から登場したMチーム(メジャーリーガーズ)の他、往年の名選手が集結したOチーム(オールドスターズ)、野球漫画の選手が集まったAチーム(オールドリームス)と対戦することになる。この3球団はCOM専用球団であるため通常は操作できないが、2Pモードで隠しコマンドを使用すれば2P側のみ使用可能である。
    • Mチーム、Oチーム、Aチームは選手が打席に入る際に専用のジングルが流れる。
    • この他、選手の全身が黒・赤・白のシルエットとなっているチームが存在する。黒チームは選手名を著名なファミコン作品タイトル、赤チームはアーケード作品タイトル(いずれも他社作品含む)のもじりに変更したオールドリームスの流用チームで、白チームはロッテをモデルとしたチームとなっている。いずれも通常のプレイでは登場せず、パスワードの入力によってのみ対戦できるCOM専用球団である。

      登場する隠しチーム、黒・赤・白チームには正式な名称が無い

  • 「エラー」という要素が登場。野手がゴロをはじいたり、フライを落球することがある。エラーをした野手は一瞬その場で硬直するため、ほとんどの場合打者走者の出塁を許すことになる。選手個々には守備データという概念がないため、発生率はチーム毎に設定された「エラー確率」によって決まり、プレイヤーが選択できるチームではNチームが最もエラーをしやすく、Lチームが最もエラーをしにくくなっている。
  • 1988年3月の東京ドーム開場を受け、本作の舞台となるピッカリスタジアムもドーム化され、「ピッカリドーム」となった。ドーム化に伴い演出が変更され、打球が外野部分に当たるとその部分に穴が開きホームランとなる、内野部分であればそのまま真下に落下し捕球すれば通常の飛球同様アウトになるという特殊ルールも登場。

    ピッカリドーム、刷新されたナムスポ

評価点

  • 強化されたグラフィック。PCEのスペックを生かし、陰影まではっきりしたユニフォーム、バットの木目、人工芝の芝模様、タイトルロゴなど、グラフィックが細部に至るまで強化された。
  • 音声合成の採用。業務用同様、審判のジャッジと本塁打時には音声合成が使われるようになる。ただし、音声データは業務用からの流用ではなく、PCE用に作られたものであるため、声色は業務用とは異なる。
  • 再び打高投低の内容に。打球の飛距離が抑えられ不評だった87年度版の反省から、打球が飛ぶ仕様に戻り、ホームランを連発する爽快感が復活した。また打席の前方に移動することも再び可能となっている。
  • 歯応えのある隠しチームとの対戦。隠し要素だけあってどのチームも非常に強く、ファミスタ上級者でも一筋縄では攻略できない。

賛否両論点

  • 本作より登場した「エラー」という概念。
    • 発生率に差はあれど、敵味方ともにエラーの可能性があるので条件は対等である。しかし「ピンチで打者を打ち取ったのにエラーによりアウトを取れず失点する」など、(現実の野球でもしばしば見られるケースだが)人によっては理不尽とも思える展開も発生しうる。

問題点

  • 改善されていないCOMの守備。
    • ショートゴロ・セカンドゴロが三塁打・ランニングホームランになるCOMの守備はPCE版でも健在。もっとも、興醒めではあるがこれがあるから隠しチームと対等に戦えるのも事実。

      左・隠しチームもエラーはする/右・遊前ゴロを捕りにいくレフト

  • 「オールドリームス」について。
    • 基本データが既にチートレベル。打者はバットを振ればほとんどヒットになり、フォークボールも通用せず、確実に打ち取れる安全牌は投手だけ。投手陣には仕様上絶対に打てない剛速球投手が2人も含まれている…等々、とにかく理不尽なレベルで強い。先発・星(巨人の星)の制球難につけこむしか勝ち目が無く、インチキ技*1無しでまともにプレイしたら上級者でもコールド負けを喰らいかねない。
    • 選手の選抜基準、能力値、打順などの設定は、出典の漫画での描写と照らし合わせると不可解な部分が散見される。特に、俊足だが専ら代走として起用され、立ち位置も噛ませ役に近いサブキャラクターに過ぎなかった速水(巨人の星)が一番打者*2、明訓高校でほぼ一貫して一番を務め*3、悪球は高確率でスタンド行きだがど真ん中が打てない岩鬼(ドカベン)が高打率・本塁打そこそこの二番打者として出てくるため、試合開始早々にして大きな違和感を覚えてしまう。
      • 明訓高校の不動の二番打者であった殿馬(ドカベン)も登場するが、上記の理由により下位打線に回されている。恐ろしく足が速いが、原作で見せた「秘打」の数々はゲーム上に反映されておらず、打率も3割に満たない平凡な性能。前述のように岩鬼の性能がおかしいため、殿馬の打率が岩鬼より低いという原作ファンからすれば信じられない事になっている。
        また、選手毎の守備適性の概念が存在しないのでゲーム中で実際に影響が出る事はないが、設定上では速水がセカンドを守っており、殿馬は本来のセカンドではなくショートを守っている。上述の通り原作では速水は代走専門で守備に就く描写すらないのに、セカンド守備の名手かつショートを守ったことがない殿馬を押しのけている理由が分からない。*4
      • それぞれの適性を考慮して普段は見られない打順や守備位置に各選手を置くこと自体は、フィクションの混成チームはもちろん現実のオールスターや国際試合代表チームでも当たり前に行われる*5が、岩鬼のようにそもそもの能力が原作からかけ離れているようではフォローの余地がない。
    • クリンナップはオズマ(巨人の星)、山田(ドカベン)、花形(巨人の星)と納得の人選。だがなぜか山田の打撃力がオズマに劣っており、四番打者が三番打者より弱いという事になっている。
      • さすがにこれは続編で修正され、山田の打撃力がゲーム中で存在し得るカンスト数値に設定された。
    • 山田の登録名はニックネームの「ドカベン」を元にしているが、最大4文字まで・濁点も1文字扱いという仕様のため「と゛かへ」というキャッチャーなのになんとも締まりのないものになっている。さながらナガシマが入らないため「ミスタG」にしたかのような無理矢理さである。当時の野球漫画に同姓の主要キャラはいなかったのだから、素直に「やまた゛」にしてもよかったはず。
      • 景浦(あぶさん)も同様に「あふさん」で登録。これは「あふ゛さん」「かけ゛うら」のどちらも5文字になってしまうので仕方が無かった。続編で5文字まで入るようになると、無事「あふ゛さん」になった。
      • だが、山田は結局続編でも「と゛かへ゛」であった。
    • 星(巨人の星)は原作と違い魔球を持たないものの、代わりにカーブ・シュート・フォークの各変化球の数値がカンスト。だがそのために制球が安定せず、フォアボールを連発しやすくなってしまっている。
      • 岩鬼と同様、原作における「速球主体で、幼少期からの特訓により正確無比のコントロールを持つが、プロとしては球質が致命的に軽い」という魔球以外の星の描写と何一つとして噛み合っていない。もっとも、後述するように球速=球威という本作の仕様では、原作に則した能力にすると余計に理不尽になっていたかもしれないが。
    • 続く二番手投手の二階堂(緑山高校)は速球が平均時速190km*6 で、普通の投球すら時速160kmを超えてしまう規格外の剛速球投手。本作では時速160kmを超える剛速球を打つと確実に凡打になるシステムがあるため、彼を打ち崩すのは不可能である。
      • 二階堂は本来左投手なのだが、右投手になっている設定ミスがある。彼なら右で投げても時速190km出すかもしれないが。この設定ミスはなぜか続編以降もなかなか修正されず、性能をそのままに番場(侍ジャイアンツ)と入れ替えるというやや強引な手段によりようやく解消された。
    • 三番手の里中(ドカベン)は再び全変化球カンストの軟投派。二階堂を引きずり下ろせるかという問題はさておくとして、事実上オールドリームスから点を取れる最後の機会である。里中からリードを奪えなかった場合はリセットするしかない。
    • 最後に出てくる四番手は藤村(男どアホウ甲子園)。平均時速180kmの剛球投手で、二階堂と同様彼もゲームシステム上打ち崩すことは不可能。これ以降投手交代は無いので、リードを奪えていない段階で藤村が登板した時点で詰み確定である。
    • 一応これ以降の延長戦になると投手のスタミナ切れの問題が出て来るのだが、オールドリームスの投手たちは里中を除いてスタミナが常人の2~3倍くらいあり、スタミナ切れはほぼ起こり得ない(里中も普通の先発投手と同じくらいはある)。もはや、里中を除いて人間と思われていないのでは……。二階堂と藤村は原作の彼らを考えるとこれでもまだ足りない気はするが。
    • これらの事情により、オールドリームスの攻略法は星の荒れ球をひたすら見送って押し出しを狙うくらいしかなく、1回表に星から10点以上取ってコールド勝ちが最良の手段となってしまっている。これだけでもはっきり言って無理難題だが、この反則チームを相手に9イニング律儀に戦い抜くよりはよっぽどマシである。
      • さすがに開発側も問題視したのか、続編で星の能力が修正されることとなった。…のだが、その結果オールドリームスの選手以外は絶対に打てない「消える魔球(大リーグボール2号)」を使うようになり、原作再現度は向上したものの、もはやまともな勝負にならなくなってしまった。
  • 87年度版でせっかく独立したBチームがRチームに再統合され、86年度版と全く同じチーム構成になってしまった。
    • これらの連合チームは「パリーグの選手をプレイヤーに印象付けたい」という開発スタッフの配慮で生まれたものである(初代余談参照)。しかし、なまじアーケード版ではちゃんと全12球団が個別に用意されていたうえ、本作では隠しチームが大量に登場している(しかもシルエットチームの黒・赤は手抜きかつ悪ノリネタ、白はロッテの個別球団)ため、開発側の意図など知る由もない当該球団ファンのプレイヤーにとっては「相変わらずパリーグをないがしろにしている」と解釈されても仕方がないとも言える。
      • このせいで、隠しチームの登場や演出面の強化を除けば86年版・87年版とあまり代わり映えしない印象も受ける。
      • もっとも、現実のチームの再現性という点にさえ目を瞑れば、連合チームの強力な選手層はゲームとして魅力的な存在ではあった。本作のコンピュータ専用チームはさらに凄まじい強さを持つため、それらに立ち向かう際には心強い戦力となるだろう。
  • 純正パッドでは細かい操作がしにくい。斜めに入りやすいPCエンジンの丸型十字キーでは、微妙な操作が難しい。

総評

ファミコンで爆発的人気を誇ったファミスタシリーズのPCE版は、同時期に発売された『R-TYPEI/II』とならびPCエンジン初期の人気タイトルとしてコンスタントなセールスを記録した。しかしナムコはPCEのマーケティング戦略を業務用タイトルの移植に比重を置き、ファミコン版のように毎年リリースされることは無く、続編は91年3月発売の『ワールドスタジアム'91』のみとなった。

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最終更新:2023年03月29日 15:39

*1 わざと四球を出し、牽制悪送球で誘い出しアウトにする。

*2 打撃の描写も巨人の入団テストで星飛雄馬と対決したときのみであり、その際も心理作戦を絡めたセーフティバントを狙うも星の魔送球(ランナーの眼前を掠めるように曲がり、ファーストミットに収まる送球)でアウトにされるというものであった。

*3 弁慶高校戦のみ四番起用。

*4 だが、当時の野球漫画の選手たちの中には有力な遊撃手が全然いなかった(この傾向は水島作品では特に顕著)というのも殿馬をコンバートする理由だったのかもしれない。それならそれで速水がショートなら丸く収まったはずだが……。

*5 犬島(緑山高校)が本来の捕手ではなく中堅手として出場している。競合相手となる正捕手は山田(ドカベン)なので、これは仕方ないところか。

*6 なお、原作漫画では時速250kmの速球を投げる超人である。